説明

改質ポリアミドイミド樹脂、これを用いた接着剤およびプリント回路基板

【課題】低温接着が可能で、接着性と耐熱性並びに高温高湿下での耐マイグレーション特性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤組成物及び接着シート並びにこれらを用いたプリント回路基板を提供すること。
【解決手段】ポリアミドイミドに、ポリ(アクリロニトリルーブタジエン)とダイマー酸またはポリエステルが共重合された改質ポリアミドイミド樹脂であって、該改質ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上、対数粘度が0.1dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下であることを特徴とする改質ポリアミドイミド樹脂、該樹脂に架橋剤が配合された耐熱性接着剤、該接着剤から成形された接着剤シートおよびそのシートを用いたプリント回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な改質ポリアミドイミド樹脂、これを用いた耐熱性接着剤およびプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より耐熱性接着剤としてはポリイミド系樹脂やエポキシ樹脂等を主成分とする材料が用いられてきたが、これらの樹脂を用いる際にいくつかの問題があった。
その一つが耐熱性と低温接着性の両立が挙げられる。一般にポリイミドは耐熱性に優れるが故に高温で接着させる強力な設備が必要であり、低温で接着できるエポキシ系接着剤は耐熱性に劣るという問題があった。
上記の低温接着性と耐熱性の両立についての具体的な方法がいくつか開示されている。例えば、耐熱性エポキシ樹脂、マレイミド樹脂を用いるなどの方法があるが、これらの樹脂はその硬化密度の高さから脆いため、用途が限られる。また、特許文献1には特定構造を有するポリエーテルイミドにエポキシ樹脂を配合させて低温接着性と耐熱性を両立させることが示されているが、その内容によれば接着時間を数分にしようとすれば200℃の接着温度が必要であり充分な低温接着性とは言い難い。また、ポリアミドイミド系の耐熱接着剤も提案されており、たとえば特許文献2や特許文献3にはアクリロニトリルーブタジエンが共重合されたポリアミドイミド及びこれを用いた半導体用接着剤が、また特許文献4や特許文献5にはダイマー酸が共重合されたポリアミドイミド及びこれを用いた半導体用接着剤が提案されているが、前者は低温接着性や耐ハンダ性は優れるが、高温高湿下で銅箔の回路部分がデンドライトを生成してマイグレーションを起こしやすいという欠点があり、後者は樹脂の柔軟性に欠けるため接着性が不足するなどの欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−99280号公報
【特許文献2】特開平11―21455号公報
【特許文献3】特開2001−11421号公報
【特許文献4】特開平11―21454号公報
【特許文献5】特開2001−11420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は耐熱性と低温接着性及び耐マイグレーション性を兼ね揃えた接着剤、特にプリント回路板に有用な接着剤およびそのシートさらにはこれらを用いたプリント回路版を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を達成するに到った。すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)ポリアミドイミドに、ポリ(アクリロニトリルーブタジエン)とダイマー酸またはポリエステルが共重合された改質ポリアミドイミド樹脂であって、該改質ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上、対数粘度が0.1dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下であることを特徴とする改質ポリアミドイミド樹脂。
(2)改質ポリアミドイミド樹脂がエタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンの1種又は2種以上の混合溶剤に溶解することを特徴とする前記(1)に記載の改質ポリアミドイミド樹脂。
(3)前記(1)または(2)に記載の改質ポリアミドイミド樹脂に、架橋剤として多官能エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物の一種又は2種以上が配合された耐熱性接着剤。
(4)前記(3)に記載の耐熱性接着剤から成形された接着剤シート。
(5)前記(3)または(4)に記載の耐熱性接着剤またはそのシートを用いたプリント回路基板。
【発明の効果】
【0006】
本発明改質ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性及び低温接着性及び耐マイグレーション性に優れ、かつ低沸点溶剤に溶解するため、それから得られる接着剤を用いる際には、その作業性に優れ、プリント回路板等へ好適に採用されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂は酸クロリド法又はイソシアネート法等公知の方法で製造することができる。
ポリアミドイミド樹脂の製造に用いられる酸成分としてはトリメリット酸及びこれの無水物、塩化物の他にピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、修酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ジカリュボキシポリ(スチレンーブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、1,3シクロヘキサンジカルボン酸、4,4‘ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられこれらの中では反応性、耐熱性、接着性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物が最も好ましく、その一部をジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)とダイマー酸で置き換えたものが更に好ましい。
【0008】
ポリアミドイミド樹脂の製造に用いられるジアミン(ジイソシアネート)としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4シクロヘキサンジアミン、1,3シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4‘ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン、4,4‘ジアミノジフェニルエーテル、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4トリレンジアミン、2,6トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、ジアミノポリ(アクリロニトリルーブタジエン)及びこれらのジイソシアネートが挙げられこれらの中では耐熱性、接着性、溶解性などから4,4‘ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、イソホロンジアミン(ジイソシアネート)及びジアミノポリ(アクリロニトリルーブタジエン)等が好ましい。
【0009】
本発明改質ポリアミドイミド樹脂には上記の酸成分とジアミン(ジイソシアネート)成分の他にジオール成分を共重合することができる。ジオール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトタエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエステルジオール、カーボネートジオール等が挙げられ、これらの中では接着性、溶解性からポリエステルジオールが特に好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールも好ましい。
【0010】
本発明改質ポリアミドイミド樹脂は回路基板にしたときの耐熱性、耐ハンダ特性、低温接着性と耐マイグレーション性の全てを満足させるためにアクリロニトリルーブタジエン成分とダイマー酸またはポリエステルが共重合されていることが必要である。この場合、アクリロニトリルーブタジエン成分の含有量はポリアミドイミド樹脂全体中、10〜60重量%、好ましくは15〜40重量%、ダイマー酸またはポリエステル成分の含有率は5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。アクリロニトリルーブタジエン成分が10重量%以下では耐ハンダ、特に鉛フリーの290℃以上の耐ハンダ性が不足し、60重量%以上では耐マイグレーション性が低下する。ダイマー酸またはポリエステル成分が5重量%以下では低温接着性が悪くなり、60重量%以上では耐熱性、耐ハンダ性が低下して好ましくない。
【0011】
本発明改質ポリアミドイミド樹脂はN,N‘ジメチルアセトアミドやN−メチルー2−ピロリドン,N,N’ジメチルホルムアミド、γ―ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。
また、概重合溶液を重合溶液と混和しない溶剤、好ましくはアセトンや水の中に投入して重合溶剤を除去、洗浄、乾燥して他の溶剤に再溶解して用いることができる。再溶解に用いる溶剤としてはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。
【0012】
本発明の耐熱性接着剤の応用は特に制限されないが、最も有用な用途はプリント回路板関連用接着剤であり、具体的にはポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、ガラスーエポキシシート、フェノール樹脂シート等の絶縁基材に銅箔やアルミ箔等を張り合わせる接着剤、カバーレイフィルム用接着剤、回路基板の一部を補強板で強化する場合の接着剤、回路基板に直接半導体チップを搭載する場合の接着剤等が挙げられる。
いずれにしても近年の配線の高密度化や鉛フリー半田志向に対応するには本接着剤組成物に主たる成分として用いられるポリアミドイミド樹脂は低温接着性と耐熱性及び接着強度を満足させる必要があり、このためにはガラス転移温度は120℃以上、対数粘度は0.1dl/g以上、引っ張り弾性率は1500MPa以下が好ましい。ガラス転移温度が120℃以下の場合は耐熱性が不充分で対数粘度が0.1dl/g以下であったり、引っ張り弾性率が1500MPa以上になると樹脂が脆くなり接着強度が不足する。
【0013】
本発明の耐熱性接着剤には耐熱性を損なわない範囲で低温接着性や接着強度を向上させるために架橋剤を配合することができる。架橋剤としては制限はないが、2官能以上の多官能のエポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられ、その配合量はポリアミドイミド樹脂100部に対して1〜40部、好ましくは3〜20部である。架橋剤が1部以下では低温接着性や接着強度の改良は見られず、40部以上では耐熱性が低下して好ましくない。
【0014】
本発明の耐熱性接着剤には、本発明の内容を損なわない範囲で無機、有機の顔料、染料、帯電防止剤、レベリング剤及びポリアミドイミド以外の樹脂、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等を適宜配合することができる。
【0015】
本発明の耐熱性接着剤の使用方法の一つとして、ポリアミドイミド樹脂溶液に架橋剤や添加剤などを配合した溶液を被着体に塗布、乾燥後もう一方の被着体と重ね合わせて加熱ロール又はヒートプレスにより圧着させ、必要により加熱硬化処理を行うことが挙げられる。
この場合、接着剤層中に溶剤が残ると接着加工時に発砲したり、耐熱性そのものが低下して好ましくない結果になる。上記、ポリアミドイミド樹脂の製造で示したように、高沸点の重合溶剤をアルコール、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン等の低沸点溶剤に置き換えたものを使用するのが好ましい。
【0016】
もう一つの使用方法として、本発明の耐熱性接着剤組成物溶液をポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム、シリコーンやワックス処理したポリエステルフィルや紙等の離型基材に塗布、乾燥して得られる接着剤フィルムやシートを2種類の被着体に挟み込み、加熱ロールやヒートプレスで加熱圧着、必要により硬化させることが挙げられる。
この場合も塗布法と同様、残溶剤のないシートを得るには低沸点溶剤に溶解したものを使用するのが好ましい。
【実施例】
【0017】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。
尚、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
・ ガラス転移温度
接着剤溶液をポリプロピレンフィルムに乾燥膜厚が約30μmとなるように塗布、乾燥した後ポリプロピレンフィルムから剥離したフィルムを・・・社製動的粘弾性測定装置を用い、110Hz周波数で測定を行い、貯蔵弾性率の変曲点から求めた。
【0018】
・ 対数粘度
乾燥ポリマー0.5gを100mlのNMPに溶解した溶液を25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
・ 接着力
ポリアミドイミド樹脂溶液にエピコート152(ジャパンエポキシ社製エポキシ化合物)をポリアミドイミド樹脂固形分に対して10部添加した溶液を電解銅箔に厚みが約10μmとなるように塗布、130℃で10分乾燥後、塗膜面同士を重ねて150℃、20kg/c30秒間プレス熱圧着し0秒間プレス熱圧着し、更に150℃で1時間熱処理を行ったサンプルを東洋ボールドウイン社製テンシロンで剥離強度を測定した。
【0019】
・ 引っ張り弾性率
ガラス転移温度を測定したのと同じフィルムを東洋ボールドウイン社のテンシロンを用いて、引っ張り速度200mm/分で測定した。
・ 耐半田性
接着力を測定したのと同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察した。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0020】
6.耐マイグレーション性
18μm電解銅箔を用いた銅張積層板バイロフレックス(東洋紡製)にライン/スペースが70/70μmとなるように回路を形成し、ポリアミドイミド樹脂溶液にエピコート152を10部配合した溶液で絶縁コートし、100℃で10分、次いで130℃で30分熱処理したサンプルの端子間に50Vの電圧を印加した状態で85℃、85%HRの雰囲気に2週間放置した後の絶縁抵抗値の変化を測定した。
判定は以下のとおり。
○:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以上
×:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以下

【0021】
実施例1(ポリアミドイミド樹脂Aおよび接着剤aの製造)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)0.7モル、ダイマー酸0.25モル、分子量3500のジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)(宇部興産CTBN1300×13)0.05モルとジフェニルメタンー4,4’−ジイソシアネート(MDI)1.02モルを固形分濃度が40%となるようにN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と共に仕込み、攪拌しながら120℃に昇温して約2時間、更に150℃に昇温して約3時間反応させた。この溶液を冷却しながらトルエンを加え固形分濃度を30%とした。得られたポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は164℃、対数粘度は0.47dl/gであった。このポリマー溶液をポリプロピレンフィルム上にキャストして100℃で約10分乾燥させて0.03mm厚みのフィルムを得た。このフィルムの引っ張り弾性率は1050MPaであった。
次に、得られたポリアミドイミド樹脂A溶液100gにフェノールノボラック型エポキシ化合物(ジャパンエポキシ製エピコート152)を3g配合して接着剤aとした。
【0022】
実施例3(ポリアミドイミド樹脂Bおよび接着剤bの製造)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.83モルとダイマー酸0.1モル、CTBN1300×13を0.07モルとMDI1.02モルを固形分濃度が40%となるようにDMAcと共に仕込み、攪拌しながら120℃に昇温して約2時間、150℃で約3時間反応させた。この溶液を冷却しながらトルエンを加え、固形分濃度が30%とした。得られたポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は178℃、対数粘度は0.46dl/gであった。ポリアミドイミド樹脂Aと同じ方法で作成したフィルムの引っ張り弾性率は960MPaであった。
次に、得られたポリアミドイミド樹脂Bを実施例1と同様にして接着剤bを得た。
【0023】
実施例6(ポリアミドイミド樹脂Cおよび接着剤cの製造)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.92モル、分子量2000のポリエステルポリオール(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/ヘキサンジオール=100/75/25モル)0.03モル、CTBN1300×13を0.05モルとMDI、1.02モルを固形分濃度が40%となるようにDMAcと共に仕込み、攪拌しながら120℃に昇温して2時間、更に150℃に昇温して約5時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は162℃、対数粘度は0.38dl/gであった。尚、このポリアミドイミド樹脂溶液から作成したフィルムの引っ張り弾性率は1260MPaであった。
次に、得られたポリアミドイミド樹脂Cを実施例1と同様にして接着剤cを得た。
【0024】
実施例8(ポリアミドイミド樹脂Dおよび接着剤dの製造)
ポリアミドイミド樹脂Aを製造する方法で、MDIをイソホロンジイソシアネート(IPDI)に、DMAcをγ―ブチロラクトンに変えた固形分濃度が50%の溶液にフッ化カリウム0.01モル添加して、120℃で2時間反応させ、さらに190℃に昇温して約3時間反応させた。冷却しながらDMAcを加えて固形分濃度を30%とし、この溶液をイオン交換水中に投入して凝固させ、充分洗浄した後60℃で20時間乾燥を行い、固形樹脂を得た。この固形樹脂をテトラヒドロフランに固形分濃度が30%となるように室温で溶解した。このポリアミドイミド樹脂Dのガラス移転温度は155℃、対数粘度は0.48dl/g、引っ張り弾性率は990MPaであった。
次に、得られたポリアミドイミド樹脂Dを実施例1と同様にして接着剤dを得た。
【0025】
実施例10(ポリアミドイミド樹脂Eおよび接着剤eの製造)
ポリアミドイミド樹脂Cの製造において分子量2000のポリエステルを分子量2000のポリカプロラクトン(ダイセル社製プラクセル220)に変えた以外はポリアミドイミド樹脂Cと同じ条件でポリアミドイミド樹脂Eを製造した。このポリアミドイミド樹脂Eのガラス転移温度は147℃、対数粘度は0.47dl/gで引っ張り弾性率は1120MPaであった。
次に、得られたポリアミドイミド樹脂Eを実施例1と同様にして接着剤eを得た。
【0026】
実施例4、11(接着剤b’、e’の製造)
ポリアミドイミド樹脂B,E溶液100gに3官能イソシアネート化合物コロネートEH(日本ポリウレタン製)3g配合してそれぞれ接着剤b’、e’とした。
【0027】
実施例2、5、7、9、12(シート化)
接着剤a,b,c,d,eをそれぞれ50μmのポリプロピレンフィルムに塗布して、60℃で5分、130℃で10分乾燥した後剥離して膜厚20μmの接着シートa’’,b’’,c’’,d’’,e’’を得た。
【0028】
実施例13(フレキシブル銅張り積層板製造例)
接着剤a,b,c,d,e,b’、e’をそれぞれ1/2oz電解銅箔に間隙100μmで塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥した後接着剤面にポリイミドフィルムを重ね合わせて180℃のロールラミネーターで張り合わせた後、ロールに巻いた状態で220℃の窒素ガスオーブン中に10時間放置してフレキシブル銅張り積層板を得た。
【0029】
参考例1(ラミネーション例1)
接着剤bを用いて作成した銅張り積層板のポリイミドフィルム面に接着シートa’’,b’’,c’’,d’’,e’’各々を介して0.3mmのアルミ板製補強板を重ね合わせて、170℃のヒートプレスを用い、20kgf/cm2の圧力で20分間圧着した。その後同じ温度で加圧下、1時間熱処理を行った。
【0030】
参考例2(ラミネーション例2)
東洋紡製銅張積層板バイロフレックスを用いて、ライン/スペースが70μm/70μmのマイグレーションテスト用回路板に接着剤a,b,c,d,eを約20μmとなるように塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥後更に150℃で1時間加熱、硬化させた。これを80℃、85%RHの環境で電極間に10Vの電圧をかけ、100時間放置後の絶縁性を評価した。
【0031】
比較例1、2(ポリアミドイミド樹脂F、接着剤fおよび接着シートf’’の製造)
実施例1において原料の仕込みをTMA0.875モル、CTBN1300×13を0.125モル、MDI1.02モルとした以外は全て実施例1と同じ条件で製造して得られたガラス転移温度が98℃、対数粘度が0.55dl/g、フィルムにしたときの引っ張り弾性率が555MPaのポリアミドイミド樹脂FのDMAC30%溶液100gにエピコート152を3g配合して製造した接着剤f及びそのシートf’’を用いて参考例1および2と同様に銅張り積層板の製造および補強板貼り合わせを行った。
【0032】
比較例3、4(ポリアミドイミド樹脂G、接着剤gおよび接着シートg’’の製造)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツクチフラスコにTMA0.25モル、エチレングリコールジトリメリテート0.75モルとジフェニルメタン4,4’ジイソシアネート1モルを固形分濃度が50%となるようにγ−BLとともに仕込み、150℃で2時間、200℃で5時間反応させた。冷却後、固形分濃度が25%となるようにシクロヘキサノンで希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂Gのガラス転移温度は216℃で対数粘度は0.45dl/gであった。この樹脂溶液をポリエステルフィルム上にキャストして100℃で乾燥後、ポリエステルフィルムから剥離して金属製枠に固定して200℃で20時間乾燥して作成したフィルムの引っ張り弾性率は2640MPaであった。
このポリアミドイミド樹脂Gの30%溶液100gにエピコート152を3g配合した接着剤組成物g及びそのシートg’’を用いて参考例1および2と同様に銅張り積層板の製造および補強板貼り合わせを行った。
【0033】
比較例5、6(ポリアミドイミド樹脂Hおよび接着剤hの製造)
実施例1においてMDIの仕込みを0.9モルにした以外は全て実施例1と同じ方法でポリアミドイミド樹脂Hを製造した。得られた樹脂の対数粘度は0.08dl/gであった。この樹脂は分子量が低く、フィルムを形成しないためガラス転移温度や引っ張り弾性率は測定できなかった。(組成が同じのポリアミドイミド樹脂Bに近いと予想される)この樹脂の30%溶液100部にエピコート152を3部配合した接着剤hを用いて銅張り積層板の製造を行った。
【0034】
上記例の結果をまとめて表1に示す。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
実施例の結果からも明らかなように本発明によれば、金属やポリイミドフィルムへの接着性と耐半田性及び高温高湿下での耐マイグーション特性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤及び接着シートならびにこれらを用いたプリント回路基板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドイミドに、ポリ(アクリロニトリルーブタジエン)とダイマー酸またはポリエステルが共重合された改質ポリアミドイミド樹脂であって、該改質ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上、対数粘度が0.1dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下であることを特徴とする改質ポリアミドイミド樹脂。
【請求項2】
改質ポリアミドイミド樹脂がエタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンの1種又は2種以上の混合溶剤に溶解することを特徴とする請求項1に記載の改質ポリアミドイミド樹脂。
【請求項3】
請求1または2に記載の改質ポリアミドイミド樹脂に、架橋剤として多官能エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物の一種又は2種以上が配合された耐熱性接着剤。
【請求項4】
請求項3に記載の耐熱性接着剤から成形された接着剤シート。
【請求項5】
請求項3または4に記載の耐熱性接着剤またはそのシートを用いたプリント回路基板。

【公開番号】特開2008−208295(P2008−208295A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48711(P2007−48711)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】