説明

撮像装置

【課題】撮像素子の多画素化に伴う画質低下等の問題の改善を図るとともに、必要に応じて高解像度撮像をも実現する。
【解決手段】撮像制御部112aは加算撮像のための撮像制御機能と非加算撮像のための撮像制御機能とを兼ね備えており、使用者による特別な設定操作が行われない限り(デフォルト状態)、加算撮像のための制御を優先して実行する。加算撮像においては、400万画素の撮像素子105の単位画素信号を互いに加算することによって画素数を減じる加算減数処理が行われ、この加算減数処理が行われた後の画像信号(100万画素)がメモリカードに所定の記録フォーマットで記録される。一方、設定により使用可能となる非加算撮像は通常のデジタルカメラで用いられる標準的な撮像モードに相当し、加算減数処理は行われず、撮像素子105の全画素信号(400万画素)を用いてメモリカードへの記録が行われる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は撮像装置に関し、特に画素信号の加算により感度の向上をはかった撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、CCD等の撮像素子により被写体像を撮像して映像信号を得るデジタルスチル(電子カメラ)が盛んに開発されている。このような撮像装置においては動画撮像装置、静止画撮像装置の別を問わず、撮像素子の隣接する画素情報の加算、例えば垂直方向2画素と水平方向2画素の合計4画素の信号の加算によって、解像度は低下するものの、感度の向上を図ることができるとされている。この種の加算の具体的な方法としては、撮像素子から画素信号を通常の方法で(1画素ずつ)読み出した後に、例えばA/D変換してディジタル処理回路系で加算する外部ディジタル加算方式や、撮像素子内で例えばCCD撮像素子の転送駆動を工夫し、転送路内で電荷加算する素子内アナログ加算方式等が知られている。このような素子内加算方式は、外部ディジタル加算方式では得られない1フレーム画像の読み出し時間の短縮(フレームレートの向上)効果も合わせ持つ。
【0003】一方、素子内加算は一般に加算の方法に制約条件があるため単板カラー素子への適用が困難であったり、またCCD撮像素子内部での信号量の飽和に起因する画質劣化が生じ得るため、本出願人は先に素子内アナログ加算方式と外部ディジタル加算方式とを適切に組合わせることによって、単板カラー素子への適用が容易で、且つ素子内部飽和起因の劣化も伴わず、感度、ダイナミックレンジ(Dレンジ)、フレームレートをいずれも向上できる素子内外加算併用方式による加算撮像を提案している(特願2000−022758号明細書)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、いずれにしてもこれら加算撮像に関する技術は、その多くが単に加算撮像の実現方法を示したものに過ぎず、カメラとしての実用上の使い勝手についてはあまり考慮されていない。すなわちカメラとしての加算撮像の組込みに関して具体的に提案されているものは、当該カメラの標準的な撮像モードとしては各画素情報を個別に読み出すという従来の非加算撮像を使用し、電子ファインダ用途などを中心に、たとえば感度アップやフレームレート向上が必要な特殊な条件の時にのみ、いわば特殊撮像モードとして加算撮像を使用するという構成が一般的であった。
【0005】このようなカメラの構成は、これまでは特に問題となることが無かったが、近年撮像素子の多画素化が急速に進み今後大きな不具合を生じる恐れがある。すなわち、最近では、400万画素の撮像素子を用いたものも民生用として供給されつつあり、今後600万画素、さらには1000万画素を持つものも実現されることが予想されている。このような多画素化に伴い、通常の非加算撮像では、記録画像のファイルサイズの肥大によりパーソナルコンピュータなどの実使用環境では過負荷となることはもちろん、フレームレートの低下、さらには撮像素子の1画素当たりの蓄積光電荷量の不足という撮像素子そのものによる原理的な要因によって画質(S/N、Dレンジ)が劣化する、という問題を招くことになる。
【0006】また、仮に通常の非加算撮像と加算撮像とを選択出来るように構成したとしても、加算撮像があくまで特殊撮像モードの一つとして用意されていたのでは、そのような特殊撮像モードを使用するための設定操作を行わないような一般ユーザー(フールプルーフ対象ユーザー)にとってはあまり意味が無く、加算撮像を有効利用することができなくなる。
【0007】本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、第1には使用者による特別な設定操作無しで、撮像素子の多画素化に伴う画質低下等の問題を改善し得る画質優先の撮像を行えるようにし、第2には必要に応じて高解像度撮像をも行うことが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するため、本発明は、複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して画像信号を読み出す駆動手段と、前記受像画素に対応する単位画素信号を互いに加算することにより画素数を減じる加算減数処理を実行可能な加算手段と、前記加算手段による加算減数処理が施された撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する加算撮像を実行可能な撮像制御手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態において撮像を実行する場合には、前記加算撮像を行なうように構成されていることを特徴とする。
【0009】また、本発明は、複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して前記受像画素に対応する単位画素信号を前記撮像素子内部で加算しつつ読み出す加算読み出しを実行可能な駆動手段と、前記加算読み出しによる撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する加算撮像を実行可能な撮像制御手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態において撮像を実行する場合には、前記加算撮像を行なうように構成されていることを特徴とする。
【0010】これら本発明の撮像装置によれば、加算撮像がいわゆるデフォルト撮影モードとして用意されており、当該撮像装置がその初期状態であるデフォルトの状態にあるときに使用者が撮影トリガ等の通常の撮影操作を行うと、自動的に加算減数処理を用いた加算撮像が実行され、それによって得られた画像信号が記録媒体に記録される。このように、加算撮像を、特殊撮像ではなく、記録画像を得るためのデフォルトの撮影モードとして使用することにより、400万画素、600万画素あるいはそれ以上の多画素化された撮像素子を用いる場合であっても、使用者による特別な設定操作無しで、記録画像のファイルサイズの肥大化を防止できると共に、十分な感度およびダイナミックレンジを確保することが可能となる。さらに、記録画像の解像度に対して撮像素子自体の空間解像度に余裕があるため、色モアレが少なくなるなどの効果を得ることができる。
【0011】また、特に、受像画素に対応する単位画素信号を撮像素子内部で加算しつつ読み出す加算読み出しを少なくとも一部に含むような加算撮像を利用することにより、容易に高いフレームレートを確保することが可能となると共に、撮像素子出力に対する演算処理も軽減することができる。
【0012】また、上述のデフォルト状態の好ましい態様としては、1)デフォルト状態が前記撮像装置の製造工程における全調整の終了により生じる初期設定状態であること、2)撮像装置の動作を制御するシステムコントローラの暴走状態に備えて設けられたリセットスイッチの操作により生じる初期設定状態であること、3)電源として用いられる交換可能な電池の交換により生じる初期設定状態であること、4)主電源を投入または切断するための電源スイッチの操作による電源の投入または切断により生じる初期設定状態であること、が挙げられる。これらにより、使用者は何ら意識させることなく、加算撮像による画質優先の撮影・記録を優先して実行することが可能となる。
【0013】また、本発明は、複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して前記受像画素に対応する単位画素信号を個別に読み出す非加算読み出しおよび前記単位画素信号を前記撮像素子内部で加算しつつ読み出す加算読み出しを実行可能な駆動手段と、前記非加算読み出しまたは前記加算読み出しによる撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する撮像制御手段と、前記所定の記録フォーマットの第1の記録画素数に対応する第1の記録画質モードと前記第1の記録画素数よりも大きい第2の記録画素数に対応する第2の記録画質モードとを切換える記録画質モード切換手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、前記第1の記録画質モードに対しては前記加算読み出しによる加算撮像を、前記第2の記録画質モードに対しては前記非加算読み出しによる非加算撮像を、それぞれ行なうように構成されたものであることを特徴とする。
【0014】このように記録画素数の異なる第1および第2の記録画質モードを用意し、使用する記録画質モードに応じて加算撮像と非加算撮像撮像とを自動的に切換えるという構成を用いることにより、第1の記録画質モードにおいては十分な感度やダイナミックレンジ、および高フレームレートを確保でき、また第2の記録画質モードにおいては撮像素子の空間解像度を最大限に生かした高解像度撮像を実行することが可能となり、多画素化された撮像素子を用いた撮像装置に最適な撮像制御を行うことができる。
【0015】また、この構成においても、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態においては加算撮像が行われるようにすることが好ましく、これにより特別の設定操作を行わない場合には加算撮像、つまり第1の記録画質モードによる撮像を優先して行うことが可能となる。
【0016】また、連写撮影を行なう場合には前記第1の記録画質モードが優先的に選択されるように構成することにより、特別大きなバッファなどを用意せずとも、十分な連写性能を得ることが可能となる。
【0017】また、連写撮影を行なう場合に記録画質モード切換手段によって前記第2の記録画質モードが選択された場合にこれを警告する警告手段を設けたり、あるいは連写撮影を行なう場合には前記第2の記録画質モードの選択自体を禁止するように構成することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1には、本発明の一実施形態に係わる撮像装置の構成が示されている。ここでは、デジタルカメラとして実現した場合を例示して説明することにする。
【0019】図中101は各種レンズからなる撮像レンズ系、102はレンズ系101を駆動するためのレンズ駆動機構、103はレンズ系101の絞りを制御するための露出制御機構、104はメカシャッタ、105はベイヤ配列のカラーフィルタを備えたCCDカラー撮像素子、106は撮像素子105を駆動するためのCCDドライバ、107はゲインコントロールアンプ,A/D変換器等を含むプリプロセス回路、108は色信号生成処理,マトリックス変換処理,その他各種のデジタル処理を行うためのデジタルプロセス回路、109はカードインターフェース、110はメモリカード、111はLCD画像表示系を示している。
【0020】撮像素子105としては、例えば400万画素のベイヤ配列インターレース型のものなどが利用される。
【0021】また、図中の112は各部を統括的に制御するためのシステムコントローラ(CPU)、113は各種SWからなる操作スイッチ系、114は操作状態及びモード状態等を表示するための操作表示系、115はレンズ駆動機構102を制御するためのレンズドライバ、116は発光手段としてのストロボ、117はストロボ116を制御するための露出制御ドライバ、118は各種設定情報等を記憶するための不揮発性メモリ(EEPROM)を示している。
【0022】本実施形態のデジタルカメラにおいては、システムコントローラ112が全ての制御を統括的に行っており、特に露出制御機構103に含まれるシャッタ機構と、CCDドライバ106によるCCD撮像素子105の駆動を制御して露光(電荷蓄積)及び信号の読み出しを行い、それをプリプロセス回路107を介してデジタルプロセス回路108に取込んで、各種信号処理を施した後にカードインターフェース109を介してメモリカード110に記録するようになっている。
【0023】本実施形態のデジタルカメラに於いては、画素加算を用いた加算撮像をいわゆるデフォルトの撮影モードとして使用して被写体の撮像・記録を行うように構成されている。これを実現するため、システムコントローラ112には、撮像制御部112aおよび記録画質モード切換部112bが設けられている。
【0024】撮像制御部112aは加算撮像のための撮像制御機能と非加算撮像のための撮像制御機能とを兼ね備えており、使用者による特別な設定操作が行われない限り、加算撮像のための制御を優先して実行する。加算撮像においては、400万画素の撮像素子105の単位画素信号を互いに加算することによって画素数を減じる加算減数処理が行われ(4画素加算撮像)、この加算減数処理が行われた後の画像信号(100万画素)がメモリカード110に所定の記録フォーマットで記録される。なお、記録時の圧縮/非圧縮、圧縮率等は任意である。一方、非加算撮像は通常のデジタルカメラで用いられる標準的な撮像モードであり、加算減数処理は行われず、撮像素子105の全画素信号(400万画素)を用いてメモリカード110への記録が行われる。この場合も、記録時の圧縮/非圧縮、圧縮率等は任意である。
【0025】記録画質モード切換部112bは、加算撮像を用いた第1の記録画質モード(100万画素記録)と非加算撮像を用いた第2の記録画質モード(400万画素記録)とを切換えるためのものである。本実施形態においては、上述したように、加算撮像を用いた第1の記録画質モードがデフォルト撮影モードとして規定されているため、特別な設定操作を行わない限りは、第1の記録画質モードでの撮像が自動実行される。
【0026】(動作制御状態の遷移)次に、図2の状態遷移図を参照して、本実施形態のデジタルカメラにおける動作制御状態について説明する。なお、図2では本発明に直接関係するモードだけが示されているが、実際には、例えばAE(自動露出補正)・AF(自動合焦点)・AWB(自動ホワイトバランス調整)など各種の撮影に関する設定もある。これら各種設定は全て独立に行うことが可能であり、データバックアップシステムが正常に機能している範囲で例えばパワーオフ、パワーオン等に際しても設定内容は保持されるものとする。
【0027】図2の状態遷移図に示すように、本デジタルカメラは、撮影モードおよび再生モードなどの各種動作モードを有している。本デジタルカメラはその主電源を投入または切断するための電源スイッチの操作で、初期状態であるデフォルトの状態に設定される。すなわち、本デジタルカメラはその電源スイッチのON操作(パワーオン)を行うと、工場出荷状態(製造工程の調整が完了後、未操作の状態)と同じ状態で、撮影モードにて起動する。この撮影モードは、本デジタルカメラの初期状態であるデフォルトの状態であり、使用者が撮影トリガ等の通常の撮影操作を行うと、加算撮像を用いた第1の記録画質モード(100万画素記録)での撮像が開始される。
【0028】本デジタルカメラ電源として用いられる電池を交換したり、システムコントローラ112のマイコンの予期しない暴走に備えたシステムリセットスイッチを操作した場合もデフォルト状態に初期設定される。動作モード切換えスイッチにより撮影モードから再生モードなどの他の動作モードに切換わるが、これら他の動作モードから撮影モードに復帰させる操作を行った場合もデフォルト状態に初期設定される。
【0029】なお、デフォルト状態については、この例のように全て共通の工場出荷状態に復帰するカメラばかりではないが、上述のような操作によって遷移し他の設定操作を一切しない状態は、積極的な設定操作を行なわない一般ユーザーにとって、事実上常に与えられる条件(常に選択される設定)ということができるから、いずれも本発明のデフォルト状態である。
【0030】本デジタルカメラでは、電源投入あるいは再生モードから撮影モードに切換わった時を含めてデフォルト状態では記録画質モードは100万画素(記録画素数100万画素)が選択されている。この状態で撮影トリガを操作すると、たとえば撮像素子105内で単位画素信号を加算しながら読み出す4画素加算撮像が行われる。この際記録画素数は加算処理出力画素数と一致しているから、補間処理などを用いた画素数の増数処理や減数処理が不要である。また、100万画素は撮像解像度としても記録画素数としても通常の画像として充分であり、またファイルサイズも肥大しない(記録画素数400万はしばしば過大の傾向がある)。この状態で連写モードに切換え可能であり、高フレームレートを生かした高速連写が可能である。
【0031】また、上記で単写が選択されている場合には、記録画質モードを第2の記録画質モード、つまり400万画素(記録画素数400万画素)に切換えることができる。この状態で撮影トリガを操作すると、非加算撮像が行われる。この際も記録画素数は加算処理出力画素数(これは非加算撮像を加算数0の加算と見做した仮想的な表現であり、従ってこの場合は撮像素子の画素数に等しい)と一致しているから、補間処理などを用いた画素数の増数処理や減数処理が不要である。
【0032】第2の記録画質モードにおいては、加算撮像による第1の記録画質モードに比し、S/N、Dレンジやフレームレートは低下するものの、撮影解像度は極めて高く、記録解像度もこの情報を維持するのに充分であるから、特に解像度を優先したい撮像には極めて効果的である。
【0033】連写が選択されている場合には画質モードを第2の記録画質モードである400万画素モード(記録画素数400万画素)に切換えることは禁止される。また、この400万画素モードの場合には連写を選択することができない。400万画素モードでの連写を選択可能にした場合、フレームレートも遅いばかりでなく、画素数が多いため連写に対応するためのバッファ容量も多く必要となりシステムとしての効率が悪くなるためである。
【0034】もちろん、十分なバッファ容量が用意されている場合等には、400万画素モードでの連写を選択可能としても良い。ただし、この場合でも400万画素モードでの連写の設定操作がなされると、ブザーやLCD表示等によって警告がなされる。これは、ファイルサイズの増大や単位時間当たりの連写コマ数の低下などの問題が生じることを事前に使用者に通知するためである。さらに、警告以外の別の態様としては、たとえ400万画素モードで連写が選択された場合でも、一旦は必ず第1の記録画質モードである100万画素モードでの連写に自動的に切換え、400万画素モードで連写を実行させるためのさらなる設定操作が行われた場合のみ、400万画素の連写撮影モードに移行するという制御を利用することができる。
【0035】(加算撮像)以下、デフォルト撮影モード時(100万画素モード)に実行される加算撮像の具体例について説明する。
【0036】図3は、CCD撮像素子105の平面構造を示している。CCD撮像素子105は、図3に示すように、マトリクス配置されたフォトダイオード201,複数本の垂直CCD202,及び1本の水平CCD203から構成されたインターライン(IT)型で、インターレース駆動方式のものを採用している。また、カラーフィルタは、図4に示すようにRGBのベイヤ配列となっている。このような配列では、隣接する画素同士の単純加算では異なる色が混ざってしまう。そこで、本実施形態では、次のような素子内外加算併用方式を使用する。
【0037】すなわち、図4のようなインターレースRGBベイヤ配列の撮像素子では、各フィールドに着目すれば、それぞれRG又はGBのストライプ配列を構成している。そこで本実施形態では、nライン加算駆動(n倍速読み出し)によって各色を混合させることなく水平CCDの中で加算する。具体的には、インターレースのフレーム読み出しで垂直方向のn画素を水平転送路内で加算する。そして、これを外部に読み出した後、デジタル演算処理によって水平同色n画素毎の加算平均を行うものである。
【0038】4画素加算であれば、図5に示すように、奇数フィールドで垂直方向2画素加算、同様に偶数フィールドでも垂直方向2画素加算を行い、撮像素子から読み出した後に、デジタルプロセス回路108によるデジタル演算処理により水平方向の同色2画素加算平均を行う。またこのとき、露光量は1/2に制御する。
【0039】図5のような8画素においては、奇数フィールドの垂直方向2画素加算により(G1+G5),(R1+R3),(G2+G6),(R2+R4)が得られ、水平方向の同色2画素加算により(G1+G5)+(G2+G6)と(R2+R4)+(R1+R3)が得られる。同様に、偶数フィールドの垂直方向2画素加算により(B1+B3),(G3+G7),(B2+B4),(G4+G8)が得られ、水平方向の同色2画素加算により(B1+B3)+(B2+B4)と(G3+G7)+(G4+G8)が得られる。
【0040】上記の処理は、図6に示すように実現することができる。即ち、図1の105に相当するイメージャ系は2倍速垂直加算駆動を行えばよく、108に相当するデジタル信号処理系では水平同色(すなわち1画素おき)2画素加算平均を行えばよく、103に相当する露出制御系では露光量を1/2に制御すればよい。ここで、デジタル信号処理系では、垂直方向の加算が既に成されているため、水平方向のみの加算(1次元の加算)で済むことになり、2次元の加算に比して信号処理が格段に簡略化できる。
【0041】なお、本実施形態で使用している上記nライン加算駆動自体は公知技術であるから詳述を避けるが、通常の駆動では毎回の水平ブランキング期間に1転送単位分だけ出力される垂直駆動パルスを、毎回の水平ブランキング期間にn転送単位分だけ出力するものである。これによって、垂直転送路内の画素情報は垂直方向にn画素ずつが水平転送路において加算されることになる。
【0042】本実施形態により加算して得られる単位画素は、前記図5の右側に示すようにベイヤ配列となっているため、以後の輝度・色信号生成処理は既存の(インターレース対応)ベイヤ配列と全く同じアルゴリズムを使用することができる。また、総合N×N画素加算を行う場合のCCD内加算画素数はNであるから、最終的な感度アップ量(SN向上量:ランダムノイズはその統計的性質から加算平均画素数の平方根に反比例する)に対応しており、従って露光量の目標値を1/Nにすることができるから撮像素子内部(例えば水平転送路)において生じる飽和に起因する問題も生じない。例えば、総合4画素加算の時、露光量は1/2でつじつまが合っている。
【0043】そして、CCD出力時点での電荷量(電圧レベル)が変わらないから、アナログアンプゲインを変える必要がなく、アナログ系(A/Dを含む)に起因する新たな問題が無いという利点も極めて大きい。なお、アナログ系で発生するノイズについてはデジタル加算に際してさらにノイズ低減効果が生じるから、総合的には一般に量子化ノイズの増大を避けるためアナログ系のゲインを通常感度時(非加算時)に対して高く設定する必要のある全デジタル方式よりも確実に高感度が得られる。さらに、n倍速読み出しによるフレームレート向上を利用した連写対応も可能である。
【0044】図7は、本実施形態におけるシャッタ開閉動作と電荷読み出し動作を説明するためのタイミング図である。
【0045】メカシャッタ104を開いた後、最終の電荷排出パルス(VSUB)を与えて電荷蓄積(露光)を開始する。そして、シャッタ104が閉まるまでフォトダイオード201に電荷を蓄積する。次いで、シャッタ104を閉じた後、転送路駆動によって垂直CCD202からの不要電荷排出が完了した直後にODD−TGパルスにより奇数フィールドのフォトダイオード201の画素電荷を垂直CCD202に読み出して転送する。このとき、垂直方向の2画素の加算を水平CCD203内で行う。続いて、EVEN−TGパルスにより偶数フィールドのフォトダイオード201の画素電荷を垂直CCD202に読み出して転送する。このときも同様に、垂直方向の2画素の加算を行う。
【0046】このように本実施形態では、メカシャッタを用いることで奇数フィールドと偶数フィールドに分けて読み出しており、その際読み出しに先だってシャッタ104が閉じられている状態で不要電荷排出を行っているため、スミアなどの無用な電荷がノイズとして入るのを未然に防止することができる。
【0047】なお、上記加算撮像においては露光量は1/2(=1/N)としたが、これは通常時に対して画質(SN)の劣化を全く生じないようにするという効果を求めたものであり、これを条件としなければ他の任意の設定も有り得る。この場合の設定例としては、(1)露出制御の目標値が1/4 (1/N
(2)後段のディジタル演算が加算平均では無く加算(1画素飛ばしの2画素に関するものである点は同じ)
の2点の変更が挙げられる。この場合撮像素子からの出力時には通常時の1/2の信号レベルしか得られないが、ディジタル加算によって通常レベルに戻るから、露光量が1/4であるということは4倍の感度が得られていることになるものである。但しディジタル系でゲインアップしていることに相当するので、アナログノイズ・量子化ノイズともに最初の例に比すれば増加している。
【0048】なお、さらなる変形の形態として上記(2)をアナログ系の2倍ゲインアップとディジタル系の加算平均で行なうものも有りうるが、これは量子化ノイズは増加しない代わりにアナログノイズがさらに増加するものであり類例ということができる。また同様の類例として、上記(1)の露出制御目標値をさらに異なる任意の値に設定しても良い。
【0049】以上のように、本実施形態によれば、加算撮像を記録画像を得るためのデフォルトの撮影モードとして使用することにより、400万画素、600万画素あるいはそれ以上の多画素化された撮像素子を用いる場合であっても、使用者による特別な設定操作無しで、記録画像のファイルサイズの肥大化を防止できると共に、十分な感度およびダイナミックレンジを確保することが可能となる。さらに、記録画像の解像度に対して撮像素子自体の空間解像度に余裕があるため、色モアレが少なくなるなどの効果を得ることができる。また、少なくとも素子内加算を一部に含む加算撮像方式を用いることにより、高いフレームレートを実現することができる。もちろん、全ての加算処理をデジタル処理系で行うという素子外加算方式を用いても良く、この場合でもフレームレートを除いては同様に有効である。
【0050】なお、実際の記録に際しては例えばJPEGなどの圧縮を用いても良く、圧縮か非圧縮かまた圧縮記録の場合の圧縮率等は、必要に応じて上記記録画素数とは独立に設定することができる。
【0051】また、上記例では記録画質モードを選択可能としたが、記録画質モードが1つしかないカメラでも良い(例:上記で400万を無くしたもの)。この場合も目標解像度に対して撮像素子の空間サンプリング周波数に余裕があるため、100万画素素子を使用した場合に対して水晶LPFを薄くできる、色モアレが少なくなるなどの効果がある。
【0052】さらに、上記例では記録画像の目標解像度である100万画素を得るために4画素加算を行ったが、画素加算数は、撮像素子の画素数と目標解像度との関係によって任意に設定可能である。これを応用して、加算撮像を用いた記録画質モードとして記録画素数の異なる複数のモードを用意しておき、選択されたモードに応じて画素加算数を変更するようにしても良い。
【0053】また、本発明はデジタルスチルカメラに限らず、ムービーカメラを含む任意の撮像装置に適用可能であることは言うまでもない。そして、本発明はカラー撮像装置に限らずモノクロ撮像装置に対しても等しく適用可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、使用者による特別な設定操作無しで、撮像素子の多画素化に伴う画質低下等の問題を改善し得る画質優先の撮像を行えるようになり、また必要に応じて高解像度撮像をも行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の撮像装置における動作制御状態の遷移の様子を図。
【図3】同実施形態の撮像装置で用いられるカラー撮像素子の構成を示す図。
【図4】同実施形態の撮像装置で用いられるカラー撮像素子のフィルタ配列を示す図。
【図5】同実施形態の撮像装置で用いられる4画素加算の例を示す図。
【図6】同実施形態の4画素加算を実現するための制御系の機能を示す図。
【図7】同実施形態におけるシャッタ開閉動作と電荷読み出し動作を説明するためのタイミング図。
【符号の説明】
101…レンズ系
102…レンズ駆動機構
103…露出制御機構
104…メカシャッタ
105…CCDカラー撮像素子
106…CCDドライバ
107…プリプロセス回路
108…デジタルプロセス回路
109…カードインターフェース
110…メモリカード
111…LCD画像表示系
112…システムコントローラ(CPU)
112a…撮像制御部
112b…記録画質モード切換部
113…操作スイッチ系
114…操作表示系
115…レンズドライバ
116…ストロボ
117…露出制御ドライバ
118…不揮発性メモリ(EEPROM)
201…フォトダイオード
202…垂直CCD
203…水平CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して画像信号を読み出す駆動手段と、前記受像画素に対応する単位画素信号を互いに加算することにより画素数を減じる加算減数処理を実行可能な加算手段と、前記加算手段による加算減数処理が施された撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する加算撮像を実行可能な撮像制御手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態において撮像を実行する場合には、前記加算撮像を行なうように構成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】 複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して前記受像画素に対応する単位画素信号を前記撮像素子内部で加算しつつ読み出す加算読み出しを実行可能な駆動手段と、前記加算読み出しによる撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する加算撮像を実行可能な撮像制御手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態において撮像を実行する場合には、前記加算撮像を行なうように構成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】 複数の光電変換素子を受像画素として有した撮像素子と、前記撮像素子を駆動して前記受像画素に対応する単位画素信号を個別に読み出す非加算読み出しおよび前記単位画素信号を前記撮像素子内部で加算しつつ読み出す加算読み出しを実行可能な駆動手段と、前記非加算読み出しまたは前記加算読み出しによる撮像素子の出力画像信号を所定の記録フォーマットに従い記録媒体に記録する撮像制御手段と、前記所定の記録フォーマットの第1の記録画素数に対応する第1の記録画質モードと前記第1の記録画素数よりも大きい第2の記録画素数に対応する第2の記録画質モードとを切換える記録画質モード切換手段とを有した撮像装置であって、前記撮像制御手段は、前記第1の記録画質モードに対しては前記加算読み出しによる加算撮像を、前記第2の記録画質モードに対しては前記非加算読み出しによる非加算撮像を、それぞれ行なうように構成されたものであることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】 前記撮像制御手段は、当該撮像装置の初期設定状態として規定されるデフォルト状態において撮像を実行する場合には、前記加算撮像を行なうように構成されていることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】 前記記録画質モード切換手段は、連写撮影を行なう場合には前記第1の記録画質モードを優先的に選択するように構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の撮像装置。
【請求項6】 連写撮影を行なう場合に前記記録画質モード切換手段によって前記第2の記録画質モードが選択された場合にこれを警告する警告手段を有したことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項7】 前記記録画質モード切換手段は、連写撮影を行なう場合には前記第2の記録画質モードの選択を禁止するように構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の撮像装置。
【請求項8】 前記デフォルト状態は、前記撮像装置の製造工程における全調整の終了により生じる初期設定状態であることを特徴とする請求項1、2または4記載の撮像装置。
【請求項9】 前記撮像装置の動作を制御するシステムコントローラの暴走状態に備えて設けられ、その操作により前記暴走状態からの脱出が可能なリセットスイッチを有してなり、前記デフォルト状態は、前記リセットスイッチの操作により生じる初期設定状態であることを特徴とする請求項1、2または4記載の撮像装置。
【請求項10】 前記撮像装置の電源は交換可能な電池であり、前記デフォルト状態は、前記電池の交換により生じる初期設定状態であることを特徴とする請求項1、2または4記載の撮像装置。
【請求項11】 主電源を投入または切断するための電源スイッチを有してなり、前記デフォルト状態は前記電源スイッチの操作による電源の投入または切断により生じる初期設定状態であることを特徴とする請求項1、2または4記載の撮像装置。
【請求項12】 主として撮像を実行するための動作モードである撮影モードと撮像は実行できない動作モードである非撮影モードとを切換可能な動作モード切換手段を有してなり、前記デフォルト状態は前記動作モード切換手段が行なうモード切換により生じる初期設定状態であることを特徴とする請求項1、2、または4記載の撮像装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−359038(P2001−359038A)
【公開日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−173947(P2000−173947)
【出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】