説明

支承装置

【課題】低荷重から高荷重に至る広範な入力に適する鉛直バネ性能を発現させることが出来る。
【解決手段】上沓11と、下沓12と、上沓11と下沓12との間に配設される弾性体23と、弾性変形した弾性体23の側面が近接又は当接する位置において、弾性体23を囲繞する弾性変形拘束体16とを備える。下沓12には、芯材31が設けられ、芯材31は、上揚防止部と水平変位防止部とを有する。弾性体23の側面には、凸部24又は凹部25が形成されている。弾性体23は、上沓11と下沓12と弾性変形拘束体16とによって囲繞されて略密閉状態とされ、弾性体23への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成されたゴム支承がある(特許文献1参照)。ゴム支承では、ゴムの変位を拘束することで、鉛直バネ剛性を高める工夫や回転追従性能を向上させる工夫がなされている。例えば、ゴム支承では、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらを加硫接着することによって、ゴムの流動性を低減し、鉛直バネ剛性を高めるようにしている。
【0003】
また、密閉ゴム支承では、ゴム板が下沓となる金属製ポット内に配置され、ゴム板の上にピストン状の上沓が載置され、ゴム板が非圧縮性の流体的に振る舞うように拘束されることで、回転追従性能が得られるように構成されている(特許文献2参照)。なお、この密閉ゴム支承は、鉛直可撓性がないことから金属支承の扱いとなる。
【0004】
更に、所謂コンパクト支承では、大きな鉛直荷重を支持するため、上沓と下沓の相対する面にそれぞれ凹部を設け、それぞれの凹部内にゴム層が配設され、鉛直荷重が加わった際にゴムが撓み変形によって半径方向外方に膨出しないようにして、鉛直バネ剛性の向上を図るようにしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−1820号公報
【特許文献2】特開2000−178921号公報
【特許文献3】特開2009−13773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、載荷物からの荷重に応じて適度な鉛直可撓性を発現しながら高荷重を支持することが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【0007】
詳しくは、低荷重から高荷重に至る広範な入力適する鉛直バネ性能を発現させることが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、高面圧化させながらも、良好な回転追従性を実現出来る支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る支承装置は、建築物や橋梁等の各種構造物を支承する用途に用いられるものであり、第一剛性体と、第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、弾性変形した前記弾性体が近接又は当接する位置において、前記弾性体を囲繞する弾性変形拘束体とを備える。前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れかには、芯材が設けられ、前記芯材は、上揚防止部と水平変位防止部とを有する。前記弾性体の側面、前記弾性変形拘束体の拘束面の何れかには、凸部又は凹部が形成されている。そして、所定以上の入力がなされると、前記弾性体が前記凸部と前記凹部とによって作出される隙間の容積を縮小するように弾性変形し、且つ、変形した当該弾性体が拘束体に当接及び/又は圧接して当該弾性体の変形が拘束されるように構成される。例えば、前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記弾性変形拘束体とによって囲繞されて略密閉状態とされ、前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化する。このような支承装置において、荷重が入力されたときには、入力の大きさに伴って、前記凸部間の凹部により構成された隙間を埋めるように前記弾性体が変形しながら、前記凸部が前記弾性変形拘束体の拘束面に圧接する程度が増大する。前記弾性変形拘束体は、このような前記弾性体の変形を拘束する。前記弾性体の凸部又は凹部は、例えば、前記弾性体の側面又は前記弾性変形拘束体の拘束面の周回り方向に連続又は断続的に形成することで、前記作用を効果的に実現することが出来る。
【0010】
ここで、前記芯材は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体を貫通して設けることが出来る。例えば、支承装置は、前記芯材を、前記第二剛性体に設け、前記弾性体を前記第二剛性体上に配設し、前記第一剛性体側を前記弾性変形拘束体に設け、前記芯材の先端部が前記第一剛性体の貫通孔に係合して前記上揚防止部となるように構成出来る。
【0011】
また、前記芯材は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体を非貫通とすることが出来る。例えば、支承装置は、前記芯材を、前記第二剛性体に設け、先端部に、前記弾性体が配設される大径部を設け、該大径部の外周部が前記第一剛性体側の前記弾性変形拘束体の端部に係合して前記上揚防止部となるように構成出来る。
【0012】
ここで、前記弾性体は、内部に補強板を有する弾性層と補強板とが積層された積層構造で構成しても良いし、補強板を含まず単層の弾性層で構成しても良い。前記弾性体を積層構造としたときには、前記補強板の位置又は前記補強板の間の位置の一方に前記凸部又は凹部を形成し、他方に凹部又は凸部を形成すると良い。前記補強板がある場合、前記弾性体は、荷重入力があると、前記補強板の間において、前記弾性体の厚さ方向と略直交する方向に膨出する。前記補強板の間の位置に前記凸部を設けた場合には、弾性変形した前記弾性体の凸部が最初に前記弾性変形拘束体の拘束面に圧接されることで、前記弾性体が変形し過ぎることを防止出来る。またこれによれば、特に、前記補強板間に相当する弾性体周面の局部歪みによる損傷を効果的に防止出来る。
【0013】
前記補強板は、弾性体内に、円盤状に設けても良く、或いは、リング状を成すように設けても良いし、同心円状を成すように設けても良いし、厚さ方向に起伏した起伏部を設けるように構成しても良い。
【0014】
前記弾性体の側面と前記弾性変形拘束体の拘束面との間は、凸部が拘束面に当接していることが好ましいが、隙間を形成することも出来る。本発明は、少なくとも、大きい荷重が加わったとき、前記弾性体の凸部が弾性変形拘束体の拘束面に当接するように構成する。なお、支承装置の組立時等において、前記弾性変形拘束体の拘束面と前記弾性体の凸部とが当接する程度とすれば、組立時に、前記弾性変形拘束体内における前記弾性体の位置を容易に所望の位置に設定することが出来る。
【0015】
前記支承装置は、前記第一剛性体と第一構造物との間及び/又は前記第二剛性体と前記第二構造物との間に摺滑部材を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、弾性体を、第一剛性体と第二剛性体と弾性変形拘束体とで囲繞することで、略密閉された空間部を構成して、密閉ゴム支承のようにして小さな支承面積にして高荷重支承を実現しながら、弾性体又は弾性変形拘束体の拘束面に凸部又は凹部を設けて、隙間を設けることで、鉛直荷重に対する鉛直可撓変位を実現することが出来る。また、回転作用の際には、凸部又は凹部による隙間により弾性体が変形し良好な回転追従性を実現出来る。また、芯材は、上揚防止部として機能し、上揚力によって、第一剛性体と第二剛性体とが乖離することを防止することが出来る。また、芯材は、水平変位防止部として機能し、過剰に第一剛性体と第二剛性体とが水平方向において相対変位することを防止出来る。
【0017】
また、弾性体又は弾性変形拘束体の拘束面に凸部又は凹部を設けて間隙を設けたことにより、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量も大きくなるが、その特性は非線形で、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾き(拘束度又はバネ定数)は、鉛直変位又は鉛直荷重が大きくなるほど大きくなる。このように、本発明では、弾性変形拘束体の拘束面と弾性体の側面との間に設けた凹部と凸部とによって作出される隙間を設定したことで、荷重が大きくなるほど、鉛直変位量の増加量が小さくなるような特性で、即ち拘束度を可変として、上部構造物を支承することが出来る。また、隙間を小さくするほど、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾きの緩やかな範囲(一次勾配)を狭く設定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した支承装置の通常の使用状態を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した弾性体の斜視図である。
【図3】本発明を適用した側面に突起部を設けた弾性体の斜視図である。
【図4】本発明を適用した側面に断続的な凸部を設けた弾性体の斜視図である。
【図5】鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す特性グラフである。
【図6】本発明を適用した芯材が上沓を貫通した支承装置の断面図である。
【図7】図6の弾性体の凸部と凹部を逆にした支承装置の断面図である。
【図8】図6の変形例であり、弾性変形拘束体を下沓に固定した支承装置の断面図である。
【図9】上部構造物と下部構造物との間に設置される前(荷重が加わる前)の支承装置の断面図であって、弾性体側面の凸部と弾性変形拘束体の拘束面との間が非接触の状態を示す。
【図10】上部構造物と下部構造物との間に設置される前(荷重が加わる前)の支承装置の断面図であって、弾性体側面の凸部と弾性変形拘束体の拘束面との間が当接した状態を示す。
【図11】本発明を適用した芯材が上/下沓の何れも非貫通の支承装置の変形例を示す断面図である。
【図12】図11を更に具体的にした支承装置の断面図である。
【図13】弾性変形拘束体の拘束面に凸部又は凹部を設けた支承装置の断面図であり、補強板の位置に凹部を設けた例を示す。
【図14】弾性変形拘束体の拘束面に凸部又は凹部を設けた支承装置の断面図であり、補強板の位置に凸部を設けた例を示す。
【図15】(A)−(E)は、積層型弾性体の補強板の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る弾性体拘束度可変構造が適用された支承装置について図面を参照して説明する。なお、以下、支承装置について、以下の順に沿って説明する。
【0020】
1.支承装置の説明
2.弾性体及び弾性変形拘束体の説明
3.支承装置の動作説明
4.積層型弾性体の説明
5.支承装置の変形例1
6.支承装置の変形例2
7.支承装置の変形例3
8.補強板の変形例の説明
9.その他の変形例
【0021】
[1.支承装置の説明]
図1に示すように、支承装置10は、橋桁等の上部構造物1と橋脚や橋台といった下部構造物2との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的又は静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。この支承装置10は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に支承体となる弾性体13が介在されている。また、弾性体13は、上沓11又は下沓12(ここでは上沓11)に固定された弾性変形拘束体16によって囲繞されている。
【0022】
上沓11は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によっても構成することが出来る。各種素材から構成される上沓11は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。なお、上沓11は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成しても良い。
【0023】
上部構造物1に対する上沓11の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓11を上部構造物に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、上沓11よりも広面積の板状をなす上部プレート3を用いて上沓11を上部構造物1に対して間接的に固定している。上沓11の上部構造物1への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0024】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、上沓11の上部、例えば上沓11と上部プレート3との間に摺滑部材4を配設して、上部構造物1と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材4としては、例えば、フッ化炭素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓11の上面に固定したり、又は上部構造物1や上部構造物1に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0025】
下沓12は、上沓11同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによっても構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓12は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、又は施工上、交換上で有利である。下沓12の平面形状等は、必ずしも上沓11と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓12の設定と上沓11の設定を互いに整合させる必要がある。なお、下沓12は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0026】
下部構造物に対する下沓12の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、下沓12よりも広面積の板状をなす下部プレート5の如くの下部固定手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して間接的に固定している。下沓12の下部構造物2への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0027】
なお、可動支承装置として用いるとき等は、下沓12の下部、例えば下部プレート5と下沓12との間に摺滑部材6を配設して、下部構造物2と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材6としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓12の下面に固定したり、又は下部構造物2や下部構造物2に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。
【0028】
尚、上沓11や下沓12の直接的又は間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0029】
[2.弾性体及び弾性変形拘束体の説明]
弾性体13は、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを一種単独、或いは二種以上を併用することが出来る。
【0030】
この支承装置10に用いる弾性体13は、円柱状をなし、内部に鉄板等の剛性を有する補強板が設けられていない弾性層が一つ(単層)のものでもあって良いし、補強板を用いるものであっても良い。先ず、単層の弾性体13について説明すると、図2に示す弾性体13aは、例えば、円柱状をなし、内部に鉄板といった補強板が設けられていない弾性層が一つ(単層)のものを示している。この弾性体13aは、側面に、凸部14と凹部15が設けられている。図2に示す例では、厚さ方向に波状を成すように、厚さ方向略中央部に周回り方向に連続した凸部14が設けられ、凸部14の上側と下側に周回り方向に連続した凹部15,15が設けられ、更に、厚さ方向の上下端に周回り方向に連続した凸部14,14が設けられている。
【0031】
また、図3に示す弾性体13bも、円柱状をなし、内部に補強板が設けられていない弾性層が一つ(単層)のものを示している。この弾性体13bは、側面に、略同じ大きさの突起状の凸部14が不規則に設けられ、凸部14が設けられていない領域が凹部15となっている。なお、突起状の凸部14は、規則的に設けるようにしても良く、また、大きさや突出方向も様々なものとしても良い。また、図4に示す弾性体13cでは、細長い凸部14が側面の周回り方向に断続的に等間隔に設けられている。なお、凸部14は、周回り方向に様々な間隔を空けて設けるようにしても良い。また、厚さ方向の間隔も、等間隔でも、等間隔でなくても良い。なお、以下、弾性層が単層の弾性体を単に弾性体13とも言う。
【0032】
以上のような弾性体13は、図1に示す例では、下沓12上に配設され、下沓12によって支持される。弾性体13は、上沓11と下沓12との間を接着して高支圧化しても良いが、接着しないことにより、良好な回転追従性を実現することも可能となる。
【0033】
また、弾性体13は、図1に示すように、弾性変形拘束体16によって囲繞されている。弾性変形拘束体16は、弾性体13の外径よりやや大きい内径を有する円筒体であり、上沓11又は下沓12の何れか、図1では上沓11の外周部に固定されている。例えば、上沓11と弾性変形拘束体16との結合は、ボルト・ナット等の固定手段16bを用いても良い。なお、固定手段16bとしては、上沓11と弾性変形拘束体16の何れか一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設け、これらを互いに螺合して結合するねじ締結によったり、溶接したり、従来公知の結合方法等で行うことも出来る。弾性変形拘束体16の下沓12側の先端部は、下沓12の外周部の外側に位置し、固定されていない。これにより、上沓11は、鉛直荷重の入力があっとき、弾性体13を圧縮しながら鉛直下向きに変位することが出来る。すなわち、弾性変形拘束体16の下沓12側の先端部が下沓12の外周部の外側に位置することで、上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13を略密閉状態に拘束して高支圧化させるシリンダの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が弾性変形拘束体16によって包囲され、略密閉された空間に配設されることになる。支承装置10は、略密閉ゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0034】
以上のように、本発明で用いる弾性体13は、弾性体13の側面に凸部14を設け、凸部14以外を凹部15とすることによって、弾性体13に鉛直荷重が加わった際に、鉛直下向きに変位するようにし、更に、弾性変形拘束体16によって、弾性体の変形量が制限される構成となっている。従って、このような作用を実現出来るのであれば、弾性体13の側面に設ける凸部14と凹部15を設ける位置や大きさは、図2-図4上述の例に限定されるものではない。
【0035】
また、支承装置10の上沓11は、表裏面に貫通した貫通孔17が穿設されている。貫通孔17には、上沓11の上面側から芯材18が挿入され、芯材18の先端部が上沓11の上面から突出することなく、上沓11が鉛直下向きに変位する分を考慮して、先端部が一段低くなるように収容されている。この貫通孔17の開口端には、上揚防止片17aがフランジ状に形成されている。
【0036】
貫通孔17に挿通される芯材18は、大径部19となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部19が上沓11の貫通孔17の内部に収容可能な大きさに設定されている。この芯材18は、上沓11の貫通孔17より弾性体13の略中央部に形成された挿通孔21に挿通され、更に、下沓12の弾性体13の支持面側に形成されたネジ穴22に螺合されることによって固定される。芯材18は、貫通孔17より挿入され、ネジ穴22に固定されたとき、大径部19が貫通孔19内に先端部が一段低くなるように収容される。この芯材18は、下沓12に固定されることで、上沓11と下沓12とが水平方向に相対変位しようとした際に、芯材18が上揚防止片17aの先端面又は貫通孔17の側面に突き当たり、下沓12に固定された芯材18によって上沓11の変位が制限される。すなわち、芯材18は、水平変位防止部として機能して、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止する。更に、芯材18の大径部19は、貫通孔17の上揚防止片17aの開口径より大きく、上揚防止片17aと係合する。芯材18は、上沓11に上揚力、すなわち上沓11が下沓12に対して相対的に上揚しようとする力が加わったとき、下沓12に固定された芯材18の大径部19に上揚防止片17aが係止されることによって、上沓11と下沓12とが乖離することを防止することが出来る。すなわち、大径部19は、上揚防止部としても機能することになる。
【0037】
[3.支承装置の動作説明]
以上のような支承装置10では、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、図1に示すように、弾性体13は、通常の使用範囲の荷重(死荷重)によって、圧縮され、弾性体13の凸部14は、弾性体13を囲繞した弾性変形拘束体16の拘束面16aに近接又は当接した位置となる。支承装置10は、弾性体13が鉛直荷重の大きさに応じた弾性変形をし、この弾性変形によって側面の凸部14が凹部15により構成された隙間を埋めるように変形しながら、弾性変形拘束体16の拘束面16aに圧接される。
【0038】
このような支承装置10では、下沓12に支持された弾性体13を、上沓11と弾性変形拘束体16によって囲繞し、弾性体13の側面に凸部14と凹部15とを設けて、拘束面16aとの間に所定の隙間を有する略密閉された空間部を設けて構成することで、荷重入力の初期や低荷重の入力時には、鉛直荷重に対する鉛直可撓変位を可能としながら入力の高荷重化に伴って、徐々に鉛直変位量の増加量が小さくなって弾性率が高くなり、大きな荷重の入力に対しては密閉ゴム支承のように挙動して、小さな支承面積にして高荷重支持を実現する。また、鉛直面内における回転力の作用時には、弾性体13が弾性変形拘束体16によって部分的に支持されながらも凸部14又は凹部15による隙間により、低荷重から高荷重に亘って弾性体13がより一層変形し易くなり、弾性体13への極端な負荷なく、良好な回転追従性を得ることが出来る。
【0039】
ここで、図5に、鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す。
線101・・・弾性変形拘束体16の内径に対して弾性体13の外形を小さくし、及び/又は、凹部15を大きく形成して、拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を大きくしたときの特性を示す。(隙間大)
線102・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を線101の場合より小さくしたときの特性を示す。(隙間中)
線103・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を最も小さくしたときの特性を示す。(隙間小)
【0040】
図5の例によれば、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量も大きくなるが、その特性は非線形で、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾き(拘束度又はバネ定数)は、鉛直変位又は鉛直荷重反力が大きくなるほど大きくなる。このように、支承装置10は、拘束面16aと弾性体13の側面との間に凹部と凸部とによる隙間を設けることで、大きな荷重が入力されたときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量が小さくなるような特性で、すなわち拘束度を可変として、上部構造物1を支承することが出来る。すなわち、この支承装置10では、適度な鉛直可撓性を有しながら高荷重を支持することが出来る。また、隙間が小さいほど、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾きの緩やかな範囲(一次勾配)を狭く設定することが出来る。
【0041】
[4.積層型弾性体の説明]
この支承装置10において、支承体となる弾性体13は、図6に示すように、内部に補強板を設けた積層型の弾性体23は、内部に補強板23aが設けられ、弾性層23bが複数設けられ、補強板23aと弾性層23bとが加硫接着によって相互に接着されている。単層の弾性体13は、荷重が加わると、自由側面が側方に押し出され膨出する。積層型の弾性体23では、補強板23aがあることで、弾性体23の自由側面の膨出が抑制され、耐荷力が増大する。但し、補強板23aの間の弾性層23bの側面も、自由側面であるから荷重の大きさに応じて、側方に膨出する。しかし、支承装置10では、弾性変形拘束体16が弾性体17の変形を拘束するので膨出量は僅かとなる。
【0042】
つまり、図6に示すように、積層型の弾性体23、側面において、自由側面の弾性層23bの位置に凸部24を設け、補強板23aの位置に凹部25を設けるようにしている。この場合、凸部24は、荷重が加わった際、弾性層23bの自由側面が膨出することで、凹部25より先に弾性変形拘束体16の拘束面16aに強く圧接されることになる。勿論、本発明では、図7に示すように、補強板23aの位置を凸部24とし、弾性層23bの位置を凹部25としても良い。この場合、凹部25となっている弾性層23bの自由側面が僅かに膨出することで、凸部24と凹部25の部分が同じように弾性変形拘束体16の拘束面16aと当接され均等に圧接されるようにすることが出来る。積層型の弾性体23は、従来最も膨出量が多い補強板間位置の弾性部であるが、この部位に凸部24を設けた上、弾性変形拘束体16の拘束面16aによってこの凸部24周辺の膨出量が拘束されているので、高荷重が入力されている際でも内部の補強板23aの周囲における弾性層23bに対する局部応力が緩和される。また、内部の補強板23aが高荷重によってもつぶれにくくなり、補強板23aを薄くすることが出来、支承装置10の全体の厚さの薄型化を実現出来る。
【0043】
また、上下を逆にして、上沓11を下沓とし、下沓12を上沓として用いても良い。また、図8示すように、支承装置10は、弾性変形拘束体16を上沓11ではなく、下沓12の外周部に固定手段16bによって固定するようにしても良い。この場合、弾性変形拘束体16の先端部は、上沓11の外周部の外側に位置し固定されていない。これにより、上沓11は、鉛直荷重の入力があっとき、弾性体13を圧縮しながら鉛直下向きに移動することが出来る。弾性体は単層のもの、積層型のものの何れであっても良い。
【0044】
ここで、弾性体13と弾性変形拘束体16との大きさの関係について説明すると、図1の例では,支承装置10が上部構造物1と下部構造物2との間に設置され、支承装置10に対して上部構造物1の荷重によって弾性体13が変形している状態において、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となっている。つまり、図9に示すように、上部構造物1と下部構造物2との間に設置される前は、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aとの間が非接触の状態で、隙間が設けられた状態となっており、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、上部構造物1の死荷重によって、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となる。なお、通常の使用範囲での荷重の際には、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aと非接触で、通常の使用範囲を超える高い荷重があった際に、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aと当接し、更なる高荷重の入力によって拘束面16aに凸部14、並びに、凹部15の膨出変形した部分が圧接されるようにしても良い。
【0045】
更に、図10に示すように、上部構造物1と下部構造物2との間に設置される前において、弾性体13の側面の凸部14が弾性変形拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態であっても良い。この場合、弾性体13を弾性変形拘束体16内に配設する際、弾性変形拘束体16内における弾性体13を正確に位置決めすることが出来る。なお、この関係は、図6及び図7に示した積層型弾性体23との関係での同様である。
【0046】
[5.支承装置の変形例1]
図11に示す支承装置30は、芯材31が上沓11と下沓12とを非貫通としたものである。この支承装置30は、下沓12に、芯材31が取り付けられ、上揚防止部と水平変位防止部とを設けたものである。また、この支承装置30は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に弾性層と補強板とが積層された積層構造の弾性体23が介在されている。
【0047】
上沓11は、弾性体23の上面に配設されるものであって、外周部に、弾性変形拘束体16が固定される。例えば、上沓11と弾性変形拘束体16との結合は、ボルト・ナット等の固定手段16bを用いて良い。また、固定手段16bとしては、上沓11と弾性変形拘束体16の何れか一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設け、これらを互いに螺合して結合するねじ締結によったり、溶接したり、従来公知の結合方法等で行うことが出来る。弾性変形拘束体16の下沓12側の先端部は、フランジ状の上揚防止片32が内側に張り出して形成されている。
【0048】
芯材31は、大径部33となる頭部を有する金属製のボルト状部材からなり、先端部が下沓12の弾性体23の支持面側に形成されたネジ穴34に螺合されることによって固定される。この芯材31は、上端部が大径部33となっており、弾性体23を支持する支持面となっている。また、この大径部33は、上沓11の外周部に固定された弾性変形拘束体16の上揚防止片32に係合する。下沓12に固定された芯材31の大径部33は、上揚防止部ともなって、上沓11に上揚力が加わったとき、上沓11側の上揚防止片32が係止されることで、上沓11と下沓12とが乖離することを防止する。また、この芯材31の大径部33は、弾性変形拘束体16の拘束面16aを摺動するような大きさに形成され、弾性体23を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンのように機能して、鉛直方向の変位を許容し、また、水平変位防止部となって、芯材31で水平方向の変位を制限する。これにより、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。更に、上揚防止片32と下沓12との間は、間隙が設けられており、鉛直下向きに変位して、上沓11が移動した際に、上揚防止片32が下沓12に突き当たらないようにしている。
【0049】
このような支承装置30にあっても、上述した支承装置10と同様に、下沓12に支持された弾性体23を、上沓11と弾性変形拘束体16によって囲繞することで、略密閉された空間部を構成して、略密閉ゴム支承のようにして小さな支承面積にして高荷重支持を可能としながら、弾性体23の側面に凸部24と凹部25とを設けて、拘束面16aとの間に隙間を設けることで、鉛直荷重に応じた鉛直可撓変位を可能とすることが出来る。また、回転作用の際には、凸部24又は凹部25による隙間により弾性体23がより一層変形し易くなり、良好な回転追従性を実現出来る。そして、上記図5で示したように、拘束面16aと弾性体23の側面との間に凹部25と凸部24によって隙間を設けることで、大きな入力があったときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量を小さくすることが出来る。
【0050】
なお、この支承装置30において、支承体となる弾性体23は、弾性層が単層の弾性体13であっても良い(図2−4参照)。また、上下を逆にして、上沓11を下沓とし、下沓12を上沓として用いても良い。更に、上部構造物1と下部構造物2に設置するにあたっては、上述したように、上部プレート3や下部プレート5を介在させて固定しても良いし、更に、摺滑部材4,6を介在させて固定しても良い(図1参照)。
【0051】
[6.支承装置の変形例2]
図12に示す支承装置40は、図11の支承装置30を更に変形したものである。この支承装置40は、下沓12に、芯材41が取り付けられ、上揚防止部と水平変位防止部とを設けたものである。この支承装置40は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に弾性層23bと補強板23aとが積層された積層構造の弾性体23が介在されている。
【0052】
上沓11は、弾性体23の上面に配設されるものであって、外周部に、弾性変形拘束体16が固定される。例えば、上沓11と弾性変形拘束体16との結合は、ボルト・ナット等の固定手段16bを用いることが出来る。また、固定手段16bとしては、上沓11と弾性変形拘束体16の何れか一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設け、これらを互いに螺合して結合するねじ締結によったり、溶接したり、従来公知の結合方法等で行うことが出来る。弾性変形拘束体16の下沓12側の先端部は、フランジ状の上揚防止片42が内側に張り出して形成されている。
【0053】
芯材41は、ベースプレートとなる下沓12に下端部が固定される。芯材41の下端面は、位置決め凸部41aが設けられ、位置決め凸部41aが下沓12側の位置決め凹部41bに嵌合されることで、位置決めされる。また、下沓12には、挿通孔45aが形成され、固定ボルト45bが芯材41の下端部に設けられた固定孔45cに締め付けられることで固定される。芯材41の上端部には、弾性体23を支持する支持面となる大径部43が一体的に設けられる。大径部43は、裏面中央部にネジ穴43aが設けられており、ネジ穴43aに、芯材41の先端部に形成されたネジ部44が締め付けられることで一体化される。なお、固定ボルト45bのボルト頭部は、下沓12の挿通孔45aと連通した凹部45dに突出することなく収容されている。
【0054】
芯材41と一体の大径部43は、外周部下面が上沓11の外周部に固定された弾性変形拘束体16の上揚防止片42と係合する。下沓12との一体の芯材41の大径部43は、上揚防止部ともなって、上沓11に上揚力が加わったとき、上沓11側の上揚防止片42が係止されることで、上沓11と下沓12とが乖離することを防止する。また、この芯材41の大径部43は、弾性変形拘束体16の拘束面16aを摺動するような大きさに形成され、弾性体23を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンのように機能して、鉛直方向の変位を許容し、また、水平変位防止部となって、芯材23で水平方向の変位を規制する。これにより、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。更に、上揚防止片42と下沓12との間は、間隙が設けられており、鉛直下向きに変位して、上沓11が移動した際に、上揚防止片42が下沓12に突き当たらないようにしている。
【0055】
このような支承装置40にあっても、上述した支承装置10,30と同様に、下沓12に支持された弾性体23を、上沓11と弾性変形拘束体16によって囲繞することで、略密閉された空間部を構成して、密閉ゴム支承のようにして小さな支承面積にして高荷重支承を実現しながら、弾性体23の側面に凸部24と凹部25とを設けて、拘束面16aとの間に隙間を設けることで、鉛直荷重に対する鉛直可撓変位を実現することが出来る。また、回転作用の際には、凸部24又は凹部25による隙間により弾性体23がより一層変形し易くなり、良好な回転追従性を実現出来る。そして、上記図7で示したように、拘束面16aと弾性体23の側面との間に凹部24と凸部25によって隙間を設けることで、大きな荷重があったときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量を小さくすることが出来る。
【0056】
なお、この支承装置40において、支承体となる弾性体23は、弾性層が単層の弾性体13であっても良い(図2−4参照)。また、上下を逆にして、上沓11を下沓とし、下沓12を上沓として用いても良い。更に、上部構造物1と下部構造物2に設置するにあたっては、上述したように、上部プレート3や下部プレート5を介在させて固定しても良いし、更に、摺滑部材4,6を介在させて固定しても良い(図1参照)。
【0057】
[7.支承装置の変形例3]
以上の例では、弾性体13,23の側面に凸部14,24と凹部15,25を設けた場合を説明したが、図13に示すように、弾性体13,23の側面には、凸部14,24と凹部15,25を設けず、代わりに、弾性変形拘束体16の拘束面16aに凸部51又は凹部52を設けるようにしても良い。なお、支承装置の構造は、図11に示した支承装置30と同一であるため詳細は省略する。なお、ここでは、一例として、積層型弾性体23を用いるようにしている。図13では、弾性変形拘束体16の下沓12側の先端部には、フランジ状の上揚防止片32が内側に張り出すように、ボルト・ナット等の固定手段16cによって固定されている。
【0058】
図13に示す弾性変形拘束体16の拘束面16aには、自由側面の弾性層23bの位置に凸部51を設け、補強板23aの位置に凹部52を設けるようにしている。この場合、凸部51は、荷重が加わった際、弾性層23bの自由側面が膨出することで、凹部23より先に、補強板23a,23a間の側方に膨出した側面が圧接されることになる。勿論、本発明では、図14に示すように、補強板23aの位置を凸部51とし、弾性層23bの位置を凹部52としても良い。この場合、凹部52となっている弾性層23bの自由側面が僅かに膨出することで、凸部51と凹部52の部分が同じように弾性変形拘束体16の拘束面16aに圧接されるようにすることが出来る。このように、弾性変形拘束体16の拘束面16aに凸部51と凹部52を設けた場合にも、弾性体13,23の側面に凸部14,24と凹部15,25を設けた場合と類似した作用効果を得ることが出来るが、弾性変形拘束体16の内周面側に凸部や凹部を設けて弾性体13,23との間に隙間を設けるようにすると、荷重が入力された際に、鉛直変位を生じ、これによって弾性体13,23内部に配設された各補強板23aの位置が鉛直下方に変位し、補強板23aと凸部51との位置関係が設定位置からズレてしまい所要の性能を発揮できなくなる虞がある上、弾性変形拘束体16の剛性内周面を加工するのは、弾性体13,23の自由側面(弾性周面)を加工するよりも高コスト化するので、凸部や凹部は弾性体13,23側に設ける方が好ましい。
【0059】
[8.補強板の変形例の説明]
積層型の弾性体23に用いる補強板17aは、具体的に、図15に示すように構成することが出来る。図15(A)に示す例では、上沓11の弾性体23が配設される側の面の中央部に、突出部26aを設け、突出部26aの周囲に環状の凹部26bを設けている。また、下沓12の弾性体23が配設される側の面の中央部に、突出部27aを設け、突出部27aの周囲に凹部27bを設けている。したがって、上沓11と下沓12との間に配設される弾性体23は、中央部が薄肉部で、周囲が環状に厚肉部となっている。この弾性体23の内部には、厚肉部となる外周領域に、環状の補強板23aが設けられる。この弾性体23において、側面には、補強板23aの位置に凹部25が設けられ、弾性層23bの位置に凸部24が連続して又は断続的に設けられている。勿論、補強板23aの位置に凸部24を設け、弾性層23bの位置に凹部25を設けるようにしても良い。また、弾性体23の中央部には、拘束度調節のため、空隙部28aを設けるようにしても良い。このような弾性体23は、中央部が薄肉部で、周囲が環状の厚肉部となっているので、回転追従性を向上させることが出来る。
【0060】
図15(B)は、図15(A)の変形例で、下沓12の弾性体23が配設される側の面が平坦に形成され、上沓11側のみに、突出部26aと凹部26bとが設けられている。この弾性体17では、下沓12の弾性体23が配設される側の面が平坦に形成されているので、下沓12や弾性体23の形状を簡素化することが出来、加工コストを削減出来る。この例でも、弾性体23の中央部に、空隙部28aを設けるようにしても良い。また、弾性体23の側面には、補強板23aの位置に凹部25が設けられ、弾性層23bの位置に凸部24が連続して又は断続的に設けられている。勿論、補強板23aの位置に凸部24を設け、弾性層23bの位置に凹部25を設けるようにしても良い。
【0061】
図15(C)は、弾性体23に同心に、環状の複数の補強板23aが同心円状に設けられている。この例では、上沓11と下沓12の相対する面、すなわち弾性体23が配設される面は平坦に形成されている。この例では、上沓11と下沓12の弾性体23が配設される面に突出部26a,27aや凹部27b,27b(図15(A),(B)参照)が設けられていないので、構成が簡素化され、加工コストを削減することが出来る。なお、複数の環状の補強板23aは、内周側に一つでも良く、また、外周側に一つでも良く、その数も特に限定されるものではない。また、図15(C)では、同じ高さに同心に環状の補強板23aを複数設けているが、各補強板23aの設けられる高さは、必ずしも同じで無くて良い。この例においても更に、弾性体23の中央部には、空隙部28aを設けるようにしても良い。更に、弾性体23の側面には、補強板23aの位置に凸部24が設けられ、弾性層23bの位置に凹部25が連続して又は断続的に設けられている。勿論、補強板23aの位置に凹部25を設け、弾性層23bの位置に凸部24を設けるようにしても良い。
【0062】
図15(D)は、複数の補強板23aが互いに離間して平行に設けられている。この例において、補強板23aの枚数は一枚でも複数枚でも良い。この例では、側面に、補強板23aの位置に凸部24が設けられ、弾性層23bの位置に凹部25が連続して又は断続的に設けられている。勿論、補強板23aの位置に凹部25を設け、弾性層23bの位置に凸部24を設けるようにしても良い。
【0063】
図15(E)は、補強板23aの表裏に、複数の環状突出部23cが同心円状に設けられている。この例において、補強板23aの枚数は一枚でも複数枚でも良い。また、環状突出部23cの数は、特に限定されるものではなく、例えば一つであっても良い。また、環状突出部23cは、連続した突条部ではなく、断続的なものであっても良い。この例では、弾性体23の側面の補強板23aの位置に凸部24が設けられ、弾性層23bの位置に凹部25が連続して又は断続的に設けられている。勿論、補強板23aの位置に凹部25を設け、弾性層23bの位置に凸部24を設けるようにしても良い。また、環状突出部23cは、表裏の何れか一方の面のみに設けても良く、また、補強板23aは複数枚設けるようにしても良い。
【0064】
[9.その他の変形例]
上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【符号の説明】
【0065】
1 上部構造物、2 下部構造物、3 上部プレート、4 摺滑部材、5 下部プレート、6 摺滑部材、10 支承装置、11 上沓、12 下沓、13 弾性体、13 凸部
13(13a,13b,13c) 弾性体、14 凸部、15 凹部、16 弾性変形拘束体、16b,16c 固定手段、17 貫通孔、17a 上揚防止片、18 芯材、19 大径部、21 挿通孔、22ネジ穴、23 積層型弾性体、23a 補強板、23b 弾性層、23c 環状突出部、24 凸部、25 凹部、26a,27a 突出部、26b、27b 凹部,28a 空隙部、30 支承装置、31 芯材、32 上揚防止片、33 大径部、34 ネジ穴、40 支承装置、41 芯材、41a 位置決め凸部、41b 位置決め凹部、42 上揚防止片、43 大径部、43a ネジ穴、44 ネジ部、45a 挿通孔、45b 固定ボルト、45c 固定孔、45d 凹部、51 凸部、52 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剛性体と、第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、弾性変形した前記弾性体の側面が近接又は当接する位置において、前記弾性体を囲繞する弾性変形拘束体とを備え、
前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れかには、芯材が設けられ、
前記芯材は、上揚防止部と水平変位防止部とを有し、
前記弾性体の側面、前記弾性変形拘束体の拘束面の何れかには、凸部又は凹部が形成されていることを特徴とする支承装置。
【請求項2】
所定以上入力されると、前記弾性体が前記凸部と前記凹部とによって作出される隙間の容積を縮小するように弾性変形し、且つ、変形した当該弾性体が拘束体に当接及び/又は圧接して当該弾性体の変形が拘束されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記弾性変形拘束体とによって囲繞されて略密閉状態とされ、
前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記芯材は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体を貫通していることを特徴とする請求項1−3の内何れか1項記載の支承装置。
【請求項5】
前記芯材は、前記第一剛性体又は前記第二剛性体を非貫通であることを特徴とする請求項1−3の内何れか1項記載の支承装置。
【請求項6】
前記弾性体は、内部に補強板を有することを特徴とする請求項1−5の内何れか1項記載の支承装置。
【請求項7】
前記補強板は、リング状であることを特徴とする請求項6記載の支承装置。
【請求項8】
前記補強板は、前記弾性体内に同心円状に設けられていることを特徴とする請求項6記載の支承装置。
【請求項9】
前記補強板は、厚さ方向に突出した突出部を有することを特徴とする請求項6記載の内何れか1項記載の支承装置。
【請求項10】
前記芯材は、前記第二剛性体に設けられ、前記弾性体が前記第二剛性体上に配設され、前記第一剛性体側に前記弾性変形拘束体が設けられ、先端部が前記第一剛性体の貫通孔に係合して前記上揚防止部となることを特徴とする請求項4記載の支承装置。
【請求項11】
前記芯材は、前記第二剛性体に設けられ、先端部に、前記弾性体が配設される大径部が設けられ、該大径部の外周部が前記第一剛性体側の前記弾性変形拘束体の端部に係合して前記上揚防止部となることを特徴とする請求項5記載の支承装置。
【請求項12】
前記弾性体の側面又は前記弾性変形拘束体の拘束面には、前記補強板の位置又は前記補強板の間の位置の一方に前記凸部又は凹部を形成し、他方に凹部又は凸部を形成することを特徴とする請求項1−11の内何れか1項に記載の支承装置。
【請求項13】
前記弾性体の前記凸部が前記弾性変形拘束体の拘束面に当接していることを特徴とする請求項1−11の内何れか1項に記載の支承装置。
【請求項14】
前記第一剛性体と第一構造物との間及び/又は前記第二剛性体と前記第二構造物との間には、摺滑部材が設けられていることを特徴とする請求項1−13記載の内何れか1項記載の支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−19167(P2013−19167A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153185(P2011−153185)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】