説明

改善された出力安定性を有するX線ソースアセンブリ、およびその流体ストリーム分析の適用

【課題】改善された出力安定性を有するX線源アセンブリおよび動作方法を提供する。
【解決手段】アセンブリ2700は、電子2120が上に当たるソーススポットを有するアノード2125、および出力構造に対するアノードソーススポットの位置を制御する制御システム2715,2720を含む。制御システムは、X線ソースアセンブリの1つまたは複数の動作条件にもかかわらず、出力構造2710に対するアノードソーススポットの位置を維持することができる。開示する一態様は、石油をベースとする燃料の硫黄の分析に最も適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願と同じ譲受人に譲渡された以下の出願の主題に関する主題を含む。以下に列挙する出願は、参照によって本明細書に完全に組み込まれている:
「X-RAY TUBE AND METHOD AND APPARATUS FOR ANALYZING FLUID STREAMS USING X-RAYS」、Radleyら、米国特許仮出願第60/336,584号、20001年12月4日出願(整理番号0444.045P)
「A METHOD AND APPARATUS FOR DIRECTING X-RAYS」、Radley、米国特許仮出願第60/383,990号、2002年5月29日出願(整理番号0444.055P)
「X-RAY SOURCE ASSEMBLY HAVING ENHANCED OUTPUT STABILITY」、Radleyら、米国特許仮出願第60/398,965号、2002年6月26日出願(整理番号0444.056P)
「METHOD AND DEVICE FOR COOLING AND ELECTRICALLY INSULATING A HIGH-VOLTAGE、HEAT-GENERATING COMPONENT」、Radley、米国特許仮出願第60/398,968号、2002年6月26日出願(整理番号0444.057P)
「AN ELECTRICAL CONNECTOR、A CABLE SLEEVE、AND A METHOD FOR FABRICATING AN ELECTRICAL CONNECTION」、Radley、米国特許仮出願第10/206,531号、2002年6月26日出願(整理番号0444.058)
「DIAGNOSING SYSTEM FOR AN X-RAY SOURCE ASSEMBLY」、Radleyら、米国特許仮出願第60/398,966号、2002年6月26日出願(整理番号0444.065P)
【0002】
本発明は、一般に、X線ソースに関し、より具体的には、安定性が動作条件の範囲にわたって改善され、流体ストリームの分析に特別に適用される、集束または視準されたX線ビーム出力を有するX線ソースアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
X線分析方法の実施は、20世紀の科学および技術の最も重要な進展の1つであった。X線回折、X線分光法、X線撮像、および他のX線分析技法の使用は、実質的にすべての科学分野において知識の深遠な増大をもたらした。
【0004】
X線蛍光(XRF;X-ray fluorescence)は、物質をX線のビームに曝露させて、たとえばある化学物質の存在を判定する分析技法である。XRF技法では、X線に曝露される物質の化学成分の少なくともいくつかは、X線光子を吸収して、特徴的な2次蛍光X線を生成することができる。これらの2次X線は、物質の化学成分に特有である。適切な検出および分析の際に、これらの2次X線を使用して、物質の化学成分の1つまたは複数を特徴付けることができる。XRF技法は、とりわけ、医学的分析、半導体チップの評価、および法医学を含めて、多くの化学ならびに材料科学の分野において広範に適用される。
【0005】
XRF方法は、たとえばガソリンおよびディーゼル燃料などの石油をベースとする燃料である、燃料の硫黄内容物の測定にしばしば使用されてきた。既存のXRFシステムは、重量で百万分の5(ppm)程度まで低い燃料の硫黄を検出することが既知である。しかし、この検出能力は、厳密な制御条件を必要とした。たとえば、この検出能力は、通常、実験室においてのみ達成可能である。現場においてなど、より厳密ではない条件下では、ASTM(American Society for Testing and Materials)規格方法D2622などの既存のXRF方法は、最低でわずかに約30ppmの燃料における硫黄濃度の検出に限定される。とりわけ、本発明は、燃料における硫黄のXRF検出の繰返し性および検出性について改善を提供する。
【0006】
これらの産業および分析産業などの多くの他の産業において、X線ビーム生成装置は、一般的に使用される。X線ビーム生成装置は、通常、電子ビームを金属表面に当てることによってX線を生成するX線管を含むことが可能である。X線管は、通常、電子ビームを生成する電子銃、および電子ビームが上に向けられる金属表面を提供するアノードを含む。通常、電子銃およびアノードは、1)アノードが接地され、電子銃が高い正の電圧で動作する;2)電子銃が接地され(すなわち、接地カソード)、アノードが高い負の電圧において動作する;または3)カソードおよびアノードが異なる電圧で動作する「バイポーラ」モード、の3つの異なるモードで動作する。低電力の応用分野では、X線管は、通常、「接地カソード」で動作し、電子銃およびその隣接構成要素は、本質的に接地電位で動作し、アノードおよびその隣接構成要素は、あるとすれば、たとえば50キロボルト(kv)以上の高電位で動作する。
【0007】
電子ビームがアノードに当たり、かつそのような高電圧においてアノードを動作することにより、たとえば少なくとも約50ワットの熱、一般的には大量の熱が生成される。この熱を散逸させるために、X線管は、通常、冷却流体、すなわち、冷却油が分解するのを防止するように十分に高い誘電強度を有し、かつ高電位におけるアーク放電を可能にする冷却油などの熱伝導性冷却流体に浸漬される。通常の高誘電率冷却流体は、シェルオイルカンパニ(Shell Oil Company)によって提供されるディアラアックスオイル(Diala Ax oil)(商標)である。
【0008】
従来の技術では、X線管および冷却油は、通常、たとえば円筒金属容器である封止容器内に保持され、X線管は、油に浸漬され、かつ容器から電気的に絶縁される。結果的な構造は、高誘電強度の油によって囲まれた高電位の高温アノードを有するX線管を含み、すべて、封止金属容器内に包含される。その結果、油は、アノードによって加熱される際に、通常、容器内を対流する。対流により油がこのように加熱することにより、容器の壁およびX線管自体も対流により加熱される。従来、封止容器の外壁は、たとえば、自然対流、強制空気対流によって、または容器の外側に冷却流体を流すことによって、直接冷却することが可能である。対流および伝導による伝熱のこの鎖は、非効率的な冷却プロセスである。中庸な電力散逸を必要とする従来のX線管でも、X線ビーム装置およびその構成要素は、通常、たとえば摂氏120度程度の高温になる。そのような高温は、望ましくなく、X線管の動作に有害となることがある。
【0009】
したがって、当技術分野では、X線ビーム装置、またはあらゆる他の高温高電圧装置を冷却する簡単な方法を提供することが必要である。
【0010】
さらに、X線放射を集束させる能力は、最近まで達成不可能であったが、様々な応用分野において使用されるX線ソース、したがってX線システムのサイズおよびコストの低減を可能にした。特許文献1は、強度が高く直径が小さいX線スポットサイズを生成し、一方、低電力低コストのX線ソースを組み込むことを可能にする集束要素を含むX線ソースの一例を記載している。
【0011】
いくつかの文献に上述のような従来の技術に関連した技術内容が開示されている(例えば、特許文献1〜11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,351,520号明細書
【特許文献2】米国特許第6,317,483号明細書
【特許文献3】米国特許第6,285,506号明細書
【特許文献4】米国特許第5,747,821号明細書
【特許文献5】米国特許第5,745,547号明細書
【特許文献6】米国特許第5,604,353号明細書
【特許文献7】米国特許第5,570,408号明細書
【特許文献8】米国特許第5,553,105号明細書
【特許文献9】米国特許第5,497,008号明細書
【特許文献10】米国特許第5,192,869号明細書
【特許文献11】米国特許第5,175,755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
X線放射を集束させる能力の発展は、最近達成されたが、たとえば様々な動作条件下でのX線ビームの出力安定性を改善するために、X線ソースアセンブリをさらに改良することが依然として必要である。本発明は、この必要性を満たすことを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、従来の技術の方法および装置の限定の多くに対処する方法および装置を提供する。以下の記述において、および本明細書にわたって、とりわけ、「集束」、「集束させる」、および「集束される」という表現は、とりわけ、たとえば「集束装置」、「X線集束装置」、「集束手段」、「集束光学機器」において繰り返して出現する。本発明によれば、これらの表現は、X線が、集中されるなど、実際に「集束される」装置または方法に適用することができ、これらの表現は、X線を「集束させる」装置に本発明を限定することを意図していない。本発明によれば、「集束」およびそれに関係する用語は、X線を収集する、X線を視準させる、X線を収束させる、X線を分散させる方法および装置、またはX線の強度、方向、経路、もしくは形状を任意の方式で変化させる装置を識別するように作用することも意図している。X線を取り扱う、加工する、変化させる、修正する、および処理するすべてのこれらの手段は、「集束」およびそれに関係する用語によって本明細書に包含される。
【0015】
本発明の一態様は、X線管、およびX線管によって生成される熱を除去するためにX線管に熱的に結合された熱伝導性誘電材料を備えるX線管アセンブリである。熱伝導性誘電材料は、とりわけ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、およびダイアモンド様炭素とすることが可能である。X線管アセンブリは、第1端部および第2端部を有するX線管を含むことが可能であり、X線管の第1端部は、電子ビーム生成装置を含み、X線管の第2端部は、X線ソースを生成するために電子ビームが当たる表面を有するアノードを含む。熱伝導性誘電材料は、通常、アノードに熱的に結合される。たとえば少なくとも1つの冷却フィンまたは冷却ピンである冷却手段を、熱伝導性誘電材料に熱的に結合することも可能である。本発明の他の態様では、熱伝導性誘電材料によって、X線管から十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管アセンブリを空気冷却することが可能である。本発明の一態様では、熱伝導性誘電材料によってX線管から十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管は、流体冷却剤とは接触しない。
【0016】
本発明の他の態様は、電子ビーム生成装置およびアノードを有するX線管アセンブリを動作する方法を備える。該方法は、電子ビームを電子ビーム生成装置からアノードに向けて、X線を生成し、それによりアノードを加熱することと、アノードに熱的に結合された熱伝導性誘電材料を提供することと、熱伝導性誘電材料によってアノードから熱を伝導することとを備える。再び、熱伝導性誘電材料は、とりわけ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、またはダイアモンド様炭素とすることが可能である。一態様では、アノードは、電気的に絶縁され、電子は、ほとんどまたはまったくアノードから熱伝導性誘電材料に移動しない。この方法の一態様では、熱伝導性誘電材料によってアノードから熱を伝導するとき、アノードから十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管を空気冷却することが可能である。この方法の一態様では、熱伝導性誘電材料によってアノードから熱を伝導するとき、アノードから十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管は、流体冷却剤とは接触しない。
【0017】
本発明の他の態様は、X線ソースアセンブリを備える。X線ソースアセンブリは、ハウジングと、X線を生成し、ハウジングに取り付けられているX線管と、X線管によって生成される熱を除去するためにX線管に熱的に結合される熱伝導性誘電材料と、X線管によって生成されるX線を放出するためのハウジングにおける少なくとも1つの送り孔とを備える。X線ソースアセンブリは、ハウジングにおいてX線管を調節可能であるように取り付ける手段をさらに含むことが可能である。一態様では、X線ソースアセンブリは、第1端部および第2端部を有するX線管を含み、X線管の第1端部は、電子ビーム生成装置を備え、X線管の第2端部は、X線を生成するために電子ビームが上に当たる表面を備える。再び、熱伝導性誘電材料は、とりわけ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、またはダイアモンド様炭素とすることが可能である。誘電材料は、熱伝導性誘電材料に熱的に結合された少なくとも1つの冷却フィンまたは冷却ピンによって冷却することも可能である。X線ソースアセンブリは、たとえば少なくとも1つのねじ込みピンによって、X線管ハウジングに調節可能であるように取り付けられるX線ソースを有することも可能である。X線ソースアセンブリは、たとえば少なくとも1つの送り孔を有する可動バフルによって、ハウジングの少なくとも1つの送り孔を経て放出されるX線を変化させるまたは修正する手段を含むことも可能である。本発明の一態様では、ハウジングの少なくとも1つの送り孔を経て放出される少なくともいくらかのX線を受け取るために、X線光学機器を取り付けることが可能である。このアセンブリの一態様では、熱伝導性誘電材料によってX線管から十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管アセンブリを空気冷却することが可能である。このアセンブリの一態様では、熱伝導性誘電材料によってX線管から十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管は流体冷却剤とは接触しない。
【0018】
本発明の他の態様は、電子ビーム生成装置を備える第1端部、およびアノードならびにアノードに熱的に結合された熱伝導性誘電材料を有する第2端部を有するX線管アセンブリを動作する方法を備える。該方法は、電子ビームを電子ビーム生成装置からアノードに向けて、X線を提供し、それによりアノードを加熱することと、アノードから熱伝導性誘電材料に熱を伝導することによってアノードを冷却することとを備える。X線管アセンブリは、少なくとも1つの冷却ピンまたは冷却フィンを含むことも可能であり、アノードを冷却することは、流体冷却剤に少なくとも1つの冷却ピンまたは冷却フィンの上を移動させることをさらに含むことが可能である。また、アノードから熱伝導性誘電材料に熱を伝導することによってアノードを冷却することは、アノードから電子をほとんどまたはまったく移動させずに実施することが可能である。この方法の一態様では、熱伝導性誘電材料によってアノードから熱を伝導することによってアノードを冷却するとき、アノードから十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管アセンブリを空気冷却することが可能である。この方法の他の態様では、熱伝導性誘電材料によってアノードから熱を伝導することによってアノードを冷却するとき、十分な熱を除去することが可能であり、それにより、X線管は流体冷却剤とは接触しない。
【0019】
本発明の他の態様は、X線ソースおよびX線集束装置からのX線の透過を最適化する方法を備える。X線ソースは、X線を生成するためのX線管を備え、X線管は、調節可能取付け手段によってハウジングにおいて取り付けられ、ハウジングは、X線管によって生成されるX線を放出する少なくとも1つの送り孔を有する。該方法は、X線管をハウジングにおいて取り付けることと、X線管に電圧を印加し、それにより、ハウジングの少なくとも1つの送り孔を経てX線のビームを放出させることと、X線集束装置をハウジングにおいて少なくとも1つの送り孔に隣接して取り付け、それにより、X線収束装置がX線管から少なくともいくらかのX線を受け取ることと、X線集束装置を経てX線を透過させることを最適化するために、X線管の調節可能取付け手段を調節することとを備える。調節可能取付け手段は、複数のねじ込み固定具を備えることが可能である。X線集束装置は、X線集束結晶またはX線集束キャピラリ装置を備えることが可能である。
【0020】
本発明の他の態様は、X線蛍光分析システムであり、X線ソースおよびハウジングを有するX線ソースアセンブリと、X線ソースアセンブリに動作式に結合され、かつ第1X線集束装置をX線ソースアセンブリと位置合わせする手段を有する第1X線集束装置と、X線集束装置に動作式に結合されたハウジングを有し、かつX線曝露アセンブリを第1X線集束装置と位置合わせする手段を有するX線曝露アセンブリと、X線曝露アセンブリに動作式に結合され、かつ第2X線集束装置をX線曝露アセンブリと位置合わせする手段を有する第2X線集束装置と、第2X線集束装置に動作式に結合され、かつX線検出装置を第2X線集束装置と位置合わせする手段を有するX線検出装置とを備える。位置合わせする手段の少なくとも1つは、複数の位置合わせピンを備える。好ましくは複数のアセンブリであるアセンブリの少なくとも1つの位置合わせにより、アセンブリの1つまたは複数を現場以外で組み立てて、現場でアセンブリを大規模に再位置合わせすることを必要とせずに、現場で装備することが可能になる。現場での再位置合わせを回避することは、より効率的である。
【0021】
本発明の他の態様は、X線を検出する方法である。該方法は、X線ソースを提供することと、X線光学機器を使用して、X線の少なくともいくらかを小面積X線検出器に集束させることと、小面積X線検出器によってX線を検出することとを備える。本発明の一態様では、小面積検出器は、半導体型検出器またはケイ素リチウム型検出器(すなわち、SiLi型検出器)とすることが可能である。本発明の一態様では、小面積検出器は、PINダイオード型検出器とすることが可能である。本発明の一態様は、たとえば小面積検出器の空気冷却である、小面積検出器の冷却をさらに備える。小面積線検出器は、検出器開口を含むことが可能であり、検出器開口の面積は、約10平方ミリメートル未満、好ましくは約6平方ミリメートル未満、またはさらに約4平方ミリメートル未満とすることが可能である。X線の少なくともいくらかを集束させることは、キャピラリ型X線光学機器またはDCCX線光学機器を使用して実施することが可能である。該方法は、約摂氏10度と約摂氏40度との間の温度においてなど、約摂氏0度より高い温度で実施することが可能である。
【0022】
本発明の他の態様は、X線を検出する装置を備える。該装置は、小面積X線検出器、および小面積X線検出器の上にX線の少なくともいくらかを集束させる手段を備える。小面積X線検出器は、通常、通常約6平方ミリメートル未満である、約10平方ミリメートル未満の面積を有する検出器開口を含む。小面積X線検出器は、半導体型検出器またはケイ素リチウム型検出器とすることが可能である。本発明の一態様では、小面積検出器は、PINダイオード型とすることが可能である。本発明の一態様では、小面積検出器は、空気冷却など、冷却することが可能である。少なくともいくらかのX線を集束させる手段は、たとえば湾曲結晶またはキャピラリX線光学機器である、X線光学機器を備えることが可能である。
【0023】
本発明の他の態様は、X線を使用して流体を分析する装置を備える。該装置は、流体の少なくとも1つの成分にX線蛍光を発生させるために、流体をX線に曝露させる手段、および流体の少なくとも1つの特性を判定するために、流体からのX線蛍光を分析する手段を備える。流体は、液体または気体とすることが可能である。流体をX線に曝露させる手段は、X線を流体に集束させる少なくとも1つのX線光学機器とすることが可能である。
【0024】
本発明の他の態様は、X線を使用して流体の成分を分析する方法を備える。該方法は、流体をX線に曝露させて、流体の少なくとも1つの成分にX線蛍光を発生させることと、流体からX線蛍光を検出することと、検出X線蛍光を分析して、流体の少なくとも1つの特性を判定することとを備える。一態様によれば、該方法は、ある時間期実質的に連続して実施される。該方法は、真空下で実施することも可能である。
【0025】
一態様では、X線蛍光の検出は、約摂氏0度より高温など、摂氏マイナス50度より高い温度で実施される。該方法の他の態様では、X線蛍光の検出は、小面積X線検出器、たとえば半導体型X線検出器、たとえばPIN型半導体X線検出器を使用して実施することが可能である。
【0026】
本発明の他の態様は、燃料の硫黄を分析する装置を備える。該装置は、燃料の少なくともいくらかの硫黄にX線蛍光を発生させるために、燃料をX線に曝露させる手段、および燃料の硫黄の少なくとも1つの特性を判定するために、燃料からのX線蛍光を分析する手段を備える。燃料の硫黄の少なくとも1つの特性は、燃料の硫黄の濃度とすることが可能である。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、燃料の硫黄を分析する方法である。該方法は、燃料をX線に曝露させて、燃料の硫黄の少なくともいくらかにX線蛍光を発生させることと、X線蛍光を検出することと、硫黄からのX線蛍光を分析して、燃料の硫黄の少なくとも1つの特性を判定することとを備える。該方法は、通常、ある時間期間実質的に連続して実施される。燃料をX線に曝露させることは、真空下で実施することが可能である。真空下において実施されるとき、燃料は、通常、真空に曝露されることを防止するために、室内に封入される。たとえば、燃料を室に封入することが可能であり、X線は、室の窓を介して燃料にアクセスする。一態様によれば、X線は、単色X線とすることが可能である。また、X線蛍光の検出は、約摂氏マイナス100度より高い温度、通常約摂氏マイナス50度より高い温度、または、たとえば室温(摂氏20度)においてである、約摂氏0度よりさらに高い温度で実施することが可能である。検出は、たとえばPIN型半導体検出器である、半導体型検出器を使用して実施することが可能である。
【0028】
本発明の改善された熱散逸の態様に関して、本発明は、高電圧熱生成構成要素を冷却および電気絶縁する装置である。この装置は、構成要素と熱接続された第1側および第2側を有する第1熱伝導性材料と、第1熱伝導性材料の第2側と熱接続された第1側および第2側を有する熱伝導性誘電材料と、熱伝導性誘電材料の第2側と熱接続された第1側を有する第2熱伝導性材料とを含み、構成要素によって生成される熱は、構成要素から装置を経て伝導され、一方、装置全体の電流損は、最小限に抑えられる。本発明の一態様では、構成要素と第1熱伝導性材料との熱接続は、構成要素と第1熱伝導性材料との間の接触領域を経ており、接触領域は、第1外側寸法を有し、第1熱伝導性材料は、第1外側寸法より大きい第2外側寸法を有する周囲を有し、構成要素からの少なくともいくらかの熱は、接触領域から第1熱伝導性材料の周囲に向かう方向に、第1熱伝導性材料において伝導される。本発明の他の態様では、第1熱伝導性材料は、第1プレートを備え、少なくともいくらかの熱が、接触領域から第1プレートの周囲に向かう方向に、第1プレートにおいて伝導され、したがって熱伝導性誘電材料を経て第2熱伝導性材料に伝導される。本発明は、たとえば少なくとも1つの冷却フィンまたは冷却ピンである、第2熱伝導性材料からの熱の除去を容易にする手段を含むことも可能である。本発明の一態様では、熱伝導性誘電材料は、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、およびダイアモンド様炭素の1つを備える。高電圧熱生成構成要素は、装置の中でも、X線生成装置、電子ビーム生成装置、高電圧導線、またはマイクロ波生成装置とすることが可能である。
【0029】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析技法および光学機器と共に使用することが可能である。
【0030】
本熱散逸発明の他の態様は、X線管アセンブリであり、高電圧被加熱アノードおよびアノードに結合された熱散逸装置を含む。熱散逸装置は、アノードと熱接続された第1側および第2側を有する第1金属プレートと、第1金属プレートの第2側と熱接続された第1側および第2側を有する熱伝導性誘電材料と、熱伝導性誘電材料プレートの第2側と熱接続された第1側を有する第2金属プレートとを備え、アノードにおいて生成される熱は、アノードから装置を経て伝導され、一方、装置全体の電流損は、最小限に抑えられる。本発明の1つの改善された態様では、熱散逸装置は、アノードの構造支持を提供した。たとえば、熱散逸装置は、アノードの実質的にすべての構造支持を提供することができる。本発明の他の態様では、X線管アセンブリは、第1金属プレートに結合された高電圧コネクタをさらに含む。
【0031】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析技法および光学機器と共に使用することが可能である。
【0032】
本熱散逸発明の他の態様は、高電圧熱生成構成要素を冷却および電気的に絶縁する装置を製造する方法である。該方法は、構成要素に接触する第1表面および第2表面を有する第1熱伝導性材料を提供することと、第1表面および第2表面を有する熱伝導性誘電材料を提供することと、第1熱伝導性材料および熱伝導性誘電材料が熱接続されるように、第1熱伝導性誘電材料の第1表面を第1熱伝導性材料の第2表面に結合することと、第1表面および第2表面を有する第2熱伝導性材料を提供することと、熱伝導性誘電材料および第2熱伝導性材料が熱接続されるように、第2熱伝導性材料の第1表面を熱伝導性誘電材料の第2表面に結合することとを備える。本発明の一態様では、結合は、糊付け、接着結合、はんだ付け、ろう付け、または溶接を備える。使用することが可能である1つの接着剤は、ダウケミカル(Dow Chemical)の4714熱伝導性ケイ素接着剤またはその等価物である。本発明の他の態様は、高電圧コネクタを電気絶縁性第1熱伝導性材料に結合することをさらに含む。
【0033】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システムおよび光学機器と共に使用することが可能である。
【0034】
X線装置によって生成されるX線ビームを内部または外部のX線光学機器と位置合わせすることが望ましい可能性があるので、本発明の一態様によれば、X線ビーム装置の構成要素は、とりわけ、熱膨張による位置合わせの変動を相殺するために、ユーザが光学機器に対するX線ビームの位置または方向を調節することを可能にする方式で取り付けられる。さらに、X線ビーム装置と光学機器との位置合わせは、X線管が封止容器の内部にボルトで締めされ、かつ封止容器が冷却流体を有するとき、困難なことがあるので、本発明の一態様では、冷却流体をほとんどまたはまったく必要としないX線ビーム装置が提供される。たとえば、本発明の一態様によれば、十分な冷却を有するが、光学装置との精密な位置合わせなど、装置の位置合わせを可能にするX線ビーム装置が提供される。
【0035】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システムおよび光学機器と共に使用することが可能である。
【0036】
本発明の改善された安定性の態様に関して、上述したX線管においてなど、X線を生成するためにアノードにeビームを当てることを使用することにより、X線ソース内においてX線管を支持および位置決めする要素を熱膨張させるのに十分な量の熱を生成することができる。この熱膨張は、アノードから発散しているX線と、たとえばX線の方向を制御するように作用する要素との間に誤整列を生じさせるのに十分であることがある。その結果、異なる電力においてX線ソースを動作することにより、発散X線と集束電極との間において、ある範囲の誤整列がもたらされる可能性がある。この誤整列により、X線ソースの出力電力強度が大きく変動することがある。誤整列により、たとえばピンホールまたは単一反射鏡である、いくつかのタイプのビーム制御要素のX線スポットまたはX線ビーム位置が変化することもある。したがって、一態様では、ある範囲の動作電力レベルにわたって改善された出力安定性、ならびに改善されたX線スポットまたはX線ビーム位置の安定性を有するX線ソースアセンブリが、本明細書において提供される。より具体的には、本発明の態様によるX線ソースアセンブリは、アノード電力レベル、ハウジングの温度、およびアセンブリの周囲温度など、X線ソースの1つまたは複数の動作条件の変化にもかかわらず、比較的一定に維持することができるX線ビーム出力強度を提供する。
【0037】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システム、光学機器、および熱散逸の態様と共に使用することが可能である。
【0038】
改善された安定性について、電子が上に当たるソーススポットを有するアノードを含むX線ソースアセンブリ、および出力構造に対してアノードソーススポットの位置を制御する制御システムを提供することにより、追加の利点が提供される。制御システムは、X線ソースアセンブリの1つまたは複数の動作条件の変化にもかかわらず、出力構造に対するアノードソーススポットの位置を維持することができる。
【0039】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システム、光学機器、および熱散逸の態様と共に使用することが可能である。
【0040】
本発明の他の改善された安定性の態様では、X線を生成するアノードを有するX線管、およびアノードによって生成されるX線を収集する光学機器を含むX線ソースアセンブリが提供される。X線ソースアセンブリは、光学機器のX線出力強度を制御する制御システムをさらに含む。制御システムは、X線ソースアセンブリの1つまたは複数の動作条件の変化にもかかわらず、X線出力強度を維持することができる。
【0041】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システム、光学機器、および熱散逸の態様と共に使用することが可能である。
【0042】
本発明の他の改善された安定性の態様では、X線を提供する方法が提示される。該方法は、電子が上に当たるソーススポットを備えるアノードを有するX線ソースアセンブリを提供することと、出力構造に対するアノードソーススポットの位置を制御することとを含む。制御は、X線ソースアセンブリの少なくとも1つの動作条件の変化にもかかわらず、出力構造に対するアノードソーススポットの位置を維持することを含む。
【0043】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システム、光学機器、および熱散逸の態様と共に使用することが可能である。
【0044】
本発明の他の改善された安定性の態様では、X線を提供する方法が提示される。該方法は、X線を生成するアノードを備えるX線管、およびアノードによって生成されるX線を収集する光学機器を有するX線ソースアセンブリを提供することと、光学機器からのX線出力の強度を制御することとを含む。制御は、X線ソースアセンブリの少なくとも1つの動作条件の変化にもかかわらず、光学機器からのX線の出力の強度を維持することを含む。
【0045】
本発明のこの態様は、上記で解説した流体分析システム、光学機器、および熱散逸の態様と共に使用することが可能である。
【0046】
本発明のこれらおよび他の実施形態および態様は、添付の図面、以下の記述、および添付の請求項を検討する際に、より明らかになるであろう。
【0047】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結論部分において具体的に指摘され、かつ明瞭に主張されている。しかし、本発明は、本発明の他の目的および利点と共に、構造および実施方法の両方に関して、好ましい実施形態の以下の詳細な記述および添付の図面を参照することによって、最適に理解することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を実施するために使用することができるX線蛍光システムの概略的ブロック図である。
【図2】本発明の一態様が改善の対象とする、従来の技術のX線管の概略的断面図である。
【図3】本発明の一態様の概略的断面図である。
【図4】本発明の他の態様の透視図である。
【図5】本発明の他の態様の透視図である。
【図6】本発明の他の態様の透視図である。
【図7】本発明の他の態様のハウジングアセンブリの透視図である。
【図8】ハウジングが除去されている、図7に示した本発明の態様の透視図である。
【図9】本発明の他の態様によるX線蛍光システムの概略的なブロック図である。
【図10】本発明の一態様による高電圧構成要素ならびに冷却および電気絶縁装置の一実施形態の断面正面図である。
【図11】本発明の一態様による図10の冷却および電気絶縁装置の詳細を示す図である。
【図12】本発明の態様による、X線ソースアセンブリの一実施形態の断面図である。
【図13】本発明の態様による、変位に対する出力強度をプロットする、図12に示したようなX線ソースについてソース走査曲線の一例を示す図である。
【図14】本発明の態様により対処される、光学機器に対するソーススポットの誤整列を示す図1のX線ソースアセンブリの断面図である。
【図15】本発明の態様による、光学機器に対するソーススポットの変位を監視するための相違センサ配置を示す図14のX線ソースアセンブリの断面図である。
【図16】本発明の態様による、図12、14、および15に示したアノードベースアセンブリの一実施形態の断面図である。
【図17】本発明の態様による、図12、14、および15のアノードスタックの断面図である。
【図17A】本発明の態様による、異なるアノード電力レベルについてアノードスタックの要素にわたる温度変化を示すグラフの図である。
【図17B】本発明の態様による、アノード電力レベルの関数として基準温度変化を示すグラフの図である。
【図18】本発明の態様による、改良X線ソースアセンブリの一実施形態の断面図である。
【図19】本発明の態様による、X線ソースアセンブリの制御システムの一実施形態のブロック図である。
【図19A】本発明の態様による、図19の制御システムのプロセッサによって実施される処理の一実施形態を示す図である。
【図20】本発明の態様による、X線ソースアセンブリの制御処理の一実施形態のフローチャートの図である。
【図21】本発明の態様による、図20の制御処理によって使用することができる例示的な基準温度の表の図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、物質をX線放射に曝露させて、物質の特性を決定するために検出および分析することができる蛍光放射を生成するために使用される通常のシステム10の概略的ブロック図を示す。そのようなシステムは、通常、X線ソース12、第1X線集束装置14、サンプル励起チャンバー16、第2X線集束装置18、およびX線検出器20を含む。X線ソース12は、たとえばX線管であり、X線ビーム22を生成する。X線ビーム22は、通常、発散ビームであるので、ビーム22は、1つまたは複数のX線集束装置14によって回折または集束される。X線集束装置14は、たとえば、参照によって本明細書に組み込まれている、同時係属の米国出願09/667,966号、2000年9月22出願(整理番号0444.035)において開示された結晶など、実質的に平行な原子面を有する両側湾曲結晶である、1つまたは複数の両側湾曲結晶とすることが可能である。X線集束装置は、1つまたは複数のキャピラリ型X線光学機器または湾曲結晶光学機器とすることが可能であり、たとえば、参照によって本明細書に組み込まれている(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、および(特許文献11)において開示された光学機器の1つである。1つまたは複数のX線集束装置は、サンプル励起チャンバー16に向けられる集束ビーム24を生成する。
【0050】
励起チャンバー16において試験されているサンプルは、特性が所望される任意の望ましい物質とすることが可能である。サンプルは、固体、液体、または気体とすることが可能である。サンプルが固体である場合、サンプルは、たとえばX線反射平坦表面、光反射表面など、通常、比較的平坦な表面上に配置される。サンプルは、固体、液体、または気体である場合、X線ビームが通過することができるX線透過開口を有する、封止容器などの閉じた容器または室に包含することも可能である。ビーム24によって放射されたとき、チャンバー16にあるサンプルの成分の少なくとも1つは、通常、その成分がX線蛍光を発生する、すなわちX線24による励起のためにX線の2次ソース26を生成するような方式で励起される。再び、X線ビーム26は、通常、X線の発散ビームであるので、ビーム26は、たとえば装置14と同様の装置である2次X線集束装置18によって集束され、X線検出器20に向けられるX線の集束ビーム28を生成する。当業者には、本発明のこの態様および他の態様は、X線蛍光の応用分野に関して記述されているが、X線吸収の応用分野においても使用することが可能であることが明らかであろう。
【0051】
X線検出器20は、比例計数管型または半導体型のX線検出器とすることが可能である。通常、X線検出器20は、検出X線の少なくともいくつかの特性を含む電気信号30を生成し、この信号は、分析、プリントアウト、または他の表示のために分析装置32に転送される。
【0052】
本発明の様々な態様は、図1に示したシステム10およびシステム構成要素に進展および改善を提供する。本発明のこれらの態様の1つを、図2および3に関して開示する。図2は、たとえばオックスフォードインストゥルメンツオブスコッツバリー(Oxford Instruments of Scotts Valley、カルフォルニア州)によって生産されるシリーズ5000TF5011X線管である、通常の従来の技術のX線管アセンブリ34の断面図を示すが、他の同様のX線管を使用することが可能である。通常通り、この従来の技術のX線管34は、非導電性ガラスハウジングを通常備える円筒ハウジング36を含む。電子ビーム生成装置38およびアノード40が、通常、図示した配向でハウジング34において取り付けられる。アノード40は、通常、薄い固体材料であり、たとえば、銅または同様の高温導電性材料の導電性アノードの上に取り付けられたタングステンまたはクロミウムである。アノード40は、通常、表面50を提供するように適応され、ハウジング41において剛性支持をアノード40に提供し、また構造41より上の気体体積を構造41より下の体積から隔離するように適応された円筒支持構造41を有する。アノード40は、ハウジング36を貫通する円筒非導電性支持44をも含む。電気接続42が、電力を電子ビーム生成装置38に提供する。ハウジング36は、通常、X線管34によって生成されるX線を放出する少なくとも1つの開口46を含む。ハウジング36は、通常、管34の内体積を周囲環境から隔離し、管34の内体積は、通常、約10-6Torrなど、少なくともある形態または真空を備える。
【0053】
たとえば50ワットの電力が電気接続42に提供されたとき、電子ビーム生成装置38は、矢印48によって示すように、アノード40の表面50に向けられる電子ビームを生成する。表面50は、通常、たとえば管の軸に対して約45度傾斜している傾斜表面である。電子ビーム48と表面50との相互作用により、X線が生成され、すべての方向に散乱される。生成されるX線の波長および周波数は、とりわけ、電気接続42に提供される電力の関数である。しかし、これらの散乱X線の少なくとも1つの経路は、開口46に向いた矢印52によって示される。X線ビーム52の方向は、通常、管34の配向の関数である。矢印52によって表されるX線ビームは、開口46のX線透過性障壁54を通過する。X線透過性障壁54は、通常、X線の通過を可能にし、一方周囲環境からハウジング36の内体積を隔離するベリリウム(Be)またはチタニウム(Ti)から作成される。
【0054】
電子ビーム48をアノード40に当てることによってX線を生成することにより、大量の熱が生成され、たとえば、アノード40の温度は、通常、少なくとも摂氏60度まで上昇し、タングステンの融点程度まで上昇することがある。その結果、管34は、通常、たとえば石油をベースとする油である冷却および絶縁流体56に浸漬される。管34および流体56は、通常、円筒ハウジング58に包含される。ハウジング58は、通常、X線に対して不透過性であり、たとえば、ハウジング58は、通常、鉛張りすることができる。冷却および絶縁流体56の体積、したがってハウジング58のサイズは、X線管34の冷却要件の関数である。ハウジング58は、管34によって生成されるX線を放出するために、通常、管34の開口46と位置合わせされた開口60をも含む。管34は、通常、たとえばねじ込み接続により、管34の支持44に取り付けられた支持構造62によってハウジング58内において剛性に取り付けられる。支持44は、アノード40をハウジング58から電気的に絶縁するために、通常、セラミック材料などの非導電性材料から作成される。
【0055】
図3は、図2に示した従来の技術のX線管アセンブリに対する改良である本発明の一態様によるX線管アセンブリ64を示す。図3に現われる特徴の多くは、図2の特徴と実質的に同じとすることができ、同じ参照符合で識別される。本発明のこの態様によれば、X線管アセンブリ64には、ハウジング36を有するX線管34’(管34と同様とすることが可能である)、電子ビーム生成装置38、アノード40、および図2に関して示しかつ記述した構造と本質的に同一である開口46が含まれる。しかし、本発明によれば、X線管アセンブリ64は、X線管34’に取り付けられた、または熱的に結合された少なくとも1つの熱伝導性であるが非導電性の材料70を含む。熱伝導性非導電性材料(熱伝導性誘電材料と呼ぶことがある)70は、高い熱伝導性および高い誘電強度をも有する材料である。たとえば、材料70は、通常、少なくとも約100Wm-1-1であり、好ましくは少なくとも150Wm-1-1の熱伝導性を有し、材料70は、通常、少なくとも約1.6×107Vm-1であり、好ましくは少なくとも約2.56×107Vm-1の誘電強度を有する。材料70は、とりわけ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、ダイアモンド様炭素、その組合せ、またはその等価物もしくは派生物とすることが可能である。図3では、材料70は、たとえば円形円筒または矩形円筒の構造である円筒構造として示されているが、材料70は、多くの異なる幾何学的形状を取り、かつ所望の機能を提供することが可能である。
【0056】
X線管64は、通常、ハウジング158において取り付けることが可能である。ハウジング158は、図2のハウジング58と同様であり、通常、たとえば鉛張り材料、鉛、またはタングステンであるX線不透過性材料から製作される。ハウジング158は、円形円筒および矩形円筒を含めて、あらゆる適切な形状を想定することが可能である。本発明の一態様では、ハウジング158は、タングステンプレートから製作され、タングステンの機械加工性が不良であることにより、ハウジング158は、矩形円筒の形状であることが好ましい。当然、タングステンのハウジングを製作する他の手段を提供する方法が作成される場合、これらの方法を本発明に適用することもできる。
【0057】
本発明によれば、熱伝導性誘電材料70により、具体的にはアノード40から、および一般的には管34’から熱を伝導し、一方、具体的にはアノード40から、および一般的には管34’からの電流の移動を最小限に抑えるまたは防止することが可能になる。本発明のこの態様では、支持44’(図2の管34の支持44とは異なる)は、通常、たとえば銅またはアルミニウムである導電性材料で作成される。本発明のこの態様によれば、熱は、アノード40から支持44’および材料70を介して伝導され、一方、材料70は、アノード40をたとえば外部ハウジング158から電気的に絶縁する。
【0058】
従来の技術のX線管アセンブリとは異なり、本発明のこの態様によるX線管34’の温度は、アノード40から熱を伝導して、材料70の表面領域を介して熱を周囲環境に散逸させることによって低減することができる。したがって、材料70は、管34’の冷却要件を低減するように、またはアノード40の加熱の増大を達成することができるように、具体的にはアノード40、および一般的には管34’を冷却する。たとえば、本発明の一態様では、材料70の存在は、管34’を冷却する十分な手段を提供し、それにより、追加の冷却手段は、ほとんどまたはまったく必要とされない。本発明の他の態様では、材料70の存在は、管34’を冷却する十分な手段を提供し、それにより、たとえば強制空気冷却(非強制空気冷却は、本発明の一態様を特徴付けるが)である空気冷却は、管34’の十分な冷却を提供する。本発明の他の態様では、材料70の存在は、管34’を冷却するのに十分な手段を提供し、それにより、従来の技術のX線管アセンブリに必要な流体より、必要とされる冷却および絶縁流体が少ない。たとえば、冷却流体は、従来の技術の管アセンブリより少なくとも10%少なく、通常、冷却流体は、従来の技術の管アセンブリより少なくとも20%少なく、好ましくは、冷却流体は、従来の技術の管アセンブリより少なくとも50%少ない。
【0059】
本発明の一態様によれば、材料70の冷却能力は、たとえば冷却フィンまたは冷却ピンを材料70に導入することによって、材料70の表面領域を増大させることによって増強される。本発明の他の態様では、材料70に熱的に結合された構造に冷却フィンまたは冷却ピンを導入することによって、追加の冷却能力が得られる。1つのそのような随意選択の構造を図3にファントムで示す。図3は、材料70に取り付けられた、そうでない場合は材料70に熱的に結合されたプレート72を含む。プレート72は、たとえば銅またはアルミニウムである熱伝導性材料で作成され、冷却に十分な表面領域を提供することが可能である。本発明のこの態様では、熱結合構造の表面領域は、冷却ピンまたは冷却フィン74を使用することによって改善される。本発明の一態様によれば、プレート72およびフィン74は、材料70から熱を伝導することができるように、熱伝導性の材料からなり、たとえば銅、鉄、またはアルミニウムをベースとする。本発明の他の態様では、プレート72は、タングステン銅など、熱伝導性であり、かつX線の貫通に対して耐性のある材料から製作される。タングステン銅の銅は、所望の導電性を提供し、一方、タングステンは、所望のX線遮蔽を提供する。同じまたは同様の特性を有する他の材料をプレート72に使用することが可能である。プレート72が、タングステン銅などの2重材料であるとき、フィン70は、単に、銅またはアルミニウムをベースとする材料とすることが可能である。
【0060】
図4、5、および6は、本発明の他の態様による、X線ソースおよびX線集束装置アセンブリ80ならびにX線ソースアセンブリ82を示す。X線ソースおよびX線集束装置アセンブリ80は、X線ソースアセンブリ82およびX線集束装置84を備える。図4に示したX線集束装置84は、上記で参照した米国特許において開示されているポリキャピラリX線光学機器であるが、装置84は、上記で解説したX線集束結晶およびキャピラリ型光学機器など、あらゆるタイプのX線集束装置とすることが可能である。本発明の一態様では、X線ソースアセンブリ82は、図3において記述し、かつ示した熱伝導性誘電材料70を有する少なくとも1つのX線ソース64を備える。X線ソースアセンブリ82は、図3では矩形円筒として示されているが、アセンブリ82は、円計円筒または球を含めて、あらゆる好都合な幾何学的形状を取ることが可能である。アセンブリ82は、電気接続86、87を介して電力を受け取る。
【0061】
図5は、図4に示したX線ソースおよびX線集束装置の破断図を示す。図5に示したように、アセンブリ80は、X線ソースアセンブリ82およびX線集束装置84を含む。X線ソースアセンブリ82は、ハウジング88、X線管アセンブリ64(図3に示す)、およびX線バフルアセンブリ90を含む。本発明のこの態様によれば、ハウジング88は、円筒または矩形の円筒の形状など、円筒の形状であり、たとえば鉛、鉛張り材料、タングステン、劣化ウラン、またはその組合せである、X線遮蔽材料から製作される。ハウジング88は、X線管34’によって生成されるX線を放出する少なくとも1つの送り孔(図示せず)、およびX線光学機器84を取り付ける手段を含む。図5に示した本発明の態様では、取付け手段89は、ハウジングの貫通口の回りに位置するボルト締めフランジ接続を備え、X線管34’によって生成されるX線が、その接続を通って光学機器84に移動する。
【0062】
ハウジング82は、X線管アセンブリ64が通って延びることが可能である送り孔94を有する下部プレート92を含むことも可能である。たとえば、図5に示したように、X線管アセンブリ64の冷却フィン74は、たとえば冷却フィン74への空気アクセスを提供するために、下部プレート送り孔94を通って延びることが可能である。図示したように、本発明の一態様では、冷却フィン74は、放射状に方向付けることが可能である。
【0063】
本発明の他の態様によれば、ハウジング88は、ハウジング88が取り付けられる構成要素に対してハウジング88を位置合わせする少なくとも1つの手段を含むことが好ましい。たとえば、ハウジング88における位置合わせ手段は、X線管ソーススポットの配向の基準とされる1つまたは複数のダウエルピンまたはダウエルピンホール98を含むことが可能である。これらのダウエルホールまたはダウエルピンの調節および配向について、以下で解説する。
【0064】
X線ソースアセンブリ82は、アセンブリ82から放出されるX線の量およびタイプを変化させるバフルプレートアセンブリ90を含むことも可能である。本発明のこの態様によれば、バフルアセンブリ90は、好ましくは複数の貫通口96である、少なくとも1つの貫通口96を有するバフル円筒91を含む。貫通口は、図3に示した開口46に対してなど、X線管アセンブリのX線開口に対して並進移動可能である。開口96は、サイズおよび形状を変更することが可能であり、または、アセンブリ82によって放出されるX線の量およびタイプを変更するために使用することができる1つまたは複数のX線ろ過装置を含むことが可能である。バフルアセンブリ90は、1つまたは複数の開口を有するあらゆるタイプのプレートを備えることが可能であるが、図5に示した本発明の態様によれば、バフルアセンブリ90は、X線管34’の軸の回りに取り付けられ、かつハウジング88に回転式に取り付けられた円形円筒91を備える。バフル円筒91は、ディスク93に取り付けることが可能である。本発明のこの態様によれば、管34’の開口に対する開口96の配向は(再び図3参照)、図示されていない手段によってディスク93を介してバフル円筒91を回転させることによって変更することが可能である。バフル円筒91を回転させる手段は、たとえばステッパモータまたは線形アクチュエータによる、手動手段または自動手段とすることが可能である。
【0065】
図6は、明瞭に図示するためにハウジング88の側面および上部が取り除かれている、図4および5のX線ソースおよび集束装置アセンブリ80の図を示す。図6は、X線管アセンブリ64、バフル円筒アセンブリ90、およびX線光学機器84を示す。図6は、ハウジング88の下部プレート92の上へのX線管アセンブリ64の調節可能な取付けをも示す。図5に示したように、電気接続86が、管34’のアノード40に動作式に接続され、電子接続87が、管34’の電子ビームアノード生成装置38に動作式に接続される(図3参照)。
【0066】
本発明のこの態様によれば、X線管アセンブリ64(熱伝導性誘電材料70を有する)が、ハウジング88に調節可能であるように取り付けられ、それにより、X線管34’によって放出されるX線の方向および配向を、X線光学機器84との位置合わせについて最適化するなど、変更および最適化することが可能である。回転調節および並進調節を含めて、X線管アセンブリ64の配向および位置合わせを変更する多くの手段を使用することが可能であるが、図4、5、および6に示した本発明の態様によれば、X線管アセンブリ64の配向および位置合わせは、好ましくは複数のねじ込みロッドまたはねじである、少なくとも1つのねじ込みロッドまたはねじによって実施される。図6に示した態様では、3つのねじ込みねじ100が、下部プレート92を通ってねじ込まれて、プレート72の下部表面と係合する。ねじ100は、プレート72のねじ込み穴など、穴の中にねじ込むことが可能であり、または、単にプレート72の下部プレートに接して支持することが可能である。ねじ100の調節またはあらゆる他の調節手段は、手作業で実施することが可能であり、または自動化することが可能である。
【0067】
本発明の一態様によれば、管アセンブリ64の配向の調節は、ハウジング88に登録可能である。すなわち、本発明の一態様では、X線管34’によって生成されるX線ビームの配向は、ハウジング88およびX線ソースアセンブリ82に対合する構成要素の位置合わせに登録可能である。たとえば、X線集束装置またはサンプル励起チャンバーは、ハウジング上の1つまたは複数のデータ点を単に位置合わせすることによって、X線管34’に位置合わせすることが可能である。図4、5、および6に示した本発明の態様では、X線管34’によって創出されるX線ビームの配向および位置合わせは、ハウジング88上の1つまたは複数のダウエルピンまたはダウエルピンホール98に登録される。その結果、対合構成要素をダウエルピンまたはダウエルホール98に適切に位置合わせすることによって、たとえばほとんどまたはまったくさらに調節せずに、対合構成要素を管34’のX線ビームと相応に位置合わせすることができる。
【0068】
図7は、本発明の他の態様によるX線蛍光アセンブリ110を示す。X線蛍光アセンブリ110は、X線ソースアセンブリ112、サンプル励起チャンバーアセンブリ116、およびX線検出器アセンブリ120を備える。アセンブリ110は、図示されていない少なくとも1つのX線集束装置(通常少なくとも2つの装置)をも含む。すべてのこれらの装置は、ハウジング115を有する単一アセンブリ110に統合される。
【0069】
図8は、図7に示したX線蛍光システム110を示すが、X線ソースアセンブリ112、サンプル励起チャンバーアセンブリ116、X線検出器アセンブリ120、および2つのX線集束装置114、118の典型的な空間関係を示すために、ハウジング115が除去されている。図1に示したシステム10と類似の方式で、X線ソースアセンブリ112が、X線ビーム122を生成し、このX線ビームは、X線集束装置114によって集束されて、励起チャンバーアセンブリ116において試験されるサンプル上に集束されるビーム124を生成する。サンプル励起チャンバーアセンブリ116においてサンプルのX線放射によって創出されるX線蛍光は、X線蛍光ビーム126を生成する。ビーム126は、X線集束装置118によって集束され、集束X線ビーム128を提供し、このビームは、X線検出器アセンブリ120に向けられる。ソースアセンブリ112、ホルダアセンブリ116、および検出器アセンブリは、それぞれ、各アセンブリをハウジング115に取り付ける取付けフランジ113、117、および121をそれぞれ含む。X線集束装置114および118は、これらの装置をハウジング115に取り付ける手段をも含む。
【0070】
D2622方法においてなど、XRF検出の従来の技術の方法では、サンプル励起経路および検出経路は、たとえばヘリウム環境である不活性気体環境において維持される。しかし、不活性気体の利用可能性は、特に遠隔位置では、これらの従来の技術のプロセスの実施を不都合にする。対照的に、本発明の一態様では、サンプル励起経路および検出経路は、真空下に維持され、不活性気体は必要ではない。たとえば、図7および8に示したシステム110では、ハウジング115は、少なくとも約15Torrなど、真空下に維持される。真空は、可動部分のないベンチュリポンプによって提供することができる。しかし、所望され、かつ利用可能である場合、本発明の他の態様では、窒素またはヘリウムなどの不活性気体を導入して、たとえば加圧下で、ハウジング115に維持することができる。本発明の他の態様では、ハウジング115は、加熱または冷却することが可能であり、たとえば、直接もしくは間接の熱交換手段によって、または放射もしくは対流の加熱手段または冷却手段を介して、加熱または冷却することが可能である。本発明の他の態様では、ハウジング115は、加圧せず、実質的に大気の圧力および温度を包含することが可能である。
【0071】
X線ソースアセンブリ112は、あらゆるタイプのX線ソースを含むことが可能であるが、ソースアセンブリ112は、図4、5、および6に示したソースアセンブリ82と同様または同一のソースを含むことが好ましい。すなわち、ソースアセンブリ112は、材料70などの熱伝導性誘電材料を有するX線管アセンブリを含むことが好ましく、ハウジングに調節可能であるように取り付けられ、隣接構成要素に登録可能であり、たとえば、ダウエルピンまたはダウエルホールを介してハウジング115に登録可能である。
【0072】
X線集束装置114および118は、たとえば両側湾曲結晶またはポリキャピラリ光学機器である、以前に解説した集束装置のいずれか1つとすることが可能である。図8に示したX線集束装置114および118は、両側湾曲結晶として示されているが、上記で参照した米国特許において開示されているポリキャピラリ単色X線光学機器を含めて、他のタイプのX線光学機器もシステム110に使用することが可能である。
【0073】
いくつかの従来の技術のXRF方法では(再び、たとえばD2622方法)、サンプルの励起は、多色X線を使用して実施される。とりわけ、多色X線励起の使用は、多色励起に固有の誤差を訂正するために、少なくとも2つのX線波長の使用を必要とする。本発明の一態様によれば、たとえばX線集束装置114による励起は、単色X線を使用して実施される。単色励起の使用により、多色励起を使用するときに通常必要とされる検出誤差の訂正の必要性が回避される。たとえば、本発明の一態様では、制動放射照明がないので、背景放射レベルが低減される。その結果、本発明は、多色励起を使用する従来の技術の方法より高い信号対雑音比を提供する。
【0074】
X線サンプル励起チャンバーアセンブリ116は、たとえば固体、液体、または気体のサンプルである、試験用サンプルを保持または維持するための、あらゆるタイプの空洞または表面を備えることが可能である。本発明の一態様では、サンプル励起チャンバーアセンブリ116は、たとえば連続流体(すなわち気体または液体)分析のために、サンプル励起チャンバー116からそれぞれサンプルを導入および除去するための導管123および125をそれぞれ含む。
【0075】
従来の技術のXRF方法(たとえば、D2622方法)は、直径が少なくとも25mmであり、しばしばそれよりはるかに大きい直径のサンプルサイズを通常必要とする。X線収束装置を有する本発明の一態様では、サンプルの直径は、25mm未満の直径、さらに10mm未満の直径、またはさらに3mm未満の直径とすることが可能である。そのような小さいサンプル直径を有する能力によって、より小さい照明領域およびより確実な励起ならびに検出が可能になる。
【0076】
X線検出器アセンブリ120は、たとえば集束X線ビームであるX線ビーム128を受け取ることができるあらゆるタイプのX線検出器を備えることが可能である。検出器アセンブリ120は、比例計数管型X線検出器または半導体型X線検出器を含むことが可能である。本発明の一態様では、X線検出器120は、少なくとも1つのPINダイオードタイプX線検出器を含む。
【0077】
通常の従来の技術のXRF方法(再び、たとえばD2622方法)は、X線検出器の代わりに比例計数管を使用する。しかし、比例計数管型検出器は、可能な限り多くの光子をカウントするために、大きな検出領域または長い検出時間を通常必要とする。また、比例計数管型検出器は、通常、検出領域の上に「窓」を有する。高エネルギーX線では、窓の存在は些細なことであるが、比例計数管型検出器を使用して低エネルギーX線を検出するとき、窓の存在は、透過X線を妨害することがある。そのような妨害を回避するために窓をより薄くすることにより、気体が漏れる可能性が増大する。しかし、本発明の一態様では、励起X線を検出器の上に集束させることにより、大きな検出領域、長い検出時間、または比例計数管型検出器を特徴付ける窓の必要性が回避される。
【0078】
従来の技術の方法(D2622方法など)において使用される他のタイプの検出器は、半導体型検出器を使用する。半導体型検出器は、通常、比例計数管型検出器がより好ましいが、その理由は、半導体型検出器は、とりわけ、サイズがより小さいからである。たとえば、比例計数管型検出器は、通常、半導体型検出器の検出器領域の約500倍の検出器領域を有する。さらに、半導体型検出器は、比例計数管型検出器より高い分解能および良好なX線エネルギーを達成する。しかし、半導体型検出器のサイズが増大する際に、半導体の「漏れ電流」が増大して、望ましくない検出雑音を生成するので、半導体型検出器は、通常、サイズが限定される。一方、半導体型検出器のサイズを低減することにより、漏れ電流による検出雑音が低減される。しかし、通常、半導体型検出器がより小さくなる際に、検出器の検出効率が低下し始めるので、半導体型検出器は、検出器をどの程度小さくすることができるかという点についても限定される。
【0079】
通常、半導体型検出器の性能を増大させるために、半導体型検出器は、冷却され、たとえば、約マイナス摂氏10度から約絶対温度77度の任意の温度に冷却される。しかし、そのような装置を冷却することは、高価で不便である。さらに、半導体型検出器を冷却することにより、検出器上に凝縮を形成し、これにより検出器の性能を妨害する可能性が導入される。凝縮が被冷却検出器の上に形成される可能性を低減する1つの方法は、たとえば窒素を使用して、不活性気体環境において検出器を窓の後ろに維持することである。不活性気体のために存在する熱移動を限定するために、真空を不活性気体の代わりに使用することがある。しかし、再び、半導体型検出器に不活性気体または真空を使用することは、不都合かつ高価であり、回避されることが好ましい。
【0080】
半導体型検出器を使用する欠点のいくつかは、本発明によって回避または克服される。まず、X線集束装置を使用して励起ビームを集束させることにより、比例計数管型検出器の大きな検出領域が回避される。本発明によるX線の集束は、半導体型検出器により適している。具体的には単色X線を使用するX線エネルギーまたはフラックスの集束および集中は、半導体型検出器のサイズが減少する際に通常生じる分解能の損失をある程度相殺する。その結果、本発明の一態様によれば、半導体型検出器は、たとえば比例計数管型検出器の性能と比較して、性能を感知可能な程度にはほとんど損ねずに、摂氏0度より高い温度、または摂氏10度より高い温度、またはさらに約室温(約摂氏20度)以上においてなど、摂氏−10度より高い温度で動作することができる。
【0081】
さらに、被冷却表面上の凝縮を回避するために、ある形態の保護「窓」を通常必要とする冷却を必要としないので、本発明の一態様によれば、保護窓は必要ではない。すなわち、本発明の一態様は、摂氏0度より高い温度、または室温以上において使用される窓なし半導体型X線検出器である。
【0082】
X線蛍光システムにおいて使用することができる半導体型検出器の1つのタイプは、PINダイオード型半導体検出器であり、たとえば、ケイ素PINダイオードである。本発明の一態様による1つのそのようなPINダイオード検出器の仕様を表1に示す。本発明によるPINダイオードは、前置増幅器ボードに取り付けて、ケーブルによって増幅器に付けることが可能である。
【0083】
【表1】

【0084】
図9は、本発明の他の態様による、通常連続的に流体を分析するX線蛍光システム210を示す。X線蛍光分析システム210は、通常、たとえばX線ソースアセンブリ112、X線サンプル励起チャンバーアセンブリ116、X線検出器アセンブリ120、および1つまたは複数のX線集束装置114、118を有する図7および8に示したX線蛍光システム110である少なくとも1つのX線蛍光アセンブリ212を備えるが、同様の機能を実施する他のアセンブリを使用することが可能である。システム210には、流体入口214、流体出口216、および流体パージ入口218も含まれる。入口214、出口216、およびパージ入口218は、手動または自動の隔離バルブ(図示せず)を含むことも可能である。流体入口214に導入される流体は、X線蛍光を介して分析することができるあらゆるタイプの液体または気体とすることが可能であるが、本発明の一態様では、流体は、燃料であり、とりわけ、たとえばガソリン、ディーゼル燃料、プロパン、メタン、ブタンである石油をベースとする燃料、または石炭ガスなどの流体燃料である。X線蛍光を介して検出することができる石油をベースとする燃料の1つの成分は、硫黄であるが、他の成分も検出することができる。本発明の一態様では、システム210によって分析される流体は、ディーゼル燃料であり、この場合、ディーゼル燃料の硫黄の内容が特徴付けられ、たとえば、硫黄の濃度が判定される。ディーゼル燃料の硫黄内容を特徴付けるシステムが、エックス−レイオプティカルシステムズインク(X−Ray Optical Systems,Inc.ニューヨーク州、アルバニー)によって商標SINDIE(商標)として市販されている。
【0085】
210を通る流体の流れは、1つまたは複数の制御バルブ222、224、流量計226、および圧力インジケータ228など、様々な従来の流れおよび圧力制御装置によって調整および監視される。制御バルブ222、224は、通常、2路または3路のバルブであり、手動または自動の制御バルブとすることが可能である。システム210の制御および動作は、制御装置220を介して手動で制御する、または自動的に制御することが可能である。制御装置220は、通常、1つまたは複数の従来のプログラム可能論理制御装置(Programable Logic Controllers(PLC))、電力入力、電力調整装置、信号入力、信号プロセッサ、データ分析装置、入力装置、および出力装置を含む。制御装置220は、適切な制御システムから入力信号を受信して、その信号を、図9にファントムで示す様々な電気接続を介して、監視および制御装置に向ける。システム210は、1つまたは複数のキャビネット、ハウジング、またはエンクロージャ230に収容することができ、たとえば、流体取扱い装置を1つのキャビネットに配置して、制御装置220を別のキャビネットに配置することが可能である。キャビネットまたはエンクロージャは、通常、NEMA4/12パージエンクロージャである。システム210は、据置きにする、または携帯することが可能である。
【0086】
以下の記述は、ディーゼル燃料の硫黄を検出するための本発明の適用、すなわちSINDIE(商標)システムについて具体的に記述するが、本発明は、ディーゼル燃料の他の成分または硫黄もしくは他の成分を含む他の流体に適用可能であることが、当業者には明らかになるであろう。システム210の動作は、以下のように進行する。X線分析アセンブリ212に、たとえば制御装置220から電気接続211を介して電圧を印加する。通常少なくともいくらかの硫黄を含んでいるディーゼル燃料が、入口214を介してシステム210に導入され、バルブ224を通過し、導管215を介してX線分析アセンブリ212に流れ込む。ディーゼル燃料は、システム212におけるX線曝露アセンブリのX線曝露室に導入され(たとえば、図8の導管123を介して)、そこで、ディーゼル燃料は、X線に曝露され、硫黄の少なくともいくらかは、X線蛍光を発生し、硫黄の存在が、システム212によって検出される。システム212によって検出された硫黄に対応する電気信号が、データの分析または表示のために、制御装置220に送信される。ディーゼル燃料は、曝露室を出て(たとえば、図8の導管125を介して)、導管217を通過し、出口216を介してシステム210から放出される。導管217における燃料の圧力および流量を、それぞれ流量測定装置226(ロトメータなど)および圧力インジケータ228(圧力ゲージなど)によって検出して、対応する信号を、それぞれ電気接続227および228を介して制御装置220に転送することが可能である。バルブ222および224を流れる流れの方向(および流量)は、たとえば流量計226または圧力インジケータ228によって検出された流れおよび圧力に応答して、それぞれ、制御信号223および225を介して制御装置220によって調整することが可能である。パージ入口218を使用して、水、空気、または窒素などの液体または気体のパージをシステムに導入することが可能であり、あるいは既知の硫黄内容を有する燃料をシステム較正のために導入することが可能である。パージの方向および流れは、バルブ222および224を介して、手動で、または自動的に制御することができる。
【0087】
再び、システム210、すなわちSINDIE(商標)システムのコンパクトで頑強な設計は、多くのタイプの流体の分析に適していることが、当業者には明らかになるであろう。しかし、石油をベースとする燃料の分析に使用するとき、システム210は、原油井戸において、油貯蔵設備において、燃料精製所において、燃料分配パイプラインもしくはネットワークのあらゆる場所において、または石油をベースとする燃料の硫黄内容が所望されるあらゆる他の場所において、硫黄の分析に使用することができる。システム210を使用することにより、燃料の硫黄分析の従来の方法では通常必要とされるサンプルの準備および分析試薬の必要性が排除される。システム210は、連続的で迅速なオンライン燃料硫黄内容を提供し、これにより、品質の評価および制御を可能な限り迅速に実施することができる。図9に示したシステムについて、分析および物理的な仕様のいくつかを表IIに示す。
【0088】
【表2】

【0089】
本発明の改善された熱散逸の態様
本発明の他の熱散逸態様によれば、図10は、本発明の一態様による高誘電強度ならびに熱伝導冷却および電気絶縁装置を有するX線ビームアセンブリ1100の断面図を示す。X線ビームアセンブリ1100は、透過窓1110を有するガラスまたはセラミックで通常形成される真空気密X線管105を含むX線不透過性エンクロージャ1160を含む。図10では、エンクロージャ1160は、部分的にのみ示されているが、エンクロージャ1160は、通常、X線ビームアセンブリ1100全体を囲むことが可能であることを理解されたい。X線管1105は、高電圧(HV)アノード125に対向して配置される電子銃1115を収容する。電子銃1115は、当技術分野では周知であるように、電圧勾配のために、電子ストリームの形態の電子、すなわち電子ビーム(eビーム)1120を放出する装置である。HVアノード1125は、当技術分野においてやはり周知であるように、電子ストリームがその上に当たり、その結果、X線放射1130、すなわちX線を生成する対象として作用する。
【0090】
電子銃1115は、通常、接地電位(たとえば、約ゼロボルト)に維持され、HVアノード1125は、通常約50kv以上など、高電圧電位に維持される。その結果、接地電位の電子銃1115から放出されるeビーム1120は、高電圧電位にあるHVアノード1125の表面に電気的に引き付けられ、それにより、X線1130を生成する。eビーム1120が、アノード1125に当たり、X線1130が、X線1130の「焦点」1127と呼ばれるアノード1125上の位置からアノード1125から放出される。焦点1127におけるアノード1125の表面の配向角度により、X線1130を透過窓1110に向けるのが可能になる。透過窓1110は、通常、ベリリウム(Be)などのX線透過性材料で形成され、これにより、X線1130がX線ビームアセンブリ1100を出るのが可能になり、一方、X線管1105内の真空が維持される。本発明の一態様では、たとえば20Kev以上の光子であるより高いエネルギーのX線を使用するとき、窓を必要としないことが可能であり、X線は、窓を必要とせずに、ガラスX線管などのX線管を通過することが可能である。
【0091】
衝突表面と対向するHVアノード1125の端部は、通常、X線管1105の本体を通過して突出し、機械的、熱的、または電気的にベースアセンブリ1135に結合(たとえば接続)される。本発明の一態様によれば、ベースアセンブリ1135は、熱伝導性材料から作成された第1プレート1140、誘電材料から作成された第2プレート1150、および熱伝導性材料から作成された第3プレートまたはベースプレート1145を含む3プレート構造である。第1プレート1140は、第2誘電性プレート1150によって、第3プレート1145から少なくとも部分的に電気絶縁される。本発明の一態様では、第1プレート1140は、熱拡散装置として機能する。すなわち、プレート1140は、たとえばプレート1140上の中央に位置する小限定領域である、限定領域にわたってアノード1125から熱を受け取り、熱をさらに散逸させることを容易にするために、熱をプレート1140のより大きい領域に分散させる。ベースアセンブリ1135は、ハウジング1160に取り付けることが可能である。本発明の一態様では、ベースアセンブリ1135は、少なくともアノード1125を支持し、およびX線管1105を支持することが可能である。本発明の一態様では、プレート1140およびアノード1125は、たとえば金属の単一部品から機械加工された、または単一構成要素として鋳造された構成要素である、単一の一体式構成要素を備える。本発明の他の態様では、プレート1140およびアノード1125は、別々の構成要素であり、たとえば、はんだ付け、ろう付け、溶接、または導電性接着剤などの接着剤により、従来の手段によって対合される。本発明の一態様では、ベースアセンブリ1135は、X線管1105の構造支持のみを提供する。ベースアセンブリ1135内の相互接続のさらなる詳細を図11において提供する。
【0092】
本発明の一態様では、プレート1140、プレート1145、または両方のプレート1140および1145は、プレート1150の上(またはバー、ブロック、もしくは円筒などの同様の構造の上)に導電性材料のコーティングまたは層を備えることが可能である。本発明の一態様では、プレート1140、プレート1145、または両方のプレート1140および1145に対応する導電性材料のコーティングまたは層は、方法の中でも、化学蒸着またはスパッタリングによってプレート1150(または同様の構造)の上に付着された、または加えられた導電性材料(銅など)の層を備えることが可能である。
【0093】
本発明の他の態様によれば、ベースアセンブリ1135は、たとえば熱伝導性誘電材料で作成された単一プレート1150(または、バー、ブロック、もしくは円筒などの同様の構造)である単一プレートまたは構成要素構造を備えることが可能であり、プレート1140およびプレート1145、または対応する構造を省略することが可能である。プレート1150は、アノード1125の上に直接配置して、アノード1125を冷却するのに十分な熱経路を提供することが可能である。
【0094】
本発明の他の態様では、ベースアセンブリ1135は、2プレートまたは2部材の構造を備えることが可能であり、プレート1140またはプレート1145(もしくは等価な構造)を省略することが可能である。本発明の一態様では、アノード1125をプレート1150などの熱伝導性誘電材料の上(または、バー、ブロック、もしくは円筒などの同様の構造の上)に配置することが可能であり、導電性プレート1145をプレート1150の上(または同様の構造の上)に配置して、アノード1125を冷却するのに十分な熱経路を提供することが可能である。本発明の一態様では、導電性プレート1145(またはその等価物)の機能は、プレート1150(または同様の構造)など、熱伝導性誘電材料に加えられた導電性材料の層またはコーティングによって提供することが可能である。本発明の一態様では、導電性材料(たとえば銅)の層またはコーティングは、化学蒸着、スパッタリング、または同様のプロセスによって施すことが可能である。本発明の一態様では、熱伝導性誘電性プレート1150の機能は、導電性プレート1145(またはその等価物)に加えられた熱伝導性誘電材料の層またはコーティングによって提供することが可能である。本発明の一態様では、熱伝導性誘電材料の層またはコーティングは、たとえば化学蒸着によってプレート1145(またはその等価物)に施されたDLCである、ダイアモンド様炭素(DLC)とすることが可能である。本発明の一態様では、熱伝導性誘電材料の層またはコーティングは、アノード1125から導体プレート1145に熱を分散させる熱拡散装置として作用する。
【0095】
さらに、本発明の他の2構成要素の態様では、アノード1125は、プレート1140などの熱伝導性電気絶縁性材料の上(または、バー、ブロック、もしくは円筒などの同様の構造の上)に配置することが可能であり、熱伝導性誘電材料(プレート1150または同様の構造など)は、プレート1140の上(または同様の構造の上)に配置して、アノード1125を冷却するのに十分な熱経路を提供することが可能である。再び、本発明の一態様では、導電性プレート1140(またはその等価物)の機能は、プレート1150(または同様の構造の上)などの熱伝導性誘電材料に加えられた導電性材料の層によって提供することが可能である。
【0096】
本発明の2構成要素および3構成要素の実施形態では、プレート1140および1145は、たとえば2インチ(5.08センチ)の直径のディスク型プレートである円形プレートとすることが可能であるが、本発明によれば、3角形、正方形、または矩形など、あらゆる従来の形状のプレートを使用することが可能である。プレート1140および1145は、銅などの銅包含材料、アルミニウム包含材料、銀包含材料、金包含材料、ダイアモンド様炭素などのダイアモンド材料、またはこれらの材料の2つ以上の組合せなど、たとえば高度に熱伝導性の材料である熱伝導性材料から形成することが可能である。本発明の一態様では、プレート1140および1145は、たとえば上述した材料の1つである導電性材料を備えることも可能である。プレート1140および1145は、約0.25インチ(0.635センチ)など、約0.1インチ(0.254センチ)から約0.5インチ(1.27センチ)の範囲の厚さを有することが可能である。本発明の一態様では、プレート1140および1145は、ほぼ同じサイズであり、たとえば、ほぼ同じ直径を有することが可能である。しかし、本発明の一態様では、プレート1140および1145は、異なるようにサイズ決めされ、たとえば、図10に示したように、プレート1145は、直径がより大きいなど、プレート1140より大きくすることが可能である。ベースプレート1145は、X線ビームアセンブリ1100の構造全体を支持および収容するために、ある構築構成または取付け構成を含むことも可能である。本発明の一態様では、プレート1140およびプレート1145の厚さは、プレート1140の表面積と比較して小さくすることが可能である。たとえば、本発明の一態様では、プレート1140またはプレート1145の厚さ(インチで表す)に対する表面積(平方インチで表す)の比は、通常、少なくとも約5対1とすることが可能である。本発明の一態様では、プレート1140またはプレート1145の表面積とその厚さとの比は、約10対1と約100対1との間とすることが可能である。本発明の一態様では、プレート1140の直径は、約2インチ(5.08センチ)であり、プレート1140の厚さは、約0.25インチ(0.635センチ)であり、これは、約12.5対1の面積対厚さの比に対応する。
【0097】
本発明の単一構成要素、2構成要素、および3構成要素の実施形態では、誘電性プレート1150は、やはり円形プレートとすることが可能であるが、プレート1140および1145に関して上述したように、あらゆる従来型の形状のプレートを使用することが可能である。プレート1150は、プレート1140および1145より小さくすることが可能であり、たとえば、プレート1140、1145、および1150が円形の形状のとき、プレート1150の直径を、プレート1140および1145より小さくすることが可能である。本発明の一態様では、プレート1150は、ディスク型で、直径が約1.5インチ(3.81センチ)とすることが可能である。プレート1150は、酸化ベリリウムセラミック、窒化アルミニウムセラミック、ダイアモンド様炭素、またはその派生物もしくは等価物など、高電圧において高い熱伝導性を提供する材料から形成することが可能である。その結果、誘電性プレート1150は、高い誘電強度を有することが可能であり、同時に、良好な熱伝導体でもある。たとえば、本発明の一態様では、誘電性プレート1150は、絶対温度1度当たりの1メートル当たり少なくとも約150ワットの熱伝導性(W/m/K)およびメートル当たり少なくとも約1.6×107ボルトの誘電強度(V/m)を有する材料を備える。誘電性プレート1150は、約0.25インチ(0.635センチ)の厚さなど、約0.1インチ(0.254センチ)と約0.5インチ(1.27センチ)との間の範囲にある通常の厚さを有することが可能である。本発明の一態様では、誘電性プレート1150の厚さは、誘電性プレート1150の表面積と比較して小さくすることが可能である。たとえば、本発明の一態様では、プレート1150の表面積(平方インチで表す)対厚さ(インチで表す)の比は、通常、少なくとも約5対1とすることが可能である。本発明の一態様では、誘電性プレート1150の表面積対その厚さの比は、約5対1と約100対1との間とすることが可能である。本発明の一態様では、プレート1150の直径は、約1.5インチ(3.81センチ)の直径および約0.25インチ(0.635センチ)の厚さを有し、これは、約7.0対1の面積対厚さ比に対応する。
【0098】
酸化ベリリウムセラミックは、銅の熱伝導性の約2/3である通常の熱伝導性を有し、一方、窒化アルミニウムセラミックは、銅の熱伝導性の約1/2である熱伝導性を有する。本発明の一態様では、酸化ベリリウムセラミックが、誘電性プレート1150の形成に使用される。本発明の他の態様では、窒化アルミニウムセラミックが、誘電性プレート1150の形成に使用される。いくつかの応用例では、窒化アルミニウムセラミックが好ましいが、その理由は、酸化ベリリウムは、有害な物質であり、したがって、環境上の理由により製造プロセスに望ましくないからである。対照的に、窒化アルミニウムセラミックは、酸化ベリリウムの代替物として、費用効果が高く、有害ではなく、作業が容易である。
【0099】
本発明も一態様では、導体プレート1140、1145、誘電性プレート1150は、プレート間の結合材料の量を最小限に抑えるように、平坦である。たとえば、本発明の一態様では、ディスク1140ならびに1145の表面およびディスク1150の表面は、内部において少なくとも約0.001インチ(0.00254センチ)であるように平坦である。
【0100】
本発明の一態様では、HVアノード1125は、プレート1140に少なくとも熱的に接続される。本発明の他の態様では、アノード1150は、プレート1140に少なくとも熱的および電気的に接続される。本発明の他の態様では、アノード1125は、ベースアセンブリ1135のプレート1140に機械的、熱的、および電気的に接続される。本発明の他の態様では、プレート1140は、たとえばHV導線1155を介して、高電圧ソースに少なくとも電気的に接続することが可能である。本発明の他の態様では、プレート1140は、たとえばHV導線1155を介して、高電圧ソースに機械的、熱的、および電気的に接続される。HV導線1155は、2002年6月26日に出願された、すなわち本出願と同じ日に出願された、同時係属の米国出願第10/206,531号、2002年6月26日出願(整理番号0444.058)において開示されているプレート140に添付することが可能である。この開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。その結果、本発明の一態様では、高電圧電位がプレート1140およびHVアノード1125にも供給される。反対に、ベースプレート1145は、通常、ほぼ接地電位に維持される。本発明の一態様では、誘電性プレート1150は、高電圧プレート1140と接地ベースプレート1145との間の電気絶縁を提供する。再び、すべての相互接続のさらなる詳細について、図11を参照して以下で提供する。
【0101】
本発明の他の態様では、高電圧ケーブル1155は、プレート1140を介する以外の手段によって、アノード1125と電気的に接続することが可能である。たとえば、一態様では、ケーブル1155は、たとえば同時係属の米国出願第10/206,531号、2002年6月26日出願(整理番号0444.058)において開示されている電気接続によって、アノード1125に直接接続される。たとえば、本発明の一態様では、アノード1125が、プレート1150などの熱伝導性誘電材料のすぐ上に配置され、ケーブル1155をアノード1125に直接接続することが可能である。本発明の他の態様では、ケーブル1155は、構造1135に関係しない手段など、他の手段を介してアノード1125に接続される。
【0102】
本発明の一態様では、電子銃1115およびHVアノード1125を有するX線管1105、ベースアセンブリ1135、およびHV導線1155は、エンクロージャ1160に収容され、それにより、X線ビームアセンブリ1100を形成する。エンクロージャ1160は、たとえば、X線ビームアセンブリ1100の要素を封入するケイ素注封材料またはその等価物などの注封材料である、封入剤1162としても既知の封入材料で満たすことが可能である。図10に示したように、X線ビームアセンブリ1100のいくつかの要素は、ベースアセンブリ1135など、エンクロージャ1160を超えて突出することが可能である。エンクロージャ1160注封剤1162は、空気ポケットの空隙とすることが可能である構造を形成することが可能であり、かつX線ビームアセンブリ1100の多くの表面を、封入剤1162またはハウジング1160を介して、周囲空気などの周囲環境から隔離するように作用することが可能である。本発明の一態様では、封入剤1162は、ケイ素注封材料またはその等価物など、少なくとも約1.6×107V/mの破壊電圧を有する材料を備える。本発明の他の態様では、封入剤1162の熱特性は、封入剤1162の機能には重要でない可能性がある。たとえば、封入剤1162を備える材料は、良好な熱伝導体である必要はない可能性がある。封入剤1162に使用することが可能である1つの材料はケイ素材料であり、たとえば、Dow Sylgard(登録商標)184ケイ素エラストマなどのケイ素エラストマ、またはその等価物である。
【0103】
図11は、本発明の一態様によるベースアセンブリ1135の詳細な断面図を示す。本発明の一態様では、ベースアセンブリ1135は、高誘電強度および熱伝導性熱散逸装置として作用する。本発明の他の態様では、ベースアセンブリ1135は、高誘電強度および熱伝導性熱散逸装置ならびにX線ビームアセンブリ1100の構造支持として作用する。
【0104】
図11は、HVアノード1125が、プレート1140に少なくとも熱的に接続されることを示すが、本発明の一態様では、アノード1125は、プレート1140に機械的、熱的、および電気的に接続される。本発明の一態様では、アノード1125は、たとえば、1つまたは複数の機械固定具、溶接、ろう付け、はんだ付け、接着剤など、従来の手段を介してプレート1140に機械的に接続される。本発明の一態様では、アノード1125は、取付けスタッド1205、結合層1210、またはその組合せを介してプレート1140に接続される。取付けスタッド1205は、スチール、たとえばアルミニウム、銅、または上述した他の導電性材料の1つである導電性材料から形成されたねじ込みスタッドとすることが可能である。図11に示した本発明の態様では、取付けスタッド1205は、HVアノード1125およびプレート1140の両方にねじ込まれる。結合層1210は、たとえばIn−Sn共晶はんだなどのインジウム錫(In−Sn)はんだまたはその等価物などの高導電性はんだから形成することが可能である。
【0105】
プレート1140、1145、および1150は、たとえば、1つまたは複数の機械的固定具、溶接、ろう付け、はんだ付け、接着剤など、従来の手段によって互いに接続することも可能である。本発明の一態様では、誘電性プレート1150は、結合層1215を介してプレート1140に接続され、プレート1145は、結合層1220を介して誘電性プレート1150に接続される。結合層1215、1220は、たとえば、上述した結合層1210に使用されるはんだと同様の高導電性はんだとすることが可能である。本発明の一態様では、プレート1145は、ベースアセンブリ1135を支持するまたは取り付ける手段を含み、この手段は、X線ビームアセンブリ1100、または少なくともアノード1125も支持することも可能である。ベースアセンブリ1135を支持する手段は、任意の従来の支持手段とすることが可能であるが、本発明の一態様では、プレート1145は、たとえば少なくとも1つのねじ込み取付け穴である、少なくとも1つの取付け穴1405を含む。
【0106】
X線ビームアセンブリ1100は、プレート1145から熱を伝導し、かつ散逸させる他の手段を含むことが可能である。本発明の一態様では、プレート1145は、プレート1145から熱を伝導し、かつ散逸させる従来の手段に動作式に接続することが可能である。たとえば、プレート1145は、1つまたは複数の冷却フィンもしくは冷却ピンに動作式に接続することが可能である。本発明の他の態様では、プレート1145または冷却フィンもしくは冷却ピンは、たとえば、X線ビームアセンブリ1100に取り付けられた電気ファンなどのファンによって、強制空気冷却に曝露させることも可能である。
【0107】
本発明の一態様によれば、プレート1140および1145は、たとえば図11に示した半曲智(radiused)縁である、滑らかな縁を備える。本発明のこの態様によれば、半曲智縁は、プレート1140と1145との間の電気放出の可能性を低減するように、プレートの縁の周囲の電場勾配を最小限に抑える。
【0108】
本発明の一態様によれば、ベースアセンブリ1135は、たとえば、X線ビームアセンブリ1100の低電圧構成要素または接地構成要素からの直接支持がほとんどまたはまったくない状態で、具体的には高電圧アノード1125の支持である、X線ビームアセンブリ1100の機械的支持を提供する。本発明の一態様によれば、ベースアセンブリ1135によって提供される機械的支持は、X線ビームアセンブリ1100から熱を除去するための熱伝導経路をも含む。本発明の他の態様では、機械的支持および熱伝導の他に、ベースアセンブリ1135は、少なくともいくらかの電気絶縁を提供することも可能であり、この場合、ベースアセンブリ1135全体で、電流は、ほとんどまたはまったく失われない。すなわち、アノード1125から、またはX線ビームアセンブリ1100のあらゆる他の高電圧構成要素からの電流損は、最小限に抑えられる。
【0109】
本発明の他の態様によれば、ベースアセンブリ1135は、アノード1125からなど、X線ビームアセンブリ1100から熱を散逸させる、たとえば伝導する有効な手段を提供する。本発明のこの態様によれば(図10参照)、ビーム1120がアノード1125に当たり、X線1130を生成することによって生成される熱は、衝突点1127からアノード1125に沿ってプレート1140に伝導される。次いで、プレート1140は、熱を、たとえば径方向において、アノード1125の接触点から伝導し、熱をプレート1140に分散させ、たとえば、熱をプレート1140に一様に分散させる。次いで、プレート1140の熱は、プレート1150に伝導され、プレート1150から、熱は、プレート1145において伝導される。本発明の一態様によれば、プレート1140において熱を分散させることにより、プレート1140において熱が効果的に分散され、誘電性プレート1150全体の温度差は、最小限に抑えられる。その結果、誘電性プレート1150の熱伝導性は、銅包含材料などの従来の伝導材料の伝導性より劣る可能性があるが、プレート1140からプレート1145に熱を散逸させるのに十分な伝導性を依然として提供することが可能である。プレート1145の熱は、対合構造への伝導により、または自然対流、強制空気対流により、もしくはプレート1145の上に冷却流体を流すことにより、さらに散逸させることが可能である。本発明の一態様では、冷却ピンまたは冷却フィン(図示せず)をプレート1145に動作式に接続することが可能である。さらに、本発明の一態様によれば、1つまたは複数の誘電性プレート1150および導電性プレート1145をプレート1140に取り付けることが可能であり、たとえば、プレート1150および1145の2つの以上の組を使用して、X線ビームアセンブリ1100から熱を伝導することが可能である。
【0110】
本発明の一態様によれば、内部冷却流体をほとんどまたはまったく必要としないなど、冷却流体をほとんどまたはまったく必要としないX線生成装置が提供される。すなわち、本発明の一態様は、ある従来の技術の特徴である、流体の封止手段、漏れ防止、または取替えを提供する必要性を排除する。さらに、本発明の他の態様によれば、X線ビームの調整または位置合わせのために、より機械判読可能であるように適合させることができるX線生成装置が提供される。たとえば、冷却流体が存在しない、または冷却流体を必要としない状態で、位置合わせまたは調節の機構が流体気密であることを必要とせずに、X線ビーム1130とキャピラリ光学機器または結晶光学機器などのX線光学機器とを位置合わせするためなど、X線位置合わせまたは調節機構をX線装置1100に組み込むことが可能である。たとえば、本発明の一態様と共に使用することが可能である1つの位置合わせ機構が、同時係属の米国出願第60//336,584号、2001年12月4日出願(整理番号0444.045P)において開示されている。この開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0111】
本発明の改善された位置合わせおよび安定性の態様
上記で一般的に解説したように、本発明は、一態様において、たとえば集束X線ビームまたは視準X線ビームを提供し、かつある範囲の動作条件にわたって安定な出力を有するX線ソースアセンブリを提供する。この安定な出力は、一態様では、動作条件の1つまたは複数の変化にもかかわらず、アセンブリの出力構造に対するアノードソーススポットの位置決めを制御する制御システムを介して得られる。たとえば、アノードソーススポットの位置は、アノードの電力レベルの変化またはX線ソースアセンブリの周囲温度の変化にもかかわらず、出力構造に対して一定に維持することができる。
【0112】
制御システムは、アノードソーススポットまたは出力構造の移動を実施することができる1つまたは複数のアクチュエータを使用する。たとえば、1つのアクチュエータは、出力構造に対するアノードソーススポット位置の調整を実施するように、アノードの加熱/冷却を提供する温度アクチュエータを備えることが可能である。他のアクチュエータは、必要に応じてアノードソーススポットまたは出力構造の位置を物理的に調節するメカニカルアクチュエータを備えることが可能である。他のアクチュエータは、電子ビームを静電的または磁気的に移動させることが可能である。1つまたは複数のセンサを制御システムによって使用して、出力構造に対するアノードソーススポット位置に関するフィードバックを提供することができる。センサは、アノードの温度を直接または間接に測定するセンサ、ならびにハウジング温度センサおよび周囲温度センサなど、温度センサを含むことが可能である。センサは、アノード電力レベルを得るためのフィードバック機構、または光学機器出力強度の直接または間接の尺度を含むことも可能である。
【0113】
他の態様では、X線を生成するためのアノード、およびアノードによって生成されるX線を収集する光学機器を有するX線管を含むX線ソースアセンブリが開示されている。光学機器からX線出力強度を収集する制御システムが提供される。この制御システムは、X線ソースアセンブリの1つまたは複数の動作条件の変化にもかかわらず、X線出力強度を維持することができる。たとえば、制御システムは、アノード電力レベルの変化および/または周囲温度の変化について調節することができる。本発明の様々な追加の特徴についても、以下で記述し、主張する。
【0114】
本明細書で使用する際に、「出力構造」という句は、X線ソースアセンブリの部分、またはX線ソースアセンブリに関連する部分を備える構造を指す。例として、構造は、集束光学機器または視準光学機器など、X線透過窓または光学機器を備えることができ、アセンブリ内においてX線管を囲むハウジングに固定する、または固定しないことが可能である。
【0115】
図12は、本発明の態様による、X線ソースアセンブリ2100の断面正面図を示す。X線ソースアセンブリ2100は、透過窓2107を有する真空気密X線管2105(通常、ガラスまたはセラミックで形成される)を備えるX線ソース2101を含む。X線管2105は、高電圧(HV)アノード2125に対向して配置された電子銃2115を収容する。電圧が印加されたとき、電子銃2115は、当技術分野では周知であるように、電子ストリームの形態の電子、すなわち電子ビーム(eビーム)を放出する。HVアノード2125は、電子ストリームがX線放射すなわちX線2130を生成するために上に当たるソーススポットを有する対象として作用する。
【0116】
例として、電子銃2115は、接地電位(ゼロボルト)に維持することができ、一方、HVアノード2125は、高電圧電位に維持され、通常約50kVである。その結果、接地電位において電子銃2115から放出されたeビーム2120は、HVアノード2125の表面に電気的に引き付けられ、それにより、eビーム2120がアノードを打つアノード上のソーススポットからX線2130を生成する。その後、X線2130は、真空気密X線管2105の透過窓2107を通るように向けられる。透過窓2107は、通常、ベリリウム(Be)などの材料で形成され、これにより、X線の透過をほぼ妨害しないことが可能になり、一方、X線管2105内の真空は依然として維持される。
【0117】
ハウジング2110が、X線管2105を少なくとも部分的に閉鎖する。ハウジング2110は、X線管2105の透過窓2107と位置合わせされた開口2112を含むことができる。例として、開口2112は、開放開口をハウジング2110に備え、または空気空間を画定する閉鎖開口を備えることができる。透過窓2107および開口2112を透過する際に、X線2130は、光学機器2135によって収集される。光学機器2135は、この例では、ハウジング2110の開口2112の回りに集中して示されている。光学機器2135は、ハウジング2110の外表面に固定することができ、または、開口2112内にあるように(たとえば、透過窓2107に接して位置するように)、ハウジング2110内に部分的に配置することができ、もしくは、ハウジング2110から離れて支持されるが、ハウジング2110の開口2112と位置合わせすることができる。
【0118】
留意したように、光学機器2135は、例として、集束光学機器または視準光学機器を備えることができる。図12では、光学機器2135は、集束要素として示されており、強度が高く、直径が小さいスポット2145を必要とする応用例においてX線ソース2100を使用するとき、有用である。集束光学機器2135は、X線放射2130を収集して、放射を収束X線2140に集束させる。低電力ソースを必要とするX線蛍光システムと関連してX線ソース2100を使用するとき、収束光学機器は、有益であることがある。代替として、光学機器2135は、光学機器(図示せず)からのX線放射出力の平行ビームを必要とする応用分野において使用される視準光学要素を備えることができる。視準光学要素の場合、X線2140は、図12に示すようにスポット2145に収束するのではなく、平行である。
【0119】
光学機器2135は、たとえば集束または視準のために、X線を収集または加工することができるあらゆる光学要素を備えることができる。例として、光学機器2135は、ポリキャピラリバンドル(Xレイオプティカルシステムズインク(X−ray Optical Systems,Inc.、ニューヨーク州、アルバニー)から入手可能なものなど)、両側湾曲光学機器、またはフィルタ、ピンホール、もしくはスリットなどの他の光学要素の形態を備えることができる(ポリキャピラリ光学機器は、全反射により光子を透過させる薄く中空の管の束である。そのような光学機器は、たとえば、(特許文献11)、(特許文献10)、および(特許文献9)において記載されている。両側湾曲光学機器は、たとえば、(特許文献3)および(特許文献2)において記載されている)。X線ソースアセンブリ2100の較正の際に、光学機器2135は、X線ソースアセンブリ2100の他の較正が実施されるまで、(一実施形態では)X線ソース2101に対して静止したままである。
【0120】
HVアノード2125の端部は、X線管2105の本体を経て突出する衝突表面に対向し、かつベースアセンブリ2150に機械的および電気的に接続される。ベースアセンブリ2150は、第1導体ディスク2155を含み、このディスクは、誘電体ディスク2160を介してベースプレート2165から電気的に絶縁される。本明細書においてアノードスタックと呼ばれる結果的なアノード2125およびベースアセンブリ2150構造は、「Method and Device For Cooling and Electrically Insulating A High-Voltage, Heat Generating Component」という名称の上記で組み込まれた同時出願特許出願において詳細に記載されている。この文献においてより詳細に記載されているが、ベースアセンブリ2150の構造および機能について、以下で簡単に解説する。
【0121】
導体ディスク2155およびベースプレート2165は、たとえば、数インチの直径の、銅などの高導電性および高熱伝導性材料で形成されたディスク型のプレートである。例として、導体ディスク2155およびベースプレート2165は、0.1(0.254センチ)から0.5インチ(1.27センチ)の範囲の厚さを有することが可能であり、0.25インチ(0.635センチ)が1つの具体的な例である。ベースプレート2165は、X線ソース2101の構造全体を収容するために、構造上の詳細をさらに含むことが可能である。
【0122】
誘電体ディスク2160は、たとえば、直径が1.5インチ(3.81センチ)で、酸化ベリリウムセラミックまたは窒化アルミニウムセラミックなど、高電圧において高誘電強度を提供する材料で形成されたディスク型プレートである。さらに、導体ディスク2155またはベースプレート2165と同程度の熱伝導性ではないが、これらの材料は、比較的良好な熱伝導性を提示する。誘電体ディスク2150は、0.1インチ(0.254センチ)から0.5インチ(1.27センチ)の範囲の厚さを有することが可能であり、0.25インチ(0.635センチ)が1つの具体的な例である。
【0123】
導体ディスク2155は、適切な高電圧導線2170を介して、高電圧ソース(図示せず)に機械的および電気的に接続される。その結果、高電圧電位が、導体ディスク2155、およびその後HVアノード2125に供給される。対照的に、ベースプレート2165は、接地電位に維持される。誘電体ディスク2160は、高電圧導体ディスク2155と接地ベースプレート2165との間の電気絶縁を提供する。高電圧導線2170を導体ディスク2155に接続するアセンブリの一例が、「An Electical Connector, A Cable Sleeve, and A Method For Fabricating A High Voltage Electrical Connection For A High Voltage Device」という名称の上記で組み込まれた一般に出願された特許出願において記載されている。
【0124】
X線管2105、ベースアセンブリ2150、およびHV導線2170は、封入剤2175に包含される。封入剤2175は、電圧破壊を回避するために十分に高い誘電強度を有するケイ素などの剛性または半剛性の材料を備えることができる。さらに、好ましい熱経路がベースアセンブリ2150を通過するので、封入剤2175は、良好な熱伝導体である必要はない。具体的な例として、封入剤2175は、ケイ素エラストマ(ダウケミカル(Dow Chemical)から入手可能なDow Sylgard(登録商標)184など)をX線管、ベースアセンブリ、および高電圧導線の回りに溶接することによって形成することができ、それにより、地面に至る望ましくない電圧破壊経路を提供する可能性がある空気ポケットのない構造を形成する。
【0125】
図13は、ソース走査曲線2200を示すグラフであり、たとえばスポット2145(図12)の強度である出力強度の表示が、アノードソーススポットと出力光学機器との間の変位または誤整列に関してプロットされている。スポット強度は、光学機器(2135)の焦点にわたってX線(2130)を走査することから得られる。ガウスプロットが得られることが示されており、最大強度が、光学機器の焦点においてX線2130(したがってアノードソーススポット)を適切に位置合わせすることにより達成される。
【0126】
図示したように、半最大値(FWHM)における全幅W1は、約200ミクロンに等しい。200ミクロンのFWHMは、X線2130(したがってアノードソーススポット)が、光学機器2135の焦点から2100ミクロンの距離変位している結果として、スポット2145におけるX線強度が50%降下することを示す。適切に較正されたとき、X線ソースアセンブリ2100は、傾斜がほぼゼロに等しい図13のソース走査曲線の上部付近における所与の電力について機能し、それにより、光学機器2135に関するX線2130の変位がわずかに変動しても(たとえば、5μm以下)は、強度の降下は些少である。例として、光学機器2135に対するX線2130の変位における許容可能な変動の範囲をW2によって表す。これは、X線2130と光学機器2135の焦点との間の5ミクロン未満の変位は、許容可能であることを示す。しかし、X線ソースの動作電力が0から50Wまで変化する際に、50ミクロン程度の熱膨張の相違が、HVアノード2125およびベースアセンブリ2150の要素において生じることがある。
【0127】
図14は、図12に関して上述したX線ソース2100を示す。しかし、この例では、HVアノード2125に当たるeビーム2120によって生成される熱により、HVアノード2125、導体ディスク2155、ベースプレート2165、およびより少ない程度であるが誘電体ディスク2160が膨張した。この膨張の結果、X線2310の発散ビームが、生成され、これは、図12に示したX線2130に関して垂直方向にずれる。たとえば、電子銃2115が50Wの電力において動作する場合、X線2310の焦点は、0Wにおける位置から50ミクロン程度ずれる可能性がある。X線2310は、光学機器2135と誤整列され、その結果、X線2315の収束ビームは、著しく強度が低減されたスポット2320を生成する。
【0128】
両側湾曲結晶およびポリキャピラリバンドルなど、視準光学機器および集束光学機器の物理的な性質のために、アノードソーススポットに対する光学機器2135の精密な位置決めが、X線2315の最適な視準または集束のために望ましい。その結果、HVアノード2125およびベースアセンブリ2150の熱膨張に由来する可能性のあるような光学機器2135に対するX線2310のずれは、図13にグラフで示すように、著しく低減された強度を有するスポット2320をもたらすことがある。
【0129】
出力構造に対するアノードソーススポットのずれは、様々な手法を使用して測定することができる。たとえば、温度センサ2400をアノードスタックのベースにおいて使用して、アノードスタックの温度変化を測定することができる。これは、以下でさらに記述するように、較正手続き中の光学機器に対するアノードソーススポットのずれに相関させることができる。図16は、代替温度センサの実施を示す。
【0130】
図16に示すように、再び導体ディスク2155、誘電体ディスク2160、およびベースプレート2165を含むベースアセンブリ2150は、ベースプレート2165内において凹み、かつベースプレート2165と良好に熱接触する温度センサ2400を含むように修正される。例示のために、図16は、アノードから、ベースアセンブリへ、およびベースアセンブリを経た熱移動を表す波を示す。これらの波は、図15に示すように、eビーム2120がHVアノード2125に当たることによって生成される熱を表す。
【0131】
また、図15には、X線強度測定装置2410も示されている。ずれを判定するために温度を感知することに加えて、またはその代替として、X線ソース2101または光学機器2135のX線出力強度を測定することができる。例として、回折の応用分野では、本明細書において記述するような位置制御システムに必要なフィードバックを提供するために、イオン室または比例計数管を強度測定装置2410として使用することができる。回折の応用分野では、対象となるエネルギーは、通常、1つの波長におけるものであり、したがって、X線経路内に配置される比例係数管は、対象となる少量のX線を吸収するだけである。当業者なら、X線ソースアセンブリ2100からX線出力の強度を直接または間接に判定するために、他の強度測定手法を使用することができることを理解するであろう。温度感知、X線強度感知などの目的は、アノードソーススポットと出力構造との位置合わせに関するフィードバック情報を提供することである。制御システムおよび制御プロセスについて、図18〜21を参照して以下でさらに記述する。
【0132】
アノードスタックの温度と、出力構造に対するアノードソーススポットとの相関は、図17〜17Bを参照すると、より良好に理解することができる。
【0133】
図17には、アノード2125およびベースアセンブリ2150を備えるアノードスタックが示されている。アセンブリ2150は、導体ディスク2155、誘電体ディスク2160、ベースプレート2165を含み、この例では、温度センサ2400は、内部に埋め込まれて示されている。アノードスタックは、図17Aのグラフの距離軸(x軸)と相関するように、水平に配置される。
【0134】
図17Aに示すように、アノードスタックは、スタックを備える様々な構成要素にわたって異なる温度変化を有する。50Wおよび25Wの両方の例について、アノード2125の最右端から開始して、たとえば導体ディスク2155の両端の温度降下よりわずかに急な傾きを有する温度降下が示されている。アノード2125およびディスク2155の両方とも導電性であるが、ディスク2155の断面がより大きいことは、1つの主要表面から他への温度降下がより小さいことを意味する。やはり図17Aに示したように、アノードスタックの両端の温度変化は、アノードの電力レベルに関係する。温度変化(y軸)は、室温より高いアノードスタックの温度変化のずれを表す。したがって、ゼロに印加されたアノードの電力レベルでは、ずれはゼロと想定される。
【0135】
さらなる改良として、本発明の態様によるX線ソースアセンブリは、室または周囲の温度変化に対応するように調節することができる。膨張に寄与する要素の全熱膨張が、50Wビーム電流において、0Wビーム電流と同じであるようにするために、プレート2165(したがって接続要素)の0Wベース温度は、たとえば40℃まで上昇させることができる。これを、点線によって図17Aに示す。
【0136】
図17Bは、0ワットと50ワットとの間の様々なアノード電力レベルについて、アノードスタックの構成要素の周囲温度より低い基準温度の例を示す。より具体的には、図17Bは、様々な管動作電力の基準温度を示す(図17Aの0Wにおいて導出され、かつ示されている)。さらに、追加の温度のずれをこの基準温度に追加することによって、同じシステムが、周囲温度の変化に対応することができる。たとえば、50Wおよび20℃において、0℃の基準デルタ温度が得られる。この基準デルタ温度が5℃に上昇した場合、このデルタ温度を20℃に維持するために、追加の熱が供給される。しかし、25℃では、追加の加熱は必要ない。このようにして、たとえば20℃では、基準デルタ温度のずれが必要であり、これによって、より高い周囲温度での補償が可能になる。
【0137】
図18は、本発明の他の態様による、全体を2700と表記するX線ソースアセンブリの一実施形態の断面正面図を示す。X線ソースアセンブリ2700は、X線ソース2705および出力光学機器2135を含む。光学機器2135は、真空X線管2105のX線透過窓2107に対して位置合わせされる。X線管2105は、再び、高電圧アノード2125に対向して配置される電子銃211を収容する。電圧が印加されたとき、電子銃2115が、電子ストリームの形態で電子(すなわち、上述した電子ビーム2120)を放出する。HVアノード2125は、窓2107を透過し、かつ光学機器2135によって収集されるX線放射2130を生成するために、電子ストリームが上に当たるソーススポットに関する対象として作用する。電子銃2115およびアノード2125は、図12、14、および15の実施形態に関して上述したように機能する。
【0138】
アノード2125は、再び、ベースアセンブリに物理的および電気的に接続され、ベースアセンブリは、誘電体ディスク2160を介してベースプレート2165’から電気的に絶縁された導体プレート2155を含む。ベースアセンブリの構築および機能は、図12、14、および15に関して上述したベースアセンブリと同様とすることができる。高電圧導線2170が、所望の電力レベルをアノード2125に提供するように、導電性プレート2155に接続される。電子銃2115、アノード2125、ベースアセンブリ2150、および高電圧導線2170は、封入剤2175によって包含され、これらは、すべて、ハウジング2710内にある。ハウジング2710は、X線管2105のX線透過窓2107に位置合わせされた開口2712を含む。動作時、X線放射2130が、光学機器2135によって収集され、この例では、スポット2745に集束される2740。上記で留意したように、光学機器2135は、ポリキャピラリバンドルおよび両側湾曲結晶を含めて、様々なタイプの光学要素のいずれか1つを備えることが可能である。また、光学機器2135は、たとえば、X線ソースアセンブリの応用例に応じて、集束光学機器または視準光学機器を備えることが可能である。
【0139】
本発明の態様によれば、制御システムが、X線ソースアセンブリ2700の内部において実施される。この制御システムは、たとえば、ハウジング2710内に埋め込まれて示されているプロセッサ2715、ならびにプロセッサ2715に結合される1つまたは複数のセンサおよび1つまたは複数のアクチュエータ(センサ/アクチュエータ2720およびアクチュエータ2730など)を含む。X線ソースアセンブリ2700内のこの制御システムは、たとえば、HVアノード2125およびベースアセンブリ2150の熱膨張を補償する機能を備える。この熱膨張は、光学機器2135に対するX線2130の位置合わせを維持するために、アノードの電力レベルを変化させる。これにより、X線ソースアセンブリ2700は、アノードの動作レベル範囲内において、安定な強度を有するスポットサイズ2745を維持することが可能になる。
【0140】
図19は、本発明の態様による、制御ループの一実施形態を示し、図19Aは、制御機能の一例を示す。図19に示すように、1つまたは複数のセンサ2800が、たとえば、アノードスタック温度および/またはX線出力強度に関するフィードバックを提供し、このフィードバックは、制御機能を実施するプロセッサ2810に供給される。例として、図19Aは、カレントポジション(current position)(K)、変化率(d/dt)、および累積履歴(S)を決定することができるように、温度のずれが、温度センサ(TS)からの値と、基準温度(R)との間において判定される制御機能を示す。この比例積分微分関数の結果は、次いで合計され、出力を時間の関数(O(t))として提供する。この出力は、1つまたは複数のアクチュエータ2820に提供される。このアクチュエータは、たとえばアノードソーススポット位置を出力構造に対して維持するため、または光学機器の出力構造を所望の値に維持するために、アノードソーススポット位置または出力構造(光学機器など)の位置の自動変更を実施する。この監視および調節のプロセスは、X線ソースアセンブリの制御システムによって連続的に繰り返すことができる。
【0141】
図18に戻ると、センサ/アクチュエータ2720は、ベースプレート2165’に物理的に結合された温度アクチュエータを含むことができる。この温度アクチュエータ2720は、たとえば、ベースプレートに熱を追加する、またはベースプレートから熱を除去するために、ベースプレート2165’を加熱するおよび/または冷却するあらゆる手段を備えることができる。例として、加熱要素は、キャドドックエレクトロニクス(CaddockElectronics、カルフォルニア州リバーサイド)から入手可能なモデル番号MP850などの10Ohmの電力抵抗器を備えることが可能であり、一方、適切な冷却要素は、強制空気熱シンクまたは液体ベース熱シンクを備えることが可能である。温度アクチュエータをX線ソースアセンブリの動作中に使用して、アノードX線スポットを、X線収集光学機器などの1つまたは複数の出力構造に関して最適な配向に維持することができる。ベースプレートに熱を加える、またはベースプレートから熱を除去することは、アノード電力レベルなどのアセンブリの1つまたは複数の動作条件の変化にもかかわらず、一貫した平均温度が、X線ソースアセンブリの動作中にアノードスタックにわたって維持されるように達成される。
【0142】
具体的には、一実施形態では、ベースアセンブリおよびHVアノードの熱膨張は、生成されるX線が、たとえばX線ソースアセンブリの動作範囲にわたって収集光学機器と一貫して位置合わせすることを可能にする許容度内に維持される。たとえば、HVアノードおよびベースアセンブリ要素のサイズが、それを通過する熱の散逸が低減されることにより減少しないように、X線ソースアセンブリが低減された動作電力に移行するとき、加える熱を追加することが可能であり、それにより、X線と収集光学機器との最適位置合わせを維持することが可能になる。一実施形態では、加熱要素は、ベースプレートの内部に含むことができ、一方、冷却要素は、ベースプレートの曝露表面に熱的に結合することが可能である。
【0143】
アノードスタックにわたって一定の平均温度を維持することに関して本明細書では記述されているが、当業者なら、アノードソーススポットと出力構造との間で所望の位置合わせを維持する他の機構が存在することを理解するであろう。たとえば、メカニカルアクチュエータ2730を使用して、アノードソーススポットに対する収集光学機器の配向および位置決めを物理的に調節することができる。これらのアクチュエータは、プロセッサ2715から受信した信号に応答するように、手動で調節可能であり、または自動化することができる。他の作動制御機構も、当業者には明らかであり、本明細書において提示される請求項によって包含される。制御システムの目的は、たとえば収集光学機器の入力(すなわち焦点)に対して、アノードソーススポットの所望の配向を維持することである。通常、この所望の配向は、最高強度スポット2745を保証する最適配向を備える。
【0144】
図20は、図18のプロセッサ2715によって実施することが可能である処理の一実施形態のフローチャートである。図20は、たとえば、アノードに加えられる電力レベルなど、1つまたは複数の動作条件に変化に応答して、ベースアセンブリに熱を加えるまたはベースアセンブリから熱を除去し、それにより、アノードスタック全体にわたって一定平均温度を維持し、したがって、放出されるX線を収集光学機器の入力に関して最適に位置合わせすることを可能にするために、X線ソースアセンブリの動作中にプロセッサによって周期的に繰り返されるループを表す。
【0145】
図20に示すように、処理は、アノード電力レベルを読み取る2900ことによって開始される。一実施形態では、アノードの電力レベルは、信号範囲がたとえば0と10Vとの間にある2つのアナログ入力から判定することができる。1つの入力は、電力を電子銃2115(図18)に供給する電源が動作している電圧に接続され、一方、第2入力は、電源によって引き出されるアンペア数に接続される。これらの2つの入力から、電子銃2115が動作している電力を判定することが可能であり、これもアノードの電力レベルである。
【0146】
処理は、次に、アノードスタックの温度ならびにソースハウジングを読み取る2910。上記で留意したように、アノードスタックの温度は、温度センサを使用して、ベースアセンブリのベースプレートから得ることができ、結果として得られる信号は、アセンブリ内に埋め込まれているプロセッサに再び供給される。ハウジングの温度は、温度センサを備えることもでき、この温度センサは、一実施形態では、エンクロージャの膨張または収縮を測定するために、ハウジングの表面に熱的に結合される。ハウジングの温度の測定は、監視されている光学機器または他の出力構造が、ハウジングに機械的に結合されていると想定することが望ましい。
【0147】
次に、処理は、読取り電力レベルについて基準温度を決定する2920。基準温度は、測定アノード電力レベルにおけるアノードスタックの望ましい所定の温度である。基準温度は、X線ソースアセンブリの較正手続き中に判定することができ、特定のアセンブリに固有、または複数の同一に製造されたX線ソースアセンブリに共通とすることが可能である。図21は、読取り電力レベルの基準温度を調べるために使用することができる表の一実施形態を示す。図示したように、図21の表も、アノードスタックの所望の基準温度を判定する際に考慮される他の動作条件として、ハウジングの温度を使用する。したがって、X線ソースアセンブリのハウジングの温度およびアノード電力レベルに応じて、アノードスタックの所望の基準温度が得られる。
【0148】
基準温度および読取り温度は、図19に関して上述したポジション、レート(率)、および累積履歴の制御アルゴリズムに供給される。アルゴリズムを使用して、1つまたは複数のアクチュエータ2930への出力を計算する。当業者なら、この機能を実施するために、比例成分微分アルゴリズムを容易に実施することができる。出力を得た後、出力は、たとえば、光学機器の入力に対するアノードソーススポット位置を維持するために、アクチュエータに提供される2940。
【0149】
1つの具体的な例として、プロセッサは、冷却ファンがある範囲の回転速度において動作して、それにより、アノードスタックのベースプレートから適切なレートで熱を除去することを可能にするパルス幅変調信号を備える信号を出力することができる。デューティサイクルは、アノードの動作電力によってパルス幅変調出力を判定することができるようなものである。第2出力により、加熱要素に供給される電力を変更し、それにより、アノードスタックのベースプレートに追加される熱量を変更することを可能にすることができる。一実施形態では、プロセッサは、比例積分微分(PID)アルゴリズムを実施した後、定式またはルックアップ表を使用して、アノードが現在動作している特定の電力レベルについて、アノードスタックのベースプレートを維持されるべきである温度(すなわち基準温度)を判定することができる。
【0150】
上述したフィードバックに基づくアルゴリズムの代替として、プロセッサは、(例として)モデルまたは予測に基づくアルゴリズムを実施することができる。予測に基づくアルゴリズムの例として、既知のソース走査曲線上の正確な開始位置を識別するために、ソースおよび光学機器を意図して誤整列させることができる。たとえば、ソースおよび光学機器の位置合わせは、ソース走査曲線上の傾きの急な位置に変位させることができ、それにより、変位を正確に測定または推測することが可能になる。その後、判定された変位を使用して、曲線のピークに戻るように、既知のソース走査曲線を使用して調節することができる。
【0151】
本発明について、好ましい実施形態を参照して具体的に図示および記述してきたが、当業者なら、請求項において記述される本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、本発明に対して、形態および詳細の様々な変更を実施することが可能であることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を生成するアノードを有するX線管と、
前記アノードによって生成されるX線を収集し、その方向を変えるX線光学機器であって、X線の焦点を有するX線光学機器と、
X線が前記X線光学機器によって放出される元である、前記X線管を囲むハウジングと、
前記アノードによって生成されるX線と前記X線光学機器の焦点との位置合せを維持することによって前記X線光学機器のX線出力強度を制御する制御システムと、
を備え、
前記X線光学機器は前記ハウジングに固定され、
前記制御システムは、前記X線ソースアセンブリの少なくとも1つの動作条件の変化にもかかわらず、X線出力強度を維持することができる
ことを特徴とするX線ソースアセンブリ。
【請求項2】
前記制御システムは、前記X線光学機器のX線出力強度を監視するセンサ、および監視X線出力強度を使用して前記アノードおよび前記X線光学機器の少なくとも一方の位置を制御する制御装置をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項3】
前記制御システムは、少なくとも1つのアクチュエータを備え、前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記X線光学機器に対する前記アノードの位置の調節および前記X線光学機器からのX線出力強度の制御を実施する少なくとも1つの温度アクチュエータまたはメカニカルアクチユエータを備えた
ことを特徴とする請求項2に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項4】
前記X線光学機器は、ポリキャピラリ光学機器、または集束結晶の形態の集束光学機器および視準光学機器の一方を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの動作条件は、アノードの電力レベル、前記X線ソースアセンブリの周囲温度、および/または前記X線ソースアセンブリのハウジングの温度を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項6】
前記制御システムは、前記X線光学機器のX線出力強度を制御する自動制御システムを備え、前記制御システムは、フィードバックまたは予測に基づく
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項7】
前記制御システムは、
アノードの電力レベルを得る手段と、
アノードの温度、前記アノードを囲むハウジングの温度、および前記X線ソースアセンブリの周囲温度の少なくとも1つを得る手段と、
前記得られたアノードの電力レベルについて基準温度を決定する手段と、
前記アノードの温度、前記ハウジングの温度または前記周囲温度のうちの少なくとも一つと前記基準温度を使用して、前記X線光学機器に対するアノードのソーススポットの位置を制御する手段とをさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項8】
前記X線管を少なくとも部分的に閉鎖するハウジングと、
前記ハウジングにおいて前記X線管を取り付ける調節可能取付け手段とをさらに備え、
前記調節可能取付け手段により、前記X線管からのX線の透過を最適にするように、前記ハウジングにおいて前記X線管の位置を調整することが可能になる
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項9】
前記調節可能取付け手段は、複数のねじ込み固定具を備えた
ことを特徴とする請求項8に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項10】
前記X線管を前記ハウジングに対して位置合わせする基準点をさらに備えた
ことを特徴とする請求項8に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項11】
X線を使用して試料を分析する装置と組み合わされた請求項1乃至10のいずれかに記載のX線ソースアセンブリであって、前記装置は、
流体の少なくとも1つの成分にX線蛍光を発生させるために、前記試料をX線に曝露させる手段と、
前記流体の少なくとも1つの特性を決定するために、前記試料からの前記X線蛍光を分析する手段とを備えた
ことを特徴とするX線ソースアセンブリ。
【請求項12】
前記X線管によって生成される熱を除去するために、前記X線管に熱的に結合された熱伝導性誘電材料
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項13】
前記制御システムは、前記アノードの加熱および冷却の少なくとも一方を実施し、それにより、前記X線光学機器に対する前記アノードのソーススポットの位置の調節を実施する温度アクチュエータ、および前記アノードのソーススポットおよび前記X線光学機器の少なくとも一方の位置を調節するメカニカルアクチユエータを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項14】
前記制御システムは、前記X線光学機器に対する前記アノードのソーススポットの位置に関するフィードバックを提供する少なくとも1つのセンサをさらに含み、前記少なくとも1つのセンサは、アノードの電力レベルを監視し、アノードの温度を直接または間接に監視し、前記X線ソースアセンブリの周囲温度を測定し、および/または前記ハウジングの温度を測定する少なくとも1つのセンサを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のX線ソースアセンブリ。
【請求項15】
X線を提供する方法であって、
電子が上に当たるソーススポットを備えるアノードを含むX線管を有するX線ソースアセンブリを提供するステップと、
前記アノードの電力レベルを取得するステップと、
前記取得されたアノードの電力レベルについての基準温度を用いてX線光学機器に対する前記アノードのソーススポットの位置を制御するステップと、
を備え、
前記X線ソースアセンブリは前記X線管を囲むハウジングを含み、
前記ハウジングには、前記アノードによって生成されるX線を収集し、その方向を変えるX線光学機器であって、X線の焦点を有するX線光学機器が固定され、
前記制御するステップは、前記X線ソースアセンブリの少なくとも1つの動作条件の変化にもかかわらず、前記X線光学機器の焦点と前記アノードのソーススポットの位置との双方の間での位置合せを維持することによって前記X線光学機器のX線出力強度を維持することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記制御するステップは、前記X線ソースアセンブリの少なくとも1つの動作条件の変化にもかかわらず、前記X線光学機器に対する前記アノードのソーススポットの位置を維持するために、前記アノードのソーススポットおよび前記X線光学機器の少なくとも一方の位置を自動的に制御することを含む
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記X線光学機器は、ポリキャピラリX線光学機器、または集束結晶の形態の集束X線光学機器および視準X線光学機器の少なくとも1つを備えた
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの動作条件は、アノードの電力レベル、前記X線ソースアセンブリの周囲温度、または前記X線ソースアセンブリのハウジングの温度を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図19A】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−71120(P2011−71120A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230027(P2010−230027)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【分割の表示】特願2003−550565(P2003−550565)の分割
【原出願日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願人】(500577987)エックス−レイ オプティカル システムズ インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】