説明

改良された粘度法特性を有する動力伝達流体

【課題】動力伝達流体中に使用されて改良された粘度法特性を与え得る新規コポリマーを提供することにある。
【解決手段】動力伝達流体中に使用されて改良された粘度法特性を与え得るコポリマーが開示される。そのコポリマーは下記の式:
【数1】


(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数を有する側鎖を有するアルコールの混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された粘度法特性を与えるために動力伝達流体中に使用し得る新規コポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の車両の動力伝達システム、例えば、オートマチック・トランスミッション、マニュアル・トランスミッション、連続式可変トランスミッション等が当業界で公知である。新しい動力伝達システムが絶えず設計されており、通常の動力伝達システムが改良された車両運転性、信頼性、及び燃料経済性を与えるために絶えず設計されている。
典型的には、新しい、又は再設計された動力伝達システムはその性能仕様を満足するために特別に配合された動力伝達流体を必要とする。流体は車両製造業者らにより定められた規格を満足する必要がある。例えば、ゼネラル・モーターズはヒドラ-マチックトランスミッションを備えた2006年型自動車及びトラック中のオートマチック・トランスミッション流体についてデクスロン-VI仕様を導入した。デクスロン-VI仕様はトランスミッションデザイン変化を受け入れるようにとの性能要求だけでなく、流体が一層長く持続し、かつ一層良好に機能するための自動車メーカによる努力に歯止めをかける。デクスロン-VI仕様は動力伝達流体が-40℃で15,000センチポイズ(cP)以下の流体粘度を示すことを必要とする。
必要な性能要件を示すことができる動力伝達流体を提供するために、下記の添加剤成分の一種以上がベースオイルと特別な比率で混合される必要がある:粘度改質剤、潤滑油流動性改良剤(“LOFI”)、摩擦改質剤、分散剤、金属洗剤、耐磨耗剤、粘度改質剤(VM)等。一般に言えば、これらの型の成分は当業界で公知であるが、種々の成分の特別な化学組成物が絶えず発明されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は改良された粘度法特性を与えるために動力伝達流体中に使用し得るLOFI及びVMの両方の特性を有する新規コポリマーを提供する。そのコポリマーは特別な式を使用して計算して8個より大から12個未満までの範囲の側鎖中の炭素原子の平均数を有するアルコールの混合物を含む。そのコポリマーは0.10から1.00までの範囲の増粘効率(“TE”)を示し得る。
非限定実施例において、本発明は下記の式:
【0004】
【数1】

【0005】
(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数(Cn)を有する側鎖を有するアルコールの混合物を含む動力伝達流体用のコポリマーである。
別の非限定実施態様において、本発明は(a)グループII原料油、グループIII原料油及び/又はグループIV原料油、並びにこれらの混合物を含むベースオイル、並びに(b) 下記の式:
【0006】
【数2】

【0007】
(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数(Cn)を有する側鎖を有するアルコールの混合物を含むコポリマーを含む動力伝達流体組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特に示されない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される、成分の量、反応条件、寸法、物理的特性、加工パラメーター等を表す全ての数はあらゆる場合に“約”という用語により修飾されると理解されるべきである。それ故、その逆に示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に示される数値は本発明により得られるように探求されている所望の特性に応じて変化してもよい。まさにいずれにしても、また特許請求の範囲への均等物の教義の適用を制限する試みとしてではなく、夫々の数値は少なくとも報告された有意なアラビア数字の数に鑑みて、また通常の丸くする技術の適用により解釈されるべきである。更に、本明細書に開示されるあらゆる範囲は始めの範囲値及び終りの範囲値並びにその中に包含されるありとあらゆる下位範囲を含むと理解されるべきである。例えば、“1〜10”の記述範囲は1の最小値と10の最大値の間(かつこれらを含む)のありとあらゆる下位範囲を含むと考えられるべきである。即ち、あらゆる下位範囲は1の最小値又はそれ以上で始まり、かつ10の最大値又はそれ未満、例えば、5.5〜10で終わる。以下の記載における米国特許もしくは特許明細書又は参考文献の言及はまたその明細書を本明細書に参考として含み、そのまま含まれると理解されるべきである。
種々の用語がこの明細書中に使用される。これらの用語の幾つかについての定義が以下に提示される。
“原料油”という用語は米国石油協会(API)刊行物“Engine Oil Licensing and Certification System”, 工業サービス部門, 第14編, 1996年12月, 補遺1, 1998年12月に提示された定義に従って定義される。原料油は特定試験を使用して測定される以下に明記される規準に応じてグループI、グループII、グループIII、グループIV又はグループVとして分類される。
グループI原料油は90%未満の飽和物及び/又は0.03%より大きい硫黄を含み、また80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
グループII原料油は90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、また80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
グループIII原料油は90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、また120以上の粘度指数を有する。
グループIV原料油は合成原料油であるポリアルファオレフィン(PAO)である。
グループV原料油はグループI、II、III、又はIV原料油として分類し得ない全てのその他の原料油を含む。
“増粘効率”(TE)という用語は単位質量当りの油を増粘するポリマーの能力を記載し、以下のように定義される。
【0009】
【数3】

【0010】
(式中、cはポリマー濃度(ポリマーのグラム数/溶液100グラム)であり、kv油+ポリマーは基準油中のポリマーの動粘度であり、かつkvは基準油の動粘度である)
“分子量”(Mw)という用語は重量平均分子量を表す。本明細書中のMw値はポリスチレン較正に基づいてゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定された。
本発明は潤滑剤組成物用の新規コポリマーである。そのコポリマーは下記の式:
【0011】
【数4】

【0012】
(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数(Cn)を有する側鎖を有するアルコールの混合物を含む。
以下の記載はCnが計算される方法の例を提示する。本発明者らが下記のアルコールの混合物を含むコポリマーを有すると仮定されたい:4個の炭素の側鎖を有する0.2モル分率のアルコール;8個の炭素の側鎖を有する0.2モル分率のアルコール;10個の炭素の側鎖を有する0.3モル分率のアルコール;及び12個の炭素の側鎖を有する0.3モル分率のアルコール。そのコポリマーはアルコール側鎖の炭素原子の平均数が(0.2*8+0.3*10+0.3*12)/(0.2+0.3+0.3)=10.25に等しいアルコールの混合物を有する。4個の炭素の側鎖を有する0.2モル分率のアルコールのような、その側鎖中に6個未満の炭素原子を有するアルコールは、その計算に含まれなかったことに注目のこと。
コポリマーを構成する種々のアルコールについての側鎖中の炭素原子の平均数が重要である。何とならば、それがコポリマーの結晶化温度を決めるからである。コポリマーの結晶化温度はコポリマーが潤滑剤組成物中でワックスと如何に相互作用するかに影響する。
本発明のコポリマーは種々のモノマーを含み得る。本発明の非限定実施態様において、コポリマーは約C6から約C24までの炭素原子を有するアルキル基を有する不飽和ジカルボン酸の第一モノマーエステルを含み、そのアルコールの側鎖中の炭素原子の平均数は8個より大から12個未満までの範囲である。
本発明の別の非限定実施態様において、コポリマーがフマレート-酢酸ビニル(“FVA”)コポリマーを含む。FVAコポリマーは当業界で公知であるようにジカルボン酸エステルから調製し得る。その他の好適なジカルボン酸エステルは下記の一般式により表し得る:
【0013】
【化1】

【0014】
式1
式中、RはC6-C18直鎖アルキル基であり、R1は水素及びCOORからなる群から選ばれ、かつR2は水素又はC1-C4アルキル基、例えば、メチルである。
【0015】
【化2】

【0016】
式2
式中、RはC6-C18直鎖アルキル基であり、R1は水素及びCOORからなる群から選ばれ、かつR2は水素又はC1-C4アルキル基、例えば、メチルである。
上記ジカルボン酸エステルの例として、フマル酸エステル及びマレイン酸エステル、例えば、フマル酸ジデシル、フマル酸デシル-ラウリル、フマル酸ジラウリル、フマル酸ラウリル-ヘキサデシル、マレイン酸ラウリル等が挙げられる。
本発明のこの実施態様において、FVAポリマーは40モル%から60モル%までのフマレート及び60モル%から40モル%までの酢酸ビニルを含み得る。ジアルキルフマレートはC6からC24までの範囲の50質量%から100質量%までのそのアルキル基を有し得る。
本発明の更に別の非限定実施態様において、コポリマーがマレエート酢酸ビニル(“MVA”)コポリマーを含む。本発明の別の実施態様において、コポリマーがFVAコポリマー及びMVAコポリマーの組み合わせを含む。
本発明のコポリマーは当業界で公知である種々の方法により生成し得る。本発明の非限定実施態様において、コポリマーは0.5モル分率の10個の炭素原子を有するアルコール及び0.5モル分率の12個の炭素原子を有するアルコールを含むジカルボン酸エステルの遊離基重合により生成される。
本発明の別の非限定実施態様において、コポリマーは当業界で公知であるようにジアルキルフマレート(DAF)及び酢酸ビニル(VA)を重合することにより生成される。
本発明の非限定実施態様において、コポリマーは0.10から1.00までの範囲の増粘効率(“TE”)を示す。
上記本発明のコポリマーの記載は質量当りの鎖長を延ばし、コポリマーの増粘効率を増大する目的のためにコポリマーの主鎖に付加された種々の“スペーサー”モノマーを含む。好適なスペーサーモノマーとして、6個未満の炭素を有する側鎖アルコールを有するマレイン酸エステルもしくはフマル酸エステル又は8個未満の炭素原子を有するアルファオレフィン(例えば、主鎖中に2個の炭素原子を有する1-オクテン)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の非限定実施態様において、スペーサーモノマーは下記の式により特定されるオレフィンである。
【0017】
【化3】

【0018】
式中、Xは水素;線状又は分岐アルキル基、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、1-ペンチル、1-ヘキシル;ハロゲン、例えば、塩化物、臭化物;又はアルキルエーテル、例えば、メトキシル、エトキシルである。
本発明の種々の非限定実施態様において、その他のポリマーが本発明のコポリマーと混合されて改良された増粘効率を与え得る。例えば、オレフィンコポリマーが本発明のコポリマーと混合し得る。別の例として、ポリイソプレン含有ポリマー(polyisoprene-containing polymer)が本発明のコポリマーと混合し得る。
或る場合には、本発明のコポリマーを変性し、こうしてそれが分散剤のような特性を有する(即ち、コポリマーが分散剤として機能するための極性を有する)ことが有益であり得る。こうして、本発明の非限定実施態様において、コポリマーは窒素種、例えば、N-ビニルイミダゾール、N-フェニル-1-フェニレンジアミン、ビニルピリジン等を含む。
窒素種を含む本発明のコポリマーは当業界で公知である種々の方法により生成し得る。例えば、本発明のコポリマーは窒素含有モノマー、例えば、メタクリル酸及びジメチルアミノプロピルアミンを反応させることにより生成されたアミド(これに限定されない)と共重合し得る。別の例として、本発明のコポリマーは窒素含有グラフト化剤、例えば、N-ビニルイミダゾール(これに限定されない)とグラフトし得る。
【0019】
本発明はまた(a)ベースオイル及び(b)少なくとも一種の上記コポリマーを含む動力伝達流体を含む。
本発明に従って、ベースオイルは一種以上の原料油を含む。好適なベースオイルはグループI原料油、グループII原料油、グループIII原料油及び/又はグループIV原料油、並びにこれらの混合物を含む。
本発明の非限定実施態様において、ベースオイルは5%までのグループI原料油を含む。
本発明の別の非限定実施態様において、ベースオイルはグループII原料油を含む。好適なグループII原料油の例はユーコン(Yukong)・リミテッド・コーポレーション(韓国)から市販されているユベース(Yubase)3である。
本発明の別の非限定実施態様において、ベースオイルはグループIII原料油を含む。好適なグループIII原料油の例はユーコン・リミテッド・コーポレーション(韓国)から市販されているユベース4及びユベース6である。
本発明の非限定実施態様において、ベースオイルは4.7センチストークス以下の粘度、例えば、3.5センチストークスから4.7センチストークスまでの粘度を有する。本発明の別の非限定実施態様において、ベースオイルは15%から35%までの範囲のノアク値を有する。ノアク値は油の揮発度を示し、ASTM D 5800に従って測定される。
本発明に従って、動力伝達流体は当業界で公知である一種以上の下記の成分を含み得る:金属洗剤、粘度改質剤、酸化抑制剤、摩擦改質剤、消泡剤、耐磨耗剤等。
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は一種以上の摩擦改質剤を含む。好適な摩擦改質剤として、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノ-オレエート;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、二量体化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;及びアルコキシル化アルキル置換モノ-アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化牛脂アミン及びエトキシル化牛脂エーテルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な摩擦改質剤が米国特許第7,300,910号(これは参考として本明細書に含まれる)に更に詳しく記載されている。
【0020】
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は一種以上の金属洗剤を含む。好適な金属洗剤として、金属の油溶性の中性スルホネート及び過塩基化(overbased)スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、及びナフテネート並びにその他の油溶性カルボキシレートが挙げられる。好適な金属洗剤が米国特許第7,300,910号(これは参考として本明細書に含まれる)に更に詳しく記載されている。
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は耐磨耗剤、例えば、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含む。金属はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルもしくは銅であってもよい。好適な耐磨耗剤が米国特許第7,300,910号(これは参考として本明細書に含まれる)に更に詳しく記載されている。
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は酸化抑制剤を含む。好適な酸化抑制剤の例として、ヒンダードフェノール、アルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化炭化水素又は硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、油溶性銅化合物並びにモリブデン含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な酸化抑制剤が米国特許第7,300,910号(これは参考として本明細書に含まれる)に更に詳しく記載されている。
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は一種以上の粘度改質剤を含む。好適な粘度改質剤の例として、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、並びにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー、並びにブタジエン及びイソプレンの部分水素化ホモポリマーが挙げられる。
本発明の非限定実施態様において、動力伝達流体は一種以上の消泡剤を含む。好適な消泡剤として、ポリシロキサン、例えば、シリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の潤滑剤組成物、例えば、動力伝達流体は改良された粘度法特性(即ち、低温における低粘度)を示す。例えば、本発明の潤滑剤組成物は20,000cP以下、又は15,000cP以下の-40℃におけるブルックフィールド粘度の要件を満たし得る。
【実施例】
【0021】
本発明が以下の非限定実施例により説明される。本発明のコポリマーを下記の様式で生成した。最初に、C10-C12フマレートモノマーを合成した。表1に示された反応体をディーン及びスタークエステル化のために組み立てられた2リットルのRBフラスコ中で合わせた。反応体を9時間にわたって撹拌しながら130℃に加熱した。
そのフラスコを冷却し、溶液を5%のNaOH水溶液500mLづつで2回洗浄し、続いて蒸留水500mLづつで3回洗浄した。トルエン層が生成した。トルエン層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、90分間にわたって100℃/0ミリバールでロータリーエバポレーターにかけた。上記工程はフマレートモノマー821.20gを生じた。
【0022】
〔表1〕 C10-C12フマレートモノマーの合成のための反応体

【0023】
1アナラートルエンはBDHケミカルズ社(プール、英国)から市販されている。
2デシルアルコール、ドデシルアルコール、フマル酸及びp-トルエンスルホン酸は全てシグマ-アルドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州)から市販されている。
次に、C10-C12フマレート-酢酸ビニルコポリマーをそのモノマーから合成した。先に調製されたフマレートモノマーをオートクレーブ反応器に仕込んだ。反応器の内容物を60℃に加熱してフマレートモノマーを融解し、次いで反応器を窒素でパージして酸素を除去した。次に、脱気した酢酸ビニル22.85g及びシクロヘキサン32.05gを反応器に添加した。オートクレーブをシールし、117℃に加熱し、窒素を使用して圧力を4.2バールに調節した。
反応器を安定化させた後、通常の高性能液体クロマトグラフィーポンプを使用して110分の期間にわたってシクロヘキサン中に5.78質量%のt-ブチルペルオキシペルピバレートを含む開始剤溶液を一定速度でオートクレーブに添加した。反応器の内容物を15分間放置し、次いで500mLの丸底フラスコに空にした。得られる溶液を90分間にわたって100℃で20ミリバールの真空でロータリーエバポレーターでストリッピングした。上記工程はコポリマー146.33gを生じた。
幾つかの分析試験をそのコポリマーについて行なった。コポリマーの比粘度を40℃でトルエン中で容量%当り2質量%で測定した。測定された比粘度は0.23であった。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用してコポリマーのMwを測定した。測定されたMwは約30,000ダルトンであった。
本発明の動力伝達の性能特性を測定するために、当業界で公知である技術を使用してコポリマーをデクスロンVI型動力伝達流体にブレンドした。流体中の“アドパック”は通常の量のスクシンイミド分散剤、酸化防止剤、耐磨耗剤、摩擦改質剤、腐食抑制剤、消泡剤及び希釈油を含む。例1-5の組成物を表2に示す。
【0024】
〔表2〕 本発明のコポリマーで配合された動力伝達流体の組成物

【0025】
*インフィネウムV385及びビスコプレックス1-300は両方ともローマックス・オイル・アディチブズから市販されている流動点降下剤である。
例1-5の動力伝達流体の種々の性能特性を測定した。KV100及びKV40をASTM D 445に従って測定した。粘度指数をASTM D 2270に従って測定した。-40℃におけるブルックフィールド粘度をASTM D 2983に従って測定した。
例示の動力伝達流体の性能特性を下記の表3に要約する。
【0026】
〔表3〕 例示の動力伝達流体の性能特性

【0027】
結論
例2、3及び4は本発明の動力伝達流体の例示である。例2及び4は平均11個の炭素原子を有するアルコールを含むコポリマーを含む。例3はまた平均11個の炭素原子を有するアルコールを含むコポリマーを含み、マレイン酸ジメチルスペーサーを含む。例2、3及び4は全て20,000cP未満の-40℃におけるブルックフィールド粘度を示す。
例1及び5は本発明の範囲外にある動力伝達流体の例示である。例1は側鎖中に平均8個の炭素原子を有するアルコールを含むコポリマーを含む。例5は側鎖中に平均12個の炭素原子を有するアルコールを含むコポリマーを含む。例1及び5は30,000cPより大きい-40℃におけるブルックフィールド粘度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式:
【数1】

(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数を有する側鎖を有するアルコールの混合物を含む、動力伝達流体の粘度性能を改良するためのコポリマー。
【請求項2】
約C6から約C24までの炭素原子を有するアルキル基を有する不飽和ジカルボン酸の第一モノマーエステルを含む、請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
コポリマーがFVAコポリマーを含む、請求項1記載のコポリマー。
【請求項4】
FVAコポリマーがジカルボン酸エステルから調製される、請求項3記載のコポリマー。
【請求項5】
FVAコポリマーが40〜60モル%のジアルキルフマレート及び60〜40モル%の酢酸ビニルである、請求項3記載のコポリマー。
【請求項6】
ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はスチレン-マレエートコポリマーを含む、請求項1記載のコポリマー。
【請求項7】
コポリマーがマレイン酸ジメチル、1-ヘキセン及びマレイン酸ジエチルからなる群から選ばれたスペーサーモノマーを含む、請求項1記載のコポリマー。
【請求項8】
FVAポリマー及びオレフィンスペーサーモノマーを含む、請求項3記載のコポリマー。
【請求項9】
FVAポリマー及びポリイソプレン含有スペーサーモノマーを含む、請求項3記載のコポリマー。
【請求項10】
FVAポリマーが窒素種を含む、請求項3記載のコポリマー。
【請求項11】
窒素種がビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール及びN-フェニル-1-フェニレンジアミンからなる群から選ばれる、請求項10記載のコポリマー。
【請求項12】
コポリマーが0.10から1.00までの範囲の増粘効率(“TE”)を示す、請求項1記載のコポリマー。
【請求項13】
(a)グループII原料油、グループIII原料油及び/又はグループIV原料油、並びにこれらの混合物を含むベースオイル、並びに
(b) 下記の式:
【数2】

(式中、Xiはアルコール(i)のモル分率であり、Cniはアルコール(i)中の炭素原子の数を表し、jはコポリマー中のアルコール中の炭素の最低数であり、少なくとも6である必要があり、かつzはアルコール中の炭素の最高数である)
により特定される8個より大から12個未満までの範囲の炭素の平均数を有する側鎖を有するコポリマー
を含む動力伝達流体組成物。
【請求項14】
ベースオイルが5%までのグループI原料油を含む、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項15】
ベースオイルがグループII原料油を含む、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項16】
ベースオイルがグループIII原料油を含む、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項17】
原料油が4.7未満の粘度を有する、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項18】
当業界で公知である一種以上の下記の成分:洗剤、金属錆抑制剤、粘度指数改良剤、腐食抑制財、酸化抑制剤、摩擦改質剤、分散剤、消泡剤及び耐磨耗剤を含む、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項19】
耐磨耗剤がジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩である、請求項13記載の動力伝達流体。
【請求項20】
流体が20,000cP以下の-40℃におけるブルックフィールド粘度を示す、請求項13記載の動力伝達流体。

【公開番号】特開2010−150548(P2010−150548A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290950(P2009−290950)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】