説明

操作装置

【課題】操作者に対する操作荷重が小さく、且つ、コストを安くできる操作装置を提供する。
【解決手段】操作者がダイヤル1を回転操作したとき、その初段階でスイッチ4が応動することにより、モータが起動されて、操作対象の被回転体が、ダイヤル1を操作した操作者の力とモータの駆動力とで回転される。よって、そのモータの駆動力が合わさる分、操作荷重を小さくでき、操作者の力が少なくて済む。又、モータを起動するのに、従来の電気式のもののような高価な電子制御装置を必要とせずにそれができるので、コストを安くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤル式の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両の空調操作に供する操作装置としては、機械式のものと電気式のものとが存在する。そのうち、機械式のものは、操作部材を操作する操作者の手の力のみで、伝達部材を介し、最終的にプーリなど所定の被回転体を回転させるものであり(例えば特許文献1〜3参照)、他方、電気式のものは、操作者の操作に基づいて発せられる電気信号で、電子制御装置を介し、モータを作動させ、このモータの駆動力で上記被回転体を回転させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−96579号公報
【特許文献2】特開2005−96580号公報
【特許文献3】特開2005−96581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のもののうち、機械式のものは、コストを安くできるものの、操作者に対する操作荷重が大きく、操作に力を要する。一方、電気式のものは、操作者に対する操作荷重が小さく、操作に力を要しないものの、コストが高くつく。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、操作者に対する操作荷重が小さく、且つ、コストを安くできる操作装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の操作装置は、ダイヤルと、このダイヤルと回転を共にするように設けられ、その回転方向に有効な係合部を有する第1の回転伝達体と、この第1の回転伝達体の前記係合部と対応する被係合部を有し、前記第1の回転伝達体が回転されたときに、所定の回転角度位置で該被係合部に前記係合部が係合して前記第1の回転伝達体の回転が伝えられる第2の回転伝達体と、前記第1の回転伝達体が前記所定の回転角度位置まで回転されるときの過程で、該第1の回転伝達体の回転に応動するスイッチと、この応動したスイッチにより起動されるモータと、回転した前記第1の回転伝達体を復帰させるスプリングとを具備し、操作対象の被回転体を、前記第2の回転伝達体と前記モータとから与えられる回転力により回転させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、操作者がダイヤルを回転操作したとき、その初段階でスイッチが応動することにより、モータが起動されて、操作対象の被回転体が、ダイヤルを操作した操作者の力とモータの駆動力とで回転される。よって、そのモータの駆動力が合わさる分、操作荷重を小さくでき、操作者の力は少なくて済む。又、モータを起動するのに、従来の電気式のもののような高価な電子制御装置を必要とせずにそれができるので、コストを安くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示す縦断正面図
【図2】操作状態を示す縦断正面図その1
【図3】操作状態を示す縦断正面図その2
【図4】操作状態を示す縦断正面図その3
【図5】分解斜視図
【図6】スイッチの構成を示す概略構成図
【図7】電気的構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を車両の空調操作用、特には車室内に対する空気の吹出しモード設定用の操作装置に適用して、その一実施例(一実施形態)につき、図面を参照して説明する。
まず、図5には、装置の全体を分解状態で示しており、左側より順に、ダイヤル1、スプリング2、第1の回転伝達体3、スイッチ4、導電ケーブル5、第2の回転伝達体6、ピニオン7、モータ8、回路ユニット9、プーリユニット10を図示している。
【0010】
そのうち、ダイヤル1は、前側に小径部1aを有し、後側に大径部1bを有する2段円筒キャップ状のもので、大径部1bの周壁の複数か所(例えば4か所)に弾性片11をそれぞれその両側を切離して形成し、該弾性片11のそれぞれに連結孔12を形成している。
【0011】
スプリング2は、捩りコイルスプリングであり、中央部に円形の巻回部2aを有し、その左側に一端部2bを有し、右側に他端部2cを有している。
第1の回転伝達体3は、リング状のもので、外周部に前記ダイヤル1の連結孔12と対応する連結突起13を有し、前面(ダイヤル1側)の左右両側部にばね掛け突起14,15を有している。更に、この第1の回転伝達体3の内周部の下部には、中心方向に突出する突起でもって第1の係合部16と第2の係合部17とを左右に分けて形成している。
【0012】
スイッチ4は、詳細には図6に示すように、スイッチケース4aの内部に、可動コンタクト18aと、この可動コンタクト18aが選択接触する固定コンタクト18b,18cとから成る切換接点18を内蔵し、スイッチケース4aの内部から上方にアクチェータ4bを突出させたもので、そのアクチェータ4bの矢印A,Bで示す傾動に応じて、切換接点18が可動コンタクト18aを中立状態から同じく矢印A,Bで示すように動かし、該可動コンタクト18aの、固定コンタクト18b,18cとの接触を切り換えるようになっている。
【0013】
導電ケーブル5は、この場合、フレキシブルフラットケーブルであり、充分な可撓性を有すると共に、充分な長さを有している。
【0014】
第2の回転伝達体6は、ほゞ円盤状のもので、中心部に径方向の断面形状が非円形の孔を有する軸筒部19を有し、該軸筒部19の左右両側にばね挟み突起20,21を有している。又、この第2の回転伝達体6の下部には、凹部22を形成して、その左側の段部を前記第1の回転伝達体3の第1の係合部16と対応する第1の被係合部23として機能させ、右側の段部を前記第1の回転伝達体3の第2の係合部17と対応する第2の被係合部24として機能させるようにしている。そして更に、凹部22の中央部には小凹部25を形成しており、そのほか、該第2の回転伝達体6の外周部にはギヤ歯26を形成している。
【0015】
ピニオン7は、上記第2の回転伝達体6のギヤ歯26と噛合する歯を有しており、モータ8の回転軸8aに取付けるようになっている。
【0016】
回路ユニット9は、回路基板27の表側にコネクタ28を実装し、裏側にコネクタ29を実装して成るもので、そのほか、図7に示すモータ駆動回路30を表側で組成している。なお、モータ駆動回路30には、入力側に前記スイッチ4の切換接点18を接続しており、出力側にモータ8を接続している。
【0017】
プーリユニット10は、ユニットケース10aの内部に操作対象の被回転体であるプーリ(図示せず)を内蔵しており、そのプーリの回転軸31と、プーリに巻き付けたケーブル32とをユニットケース10a内から外部に導出している。なお、プーリの回転軸31は前記第2の回転伝達体6の軸筒部19の孔と同形(径方向の断面形状が非円形)に形成しており、ケーブル32には、この場合、車両の車室内に対する空気の吹出しモードを設定するダンパ(図示せず)を先端部に連結している。
【0018】
以上の構成で、図1に示すように、プーリユニット10のプーリの回転軸31を、第2の回転伝達体6の軸筒部19の孔に嵌入してそれらが回転を共にするようにし、モータ8の回転軸8aに取付けたピニオン7を、第2の回転伝達体6のギヤ歯26に噛合させている。
【0019】
第1の回転伝達体3の第1の係合部16と第2の係合部17との間には、スイッチ4を配置して固定し、第1の回転伝達体3の内部に第2の回転伝達体6を位置させて、該第2の回転伝達体6の小凹部25内にスイッチ4のアクチェータ4bを位置させている。
【0020】
第2の回転伝達体6の軸筒部19にはスプリング2の巻回部2aを嵌着して、軸筒部19とばね挟み突起20,21との間に該スプリング2の巻回部2aを圧入固定し、スプリング2の一端部2bをばね掛け突起14に掛け、他端部2cをばね掛け突起15に掛けている。
【0021】
スイッチ4には導電ケーブル5の一端部を接続し、該導電ケーブル5の他端部を回路ユニット9のコネクタ28に接続している。なお、回路ユニット9のコネクタ29には、車体側の導電ケーブル(図示せず)を接続するようになっている。
【0022】
そして、ダイヤル1には、連結孔12に第1の回転伝達体3の連結突起13を係合させることによって、該第1の回転伝達体3を取付け、それらが回転を共にするようにしている。
【0023】
次に、上記構成のものの作用を述べる。
図1は操作前の状態を示しており、この状態から操作者がダイヤル1を手で持って回転操作すると、図2に示すように、第1の回転伝達体3が、スプリング2の一端部2bをばね掛け突起14により押して、該一端部2b側をばね挟み突起20の部分からたわませつつ、ダイヤル1と共に回転される(図はダイヤル1及び第1の回転伝達体3を時計回りの矢印C方向に回転操作した状態を示している)。これにより、スイッチ4が、第2の回転伝達体6の小凹部25から脱して、アクチェータ4bを凹部22の奥部(小凹部25の開口縁部)により矢印A方向に傾動される。
【0024】
その結果、スイッチ4は、図6に示した可動コンタクト18aが矢印A方向に動かされ、固定コンタクト18bに接触する。それにより、モータ駆動回路30ではモータ8を矢印C方向に回転させる通電状態となり、モータ8がその通電で起動され、矢印C方向に回転する。そして、そのモータ8の回転により、ピニオン7から第2の回転伝達体6のギヤ歯26へとモータ8の駆動力が伝達され、第2の回転伝達体6が回転される。この第2の回転伝達体6の回転により、第2の回転伝達体6の軸筒部19とプーリユニット10のプーリ回転軸31との嵌合構造を介して図示しないプーリが回転され、ケーブル32を巻き引き始める。
【0025】
ダイヤル1を回転操作した操作者がその回転操作を進めると、第1の回転伝達体3の第1の係合部16が、第2の回転伝達体6の第1の被係合部23に当たる。この第1の係合部16が第1の被係合部23に当たった位置は、第1の回転伝達体3の所定の回転角度位置であり、上記スイッチ4は、この第1の回転伝達体3が所定の回転角度位置まで回転されるときの過程で、該第1の回転伝達体3の回転に上述のごとく応動したことになる。
【0026】
この状態で、更に操作者によるダイヤル1の回転操作を進めると、図3に示すように、第1の係合部16が第1の被係合部23を押して第2の回転伝達体6を更に矢印C方向に回転させる。従って、このとき、第2の回転伝達体6は、操作者の手による力と上記モータ8の駆動力とによって回転されるものであり、その回転によって図示しないプーリが更に回転され、ケーブル32を更に巻き引く。
【0027】
この後、操作者によるダイヤル1の回転操作をやめると、図4に示すように、これまでたわませられ続けたスプリング2の一端部2b側が復元し、その復元力により、第1の回転伝達体3が、ばね掛け突起14を該スプリング2の一端部2bにより押し戻されて、その復元力の分、復帰回転される。これにより、スイッチ4が、第2の回転伝達体6の小凹部25に戻され、凹部22の奥部によるアクチェータ4bの傾動が解除される。
【0028】
その結果、スイッチ4は、前記可動コンタクト18aが復帰され、固定コンタクト18bから離間する中立状態に戻る。それにより、モータ駆動回路30ではモータ8の通電を断つ状態となり、モータ8が断電されて回転を停止する。従って、そのモータ8による第2の回転伝達体6が回転も停止され、図示しないプーリの回転も停止されて、ケーブル32の巻き引きが終了される。
【0029】
なお、この後、ダイヤル1の戻し回転操作、並びに前記操作前状態からの反時計回り(矢印C方向とは反対の方向)の回転操作は、上述の各動作と対称的に行われるもので、説明を割愛する。
【0030】
このように上記構成のものでは、操作者がダイヤル1を回転操作したとき、その初段階でスイッチ4が応動することにより、モータ8が起動されて、操作対象の被回転体であるプーリが、ダイヤル1を操作した操作者の力とモータ8の駆動力とで回転される。よって、そのモータ8の駆動力が合わさる分、操作荷重を小さくでき、操作者の力は少なくて済む。又、モータ8を起動するのに、従来の電気式のもののような高価な電子制御装置を必要とせず、モータ駆動回路30を要する程度で、それができるので、コストを安くすることも所望にできる。
【0031】
なお、本発明は車両の空調操作用の操作装置に限られず、他のダイヤル式操作装置としても広く適用して実施することができる。
このほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0032】
図面中、1はダイヤル、2はスプリング、3は第1の回転伝達体、4はスイッチ、6は第2の回転伝達体、8はモータ、10はプーリユニット(被回転体)、16は第1の係合部、17は第2の係合部、23は第1の被係合部、24は第2の被係合部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤルと、
このダイヤルと回転を共にするように設けられ、その回転方向に有効な係合部を有する第1の回転伝達体と、
この第1の回転伝達体の前記係合部と対応する被係合部を有し、前記第1の回転伝達体が回転されたときに、所定の回転角度位置で該被係合部に前記係合部が係合して前記第1の回転伝達体の回転が伝えられる第2の回転伝達体と、
前記第1の回転伝達体が前記所定の回転角度位置まで回転されるときの過程で、該第1の回転伝達体の回転に応動するスイッチと、
この応動したスイッチにより起動されるモータと、
回転した前記第1の回転伝達体を復帰させるスプリングとを具備し、
操作対象の被回転体を、前記第2の回転伝達体と前記モータとから与えられる回転力により回転させるようにしたことを特徴とする操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−3588(P2012−3588A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139311(P2010−139311)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】