撮像装置
【課題】単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とを精度良く撮像することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像光学系3と、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子6と、撮像光学系3からの被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11と、選択された一のカットフィルタを光路上に配置させる第1の駆動手段12と、撮像光学系3及び撮像素子6の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段13と、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御する制御手段20とを備える。
【解決手段】撮像光学系3と、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子6と、撮像光学系3からの被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11と、選択された一のカットフィルタを光路上に配置させる第1の駆動手段12と、撮像光学系3及び撮像素子6の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段13と、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御する制御手段20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とを撮像可能とした撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像光学系により結像させた被写体像を撮像素子で撮像し、被写体像を画像として出力する撮像装置が、例えば、車載カメラ、デジタルスチルカメラ、携帯端末用小型カメラ又は画像検査装置等の各種撮像装置に広く用いられている。このような撮像装置に用いられる撮像素子は、一般的に可視光のみではなく赤外光にも感度を有するものが多いため、赤外カットフィルタにより赤外成分を除去し、可視光のみを撮像素子に入射させて、良好な色再現性のカラー画像を得るようにしていた。
【0003】
一方、上記したように可視光を利用した撮像装置は主にカラー画像を撮像するものであるが、赤外光を利用した撮像装置も種々提案、実用化されており、これは温度計測に多く用いられている。例えば特許文献1(特開2009−150842号公報)には、赤外線レンズを透過した赤外線を遠赤外線撮像素子で受光し、遠赤外線撮像素子から出力された信号に基づいて被写体像の温度分布を検出する装置が開示されている。
【0004】
さらに、赤外光と可視光の両方を利用した撮像装置が特許文献2(特開2007−36831号公報)に開示されている。この撮像装置は、可視光用撮像素子と赤外光用撮像素子と、入射光を可視光用撮像素子又は赤外光用撮像素子へ切り替える反射ミラーとを備えている。これは、例えば車載カメラにおいて、それぞれの撮像素子で撮像された可視光画像と赤外光画像とを合成することにより、夜間走行時においても鮮明な画像を得ることを可能としている。
【0005】
また、特許文献3(特開2007−93652号公報)には、レンズを保持するレンズ枠を、可視光に対して合焦させる第1合焦位置と、赤外光に対して合焦させる第2合焦位置とに切り替える切り替え機構を備えたレンズ駆動装置が開示されており、これにより焦点距離が異なる可視光と赤外光の両方を鮮明に撮像することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−150842号公報
【特許文献2】特開2007−36831号公報
【特許文献3】特開2007−93652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、赤外光と可視光の両方を利用した撮像装置として、特許文献2及び特許文献3に開示される撮像装置は、例えば車載カメラにおいて昼間及び夜間おいて被写体像の鮮明な画像を得ることを目的としており、被写体の温度を測定するものではなかった。
また、特許文献2は、赤外光と可視光の切り替えに反射ミラーを利用しており、撮像光学系と撮像素子がそれぞれ2つずつ必要となるため製品コストが増大し、さらに装置サイズも大きくなってしまう。
【0008】
特許文献3は、可視光の合焦位置と赤外光の合焦位置とに切り替えるレンズ駆動装置の発明であり、撮像装置にこの駆動装置を装備するのみでは、可視光の合焦位置に合わせた撮像素子に赤外光も同時に入射し、同様に赤外光の合焦位置に合わせた撮像素子に可視光も同時に入射してしまうため、これが外乱となって画像の精度が低下するという問題があった。
そのため本発明においては、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とを精度良く撮像することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る撮像装置は、撮像光学系と、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、前記撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子と、前記撮像光学系からの前記被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ及び可視光カットフィルタと、前記選択された一のカットフィルタを前記光路上に配置させる第1の駆動手段と、前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段と、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを同期して制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子を用い、光路上に配置されるカットフィルタの切り替え、及び撮像光学系と撮像素子との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0011】
また、前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記赤外カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記可視光に合焦する位置に移動させることが好ましい。
このように、赤外カットフィルタを光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した可視光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【0012】
さらに、前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記可視光カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記赤外光に合焦する位置に移動させることが好ましい。
このように、可視光カットフィルタを光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した赤外光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記撮像素子で画像を撮像するフレームタイミングに対応させて前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを駆動することが好ましい。
撮像素子はフレームタイミング毎に光電変換された電気信号が出力されるように制御されており、このフレームタイミングに対応させて第1の駆動手段と第2の駆動手段とを駆動し、可視光と赤外光とを交互に撮像することにより、撮像時に、カットフィルタと合焦位置が適切に設定された状態で撮像を行なうことができる。なお、第1の駆動手段及び第2の駆動手段は、数フレームごとに同期して駆動するように制御してもよい。
【0014】
また、前記赤外カットフィルタを透過した可視光を受光した前記撮像素子の出力信号を画像情報として取り込み、前記可視光カットフィルタを透過した赤外光を受光した前記撮像素子の出力信号を温度情報として取り込み、前記画像情報と前記温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積する信号処理手段をさらに備えることが好ましい。
このように、可視光から得られる画像情報と、赤外光から得られる温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積することにより、同一位置において異なる2種類の情報(画像情報と温度情報)を保持することができ、これらの情報を適宜出力したり、いずれか一方又は両方の情報を用いて信号処理する際に有用である。なお、画像情報と温度情報は、それぞれを別テーブルに格納してこれらをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けてもよいし、画像情報に同一位置の温度情報を埋め込んで同じテーブルに格納してもよい。
【0015】
さらに、前記フレーム画像上の位置を指定する入力手段と、前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記入力手段で指定された位置の前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段とをさらに備えることが好ましい。
このように、入力手段で指定されたフレーム画像上の位置の温度情報を画像情報に重畳して表示することにより、操作者が所望するときに必要な温度情報のみを画像上に表示することが可能となる。
【0016】
さらにまた、前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記温度情報が予め設定されたしきい値を超える場合に前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段をさらに備えることが好ましい。
このように、予め設定されたしきい値を超える場合にのみ温度情報を画像情報に重畳して表示することにより、温度情報を自動で画面表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子を用い、光路上に配置されるカットフィルタの切り替え、及び撮像光学系と撮像素子との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0018】
また、赤外カットフィルタを光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した可視光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
さらに、可視光カットフィルタを光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した赤外光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の変形例である撮像装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】カットフィルタを示す図である。
【図4】駆動手段の動作を説明する図で、(A)可視光を撮像するときの側面図、(B)は赤外光を撮像するときの側面図である。
【図5】信号処理手段の機能ブロック図を含む撮像装置の全体ブロック図である。
【図6】画像情報に温度情報を重畳させて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。
【図7】表示画面の具体例を示す図である。
【図8】表示画面の他の具体例を示す図である。
【図9】画像情報と温度情報を切り替えて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。
【図10】駆動手段を制御するタイミングチャートを示す図である。
【図11】信号処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す側面図で、図2は図1の変形例である撮像装置の概略構成を示す側面図で、図3はカットフィルタを示す図で、図4は駆動手段の動作を説明する図である。
本発明の実施形態に係る撮像装置1は、主に、撮像光学系3と、撮像素子6と、赤外カットフィルタ10と、可視光カットフィルタ11と、赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11のうちいずれか一方を光路上に配置する第1の駆動手段12と、撮像光学系3と撮像素子6との距離を変位させる第2の駆動手段13と、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御する制御手段20とを備える。
【0022】
撮像光学系3は、一又は複数のレンズを含み、光軸上に配置されてレンズホルダ2に保持されている。
赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11は、撮像光学系3からの被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される。
第1の駆動手段12は、赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11のうちいずれか一方を、撮像光学系3からの被写体像の光路上に配置する。第1の駆動手段12の具体的構成は、例えば図1及び図2に示されるように、赤外カットフィルタ10と可視光カットフィルタ11とを同一平面が形成されるように連結し、この連結したカットフィルタ10、11が第1の駆動手段12により回転することで、いずれか一方のカットフィルタが光路上に配置されるように構成する。また、別の構成例として、図3示すように連結した赤外カットフィルタ10と可視光カットフィルタ11とを第1の駆動手段12により図中矢印の方向に直線上をスライド移動させるようにしてもよい。なお、カットフィルタ10、11及び第1の駆動手段12の構成は上記した例に限定されるものではない。
【0023】
撮像素子6は、基板5上に配置されており、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有している。すなわち、撮像素子6は前記波長領域の光を検出可能となっている。なお、撮像素子6の分光感度は、赤外光の波長領域の全てを含む必要はなく、温度測定に必要とされる温度帯に対応した波長領域を含んでいればよい。好適には、撮像素子6は、400〜700nmの可視域と0.5〜2.0μm程度の赤外域とを含む波長領域に分光感度を有しているとよい。例えば、可視域と赤外域とを含む波長領域に分光感度を有する撮像素子6として、InGaAsを用いた量子型検出素子のフォトダイオードが知られており、この中でも0.5〜1.7μmで高い分光感度を有する短波長高感度タイプのInGaAsフォトダイオードが好適に用られる。このフォトダイオードにより可視光を用いて画像を撮像可能で、且つ赤外光を用いて200℃程度まで温度測定できる。また、撮像素子6の種類は特に限定されるものではないが、例えばCCDおよびCMOSなどが用いられる。
【0024】
第2の駆動手段13は、撮像光学系3及び撮像素子6の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる。図1には、撮像素子6側を移動させる場合を示しており、図2には撮像光学系3側を移動させる場合を示している。第1の駆動手段12又は第2の駆動手段13は、例えば圧電素子、モータ等のアクチュエータが用いられる。なお、図示していないが、撮像光学系3と撮像素子6との間に第2の駆動手段13を配置して、所望の焦点距離となるように撮像光学系3と撮像素子6との両方を移動させてもよい。
【0025】
制御手段20は、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御するための制御信号を生成し、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とに送信する。図4を参照して、制御手段20により制御される駆動手段の動作を説明する。ここでは一例として、第2の駆動手段13が撮像素子6側に設けられた場合を示している。
図4(A)は可視光を撮像するときの側面図である。可視光を撮像するときは、第1の駆動手段12により赤外カットフィルタ10を光路上に配置し、第2の駆動手段13により撮像素子6を可視光に合焦する位置に移動させる。
【0026】
一方、図4(B)は赤外光を撮像するときの側面図である。赤外光を撮像するときは、第1の駆動手段12により可視光カットフィルタ11を光路上に配置し、第2の駆動手段13により撮像素子6を赤外光に合焦する位置に移動させる。
可視光の合焦位置は赤外光の合焦位置よりも短いため、図4(A)の可視光を撮像するときの撮像光学系3と撮像素子6との距離f1は、図4(B)の赤外光を撮像するときの撮像光学系3と撮像素子6との距離f2よりも短くなる。
【0027】
このように本実施形態の撮像装置1は、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子6を用い、光路上に配置されるカットフィルタ10、11の切り替え、及び撮像光学系3と撮像素子6との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系3及び撮像素子6により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0028】
また、赤外カットフィルタ10を光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系3と撮像素子6との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系3を透過した可視光を撮像素子6上に精度良く結像させることが可能となる。
さらに、可視光カットフィルタ11を光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系3と撮像素子6との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系3を透過した赤外光を撮像素子6上に精度良く結像させることが可能となる。
【0029】
図5は信号処理手段21の機能ブロック図を含む撮像装置1の全体ブロック図である。
図5に示すように撮像装置1は、撮像素子6からの出力信号を処理する信号処理手段21と、信号処理手段21に接続された記憶手段28及び表示手段30とをさらに備えていることが好ましい。
信号処理手段21は、可視/赤外判定部22と、画像情報生成部23と、温度情報生成部24と、画像/温度重畳部25と、タイミング生成部26とを含む。なお、信号処理手段21は、例えばMPU(マイクロプロセッサ)で構成される。MPUが制御手段20を含み、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13の制御を行なうようにしてもよい。
【0030】
可視/赤外判定部22は、撮像素子6から出力された電気信号が、可視光を受光して出力された信号であるか、赤外光を受光して出力された信号であるかを判定する。
画像情報生成部23は、可視光を受光して出力された電気信号(以下、可視光信号と称する)に基づいて画像情報を生成する。具体的には、可視光信号のRGB値に対してAWB(オートホワイトバランス)処理、AE(露光制御)処理、色補正処理、補間処理、エッジ強調処理等の画像処理のうち選択された処理を行って画像情報を生成する。ただし、撮像素子6にAE及びAWBの情報を戻して制御する場合もある。
温度情報生成部24は、赤外光を受光して出力された電気信号(以下、赤外光信号と称する)に基づいて温度情報を生成する。具体的には、赤外光信号から各画素の輝度値(出力レベル)又は光量を求め、これに基づいて被写体温度を算出して温度情報を生成する。
【0031】
記憶手段28には、画像情報生成部23で生成された画像情報と、温度情報生成部24で生成された温度情報とが、フレーム画像上の同一位置で関連付けて格納されている。なお、画像情報と温度情報は、それぞれを別テーブルに格納してこれらをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けてもよいし、画像情報にフレーム画像上の同一位置の温度情報を埋め込んで同じテーブルに格納してもよい。
【0032】
画像/温度重畳部25は、温度情報生成部24で生成された温度情報のうち選択された温度情報を、画像情報生成部23で生成された画像情報に重畳する。画像情報に重畳する温度情報は、入力手段31により指定されたフレーム画像上の位置の温度情報であってもよく、これにより操作者が所望するときに必要な温度情報のみを画面表示することが可能となる。また、予め温度のしきい値を設定しておき、このしきい値を超える温度情報を画像情報に重畳してもよく、これにより温度情報を自動で画面表示することが可能となる。
【0033】
表示手段30は、主として画像情報を表示し、必要に応じて温度情報を画像情報に重畳して表示するか、または画像情報から温度情報に切り替えて温度情報のみを表示する。
図6は画像情報に温度情報を重畳させて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。図6(a)に示すように、1画素のデータ構造は例えば8bitの画像情報41と8bitの温度情報42とで構成され、(b)に示すように、表示手段30により画像情報41に温度情報42を埋め込んで表示する。このときの表示手段30の画面例を図7及び図8に示す。図7は、温度情報47を数値で画像情報46上に表示した例である。図8は、温度情報48を色で画像情報46上に表示した例である。これは、例えば高温部分は赤、低温部分は青等のように温度に応じた色を予め設定しておき、表示する温度情報を色に変換して画像情報46に重ね合わせたものである。
【0034】
図9は画像情報と温度情報を切り替えて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。図6(a)に示すように、1画素のデータ構造は例えば8bitの画像情報41と8bitの温度情報42とで構成され、このうち画像情報41を用いて表示手段30に画像43を表示し、必要に応じて表示画面を切り替えて温度44を表示する。
【0035】
タイミング生成部26は、撮像素子6で光電変換された電気信号を検出するタイミング信号(クロックパルス)を生成する。このタイミング信号によりフレームタイミングが決定される。撮像素子6は、例えばフレームタイミング毎に光電変換が行なわれ電気信号が出力されるように制御される。好適には、可視域で1秒あたり30枚のフレームレートで、赤外域で1秒あたり30枚のフレームレートで出力することが好ましい。これは30フレーム/秒以上であると、人の目には画像がスムーズに見えるためである。
また、本実施形態では図10に示すように、タイミング生成部26で生成されたタイミング信号に対応させて、制御手段20が第1の駆動手段12及び第2の駆動手段13を制御する駆動信号を出力することが好ましい。これにより、撮像時に、カットフィルタ10、11と合焦位置が適切に設定された状態で撮像を行なうことができる。なお、制御手段20は、数フレームごとに第1の駆動手段10及び第2の駆動手段11が同期して駆動するように制御してもよい。
【0036】
次に、図11を参照して、信号処理手段21のフローを説明する。
撮像素子6からの出力信号は信号処理手段21に入力され(S1)、相関二重サンプリング、A/D変換等が行なわれた後に、可視/赤外判定部22により、入力された電気信号が可視光信号であるか赤外光信号であるかを判定する(S2)。可視/赤外判定部22で可視光信号であると判定された場合には、画像情報生成部23により可視光信号のRGB値に対してAWB処理、AE処理等の可視光信号処理を行って(S3)、画像情報を生成する(S4)。赤外光信号であると判定された場合には、温度情報生成部24により赤外光信号の輝度値又は光量に基づいて被写体温度を算出する赤外光信号処理を行って(S5)、温度情報を生成する(S6)。
【0037】
画像情報生成部23で生成された画像情報、及び温度情報生成部24で生成された温度情報は、それぞれフレーム画像上の同一位置で関連付けられて記憶手段28に蓄積される。
記憶手段28に蓄積された画像情報又は温度情報は必要に応じて取り出され、表示手段30に表示される。例えば、信号処理手段21に予めしきい値を設定しておき、温度情報がしきい値よりも大きい場合に(S7)、画像/温度重畳部25により画像情報と温度情報とを重畳し(S8)、表示手段30に画面表示する(S9)。
本実施形態によれば、可視光にて撮像した画像に、赤外光にて撮像して得られる温度情報を重畳して表示させることにより、実際に人間が見ているのと同等のカラー画像を観察しながら、同時に被写体の温度情報を認識可能である。この撮像装置1は、車載カメラや監視カメラ等に用いられ、例えば画像内の人物や動物等の生物を認識する際にも好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 撮像装置
2 レンズホルダ
3 撮像光学系
5 基板
6 撮像素子
10 赤外カットフィルタ
11 可視光カットフィルタ
12 第1の駆動手段
13 第2の駆動手段
20 制御手段
21 信号処理手段
22 可視/赤外判定部
23 画像情報生成部
24 温度情報生成部
25 画像/温度重畳部
26 タイミング生成部
28 記憶手段
30 表示手段
31 入力手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とを撮像可能とした撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像光学系により結像させた被写体像を撮像素子で撮像し、被写体像を画像として出力する撮像装置が、例えば、車載カメラ、デジタルスチルカメラ、携帯端末用小型カメラ又は画像検査装置等の各種撮像装置に広く用いられている。このような撮像装置に用いられる撮像素子は、一般的に可視光のみではなく赤外光にも感度を有するものが多いため、赤外カットフィルタにより赤外成分を除去し、可視光のみを撮像素子に入射させて、良好な色再現性のカラー画像を得るようにしていた。
【0003】
一方、上記したように可視光を利用した撮像装置は主にカラー画像を撮像するものであるが、赤外光を利用した撮像装置も種々提案、実用化されており、これは温度計測に多く用いられている。例えば特許文献1(特開2009−150842号公報)には、赤外線レンズを透過した赤外線を遠赤外線撮像素子で受光し、遠赤外線撮像素子から出力された信号に基づいて被写体像の温度分布を検出する装置が開示されている。
【0004】
さらに、赤外光と可視光の両方を利用した撮像装置が特許文献2(特開2007−36831号公報)に開示されている。この撮像装置は、可視光用撮像素子と赤外光用撮像素子と、入射光を可視光用撮像素子又は赤外光用撮像素子へ切り替える反射ミラーとを備えている。これは、例えば車載カメラにおいて、それぞれの撮像素子で撮像された可視光画像と赤外光画像とを合成することにより、夜間走行時においても鮮明な画像を得ることを可能としている。
【0005】
また、特許文献3(特開2007−93652号公報)には、レンズを保持するレンズ枠を、可視光に対して合焦させる第1合焦位置と、赤外光に対して合焦させる第2合焦位置とに切り替える切り替え機構を備えたレンズ駆動装置が開示されており、これにより焦点距離が異なる可視光と赤外光の両方を鮮明に撮像することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−150842号公報
【特許文献2】特開2007−36831号公報
【特許文献3】特開2007−93652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、赤外光と可視光の両方を利用した撮像装置として、特許文献2及び特許文献3に開示される撮像装置は、例えば車載カメラにおいて昼間及び夜間おいて被写体像の鮮明な画像を得ることを目的としており、被写体の温度を測定するものではなかった。
また、特許文献2は、赤外光と可視光の切り替えに反射ミラーを利用しており、撮像光学系と撮像素子がそれぞれ2つずつ必要となるため製品コストが増大し、さらに装置サイズも大きくなってしまう。
【0008】
特許文献3は、可視光の合焦位置と赤外光の合焦位置とに切り替えるレンズ駆動装置の発明であり、撮像装置にこの駆動装置を装備するのみでは、可視光の合焦位置に合わせた撮像素子に赤外光も同時に入射し、同様に赤外光の合焦位置に合わせた撮像素子に可視光も同時に入射してしまうため、これが外乱となって画像の精度が低下するという問題があった。
そのため本発明においては、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とを精度良く撮像することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る撮像装置は、撮像光学系と、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、前記撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子と、前記撮像光学系からの前記被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ及び可視光カットフィルタと、前記選択された一のカットフィルタを前記光路上に配置させる第1の駆動手段と、前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段と、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを同期して制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子を用い、光路上に配置されるカットフィルタの切り替え、及び撮像光学系と撮像素子との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0011】
また、前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記赤外カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記可視光に合焦する位置に移動させることが好ましい。
このように、赤外カットフィルタを光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した可視光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【0012】
さらに、前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記可視光カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記赤外光に合焦する位置に移動させることが好ましい。
このように、可視光カットフィルタを光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した赤外光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記撮像素子で画像を撮像するフレームタイミングに対応させて前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを駆動することが好ましい。
撮像素子はフレームタイミング毎に光電変換された電気信号が出力されるように制御されており、このフレームタイミングに対応させて第1の駆動手段と第2の駆動手段とを駆動し、可視光と赤外光とを交互に撮像することにより、撮像時に、カットフィルタと合焦位置が適切に設定された状態で撮像を行なうことができる。なお、第1の駆動手段及び第2の駆動手段は、数フレームごとに同期して駆動するように制御してもよい。
【0014】
また、前記赤外カットフィルタを透過した可視光を受光した前記撮像素子の出力信号を画像情報として取り込み、前記可視光カットフィルタを透過した赤外光を受光した前記撮像素子の出力信号を温度情報として取り込み、前記画像情報と前記温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積する信号処理手段をさらに備えることが好ましい。
このように、可視光から得られる画像情報と、赤外光から得られる温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積することにより、同一位置において異なる2種類の情報(画像情報と温度情報)を保持することができ、これらの情報を適宜出力したり、いずれか一方又は両方の情報を用いて信号処理する際に有用である。なお、画像情報と温度情報は、それぞれを別テーブルに格納してこれらをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けてもよいし、画像情報に同一位置の温度情報を埋め込んで同じテーブルに格納してもよい。
【0015】
さらに、前記フレーム画像上の位置を指定する入力手段と、前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記入力手段で指定された位置の前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段とをさらに備えることが好ましい。
このように、入力手段で指定されたフレーム画像上の位置の温度情報を画像情報に重畳して表示することにより、操作者が所望するときに必要な温度情報のみを画像上に表示することが可能となる。
【0016】
さらにまた、前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記温度情報が予め設定されたしきい値を超える場合に前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段をさらに備えることが好ましい。
このように、予め設定されたしきい値を超える場合にのみ温度情報を画像情報に重畳して表示することにより、温度情報を自動で画面表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子を用い、光路上に配置されるカットフィルタの切り替え、及び撮像光学系と撮像素子との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系及び撮像素子により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0018】
また、赤外カットフィルタを光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した可視光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
さらに、可視光カットフィルタを光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系と撮像素子との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系を透過した赤外光を撮像素子上に精度良く結像させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の変形例である撮像装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】カットフィルタを示す図である。
【図4】駆動手段の動作を説明する図で、(A)可視光を撮像するときの側面図、(B)は赤外光を撮像するときの側面図である。
【図5】信号処理手段の機能ブロック図を含む撮像装置の全体ブロック図である。
【図6】画像情報に温度情報を重畳させて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。
【図7】表示画面の具体例を示す図である。
【図8】表示画面の他の具体例を示す図である。
【図9】画像情報と温度情報を切り替えて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。
【図10】駆動手段を制御するタイミングチャートを示す図である。
【図11】信号処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す側面図で、図2は図1の変形例である撮像装置の概略構成を示す側面図で、図3はカットフィルタを示す図で、図4は駆動手段の動作を説明する図である。
本発明の実施形態に係る撮像装置1は、主に、撮像光学系3と、撮像素子6と、赤外カットフィルタ10と、可視光カットフィルタ11と、赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11のうちいずれか一方を光路上に配置する第1の駆動手段12と、撮像光学系3と撮像素子6との距離を変位させる第2の駆動手段13と、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御する制御手段20とを備える。
【0022】
撮像光学系3は、一又は複数のレンズを含み、光軸上に配置されてレンズホルダ2に保持されている。
赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11は、撮像光学系3からの被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される。
第1の駆動手段12は、赤外カットフィルタ10及び可視光カットフィルタ11のうちいずれか一方を、撮像光学系3からの被写体像の光路上に配置する。第1の駆動手段12の具体的構成は、例えば図1及び図2に示されるように、赤外カットフィルタ10と可視光カットフィルタ11とを同一平面が形成されるように連結し、この連結したカットフィルタ10、11が第1の駆動手段12により回転することで、いずれか一方のカットフィルタが光路上に配置されるように構成する。また、別の構成例として、図3示すように連結した赤外カットフィルタ10と可視光カットフィルタ11とを第1の駆動手段12により図中矢印の方向に直線上をスライド移動させるようにしてもよい。なお、カットフィルタ10、11及び第1の駆動手段12の構成は上記した例に限定されるものではない。
【0023】
撮像素子6は、基板5上に配置されており、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有している。すなわち、撮像素子6は前記波長領域の光を検出可能となっている。なお、撮像素子6の分光感度は、赤外光の波長領域の全てを含む必要はなく、温度測定に必要とされる温度帯に対応した波長領域を含んでいればよい。好適には、撮像素子6は、400〜700nmの可視域と0.5〜2.0μm程度の赤外域とを含む波長領域に分光感度を有しているとよい。例えば、可視域と赤外域とを含む波長領域に分光感度を有する撮像素子6として、InGaAsを用いた量子型検出素子のフォトダイオードが知られており、この中でも0.5〜1.7μmで高い分光感度を有する短波長高感度タイプのInGaAsフォトダイオードが好適に用られる。このフォトダイオードにより可視光を用いて画像を撮像可能で、且つ赤外光を用いて200℃程度まで温度測定できる。また、撮像素子6の種類は特に限定されるものではないが、例えばCCDおよびCMOSなどが用いられる。
【0024】
第2の駆動手段13は、撮像光学系3及び撮像素子6の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる。図1には、撮像素子6側を移動させる場合を示しており、図2には撮像光学系3側を移動させる場合を示している。第1の駆動手段12又は第2の駆動手段13は、例えば圧電素子、モータ等のアクチュエータが用いられる。なお、図示していないが、撮像光学系3と撮像素子6との間に第2の駆動手段13を配置して、所望の焦点距離となるように撮像光学系3と撮像素子6との両方を移動させてもよい。
【0025】
制御手段20は、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とを同期して制御するための制御信号を生成し、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13とに送信する。図4を参照して、制御手段20により制御される駆動手段の動作を説明する。ここでは一例として、第2の駆動手段13が撮像素子6側に設けられた場合を示している。
図4(A)は可視光を撮像するときの側面図である。可視光を撮像するときは、第1の駆動手段12により赤外カットフィルタ10を光路上に配置し、第2の駆動手段13により撮像素子6を可視光に合焦する位置に移動させる。
【0026】
一方、図4(B)は赤外光を撮像するときの側面図である。赤外光を撮像するときは、第1の駆動手段12により可視光カットフィルタ11を光路上に配置し、第2の駆動手段13により撮像素子6を赤外光に合焦する位置に移動させる。
可視光の合焦位置は赤外光の合焦位置よりも短いため、図4(A)の可視光を撮像するときの撮像光学系3と撮像素子6との距離f1は、図4(B)の赤外光を撮像するときの撮像光学系3と撮像素子6との距離f2よりも短くなる。
【0027】
このように本実施形態の撮像装置1は、可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有する撮像素子6を用い、光路上に配置されるカットフィルタ10、11の切り替え、及び撮像光学系3と撮像素子6との距離の切り替えを同期して制御する構成としているため、単一の撮像光学系3及び撮像素子6により可視光と赤外光とをそれぞれ精度良く撮像することが可能となる。したがって、製品コストを安価にでき、また装置サイズも大きくならない。
【0028】
また、赤外カットフィルタ10を光路上に配置することにより赤外光を遮断し、且つ撮像光学系3と撮像素子6との距離を可視光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系3を透過した可視光を撮像素子6上に精度良く結像させることが可能となる。
さらに、可視光カットフィルタ11を光路上に配置することにより可視光を遮断し、且つ撮像光学系3と撮像素子6との距離を赤外光に対して合焦する距離とすることにより、撮像光学系3を透過した赤外光を撮像素子6上に精度良く結像させることが可能となる。
【0029】
図5は信号処理手段21の機能ブロック図を含む撮像装置1の全体ブロック図である。
図5に示すように撮像装置1は、撮像素子6からの出力信号を処理する信号処理手段21と、信号処理手段21に接続された記憶手段28及び表示手段30とをさらに備えていることが好ましい。
信号処理手段21は、可視/赤外判定部22と、画像情報生成部23と、温度情報生成部24と、画像/温度重畳部25と、タイミング生成部26とを含む。なお、信号処理手段21は、例えばMPU(マイクロプロセッサ)で構成される。MPUが制御手段20を含み、第1の駆動手段12と第2の駆動手段13の制御を行なうようにしてもよい。
【0030】
可視/赤外判定部22は、撮像素子6から出力された電気信号が、可視光を受光して出力された信号であるか、赤外光を受光して出力された信号であるかを判定する。
画像情報生成部23は、可視光を受光して出力された電気信号(以下、可視光信号と称する)に基づいて画像情報を生成する。具体的には、可視光信号のRGB値に対してAWB(オートホワイトバランス)処理、AE(露光制御)処理、色補正処理、補間処理、エッジ強調処理等の画像処理のうち選択された処理を行って画像情報を生成する。ただし、撮像素子6にAE及びAWBの情報を戻して制御する場合もある。
温度情報生成部24は、赤外光を受光して出力された電気信号(以下、赤外光信号と称する)に基づいて温度情報を生成する。具体的には、赤外光信号から各画素の輝度値(出力レベル)又は光量を求め、これに基づいて被写体温度を算出して温度情報を生成する。
【0031】
記憶手段28には、画像情報生成部23で生成された画像情報と、温度情報生成部24で生成された温度情報とが、フレーム画像上の同一位置で関連付けて格納されている。なお、画像情報と温度情報は、それぞれを別テーブルに格納してこれらをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けてもよいし、画像情報にフレーム画像上の同一位置の温度情報を埋め込んで同じテーブルに格納してもよい。
【0032】
画像/温度重畳部25は、温度情報生成部24で生成された温度情報のうち選択された温度情報を、画像情報生成部23で生成された画像情報に重畳する。画像情報に重畳する温度情報は、入力手段31により指定されたフレーム画像上の位置の温度情報であってもよく、これにより操作者が所望するときに必要な温度情報のみを画面表示することが可能となる。また、予め温度のしきい値を設定しておき、このしきい値を超える温度情報を画像情報に重畳してもよく、これにより温度情報を自動で画面表示することが可能となる。
【0033】
表示手段30は、主として画像情報を表示し、必要に応じて温度情報を画像情報に重畳して表示するか、または画像情報から温度情報に切り替えて温度情報のみを表示する。
図6は画像情報に温度情報を重畳させて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。図6(a)に示すように、1画素のデータ構造は例えば8bitの画像情報41と8bitの温度情報42とで構成され、(b)に示すように、表示手段30により画像情報41に温度情報42を埋め込んで表示する。このときの表示手段30の画面例を図7及び図8に示す。図7は、温度情報47を数値で画像情報46上に表示した例である。図8は、温度情報48を色で画像情報46上に表示した例である。これは、例えば高温部分は赤、低温部分は青等のように温度に応じた色を予め設定しておき、表示する温度情報を色に変換して画像情報46に重ね合わせたものである。
【0034】
図9は画像情報と温度情報を切り替えて表示する場合の(a)データ構造の一例と、(b)表示画面の一例を示す図である。図6(a)に示すように、1画素のデータ構造は例えば8bitの画像情報41と8bitの温度情報42とで構成され、このうち画像情報41を用いて表示手段30に画像43を表示し、必要に応じて表示画面を切り替えて温度44を表示する。
【0035】
タイミング生成部26は、撮像素子6で光電変換された電気信号を検出するタイミング信号(クロックパルス)を生成する。このタイミング信号によりフレームタイミングが決定される。撮像素子6は、例えばフレームタイミング毎に光電変換が行なわれ電気信号が出力されるように制御される。好適には、可視域で1秒あたり30枚のフレームレートで、赤外域で1秒あたり30枚のフレームレートで出力することが好ましい。これは30フレーム/秒以上であると、人の目には画像がスムーズに見えるためである。
また、本実施形態では図10に示すように、タイミング生成部26で生成されたタイミング信号に対応させて、制御手段20が第1の駆動手段12及び第2の駆動手段13を制御する駆動信号を出力することが好ましい。これにより、撮像時に、カットフィルタ10、11と合焦位置が適切に設定された状態で撮像を行なうことができる。なお、制御手段20は、数フレームごとに第1の駆動手段10及び第2の駆動手段11が同期して駆動するように制御してもよい。
【0036】
次に、図11を参照して、信号処理手段21のフローを説明する。
撮像素子6からの出力信号は信号処理手段21に入力され(S1)、相関二重サンプリング、A/D変換等が行なわれた後に、可視/赤外判定部22により、入力された電気信号が可視光信号であるか赤外光信号であるかを判定する(S2)。可視/赤外判定部22で可視光信号であると判定された場合には、画像情報生成部23により可視光信号のRGB値に対してAWB処理、AE処理等の可視光信号処理を行って(S3)、画像情報を生成する(S4)。赤外光信号であると判定された場合には、温度情報生成部24により赤外光信号の輝度値又は光量に基づいて被写体温度を算出する赤外光信号処理を行って(S5)、温度情報を生成する(S6)。
【0037】
画像情報生成部23で生成された画像情報、及び温度情報生成部24で生成された温度情報は、それぞれフレーム画像上の同一位置で関連付けられて記憶手段28に蓄積される。
記憶手段28に蓄積された画像情報又は温度情報は必要に応じて取り出され、表示手段30に表示される。例えば、信号処理手段21に予めしきい値を設定しておき、温度情報がしきい値よりも大きい場合に(S7)、画像/温度重畳部25により画像情報と温度情報とを重畳し(S8)、表示手段30に画面表示する(S9)。
本実施形態によれば、可視光にて撮像した画像に、赤外光にて撮像して得られる温度情報を重畳して表示させることにより、実際に人間が見ているのと同等のカラー画像を観察しながら、同時に被写体の温度情報を認識可能である。この撮像装置1は、車載カメラや監視カメラ等に用いられ、例えば画像内の人物や動物等の生物を認識する際にも好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 撮像装置
2 レンズホルダ
3 撮像光学系
5 基板
6 撮像素子
10 赤外カットフィルタ
11 可視光カットフィルタ
12 第1の駆動手段
13 第2の駆動手段
20 制御手段
21 信号処理手段
22 可視/赤外判定部
23 画像情報生成部
24 温度情報生成部
25 画像/温度重畳部
26 タイミング生成部
28 記憶手段
30 表示手段
31 入力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と、
可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、前記撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子と、
前記撮像光学系からの前記被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ及び可視光カットフィルタと、
前記選択された一のカットフィルタを前記光路上に配置させる第1の駆動手段と、
前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段と、
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを同期して制御する制御手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記赤外カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記可視光に合焦する位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記可視光カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記赤外光に合焦する位置に移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記撮像素子で画像を撮像するフレームタイミングに対応させて前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記赤外カットフィルタを透過した可視光を受光した前記撮像素子の出力信号を画像情報として取り込み、前記可視光カットフィルタを透過した赤外光を受光した前記撮像素子の出力信号を温度情報として取り込み、前記画像情報と前記温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積する信号処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記フレーム画像上の位置を指定する入力手段と、
前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記入力手段で指定された位置の前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段とをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記温度情報が予め設定されたしきい値を超える場合に前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項1】
撮像光学系と、
可視光から赤外光までの波長を含む波長領域に分光感度を有し、前記撮像光学系を透過して結像する被写体像を撮像する撮像素子と、
前記撮像光学系からの前記被写体像の光路上に、退避可能にいずれか一方が選択配置される赤外カットフィルタ及び可視光カットフィルタと、
前記選択された一のカットフィルタを前記光路上に配置させる第1の駆動手段と、
前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を、可視光に合焦する位置又は赤外光に合焦する位置に移動させる第2の駆動手段と、
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを同期して制御する制御手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記赤外カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記可視光に合焦する位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の駆動手段により前記可視光カットフィルタを前記光路上に配置するときに、前記第2の駆動手段により前記撮像光学系及び前記撮像素子の少なくとも一方の位置を前記赤外光に合焦する位置に移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記撮像素子で画像を撮像するフレームタイミングに対応させて前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記赤外カットフィルタを透過した可視光を受光した前記撮像素子の出力信号を画像情報として取り込み、前記可視光カットフィルタを透過した赤外光を受光した前記撮像素子の出力信号を温度情報として取り込み、前記画像情報と前記温度情報とをフレーム画像上の同一位置ごとに関連付けて蓄積する信号処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記フレーム画像上の位置を指定する入力手段と、
前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記入力手段で指定された位置の前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段とをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記信号処理手段に蓄積された前記画像情報を表示するとともに、前記温度情報が予め設定されたしきい値を超える場合に前記温度情報を前記画像情報に重畳して表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−97264(P2011−97264A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247870(P2009−247870)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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