説明

操向装置

【課題】クローラ式走行装置の旋回操作の際の操作性を向上させることができる操向装置を提供する。
【解決手段】除雪機100のサイドクラッチとサイドブレーキ207L・207Rにはそれぞれの「入」「切」を行う操作体を備え、該操作体を操作するサイドクラッチアーム314L・314Rと旋回操作を行う旋回レバー303との間を、選択操作機構を介して連動連結する操向装置において、前記選択操作機構は、前記旋回レバー303の回動支持部に設け、該旋回レバー303を左右方向及び前後方向の二方向に回動可能支持するとともに、左右回動部に前記サイドクラッチを「入」「切」操作するワイヤ305L・305Rを接続し、前後回動部にサイドブレーキ207L・207Rを「入」「切」操作するワイヤ306L・306Rを接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドクラッチ及びサイドブレーキの操作力を低減する操向装置技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、2本のサイドクラッチレバーを操作してクローラ式走行装置を旋回させていた。例えば、特許文献1に記載の技術の如くである。
特許文献1に開示された技術は、左サイドクラッチレバーで左旋回を、右サイドクラッチレバーで右旋回を、それぞれ行うものである。
左サイドクラッチレバー及び右サイドクラッチレバーは、一の軸を中心に回動するよう構成されており、例えば、クローラ式走行装置を左旋回させる場合は、左サイドクラッチレバーを手前に倒して回動させる。これによって、まず左サイドクラッチが「入」状態から「切」状態になり、さらに左サイドクラッチレバーを同一方向に倒し続けることにより、左サイドクラッチの「切」状態が維持されつつ、左サイドブレーキが「切」状態から「入」状態になる。つまり、左クラッチワイヤ及び左ブレーキワイヤを同一方向に引っ張り続けると、左サイドクラッチが「入」状態から「切」状態になり、その後、左サイドブレーキが「切」状態から「入」状態になるように構成されている。
このように、左サイドクラッチが「切」状態になった後も、左クラッチワイヤはさらに同一方向(左サイドクラッチレバーが倒れる方向)に引っ張り続けられるため、左ブレーキワイヤを引っ張るのに必要な操作荷重の他に、左ブレーキワイヤを引っ張るのに必要な操作荷重が操作者にそのまま掛かることになる。このため、旋回操作の際、操作性が悪化する点で不利であった。
【特許文献1】特開2006−233644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、クローラ式走行装置の旋回操作の際の操作性を向上させることができる操向装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
第1発明の操向装置は、クローラ式走行装置の左右の走行駆動軸と変速装置との間に、左右のサイドクラッチと、左右のサイドブレーキを有し、該サイドクラッチとサイドブレーキの間にそれぞれの「入」「切」を行う摺動体を備え、該摺動体を摺動操作するサイドクラッチアームと旋回操作を行う旋回レバーとの間を、選択操作機構を介して連動連結する操向装置において、前記選択操作機構は、前記旋回レバーの回動支持部に設け、該旋回レバーを左右方向及び前後方向の二方向に回動可能支持するとともに、左右回動部に前記サイドクラッチを「入」「切」操作するワイヤを接続し、前後回動部にサイドブレーキを「入」「切」操作するワイヤを接続したことを特徴とする。
【0006】
第2発明の操向装置は、請求項1に記載の発明において、前記選択操作機構は、旋回レバーの回動を案内する旋回レバーガイドを具備し、該旋回レバーガイドには、左右一側のサイドクラッチを「入」「切」操作可能とする第一溝部と、左右一側のサイドクラッチを「切」の状態で、左右一側のサイドブレーキを「入」操作可能な第二溝部と、左右他側のサイドクラッチを「切」の状態で、左右他側のサイドブレーキを「入」操作可能な第三溝部と、を備えるガイド溝が構成された。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
第1発明及び第2発明によれば、クローラ式走行装置の旋回操作の際の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施例に係る除雪機100の全体構成について説明する。
【0010】
なお、本発明に係る操向装置は本実施例で説明する除雪機100に限らず、他のクローラ式走行装置にも利用可能である。
【0011】
図1に示すように、除雪機100は、機体前部に配設された除雪部110と、除雪部110の後方に配設された駆動部120と、駆動部120の下方に配設された走行部130と、駆動部120後方の機体後部に配設された運転操作部140と、で構成されている。
【0012】
除雪部110では、機体フレーム101の前部に連設されたブロワハウジング111にブロワ112が内設され、ブロワハウジング111の前部にオーガハウジング113が連接されて、これに回転軸が左右方向となるように掻込オーガ114が内設され、またブロワハウジング111の上部に投雪シュータ115が水平旋回可能に立設されている。
【0013】
除雪部110は、掻込オーガ114により雪をオーガハウジング113中央に掻き込んでこれをブロワハウジング111に送り、ブロワ112で掻込オーガ114からの雪をブロワハウジング111の上方へ跳ね飛ばし、投雪シュータ115にてブロワ112からの雪を任意の投雪方向に案内して排出することで、積雪を除去することができるように構成されている。
【0014】
駆動部120では、機体フレーム101に変速装置200が内設され、機体フレーム101の上部にディーゼルエンジン(以下、エンジンと表記する。)121が載置されている。エンジン121の出力軸122に嵌装されたプーリーから、除雪部110及び変速装置200にそれぞれベルト式動力伝達機構を介してエンジン121の動力が伝達される。そして、除雪部110に伝達されたエンジン121動力により、ブロワ112および掻込オーガ114が回転駆動されるように構成されている。また、変速装置200に伝達された動力は、変速装置200としてのHST式無段変速装置により変速されたのち、走行駆動軸134L・134Rに伝達されることにより走行駆動軸134L・134Rに嵌装された駆動スプロケット133L・133Rが回転駆動されるように構成されている。
【0015】
走行部130では、機体フレーム101の前下部に従動スプロケット132L・132Rを左右両側に嵌装した前輪軸131L・131Rが回動可能に横架支承され、機体フレーム101後下部に駆動スプロケット133L・133Rを左右両側に嵌装した走行駆動軸134L・134Rが回動可能に横架支承されている。そして、左右それぞれの駆動スプロケット133L・133Rと従動スプロケット132L・132Rとに無端クローラベルト135L・135Rが巻回されてクローラが形成され、この左右一対のクローラにてクローラ式走行装置が構成されている。
【0016】
運転操作部140では、前記機体フレーム101の左右両側後部より斜め後上方に操作ハンドル141が突出され、操作ハンドル141には操作ボックス142が配設されている。操作ボックス142には、エンジン121から走行部130への動力を断接するための走行クラッチレバー143と、エンジン121から除雪部110への動力を断接するための除雪クラッチレバー144と、走行部130の走行速度を変速する変速装置200を操作するための走行変速レバー145と、除雪機100を左右に旋回させるための旋回レバー303と、エンジン121を停止させるための停止ボタン513及び停止レバー514と、投雪シュータ115を左右に旋回させるための旋回操作手段等が設けられている。
【0017】
走行クラッチレバー143は、操作ハンドル141を握りながらでも握れるように設けられ、操作ハンドル141とともに握られているときに作動し、放すと停止するデッドマンクラッチレバーとなっている。また、走行クラッチレバー143と除雪クラッチレバー144は、いずれも操作ハンドル141の握部近傍に配置されており、走行クラッチレバー143と除雪クラッチレバー144はいずれもクラッチOFF操作位置に付勢され、走行クラッチレバー143をONにした状態で除雪クラッチレバー144をONにすると、除雪クラッチONの操作位置でロックすることができるように構成されている。
【0018】
変速装置200について説明する。
【0019】
図2に示すように、変速装置200は、HST入力軸201と、HST202と、HST出力軸203と、ギア204と、減速ギア205と、ファイナルギア206と、爪部206a・206a・212a・212aと、サイドブレーキ207L・207R等を具備する。
【0020】
出力軸122に嵌装されたプーリーを介してHST入力軸201に入力されたエンジン121の動力は、HST202にて回転速度及び回転方向の制御が行われた後、HST出力軸203からギア204→減速ギア205→ファイナルギア206へと伝達された後、爪部206a・206a・212a・212aを介して左走行駆動軸134L及び右走行駆動軸134Rに伝達される。
【0021】
以下では、本発明に係る実施の一形態である除雪機100の旋回機構について説明する。
【0022】
除雪機100の旋回機構とは、除雪機100を左旋回又は右旋回させるための機構である。
【0023】
図2、図3、図4及び図5において、除雪機100の旋回操作部の選択操作機構は、図4に示すように、第一軸301と、第二軸302と、旋回レバー303と、左ブレーキ用カム部材304Lと、右ブレーキ用カム部材304Rと、左クラッチワイヤ305Lと、右クラッチワイヤ305Rと、左ブレーキワイヤ306Lと、右ブレーキワイヤ306R等を具備する。
【0024】
旋回レバー303は、第一軸301に左右回動可能に取り付けられており、第一軸301を中心として回動する。
【0025】
第一軸301は、第一支持部材307に左右回動可能に取り付けられている。
第一支持部材307は、第一軸301に対して垂直方向に設けられた第二軸302に取り付けられている。
第二軸302は、第二支持部材309に上下回動可能に取り付けられている。
第二支持部材309は、機体に固設された基盤308に取り付けられている。
旋回レバー303を下方に移動させると、旋回レバー303、第一軸301、第一支持部材307及び第二軸302が、第二軸302を中心に一体的に回動する(図5参照)。
つまり、旋回レバー303は、第一軸301に対して垂直な第二軸302を中心として回動する。
【0026】
左クラッチワイヤ305Lは、一端側が旋回レバー303の中途部に取り付けられた取付部材310に取り付けられ、他端側は基盤308に取り付けられたガイド311Lを挿通して変速装置200側へ延設されて左サイドクラッチアーム314Lに連結されている。該左サイドクラッチアーム314Lは中央部が枢支軸314Laに回動可能に枢支され、先端側は操作体となる左摺動体212Lに嵌合されている。
【0027】
左サイドクラッチ機構は、前記左摺動体212Lの機体左右中央側に爪部212aが形成され、ファイナルギア206の左右両側にも前記爪部212aと噛み合う爪部206aが形成され、左摺動体212Lは左走行駆動軸134Lに外嵌したバネ208Lにより機体左右中央側に付勢されている。よって、旋回レバー303を操作しない中立(直進)時には爪部212aと爪部206aが噛み合い左走行駆動軸134Lにエンジン121の動力が伝達される状態(左サイドクラッチ「入」状態)になっている。旋回レバー303を左側に回動すると左クラッチワイヤ305Lが引っ張られて、爪部212aと爪部206aとの噛み合いが外れて、左走行駆動軸134Lにエンジン121の動力が伝達されない状態になる(左サイドクラッチが「切」状態になる)よう構成されている。
【0028】
右クラッチワイヤ305Rは、一端側が旋回レバー303の中途部に取り付けられた取付部材310に取り付けられ、他端側は基盤308に取り付けられたガイド311Rを挿通して変速装置200側へ延設されて右サイドクラッチアーム314Rに連結されている。該右サイドクラッチアーム314Rは中央部が枢支軸314Raに回動可能に枢支され、先端側は右摺動体212Rに嵌合されている。
【0029】
右サイドクラッチ機構は、前記右摺動体212Rの機体左右中央側に爪部212aが形成され、ファイナルギア206の左右両側にも前記爪部212aと噛み合う爪部206aが形成され、右摺動体212Rは右走行駆動軸134Rに外嵌したバネ208Rにより機体左右中央側に付勢されている。よって、旋回レバー303を操作しない中立(直進)時には爪部212aと爪部206aが噛み合い右走行駆動軸134Rにエンジン121の動力が伝達される状態(右サイドクラッチ「入」状態)になっている。旋回レバー303を右側に回動すると右クラッチワイヤ305Rが引っ張られて、爪部212aと爪部206aとの噛み合いが外れて、右走行駆動軸134Rにエンジン121の動力が伝達されない状態になる(右サイドクラッチが「切」状態になる)よう構成されている。
【0030】
旋回レバー303は、左サイドクラッチ及び右サイドクラッチが「入」状態になる位置であるニュートラル位置を有し、旋回レバー303が前記ニュートラル位置から第一軸301を中心に左方向に回動する場合、左クラッチワイヤ305Lが旋回レバー303の回動力により引っ張られて左サイドクラッチは「入」状態から「切」状態になり、右クラッチワイヤ305Rは引っ張られず右サイドクラッチは「入」状態を維持し、旋回レバー303が前記ニュートラル位置から第一軸301を中心に右方向に回動する場合、右クラッチワイヤ305Rが旋回レバー303の回動力により引っ張られて右サイドクラッチは「入」状態から「切」状態になり、左クラッチワイヤ305Lは引っ張られず左サイドクラッチは「入」状態を維持するよう、取付部材310の形状及び旋回レバー303への取り付け位置、左クラッチワイヤ305L及び右クラッチワイヤ305Rの長さ並びにガイド311L・311Rの基盤308への取り付け位置は、設定されている。
具体的には、図4に示すように、取付部材310は、四角形状のプレートであり、左端側に右クラッチワイヤ305Rが、右端側に左クラッチワイヤ305Lが、それぞれ接続されている。ガイド311Rは基盤308の左端側に、ガイド311Lは基盤308の右端側に、それぞれ取り付けられている。
本実施例においては、図4の旋回レバー303が2点鎖線の位置にある場合を前記ニュートラル位置とする。
【0031】
このように、旋回レバー303は、左方向に回動したときの位置である左サイドクラッチが「切」状態に及び右サイドクラッチが「入」状態になる位置と、前記ニュートラル位置である左サイドクラッチ及び右サイドクラッチが「入」状態になる位置と、右方向に回動したときの位置である左サイドクラッチが「入」状態に及び右サイドクラッチが「切」状態になる位置と、の間で回動するよう構成されている。
【0032】
図4及び図5に示すように、左ブレーキ用カム部材304L及び右ブレーキ用カム部材304Rは側面視略L字状のプレート状の部材である。左ブレーキ用カム部材304Lは中途部が第二軸302の左端側に、右ブレーキ用カム部材304Rは中途部が第二軸302の右端側に、それぞれ上下回転可能に取り付けられている。
旋回レバー303の中途部下端面にはパイプ状またはロッド状の部材で平面視略V字状に構成した連動部材317が設けられている。
【0033】
旋回レバー303が中立位置のとき、平面視及び側面視において左右のブレーキ用カム部材304L・304Rと重複しないように配設され、旋回レバー303が、第一軸301を中心として左方向に回動すると、連動部材317の下方に左ブレーキ用カム部材304Lの後端側が位置(平面視で重複)するように配置し、旋回レバー303が、第一軸301を中心として右方向に回動すると、連動部材317の下方に右ブレーキ用カム部材304Rの後端側が位置(平面視で重複)するように配置されている。なお、旋回レバー303を左または右に回動した時に、旋回レバー303に取り付けられた連動部材317等を介して旋回レバー303が間接的に左または右ブレーキ用カム部材304L・304Rに平面視で重複して当接可能に配置した場合も、旋回レバー303が左または右ブレーキ用カム部材304L・304Rに当接可能位置に配置した場合に含まれるものとする。
【0034】
このように構成すると、左または右ブレーキ用カム部材304L・304Rの上端面が連動部材317の下端面と当接して、旋回レバー303が第二軸302を中心として下方向に回動する場合、左または右ブレーキ用カム部材304L・304Rは、連動部材317を介して旋回レバー303の回動力により、第二軸302を中心として旋回レバー303と一体的に回動する。
【0035】
なお、旋回レバー303が中立位置において、連動部材317が同時に左ブレーキ用カム部材304Lと右ブレーキ用カム部材304Rとに接触して、左ブレーキ用カム部材304Lと右ブレーキ用カム部材304Rが同時に回動することがないよう、連動部材317と左ブレーキ用カム部材304Lと右ブレーキ用カム部材304Rとは所定間隔を開けて設けられている。但し、実際には、旋回レバー303が中立位置において、レバーガイド400により旋回レバー303は第二軸302を中心として下方向に回動することはできない。
【0036】
左ブレーキワイヤ306Lは、一端側が左ブレーキ用カム部材304Lの前端側に連結され、他端側が基盤308に取り付けられたガイド313Lを介して、左ブレーキ用アーム315Lの一端に連結されている。該左ブレーキ用アーム315Lは中央部が枢支軸315Laに回動可能に枢支され、他端側は操作体となる左ブレーキ用アーム215Lに回動可能に連結されている。該左ブレーキ用アーム215Lは中央部が枢支軸215Laに回動可能に枢支され、先端側は左サイドブレーキ207Lと当接可能な位置に配置されている。
左サイドブレーキ207Lは、湿式多板ブレーキで構成され、ミッションケース210側に係止される複数の摩擦板と、左走行駆動軸134L上にスプライン嵌合される複数の摩擦板が交互に配置されて、前記複数の摩擦板同士に摩擦が生じない状態になる(左ブレーキ207Lが「切」状態になる)よう、バネ(不図示)で付勢されており、左ブレーキ用アーム315Lが引っ張られることによりにより左ブレーキ用アーム315Lを介して左ブレーキ用アーム215Lが回動し、これによって左ブレーキ用アーム215Lの先端側が前記摩擦板に当接して、摩擦板同士が圧接されて、左サイドブレーキ207Lが「入」状態になり、左走行駆動軸134Lが制動されて、左走行駆動軸134Lの回転を停止するよう構成されている。
【0037】
右ブレーキワイヤ306Rは、一端側が右ブレーキ用カム部材304Rの前端側に連結され、他端側が基盤308に取り付けられたガイド313Rを介して、右ブレーキ用アーム(不図示)の一端に連結されている。
右サイドブレーキ207Rは、湿式多板ブレーキで構成され、ミッションケース210側に係止される複数の摩擦板と、右走行駆動軸134R上にスプライン嵌合される複数の摩擦板が交互に配置されて、前記複数の摩擦板同士に摩擦が生じない状態になる(右ブレーキ207Rが「切」状態になる)よう、バネ(不図示)で付勢されており、右ブレーキ用アーム315Rが引っ張られることにより、左ブレーキ用アーム315Lが引っ張られたときと略同様に右ブレーキ用アーム(不図示)等を介して前記摩擦板同士が圧接されて、右サイドブレーキ207Rが「入」状態になり、右走行駆動軸134Rが制動されて、右走行駆動軸134Rの回転を停止するよう構成されている。
【0038】
左旋回するために旋回レバー303をレバーガイド400に沿って左側へ回動すると、緩旋回となり、右サイドクラッチが「入」状態、及び、右サイドブレーキ207Rが「切」状態(非制動状態)のままで、左サイドクラッチが「切」状態となり、このとき、左ブレーキ用カム部材304Lは、連動部材317の下方に位置し当接可能な位置となる。そして、急旋回するために、更にレバーガイド400に沿って後側へ回動すると、旋回レバー303は第二軸302を中心として下方向に回動し、連動部材317の下端面が左ブレーキ用カム部材304Lの後上端面と当接して、左ブレーキ用カム部材304Lは旋回レバー303と一体的に回動して、左ブレーキワイヤ306Lが引っ張られて左サイドブレーキ207Lが「切」状態から「入」状態になる。このとき、左サイドクラッチは「切」状態を、右サイドクラッチは「入」状態を、右サイドブレーキ207Rは「切」状態を、それぞれ維持するよう、左ブレーキワイヤ306Lの長さ及びガイド313Lの基盤308への取り付け位置は、それぞれ設定されている。
【0039】
右旋回するために旋回レバー303をレバーガイド400に沿って右側へ回動すると、緩旋回となり、左サイドクラッチが「入」状態、及び、左サイドブレーキ207Lが「切」状態(非制動状態)のままで、右サイドクラッチが「切」状態となり、このとき、右ブレーキ用カム部材304Rは、連動部材317の下方に位置し当接可能な位置となる。そして、急旋回するために、更にレバーガイド400に沿って後側へ回動すると、旋回レバー303は第二軸302を中心として下方向に回動し、連動部材317の下端面が右ブレーキ用カム部材304Rの後上端面と当接して、右ブレーキ用カム部材304Rは旋回レバー303と一体的に回動して、右ブレーキワイヤ306Rが引っ張られて右サイドブレーキ207Rが「切」状態から「入」状態になる。このとき、右サイドクラッチは「切」状態を、左サイドクラッチは「入」状態を、左サイドブレーキ207Lは「切」状態を、それぞれ維持するよう、右ブレーキワイヤ306Rの長さ及びガイド313Rの基盤308への取り付け位置は、設定されている。
なお、旋回レバー303及びアーム315はバネ等の弾性体により中立方向に付勢され、手を放す(操作力を解除する)と、サイドクラッチ「入」、サイドブレーキ207L・207R「切」側となるようにしている。
【0040】
このように、左右のサイドクラッチの操作とサイドブレーキ207L・207Rの操作とをそれぞれ異なる方向に旋回レバー303を回動させて行っているので、従前の旋回機構のように左右のサイドクラッチを「切」状態にした後も、サイドブレーキ207L・207Rを「入」状態にするために、左右のサイドクラッチを「切」状態にしたときと同じ方向に旋回レバー303を回動し続けて、左右のサイドクラッチが「切」状態であるにもかかわらず、クラッチワイヤ305L・305Rを引っ張るための荷重がそのまま掛かり続けることを回避できる。これによって、操作荷重を軽減でき、旋回操作の際の操作性が向上する。
また、左右のサイドクラッチの操作とサイドブレーキ207L・207Rの操作とをそれぞれ異なる方向に旋回レバー303を回動させることにより、2アクションで行っているので、サイドブレーキ207L・207Rを操作するタイミングが判りやすい。
【0041】
また、図4、図5及び図6に示すように、旋回レバー303を案内するためにガイド溝を有するレバーガイド400が設けられている。
【0042】
図6に示すように、前記ガイド溝は、平面視略U字状の形状をしており、第一溝部401と、第二溝部402と、第三溝部403と、で構成される。
【0043】
第一溝部401内では、旋回レバー303は、左サイドブレーキ207L及び右サイドブレーキ207Rを「切」状態にそれぞれ維持しつつ、左サイドクラッチが「切」状態に及び右サイドクラッチが「入」状態になる位置と、左サイドクラッチ及び右サイドクラッチが「入」状態になる位置と、左サイドクラッチが「入」状態に及び右サイドクラッチが「切」状態になる位置と、の間で回動するよう構成されている。
【0044】
第二溝部内402では、旋回レバー303は、左サイドクラッチを「切」状態に、右サイドクラッチを「入」状態に及び右サイドブレーキ207Lを「切」状態に、それぞれ維持しつつ、左サイドブレーキ206Lが「切」状態になる位置と、「入」状態になる位置と、の間で回動するよう構成されている。
【0045】
第三溝部403内では、旋回レバー303は、左サイドクラッチを「入」状態に、右サイドクラッチを「切」状態に及び左サイドブレーキ207Lを「切」状態に、それぞれ維持しつつ、右サイドブレーキ206Rが「切」状態になる位置と、「入」状態になる位置と、の間で回動するよう構成されている。
【0046】
第一溝部401と第二溝部402とは、旋回レバー303が連続して移動できるよう連通されており、第一溝部401と第二溝部402が連通している箇所である連通部404に旋回レバー303が位置する場合、旋回レバー303は、左サイドクラッチが「切」状態に、右サイドクラッチが「入」状態に並びに左サイドブレーキ207L及び右サイドブレーキ207Rが「切」状態になる位置にある。
【0047】
第一溝部401と第三溝部403とは、旋回レバー303が連続して移動できるよう連通されており、第一溝部401と第三溝部403が連通している箇所である連通部405に旋回レバー303が位置する場合、旋回レバー303は、左サイドクラッチが「入」状態に、右サイドクラッチが「切」状態に並びに左サイドブレーキ207L及び右サイドブレーキ207Rが「切」状態になる位置にある。
【0048】
このように構成すると、前記レバー溝に沿って旋回レバー303を移動させるだけで除雪機100の左旋回又は右旋回が行えるので、円滑な旋回操作が可能になる。
【0049】
以下では、本実施例に係る実施の一形態であるエンジン121の停止機構について説明する。
【0050】
本実施例のエンジン121停止機構は、エンジン121を機械的に停止させる装置及び電気的に停止させる装置を具備している。
【0051】
図7に示すように、エンジン121の停止機構は、エンジン121の停止部に配置される停止手段502と、該停止手段502の操作部に連結される連動部材501と、該連動部材501に連結される電気的操作手段503と機械的操作手段504を具備する。
停止手段502は、ディーゼルエンジンの場合にはガバナに設ける燃料供給を停止する部材であり、ラック等である。例えば、連動部材501がラックと連動連結され、停止時には連動部材501を回動すると、ラックを燃料供給停止側に摺動する。ガソリンエンジンの場合には点火装置の点火を停止する部材である。例えば、連動部材501を回動すると、点火装置がアースされる。本実施例ではディーゼルエンジンについて説明する。
電気的操作手段503は操作具としてスイッチまたは停止ボタン513と、アクチュエーターとしてソレノイド523を備え、該ソレノイド523のロッド523aが前記連動部材501と連結される。なお、アクチュエーターはモーターやシリンダ等であってもよい。また、前記ロッド523aはエンジンが停止して電力が供給されないときにはバネ等の付勢部材により燃料供給停止側に摺動しており、エンジンを作動させる時は電力を供給することでバネの付勢力に抗してロッド523aが摺動され、燃料供給側に摺動するようにして、フェールセーフとなるようにしている。
こうして、停止ボタンをONすると、ソレノイド523に電力が供給されなくなり、バネの付勢力によりソレノイド523のロッド523aが後退し停止機構502により燃料供給が停止されて、エンジン121が停止するよう構成されている。
また、機械的操作手段504は操作具として停止レバー514と、前記連動部材501と連結するワイヤ584を備える。停止レバー514は弾性体としてバネ564により死点越えの位置で停止位置と作動位置に保持するように付勢されている。但し、ワイヤ584の代わりにリンクにより連結する構成であってもよい。
つまり、この停止レバー514は回動支点軸524により回動可能に支持され、作動位置と死点までの回動距離が短くなるようにストッパなどで設定しておくことで、非常時に停止レバー514を少し動かすだけで、エンジンを停止させることができる。
こうして、停止レバー514をバネ564の付勢力に抗して回動すると、ワイヤ584が引っ張られることにより連動機構501が操作されて、停止機構502により燃料供給が停止して、エンジン121が停止するよう構成されている。
【0052】
このように構成すると、断線、ヒューズ切れ並びにモータ類及び制御装置類の破損等のため電気的操作手段503等の電装機構による停止が出来ない場合でも、機械的操作手段504を用いてエンジン121を停止させることが出来る。これによって、確実にエンジン121を停止させることができる。
また、停止レバー514を時計回りに回動させるだけの1アクションでエンジン121を停止させることができるので、円滑に停止させることができる。
【実施例1】
【0053】
以下では、携帯タンクを用いた燃料供給機構の実施例1について説明する。
【0054】
図8に示すように、エンジンを覆うボンネットは、側部カバー602・603と上部カバー608より構成され、側部カバー602は着脱可能とし、上部カバー608は一側が側部カバー603の上部に枢支されて上方に回動して開閉可能としている。
燃料タンク604は、ボンネット内に収納され、本実施例ではエンジン121上部に配置されている。
携帯タンク台605は、カバー603の内側に配置したフレーム606に支持されている。
【0055】
格納姿勢とは、携帯タンク台605をカバー603の内側に格納した時の姿勢である。本実施例における格納姿勢のときの携帯タンク台605は、上部カバー608を閉めた状態でもボンネット内に収納されるよう形成されている。
【0056】
載置姿勢とは、携帯タンク台605を載置する姿勢である引き出して水平状態として、ポンプ等を用いて携帯タンクの燃料を供給口601より燃料タンク604に供給するときに、携帯タンクを携帯タンク台605に載置するための姿勢である。
【0057】
フレーム606の上部に左右方向に受部606aが形成され、該受部606aの右側に枢支軸607により携帯タンク台605の前板及び後板の左右一側(本実施例では右側)を枢支している。また、枢支軸607の上下両側でフレーム606と携帯タンク台605との間に弾性体としてバネが介装され、携帯タンク台605を載置姿勢615に回動した位置と格納姿勢625した位置でバネが死点越えとなって保持できるように付勢している。
こうして、携帯タンク台605を枢支軸607を中心に上方へ回動した位置では、格納姿勢となり、ボンネット内に収納できる。このとき、携帯タンク台605の右側面がフレーム606の側面に当接してストッパとなっている。携帯タンク台605を枢支軸607を中心に左方へ回動した位置では、載置姿勢となって、携帯タンク台605の裏面が受部606aの上面に当接して、携帯タンク台605は水平に保持される。
【実施例2】
【0058】
以下では、携帯タンクを用いた燃料供給機構の実施例2について説明する。
【0059】
本実施例2で示す携帯タンクを用いた燃料供給機構は、実施例1で示した携帯タンク台を用いた燃料供給機構に一部装置類を追加・削除したものである。
以下では、実施例1で示した携帯タンク台を用いた燃料供給機構との変更点について説明する。
【0060】
図9に示すように、携帯タンク台706は、パイプ部材を四角形状に折り曲げて構成され、前後中央には適宜支持桟を左右方向に配置して、携帯タンクを載置できるようにしている。フレーム606の上部には、回動支持部材775が前後方向に設けた支点軸745により枢支されている。回動支持部材775は側面視「コ」字状に構成され、回動支持部材775の閉じ側の板部と支点軸745との間に携帯タンク台706のパイプ部を摺動自在に挿入している。
また、フレーム606の上部には受部780が左方に突設して設けられ、該受部780の左部よりストッパピン785が前後方向に突設されている。そして、前記支点軸745の下部位置に平面視「L」字状のガイド部材765が一端をフレーム606に固設され、ガイド部材765内部に携帯タンク台706のパイプ部が摺動自在に挿入されている。
このような構成において、格納姿勢の時には、携帯タンク台706はフレーム606に沿って上下方向に位置され、携帯タンク台706のパイプ部が回動支持部材775とガイド部材765に支持されている。
載置姿勢にする場合には、携帯タンク台706を支持部材775とガイド部材765に沿って上方に持ち上げて、下パイプが支持部材775に当接すると、支点軸745を中心に側方へ回動し、ストッパピン785に当接させる。このとき携帯タンク台706は水平の位置で保持される。こうして、携帯タンク台706を載置姿勢にすることができる。
【実施例3】
【0061】
以下では、携帯タンクを用いた燃料供給機構の実施例3について説明する。
【0062】
本実施例3で示す携帯タンクを用いた燃料供給機構は、実施例1及び実施例2で示した携帯タンクを用いた燃料供給機構に一部装置類を追加・削除したものである。
以下では、実施例1及び実施例2で示した携帯タンクを用いた燃料供給機構との変更点について説明する。
【0063】
図10に示すように、携帯タンク台605は、平板の前部及び後部を直角に折り曲げて前板と後板を形成し、該前板及び後板に長孔605a・605aを長手方向(図10において上下方向)に開口している。また、前板及び後板の左側下部に左端から所定距離離れた位置に係止凹部605b・606bを形成している。この所定距離は載置姿勢における後述するストッパピン616の位置に合わせた距離である。
前記フレーム606の上部には左右水平方向に受台部606aを形成し、後面視略T字状に構成している。該受台部606aの右側に枢支ピンまたは枢支軸607を前後方向に配置して、前記長孔605a・605aに挿通して携帯タンク台605を枢支している。また、受台部606aの左側下部にストッパピン616・616を前後方向に突設している。
このような構成において、作業時や格納時等ボンネットを閉じた通常の状態では、携帯タンク台605はフレーム606に沿って上下方向に位置させて格納姿勢となっている。そして、燃料を補給するときには、上部カバー608を開けた状態で、携帯タンク台605を上方に引き上げる。このとき、長孔605aが枢支軸607にガイドされる。そして、長孔605aの下端が枢支軸607に当接すると、枢支軸607を支点として携帯タンク台605を側方へ回動し、水平状態とすると、係止凹部605bはストッパピン616に係止されて、携帯タンク台605は水平状態に保持され、載置姿勢となる。但し、フック等を用いて携帯タンク台605とフレーム606のストッパピン616との間を固定する構成とすることもできる。
上記の載置姿勢の状態で、携帯タンク台605・706の上面は燃料タンク604の上面と略同じか、或いは、若干高い位置に設定する。そして、この携帯タンク台605上に燃料補給用の携帯タンクを載置することで、簡易ポンプにより容易に燃料タンク604に燃料を補給することができる。
【0064】
実施例1・2・3のように構成すると、作業者は載置姿勢にして携帯タンクを携帯タンク台605・706に載置して両手で燃料供給作業が行えるので、作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例に係る除雪機の全体構成を示した側面図。
【図2】変速装置の平面断面図。
【図3】変速装置の一部を示す平面断面図。
【図4】旋回レバーの平面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】レバーガイドの平面図。
【図7】エンジンの停止機構の概略構成図。
【図8】本発明の実施例1を示す携帯タンクを用いた燃料供給機構の側面図。
【図9】本発明の実施例2を示す携帯タンクを用いた燃料供給機構の側面図。
【図10】本発明の実施例3を示す携帯タンクを用いた燃料供給機構の側面図。
【符号の説明】
【0066】
100 除雪機
134L・134R 走行駆動軸
200 変速装置
207L・207R サイドブレーキ
212L・212R 摺動体
215L 左ブレーキ用アーム
303 旋回レバー
314L・314R サイドクラッチアーム
305L・305R ブレーキワイヤ
306L・306R クラッチブレーキワイヤ
400 レバーガイド
401 第一溝部
402 第二溝部
403 第三溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式走行装置の左右の走行駆動軸と変速装置との間に、左右のサイドクラッチと、左右のサイドブレーキを有し、該サイドクラッチとサイドブレーキにはそれぞれの「入」「切」を行う操作体を備え、該操作体を操作するサイドクラッチアームと旋回操作を行う旋回レバーとの間を、選択操作機構を介して連動連結する操向装置において、
前記選択操作機構は、前記旋回レバーの回動支持部に設け、該旋回レバーを左右方向及び前後方向の二方向に回動可能支持するとともに、左右回動部に前記サイドクラッチを「入」「切」操作するワイヤを接続し、前後回動部にサイドブレーキを「入」「切」操作するワイヤを接続したことを特徴とする操向装置。
【請求項2】
前記選択操作機構は、旋回レバーの回動を案内する旋回レバーガイドを具備し、
該旋回レバーガイドには、左右一側のサイドクラッチを「入」「切」操作可能とする第一溝部と、
左右一側のサイドクラッチを「切」の状態で、左右一側のサイドブレーキを「入」操作可能な第二溝部と、
左右他側のサイドクラッチを「切」の状態で、左右他側のサイドブレーキを「入」操作可能な第三溝部と、を備えるガイド溝が構成された、
請求項1に記載の操向装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−143325(P2009−143325A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321259(P2007−321259)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】