説明

改変抗体可変領域の調製のための物質ならびにその治療的用途

【課題】異種動物への投与に適した改変残基を具備した抗体可変領域を提供する。
【解決手段】抗原に対する抗体可変領域本来の親和性を減少させることなく、異種に関するその免疫原性を減少させながら、抗原に結合可能な置換アミノ酸残基を具備せしめた改変抗体可変領域。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、抗原に対する抗体可変領域本来の親和性を減少させることなく、異種に関するその免疫原性を減少させながら改変できる抗体可変領域のアミノ酸残基を決定することによって改変抗体可変領域を調製する方法;異種に投与するのに有用な同定された残基に改変部分を有する抗体可変領域の調製方法と用途;および上記のように改変された可変領域に関し、特に、本発明は、ヒトに投与するために改変されるマウスの改変抗体可変領域の調製方法、生成した抗体可変領域自体、およびこのような「ヒト型化」抗体のヒトの疾病治療での用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの治療において、未改変マウスモノクローナル抗体を利用するには、三つの理由から問題がある。 第一に、マウス抗体に対する免疫応答が人体に備わっている。 第二に、その抗体はヒトの循環系内では半減期が短くなる。 第三に、マウスの抗体作用領域がヒトの免疫系を有効に刺激しないことである。 上記の問題を解消しようと試みた三つの事例がある。 Junghans et al., Cancer Res., 50巻、1495〜1502頁、1990年(非特許文献1)などの刊行物には、マウスの可変領域をコードするDNAをヒトの不変領域をコードするDNAに連結する遺伝子工学の技術を利用して、発現されたときにハイブリッドのマウス/ヒト抗体を生成する構造体の実用化が記載されている。
【0003】
また、遺伝子工学の技術によって、マウスの超可変相補性決定領域(CDRs)からの遺伝情報をヒトモノクローナル抗体のCDRをコードするDNAの代わりに挿入して、マウスCDRを有するヒト抗体をコードする構造体を生成させることもできる。 この技術は「CDR移植法」として知られている(例えば、Jones et al., Nature, 321巻、522〜525頁、1986年(非特許文献2);Junghans et al., 前記文献1参照)。
【0004】
タンパク質構造分析法は、失われた抗原結合性能を回復するために、CDR移植法で生成した第一世代の可変領域に対して、再び遺伝子工学によって、マウスの残基を「付け戻す」ために使用できる。 Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86巻、10029〜10033頁、1989年(非特許文献3);Co et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、2869〜2873頁、1991年(非特許文献4)にはこの方法の変形が記載されている。 上記の三つの方法は、マウスのモノクローナル抗体を「ヒト型化させる」方法である。
【0005】
マウスのモノクローナル抗体をヒト型化した結果、得られたヒト型化抗体の特異的結合活性が、減少あるいは完全に消失することがある。 例えば、Queen et al.,の前記文献3に記載されている改変抗体の結合親和性は、1/3に減少すると報告され、Co et al.,の前記文献4では1/2に減少し、Jones et al.,の前記文献2では1/2〜1/3に減少すると報告されている。 他の報告には、結合親和性の一桁台の減少が報告されている(例えば、Tempest et al., Bio/Technology、9巻、266〜271頁、1991年(非特許文献5);Verhoeyen et al., Science、239巻、1534〜1536頁、1988年(非特許文献6)参照)。
【0006】
細胞表面抗原に基づいてT細胞の各種のサブセットを識別する系は、Cluster of Differentation System(以後「CD系」と称する)である。 このCD系という用語は、本願に参考までに組み込んだ、白血球細胞識別分子の分子マーカーに対する標準の名称を示す〔Leukocyte Typing III White Cell Differentiation Antigens(Michael編集、Oxford Press社、1987年)(非特許文献7)〕を参照のこと。
【0007】
いわゆる「パンT細胞」マーカー(または抗原)は、広くT細胞に生成するマーカーであり、特定のT細胞サブセットに特異的なものではない。 パンT細胞マーカーには、CD2、CD3、CD5、CD6およびCD7がある。 例えば、CD5クラスター抗原はヒト成熟Tリンパ球の約85〜100%およびヒト胸腺細胞の大部分に存在するパンTマーカーの一つである。 また、CD5はB細胞のサブセットの約20%にも存在する。 流動細胞計測法、免疫ペルオキンダーゼ染色法および赤血球溶解法を用いた広範な研究によって、上記の抗原が、通常は、B細胞の上記副次集団を除いて、造血始原細胞または他の正常な成人もしくは胎児のヒト組織には存在しないということが実証されてきた。
【0008】
CD5マーカーに関する別の情報が、Leukocyte Typing III White Cell Differentiation Antigens (Michael編集、Oxford Press社、1987年)(非特許文献7)のなかのMcMicheaelおよびGotchの論文に見られる。 また、CD5分子は、免疫グロブリン類と反応性であると文献に報告されている。 例えば、本願に参考までに組み込んだ、Kernan et al., J. Immunol., 33巻、137〜146頁、1984年(非特許文献8)を参照のこと。
【0009】
CD4に対するモノクローナル抗体を用いて慢性関節リウマチの患者に試みた治療の報告がある。 Horneff et al., Arthritis and Rheumatism, 34巻、2号、129〜140頁、1991年2月(非特許文献9);Goldberg et al., Arthritis and Rheumatism, Abstract D115, 33巻、S153、1990年9月(非特許文献10);Goldberg, Journal of Autoimmunity, 4巻、617〜630頁、1991年(非特許文献11);Choy et al., Scand. J. Immunol. 36巻、291〜298頁、1992年(非特許文献12)を参照のこと。
【0010】
抗CD5モノクローナル抗体を用いて、自己免疫疾患、特に、慢性関節リウマチに試みた治療の報告がある。 Kirkham et al., British Journal of Rheumatology, 30巻、459〜463頁、1991年(非特許文献13);Kirkham et al., British Journal of Rheumatology, 30巻、88頁、1991年(非特許文献14);Kirkham et al., Journal of Rheumatology, 19巻、1348〜1352頁、1992年(非特許文献15)を参照のこと。 また、抗T12抗体を用いて多発性硬化症を治療する試みの報告がある。 Hafler et al., Neurology、36巻、777〜784頁、1986年(非特許文献16)。
【非特許文献1】Junghans et al., Cancer Res., 50巻、1495〜1502頁、1990年
【非特許文献2】Jones et al., Nature, 321巻、522〜525頁、1986年
【非特許文献3】Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86巻、10029〜10033頁、1989年
【非特許文献4】Co et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、2869〜2873頁、1991年
【非特許文献5】Tempest et al., Bio/Technology、9巻、266〜271頁、1991年
【非特許文献6】Verhoeyen et al., Science、239巻、1534〜1536頁、1988年
【非特許文献7】Leukocyte Typing III White Cell Differentiation Antigens(Michael編集、Oxford Press社、1987年)
【非特許文献8】Kernan et al., J. Immunol., 33巻、137〜146頁、1984年
【非特許文献9】Horneff et al., Arthritis and Rheumatism, 34巻、2号、129〜140頁、1991年2月
【非特許文献10】Goldberg et al., Arthritis and Rheumatism, Abstract D115, 33巻、S153、1990年9月
【非特許文献11】Goldberg, Journal of Autoimmunity, 4巻、617〜630頁、1991年
【非特許文献12】Choy et al., Scand. J. Immunol. 36巻、291〜298頁、1992年
【非特許文献13】Kirkham et al., British Journal of Rheumatology, 30巻、459〜463頁、1991年
【非特許文献14】Kirkham et al., British Journal of Rheumatology, 30巻、88頁、1991年
【非特許文献15】Kirkham et al., Journal of Rheumatology, 19巻、1348〜1352頁、1992年
【非特許文献16】Hafler et al., Neurology、36巻、777〜784頁、1986年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、マウスのモノクローナル可変領域の抗原に対する固有の親和性を減退しない一方で、疾患の治療に用いるために異種に関するその免疫原性を減らしながら改変できる残基を同定することによって抗体可変領域を調製する方法が当該技術分野で要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対象抗体可変領域の抗原に対する固有の親和性を減退することなく、異種に関するその免疫原性を減退させながら改変できる対象抗体可変領域のアミノ酸を決定することによって、ヒトに投与する上で有用な改変抗体可変領域を調製する方法を提供するものである。 本願で用いられている「対象抗体可変領域」の用語は、決定の対象とされる抗体を意味する。 本発明の方法は、下記の工程を含む。 すなわち、改変されるべき対象抗体可変領域のL鎖とH鎖のアミノ酸配列を決定し;上記L鎖とH鎖を、複数のヒトのL鎖とH鎖のアミノ酸配列と相同性によって対応させ;対象可変領域の抗原に対する固有の親和性をほとんど減退させずに、対象抗体可変領域の作用領域になく、かつ対象抗体可変領域の相補性決定領域または抗原結合領域にないが、この抗体を含有する溶媒に暴露される位置にある各アミノ酸配列を選択することによってその免疫原性を減退するアミノ酸配列をL鎖とH鎖の配列中にて同定し;前記同定されたアミノ酸が複数のヒトのL鎖とH鎖のアミノ酸と異なる場合、この複数のアミノ酸の配列中に高度もしくは適度に保存された各残基と対応している先に同定した各残基を改変するものである。
【0013】
図1Aと図2Bに示すような他のグループの配列は、当業者が適切に改変を決定できる対応関係を決定するために用いることができる。
【0014】
本発明は、複数のヒトのL鎖とH鎖のアミノ酸配列を、図5Aと5Bに示すヒトの共通配列から選択する他の方法を提供する。
【0015】
一般に、上記方法による人間工学は、モノクローナル抗体が一般に有効な、各種の疾患を治療するのに用いることができる。 しかしながら、ヒト型化抗体には、治療される患者の免疫応答を減退させるという他の利点がある。
【0016】
また、本発明は、多数のヒトの疾患を治療するのに有用な生成物および薬学的組成物も開示する。 特に、前記した方法で製造される生成物には、改変されたH65マウスモノクローナル可変領域が含まれる。 さらに、このH65可変領域をコードするDNA配列が提供される。
【0017】
本発明方法の生成物である改変抗体可変領域は、特に、Fab、Fab'およびF(ab')2のような各種免疫グロブリン分子、一本鎖抗体、ならびにFvもしくは単一可変領域の成分として使用できる。
【0018】
本発明による改変可変領域を含む免疫グロブリン分子は、それ自体、または例えば本願出願人による同時係属中の1991年11月4日出願の米国特許願第 07/787,567 号に記載されているような免疫接合体の成分として、ヒトに治療のために投与するのに特に適している。
【0019】
また本発明は、動物モデルがヒトである場合の治療効力を判定する自己免疫疾患の治療法を提供する。 最後に、本発明には、本発明によってヒト型化された抗体を含む薬学的組成物を開示されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所期の目的であった、対象抗体可変領域の抗原に対する固有の親和性を減退することなく、異種に関するその免疫原性を減退させながら改変できる対象抗体可変領域のアミノ酸を決定することによって、ヒトに投与するのに有用な改変抗体可変領域が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明には次の方法が含まれる:(1)抗体可変領域の抗原に対する本来の親和性を減退させずに、異種についての免疫原性を減退させながら改変することができる抗体可変領域のアミノ酸残基の同定;(2)異種に投与するのに有用な改変部分を同定された残基に有する抗体可変領域の調製;および(3)本発明のヒト型化抗体を、ヒトの自己免疫疾患の治療への使用である。 本発明のこれらの方法は、本願に記載の抗体可変領域の構造中の各アミノ酸の関与を示唆する該領域のモデルに基づいている。
【0022】
古典的な抗体の骨格領域全体をヒトの抗体由来のそれと置換して、抗体をヒト型化する他の方法と異なり、本願に記載の方法では、ヒトの残基を抗体の可変領域に導入するが、抗原結合活性に対しては重要ではなく、かつ免疫性刺激因子に暴露されそうな位置にのみ導入する。 本発明の方法は、可変領域の天然内部構造を充分に保持するように設計されているので、改変領域の抗原結合性能は天然領域と比べて遜色がない。
【0023】
MacImadad (Molecular Applications Group、米国、カリフォルニア州、スタンフォード)の三次元分子モデリングプログラムを用いて抗体可変領域のアミノ酸配列を分析して得たデータを、超可変領域の構造に関する前述の理論的研究から得たデータ、それに、Brookhavenデータベース(Brookhaven National Laboratory、米国、ニューヨーク州、アップトン)から入手したHYH (HYHEL-10 Fab-リゾチーム複合体、 Brookhaven構造「3HFM」)、MCPC(IgA Fab MCPC 603-ホスホコリン複合体、Brookhaven構造「2MCP」)、NEWM(Ig Fab' NEW, Brookhaven構造「3FAB」)およびKOL(IgG1 KOL、Brookhaven構造「2IG2」)の抗体可変領域の結晶構造から得たデータとともに、抗体可変領域のモデルを開発するために利用する。
【0024】
図1Aと1Bは、結晶化された四つの抗体可変領域の配列を示すものである。 HYHのL鎖とH鎖(それぞれ、配列番号:1と5)、MCPCのL鎖とH鎖(それぞれ、配列番号:2と6)、NEWMのL鎖とH鎖(それぞれ、配列番号:3と7)およびKOLのL鎖とH鎖(それぞれ、配列番号:4と8)を示す。 図中、感嘆符「!」が付けられた次の位置:MCPCL鎖配列の30X位、MCPC H鎖配列の52X位と98X位、NEWM L鎖配列の30X位、KOL L鎖配列の93X位、およびKOL H鎖配列の98X位はそれぞれ、アミノ酸配列 NSGNQK (配列番号:9)、NKG (配列番号:10)、GST (配列番号:11)、AG、SL、およびHGFCSSASC (配列番号:12)を意味し、これら種々の抗体中の超可変ループ配列の長さの相違を示している。
【0025】
図2と3は、それぞれL鎖とH鎖の構造図を示し、各鎖は残基間の相互作用が容易に理解できるように「変性した」状態の平坦なβ-シート構造で示してある。 折りたたまれたポリペプチド鎖の鎖は、八つのβ-ターンループで接続された垂直の太い線で示してある。 これらのループのうち三つは、抗原結合ループまたはCDRsとして同定され、一つはループの補助であり、および可変領域の「底部」にある残りの四つは抗原結合性には関与していない。 可変領域のアミノ末端とカルボキシ末端は、ポリペプチド鎖の両端に小黒点の記号で示してある。 各アミノ酸の位置は、円印、三角印および四角印で示してある。 L鎖の23位と88位の2つのシステイン間の共有ジスルフィド結合と、H鎖中の22位と92位間の共有ジスルフィド結合は各々太い水平線で示してある。 各鎖の残基はすべて、抗原結合残基と骨格の残基を含めて地図に示してある。 アミノ酸の位置は、Kabat et al., Seqences of Proteins of Immunological Interest、第4版、米国厚生省、米国公衆衛生局、米国国立衛生試験所(1987年)に従って番号を付けたが、小文字「x」で示した位置は例外であり、「このxは」Kagat が「a, b, c, d・・・ 」という番号をつけた超可変ループの長さの変化を示す。 三次元空間内で隣接しているが、線状配列中では隣接していない残基の対を接続する実線の傾斜したライン(単線もしくは二重線)は、残基の骨格中に相互に配列されたアミノの窒素とカルボニルの酸素間の一つもしくは二つの水素結合を示す。
【0026】
各アミノ酸の位置が抗原結合性に影響するか否かおよび/または免疫原性であるか否かを決定するために、各アミノ酸の位置の分析を、図1A、1B、2および3の情報と、以下のパラグラフの可逆領域の構造に関する情報とに基づいて行った。
【0027】
抗体可変領域の基本構造は、堅固に保存されている。 その可変領域は、L鎖(もしくは、サブユニット)とH鎖(もしくは、サブユニット)によって構成され、両者は構造が互いに相同であり、回転対称の偽二重軸によって関連している。 可変領域の「頂部」に位置し、可変領域から最も遠くに離れている領域には、大きな構造骨格領域に設けられている六つの抗原結合ループがある。 可変領域は、機能が不変領域とは全く異なり、二つの高い可撓性を有する鎖によってのみ接続され、H鎖とL鎖のなかの五つのアミノ酸によって形成されている両方の「ボールとソケット」の継手上で枢軸旋回している。
【0028】
各サブユニットのL鎖もしくはH鎖は、三次元空間にプロペラツイストを有する逆平行のβ-ひだ付きシートの二層で構成されている。 各アミノ酸配列は、それ自体が繰返し折返して九つの明確な鎖を形成している。 これらの鎖の三つが各サブユニットの「外側」のβ-シート層を形成し、残りの五つが「内側」の層を形成している。 各層における各種の鎖は互いに広範囲にわたって水素結合している。 サブユニット内の二つのβ-シート層は共に、単一の共有ジスルフィド結合と多数の疎水性の内部相互作用とによって支持されている。 サブユニットの鎖の結合に関与している配列は、「枠組」配列と呼ばれている。
【0029】
抗原結合配列中または枠組配列中の所定のアミノ酸は、実際には抗原と結合しないが、結合する残基の空間配座を決定するのに重要である。 各抗原結合ループには、埋没した残基の適正に形成された「プラットホーム」が必要であり、そのプラットホームはループが折曲がる面を提供する。 一つ以上のループ残基が「アンカー」としてプラットホーム中に埋没していることが多く、そのアンカーはループの配座エントロピーを限定し、抗原接触側鎖の正確な配向を決定する。 したがって、プラットホームを形成する残基の形は、抗原結合ループの最終形態および特異的抗原に対する該ループの親和性に関与している。
【0030】
アミノ酸の側鎖が、種々の異なる化学環境において、サブユニット内に存在する。 いくつかの残基は、外側の近づき易い表面上で溶媒に暴露され、一方で、他の残基はサブユニット内の疎水性相互作用中に埋没している。 免疫グロブリンの可変領域の多くは、逆平行のβ-ひだ付きシートで構築され、これらのシートは、「内側」面が疎水性で「外側」面が親和性のような両親媒性の表面を形成している。 外側は溶媒に暴露されるので、その領域が動物の循環系内にある場合は体液の環境に暴露される。 溶媒に完全に暴露されかつ可変領域内で他の残基と物理的に相互作用を行わないアミノ酸の側鎖は、免疫原性のようであり、かつ免疫グロブリン分子内で構造上重要でないようである。 可変領域を、極めて模式的に図4に示してある。 図4において太いラインはペプチド結合を示し、円印はアミノ酸の側鎖を示す。
【0031】
抗体可変領域の二つのサブユニットは、可変領域と不変領域の境界から抗原結合ループへ、内側βシート層に沿って延びる疎水性界面領域を通じて互いに付着する。 両方のサブユニットからのアミノ酸側鎖は相互に作用して三層の「ヘリンボン」構造を生成する。
【0032】
これら界面残基のいくつかは、抗原結合ループの成分であるので、結合親和性に対して直接作用する。 その界面におけるあらゆる残基は、構造上重要である。 すなわち、結合領域の立体配座は界面の立体配座の変化によって強く影響されるからである。
【0033】
抗原可変領域の構造に対する上記のデータと情報は、任意の可変領域の特定のアミノ酸が、抗原結合性もしくは免疫原性に影響するか否かを決定する際に役立つ。 各アミノ酸の位置の決定は、図1A、1B(および図5A、5B、6A、6B、10Aおよび10B)に示す一対の記号(例えば「結合」および「埋没」と記載したラインの+と+)で示してある。 これらの各対において、第一の記号は抗原結合性に関連し、一方、第二の記号は、免疫原性と枠組構造に関連している。 以下の表1、2および3に、前記した記号の意味と可能な対応関係を説明する。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

図に示す対応関係は、一対の低危険度の記号(++)(すなわち、「結合」ラインの記号と「埋没」ラインの記号が一つの位置に対応している)を有する位置にマウス−ヒトの改変を行うと、治療時の免疫原性が大きく低下し、結合親和性に影響する機会はほとんどなくなることを示している。 スペクトルの反対側の端部において、一対の高危険度の記号(--)を有する位置を改変すると、結合活性が低下するか完全に破壊され、治療時の免疫原性はほとんど減少しないか、または実際には全く減少しない。 可変領域中には73個の低危険度の位置があり(L鎖中に38個およびH鎖中に35個ある)、その位置は、図1A、1B、5A、5B、6A、6B、10Aおよび10B中に「危険」と記載されているラインに丸印で示してある。 可変領域中には29個の中程度の危険度の位置があり(L鎖中に12個およびH鎖中に17個ある)、その位置は、図1A、1B、5A、5B、6A、6B、10Aおよび10B中に「危険」と記載したラインに三角印で示してある。
【0037】
上記分析の結果は、抗体可変領域の異なるサブグループの共通配列に適用できる。 というのは、それらが示す構造特性が、それぞれの種の中でさえも強く保存されているからである。 図5Aと5Bには、各アミノ酸の位置の構造特性を示す対応関係を有する抗体可変領域の、L鎖のサブグループの共通配列(hK1、配列番号:13;hK3、配列番号:14;hK2、配列番号:15;hL1、配列番号:16;hL2、配列番号:17;hL3、配列番号:18;hL6、配列番号:19;hK4、配列番号:20;hL4、配列番号:21;およびhL5、配列番号:22)、ならびにH鎖の共通配列(hH3、配列番号:23;hH1、配列番号:24;およびhH2、配列番号:25)(これらの共通配列はKabatの文献からのものである)を対応させて記載した。 なお、hL6、hK4、hL4、hLSおよびhH2のサブグループの共通配列は、20より少ない実際のL鎖もしくはH鎖の配列由来のものである。
【0038】
図5Aと5Bに記載の共通配列において、大文字のアミノ酸の表示は、そのアミノ酸が、そのサブグループの公知のヒト配列(小さな不完全な断片を含む)の約90%〜約100%の位置に存在している(すなわち「高度に保存されている」)ことを示している。 一方、小文字のアミノ酸の表示は、そのアミノ酸が、そのサブグループの公知のヒト配列の約50%〜約90%の位置に存在している(すなわち「中程度に保存されている」)ことを示している。 小文字「x」は、そのサブグループにおける公知の配列の約50%より低い保存(すなわち、「不完全に保存されている」)を示している。
【0039】
抗体可変領域の配列内の特定のアミノ酸と該領域の抗原結合性能との関係について、図5Aと図5Bに示されている情報は、アミノ酸が修飾可能かどうかを決定するのに充分なものである。 図5Aと5Bに基づいた追加の構造研究は不要である。
【0040】
従って、本発明によれば、図5Aと5Bは、例えば、抗原に対する天然領域の親和性を保持する一方で、下記の工程でヒトにおいて低下した免疫原性を示す、改変されたマウス抗体可変領域を調製する際に利用できる。 マウス可変領域由来のL鎖とH鎖の両方のアミノ酸配列は、第一に、当該技術分野で公知の方法で決定される(例えば、エドマン分解法または可変領域をコードするcDNAの配列決定による)。 次に、図5Aと5Bに示すヒト抗体可変領域の共通配列を試験して、改変すべき特定のマウスサブユニット配列に対して、最も相同性が認められるL鎖共通配列とH鎖共通配列の両方を同定する。 そのマウスの配列を視覚によるか、またはPCGENEパッケージ(Intelligenetics社、米国、カリフォルニア州、マウンテン・ビュー)のような市販のコンピュータプログラムを用いて、相同性に基づいて共通ヒト配列を対応して並べる。
【0041】
図5Aと5Bは、マウスの配列が選択されたヒトの共通配列と有意に異なる「低危険度」または「中位の危険度」の位置のすべてを同定するのに再度使用される。 これら低危険度と中位の危険度の位置にあるマウスのアミノ酸残基は、改変に対する候補である。 ヒト共通配列が、所定の低危険度または中危険度の位置に強く保存されている場合、そのヒト残基は対応するマウス残基の代わりに用いることができる。 ヒト共通配列が、所定の低危険度もしくは中危険度の位置に不完全に保存されている場合は、マウスの残基がその位置に保持される。 ヒト共通配列が特定の位置に中程度に保存されている場合は、マウスの残基はヒト共通配列が基になっている配列(例えば、Kabat et al., の前記文献中の配列)の少なくとも一つの位置に該当しないならば、通常ヒトの残基で置換される。 マウスの残基がヒト配列中の対応する位置にある場合、マウスの残基は保持することができる。
【0042】
可変領域の同定された残基のどちらを改変すべきかを決定する際に、他の基準が重要な場合がある。 例えば、プロリンの側鎖は、そのα−炭素およびそのペプチドの窒素の両方に結合しているので、その炭素−窒素結合のまわりを自由に回転することが制限されている(ラマシャンドランφ角)。 それ故に、プロリンが配列内のどこにあっても骨格の形態は変形し、その変形が抗原結合性に関与している他の残基に影響することがある。 アミノ酸配列のいずれかの場所にプロリン残基が存在しているか、または存在していないかは構造上重要な特徴である。 マウスの配列が所定の場所にプロリンを持っている場合、その存在は適正な骨格と枠組の立体配座にとって必要のようであり、プロリンは保持することが好ましい。 マウスの配列が、ヒトの共通配列が持っている場所にプロリンを持っていない場合、マウスの配列にプロリンを入れると配列の正しい立体配座に影響を与えるようであり、それ故、マウスの残基は保持するのが好ましい。 プロリンを有する特定の位置にあるプロリンをマウスからヒトに変えると、このような変化によって、その位置が別の場合に低危険度であっても、少なくとも中程度の危険度になると考えられる。
【0043】
同様に、マウスの配列中の挿入と欠失は、ヒトの共通枠組に比べて、通常、完全に保持されている。 マウスの配列の可変領域の骨格の長さと面間隔が変化した場合、その変化は、抗原結合ループが適正に折り畳まれる面を提供するのに必要のようである。 この変化は、配列の改変体に保持することが好ましい。 可変領域のL鎖とH鎖の間の界面に存在する残基も、改変体に完全に残す方が好ましい。 それらはすべて、図1、5、6、10中の「埋没」ライン上に記号=で高危険度と表示されている。 その界面領域における側鎖は、構造体内に深く埋没し、そのため、これら側鎖は異種での治療上の免疫原性反応を誘発しないようである。
【0044】
修飾配列が設計されたならば、完全な可変領域をコードするDNAを合成し(例えば、Shinha et al., Nucleic Acids Res.、12巻、4539〜4557頁、1984年に記載されているオリゴヌクレオチド合成法によって合成する)、構築し(例えば、Innis eds.、PCR Protocols、Academic Press社、1990年;およびBetter et al., J. Biol. Chem.、267 巻、16712〜16118頁、1992年にも記載されているPCR法によって)、クローン化し発現し(例えば、Ausubel et al. eds.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1989年;およびRobinson et al., Hum. Antibod. Hybridomas、2巻、84〜93頁、1991年にも記載の標準方法によって)、次いで、特異的抗原結合活性について最終的に試験する(例えば、Harlow et al. eds.、Antibodies: A Laboratory Manual、Chapter 14、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor, 1988年;およびMunson et al., Anal. Biochem.、107巻、220〜239頁、1980年に記載の競合測定法による)。
【0045】
ある種の自己免疫疾病を免疫毒素の接合体で治療することが、本願出願にて参考文献として組み込んだ、本願出願と共通して譲渡されている係属中の1991年9月13日出願の米国特許出願第 07/759,297 号、および Bernhard et al.,の "Materials Comprising and Methods of Preparation and Use for Ribosome-Inactivating Proteins" なる発明の名称の1992年12月9日出願の米国特許出願に記載されている。 抗T細胞免疫グロブリンのような免疫グロブリンは、細胞毒性分子に接合することができる。 免疫グロブリンが接合される細胞毒性分子は、レクチンAもしくはリシンA鎖のようないくつかの毒素のいずれかである。 先に引用した米国特許願第 07/759,297 号にも、抗T細胞免疫毒素を提供するリシンA鎖に接合された抗CD5抗体の用途が記載されている。
【0046】
各種の自己免疫疾患の一般的説明は、The Autoimmune Diseases (Rose & Mackey eds.,1985年)に記載されている。 自己免疫疾患はとりわけ、B細胞活性が過剰になり、かつ減少した、強化された、または不適切なT細胞活性が特徴である。 このようなT細胞の活性変化は、自己抗体の過剰産生をもたらすことがある。 自己免疫疾患は、その徴候が複雑かつ多様であるが、共通の特徴は免疫系が損傷していることにある。 抗パンT細胞免疫グロブリンを投与することによって循環しているT細胞を治療して減らすと、自己免疫疾患の患者の臨床過程と予後が改善される。 抗CD5抗体による治療については、CD5 B細胞を付加的に減少する他の有利な作用がある。 すなわち、CD5 B細胞がいくつかの自己免疫疾患に関与しているのである。 ヒト型化抗体が調製されたならば、自己免疫疾患を治療するのに有用である。 この点について、抗CD5モノクローナル抗体を本発明の好ましい実施態様の例として提供するものである。 抗パンT細胞免疫グロブリンの一例は、成熟T細胞の表面抗原に対して主として反応性であるが、10〜20%の成熟B細胞とも反応性であるCD5抗体である。 非ヒト動物の自己免疫疾患のモデルに、抗パンT細胞免疫グロブリンを用いて得たデータは、ヒト自己免疫疾患を治療するのにかような免疫グロブリンを使用する場合の作用が予測できる。
【0047】
本発明を達成するために、抗体のような免疫グロブリンは、抗原と「反応性」か、あるいは抗原に「結合」し、抗原と相互に作用すると抗原−免疫グロブリン複合体を生成する。 抗原は一般に、独特な表面タンパク質またはマーカーである。 最も好ましいマーカーは、CD5抗原クラスターである。
【0048】
抗パンT細胞免疫グロブリンは、多くの起源から得ることができる。 この免疫グロブリンは、ほとんどの成熟T細胞と反応性か、またはT細胞とB細胞、もしくはナチュラルキラー(NK)細胞のような他のリンパ系細胞との両方に反応性である。 この免疫グロブリンには、合成物もしくは組換体でもよく、キメラ免疫グロブリン類、ヒト型化抗体類、ハイブリッド抗体類、またはこれらのいずれかの誘導体のような遺伝子工学によって得られた免疫グロブリンが含まれる。
【0049】
キメラの免疫グロブリン、抗体もしくはペプチドは、キメラDNAの産物として異なる種由来の融合タンパク質で構成されている。 キメラDNAは、二種以上の哺乳類の種由来の遺伝物質を含有する組換えDNAである。 キメラ免疫グロブリンは、一部分が第一の遺伝子起源由来の免疫グロブリン、抗体またはペプチド中の対応する配列由来か、またはこの配列に相同性のアミノ酸配列を有する一方で、その配列の他のセグメントは、他方の遺伝子起源の対応する配列に対して相同性である。 例えば、キメラ抗体ペプチドは、マウスの可変領域とヒトの不変領域を有する抗体H鎖を含有していてもよい。 その二つの遺伝子起源としては、一般に二つの種が含まれるが、時には一つの種の異なる起源が含まれる。
【0050】
キメラの免疫グロブリン、抗体またはペプチドは一般に組換分子法および/または組換細胞法を用いて産生される。 一般に、キメラ抗体は、一つの哺乳類種由来の抗体の可変領域に似たL鎖とH鎖の両方の可変領域を有し、一方その不変部分は第二の異なる哺乳類種由来の抗体の配列に相同性である。
【0051】
しかし、キメラ抗体の定義はこの例に限定されない。 キメラ抗体は、H鎖とL鎖のいずれか、もしくは両方が、起源がクラスが異なるか、抗原応答が異なるか、または起源種が異なっているかにかかわらず、および融合部位が可変部/不変部の境界にあるか否かにかかわらず、異なる起源の抗体の配列に似ている配列の組合わせで構成されている抗体である。
【0052】
「ヒト型化」、「ヒト様」または「人間工学による」という用語は、その不変領域がヒト免疫グロブリンと少なくとも約80%もしくはそれを超える相同性を有し、かつ、その非ヒト(すなわち、マウス)の可変領域のアミノ酸残基のいくつかが改変されてヒト起源のアミノ酸残基を含有する免疫グロブリンを意味する。
【0053】
ヒト型化抗体は、「再形成した」抗体と呼ぶことができる。 相補性決定領域(CDRs)を操作することが、ヒト型化抗体を調製する一つの手段である(例えば、Jones et al., Replacing the Complementarity-Determining Regions in a Human Antibody with Those from a Mouse 、Nature、321巻、522〜525頁、1988年;Riechmann et al., Reshaping Human Antibodies for Therapy、Nature、332巻、323〜327頁、1988年参照)。 キメラ抗体とヒト型化抗体に関する総説の文献としては、WinterとMilstein、Man-Made Antibodies、Nature、349巻、293〜299頁、1991年を参照のこと。
【0054】
本発明の免疫グロブリンとしては、マウス、ヒトなどの哺乳類の起源のIgMもしくはIgGのイソタイプのモノクローナル抗体(本願では、「MoAb」と称する)が好ましい。 最も好ましくは、MoAbはT細胞とB細胞の両方に見られるCD5抗原と反応性である。 他の動物種のMoAbは、類似の非ヒト哺乳類のマーカーを用いて調製することができる。
【0055】
MoAbの各種調製法は、当該技術分野で公知である(例えば、本願出願にて参考文献として組み込んだGoding、Monoclonal Antibodies;Principles and Practice (第2版、Academic Press社、1986年を参照のこと) 。 好ましくない形態の免疫グロブリンとしては、例えば、ポリクローナル血清をクロマトグラフィで精製して実質的に単一特異性抗体集団を製造するという、当技術分野の当業者にとって公知の方法で製造できるものがある。
【0056】
ヒトCD5抗原に対して特異的なモノクローナル抗体は、免疫原の組み合わせを用いて、共通したヒトCD5抗原だけを有する抗原をスクリーニングするか、または抗CD5モノクローナル抗体のみに対して特異的に設計されたスクリーニング検定法によって得ることができる。 例えば、CD5に対するモノクローナル抗体は、下記の方法によって製造することができる。 すなわち、1)CD5抗原を発現するヒトT細胞で免疫化し、得られたハイブリドーマを(Nishimura et al., Eur. J. Immunol., 18、747-753頁、1988年に記載された方法と類似の方法で構築した)ヒトCD5で形質変換された非ヒト細胞系に対する反応性についてスクリーニングする方法;2)ヒトCD5で形質変換された非ヒト細胞系で免疫化し、得られたハイブリドーマをCD5抗原を発現するヒトT細胞系に対する反応性についてスクリーニングする方法;3)ヒトCD5を発現するヒトまたは非ヒトの細胞系で免疫化し、得られたハイブリドーマを存在する抗CD5モノクローナル抗体のヒトT細胞に対する反応性を阻害する性能についてスクリーニングする方法;4)ヒトCD5を発現するヒトもしくは非ヒトの細胞系で免疫化し、得られたハイブリドーマを精製された未変性もしくは組換えのCD5抗原との反応性についてスクリーニングする方法;または、5)ヒトCD5抗原の組換え誘導体で免疫化し、得られたハイブリドーマをCD5を発現するヒトT細胞系に対する反応性についてスクリーニングする方法、によって得られる。
【0057】
本発明での使用に好適なモノクローナル抗体は、The American Type Culture Collection(A.T.C.C.)(米国、メリーランド州、ロックビル)に受託番号 HB9286 で寄託されたハイブリドーマ細胞系XMMLY-H65(H65)によって製造される。 好ましい抗体は、マウスのH65抗体のヒト型化のものを用いて、本願に開示したのと同様にして製造される。
【0058】
ヒト抗原に対するヒトMoAbの生成は、当該技術分野では公知である(例えば、KodaとGrassy、Hum. Antibod. Hybridomas、1(1)巻、15〜22頁、1990年参照)。 かようなMoAbを生成させることは通常の方法では困難である。 従って、非ヒト抗体の抗原結合領域、例えば、F(ab')2もしくは超可変領域を組換えDNA技術によって、例えば、本願にて参考文献として組み込んだ米国特許第 4,816,397号および欧州特許公報第173,494号および第239,400号に記載されている一般的な改変法を用いて、ヒトの不変領域(Fc)または枠組領域で改変し、実質的なヒト分子を製造することが望ましい。
【0059】
あるいは、ヒトT細胞に特異的に結合するヒトMoAbまたはその一部分をコードするDNAを、本願にて参考文献として組み込んだ、Huse et al., Science、246巻、1275〜1281頁、1989年;Marks et al., J. Mol. Biol., 222巻、581〜597頁、1991年に略述されている一般的な手順によって、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングし、次の所望の特異性抗体(または、結合断片)をコードする配列をクローン化し、増幅することによって単離することができる。
【0060】
本願で具体的に述べている免疫グロブリンに加えて、他の「実質的に相同性の」改変免疫グロブリンは、当該技術分野の当業者にとって公知の各種の組換えDNA法を利用して、容易に設計し製造することができる。 免疫グロブリン遺伝子の改変は、例えば、本願にて参考文献として組み込んだ、GillmanとSmith、Gene、8巻、81〜97頁、1979年;Roberts et al., Nature、328巻、731〜734頁、1987年にある、部位特異的変異誘発法のような各種の公知の方法で容易に達成することができ、また、抗体の結合親和性に影響する改変法も、本願出願にて参考文献として組み込んだ、McCafferty et al., Nature、348巻、552〜554頁、1990年に略述されている一般的手順を用いて選択することができる。
【0061】
本発明において、免疫グロブリン、抗体またはペプチドは、標準の抗体−抗原検定法またはリガンド−受容体検定法によって測定されるように、T細胞と結合するか、もしくはT細胞と結合できる場合、T細胞に対して特異的である。 かような検定法の例としては、競合検定法、免疫細胞化学検定法、飽和検定法、またはELISA法、ラジオイムノアッセイ法および流動細胞計測検定法のような標準的な免疫検定法がある。 また特異性に関する上記の定義には、相補的可変領域と不変領域を有する免疫グロブリンの立体配座に適切なものとして適正に組み込まれた場合、T細胞だけと結合するか、またはT細胞と結合できる単一のH鎖および/またはL鎖、CDRs、融合タンパク質、またはH鎖および/またはL鎖の断片が該当する。
【0062】
競合検定法では、免疫グロブリン、抗体またはペプチド断片が、抗原と結合する性能は、免疫グロブリン、抗体もしくはペプチドと抗原との結合が、公知の化合物の結合性と競合する性能を検出することによって測定される。 多数のタイプの競合検定法が知られており、本明細書にて検討されている。 あるいは、阻害剤が存在しない場合の試験化合物の結合性を測定する検定法も使用できる。 例えば、分子などの化合物がT細胞と結合する性能は、対象の分子に直接標識をつけることによって検出できるし、または標識を用いずに各種のサンドイッチ検定法の方式を用いて間接的に検出できる。 競合結合検定法のような多種類の結合検定法が知られている。 例えば、本願出願にて参考文献として組み込んだ、米国特許第3,376,110号;同第4,016,043号;HarlowとLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications 、N.Y.、1988年を参照のこと。
【0063】
競合検定法を用いずに、試験化合物が一成分だけと結合することを測定する検定法も利用できる。 例えば、免疫グロブリンは、T細胞マーカーの存在を同定するのに使用することができる。 ELISA法のようなモノクローナル抗体検定法の標準法を利用できる(HarlowとLaneの前記文献参照)。 使用できる各種のシグナル生成系を検討するには、本願出願にて参考文献として組み込んだ、米国特許第 4,391,904号を参照されたい。
【0064】
他の検定法では、抗原−抗体相互作用によって起こる各種の生理学的変化または化学的変化の有無の検定が行われる。 本願出願にて参考文献として組み込んだ、Receptor-Effector Coupling-A Practical Approach (Hulme eds.、IRL Press社、オックスフォード、1990年)を参照のこと。
【0065】
本発明のヒト型化抗体は、標識付可能な細胞マーカーを有する疾患にかかっている患者に投与することができる。 このような疾患には、限定はないが(全身性狼瘡紅斑および狼瘡腎炎を含む)狼瘡、(苔癬硬化症、局限性強皮症および偏平苔癬を含む)硬皮症、慢性関節リウマチと脊椎関節症、甲状腺炎、尋常性天疱瘡、第一種真性糖尿病、進行性全身性硬化症、再生不良性貧血、重症筋無力症、多発性筋炎と皮膚筋炎を含む筋炎、シェーグレン病、膠原病、多発性動脈炎、(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬ならびに原発性胆汁性肝硬変のような自己免疫疾患;ウィルスの感染によって起こる疾患;カビの感染によって起こる疾患;寄生虫によって起こる疾病などである。
【0066】
本発明による免疫グロブリン、抗体またはペプチドは、患者に対して単独で、または二種以上の抗体、他の治療剤、組成物など、特に限定はないが免疫抑制剤、増強剤および副作用軽減剤を含めて混合物で投与することができる。 特に重要なのは、宿主のアレルギー反応などの望ましくない反応を抑制するのに有用な免疫抑制剤である。 免疫抑制剤には、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、シクロホスファミド、シクロスポリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、アザチオプリンおよびγ−グロブリンが含まれている。 これらの薬剤はすべて、The Physician's Desk Reference 41版、1987年に開示されているような一般に受け入れられている有効投与量の範囲内で投与される。
【0067】
免疫抑制剤に加えて、脈管形成阻害剤のような他の化合物を抗パンT免疫グロブリンとともに投与することもできる。 Peacock et al., Arthritis and Rheum.、35巻、(補遺)、Abstract、for ACR Meeting No.B141(1992年9月)を参照のこと。
【0068】
本発明の好ましい実施態様において、抗パンT細胞免疫グロブリンは、注射用と局所用形態のように、各種の製剤に処方することができる。 非経口の処方が本願に用いるのに好ましいが、最も好ましいのは筋肉内(i.m.)または静脈内(i.v.)投与である。 抗パンT細胞抗体の治療上有効量を含有する製剤は、滅菌液体の水剤、液体の懸濁液剤または凍結乾燥した製剤であり、任意に安定剤と賦形剤を含有している。 凍結乾燥された組成物は適切な希釈剤、例えば、注射用の水、生理食塩水、0.3%グリシンなどを用いて、宿主の体重1kg当たり約0.01mgから約10mgまで、もしくはそれ以上のレベルで再調製される。
【0069】
抗パンT細胞免疫グロブリンを含有する薬学的組成物は、一般に治療される動物の体重1kg当たり約0.01〜5mgの範囲内の治療上有効な投与量で投与される。 抗パンT細胞抗体の好ましい投与量の範囲は、治療される動物の体重1kg当たり約0.05〜2mgである。 上記免疫グロブリンの投与量は、毎日静脈注射によって1日だけか、もしくは数日間にわたって投与する。 例えば、体重70kgの患者については1日当たり約0.7〜700mgが好ましい投与量である。 より好ましい投与量は、1日当たり約3.5〜140mgである。
【0070】
抗パンT細胞免疫グロブリンは、筋肉内、皮下、クモ膜下腔内、腹腔内、脈管空間内または関節内に注射することによって全身に投与できる(例えば、1日当たり関節流1ccに対して約1μgより多い投与量で関節内注射を行う)。 投与量は、採用された抗パンT細胞免疫グロブリンの性質、例えば、その活性と生物学的半減期、製剤中の抗パンT細胞抗体の濃度、投与の部位と頻度、関連患者の臨床耐性、患者がかかっている自己免疫疾患などに依存しているが、これらのことは当業者の知識の範囲内にある。
【0071】
本発明の抗パンT細胞免疫グロブリンは、溶液で投与することができる。 その溶液のpHは約5.0〜9.5の範囲内でなければならず、pH6.5〜7.5が好ましい。 抗パンT細胞免疫グロブリンまたはその誘導体は、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩またはクエン酸塩などのような薬学的に許容される緩衝剤を含有する溶液でなければならない。 緩衝剤の濃度は、約1〜100mMの範囲内でなければならない。 また、抗パンT細胞免疫グロブリンを含有する溶液は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムのような塩を約50〜150mMの濃度で含有していてもよい。 アルブミン、グロブリン、界面活性剤、ゼラチン、プロタミンまたはプロタミンの塩のような安定剤の有効量を含有していてもよく、抗パンT細胞免疫グロブリンを含有する溶液に、もしくは溶液を構成する組成物に添加してもよい。 抗パンT細胞免疫グロブリンの全身投与は、キメラ形もしくはヒト型化形態の場合には、一般に2〜3日毎または一週間に一回行われる。 あるいは、毎日の投与が有効である。 通常、投与は筋肉内注射または脈管内注入によって行われる。
【0072】
また、抗パンT細胞免疫グロブリンは、治療上有効な濃度の抗パンT細胞免疫グロブリンを皮膚科学的賦形剤に含有させて、局部治療用の局所製剤に処方される。 局所製剤は、乾癬および狼瘡に関連する皮膚炎のような皮膚の病変を治療するのに有用である。 投与される抗パンT細胞免疫グロブリンの量と、局所用製剤中の抗パンT細胞免疫グロブリンの濃度は、選択された賦形剤、患者の臨床症状、製剤中の抗パンT細胞免疫グロブリンの全身毒性と安定性に依存している。 従って、医師は製剤中に適切な濃度の抗パンT細胞免疫グロブリンを含有する適切な製剤と、問題の患者または類似の患者についての臨床経験によって投与される製剤の量を採用する必要がある。
【0073】
局所製剤中の抗パンT細胞免疫グロブリンの濃度は、約0.1〜25mg/mlの範囲内である。
【0074】
局所製剤に用いる抗パンT細胞免疫グロブリンの濃度は、一般に約1〜20mg/mlの範囲内にある。 抗パンT細胞免疫グロブリンの固体分散液剤と可溶化製剤も利用できる。 従って、賦形剤に使用される正確な濃度は、治療応答を最適化するために、適当の実験を行ってもよい。 皮膚の炎症を治療する際には、1%w/wのヒドロゲル賦形剤を用いて、賦形剤100g当たり約10mgより多い抗パンT細胞免疫グロブリンが有効である。 ゲルに加えた適切な賦形剤としては、鉱油、ペトロラタムなどを用いる水中油型または油中水型のエマルジョンなどがある。
【0075】
抗パンT細胞免疫グロブリンは、経皮治療システムを使用することによって任意に局所に投与することができる(Barry、Dermatological Formulations、181頁、1983年)。 かような局所放出システムは、主として低分子量の薬品を経皮投与するために設計されてきたが、定義の上では、経皮放出することができる。 このシステムは、速度を制御する微孔性の膜を適切に選択することによって、抗パンT細胞免疫グロブリンまたはその誘導体および関連する治療用タンパク質を投与するために容易に採用できる。
【0076】
抗パンT細胞免疫グロブリンの製剤は、全身放出用または局所放出用に利用することができ、非経口投与用に先に述べた賦形剤ならびに補助溶剤、界面活性剤、油、湿潤剤、軟化薬、保存剤、安定剤、および酸化防止剤のような局所製剤に用いられる他の賦形剤を含有していてもよい。 薬学的に許容される緩衝剤、例えば、トリスまたはリン酸塩の緩衝剤を利用できる。
【0077】
投与は鼻腔内または他の非経口でないルートでもよい。 また、抗パンT細胞免疫グロブリンは、血液を含む所定の組織中に置いた微小球体、リポソームなどの微小粒子放出システムによって投与できる。
【0078】
また、抗パンT細胞免疫グロブリンは、エアロゾルで投与して肺への局所放出を行うことができる。 これは水性エアロゾルまたはリポソーム製剤を調製することで達成される。 非水性(例えば、フッ化炭化水素の噴射剤)の懸濁液が使用できる。 エアロゾルを調製するために音波噴霧器を使用することが好ましい。 音波噴霧器を使えば、抗パンT細胞抗体またはその誘導体の抗パンT細胞免疫グロブリンの分解をもたらす剪断力への暴露が極力抑制される。
【0079】
通常、水性エアロゾルは、抗パンT細胞免疫グロブリンと通常の薬学的に許容される担体と安定剤との水溶液もしくは懸濁液を配合することによって製造される。 担体と安定剤は、特定の抗パンT細胞免疫グロブリンの必要条件によって選択されるが、一般に、非イオン界面活性剤類(Tweens、Pluronicsまたはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害のタンパク質類、ソルビタンエステル類、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸類、緩衝剤類、塩類、糖類または糖アルコール類が挙げられる。 製剤は滅菌される。 エアロゾルは、一般に等張液から製造される。
【0080】
上記した各方法は、以下の実施例で例示されるが、本発明を限定するものではない。 すなわち、本発明を、具体的な実施例と好ましい実施態様によって以下に説明するが、当該技術分野の当業者であれば、変更と修正を想到するものと思われるので、特許請求された本願発明の範疇に包含される多くの変更と修正が本願に包含されるべきである。 また、本願で引用したすべての文献は、本願の参考文献として組み込むものとする。
【実施例】
【0081】
実施例1
A.マウス可変領域中の低危険度残基の同定
抗体可変領域の抗原に対する固有の親和性を減退することなく、ヒトに関するその免疫原性を減退させながら改変することができる、H65と命名されたマウスモノクローナル抗体の可変領域の低危険度残基を同定することによって、改変抗体可変領域を調製するために、本発明の方法を利用した。
【0082】
H65の可変領域のL鎖とH鎖が、それぞれヒトκ連鎖のサブグループ1の共通配列(「hK1」)およびヒトH鎖のサブグループ3の共通配列(「hH3」)に最もよく似ていると決定された。 上記のL鎖とH鎖の配列を、二つのヒトサブグループの共通配列と対応させて図6Aと6Bに示した。 また、H65配列は、配列番号:26と28に含まれている。
【0083】
図6Aと6Bにおいて、大文字と小文字は記された位置における保存度を示す。 例えば、「A」はそのサブグループの公知のヒト配列(小さくて不完全な断片を除く)中のその位置の約90〜100%にアラニンが存在していることを示し、一方、「a」はそのサブグループの公知のヒト配列中のその位置にその時点の約50〜90%しかアラニンが存在しないことを示す。 小文字の「x」はその位置でのそのアミノ酸の保存が、その時点の約50%より少ないことを示す。
【0084】
「結合」という表示をしたラインは、残基がCDRループの抗原結合性に直接影響する(-)、または直接には影響しない(+)のいずれかであることを示す。 「埋没」ラインは、残基が暴露されている(+)、埋没している(-)、または界面内にある(=)ことを示す。 「結合」または「埋没」のラインにおいて「0」は残基の抗原結合性または配置について中間的意味を有する残基を示す。
【0085】
図6Aと6Bは、マウスH65配列の合計94位をヒト共通配列と対応させたところ、ヒト共通配列とは異なることを示している。 これら差異の69個は、中危険度(15個の位置)または高危険度(54個の位置)で生じているが、このことはその位置のマウスの残基が抗体の機能にとって重要であることを示唆している。 図6の「M/H」ラインは、どの位置が、対応させた配列の二つの対の間で異なるかを具体的に示している。 前記パラグラフに示した各位置におけるヒト残基の危険レベルと保存度を考慮して、M/Hライン中Mもしくはmで示したH65の配列中の残基は、ヒト型化した配列中の「マウス」に保持される残基として同定される一方で、Hもしくはhで示した残基は「ヒト」に変える残基として同定される。
【0086】
マウスとヒトの配列が異なる低危険度の位置に25の差異がある。 これらの位置の(図6のM/Hラインに「H」と表示してある)13箇所は、マウス残基が高度に保存されているヒト共通配列のアミノ酸と対応している。 それ故に、その位置のマウス残基は保存されたヒト残基に変えるべき残基として同定される。
【0087】
マウスとヒトの配列が異なる(「m」と表示してある)4個の低危険度の位置は、マウスの残基は中程度に保存されているヒト共通アミノ酸と対応している。 しかし、マウスの残基は、ヒトの抗体の他の実際の配列(Proteins of Immunoglobulin InterestのKabatの配列)中のその位置に見出されるので、その位置は「マウス」に保持されるべき位置として認定される。 (「h」と表示してある)7個の低危険度の位置は、マウスの残基は中程度に保持されているヒト共通アミノ酸と対応しているが、そのマウス残基はKabatの文献の実際のヒト抗体の配列の該当する位置には見られない。 それ故に、これらの位置は「ヒト」に変えるべき位置として同定される。
【0088】
マウスでヒトの配列が異なる(「m」と表示してある)一個の低危険度の位置にマウスの残基が、不完全に保持されているヒト共通アミノ酸と対応している。 それ故に、その位置は、「マウス」に保持されるべき位置として同定される。
【0089】
H65可変領域のCD5に対する本来の親和性を減退させずに改変できる残基として本発明の方法によって同定された残基がヒトの残基に変えられている、H65抗体可変領域のL鎖とH鎖の配列が、図6の「prop」のラインに示されている。 従って、図6Aと6Bの「prop」のラインには、H65抗体可変領域のヒト型化したL鎖(配列番号:27) とH鎖(配列番号:29)のアミノ酸配列が記載されている。
【0090】
実施例2
A.L鎖とH鎖のH65V/Jセグメントの合成
実施例1で述べたH65抗体可変領域のL鎖とH鎖のV/Jセグメントの低危険度のヒト型化したアミノ酸配列に基づいて、H65のH鎖とL鎖V/Jセグメントの合成遺伝子を合成した。 ヒト型化したアミノ酸配列は、PCGENEパッケージ(Intelligenetics、米国、カリフォルニア州、マウンテン・ビュー)で逆翻訳した。 各位置に対応するアミノ酸コドンとして、マウスアミノ酸残基が保持されている位置のマウスコドンか、またはKabat et al., の前記文献に発表されている遺伝子に基づいた未変性抗体遺伝子中のコドンにできるだけ密接に一致したコドンと同一のコドンを選択した。 哺乳類の細胞内でヒト型化させた全抗体を発現させるために、未変性のマウスリーダー配列をコードするポリヌクレオチドをヒト型化した遺伝子の一部として含有させた。 H鎖もしくはL鎖の各遺伝子を、6個の重複オリゴヌクレオチドから組み立ててPCRによって増幅した。 各ヌクレオチドは、Cyclone Model 8400 DNA Synthesizer(Milligen/Biosearch、米国、マサチューセッツ州、バーリントン)を使って合成した。 制御部位は、抗体遺伝子(H鎖もしくはL鎖)の最終発現ベクター中にクローン化するために用いる増幅DNAセグメント内に導入した。 SalI制御部位を、開始コドンATGの蒸留の各V領域中に導入した。 Bst EII制御部位をH鎖のJ領域の3'末端中に導入する一方で、HindIII部位をL鎖のJ領域の3'末端中に導入した。
【0091】
B.ヒトに適応させたH65H鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
H鎖のヒトに適応させたVセグメントとJセグメントを6個のオリゴヌクレオチドのHUH-G1、HUH-G2、HUH-G3、HUH-G4、HUH-G5およびHUH-G6から組み立てた。 これらオリゴヌクレオチドの配列は図7Aに記載され、それぞれ配列番号:36から41にて示した。 これらヌクレオチドは、PCRプライマーH65G-2SとH65-G2 (それぞれ、配列番号:42および43)で増幅した。 長さが50bpより大きいオリゴヌクレオチドは、25%尿素の存在下15%ポリアクリルアミドゲル上で精製した。 DNA鎖の伸長とDNAの増幅は、TaqポリメラーゼとGeneAmp Kit (Perkin-Elmer Cetus、ドイツ)を用いて行った。 なお、このキットは、メーカーの指示に従って使用した。 合成ヒト型化抗体遺伝子を含有するオリゴヌクレオチドは、各DNA 1μgずつ、2.5U Taqポリメラーゼ、50mM KCl、10mMトリス-Cl pH8.3、1.5mM MgCl2 および200uMの各dNTPを含有する100μlの反応液に混合した(HUH-G1+HUH-G2、HUH-G3+HUH-G4およびHUH-G5+HUH-G6)。 この試験管を、Coy TempCyclerで94℃で1分間、55℃で2分間、および72℃で20分間インキュベートした。 各反応生成物の一部分(40μl)を対にして混合し(HUH-G1,2+HUH-G3, 4;HUH-G3,4+HUH-G5,6)、Taq 2.5Uを添加し、試験管を94℃で1分間、55℃で2分間、および72℃で20分間、再びインキュベートした。次に、等量のHUH-G1,2,3,4反応生成物とHUH-G3,4,5, 6 反応生成物とを混合し、2.5U Taq、50mM KCl、10mMトリス-Cl pH8.3、1.5mM MgCl2、200μMの各dNTPおよび0.5μgずつの各増幅プライマーH65G-2SとH65-G2で100μlの容積にすることによってH鎖の遺伝子を構築した。 反応混合物の液面を鉱油で覆って、次のようなサイクルプロフィル:94℃で1分間の変性、55℃で2分間のアニーリング、および72℃で3分間のプライマー伸長を行って増幅した。 プライマー伸長は、30サイクル行った。 構築したV/J領域のDNA配列は、図8Aと配列番号:46に示した。 構築したV/J領域をSalIとBstEIIで切断し、アガロースゲル上での電気泳動で精製し、次のH鎖発現ベクターpING4612中に組み込んだ。 このベクターは、Robinson et al., Hum. Antib. Hybridomas、2巻、84頁、1991年にH鎖発現について記載されたベクターと類似しており、本願出願に参考文献として組み込んだ、本願出願と同じ譲受人による係属中の1989年9月6日出願の米国特許出願第 07/659,409 号に詳しく記載されている。
【0092】
C.ヒトに適応させたH65L鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
L鎖のヒトに適応させたVセグメントとJセグメントを6個のオリゴヌクレオチドの$H65K-1、HUH-K1、HUH-K2、HUH-K3、HUH-K4およびHUH-K5で構築した。 これらの配列は図7に示されており、それぞれ配列番号:30〜35に記した。 これらのオリゴヌクレオチドは、PCRプライマーH65K-2SとJK1-HindIII(それぞれ、配列番号:44〜45である)で増幅した。 合成ヒト型化抗体遺伝子を含有するオリゴヌクレオチドに対して混合し($H65K-K1+HUH-K1、HUH-K2+HUH-K3、およびHUH-K4+HUH-K5)、次いでH鎖について、前述したのと同様にインキュベートした。 各反応生成物の一部分(40μl)を混合し($H65K-1/HUH-K1+HUH-K2,3;HUH-K2,3+HUH-K4,5)、次いで前述したのと同様にして処理した。 次に、H鎖について前述したのと同様にして、PCRプライマーのH65K-2SとJK1-HindIIIを用いて充分な長さの遺伝子を増幅することによって、L鎖の遺伝子を構築した。 構築したV/J領域のDNA配列は図8Bと配列番号:47に記した。 構築したV/J領域をSalIとHindIIIで切断し、アガロースゲル上で電気泳動法によって精製し、L鎖発現について記載している、Robinson et al.,の上記文献および前記米国特許願第 07/659,409 にあるのと類似のL鎖抗体発現ベクターpING4614中に組み込んだ。
【0093】
D.ヒト型化H65IgGの過渡発現
エーベルソン白血病ウィルスのLTRプロモーター(Robinson et al.,の前記文献および前記米国特許願第07/659,409号に記載されている)およびヒトγ-1由来の3'-非翻訳領域(H鎖)およびマウスκ(L鎖)の制御下でヒト型化したH65のL鎖とH鎖を含有する発現ベクターをリポフェクションによってSV40T抗原を発現するCHO-K1菌株に形質変換した。 リポフェクション剤(Bethesda Research Labs、米国、メリーランド州、ガイサーズバーグ)とDNAによる処理(37℃で5時間)に続いてウシ胎児血清(FBS、最終FBS 濃度=10%)を含有するハムF12培地を添加し、次いで細胞をさらに48時間インキュベートした。 上記インキュベーション期間に続いて、上記のFBSを補充した培地を除去して血清なしの培地(HB-CHO)(Irvine Scientitic社、米国、カリフォルニア州、アービン)と交換し、細胞をさらに7日間インキュベートした。 対照としてCHO-K1細胞も、前述したのと類似の発現ベクター中のキメラH65のL鎖とH鎖(各々ヒトC-セグメントに融合させた未改変マウスV/J セグメントで構成されている)で形質変換した。 インキュベーションに続いて、上澄み液を集め、分泌されたIgGの存在に関してELISA法で試験した。 すべての上清液が、約0.03〜0.06μg/mlのIgGを含有していた。
【0094】
実施例3
本発明の方法に従って改変されたH65抗体について、抗原に対する本来の親和性を保持しているか否かを決定した。 その結合性能は、CD5に対する親和性が未改変のH65マウス抗体と同じキメラH65 IgG抗体(実施例2に記載したキメラH65のL鎖とH鎖で構成されている)の結合性能に匹敵するものであった。
【0095】
A.競合結合させるために用いるヒト型化したキメラのH65のIgGの調製
ヒト型化したH65(hH65)と、上記の過渡形質変換由来のキメラH65IgG(cH65)とをCentricon 30(Amicon、Amicon Division of W.R. Grace and Co., 米国、マサチューセッツ州、ベバリー)を使って4℃にて遠心分離して、4mlから最終容積100 μlまで濃縮した。
【0096】
次に、hH65とcH65の両者の濃縮物をリン酸緩衝塩水(PBS) pH7.2の1.0mlで一度洗浄し、次に、約100μlまで再濃縮した。 対照として、HB-CHO培養地のみ(CM)または精製CH65を補充した培地(CM+cH65)を同じ方式で濃縮した。 hH65とcH65の最終濃度は、標準としてキメラIgGを用いてELISA法(抗ヒトκプレコート、検出用のペルオキシダーゼで標識を付けた抗ヒトγ)によって測定した。
【0097】
B.cH65IgGの放射能標識付け
精製cH65IgG 20μgをPBS中のラクトオキシダーゼのビーズ(Enzymobeads、BioRad Laboratories、米国、カリフォルニア州、リッチモンド)を用いて、ヨウ素化を行った(1mCiのNa125I、Amersham社、米国、イリノイ州、アーリントン・ハイツ)。 ヨウ素化は23℃で45分間行った。 125I-cH65 IgGをSephadex G-25-80カラムを用いるゲル濾過法で、未結合の125Iを除いて精製した。 濃度と比活性を精製の前後に、TCAで沈澱させて計測して測定した。
【0098】
C.hH65のcH65IgGへの競合結合性
その表面にCD5を発現するMolt4-M細胞を、96ウェルのV形底プレートに3×105細胞/ウェルの密度でプレートし、遠心分離してペレットにした。 培地を傾斜し、次いで最終濃度が「BHD 」[DMEM(ダベルッコ修飾イーグル培地)+1%BSA+10mM Hepes、pH7.2](BHD)中200nM 〜0.0017nMの濃度(三工程希釈)の精製cH65IgGの100μlを各ウェルに添加し、続いて125I-cH65IgG(最終濃度=0.1nM)含有BHD 100μlを添加した。 一点測定を行うために、50〜100μlのCentricon(登録商標)濃縮物を、次のようにウェルへ添加した。 すなわち、hH65(最終濃度=0.54nM)、cH65(最終濃度=0.22nM)、CM+精製cH65IgG(最終濃度=30nM)およびCMのみ。 次いで、これらに125I-cH65IgG(最終濃度=0.1mM)を添加した。 結合を4℃で5時間進行させた。 5時間経過後、氷冷BHDで三回洗浄して結合を停止させ、遠心分離を行って細胞をペレット化した。 結合した125I-cH65IgGを1N NaOHで可溶化し、Beckman Gamma 8000(Beckman Instruments社、米国、カリフォルニア州、フラートン)で計測して放射能を測定した。
【0099】
精製したcH65IgGは、図9に示すように約0.1nMのED50で結合する125I-cH65IgGを有効に置換した。 白丸印がcH65を示し、黒四角印がhH65を示し、黒三角印がCM+精製cH65を示す。 hH65は、125I-cH65IgGを置換するのにそれぞれの濃度において、精製cH65とCM+精製cH65IgGと同程度に有効であった。 予想通りに、CMとの競合は認められなかった。これらの試験結果は、hH65の改変の過程でなされた低危険度の変化は、この抗体のCD5抗原に対する結合親和性を減退させなかったことを示している。
【0100】
実施例4
改変可能なアミノ酸を同定することによって、改変された抗体可変領域を調製する本発明の方法を、抗TAC 抗体可変領域[配列番号:49(L鎖)および53(H鎖)]に適用し、得られた改変配列をQueen et al.,の前記文献に記載されているヒト型化した抗TAC抗体配列 [配列番号:51(L鎖)および55(H鎖)]と比較する。
【0101】
試験結果を図10Aと10Bに示す。 本発明に従って改変した配列 [配列番号:50(L鎖)および54(H鎖)]は、「prop」という表示を付けたラインに示し、Queenのヒト型化した配列は「Que.」という表示をつけたラインに示してある。 Queenのヒト型化した配列に対する改変は、ヒトEU抗体配列 [配列番号:48(L鎖)および52(H鎖)]に対する改変であった。 その比較によって、本発明の方法で生成させて提案された配列とQueenのヒト型化した配列には、多くの差異があることがわかる。 Queenのヒト型化した抗体の結合活性におそらく影響を与えると考えられる差は、L鎖における4位(L対M)、15位(P対V)、36位(F対Y)、47位(W対L)、71位(Y対F) および80位(A対P)ならびにH鎖における69位(L対I)である。
【0102】
実施例5
活性改変抗体はヒトに対して適用可能である
先に示した変化以上の抗体可変領域のヒト型化が所望される場合には、さらに高い危険度の変化を行って、その領域を発展させることができる。
【0103】
より高い危険度の残基は、小グループにおいて低危険度の変化に続く突然変異誘発の段階で変化させることができ、その結果、有害な突然変異が迅速に同定されて、結合活性が破壊される前に改変される。 低危険度の変化はすべてを一度に行うことができるので、活性を破壊する恐れはほとんどない。
【0104】
例えば、各サブユニットの三次元モデルにおいて、フレームワーク1とフレームワーク3(図2と3のF1とF3)は、サブユニットの表面に半独立のループを形成するので、中程度または高い危険度の突然変異が四つのグループ(LサブユニットのF1とF3およびHサブユニットのF1とF3で構成されている)に分割される。 四つの異なる構造体が作られ、各々一つのフレームワーク領域にのみ高危険度の「ヒト」の変異をもっており、他の三つのフレームワークは完全に「マウス」が残っており、その活性を検定した。 この方法によれば、高い危険度の変化が全て一度に行われるので、多くのアミノ酸のどの変化が抗原結合活性に影響を与える原因になっているのかを決定することが困難であるという他のヒト型化手法に生じる困難が回避される。 中程度の危険度の変化を有する本発明の抗体の調製については後述する。
【0105】
実施例6
マウス可変領域の中程度の危険度の残基の同定
中程度の危険度の残基がマウス残基からヒト残基に変換されるヒト共通配列は、図16Aと16Bにそれぞれ、次の表示:hK1(すなわち、ヒトκ連鎖のサブグループ1)およびhH3(すなわち、ヒトH鎖のサブグループ3)を付けたラインとして示してある。 保存度と危険度に関してこの図に用いた記号は、図6Aと6Bに準じて使用している。
【0106】
「mod」の表示を付けたラインにおいて、ドット(.) は中程度の危険度で「マウス」から「ヒト」に変異できる残基を示す。 このような中程度の危険度の位置が29個ある。
【0107】
マウスの残基は、131箇所の位置においてその時点の50%を超えて、ヒト共通残基と一致している(102箇所の位置が90〜100%一致し、29箇所の位置が50〜90%一致している)。 これらの位置は変化させなかった。
【0108】
図16Aと16BにM/Hと表示したラインは、マウスとヒトの配列との間に有意差がある91箇所の位置を示す(すなわち、ヒト配列がその時点の50%未満にマウス残基を有する場合)。
【0109】
中程度の危険度の位置はM/Hラインにmで表示したが、「マウス」に保持され;Hまたはhの表示の位置はヒトに変えられた。 すでにヒト様になったか、または予めヒト型化した(実施例1に先に述べたように)25箇所の低危険度の位置は、M/Hラインに「^」の表示を付けてある。 最後にマウスとヒトの残基が一致しなかった54箇所の高危険度の位置にはMの表示が付けてあり、「マウス」に保持されている。
【0110】
マウスとヒトの配列が異なる中危険度の位置に、15箇所の差が生じている。 これらの位置の10箇所(図6のM/Hラインに「H」の表示をしてある)において、マウス残基は高度に保存されているヒト共通アミノ酸と対応している。 それ故に、その位置のマウス残基は保存されたヒト残基に変えるべき残基として同定される。
【0111】
マウスとヒトの配列が異なる中危険度の位置(「m」と表示) において、マウス残基は中程度に保存されているヒト共通アミノ酸と対応している。 しかし、そのマウス残基はヒト抗体の他の実際の配列(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunoglobulin Interest中の配列)中のその位置に見出されるので、それらの位置は「マウス」に保持されるべき位置として同定される。 この特定の配列中には、かような位置はないが、このような位置は他の抗体中に生じることがある。
【0112】
四箇所の中危険度の位置において(「h」と表示した)、マウス残基は中程度に保存されているヒト共通アミノ酸と対応しているが、そのマウス残基は前記のKabat et al.,のSequences of Proteins of Immunoglobulin Interest中の実際のヒト抗体配列のその位置には見られない。 それ故に、その位置は「ヒト」に変化されるべき配列として同定される。
【0113】
マウスとヒトの配列が異なる1つの中程度の危険度の位置(「m」と表示)において、マウスの残基が不十分に保存されたヒト共通アミノ酸と対応している。 それ故に、その位置は「マウス」に保持すべき位置として同定された。
【0114】
中危険度の残基を有するヒトに適応させたH65H鎖を低危険度残基に対する方法と類似の方法で構築した。 中危険度の発現ベクターを、中間ベクターから構築した。 図7Bに開示し、HUH-G11、HUH-G12、HUH-G3、HUH-G4、HUH-G5およびHUH-G6と表示した六個のオリゴヌクレオチド配列(oligos)(HUH-G11 とHUH-G12 は配列番号:56と57に記載されている)をPCRによって構築した。 合成ヒト型化抗体遺伝子を含有するオリゴヌクレオチドに対して混合し(HUH-GI1+HUH-G12、HUH-G3+HUH-G4、およびHUH-G5+HUH-G6)、各DNAを1μgずつ含有する100μlの反応液にし、次いで前述のようにして充填した。 各反応生成物の一部を混合し(HUH-G11,12+HUH-G3,4;HUH-G3,4+HUH-G5,6)、2,5UのTaqを添加し、次いで試料を前述のようにして再インキュベートを行った。 等量のHUH-Gi1,12, 3,4反応生成物とHUH-G3,4,5,6生成物を混合し、次いで、前述のようにしてプライマーH65G-2SとH65-G2 0.5μgを用いてPCR法によって、J内領域を構築した。 反応生成物をSalIとBstEIIで切断し、次いで、H鎖についてRobinson et al., Hum. Antibod. Hybridomas、2巻、84頁、1991年に記載されているのと類似の発現ベクター中にクローン化して、pING4617を生成させた。 そのプラスミドをSequenase (USB社、クリーブランド)を用いて配列を決定したところ、二個の残基が変化していることがわかった(288位のG-Aと312位のA-T、番号はリーダー配列の開始点から付けた)。 正しい可変領域をpING4612からこの領域を置換することによって回復させて、期待されたV-領域配列をpING4619中に生成させた。
【0115】
他の中危険度の変化を有する中間ベクターを、oligos HUH-G13、HUH-G14、HUH-G15およびHUH-G16(図7Aと配列番号:58〜61)をPCR法で組み立てて構築した。 10mM KCl、20mMトリスpH8.8、10mM(NH4)2SO2、2mM MgSO4、0.1 %Triton X-100、100ng/ml BSA、200μMの各dNTPおよび2単位のVentポリメラーゼを含有する反応液中(合計100μl)、oligos HUH-G13+HUH-G14とHUH-G15+HUH-G16を混合し、Ventポリメラーゼ(New England Biotabs)を用いて充填した。 得られた反応混合物を94℃で1分間インキュベートし、続いて50℃で2分間および72℃で20分間インキュベートした。 反応生成物(40μl)を同じ反応緩衝液中のオリゴヌクレオチドH65-G13とH65-G2とVentポリメラーゼと混合して増幅し、次いで、94℃1分間の変性、50℃2分間のアニーリングおよび72℃3分間の重合を25サイクル行って増幅した。 得られた反応生成物をT4ポリメラーゼで処理し、次にAccIで消化した。 得られた274塩基対(bp)の断片をアガロースゲルで精製し、pING4619由来の141bpのSal〜AccI断片とともにSalIとSmaIで切断したpUC18に連結させてpING4620を生成させた。 pING4620は、中危険度H65H鎖の全シグナル配列、V領域およびJ領域を含有している。
【0116】
中危険度H65 H鎖の最終発現ベクターpING4621を、pING4620由来のSalI〜BstEII断片を前述したのと同じ発現ベクター内にクローン化して組み立てた。
【0117】
実施例7
A.中危険度のL鎖の組立
L鎖のVとJのセグメントで中危険度のヒト型化したものを、六個のオリゴヌクレオチドの$H65K-1、HUH-K7、HUH-K6、HUH-K8、HUH-K4およびHUH-K5で組み立てた。 HUH-K7、HUH-K6およびHUH-K8の配列を、配列番号:62〜64と図7と7Aにそれぞれ記した。 これらのオリゴヌクレオチドをPCRプライマーH65K-2SとJK1-HindIIIを用いて増幅した。 合成ヒト型化抗体の遺伝子を含有するオリゴヌクレオチドを混合し($H65-K1+HUH-K7、HUH-K6+HUH-K4+HUH-K5)、次いで、中危険度H鎖について記載したのと同様にしてVentポリメラーゼとともにインキュベートした。 各反応生成物の一部(40μl)を混合し($H65H-K1/HUH-K7+HUH-K6,8;HUH-K6,8+HUH-K4,5)、次いで先に述べたのと同様にして充填した。 次に、PCRプライマーH65K-2SとJK1-HindIIIを用いVentポリメラーゼで前記のように25サイクル、全長の遺伝子を増幅することによって、L鎖の遺伝子を構築した。 構築したV/J領域をSalIとHindIIIで切断し、アガロースゲルの電気泳動法で精製し、次いでL鎖抗体発現ベクターpING4630中に組み込んだ。
【0118】
B.He3抗体を産生するためのマウスリンパ系細胞の安定な形質変換
細胞系Sp2/O (American Type Culture Collection #CRL1581) をダベルッコ修飾イーグル培地+4.5g/lグルコース(DMEM、Gibco)+10%ウシ胎児血清中で増殖させた。 培地にグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシン(Irvine Scientific 社、米国カリフォルニア州、アービン)を補充した。
【0119】
Potter, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻、7161頁、1984年のエレクト
ロポレーション法を使用した。 形質変換を行った後、細胞を完全DMEM中で24〜48時間かけて回復させ、次に、選択培地の存在下、96ウェルの培養プレートに1ウェル当たり10,000〜50,000の細胞を接種した。 ヒスチジノール(Sigma社)選択は1.71μg/mlで行い、マイコフェノール酸(Calbiochem社)は6μg/ml+0.25mg/mlキサンチン(Sigma社)であった。 エレクトロポレーション法によって、Sp2/O細胞に対する形質変換頻度が1〜10×10-5であることがわかった。
【0120】
He3 L鎖発現プラスミドpING4630をPvuI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって線状化して、Sp2/O細胞中に形質導入し、得られたマイコフェノール酸耐性のクローンをL鎖を合成するためにスクリーニングした。 発芽後成長して形質変換体を生成する最良の四種のL鎖を2グループの二形質変換体/プールにプールし、各プールをHe3 H鎖発現プラスミドpING4621(予めPvuIで線状化した)で形質変換した。 ヒスチジノールによる選択を行った後、大部分のL鎖+H鎖を産生するクローン、すなわち、Sp2/O-4630+4621クローンC1718が、T25フラスコ中の過剰培養物のデキサメタゾン中に、10-7のオーダーで存在し、約22μg/μlで抗体を分泌した。 この形質変換体は、American Type Culture Collection(米国、メリーランド州、20852、ロックビル、パークローン・ドライブ1230)に1992年12月1日付でATCC HB 11206 の受託番号で寄託されている。
【0121】
C.組織培養で分泌されたHe3抗体の精製
HB101(Hana Biologics社)+1%ウシ胎児血清に10mM HEPES、1x Glutamine-Pen-Strep(Irvine Scientific #9316)を補充した培養培地に、Sp2/O-4630+4621細胞を増殖させる。 使用した培地を約5,000×gで20分間遠心分離する。 抗体のレベルをELISA法で測定する。 約200mlの細胞培養物上清液をPBS(0.15M NaCl、5mMリン酸ナトリウム、1mMリン酸カリウムを含有し、pH7.2の緩衝液)で平衡化させた2mlのProtein Aカラム(Sigma Chemicals社)に注入する。 He3抗体を段階pH勾配液(pH5.5、4.5 および2.5)で溶離する。 He3抗体を含有するが、ウシ抗体を含有しない画分(収率9%)を1MトリスpH8.5で中和し、Centrium 30(Amicon社)で10倍に濃縮し、PBSで10倍に希釈し、Centricon 30で再び10倍濃縮を行い、PBSで10倍希釈を行い、最終的に再び10倍に濃縮を行った。
得られた抗体を0.25mlずつ−20℃で貯蔵した。
【0122】
D.He3 IgGのCD5に対する親和性の測定
He3のCD5に対する親和性をMolt-4M細胞を使って測定した。 このMolt-4M細胞は、CD5をその表面に発現し、かつ競合結合検定法においてI125標識付けしたキメラのH65IgGと結合する。
【0123】
この検定を行うために、20μgのキメラH65IgG (cH65 IgG)をラクトペルオキシダーゼ−グルコースオキシダーゼを固定化したビーズ(Enzymobeads 、BioRad社)100μl、PBS 100μl、1.0mCiI125(Amersham社、IMS30)、55mM b-D-グルコース50μlに23℃で45分間曝露することによってヨウ素化した。 105mMのメタ重亜硫酸ナトリウムと120mMのヨウ化カリウム20μlを添加して反応を停止させた。 次いで、1分間遠心分離してビーズをペレットにした。 125I-cH65 IgGを7mlのセファデックスG25と、PBS (137mM NaCl、1.47mM KH2PO4、8.1mM Na2HPO4、2.68mM KCl、pH7.2 〜7.4)+0.1 %BSAとを用いて、ゲル濾過法によって精製した。 125I-cH65 IgGの回収率と比活性はTCA 沈澱法で測定した。
【0124】
競合結合法は、次のようにして実施した。 Molt-4M細胞100μlを氷冷DHB結合緩衝液 (ダベルッコ修飾イーグル培地(Gibco社、320-1965PJ)、1.0 %BSAおよび10mM Hepes pH7.2〜7.4)中で2回洗浄した。 細胞を同じ緩衝液に再懸濁し、96個のV形底ウェル(Costar社)中に1ウェル当たり3×105の細胞をプレートし、Beckman JS 4.2ローターを使用し、1,000rpmで5分間遠心分離を行い、4℃でペレット化した。 DHB中の2回濃縮した0.1nM 125I-cH65 IgG、すなわち、ヒト型化した抗体(DHB中最終抗体濃度が、100〜0.0017nM)50μlと競合させた。 ヒト型化した抗体は、He3 IgGを発現するSp2/O クローンC1718の培養上清液から得た。 この上清液中の抗体の濃度は、基準としてキメラ抗体を用いてELISA法によって測定した。 結合は4℃で5時間行い、次いでDHB結合緩衝液200μlを用いて細胞を3回洗浄して反応を停止させ、5分間、1,000rpmで遠心分離した。 全緩衝液と全操作は4℃で行った。 細胞を1.0M NaOH 100μl中で可溶化し、Cobra II auto gamma counter (Packard社)で計測して放射能を測定した。 結合試験から得たデータを加重値を付与して、非線形最小二乗法曲線当てはめてプログラム(MacLigand;Munson, Analyt. Biochem.、107巻、220頁、1980年のコンピュータプログラム「Ligand」のMacintosh 変形)によって分析した。 客観的統計基準(F検定法、extra sum squares principle)を用いて、過分度の評価とモデル間の識別に用いた。 非特異的結合は、誤差に対するパラメーターサブジェクトとして処理し、同時に他のパラメーターに当てはめた。
【0125】
競合結合検定法の試験結果を図11に示す。 これらの試験結果は、He3 IgGに中危険度の変化を起こさせると、その標的CD5に対してこの抗体のキメラマウスヒト型(cH65)より高い親和性を有する抗体が生成することを示している。 この特別の場合においては、中危険度の変化によって親和性がわずかに増大するようであるが、大部分の場合、親和性は減少すると考えられる。
【0126】
実施例8
XMMLY-H65抗パンT細胞免疫グロブリンの調製
細胞系XMMLY-H65 (MoAb H65)によって産生されるマウスモノクローナル抗体は、ヒトCD5抗原と反応性である。 細胞系XMMLY-H65は、American Type Culture Collection(米国、メリーランド州、20852、ロックビル、パークローン・ドライブ12301)に受託番号HB9286で寄託されている。
【0127】
MoAbH65は、T細胞急性リンパ性白血球病にかかっている患者から最初に単離したヒトT細胞系HSB-2でBALB/Cマウスを免疫化した後に産生させた(Adams et al., Can. Res. 28巻、1121頁、1968年)。 Kohler et al., Ernr. J. Immunol.,6巻、292頁、1976年のマウス骨髄腫瘍細胞系P37NS11-Ag-1-4を、Galfre et al., Nature、266巻、550頁、1977年の方法で免疫化したマウス由来の脾臓細胞と融合させた。 得られたハイブリッドコロニーの一つが、末梢Tリンパ球の約95%に発現する分子量が67KDのパンTリンパ球抗原〔Knowles, Leukocyte Typing II,1, (E. Reinherz et al., eds., Springer Verlag、1986年)〕を識別するMoAbを分泌することが見出された。 この抗原は、他のいずれの造血細胞の表面にも存在せず、その抗体自体は、広範囲の正常なヒト組織に対する結合性について試験された結果、Tリンパ球およびBリンパ球の部分集団を除くすべての細胞に対して陰性であることが見出された。
【0128】
H65抗体を産生するハリブリッド細胞系を、希釈を制限することによって二回クローン
化し、BALB/Cマウスに腹水腫瘍として増殖させた。
【0129】
Ey et al., Immunochem. 15巻、429頁、1978年の方法の変法で、MoAbH65をマウス腹水から精製した。 要約すると次のとおりである。 解凍したマウスの腹水を濾過して脂質様物質を除去し、2〜3倍容量の0.14M NaPO4 pH8.0で希釈し、次いで適当な大きさの固定化プロテインA・セファロースカラムに注入した。 280nmにおける吸光度に変化が見られなくなるまで、0.14M NaPO4 pH8.0で洗浄することによって、未結合の物質をカラムから除去した。 次に、0.1Mクエン酸ナトリウムで一連のカラム洗浄(pH 6.0、pH5.0、pH4.0およびpH3.0)を行って、結合した抗体を溶離した。
【0130】
ピークの画分をプールし、飽和トリス塩基でpHを7.0に調整し、Amicon YM10メンブラン(Amicon社、米国、ニューイングランド、レキシントン)と共に撹拌した細胞を用いて濃縮した。 次に、抗体溶液をリン酸塩基緩衝塩水(PBS)pH7.0に対して透析し、−70℃で凍結して貯蔵した。
【0131】
MoAbH65は、IgG1サブクラスに属し、サブクラス特異的抗血清(Miles-Yeda, Ltd., イスラエル、レホボット)を用い、寒天中、二重拡散法によって決定した。 この抗体の血清学的特性と、gp67(すなわちCD5)抗原の生化学的特性を、the First International Workshop on Human Leukocyte Differentiation Antigens(パリ、1982年)の期間中に試験した。 MoAb H65(作業番号:T34)と他の9種のMoAbが、同じ血清学的パターンを有し、gp67抗体を免疫沈澱させることが見出された(Reinherz et al., eds., Leukocyte TypingII、2巻、259〜288頁(Springer-Verlag, 1986 年)におけるKnowlesの報告)。 他の研究には、MoAb H65が、gp67+細胞に対するFITC接合抗Leu-1(Becton Dickson、米国、カリフォルニア州、マウンテン・ビュー)の結合性を阻害することが記載されているが、このことは、両方の抗体が、gp67分子、もしくは立体障害で阻害をもたらすような立体配置で置換している決定因子に同じエピトープを認識することを示している。
【0132】
実施例9
DBA/IJマウスのコラーゲン誘発関節炎の予防治療におけるLyt-1の用途
コラーゲン誘発関節炎(CIA)は、広く用いられるヒト慢性関節リウマチのモデルである。 CIAは、相同もしくは非相同の未変性のII型コラーゲンで免疫化することによって齧歯動物と霊長類に誘発できる慢性多関節炎が特徴である。 生じた関節炎は慢性関節リウマチに似ている。 すなわち、類似の組織病理学的後遺症、細胞もしくは体液の免疫応答および特異的な腫瘍組織適合性遺伝子複合体(MHC)のハプロタイプとの制限された関連があることによるからである。
【0133】
完全フロイントアジュバントでエマルジョンにした未変性の非相同II型コラーゲンは、一回の尾の皮膚注射の後、DBA/IJマウスに関節炎様自己免疫反応を誘発する。 上記のマウスは、米国、メイン州、バー・ハーバーのJackson Laboratories社から入手した。 当初、関節炎は、免疫化してから四週間後に一本以上の指がわずかに腫脹して認められた。
【0134】
CIAの慢性相は続く八週間にわたって連続的に悪化し、関節炎は指から残りの末梢関節へと進行し、結局おかされた関節は強直症になる。 CIAの組織病理は、関節腔のリンパ球の浸潤、滑膜MHCクラスIIの発現およびパンヌスの生成が特徴である。 あらゆるマウスのすべての関節がおかされるわけではなく、関節炎の重症度に分布範囲がある。 10頭以上のマウスからなる群では、全体の関節炎の重症度は、10〜12週間の時間経過にわたって直線状に発生する。
【0135】
上記のCIAモデルを、パンT細胞表面抗原であるLyt-1、すなわちマウスにおけるCD5の等価物に対するモノクローナル抗体の可能性がある効力を試験した。 その抗体は、II型コラーゲンで免疫化する前にマウスに投与した。 また、正常なDBA/Iマウスに抗Lyt-1の0.4mg/kgを一回静脈注射して処理し、FACS分析と、脾臓およびリンパ節の細胞について生体外増殖検定とを行うために72時間後に殺した。 この抗体の効力は、CD5表面抗原による慢性関節リウマチにおける有利なT細胞特異的方法を示している。
【0136】
DBA/IJの脾臓細胞および末梢リンパ節に対する抗Lty-1の効果
抗体の53-7.313は、マウスリンパ球識別抗原Lty-1のすべての対立遺伝子と反応性のラットIgG2aモノクローナル抗体(ATCC 受託番号TIB 104)であるIND1抗体は、マウスIgG1である。 負の対照として、抗ヒト黒色腫抗体(Xoma Corp., 米国、カリフォルニア州、バークレー)が用いられた。 他のすべての抗体は、Becton-Dickinson FACScan instrumentで定量分析するのに用いる直接接合体としてPharmingen Inc.(米国、カリフォルニア州、サン・ディエゴ)から入手した。
【0137】
6〜8週齢の雄のDBA/IJマウスに、リン酸緩衝塩水、IND1または抗Lyt-1を、0.1mlのリン酸緩衝塩水に入れて、0.4mg/kgの投与量で尾の静脈を通じて一回投与した。 そのマウスを分析を行うため投与してから3日後に殺した。 脾臓および末梢リンパ節の単一細胞懸濁液を標準の方法で製造し、1×106の細胞をそれぞれの抗体で染色して蛍光標示式細胞分取器(FACS)による分析を行った。 増殖検定法も実施して、T細胞消耗の第二の測定値を得た。 細胞(1×105/ウェル)は、コンカナバリンA、インターロイキン-2(IL-2)、IL-2とH57.597(パンα、βT細胞受容体抗体)、またはブドウ球菌エンテロトキシンAとBで刺激した。 細胞を合計72時間培養し、最後の24時間に3H-メチルチミジンを添加することによって増殖を定量した。 72時間後に、細胞をInolech INB-384収穫・計数装置で収穫し、細胞をガラス繊維フィルターに集め、次いでガス比例β粒子検出を行った。 試験結果は一般に、表5と6に三つのウエルの平均値±SEMで示した。
【0138】
A.リンパ節と脾臓細胞のFACS分析
各治療グループ(n=3/グループ)から得たリンパ節細胞(LNC)と脾臓細胞(SPC)FACS分析値を、α、βT細胞受容体、CD3、CD4、CD5およびCD8の発現百分率について分析した。 結果を表4に示す。
【0139】
表4において、統計的有意性を、分散分析法、次いでダンカンの新マルチプル・レンジ・ポスト-hoc検定法によって決定した。 これらのデータは、抗Lyt-1抗体を投与すると、72時間の時点で、末梢Tリンパ球が有意に消耗されることを示している。 他のT細胞マーカー(CD3など)も同程度に消耗されるので、試験結果は残留循環抗体によって説明することができなかった。
【0140】
B.増殖分析値に対する抗Lyt-1の効果
生体外増殖検定を、コンカナバリンA、IL-2、IL-2+H57、ブドウ球菌エンテロトキシンAとB(SEAとSEB)に応答する各治療グループ(n=3/グループ)からのマウスについて実施した。 結果を表5に示す。
【0141】
全体として、これらのデータは、抗Lty-1抗体を一回静脈投与(0.4mg/kg)してから72時間後に、DRA/IJマウスのT末梢リンパ球の測定可能な機能的な消耗があることを示している。
【0142】
C.コラーゲン誘発関節炎のDBA/IJマウスに対する抗Lyt-1の効果
A.材料と方法
6〜8週齢の雄のDBA/IJマウスを、等容量のフロイント完全アジュバントでエマルジョンにしたウシII型コラーゲン100μgを最終注射容量100μlで用いて免疫化する四日前に抗体53.-7.313(抗Lyt-1)、IND1(抗黒色腫)またはリン酸緩衝塩水(PBS)の投与を開始して、48時間間隔をおいて合計二回静脈投与(0.4mg/kg)を行った。 各投与グループは10頭づつのマウスで構成されている。 マウスの監視を免疫化後21日目に開始して、一週間毎に行った。
【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

免疫化を行った後、個々のマウスの各足を0から2までの尺度で等級をつけて関節炎の重症度の得点を付けた。 得点1は二本までの足指が腫脹していることを示し、得点2は二本以上の足指の腫脹から足全体がおされて、その後の時点で大きな関節が強直症にあることを示す。 個々のマウスが採りうる重症度の最大得点は8である。 マウスはコラーゲンで免疫化してから80日後まで監視し、次いで頚部脱臼で殺した。 結果は各投与グループについて関節炎得点の平均値で表してある。
【0145】
試験過程での関節炎得点の変化を図12に示す。 図12の総合結論は、コラーゲンによる免疫化を行う前に抗Lut-1抗体を投与すると、現れる関節炎重症度が有意に低下したということである。 全治療グループにおいて、目視可能な徴候の出現は免疫化してから約30日後に始まり、試験終了まで直線的に進行した。 抗Lyt-1治療グループは、48日目に軽減された関節炎の徴候を示し始め、他の二グループと同程度に関節炎が発生することはなかった。 関節炎の開始は抗Lut-1の治療によって有意に遅延することはなかった。
【0146】
統計的有意性を、被検体間の一つの変数(抗体による治療)による、反復測定の分散分析で決定した。 反復測定分析は、各マウスが試験の期間中連続的に監視されたので必要であった。 このように連続した日における関節炎の得点は、グループ間の有意差を求めるF検定法における全自由度に寄与する独立した測定値とみなすことはできない。 反復測定分析は測定値の数の変化に、グループ当りの個体の数からの自由度を使用する。 被検体間の一般的な分散分析は不適当であり、治療グループ間の誤まった有意性を示すことがある。 免疫化を行った後の日数による治療手段の比較は、抗Lyt-1による治療のPBSとIND1を用いた対照手段に対する有意性を決定するために行った。
【0147】
結論として、マウスにおけるCD5の等価物であるLyt-1に対するラットモノクローナル抗体の静脈投与は、0.4mg/kgを一回投与した後、脾臓と末梢リンパ節のTリンパ球を有意に減らすことができる。 このT細胞の減少は、II型コラーゲンによる免疫化を行う前に同じ抗Lyt-1を投与した場合にみられる関節炎重症度の有意な(p<0.01)減少に対して根拠のある機序である。
【0148】
実施例10
H65 MoAb治療によるSCIDマウスからのヒトT細胞の除去
重症の複合免疫不全症のマウス(CB. 17 Scid:SCID)は、ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を移植した後、数カ月間ヒトリンパ系細胞を保持している。 このようなキメラマウスは、PBMC/SCIDマウスと呼ぶが、その血清中にヒトIgが存在することによって分かるように機能性ヒト細胞を有している。 PBMC/SCIDマウスは、脾臓と血液のような組織中にヒトT細胞を保持している。 PBMC/SCIDマウス中に存在するヒトT細胞は、主として成熟表現型のものであり、CD3、CD5、CD7およびCD4もしくはCD8を含むT細胞抗原を発現する。 その上に、ほとんどのT細胞は、HLA-DRとCD45R0の発現によって判断されるように、活性記憶細胞のようである。 これらの移植されたT細胞は、(a)B細胞が抗破傷風トキソイド抗体を産生するのに役立ち;(b)プラズマ中に検出される可溶性インターロイキン-2受容体(SIL-2R)を産生し、および(c)in vitroにて、IL-2を補充したミトゲンの抗ヒトCD3 モノクローナル抗体に応答して増殖するので、機能性のようである。
【0149】
PBMC/SCIDマウスは、ヒトT細胞とB細胞が存在しているために、H65MoAb、すなわち、ヒトCD5に対するマウスIgGIのような抗ヒトT細胞薬品を評価するためのin vivoでのモデル系を提供する。
【0150】
SCIDマウスは、Taconic社(米国、ニューヨーク州、ジューマンタウン)から入手し、6〜7週齢時に、ヒトPBMCが確実に移植されるように200mg/kgのシクロホスファミドを腹腔内(i.p.) 内に注射した。 二日後に、通常のドナーから得たリンパ球を除去した試料(HamaCare Corporation、米国、カリフォルニア州、シャーマン・オークス)からFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離したヒトPBMC25〜40×106を腹腔内に注射した。
【0151】
PBMCを注射してから2〜3週間後に、マウスの後部眼窩洞から採血して、プラズマ中のヒト免疫グロブリン(Ig)とヒトSIL-2RのレベルをサンドイッチELISA 法を用いて定量した。 これらのヒト−タンパク質のレベルが低いか、または検出できないマウスは試験から除き、残りを各種の治療グループ(6頭/グループ)に分割した。 次いで、そのマウスに、H65 MoAb(0.2もしくは0.02mg/kg/day)H65ベースのF(ab')2断片(2mg/kg/day)または賦形剤(緩衝液)を、10日間連続投与して毎日静脈注射によって投与した。 最後の注射をしてから1日後、マウスから採血し、次いで脾臓を集めた。 血球と脾臓細胞の単一細胞懸濁液を標準の方法で作製した。 次いで、回収した細胞を、流動細胞計測法を用いてヒトT細胞表面マーカーについて検定した。
【0152】
20万〜50万個の細胞が、下記のFITCもしくはPE接合Ab(Becton-Dickinson、米国、カリフォルニア州、マウンテン・ビュー):HLe-1-FITC(抗-CD45)、Leu-2-FITC(抗-CD8)およびLeu-3-PE(抗-CD4)によって染色された。 試料は、対数増殖器を用いFACScanで分析した。 陽性の細胞を定量する領域を、未変性SCIDマウスから得た細胞の染色に基づいて設定した。 SCID組織から回収されたヒト抗原陽性細胞の絶対数を、陽性細胞の%に、各組織試料から回収された細胞の合計数を掛け算することによって求めた。 血液中の白血球の合計数を、理論的血液容積1.4ml/マウスを用いて計算した。 治療グループ間の統計的比較は、Mann-Whitney U検定法を用いて行った。
【0153】
H65 MoAbもしくは賦形剤(対照)による治療後のPBMC/SCIDマウスの脾臓と血液から回収したヒトT細胞(CD4+CD8細胞)の数を図13に示す。 賦形剤で治療されたマウスに比べて有意に少ない数のT細胞が、0.2もしくは0.02g/kg/dayのH65 MoAbで治療されたマウスの脾臓と血液から回収された。 逆に、H65ベースのF(ab')2断片を、2mg/kg/dayで用いて治療した場合、たとえ10〜100倍の高い投与量を用いても、脾臓もしくは血液からヒトT細胞は有意に減少しなかった(図14)。
【0154】
これらの試験結果は、抗ヒトCD5 MoAbが実験動物モデル中のヒトT細胞を減少させることを示している。 このMoAbがSCIDマウスからヒトT細胞を減少させる性能は、F(ab')2 断片が無効であるので、MoAbのFc部分に依存していることは明らかである。
【0155】
実施例11
糖尿病耐性BBラットのコラーゲン誘発関節炎の
予防治療へのOX19モノクローナル抗体の用途
糖尿病耐性のBiobreeding (DR BB) ラットのコラーゲン誘発関節炎は、DR BBラットRT1.Dβ遺伝子が慢性関節リウマチの罹病性に関連していると報告されているヒトHLA-DRβ遺伝子に相同のヌクレオチド配列をコードしてるという点で、ヒト慢性関節リウマチにとって特に適切な動物モデルである。 このモデルでは、DR BBラットに、不完全フロイントアジュバントでエマルジョンにした非相同のII型コラーゲンを尾の皮膚内一回注射して投与する。 関節炎の発生は、DBA/IJ CIAモデルの場合よりかなり速い。 臨床での徴候はコラーゲンによる免疫化を行ってから1.5〜2週間後に起こり、ピークの腫脹は開始から数日後に観察される。 発生率は、一般に、極めて高い(免疫化された動物の85%を超える)。 その腫脹は一般に重篤で、足指と足くびの全関節にわったており、かつ後足に限定されている。 組織病理学的試験によって、関節炎は、関節縁にパンヌスが生成する増殖性滑膜炎で始まり、続いて軟骨の外側の(非無機物化)層と内側の(無機物化)層の両方に二方向侵食が起こる。
【0156】
この試験では、モノクローナル抗体(MoAb)、すなわち、ラットにおいてCD5抗原の等価物に対するOX19の効力を評価するために、DR BB CIAラットモデルを使用する。 その抗体を、II型コラーゲンで免疫化する前に、ラットに投与した。 また、正常のSprague-Dawleyラットを一回の0.5mg/kg 静脈注射によって処理し、三時間後に殺してT細胞に対するMoAbの結合性を測定するか、または二日後に流動細胞計測法を用いて、リンパ系組織中のT細胞を定量した。
【0157】
A.正常Sprague-Dawleyラットのリンパ系組織でのT細胞に対するOX19 MoAbの作用
OXI9 MoAbは、ラットT細胞に存在するラットCD5抗原の等価物に対するマウスIgG1である。 OXI9ハイブリドーマは、The European Collection of Animal Cell Cultures (ECACC) から入手可能で、ECACC No.84112012 が付されている。 H65 MoAb、すなわち、ヒトCD5に対して反応性のマウスIgG1を、負の対照に一致するイソタイプとして使用した。 ラットパンT細胞(W3/13)、CD4細胞(W3/25)およびCD8細胞(OX8)上の表面抗原に対するフルオレセインを接合した抗体を、ラットリンパ系組織中のT細胞を流動細胞計測法で定量するのに用いるため、Accurate Chemical and Scientific Corporation(米国、ニューヨーク州、ウェストバリー)から入手した。 フィコエリスリンを接合したヤギ抗マウスIgG1(Caltag Laboratories社、米国、カリフォルニア州、サウス・サンフランシスコ)を用いて、二色分析法でラットT細胞に捕捉されたOX19 MoAb を検出した。
【0158】
重量が100 〜150gの雄のSprague-Dawleyラット(Simonsen Laboratories社、米国、カリフォルニア州、ギルロイ)に、0.1%Tween80 を含有するリン酸緩衝塩水(PBS/Tween)中のOX19 MoAb(0.5mg/kg)または対照のMoAb(0.5mg/kg)を一回、一挙に静脈注射した。
【0159】
投与してから、3時間後(結合性試験) または2日後(除去性試験)に、動物を殺した。 血液、脾臓およびリンパ節の単一細胞懸濁液を標準方法で作製し、1×106の細胞を、FACS分析を行うために適当な抗体で染色した。
【0160】
A. In vivoでのOX19 MoAbのラットT細胞に対する結合性
各治療グループの一頭の動物の血液、脾臓およびリンパ節を、CD4とCD8のT細胞の百分率、および表面に結合したマウスIgG1に対して明確に染色したCD4とCD8のT細胞の百分率について分析した。 その結果を表6に示す。 T細胞は、OX19 MoAbを投与してから三時間後に血液から除去された。 OX19 MoAbで治療されたラットの、血液中に残ったT細胞のほとんどすべて、および脾臓とリンパ節中に存在するT細胞のほとんども表面に結合したマウスIgG1に対して明確に染色した。 このことは、使用したOX19 MoAbの投与量が、これらの腫瘍リンパ系器官中のT細胞の大部分を飽和するのに充分な量であったことを示している。 これらの結果は治療に用いるのに有効な投与量を示している。
【0161】
B.ラットリンパ系組織におけるT細胞部分集団に対するOX19 MoAb治療の効果
各治療グループにおける二頭の動物由来の血液、脾臓およびリンパ節の細胞を、パンT、CD4およびCD8の細胞の百分率について分析した。 試験結果を、二頭の動物の平均値として表7に示す。 OX19 MoAbによる治療によって、対照のMoAbによる治療に比べて、全被検組織からT細胞が消耗している。 これらの試験結果は、本発明の抗体を用いる治療用途に用いられる適切な投与量を示している。
【0162】
【表6】

【0163】
【表7】

実施例12
DR BBラットにおけるコラーゲン誘発関節炎の発生に対するOX19 MoAb治療の効果
雄のDR BB/Worラット(マサチューセッツ大学飼育場から入手した;8頭/グループ)の6週齢になったものに、不完全フロイントアジュバント0.15ml中にエマルジョンにしたウシII型コラーゲン0.3mgを0日目に尾の根元に注射して免疫化する前、7日目と4日目にOX19 MoAb(0.5mg/kg)、対照のMoAb(0.5mg/kg)または緩衝液(PBS/Tween)を静脈注射で投与した。 ラットの関節炎の得点付けを、コラーゲンによる免疫化を行ってから8日後に開始して毎日行った。 重症度を0〜2の尺度で等級付けした。 得点1は中程度の腫脹を示し、得点2は重篤な腫脹を示す。 個々の動物は、もし両側の後足がおかされれば、関節炎重症度の採りうる最高得点は4である。
【0164】
試験過程中の関節炎得点の変化を図15に示し、各治療グループの関節炎発生率を表8に示す。
【0165】
対照のラット(緩衝液および対照のMoAbで治療したラット)に、主として両側の後足の重篤な関節炎が、高い発生率で(両グループについて88%)10〜14日目に発生した。 OX19 MoAbによる治療によって、関節炎の発生が完全に防止された(発生率0%)。
【0166】
結論として、CD5ラット等価物に対するマウスMoAbを0.5mg/kg静脈投与すると、正常のラットのリンパ系組織からのT細胞を飽和して消耗することが分かった。 このT細胞の消耗は、DR BBラットに、II型コラーゲンによる免疫化の前にMoAbを投与したときに観察される関節炎発生の完全な阻害についての可能性の高い機序である。
【0167】
【表8】

実施例13
慢性関節リウマチの治療
慢性関節リウマチ(RA)にかかっている患者を、本発明の抗パンT細胞を用いて治療するために選択した。
【0168】
前述のようにして調整した抗CD5抗体を、約0.005〜2.0mg/kg/dayの投与量で患者に、1〜5日間、好ましくは1〜2日間投与した。 なお、この投与は、キメラのヒト型化MoAbを、その半減期が増大したために用いる場合には、毎日の変わりに2〜30日毎に上記投与量を投与することができる。 最適投与量と投与予定を決定するために、投与量上昇法による各投与量を確立して患者を治療した。 患者は、関節の腫脹と圧痛の得点を含むいくつかの徴候を用いて監視した。 その結果を、図11に示す。
【0169】
実施例14
SLEの治療
全身性狼瘡紅斑(SLE)は、炎症と自己免疫を特徴とする多重全身性疾患である。 高い頻度で起こる徴候には、疲労、貧血、発熱、発疹、感光性、脱毛症、関節炎、心膜炎、胸膜炎、脈管炎、腎炎、および中枢神経系の疾患が含まれる。 Revised Criteria for Classfication of SLEによれば、上記した徴候の四つ以上が、観察期間中、連続的あるいは同時に現れば、SLEの臨床検査を行う必要があるとされている。
【0170】
前記のようにして製造された抗CD5抗体は、約0.05〜2.0mg/kg/dayの投与量で、1〜5日間、好ましくは1〜2間、患者に投与される。 あるいは、キメラのヒト型化MoAbを、その半減期が増大した場合には、毎日の変わりに2〜30日毎に上記投与量を投与できる。 最適の投与量を投与予定を決定するために、患者は投与量増大法による各投与量と投与予定に従って治療される。
【0171】
実施例15
乾癬の治療
乾癬は、ひじとひざに斑点として古くから知られている自己免疫が原因の疾患であるが、皮膚の他の領域に現れることが多い。 爪と関節の異常も観察されることが多い。 特に、炎症性関節疾患が、時には、糜爛性で重篤な形態で起こることがある。
【0172】
前述のようにして調整した抗CD5抗体を、約0.005〜2.0mg/kg/dayの投与量で1〜5日間、好ましくは1〜2日間、患者に投与する。 なお、キメラのヒト型化したMoAbを、その半減期が増大した場合には、毎日の代わりに、上記投与量を2〜30日間毎に投与できる。 最適の投与量と投与予定を決定するために、患者は投与量増大法による各投与量と投与予定に従って治療される。
【0173】
臨床観察には、乾癬の斑点に対する特別な注意のみならず、患者の全体的状態の評価が含まれる。 さらに、白血球の計数と示差分析のような実験パラメータの監視が推奨される。 治療に対する不十分な耐性または合併症を示す徴候には悪心、嘔吐、疲労、発疹、発熱、悪寒および失神がある。 リンパ球以外の白血球の解明されていない消耗は、治療を停止する指標である。 リンパ球の示差分析を実施することが好ましい。 すなわち、T細胞とB細胞の合計数の分析を行わなければならない。
【0174】
実施例16
I型糖尿病の治療
糖尿病には主として二つの型がある。 I型は古くから外因性インスリンが必要なことが関連している。 I型糖尿病は、一般に、40歳より前に起こり、インスリンの分泌がないことに関連している。 長期I型インスリン依存性糖尿病の患者の膵臓には、膵臓島細胞が欠けている。 I型インスリン依存性糖尿病(IDDM)の病因が自己免疫であるという大きな証拠がある。
【0175】
患者は、The American Diabetes Association が確立した基準に基づいてIDDMであると診断される。 前述のようにして調整された抗CD5抗体を、約0.005〜2.0mg/kg/dayの投与量で、1〜5日間、好ましくは1〜2日間、患者に投与する。 なお、キメラのヒト型化MoAbを、その半減期が増大した場合は、毎日の代わりに、上記投与量を2〜30日毎に投与できる。 最適の投与量と投与予定を決定するために、患者は投与量増大法による各投与量と投与予定に従って治療される。
【0176】
試験中、患者は臨床パラメータと実験パラメータで監視した。 治療に対する不充分な耐性また合併症を示す臨床徴候には、疲労、嘔吐、発疹、発熱、悪寒および失神がある。
【0177】
試験評価には、示差分析を伴う白血球の計数を毎日行うことと、血糖値を1日に少なくとも2回測定することが含まれる。
【0178】
I型糖尿病の開始を予見する診断基準によって、患者は予防治療を選択することができる。 この治療は、臨床インスリン依存性糖尿病の治療について、先に述べた投与量と投与予定に従って行われる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明によって調製される改変抗体可変領域は、ヒトへの投与、すなわち、ヒトの疾病治療の目的での用途において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1A】配列と構造の相同性の基準によって対応させた、四つのヒト抗体可変領域〔HYH (HYHEL-10 Fab-リゾチーム複合体)、MCPC(IgA Fab MCPC603-ホスホコリン複合体)、NEWM(Ig Fab' NEW)およびKOL (IgG1 KOL)〕のL鎖でのアミノ酸配列を示す概略図である。
【図1B】配列と構造の相同性の基準によって対応させた、四つのヒト抗体可変領域〔HYH (HYHEL-10 Fab-リゾチーム複合体)、MCPC(IgA Fab MCPC603-ホスホコリン複合体)、NEWM(Ig Fab' NEW)およびKOL (IgG1 KOL)〕のH鎖でのアミノ酸配列を示す概略図である。
【図2】可変領域のL鎖のアミノ酸残基間の構造の関係を示す概略図である。
【図3】可変領域のH鎖のアミノ酸残基間の構造の関係を示す概略図である。
【図4】抗体可変領域の概略図である。
【図5A】ヒト抗体可変領域のL鎖のサブグループ〔hK1(ヒトκL鎖サブグループ1)、hK3(ヒトκL鎖サブグループ3)、hK2(ヒトκL鎖サブグループ2)、hL1(ヒトλL鎖サブグループ1)、hL2(ヒトλLサブグループ1)、hL3(ヒトλL鎖サブグループ3)、hL6(ヒトλL鎖サブグループ6)、hK4(ヒトκL鎖サブグループ4)、hL4(ヒトλL鎖サブグループ4)およびhL5(ヒトλL鎖サブグループ5)〕それぞれの共通アミノ酸配列の配置の対応関係を示す概略図である。
【図5B】ヒト抗体可変領域のH鎖のサブグループ〔hH3(ヒト重鎖サブグループ3)、hH1(ヒトH鎖サブグループ1〕およびhH2(ヒトH鎖サブグループ2)〕それぞれの共通アミノ酸配列の配置の対応関係を示す概略図である。
【図6A】ヒトL鎖の共通配列hK1と、H65マウスモノクローナル抗体可変領域の実際の(h65) L鎖配列と低危険度改変を行った(prop)L鎖配列との対応関係を示す概略図である。
【図6B】ヒトL鎖の共通配列hH3と、H65マウスモノクローナル抗体可変領域の実際の(h65)H鎖配列と改変(prop)H鎖配列との対応関係を示す概略図である。
【図7A】H65マウスモノクローナル抗体可変領域のL鎖とH鎖の改変V/J領域をコードする遺伝子の構築のために用いられるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を示す概略図である。
【図7B】H65マウスモノクローナル抗体可変領域のL鎖とH鎖の改変V/J領域をコードする遺伝子の構築のために用いられるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を示す概略図である。
【図8A】H65マウスモノクローナル抗体可変領域のL鎖とH鎖それぞれの改変V/J領域をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を示す概略図である。
【図8B】H65マウスモノクローナル抗体可変領域のL鎖とH鎖それぞれの改変V/J領域をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を示す概略図である。
【図9】本発明の改変H65抗体可変領域が、天然のH65抗体可変領域の抗原結合性能を保持していることを示す、競合的結合測定法での試験結果のグラフである。
【図10A】ヒトのL鎖共通配列hK1、ならびにヒト抗体EU、ヒト抗体TAC、本発明に従って改変したマウス抗体TAC(prop)、および他の異なる方法で改変したマウス抗体TAC(Que)の可変領域のL鎖での配列の対応関係を示す概略図である。
【図10B】ヒトのH鎖共通配列hH1、ならびにヒト抗体EU、ヒト抗体TAC、本発明に従って改変したマウス抗体TAC(prop)、および他の異なる方法で改変したマウス抗体TAC(Que)の可変領域のH鎖での配列の対応関係を示す概略図である。
【図11】Molt-4Mに関するCD5へのHe3 IgGの結合が、cH65 IgGと同様の結合であることを実証するグラフである。
【図12】DBA/1Jマウスでのコラーゲン誘発関節炎の重症度に対して投与した抗Lyt-1の効果を示すグラフである。
【図13】AおよびBは、H65モノクローナル抗体で治療後に、PBMC/SCIDマウスの脾臓または血液で処置したヒトT細胞回復を示す概略図である。
【図14】AおよびBは、H65ベースのF(ab')2断片で治療後に、PBMC/SCIDマウスの脾臓または血液で処置したヒトT細胞回復を示す図である。
【図15】DR BBラットのコラーゲン誘発関節炎の重症度に対するOX19モノクローナル抗体の効果を示すグラフである。
【図16A】ヒトL鎖共通配列hK1と、H65マウスモノクローナル抗体可変領域の実際の(h65)L鎖配列と低危険度の改変を行った(prop)L鎖配列とを対応させた概略図である。
【図16B】ヒトH鎖共通配列hH3と、H65マウスモノクローナル抗体可変領域の実際の(h65)H鎖配列と改変した(prop)H鎖配列との対応関係を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、すなわち;
(a)相同性に基づいてアラインメントを行い、改変される第一の抗体可変領域のL鎖アミノ酸配列のアミノ酸の位置を決定し、そして、相同性に基づいてアラインメントを行い、改変される第一の抗体可変領域のH鎖アミノ酸配列のアミノ酸の位置を決定し、
(b)位置/危険度対照図、すなわち、
【化1】

によってL鎖アミノ酸での危険度を同定し、および、位置/危険度対照図、すなわち、
【化2】

によってH鎖アミノ酸配列での危険度を同定し、
(c)第一の抗体可変領域において(●)、(▲)または(●)および(▲)の危険度が付与された位置にあるアミノ酸残基を、第二の抗体可変領域でのアミノ酸配列における対応位置にあるアミノ酸残基に置換し、および
(d)抗原に対する抗体可変領域本来の親和性を減少させることなく、異種に関するその免疫原性を減少させながら、抗原に結合可能な当該置換アミノ酸残基を有する改変抗体可変領域を調製する、
工程を含む方法によって得られる、ことを特徴とする改変抗体可変領域。
【請求項2】
改変される第一の抗体可変領域が、H65可変領域(配列番号:26および配列番号:28)である請求項1に記載の改変抗体可変領域。
【請求項3】
前記改変抗体可変領域が、ATCC HB 11206の受託番号で寄託された形質転換細胞系によ
って産生された免疫グロブリン分子の可変領域(He3)である請求項1または2に記載の改変抗体可変領域。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の改変抗体可変領域をコードするDNA。
【請求項5】
請求項4に記載のDNAを含むベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のDNAを組み込んだ宿主細胞。
【請求項7】
前記抗体可変領域が、自己免疫疾患を患った動物を処置するために用いるCD5に対して反応性を有する請求項1に記載の改変抗体可変領域。
【請求項8】
前記動物が、ヒトである請求項7に記載の改変抗体可変領域。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎、狼瘡、乾癬、硬皮症、縮瞳、心筋炎、椎骨関節症、甲状腺炎、天疱瘡、真性糖尿病-1型、進行性全身性硬化病、再生不能性貧血、重症筋無力症、多発性縮瞳および皮膚性縮瞳を含む縮瞳、シェーグレン病、管性膠原病、多発性動脈炎、(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)炎症性内蔵疾患、多発性硬化症、および原発性胆汁性肝硬変からなるグループから選択される請求項7または8に記載の改変抗体可変領域。
【請求項10】
前記狼瘡が、全身性狼瘡紅斑である請求項9に記載の改変抗体可変領域。
【請求項11】
筋肉、静脈、皮膚、局部的、包膜、関節、腹膜および皮下からなるグループから選択された経路によって投与される請求項7に記載の改変抗体可変領域。
【請求項12】
非経口的に投与される請求項7に記載の改変抗体可変領域。
【請求項13】
前記自己免疫疾患が、全身性自己免疫疾患である請求項7に記載の改変抗体可変領域。
【請求項14】
請求項1に記載の改変抗体可変領域を含む免疫グロブリンまたはその断片。
【請求項15】
第二抗体可変領域のアミノ酸配列が、ヒトのアミノ酸配列である請求項14に記載の免疫グロブリンまたはその断片。
【請求項16】
前記ヒト型化抗体可変領域が、ATCC HB 11206の受託番号で寄託された形質転換細胞系
によって産生される請求項15に記載の免疫グロブリンまたはその断片。
【請求項17】
被投与動物の体重(kg)当たり0.01mg〜5mgの用量で投与される請求項6乃至10のいずれかに記載の改変抗体可変領域。
【請求項18】
前記用量が、被投与動物の体重(kg)当たり0.1mg〜2mgの用量で投与される請求項17に
記載の改変抗体可変領域。
【請求項19】
前記改変抗体可変領域が、抗-CD5抗体可変領域である請求項6乃至10のいずれかに
記載の改変抗体可変領域。
【請求項20】
前記抗-CD5抗体可変領域、ATCC HB 11206の受託番号で寄託された形質転換細胞系によって産生される請求項6乃至10のいずれかに記載の改変抗体可変領域。
【請求項21】
静脈から投与される請求項6乃至10のいずれかに記載の改変抗体可変領域。
【請求項22】
非経口的に投与される請求項6乃至10のいずれかに記載の改変抗体可変領域。
【請求項23】
ヒトの体重(kg)当たり0.01mg/kg〜5mg/kgの用量で投与される請求項6乃至10のいずれかに記載の改変抗体可変領域。
【請求項24】
体重(kg)当たり0.1mg〜2mgの用量で投与される請求項23に記載の改変抗体可変領域。
【請求項25】
前記抗-CD5抗体可変領域が、改変H65抗体可変領域である請求項19に記載の改変
抗体可変領域。
【請求項26】
請求項1に記載の改変抗体可変領域または請求項14に記載の免疫グロブリンおよび薬学的に許容される希釈剤もしくは担体を含む薬学的組成物。
【請求項27】
免疫抑制剤、強化剤、または副作用緩和剤をさらに含む請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
プレドニソロン、プレドニソン、デキサメタゾン、シクロホスファミド、サイクロスポリン、メトトレキセート、アザチオピンまたはγ−グロブリンをさらに含む請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
脈管形成阻害剤をさらに含む請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
凍結乾燥形態である請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
水性剤、噴霧剤または被覆粒子剤である請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
請求項1乃至3のいずれかに記載の改変抗体可変領域を含む薬学的組成物。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate


【公開番号】特開2008−253267(P2008−253267A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113288(P2008−113288)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【分割の表示】特願2005−6625(P2005−6625)の分割
【原出願日】平成4年12月14日(1992.12.14)
【出願人】(307043142)ゾーマ テクノロジー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】