説明

改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク及びその製造方法

【課題】 断熱壁とシール壁の構造及びこれらの結合構造を簡単にし、作業が容易になるように改善して、シールの信頼性を向上させ、組立構造及び製造工程を単純化し、タンクの乾燥時間を短縮させる改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明による改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクは、タンクの内面に設けられる断熱壁と、断熱壁の上面に設けられ、液化天然ガスと直接接するシール壁と、貯蔵タンクの内面に設けられ、断熱壁を通過し、シール壁を支持する複数のアンカー構造体とを備え、シール壁は、少なくとも2層以上の多重構造からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、陸上用タンク、車両のような構造物の内部に設置される改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク及びその製造方法に関し、より詳しくは、超低温状態の液化天然ガスを貯蔵するタンクの構造を単純化させ、組立工程を短縮させるとともに、液密性を堅固に保持する改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液化天然ガス(LNG)は、化石燃料の一つである天然ガスが液化したものであって、これを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクは、設置される位置に応じて、地上に設置されまたは地中に埋め立てられる陸上貯蔵タンクまたは自動車、船舶のような運送手段に設置された移動型貯蔵タンク等に分けられる。
【0003】
この液化天然ガスは、超低温状態に保管され、衝撃を受けた際、爆発の危険性があるので、これを保管する貯蔵タンクは、耐衝撃性及び液密性が堅固に保持される構造をなす。
【0004】
従来、コンクリート製の外槽と、その外槽の内面を被う断熱材と、その断熱材の内面に取り付けられ液化天然ガスをシールする二重構造のシール壁とを備えた陸上用液化天然ガス貯蔵タンクが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような従来の二重構造のシール壁は、液化天然ガスに直接接する内層メンブレンと、この内層メンブレンの外側に直接接する外層メンブレンとを含んでおり、安全性が向上する。
【0006】
しかしながら、内層メンブレンと外層メンブレンが互いに緊密な接触状態になっているので、遊動がある場合、内層メンブレンと外層メンブレンとの間に摩擦が生じることがあり、一方のメンブレンの破損が、他方のメンブレンに直接伝達されてしまうという問題があった。したがって、遊動が発生する船舶等に設けられる貯蔵タンクには、このような従来の二重構造のシール壁を適用することができない。
【0007】
このように遊動の殆どない陸上貯蔵タンクと対比して、遊動のある自動車、船舶に設けられる液化天然ガス貯蔵タンクの構造は、遊動による機械的応力に対する対策を講じなければならないという点では多少差がある。しかし、機械的応力に対する対策が備えられた船舶に設けられた液化天然ガス貯蔵タンクは、当然、陸上貯蔵タンクにも用いられ得るので、本発明の明細書には、船舶に設けられた液化天然ガス貯蔵タンクの構造を一例として説明する。
【0008】
図1は、従来の技術による液化天然ガス貯蔵タンクの一部を示す斜視図であり、これは、本出願人により韓国特許第499710号として登録されている。
【0009】
従来の液化天然ガス貯蔵タンク10は、船体の床面に二次断熱壁22、42と一次断熱壁24、44とが順次設けられ、前記二次断熱壁22、42と一次断熱壁24、44との間には、2次シール壁23、43が設けられ、これらの間をシールする。また、前記一次断熱壁24、44の上部には、一次シール壁50が設けられる。
【0010】
このように構成された液化天然ガス貯蔵タンク10は、内部のコーナー部に設けられるコーナー構造体20と、床面に一定の間隔を置いて設けられるアンカー構造体30と、前記コーナー構造体20またはアンカー構造体30間に挿入され、摺動可能に設けられる平面構造体40とを有する。この際、前記コーナー構造体20、アンカー構造体30、平面構造体40は、それぞれの単位モジュールで予め作製された後、貯蔵タンク10に組み立てられる構造であり、前記一次シール壁50がその上に設けられ、断熱壁を液密することにより、内側空間に液化天然ガス(LNG)が貯蔵される空間を提供する。
【0011】
以下、図1を参照して、液化天然ガス貯蔵タンクについて説明する。
【0012】
前記コーナー構造体20、アンカー構造体30、平面構造体40は、それぞれの一次断熱壁24、34、44、二次断熱壁22、32、42、及び二次シール壁23、43を有し、これらをまとめて断熱壁構造体20、30、40と定義する。
【0013】
また、各断熱壁構造体20、30、40において、各単位モジュールの二次シール壁及び各断熱壁の接触面は、接着剤で接着され一体に形成される。通常、前記二次断熱壁22、42は、絶縁性物質であるポリウレタンフォームと、その下部に付着された板材とで構成される。また、前記一次断熱壁24、44は、ポリウレタンフォームと、その上部に接着剤で付着された板材とからなる。また、前記一次シール壁は、前記一次断熱壁24、3444の上部に設けられ、溶接により、前記アンカー構造体30に固定される。
【0014】
また、前記平面構造体40の二次断熱壁42の下端部には、前記二次断熱壁42よりも大きく形成されたフランジ42aが形成される。前記フランジ42aは、前記アンカー構造体30の下端部に形成された溝部に挿入され、多少摺動可能に設けられる。
【0015】
各アンカー構造体30は、図示のように、アンカー支持ロッド36と、下部に位置した固定部材37と、アンカー二次断熱壁32と、アンカー一次断熱壁34とを有し、前記アンカー二次断熱壁32とアンカー一次断熱壁34との間には、二次シール壁23、43が連結される。前記アンカー支持ロッド36の一端は、一次シール壁50に連結され、他端は、前記固定部材37により、船体の内部壁12に連結されている。
【0016】
また、前記アンカー構造体30は、前記アンカー支持ロッド36の上端に、前記一次シール壁50が溶接されて結合される。
【0017】
また、前記アンカー構造体30は、隣接した平面構造体40の連結地点に位置して、これらを互いに連結し、前記平面構造体40は、貯蔵タンク10をなす船体の内部壁12または隔壁14に固定される。また、前記アンカー構造体30の固定部材37は、アンカー支持ロッド36の周囲に設けられる。
【0018】
しかしながら、従来の液化天然ガス貯蔵タンクは、断熱壁構造体が、一、二次断熱壁及び一、二次シール壁からなるので、その構成が複雑であるだけでなく、二次シール壁を連結するための構造が複雑であり、断熱壁の作業が容易ではない。また、アンカー部や二次シール壁の連結部の構造と設置作業が難しく、二次シール壁におけるLNGのシールの信頼性が低下するという恐れもあった。
【特許文献1】特開2002−181288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、LNGタンクにおいて、断熱壁とシール壁の構造及びこれらの結合構造を簡単にし、作業が容易になるように改善し、シールの信頼性を向上させ、組立構造及び製造工程を単純化し、タンクの乾燥時間を短縮させる改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明に係る改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクは、前記タンクの内面に設けられる断熱壁と、前記断熱壁の上面に設けられ、液化天然ガスと直接接するシール壁と、前記貯蔵タンクの内面に設けられ、前記断熱壁を通過し、前記シール壁を支持する複数のアンカー構造体とを備える。特に、前記シール壁は、近接する二重シール構造からなり、それぞれの前記シール壁は、互いに離隔していることを特徴とする。
【0021】
ここで、前記シール壁は、少なくとも2層以上の多重構造からなってもよい。また、前記断熱壁は、一つの層からなってもよい。前記断熱壁は、複数のモジュールで構成され、このモジュールが連結され、断熱壁層を形成してもよい。また、前記モジュールは、断熱材と前記断熱材の上部および/または下部に付着される板材からなってもよい。前記モジュールは、前記タンクのコーナー部に設けられるコーナー部モジュールと、前記タンクの平面部に設けられる平面部モジュールとからなってもよい。また、前記コーナー部モジュールは、接着剤により前記タンクと接着されてもよい。前記平面部モジュールは、前記シール壁と前記タンクの内面との間において、摺動可能なことが好ましい。
【0022】
また、前記アンカー構造体は、前記貯蔵タンクの内面に機械的に支持されるアンカー支持ロッドと、前記アンカー支持ロッドの周囲を取り囲むアンカー断熱壁とを有してもよい。また、前記アンカー構造体は、前記貯蔵タンクの内面に溶接により固定されるアンカー支持ロッドと、前記アンカー支持ロッドの周囲を取り囲むアンカー断熱壁とを有することも可能である。また、前記アンカー支持ロッドの上部には、上部キャップが設けられ、前記上部キャップには、前記シール壁が溶接されてもよい。また、前記シール壁は2層構造であり、シール壁間には、シール壁間の距離を一定に維持する支持板材が設けられてもよい。好ましくは、前記支持板材は、プライウッド単独からなるもの、ポリウレタンフォームや強化ポリウレタンフォーム単独からなるもの、そして、ポリウレタンフォームや強化ポリウレタンフォームの上下部の表面の少なくとも一方の表面にプライウッドが付着したものから選ばれたいずれか一つである。前記上部キャップは、前記2層のシール壁の高さにそれぞれ対応する段差部を有し、前記段差部には、対応するシール壁が溶接により結合されてもよい。
【0023】
また、本発明の他の実施の形態による改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクの製造方法は、前記タンクの内面に断熱壁を設けるステップと、前記断熱壁の上面に液化天然ガスと直接接する複層のシール壁を設けるステップとを含み、前記複層のシール壁は、貯蔵タンクの内面に設けられ、前記断熱壁を通過して設置される複数のアンカー構造体により支持され、それぞれの前記シール壁は、互いに離隔していることを特徴とする。
【0024】
本発明による貯蔵タンクの製造方法においても、前記貯蔵タンクにおいて特徴としている要素を含むことが可能である。
【0025】
以上、本発明による改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクは、断熱壁と多重構造のシール壁を有する構造で形成することにより、従来、二つの断熱壁間に二次シール壁を設置する構造の複雑性を除去するとともに、二次シール壁間またはアンカー部における二次シール壁の連結部にて生じる漏れの恐れを除去して、構造が簡単であり、作業が容易であり、シールの信頼性を増加させることができる。
【0026】
また、従来、二次シール壁の連結部位にトリプレックスを用いた例が多くあるが、このトリプレックスは、LNGの漏れの恐れがあった。しかし、本発明では、二次シール壁が二つの断熱壁層間に位置しないので、トリプレックスを用いる必要もなく、信頼性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、断熱壁と多重構造、特に、近接した二重シール壁を有する構造に形成することにより、従来、二つの断熱壁間に二次シール壁を設置する構造の複雑性を除去するとともに、二次シール壁間またはアンカー部での二次シール壁の連結部から発生する漏れの恐れを解消することができ、構造が簡単であり、作業が容易であり、シールの信頼性を増加させることができる。また、超低温状態の液体である液化天然ガスを輸送する船舶の内部に設けられる貯蔵タンクの設置構造をより単純化させ、組立工程を短縮させるという長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面に基づいて詳しく説明する。
【0029】
本発明は、液化天然ガス貯蔵タンクであって、高圧、超低温状態の液化天然ガスを貯蔵する。このため、液化天然ガス貯蔵タンクは、その構造が簡単であり、かつ、耐衝撃性及び液密性が堅固に保持される構造をなす。
【0030】
貨物の遊動がある自動車、船舶に設けられる液化天然ガス貯蔵タンクは、遊動の殆どない陸上タンクと対比して、貨物の遊動による機械的応力に対する対策を講じなければならないという点においては差がある。しかし、機械的応力への対策が備えられた船舶に設けられた液化天然ガス貯蔵タンクは、当然、陸上タンクにも用いられるので、本発明の明細書では、船舶に設けられた液化天然ガス貯蔵タンクの構造を一例として説明する。
【0031】
図2は、本発明による液化天然ガス貯蔵タンクが設けられた例示的な船舶の断面図である。ここで、図2は、理解を助けるために、実際の液化天然ガス貯蔵タンクにおけるよりも、これらのモジュールを拡大して示す図であり、実際は、前記貯蔵タンク及びその内部構成がさらに大きく、より多数に区画され、相互連結されていることを予め明らかにしておく。
【0032】
本発明による液化天然ガス貯蔵タンクは、図2に示すように、船舶1に設けられてもよい。船舶1は、外形を形成する外部壁16と、その内部に形成された内部壁12との二重構造を有する船体からなる。前記船舶1の内部壁12と外部壁16は、連結リブ13により連結されて一体に形成され、場合に応じて、前記内部壁12が存在しない単一構造の船体からなってもよい。また、前記船舶1の上部は、単一層の甲板で形成されてもよく、その外形は、船舶1の大きさまたは貯蔵容量等により、様々に変形され得る。
【0033】
また、前記内部壁12により形成された空間は、一つ以上の隔壁14により分割されてもよい。前記隔壁14は、通常の液化天然ガス貯蔵タンクを備える船舶1に公知のようにコファダムを形成してもよい。
【0034】
また、それぞれの内部空間は、液化天然ガスのような超低温液体を積載する貯蔵タンク10を構成してもよい。本発明の実施例を示す図2は、船舶1の左から二番目の空間にタンク10を設けた概念図を示す。
【0035】
ここで、シール壁150は、前記貯蔵タンク10に貯蔵された液化天然ガスLNGを液密するシール手段であり、液化天然ガスLNGと接し、公知のように、超低温LNGの船荷積による温度変化に応じるために、皺部が形成されてもよい。前記一次シール壁150は、複数のアンカー構造体130等により、船舶1の内部壁12または隔壁14に連結されている。したがって、前記シール壁150は、船体に対して移動が自由ではない。
【0036】
また、前記シール壁150とタンク10を構成する船体の内部壁12との間には、断熱壁の層を構成するモジュールである断熱壁構造体120、130、140が位置する。本発明において、アンカー構造体130は、断熱壁モジュールの一つとして説明する。前記断熱壁構造体120、130、140は、船体の内部壁12または内部隔壁14と前記シール壁150との間に位置し、前記貯蔵タンク10を断熱する断熱壁をなす。
【0037】
また、前記断熱壁構造体120、130、140は、それぞれモジュールで構成され、コーナー部に位置するコーナー構造体120と、船体に内部壁に一定の間隔で設けられるアンカー構造体130と、前記コーナー構造体120またはアンカー構造体130との間の平面に設けられる平面構造体140とからなる。
【0038】
このように本発明では、シール壁150は、アンカー構造体130により主に支持され、平面構造体140は、前記シール壁が受けるLNGの荷重のみを支持し、アンカー構造体130と直接的な結合関係がない。
【0039】
図3は、図2におけるA部分を拡大した図である。図3を参照すると、貯蔵タンク10の内部壁12に設けられる断熱壁構造体130、140は、平面部に設けられる平面構造体140と、それぞれの平面構造体140間に設けられるアンカー構造体130とを有する。
【0040】
前記アンカー構造体130は、貯蔵タンク10の内部壁12または隔壁14に設けられ、前記アンカー構造体130を貫通するアンカー支持ロッド136により固定される。また、前記平面構造体140は、前記アンカー構造体130またはコーナー構造体120(図2の120)間に挿入され、複数の連結手段(図示せず)により、タンク10の内部壁12に設けられる。
【0041】
また、前記断熱壁構造体130、140の上部には、液化天然ガスと直接接するシール壁150が設けられる。前記シール壁150は、二重構造、すなわち、LNGと直接接する一次シール壁151と、その下部の二次シール壁155とで構成され、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155が互いに所定の高さで離隔して配置される。
【0042】
また、前記シール壁150は、収縮及び伸長の際、破損等を防止するために、複数の皺部P(図示の凸部)が形成される。前記皺部Pは、LNGの船荷積による温度変化により伸長または収縮され、シール壁150に加えられる熱的変形による破損を防止する。また、前記シール壁150は、前記アンカー構造体130のアンカー支持ロッド136の端部に溶接により固定される。
【0043】
また、図3において、前記シール壁150は、一次シール壁151と二次シール壁155の二重構造からなるものと説明しているが、積層された3つ以上のシール壁からなる多重構造で構成してもよい。
【0044】
図4は、本発明による液化天然ガス貯蔵タンクによる一実施の形態の一部を詳細に示す平面図であり、図5と図6は、図4のI−I線及びII−II線の断面図である。
【0045】
本発明による液化天然ガス貯蔵タンク10は、図4乃至図6に示すように、断熱壁構造体(図2の120、130、140)が貯蔵タンク10を断熱する断熱壁をなすようになる。前記断熱壁構造体120、130、140は、コーナー構造体120とアンカー構造体130が船体の内部壁12の床面に固定設置され、前記コーナー構造体120またはアンカー構造体130との間に平面構造体140が若干の移動が可能に設置される。
【0046】
このため、前記平面構造体140は、コーナー構造体120またはアンカー構造体130との間において、複数の連結手段146を介して設置される。前記連結手段146は、船体の内部壁12に溶接されて設置されたスタットボルト138に、前記平面構造体の下部板材であるプライウッド板(平面下部板141)をナット139を用いて締め付けることにより行われる。前記平面構造体140と、前記コーナー構造体120またはアンカー構造体130の側面との間には、所定の距離だけ離隔した隙間(1〜4mm)が形成されてもよく、このように形成された隙間は、前記船体の変形の際に、前記平面構造体140が遊動可能な空間を提供し、変形量を吸収することができるようにする。したがって、前記平面構造体140は、床面に対して水平方向に若干の移動(摺動)が可能になる。
【0047】
前記平面構造体140は、前記内部壁12に面接する平面下部板141と、その上部に形成される平面断熱材142と、その上部に形成される平面上部板143とからなる。
【0048】
ここで、前記平面下部板141と前記平面上部板143は、プライウッド材質からなり、前記平面断熱材142は、ポリウレタンフォームまたは強化ポリウレタンフォームで形成される。
【0049】
また、前記アンカー構造体130は、アンカー下部板131と、前記アンカー下部板131の上部にポリウレタンフォームまたは強化ポリウレタンフォームで形成されたアンカー断熱材132と、その上部に結合されるアンカー上部板133とを有する。
【0050】
この際、前記アンカー下部板131は、前記内部壁12に機械的に固定される。このため、前記内部壁12には、一定の間隔で複数のスタッドピン138が設けられ、そのピンに対応する貫通部が形成されたアンカーベース板137が、前記スタッドピン138に結合される。前記アンカー下部板131は、前記スタッドピン138に結合されるナット139により前記内部壁12と機械的に固定される。
【0051】
また、前記アンカーベース板137の上部には、前記アンカー下部板131が設けられるが、前記アンカー下部板131は、中央部に所定の座ぐり空間が形成され、前記座ぐり空間には、ロッド支持キャップ134が設けられる。前記ロッド支持キャップ134は、内部にナット134aが含まれ、または、ナット構造が一体に形成されたものであってもよい。前記ロッド支持キャップ134には、前述したアンカー支持ロッド136が垂直に結合される。このため、前記ロード支持キャップ134は、内部に前記ナット134aを締め付けるための構造のキャップ部と、前記キャップ部の下端から放射状に延長したフランジ部を有する。また、前記フランジ部は、前記スタッドピン138及びこれを固定するナット138間に介在されて、より堅固に結合される。前記アンカー支持ロッド136の下部構造については、韓国特許登録第499711号、第499713号に開示されている。
【0052】
また、前記アンカー下部板131の上部には、ポリウレタンフォームまたは強化ポリウレタンフォームで形成されたアンカー断熱材132が、前記アンカー支持ロッド136に挿入されて位置される。前記アンカー断熱材132の前記アンカー支持ロッド136が貫通する上部面には、アンカー上部板133が固着される。また、前記アンカー上部板133の中央部には、前記アンカー支持ロッド136の端部に結合される上部キャップ135が位置される。
【0053】
また、前記断熱壁構造体130、140の上部には、液化天然ガスと接するシール壁150が設けられる。また、前記シール壁150は、前記上部キャップ135の一方に溶接により固定される。また、前記シール壁150は、前記断熱壁構造体の揺れまたは温度変化により収縮または膨張の際に破損等を防止するために形成された複数の皺部P(図示の凸部)を有する。
【0054】
ここで、前記シール壁150は、複数のシール壁が層をなす多重構造からなり、好ましくは、一次シール壁151及び二次シール壁155の二重構造からなる。すなわち、前記シール壁150は、前記断熱壁構造体130、140上に載置される二次シール壁155と、前記二次シール壁155の上部に設けられる一次シール壁151とからなり、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155は、前記上部キャップ135に溶接されて固定される。
【0055】
このため、前記上部キャップ135には、前記シール壁150の高さに対応する段差部135aが形成されてもよく、前記段差部135aに前記一次シール壁151及び二次シール壁155が溶接により固定される。すなわち、前記二次シール壁155は、前記段差部135aの下端部に溶接により固定され、前記一次シール壁151は、前記段差部135aの上端部に溶接により固定される。
【0056】
このように、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155は、前記段差部135aにより、互いに離隔した隙間を一定に維持させるので、相互間の干渉による機械的な応力が発生しないようになる。
【0057】
このように、前記断熱壁構造体120、130、140は、コーナー構造体120と、アンカー構造体130と、平面構造体140との組合せにより断熱壁をなすようになる。また、前記断熱壁の構成方法や形状、材質等については、US4747513、WO8909909、US5501359、US5586513、JP2000-038190(公開)、US6035795、JP2001-122386(公開)等に公知されており、本発明は、これらの特許文献に記載された内容を参照とし、これらの特許に記載された断熱壁、接着される木材等を用いてもよい。
【0058】
また、本発明の実施の形態において、前記アンカー構造体130は、前記船体1の内部面12と機械的な結合方式により固定されたものと説明しているが、前記アンカー支持ロッド136が、前記船体1の内部面12に直接溶接されて固定されることももちろん可能である。また、本発明のアンカー構造体130の下部構造は、本出願人により出願され、特許登録された第499711号、第499713号等にさらに詳述されている。
【0059】
また、前記シール壁150は、温度変化により、多少伸縮が発生することもあり、この場合、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155が接触により破損され得るので、これらが互いに接触しないようにする構造が好ましい。このため、本発明では、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155との間に、離隔した距離を一定に維持するための支持板材160が設けられる。
【0060】
この際、前記支持板材160は、前記シール壁150の皺部以外の領域に全て設置されることが好ましいが、皺部以外の領域の一部にわたって設置されてもよい。
【0061】
前記支持板材160としては、一定の厚さのプライウッドが単独で用いられたもの、一定の厚さのポリウレタンフォーム(または、強化ポリウレタンフォーム)が単独で用いられたもの、または、ポリウレタンフォーム(または、強化ポリウレタンフォーム)の上下部の表面の少なくとも一方の表面にプライウッドが付着したものが用いられ得る。
【0062】
以上、本発明によると、前記一次シール壁151と前記二次シール壁155との間が離隔しているので、極低温のLNGに直接接触する一次シール壁151の温度よりも二次シール壁155の温度が高く維持され得る。したがって、二次シール壁155の耐久性がよくなり、二次シール壁155の寿命が一次シール壁151の寿命よりも長くなり得る。
【0063】
また、本発明によると、一次シール壁151と二次シール壁155との間が離隔しているので、波等の外力により船体が変形され、貯蔵タンクの形状が変形されても、一次シール壁151及び二次シール壁155間に摩擦が発生せず、いずれか一方のシール膜に衝撃が加えられて損傷が生じても、その損傷が他方のシール膜に直接伝播することを防止することができる。
【0064】
また、図面符号170は、レベル材であって、前記断熱壁構造体の設置の際、前記船舶1の内部壁12と前記断熱壁構造体の底面との間に介在され、前記内部壁12に対して前記断熱壁構造体が一定の高さを維持するようにするためのものである。
【0065】
また、本発明の具体的な実施の形態には、シール壁が波形の、一名、GTT Mark−III型に用いられるステンレス鋼からなるものについて記載されているが、GTTのNo.96に用いられるインバー鋼に対しても適用可能である。
【0066】
また、インバー鋼からなるシール壁も、近接して多重に設置することも可能であり、これにより、ステンレス鋼からなるものと同様な効果を奏することができる。
【0067】
本発明は、上述したそれぞれの図面に示す具体的な実施の形態に適用され、本発明がこのような具体的な実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術の思想を逸脱しない範囲内で、様々に変形実施することも可能である。
【0068】
また、本発明は、船舶の船体内部に設けられる液化天然ガス貯蔵タンクだけでなく、陸上に設けられる液化天然ガス貯蔵タンクにも、同様に適用され得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来の技術に係る液化天然ガス貯蔵タンクの一部を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る液化天然ガス貯蔵タンクが設けられた例示的な船舶を示す断面図である。
【図3】図2におけるA部分の拡大図である。
【図4】本発明に係る液化天然ガス貯蔵タンクの一部を詳細に示す平面図である。
【図5】図4におけるI−I線断面図である。
【図6】図4におけるII−II線断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 貯蔵タンク
12 内部壁
14 隔壁
16 外部壁
120 コーナー構造体
130 アンカー構造体
131 アンカー下部板
132 アンカー断熱材
133 アンカー上部板
134 ロッド支持キャップ
134a ナット
135 上部キャップ
135a 突出部
136 アンカー支持ロッド
137 アンカーベース板
138 スタッドピン
139 ナット
140 平面構造体
141 平面下部板
142 平面断熱材
143 平面上部板
146 連結手段
150 シール壁
151 一次シール壁
155 二次シール壁
160 支持板材
170 レベル材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを積載する貯蔵タンクであって、
前記タンクの内面に設けられる断熱壁と、
前記断熱壁の上面に設けられ、液化天然ガスと直接接するシール壁と、
前記タンクの内面に設けられ、前記断熱壁を通過し、前記シール壁を支持する複数のアンカー構造体とを備え、
前記シール壁は、少なくとも2層の多重構造からなり、多重構造を有するそれぞれの前記シール壁は、互いに離隔していることを特徴とする改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項2】
前記シール壁が、2層構造であることを特徴とする請求項1に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項3】
前記断熱壁が、一つの層からなることを特徴とする請求項1に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項4】
前記断熱壁が、複数のモジュールからなり、このモジュールが順次相互に連結され、断熱壁層を形成することを特徴とする請求項1に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項5】
前記各モジュールが、断熱材と、前記断熱材の上部および/または下部に取り付けられる板材とからなることを特徴とする請求項4に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項6】
前記各モジュールが、前記タンクのコーナー部に設けられるコーナー部モジュールと、前記タンクの平面部に設けられる平面部モジュールとからなることを特徴とする請求項4に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項7】
前記コーナー部モジュールが、接着剤により、前記タンクと接着されることを特徴とする請求項6に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項8】
前記平面部モジュールが、前記シール壁と前記タンク内面との間にて、摺動が可能であることを特徴とする請求項6に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項9】
前記シール壁が、2層構造であり、一定の間隔を維持するために、前記シール壁間に支持板材を含ませたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項10】
前記支持板材が、プライウッド単独からなるもの、ポリウレタンフォームや強化ポリウレタンフォーム単独からなるもの、そして、ポリウレタンフォームや強化ポリウレタンフォームの上下部の表面の少なくとも一方の表面にプライウッドが付着したものから選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項9に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項11】
前記各アンカー構造体が、前記貯蔵タンクの内面に溶接により固定されるアンカー支持ロッドと、
前記アンカー支持ロッドの周囲を取り囲むアンカー断熱壁とを備えることを特徴とする請求項1に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項12】
前記アンカー支持ロッドの上部には上部キャップが設けられ、
前記上部キャップには、前記シール壁が溶接されることを特徴とする請求項11に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項13】
前記上部キャップが、前記2層のシール壁の高さにそれぞれ対応する段差部を有し、
前記段差部には、対応するシール壁が溶接により結合されることを特徴とする請求項12に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項14】
前記各アンカー構造体が、前記貯蔵タンクの内面に機械的に支持されるアンカー支持ロッドと、
前記アンカー支持ロッドの周囲を取り囲むアンカー断熱壁とを有することを特徴とする請求項1に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項15】
前記アンカー支持ロッドの上部には、上部キャップが設けられ、
前記上部キャップには、前記シール壁が溶接されることを特徴とする請求項14に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンク。
【請求項16】
液化天然ガスを積載する貯蔵タンクの製造方法であって、
前記タンクの内面に断熱壁を設けるステップと、
前記断熱壁の上面に液化天然ガスと直接接する複層のシール壁を設けるステップとを含み、
前記複層のシール壁は、貯蔵タンクの内面に設けられ、前記断熱壁を通過して設置される複数のアンカー構造体により支持され、それぞれの前記シール壁は、互いに離隔されていることを特徴とする改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクの製造方法。
【請求項17】
前記シール壁が、2層構造であることを特徴とする請求項16に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクの製造方法。
【請求項18】
前記断熱壁が、単層構造であり、前記シール壁が、2層構造であることを特徴とする請求項17に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクの製造方法。
【請求項19】
前記シール壁が2層構造であり、
前記2層構造のシール壁間には、一定の間隔を維持するために、支持板材を有することを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一項に記載の改善された断熱構造を有する液化天然ガス貯蔵タンクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292282(P2007−292282A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311426(P2006−311426)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(506087314)コリア ガス コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】