説明

攪拌判定方法及び分析装置

【課題】容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって容器に保持された液体の攪拌の良否を簡易、かつ、確実に判定することが可能な攪拌判定方法及び分析装置を提供する。
【解決手段】容器7に取り付けた表面弾性波素子8が発生する音波によって容器に保持された液体を攪拌し、反応した反応液の光学的特性を測定することにより分析を行う分析装置の攪拌判定方法及び分析装置。攪拌判定方法は、液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で液体の温度を測定する温度測定工程と、測定した液体の温度の温度上昇率をもとに液体の攪拌の良否を判定する判定工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌判定方法及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、いわゆるキャリーオーバーを回避するため、反応容器に保持された液体を音波発生素子が発生する音波によって非接触で攪拌するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この分析装置は、反応容器に分注された検体と試薬とを音波発生素子を駆動して発生する音波によって攪拌し、反応させている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−119125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の分析装置は、音波発生素子が正常に作動していても、反応容器から剥離している等、音波発生素子と反応容器との間の接着不良や音波発生素子に水や弾性体が付着していると、発生した音波が容器に保持された液体に伝搬せず、液体の攪拌が不十分、或いは攪拌できなくなる攪拌不良が発生することがある。但し、分析装置は、反応容器が反応ホイールに保持され、外見からは攪拌の良否が分からないうえ、電源から供給した駆動信号の反射によって信号線の断線や端子部分における接続不良は検出できるが、攪拌不良を駆動信号の反射から判定することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって容器に保持された液体を攪拌の良否を簡易、かつ、確実に判定することが可能な攪拌判定方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の攪拌判定方法は、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を攪拌し、反応した反応液の光学的特性を測定することにより分析を行う分析装置の攪拌判定方法であって、前記液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で前記液体の温度を測定する温度測定工程と、測定した前記液体の温度の温度上昇率をもとに前記液体の攪拌の良否を判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の攪拌判定方法は、上記の発明において、前記音波発生手段が前記容器の底面に取り付けられている場合、前記温度測定工程は、前記液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で前記液体の温度を測定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の攪拌判定方法は、上記の発明において、前記判定工程は、前記液体の液面近傍における温度上昇率RSが前記液体の底面近傍における温度上昇率RBに対して0.9RB≦RS≦1.1RBの場合に前記液体の攪拌を良と判定し、0.9RB>RSの場合に攪拌を不良と判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の攪拌判定方法は、上記の発明において、前記判定工程において攪拌不良と判定された容器がある場合、当該容器を使用した前記検体の分析結果に警告を付すと共に、当該容器を表示する表示工程を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の攪拌判定方法は、上記の発明において、前記判定工程において同一の容器について2回攪拌不良と判定された場合、当該容器の使用禁止を設定する制御工程を含むことを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を攪拌し、反応した反応液の光学的特性を測定することにより分析を行う分析装置において、前記液体の温度を測定する温度測定手段と、前記液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で測定した温度の温度上昇率をもとに前記液体の攪拌の良否を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段が前記容器の底面に取り付けられている場合、前記温度測定手段は、前記液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で前記液体の温度を測定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、前記液体の液面近傍における温度上昇率RSが前記液体の底面近傍における温度上昇率RBに対して0.9RB≦RS≦1.1RBの場合に前記液体の攪拌を良と判定し、0.9RB>RSの場合に攪拌を不良と判定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記判定手段によって攪拌不良と判定された容器がある場合、当該容器を使用した前記検体の分析結果に警告を付すと共に、当該容器を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記判定手段によって同一の容器について2回攪拌不良と判定された場合、当該容器の使用禁止を設定する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の攪拌判定方法は、液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で液体の温度を測定する温度測定工程と、測定した液体の温度の温度上昇率をもとに液体の攪拌の良否を判定する判定工程とを含み、本発明の分析装置は、液体の温度を測定する温度測定手段と、前記液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で測定した温度の温度上昇率をもとに前記液体の攪拌の良否を判定する判定手段とを備えるので、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって容器に保持された液体の攪拌の良否を簡易、かつ、確実に判定することが可能な攪拌判定方法及び分析装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌判定方法及び分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、自動分析装置の構成を示すブロック図である。図3は、図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して攪拌装置の概略構成と共に示す図である。
【0018】
自動分析装置1は、図1〜図3に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応ホイール6及び試薬テーブル13が互いに離隔してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられ、反応容器7を有する攪拌部20を備えている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応ホイール6との間に検体分注機構5が設けられ、反応ホイール6と試薬テーブル13との間には試薬分注機構12が設けられている。
【0019】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0020】
検体分注機構5は、反応容器7に試薬よりも少量の尿,血液等の検体を分注する手段であり、図1及び図3に示すように、分注ノズル5aによって検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応ホイール6のホルダ6bに収納された反応容器7に分注する。
【0021】
反応ホイール6は、図1に示すように、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、隔壁6aによって周方向に沿って等間隔で区画されるホルダ6bが複数設けられている。各ホルダ6bは、検体を試薬と反応させる反応容器7が着脱自在に収納され、半径方向両側に光が透過する開口が形成されている。また、各ホルダ6bは、図3及び図4に示すように、反応ホイール6の底壁6cを上下に貫通した正極用と負極用の1対の引き出し電極6dが半径方向に設けられている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に反応容器7の1個分回転する。そして、反応ホイール6は、攪拌部20の端子基板21が下部に配置されると共に(図3参照)、分析光学部9及び洗浄部10が設けられている。
【0022】
反応容器7は、図5及び図6に示すように、四角筒状に成形された容器であり、底壁7aの下面に表面弾性波素子8が取り付けられている。反応容器7は、光源10aから出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0023】
表面弾性波素子8は、図6及び図7に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材からなる圧電基板8a上に櫛歯状電極(IDT)からなる振動子8b及び振動子8bの両側に配置されるバスバー8cが形成され、振動子8b及びバスバー8cを外側に向けて反応容器7に取り付けられている。圧電基板8aは、反応容器7に取り付けられる面が平面に成形されている。各バスバー8cは、1対の引き出し電極6dの対応する各引き出し電極6dと接触して電気的に接続されている。
【0024】
分析光学部9は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の反応液を分析する分析光を光源から出射し、反応容器7内の反応液を透過した分析光を前記光源と対向する位置に設けた受光素子によって受光する。そして、受光素子は、受光した光量に対応した光信号を分析部16aへ出力する。
【0025】
洗浄部10は、上下方向に昇降される昇降部材10aに吸引ノズルと吐出ノズル10bが設けられており(図8参照)、前記吸引ノズルによって反応容器6内の反応液を吸引して排出した後、吐出ノズル10bから洗剤や洗浄水W等の洗浄液を反応容器6へ吐出し、吐出し洗浄液を再度吸引ノズルによって吸引する動作を複数回繰り返すことにより、分析光学部9による測光が終了した反応容器7を洗浄する。洗浄部10は、図1に示すように、反応ホイール6の回転方向に見て、洗浄を開始する反応容器7の位置をP1、洗浄を終了する位置をP+5とすると、位置P1〜P+5の範囲に配列された5つの反応容器7を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0026】
温度測定部11は、洗浄部10と対向して配置され、吐出ノズルが反応容器7に吐出した洗浄水の温度を測定するもので、反応ホイール6の回転方向に見たとき、反応容器7の位置に関して位置P3に設置されている。温度測定部11は、図1,図3及び図8に示すように、支柱11aに昇降自在に取り付けた保持アーム11bと、保持アーム11bに垂設された温度センサ11c,11dとを有しており、保持アーム11bは支柱11aを中心として回動可能に支柱11aに取り付けられている。ここで、温度センサ11c,11dは、温度センサ11cが底面側に、温度センサ11dが液面側に、それぞれ鉛直方向に異なる2つの位置に配置されている。
【0027】
試薬分注機構12は、試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応ホイール6のホルダ6bに収納した反応容器7に分注する。
【0028】
試薬テーブル13は、図1に示すように、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル等の情報記録媒体が貼付されている。
【0029】
ここで、試薬テーブル13の外周には、読取装置15が設置されている。読取装置15は、試薬容器14に貼付した前記情報記録媒体から記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する。
【0030】
制御部16は、図2に示すように、検体分注機構5、分析光学部9、洗浄部10、温度測定部11、試薬分注機構12、読取装置15、入力部17、表示部18及び攪拌部20等と接続され、これら各部の作動を制御するもので、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、分析部16aと判定部16bを有している。また、制御部16は、前記情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0031】
分析部16aは、受光素子から入力される光信号から求められる反応容器7内の反応液の吸光度から検体の成分濃度等を分析する。判定部16bは、反応容器7に分注された検体と試薬とを含む液体試料の攪拌部20による攪拌に伴う温度上昇率をもとに液体試料の攪拌の良否を判定する。
【0032】
入力部17は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部18は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0033】
攪拌部20は、反応容器7に保持される液体を音波によって攪拌する部分であり、図3に示すように、端子基板21、信号発生器22及び駆動制御回路23を備えており、反応ホイール6外周の検体分注機構5の近傍と洗浄部10に配置されている。以下、洗浄部10に配置された攪拌部20について説明し、検体分注機構5の近傍に配置された攪拌部20については対応する構成要素に対応する符号付して詳細な説明を省略する。
【0034】
端子基板21は、図3に示すように、反応ホイール6の下部に配置されるリング状の絶縁板であり、回転しない。端子基板21は、反応ホイール6の回転方向に見て、洗浄部10が洗浄を開始する反応容器7の位置P1に隣り合う位置P2〜P+5の範囲と対応する攪拌領域に引き出し電極6dと接触して表面弾性波素子8の振動子8bに電力を供給する接触電極21a,21bが設けられている。ここで、攪拌領域は、位置P2〜P5の4箇所の範囲に限られるものではなく、必要に応じて4箇所以上の広い範囲に設定し、或いは4箇所未満の狭い範囲に設定してもよい。
【0035】
信号発生器22は、図3に示すように、接触電極21a,21bとの間が配線22aによって接続され、駆動制御回路23からの制御信号に基づいて数十MHz〜数百MHz程度の高周波信号を表面弾性波素子8に出力し、振動子8bに音波(バルク波Wb)を発振させる。
【0036】
駆動制御回路23は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(ECU)が使用され、表面弾性波素子8の駆動信号を制御する。駆動制御回路23は、図3に示すように、制御部16を介して検体分注機構5へ接続され、信号発生器22の作動を制御すると共に、信号発生器22の作動制御信号を制御部16へ出力することで、制御部16による検体分注機構5の制御タイミングを保証している。駆動制御回路23は、図示しないが、同様にして制御部16による試薬分注機構12の制御タイミングを保証している。駆動制御回路23は、例えば、表面弾性波素子8が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、駆動制御回路23は、内蔵したタイマに従って信号発生器22が発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応ホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる反応容器7に試薬分注機構12が所定の試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応ホイール6の回転によって検体分注機構5の近傍へ搬送され、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0038】
そして、検体が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって周方向に沿って搬送される間に攪拌部20によって試薬と検体とが攪拌されて反応し、光源10aと受光素子との間を通過する。このとき、反応容器7内の試薬と検体とが反応した反応液は、受光素子によって測光され、分析部16aによって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄部10において吸引ノズルによって反応容器6内の反応液が排出されると共に、吐出ノズルから吐出される洗剤や洗浄水によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0039】
このとき、本発明の自動分析装置1は、攪拌部20を配置した洗浄部10に温度センサ11c,11dが設けられている。このため、自動分析装置1は、洗浄部10による洗浄に際し、攪拌部20を駆動すると、表面弾性波素子8が発生する音波によって、図9に示すように、反応容器7に吐出された洗浄水W中に攪拌流Fが生じ、攪拌流Fによって洗浄水Wの温度が上昇する。この場合、攪拌の良否によって、鉛直方向に異なる位置における洗浄水Wの温度上昇率が相違する。従って、反応容器7が保持した洗浄水の鉛直方向に異なる位置における温度上昇率を求めれば、攪拌の良否を判定することができる。
【0040】
即ち、攪拌部20によって反応容器7に保持された洗浄水を攪拌した場合、攪拌が良好であると、洗浄水は、表面弾性波素子8が出射した音波によって生ずる攪拌流が安定するまでのごく短い時間(攪拌開始後100m秒程度)を除き、図10に示すように、攪拌中は温度が時間経過に伴って直線的に上昇する。そして、洗浄水は、鉛直方向の底面近傍、容器中央及び液面近傍のどの位置においても温度上昇率が等しくなる。この場合、攪拌が良好であるとは、洗浄水の量,比重,粘度等と表面弾性波素子8を駆動する電力,周波数等の駆動条件とが適正な関係にあることをいうが、攪拌対象が異なると種々に変化する。
【0041】
一方、攪拌が不良であると、洗浄水は、表面弾性波素子8が出射した音波が水中で減衰して生ずる発熱源からの距離や攪拌流の流れ方によって温度が異なってくる。このため、反応容器7に保持された洗浄水は、図11に示すように、攪拌中、鉛直方向の底面近傍、容器中央及び液面近傍によって温度が異なるうえ、鉛直方向の位置の違いによって温度上昇率も異なってしまう。
【0042】
従って、反応容器7に保持された液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で液体の温度を測定した場合、攪拌が良好であれば異なる位置の温度上昇率は等しく、攪拌が不良であれば異なる位置の温度上昇率は異なることになる。このため、本発明においては、反応容器7に保持された液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で液体の温度を測定することとしたのである。この場合、図10に示すように、攪拌が良好な場合、温度上昇率は、攪拌中は時間の経過とは無関係で一定である。このため、鉛直方向に異なる位置における温度の測定は、攪拌中の同じ時間に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。
【0043】
このとき、本発明の攪拌判定方法は、分析動作中に入力部17から攪拌判定を実行すべき指示を入力すると、制御部16による制御の下に、図12に示すフローチャートに従って検体の分析動作と並行して実行される。
【0044】
先ず、制御部16は、洗浄部10に指示し、反応ホイール6の停止時に、反応容器7へ洗浄水を吐出させる(ステップS100)。次に、制御部16は、温度測定部11に指示し、反応容器7へ温度センサ11c,11dを挿入させる(ステップS102)。
【0045】
次いで、制御部16は、洗浄部10に配置された攪拌部20に指示し、洗浄水の攪拌を開始する(ステップS104)。この洗浄水の攪拌中に、制御部16は、洗浄水の温度測定を実行する(ステップS106)。このとき、洗浄水は、温度センサ11cによって所定時間間隔をおいて測定される温度に基づく温度上昇率と、温度センサ11dによって所定時間間隔をおいて測定される温度に基づく温度上昇率とをもとに、後述のようにして攪拌の良否が判定される。
【0046】
その後、制御部16は、攪拌部20に指示し、洗浄水の攪拌を停止する(ステップS108)。次に、制御部16は、温度測定部11に指示し、反応容器7から温度センサ11c,11dを引き抜き、元の位置へ復帰させる(ステップS110)。
【0047】
次いで、制御部16は、洗浄水の液面近傍における温度上昇率RSが洗浄水の底面近傍における温度上昇率RBに対して0.9RB〜1.1RBか否か判定する(ステップS112)。この判定は、温度上昇率をもとに判定部16bが判定する。温度上昇率RS,RBは、温度センサ11c,11dによって鉛直方向に異なる2つの位置で所定時間間隔をおいて測定した洗浄水の温度を用いて制御部16が求める。
【0048】
判定の結果、温度上昇率RSが0.9RB〜1.1RBの場合(ステップS112,Yes)、制御部16は、洗浄水の攪拌を良と判定する(ステップS114)。その後、制御部16は、総ての検体の分析が終了したか否かを判定する(ステップS116)。判定の結果、総ての検体の分析が終了している場合(ステップS116,Yes)、制御部16は、攪拌の判定を終了する。判定の結果、総ての検体の分析が終了していない場合(ステップS116,No)、制御部16は、ステップS100へ戻る。
【0049】
これに対し、温度上昇率RSが0.9RB〜1.1RBでない場合(ステップS112,No)、制御部16は、洗浄水の攪拌を不良と判定し、その反応容器7を使用した検体の分析結果に警告を付すと共に、反応容器7の位置を表示部18上に表示する(ステップS118)。ここで、温度上昇率RSが0.9RB〜1.1RBでない場合とは、具体的には温度上昇率RSが0.9RB>RSの場合をいう。表面弾性波素子8を反応容器7の底壁に取り付けたことから、温度上昇率RSがRS>1.1RBとはならないからである。その後、制御部16は、ステップS116に移行し、攪拌の判定を終了する。また、上述の攪拌の判定に際し、同一の反応容器7について2回攪拌不良と判定された場合、制御部16は、その反応容器7の分析への使用禁止を設定する。
【0050】
このように、本発明の攪拌判定方法及び自動分析装置1は、洗浄水の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で洗浄水の温度を測定し、測定した洗浄水の温度の温度上昇率をもとに洗浄水の攪拌の良否を判定するので、攪拌の良否を簡易、かつ、確実に判定することができる。
【0051】
(変形例1)
ここで、温度センサ11c,11dは、図13に示すように、昇降部材10aに設けた支持部材10cに垂設し、洗浄部10と一体に移動するようにしてもよい。このように構成すると、自動分析装置1は、温度測定部11を独立して設ける場合に比べ、温度測定部11の構成をコンパクトにすることができる。
【0052】
(変形例2)
また、温度測定部11は、図14に示すように、保持アーム11bに温度センサ11cのみを設け、攪拌部20による洗浄水の攪拌中に、保持アーム11bを昇降させることにより、鉛直方向に異なる2つの位置における洗浄水の温度を測定するようにしてもよい。このように構成すると、自動分析装置1は、温度測定部11の構成を更にコンパクトにすることができる。
【0053】
この場合、攪拌部20によって表面弾性波素子8を駆動すると、図15に示すように、反応容器7に吐出された洗浄水W中に攪拌流Fが生じ、攪拌流Fによって洗浄水Wの温度が上昇する。このため、温度測定部11は、例えば、反応容器7の底面から1mm上方の位置で1秒間洗浄水の温度を測定した後、保持アーム11bを上昇させ、底面から3mm上方の位置で1秒間洗浄水の温度を測定する。そして、このようにして測定した洗浄水の温度をもとに温度上昇率を求め攪拌の良否を判定する。
【0054】
(変形例3)
また、温度センサ11cは、図16に示すように、昇降部材10aに設けた支持部材10cに垂設し、洗浄部10と一体に移動するようにしてもよい。このように構成すると、自動分析装置1は、温度測定部11を独立して設ける場合に比べ、温度測定部11の構成を更にコンパクトにすることができる。
【0055】
(実施の形態2)
次に、本発明の分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の分析装置は、洗浄部に温度測定部と攪拌部とを配置して攪拌部を追加したのに対し、実施の形態2の分析装置は、攪拌部に温度測定部を配置している。図17は、実施の形態2の自動分析装置を示す概略構成図である。なお、以下に説明する実施の形態においては、実施の形態1の自動分析装置と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0056】
自動分析装置30は、図17に示すように、検体分注機構5の近傍に攪拌部20と温度測定部11が配置されている。温度測定部11は、支柱11aを中心として回動する保持アーム11bの回動軌跡上に温度センサ11c,11dの洗浄槽31が設けられている。洗浄槽31は、試薬と検体が分注され、液体試料Lsを保持した反応容器7に挿入された温度センサ11c,11dを、洗浄水を吐出することにより洗浄する。
【0057】
そして、自動分析装置30は、分析動作中に入力部17から攪拌判定を実行すべき指示を入力すると、検体の分析動作と並行して攪拌部20による試薬と検体とを含む液体試料Lsの攪拌の際に、図18に示すように、温度センサ11c,11dが液体試料Lsの温度を測定し、上述の攪拌判定方法によって制御部16(判定部16b)が攪拌の良否を判定する。
【0058】
ここで、温度測定部11は、図14〜図16に示したように、温度センサ11cのみとし、攪拌部20による液体試料Lsの攪拌中に、温度センサ11cを昇降させることにより、鉛直方向に異なる2つの位置における液体試料Lsの温度を時間をずらして測定し、攪拌の良否を判定するようにしてもよい。
【0059】
また、自動分析装置30は、通常の分析モードの他に、検体を分析する通常の分析動作とは異なる動作をする保守点検用のメンテナンスモードや診断モード(DIAGモード)等の特殊モードを有している。この特殊モードに切り替えた場合、自動分析装置30は、反応容器7に試薬,検体,洗浄水或いは攪拌評価用の液体を分注した後、上述の攪拌判定方法により、攪拌部20において攪拌評価用の液体を攪拌する際、鉛直方向に異なる2つの位置で前記液体の温度を測定し、攪拌の良否を判定する。
【0060】
なお、実施の形態1,2は、鉛直方向に異なる2つの位置、即ち、底面近傍と液面近傍とにおいて測定した液体の温度から求めた温度上昇率をもとに攪拌の良否を判定した。しかし、本発明の攪拌判定方法及び分析装置は、液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で測定した液体の温度の温度上昇率をもとに液体の攪拌の良否を判定すればよく、例えば、図10及び図11において説明したように、液面近傍において液体の温度を測定し、測定した液体の温度から求めた温度上昇率から攪拌の良否を判定してもよい。
【0061】
また、自動分析装置1,30は、簡単のため攪拌部が1箇所の場合について説明したが、複数個所に設けられていても良い。また、試薬テーブルは、第1試薬用の試薬テーブルや第2試薬用の試薬テーブル等、複数の試薬テーブルであってもよい。
【0062】
また、反応容器7は、表面弾性波素子8を底面ではなく、側壁に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して攪拌装置の概略構成と共に示す図である。
【図4】図3のA部拡大断面図である。
【図5】自動分析装置で使用する表面弾性波素子を取り付けた反応容器の斜視図である。
【図6】図5に示す反応容器を倒立させた斜視図である。
【図7】図5に示す反応容器に取り付けられる表面弾性波素子の平面図である。
【図8】洗浄部の吐出ノズル及び温度測定部の温度センサが挿入された反応容器の模式的な断面図である。
【図9】温度センサが挿入された反応容器の攪拌流を示す模式的な断面図である。
【図10】反応容器に保持された洗浄水の攪拌が良好である場合の洗浄水の温度変化図である。
【図11】反応容器に保持された洗浄水の攪拌が不良である場合の洗浄水の温度変化図である。
【図12】本発明の攪拌判定方法を説明するフローチャートである。
【図13】実施の形態1の自動分析装置の変形例1を示し、洗浄部の吐出ノズル及び温度測定部の温度センサが挿入された反応容器の模式的な断面図である。
【図14】実施の形態1の自動分析装置の変形例2を示し、洗浄部の吐出ノズル及び温度測定部の温度センサが挿入された反応容器の模式的な断面図である。
【図15】図14に示す変形例2において、温度センサが挿入された反応容器の攪拌流を示す模式的な断面図である。
【図16】実施の形態1の自動分析装置の変形例3を示し、洗浄部の吐出ノズル及び温度測定部の温度センサが挿入された反応容器の模式的な断面図である。
【図17】実施の形態2の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図18】温度センサが挿入された反応容器を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
7 反応容器
8 表面弾性波素子
9 分析光学部
10 洗浄部
11 温度測定部
11c,11d 温度センサ
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
16a 分析部
16b 判定部
17 入力部
18 表示部
20 攪拌部
21 端子基板
22 信号発生器
23 駆動制御回路
30 自動分析装置
31 洗浄槽
F 攪拌流
Ls 液体試料
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を攪拌し、反応した反応液の光学的特性を測定することにより分析を行う分析装置の攪拌判定方法であって、
前記液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で前記液体の温度を測定する温度測定工程と、
測定した前記液体の温度の温度上昇率をもとに前記液体の攪拌の良否を判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする攪拌判定方法。
【請求項2】
前記音波発生手段が前記容器の底面に取り付けられている場合、
前記温度測定工程は、前記液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で前記液体の温度を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌判定方法。
【請求項3】
前記判定工程は、前記液体の液面近傍における温度上昇率RSが前記液体の底面近傍における温度上昇率RBに対して0.9RB≦RS≦1.1RBの場合に前記液体の攪拌を良と判定し、0.9RB>RSの場合に攪拌を不良と判定することを特徴とする請求項2に記載の攪拌判定方法。
【請求項4】
前記判定工程において攪拌不良と判定された容器がある場合、当該容器を使用した前記検体の分析結果に警告を付すと共に、当該容器を表示する表示工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の攪拌判定方法。
【請求項5】
前記判定工程において同一の容器について2回攪拌不良と判定された場合、当該容器の使用禁止を設定する制御工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の攪拌判定方法。
【請求項6】
容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を攪拌し、反応した反応液の光学的特性を測定することにより分析を行う分析装置において、
前記液体の温度を測定する温度測定手段と、
前記液体の攪拌の前後で温度差が生ずる位置で測定した温度の温度上昇率をもとに前記液体の攪拌の良否を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項7】
前記音波発生手段が前記容器の底面に取り付けられている場合、
前記温度測定手段は、前記液体の攪拌中に鉛直方向に異なる少なくとも2つの位置で前記液体の温度を測定する
ことを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記液体の液面近傍における温度上昇率RSが前記液体の底面近傍における温度上昇率RBに対して0.9RB≦RS≦1.1RBの場合に前記液体の攪拌を良と判定し、0.9RB>RSの場合に攪拌を不良と判定することを特徴とする請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記判定手段によって攪拌不良と判定された容器がある場合、当該容器を使用した前記検体の分析結果に警告を付すと共に、当該容器を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項10】
前記判定手段によって同一の容器について2回攪拌不良と判定された場合、当該容器の使用禁止を設定する制御手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−115487(P2009−115487A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286012(P2007−286012)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】