説明

放射線検出器

【課題】光導電層の劣化を抑制する。
【解決手段】延長電極部431が、保護部材442の内壁より外側で、導線と電気的に接続されているため、光導電層404へ付与される圧力が軽減され、光導電層404の劣化を抑制できる。また、延長電極部431は、保護部材442の内壁より外側で、高電圧線432と電気的に接続されるので、保護部材442で光導電層404を囲んだ状態において、延長電極部431と高電圧線432の接続作業が可能となるので、接続作業中においても光導電層404の劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のX線撮影装置などに用いられる放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器としては、X線等の放射線がまず光に変換された後にその変換光がさらに光電変換で電気信号に変換される間接変換型の放射線検出器と、入射した放射線が電荷変換層により直に電気信号に変換される直接変換型の放射線検出器と、が知られている。
【0003】
直接変換型の放射線検出器としては、特許文献1及び特許文献2に開示される放射線検出器が公知である。特許文献1及び特許文献2の放射線検出器では、アモルファスセレン等で形成された電荷変換層上に上部電極部を形成し、外部から引き込んだ高圧線を上部電極上まで引き上げ、電荷変換層上で高電圧線が上部電極部に接続されている。
【特許文献1】特開2005−86059号公報
【特許文献2】特開2005−286183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の構成では、製造時における上部電極部と高圧電線との接続作業において、電荷変換層が圧迫されたり、作業工具の接触によって生じる傷等のダメージを受けたりして、電荷変換層が劣化する。
【0005】
また、その後の使用時の状況により、電荷変換層上に配置された高電圧線が電荷変換層を圧迫する。この圧力により、電荷変換層としてのアモルファスセレンが結晶化を引き起こして劣化し、放射線の検出精度が低下する。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、電荷変換層の劣化を抑制できる放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る放射線検出器は、放射線が入射されることにより電荷を生成する電荷変換層と、前記電荷変換層下に設けられ、前記電荷変換層が生成した電荷を収集する下部電極部を有する基板と、前記基板の外周部上に立設され、前記電荷変換層を囲む保護部材と、前記電荷変換層上に積層され、前記電荷変換層へバイアス電圧を印加するための上部電極部と、前記上部電極部から、前記保護部材の内壁よりも外側へ延長された延長電極部と、前記内壁よりも外側で前記延長電極部と電気的に接続され、前記延長電極部から前記上部電極部を介して前記電荷変換層へバイアス電圧を印加する導線と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、延長電極部は、上部電極部から保護部材の内壁よりも外側へ延長されており、延長電極部に電気的に接続された導線により、延長電極部から上部電極部を介して電荷変換層へバイアス電圧が印加される。電荷変換層は、放射線が入射されることにより、電荷を生成する。電荷変換層が生成した電荷は、下部電極部により収集される。
【0009】
なお、電荷変換層が生成した電荷とは、電荷変換層が直接生成したもの以外に、電荷変換層が間接的に生成したものも含み、例えば、電荷変換層が直接生成した電荷に対応して生成される電荷も含む概念である。
【0010】
ここで、請求項1の構成では、延長電極部は、保護部材の内壁よりも外側で導線と電気的に接続されており、電荷変換層上で導線との接続がなされる構成に比して、電荷変換層へ付与される圧力が軽減され、電荷変換層の劣化を抑制できる。
【0011】
また、延長電極部は、保護部材の内壁よりも外側で導線と電気的に接続されるので、保護部材で電荷変換層を囲んだ状態において、延長電極部と導線の接続作業が可能となるので、接続作業中においても電荷変換層の劣化を抑制できる。
【0012】
本発明の請求項2に係る放射線検出器は、請求項1の構成において、前記導線は、前記保護部材内に配置され、前記保護部材内で前記延長電極部と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0013】
保護部材の外側で導線と延長電極部との接続をする場合には、別途、絶縁性を確保するため、導線と延長電極部との接続部を被覆する部材が必要となるが、請求項2の構成では、保護部材内で接続するので、導線と延長電極部との接続部を保護部材で被覆でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0014】
本発明の請求項3に係る放射線検出器は、請求項1又は請求項2の構成において、前記保護部材は、絶縁性を有する絶縁性部材であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、保護部材は、絶縁性を有する絶縁性部材であるので、導線と延長電極部との接続部の絶縁性を確保することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る放射線検出器は、請求項1〜3のいずれか1項の構成において、前記基板と前記延長電極部との間に形成され、前記基板と前記延長電極部との間を所定間隔に維持する中間部材を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、基板と延長電極部との間に形成された中間部材が、基板と延長電極部との間を所定間隔に維持するので、延長電極部と基板の下部電極との絶縁性を確保できる。
【0018】
本発明の請求項5に係る放射線検出器は、請求項1〜4のいずれか1項の構成において、前記電荷変換層と前記上部電極部との間から前記延長電極部と前記基板との間へわたって形成され、前記延長電極部と前記基板との接合力を高める中間層を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、延長電極部と基板との接合力を高める中間層は、電荷変換層と上部電極部との間から延長電極部と基板との間へわたって形成されており、延長電極部と基板との接合力を高める部材が延長電極部と基板との間から電荷変換層下へ潜る構成に比して、延長電極部から下部電極への沿面放電を抑制し、電荷変換層下に設けられた下部電極部に対する絶縁性を確保できる。
【0020】
本発明の請求項6に係る放射線検出器は、請求項1〜5のいずれか1項の構成において、前記上部電極部の上方に設けられ、外周部が前記保護部材に接合され、その前記保護部材との接合部分が前記電荷変換層の外側に配置されたカバー部材と、前記カバー部材と前記上部電極部との間に充填された充填部材と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、カバー部材と保護部材との接合部分が、電荷変換層の外側に配置されているため、カバー部材と保護部材との接合部分で発生するストレスが充填部材を介して電荷変換層に伝わるのを抑制する。これにより、電荷変換層が受ける圧力を低減し、電荷変換層の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としたので、電荷変換層の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る放射線検出器の実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0024】
本実施形態に係る放射線検出器は、X線撮影装置等に使用されるものであり、放射線の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層を含む静電記録部を備えてなり、画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、記録した画像情報を表す画像信号を出力するものである。
【0025】
放射線検出器としては、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用して読み取る、いわゆる光読取方式の放射線検出器と、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)などの電気的スイッチを1画素ずつオン・オフすることにより読み取る方式(以下、TFT方式という)の放射線検出器等がある。
【0026】
(TFT方式の放射線検出器の構成)
まず、TFT方式の放射線検出器について説明する。図1は、TFT方式の放射線検出器の全体構成を示す概略図である。図2は、放射線検出器の要部構成を示すものであり、ガラス基板上に積層された各部を示す図である。
【0027】
本実施形態に係る放射線検出器400は、図1及び図2に示すように、放射線としてのX線が入射されることにより電荷を生成する電荷変換層として、電磁波導電性を示す光導電層404を備えている。光導電層404としては、暗抵抗が高く、X線照射に対して良好な電磁波導電性を示し、真空蒸着法により低温で大面積成膜が可能な非晶質(アモルファス)材料が好まれ、アモルファスSe(a-Se)膜が用いられている。また、アモルファスSeにAs、Sb、Geをドープした材料が熱安定性に優れ、好適な材料である。
【0028】
光導電層404上には、光導電層404へバイアス電圧を印加するための上部電極部として、単一のバイアス電極401が積層されている。このバイアス電極401と後述する延長電極部431とから電極層430が構成されている。バイアス電極401には、例えば、金(Au)が用いられる。
【0029】
光導電層404下には、下部電極部としての複数の電荷収集電極407aが形成されている。各電荷収集電極407aは、図2に示すように、それぞれ電荷蓄積容量407c及びスイッチ素子407bに接続されている。
【0030】
また、光導電層404とバイアス電極401との間には、中間層が設けられている。中間層とは、上部電極と電荷変換層の間に存在する層であり,電荷注入阻止層(電荷蓄積とダイオード形成を包含)を兼ねても良い。電荷注入阻止層として、抵抗層や絶縁層が用いられる場合もあるが、好ましくは、電子に対しては導電体でありながら正孔の注入を阻止する正孔注入阻止層や、正孔に対しては導電体でありながら電子の注入を阻止する電子注入阻止層が用いられる。正孔注入阻止層としては、CeO、ZnS、SbSを用いることができる。このうちZnSは低温で形成できて望ましい。電子注入阻止層としては、SbS、CdS、TeをドープされたSe,CdTe、有機物系の化合物等がある。なお、SbSは設けられる厚みにより、正孔注入阻止層にも電子注入阻止層にもなる。本実施例では、バイアス電極が正極であるため、中間層として、正孔注入阻止層402が設けられている。また、光導電層404と電荷収集電極407aとの間には、本発明の中間層ではないが、電子注入阻止層406が設けられている。
【0031】
また、正孔注入阻止層402と光導電層404との間と、電子注入阻止層406と光導電層404との間とには、それぞれ結晶化防止層403、405が設けられている。結晶化防止層403、405としてはGeSe、GeSe、SbSe、a-AsSeや、Se−As、Se−Ge、Se−Sb系化合物等を用いることが可能である。
【0032】
なお、電荷収集電極407aとスイッチ素子407bと電荷蓄積容量407cとからアクティブマトリックス層407が形成され、ガラス基板408とアクティブマトリックス層407とからアクティブマトリックス基板450が構成されている。
【0033】
図3は、放射線検出器400の1画素単位の構造を示す断面図であり、図4は、その平面図である。図3及び図4に示す1画素のサイズは、0.1mm×0.1mm〜0.3mm×0.3mm程度であり、放射線検出器全体としてはこの画素がマトリクス状に500×500〜3000×3000画素程度配列されている。
【0034】
図3に示すように、アクティブマトリックス基板450は、ガラス基板408、ゲート電極411、電荷蓄積容量電極(以下、Cs電極と称する)418、ゲート絶縁膜413、ドレイン電極412、チャネル層415、コンタクト電極416、ソース電極410、絶縁保護膜417、層間絶縁膜420、および電荷収集電極407aを有している。
【0035】
また、ゲート電極411やゲート絶縁膜413、ソース電極410、ドレイン電極412、チャネル層415、コンタクト電極416等により薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子407bが構成されており、Cs電極418やゲート絶縁膜413、ドレイン電極412等により電荷蓄積容量407cが構成されている。
【0036】
ガラス基板408は支持基板であり、ガラス基板408としては、例えば、無アルカリガラス基板(例えば、コーニング社製#1737等)を用いることができる。ゲート電極411及びソース電極410は、図4に示すように、格子状に配列された電極配線であり、その交点には薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)からなるスイッチ素子407bが形成されている。
【0037】
スイッチ素子407bのソース・ドレインは、各々ソース電極410とドレイン電極412とに接続されている。ソース電極410は、信号線としての直線部分と、スイッチ素子407bを構成するための延長部分とを備えており、ドレイン電極412は、スイッチ素子407bと電荷蓄積容量407cとをつなぐように設けられている。
【0038】
ゲート絶縁膜413はSiNxやSiOx等からなっている。ゲート絶縁膜413は、ゲート電極411及びCs電極418を覆うように設けられており、ゲート電極411上に位置する部位がスイッチ素子407bにおけるゲート絶縁膜として作用し、Cs電極418上に位置する部位は電荷蓄積容量407cにおける誘電体層として作用する。つまり、電荷蓄積容量407cは、ゲート電極411と同一層に形成されたCs電極418とドレイン電極412との重畳領域によって形成されている。なお、ゲート絶縁膜413としては、SiNxやSiOxに限らず、ゲート電極411及びCs電極418を陽極酸化した陽極酸化膜を併用することもできる。
【0039】
また、チャネル層(i層)415はスイッチ素子407bのチャネル部であり、ソース電極410とドレイン電極412とを結ぶ電流の通路である。コンタクト電極(n+層)416はソース電極410とドレイン電極412とのコンタクトを図る。
【0040】
絶縁保護膜417は、ソース電極410及びドレイン電極412上、つまり、ガラス基板408上に、ほぼ全面(ほぼ全領域)にわたって形成されている。これにより、ドレイン電極412とソース電極410とを保護すると共に、電気的な絶縁分離を図っている。また、絶縁保護膜417は、その所定位置、つまり、ドレイン電極412においてCs電極418と対向している部分上に位置する部位に、コンタクトホール421を有している。
【0041】
電荷収集電極407aは、非晶質透明導電酸化膜からなっている。電荷収集電極407aは、コンタクトホール421を埋めるようにして形成されており、ソース電極410上及びドレイン電極412上に積層されている。電荷収集電極407aと光導電層404とは電気的に導通しており、光導電層404で発生した電荷を電荷収集電極407aで収集できるようになっている。
【0042】
続いて、電荷収集電極407aについて詳細に説明する。本実施形態で用いる電荷収集電極407aは、非晶質透明導電酸化膜によって構成されている。非晶質透明導電酸化膜材料としては、インジウムと錫との酸化物(ITO:Indium-Tin-Oxide)や、インジウムと亜鉛との酸化物(IZO:Indium-Zinc-Oxide)、インジウムとゲルマニウムとの酸化物(IGO:Indium-Germanium-Oxide)等を基本組成とするものを使用することができる。
【0043】
また、電荷収集電極407aとしては、各種の金属膜や導電酸化膜が使用されているが、下記の理由により、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電酸化膜が用いられることが多い。放射線検出器において入射X線量が多い場合、不要な電荷が半導体膜中(あるいは半導体膜と隣接する層との界面付近)に捕獲されることがある。
【0044】
このような残留電荷は、長時間メモリーされたり、時間をかけつつ移動したりするので、以降の画像検出時にX線検出特性が劣化したり、残像(虚像)が現れたりして問題になる。そこで、特開平9−9153号公報(対応米国特許第5563421号)には、光導電層に残留電荷が発生した場合に、光導電層404の外側から光を照射することで、残留電荷を励起させて取り除く方法が開示されている。この場合、光導電層404の下側(電荷収集電極407a側)から効率よく光を照射するためには、電荷収集電極407aが照射光に対して透明である必要がある。
【0045】
また、電荷収集電極407aの面積充填率(フィルファクター)を大きくする目的、またはスイッチ素子をシールドする目的で、スイッチ素子を覆うように電荷収集電極407aを形成することが望まれるが、電荷収集電極407aが不透明であると、電荷収集電極407aの形成後にスイッチ素子を観察することができない。
【0046】
例えば、電荷収集電極407aを形成後、スイッチ素子の特性検査を行う場合、スイッチ素子が不透明な電荷収集電極407aで覆われていると、スイッチ素子の特性不良が見つかった際、その原因を解明するために光学顕微鏡等で観察することができない。従って、電荷収集電極407aの形成後もスイッチ素子を容易に観察することができるように、電荷収集電極407aは透明であることが望ましい。
【0047】
層間絶縁膜420は、感光性を有するアクリル樹脂からなり、スイッチ素子407bの電気的な絶縁分離を図っている。層間絶縁膜420には、コンタクトホール421が貫通しており、電荷収集電極407aはドレイン電極412に接続されている。コンタクトホール421は、図3に示すように逆テーパ形状で形成されている。
【0048】
バイアス電極401とCs電極418との間には、図示しない高圧電源が接続されている。なお、高圧電源に接続された高電圧線432をバイアス電極401と電気的に接続する構成については、後述する。
【0049】
(光導電層を被覆する構成)
次に、光導電層404を被覆する構成について説明する。図1に示すように、バイアス電極401の上方には、バイアス電極401を覆うカバー部材の一例としてのカバーガラス440が設けられている。
【0050】
ガラス基板408には、カバーガラス440が接合される保護部材442が設けられている。保護部材442は、ガラス基板408の外周部上に立設されており、光導電層404を含む所定領域を四方から囲んでいる。すなわち、この所定領域は、周囲を囲む保護部材442により画されている。
【0051】
保護部材442は、上部及び下部が開放された箱状に形成され、保護部材442の下部開放がガラス基板408で閉鎖され、保護部材442の上部開放がカバーガラス440で閉鎖され、所定の大きさの閉鎖空間が形成される。この閉鎖空間に光導電層404が収容されて、光導電層404がカバーガラス440、ガラス基板408及び保護部材442で被覆される。
【0052】
保護部材442の内壁側(光導電層404側)に一段下がった段差が形成されており、この段差の上面442bに、カバーガラス440の下面が接合されており、保護部材442によりカバーガラス440が支持されている。
【0053】
この保護部材442とカバーガラス440との接合部分は、光導電層404の外側に配置されている。すなわち、光導電層404の上方ではなく、ガラス基板408上の光導電層404の無い領域で、保護部材442とカバーガラス440とが接合されている。
【0054】
なお、保護部材442には、絶縁性を有する絶縁性部材が用いられ、絶縁性部材としては、例えば、絶縁破壊電圧10kV/mm以上である樹脂や、ガラスが用いられる。
これにより、高電圧線432と延長電極部431との接続部の絶縁性を確保することができる。
【0055】
絶縁破壊電圧10kV/mm以上である樹脂としては、図6に示す表のように、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)、ポリ塩化ビニールが用いられる。
【0056】
なお、本実施形態では、保護部材442の側壁442aは、1mmとされており、高電圧線432から延長電極部431へ印加される電圧は、10kVとなっている。このため、絶縁破壊電圧10kV/mm以上である樹脂を用いることにより、外部に対する絶縁性を確保できる。
【0057】
また、カバーガラス440と保護部材442とガラス基板408とに囲まれた空間(保護部材442で画された所定領域)には、充填部材としての硬化性樹脂444が充填されている。硬化性樹脂444としては、例えば、エポキシ、シリコン等の常温硬化性樹脂が用いられる。
【0058】
また、光導電層404を含む所定領域を四方から囲む保護部材442の4辺のうち、1辺をなす保護部材442の部位には、上部が開放された空間445が形成されている。
【0059】
(バイアス電極と高電圧線とを電気的に接続する構成)
ここで、上記のTFT方式の放射線検出器400において、バイアス電極401と高電圧線432とを電気的に接続する構成について説明する。図5は、延長電極部431と高電圧線432とが接続される接続部分を示す概略平面図である。
【0060】
図1に示すように、バイアス電極401から、保護部材442の内壁よりも外側、すなわち保護部材442が画する所定領域と保護部材442との境界Bの外側へ延長された延長電極部431が形成されている。
この延長電極部431とバイアス電極401とは、電極層430を構成し、同一工程で一体成形される。
【0061】
延長電極部431は、図5に示すように、バイアス電極401の側部から突出し、図1に示すように、光導電層404の下方へ傾斜する下り勾配の側面に沿って、放射線検出器400の最低部にあたるガラス基板408まで引き下ろされている。
【0062】
さらに、延長電極部431は、光導電層404の側面を下ってガラス基板408上の光導電層404の無い領域へ延び、保護部材442内に設けられた空間445まで延長されている。
【0063】
延長電極部431の延長方向(図5のX方向)と直交する方向(図5のY方向)の幅が、バイアス電極401よりも狭く形成されている。これにより、電極層430を形成するための材料を低減できる。なお、延長電極部431の幅は、バイアス電極401と同じ幅であっても良く、また、バイアス電極401よりも広く形成されていても良い。
【0064】
また、正孔注入阻止層402は、光導電層404とバイアス電極401との間から延長電極部431とガラス基板408との間へわたって形成されており、延長電極部431と同様に、保護部材442の内壁の外側、すなわち保護部材442が画する所定領域の外側へ延長されている。
【0065】
また、正孔注入阻止層402は、ガラス基板408上に直接形成されており、延長電極部431をガラス基板408に接合する下地としても用いられている。正孔注入阻止層402としては、延長電極部431とガラス基板408との間の密着性よりも、正孔注入阻止層402とガラス基板408との間の密着性及び正孔注入阻止層402と延長電極部431との間の密着性が高くなるような材料が選択される。
【0066】
このように、ガラス基板408に対する延長電極部431の密着性よりも、ガラス基板408及び延長電極部431に対する密着性が高くなるような正孔注入阻止層402を下地として用いることにより、延長電極部431とガラス基板408との間の接合力が高められる。
【0067】
延長電極部431は、延長電極部431からバイアス電極401を介して光導電層404へバイアス電圧を印加する導線としての高電圧線432と、ガラス基板408上の光導電層404の無い領域であって、保護部材442内の空間445において電気的に接続されている。
【0068】
高電圧線432は、外部から引き込まれており、導電性ペースト433により、延長電極部431の先端部と電気的に接続されている。
【0069】
(TFT方式の放射線検出器400の製造工程)
ここで、TFT方式の放射線検出器400の製造工程の一例について概略説明する。
【0070】
まず、アクティブマトリックス基板450に、2μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる電子注入阻止層406を形成する。次に、Se原料を蒸着により成膜して、膜厚1000μmの非晶質Seからなる光導電層404を形成する。
【0071】
次に、光導電層404上に、0.3μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる正孔注入阻止層402を形成する。次に、Auを蒸着により成膜して、膜厚0.1μmのバイアス電極401及び延長電極部431からなる電極層430を形成する。
【0072】
次に、空間445が形成された保護部材442をガラス基板408の外周部上に取り付け、さらに、カバーガラス440を保護部材442に取り付ける。
【0073】
次に、図示しない孔を通じて、カバーガラス440と保護部材442とガラス基板408とに囲まれた空間へ硬化性樹脂444を充填する。
【0074】
次に、保護部材442の空間445において、延長電極部431と高電圧線432とを電気的に接続する。
【0075】
(TFT方式の放射線検出器の動作原理)
次に、上記のTFT方式の放射線検出器400の動作原理について説明する。光導電層404にX線が照射されると、光導電層404内に電荷(電子−正孔対)が発生する。バイアス電極401とCs電極418との間に電圧が印加された状態、すなわちバイアス電極401とCs電極418とを介して光導電層404に電圧が印加された状態において、光導電層404と電荷蓄積容量407cとは電気的に直列に接続された構造となっているので、光導電層404内に発生した電子は+電極側に、正孔は−電極側に移動し、その結果、電荷蓄積容量407cに電荷が蓄積される。
【0076】
電荷蓄積容量407cに蓄積された電荷は、ゲート電極411への入力信号によってスイッチ素子407bをオン状態にすることによりソース電極410を介して外部に取り出すことが可能となる。そして、ゲート電極411とソース電極410とからなる電極配線、スイッチ素子407b及び電荷蓄積容量407cは、すべてマトリクス状に設けられているため、ゲート電極411に入力する信号を順次走査し、ソース電極410からの信号をソース電極410毎に検知することにより、二次元的にX線の画像情報を得ることが可能となる。
【0077】
(TFT方式の放射線検出器の作用効果)
次に、上記のTFT方式の放射線検出器400の作用効果について説明する。
【0078】
本実施形態の構成では、延長電極部431は、保護部材442の内壁よりも外側で、導線と電気的に接続されており、延長電極部431からバイアス電極401を介して光導電層404へバイアス電圧が印加される。
【0079】
ところで、光導電層404上で高電圧線432とバイアス電極401との接続がなされる構成では、製造時の接続の際やその後の使用時の状況により、非晶質材料である光導電層404が圧迫され、光導電層404が結晶化を引き起こして劣化する。
【0080】
また、光導電層404上で高電圧線432とバイアス電極401との接続がなされる構成では、光導電層404とカバーガラス440との間に、高電圧線432の外径以上の空間を形成する必要があり、その空間に硬化性樹脂444を充填する場合では、その硬化性樹脂444の厚みが高電圧線432の外径以上となり、光導電層404の電荷変換効率を低下させる。また、光導電層404の電荷変換効率の低下を抑制するため、光導電層404とカバーガラス440との間を高電圧線432の外径より狭くしようとすると、図7に示すように、カバーガラス440が接合される保護部材442の内面に、高電圧線432を収容するための凹部446を形成する必要がある。このように、凹部446を形成すると、周囲環境(主として温度)の変化と各部材が持つ熱膨張係数の差によって生じる応力・ひずみ分布が場所により極大化する要因となり、特に光導電層404上に生じるにストレスによって光導電層404にダメージを与え、非晶質材料である光導電層404の結晶化や各層間の剥離等の問題発生させることとなる。
【0081】
これに対して、本実施形態では、延長電極部431が、保護部材442の内壁よりも外側で、導線と電気的に接続されているため、光導電層404へ付与される圧力が軽減され、光導電層404の劣化を抑制できる。
【0082】
また、延長電極部431は、保護部材442の内壁よりも外側で、高電圧線432と電気的に接続されるので、保護部材442で光導電層404を囲んだ状態において、延長電極部431と高電圧線432の接続作業が可能となるので、接続作業中においても光導電層404の劣化を抑制できる。
【0083】
また、保護部材442をガラス基板408に取り付けた後の工程で、延長電極部431と高電圧線432の接続が可能となるので、光導電層404及びバイアス電極401がむき出しの状態で接続作業がなされず、また、接続作業(配線作業)がしやすくなる。
【0084】
また、保護部材442の内面に凹部446などを形成することなく、光導電層404とカバーガラス440との間隔を狭くできるので、光導電層404の電荷変換効率を低下させず、また、周囲環境(主として温度)が変化しても、各部材が持つ熱膨張係数の差によって生じる光導電層404へのストレスが軽減される。これにより、非晶質材料である光導電層404の結晶化や各層間の剥離を抑制できる。
【0085】
また、本実施形態の構成では、正孔注入阻止層402が、光導電層404とバイアス電極401との間から延長電極部431とガラス基板408との間へわたって形成されており、延長電極部431とガラス基板408との密着性を高める。
【0086】
また、電極層430にAuなどを用いる場合には、ガラス基板408との密着性が悪いが、正孔注入阻止層402が、延長電極部431とガラス基板408との接合力を高めることにより、延長電極部431とガラス基板408との間の剥離を抑制できる。また、正孔注入阻止層402を用いることにより、延長電極部431とガラス基板408との接合力を高めるためだけの部材を新たにガラス基板408に形成することなく、既存の層構成のみで剥離を抑制できるので、部品点数及び製造工程が増加しない。
【0087】
また、本実施形態では、カバーガラス440と保護部材442との接合部分が、光導電層404の外側に配置されているため、カバーガラス440と保護部材442との接合部分で発生するストレスが硬化性樹脂444を介して光導電層404に伝わるのを抑制する。これにより、光導電層404が受ける圧力を低減し、光導電層404の劣化を抑制できる。
【0088】
また、保護部材442の外側で高電圧線432と延長電極部431との接続をする場合には、別途、絶縁性を確保するため、高電圧線432と延長電極部431との接続部を被覆する部材が必要となるが、本実施形態においては、保護部材442内で接続するので、高電圧線432と延長電極部431との接続部を保護部材442で被覆でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0089】
(バイアス電極と高電圧線とを電気的に接続する構成の変形例)
ここで、バイアス電極401と高電圧線432とを電気的に接続する構成の変形例について説明する。図8は、本変形例に係るTFT方式の放射線検出器の全体構成を示す概略図である。図9は、本変形例において延長電極部431と高電圧線432とが接続される接続部分を示す概略平面図である。
【0090】
本変形例に係るTFT方式の放射線検出器300では、ガラス基板408と延長電極部431との間に、ガラス基板408と延長電極部431との間を所定間隔に維持する中間部材の一例としてのブリッジ448が形成されている。ブリッジ448は、ガラス基板408上であって、保護部材442と光導電層404との間に形成されている。
【0091】
また、ブリッジ448の上面は、光導電層404(詳細には、正孔注入阻止層402)の上面から保護部材442の内壁側に形成された段差の上面へ向けて形成されている。
【0092】
延長電極部431は、バイアス電極401とで、電極層430を構成し、同一工程で一体成形される。また、延長電極部431は、図5に示すように、バイアス電極401の側部から突出してブリッジ448上に積層され、バイアス電極401から保護部材442内の空間445へ形成されている。すなわち、ブリッジ448は、光導電層404(詳細には、正孔注入阻止層402)の上面から保護部材442の内壁側に形成された段差の上面へ、延長電極部431を橋渡しする機能を有する。
【0093】
また、ブリッジ448は、硬化性樹脂で形成され、硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、シリコン等の常温硬化性樹脂が用いられる。
【0094】
延長電極部431の延長方向(図9のX方向)と直交する方向(図9のY方向)の幅が、バイアス電極401よりも狭く形成されている。これにより、電極層430を形成するための材料を低減できる。なお、延長電極部431の幅は、バイアス電極401と同じ幅であっても良く、また、バイアス電極401よりも広く形成されていても良い。
【0095】
ブリッジ448の上面は、光導電層404(詳細には、正孔注入阻止層402)の上面及び保護部材442の内壁側に形成された段差の上面と同一面状に形成されるのが望ましい。これにより、延長電極部431を形成する形成面に段差がなくなり、段切れを防止できる。
【0096】
本変形例に係るTFT方式の放射線検出器300によれば、ガラス基板408と延長電極部431との間に形成されたブリッジ448が、ガラス基板408と延長電極部431との間を所定間隔に維持するので、延長電極部431とガラス基板408の電荷収集電極407aとの絶縁性を確保できる。
【0097】
(変形例に係るTFT方式の放射線検出器400の製造工程)
ここで、変形例に係るTFT方式の放射線検出器400の製造工程の一例について概略説明する。
【0098】
まず、アクティブマトリックス基板450に、2μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる電子注入阻止層406を形成する。次に、Se原料を蒸着により成膜して、膜厚1000μmの非晶質Seからなる光導電層404を形成する。
【0099】
次に、光導電層404上に、0.3μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる正孔注入阻止層402を形成する。次に、保護部材442の下部442c(保護部材442内に形成される延長電極部431よりも下の部位)が、ガラス基板408の外周部上に取り付けられる。
【0100】
次に、ガラス基板408上であって、保護部材442の下部442cと光導電層404の間に、ブリッジ448が形成される。
【0101】
次に、Auを蒸着により成膜して、膜厚0.1μmのバイアス電極401及び延長電極部431からなる電極層430を形成する。
【0102】
次に、カバーガラス440を保護部材442の下部442cの上面に取り付ける。次に、保護部材442の下部442c上に保護部材442の上部442dを取り付ける。
【0103】
次に、図示しない孔を通じて、カバーガラス440と保護部材442とガラス基板408とに囲まれた空間へ硬化性樹脂444を充填する。
【0104】
次に、保護部材442の空間445において、延長電極部431と高電圧線432とを電気的に接続する。
【0105】
(光読取方式の放射線検出器の構成)
光読取方式の放射線検出器についても、本発明の適用は可能であり、上記のバイアス電極と高電圧線とを電気的に接続する構成及び光導電層を被覆する構成に準じて適用される。ここで、光読取方式の放射線検出器としての放射線検出基板500について説明する。
【0106】
図10(A)、(B)は、放射線検出基板500の概略図を示している。図10(A)、(B)に示すように、放射線検出基板500にはTCP510とそれを介して接続される読み出し装置512、高電圧を印加するための高電圧配線514が接続されている。
【0107】
TCP(Tape Carrier Package)510は、信号検出用IC(チャージアンプIC)511を搭載したフレキシブルの配線基板である。このTCP510はACF(Anisotropic Conductive Film 異方性導電膜)を用いて熱圧着にて接続される。
【0108】
検出エリア516上部の上部電極518から延長された延長電極部519が形成されており、この延長電極部519で高電圧配線514は、導電性接着剤にて固定されている。放射線を検出する検出エリア516は、信号読み出しと高電圧印加のための下部電極520、放射線を電荷に変換する放射線検出層522、高電圧を印加する上部電極518から構成される。
【0109】
この放射線検出基板500の製造は大きく分けて、下部電極520を含む放射線検出用下部基板524の製造、放射線検出層522及び上部電極518の形成、高電圧配線514の接続に分けられる。
【0110】
以下、放射線検出用下部基板524の構造について説明する。図11には、放射線検出用下部基板524の概略構造が示されている。図11では、TCP510は左右1つずつ、チャンネル数も各3チャンネル、合計6チャンネルと単純化している。放射線検出用下部基板524は、図11に示すように、放射線検出部526、ピッチ変換部528、TCP接続部530から構成されている。
【0111】
放射線検出部526は、信号取り出しのための下部電極520がストライプ状(線状)に配置されている。また、その下層には透明の有機絶縁層532を介して一部任意の波長の光だけを透過させるカラーフィルター層534が形成されている。
【0112】
カラーフィルター層534上部にある層を共通Bライン520B、カラーフィルター層534のない部分にある信号Sライン520Sと呼ぶ。Bライン520Bは放射線検出部の外側で共通化され、くし型電極構造を有している。Sライン520Sは信号ラインとして用いられる。Bライン520Bの幅は、例えば20um、Sライン520Sの幅は、例えば10umとされ、Bライン520BとSライン520Sとの間隔は、例えば、10umである。
【0113】
カラーフィルター層534の幅は、例えば、30umである。下部電極520は、裏面より光を照射するため透明であることと、高電圧印加時の電界集中による破壊などを避けるため平坦性が必要であり、たとえばIZO、ITOが用いられる。IZOを用いた場合、厚さは0.2μm、平坦性はRa=1nm程度である。
【0114】
カラーフィルター層534は、顔料を分散させた感光性のレジスト、例えばLCDのカラーフィルターに用いられる赤色レジストである。このカラーフィルター層534の段差を無くすために感光性有機の透明絶縁層532、たとえばPMMAが用いられる。
【0115】
更に支持部材となる基板536は透明で剛性のあるガラスが望ましく、さらにはソーダライムガラスが望ましい。各層の厚さの一例は、下部電極520が0.2um、カラーフィルター層534が1.2um、有機透明絶縁層532が1.8um、ガラス基板536が1.8mmである。このカラーフィルター層534、有機絶縁層532は放射線検出部526のみにあり、その境界は放射線検出部526、ピッチ変換部528にある。このためIZO配線は有機絶縁層532の境界段差部分を介してTCP接続部530ではガラス基板536上に形成される。
【0116】
放射線検出部526ではある数を単位として左右のTCP510へ配線が取り出される。図11では3ライン単位である。ライン数の一例は256ラインである。放射線検出部526でのライン幅はTCP接続部530でのライン幅と異なりこれを調整することと、所定のTCP接続位置まで配線を引き回すためピッチ変換部528にてライン幅が調整される。Bライン520Bは共通化されて同様にTCP接続部530へ引き出される。
【0117】
TCP接続部530では信号Sライン520Sと放射線検出部外側で共通化された共通Bライン520Bが配置される。共通Bライン520Bは信号Sライン520Sの外側に配置される。その数の一例としては信号ライン256、共通ライン上下各5ラインを用いてTCPへ接続される。その電極ライン/スヘ゜ースは40/40umである。
【0118】
また、このTCP接続部530にてTCPを接続するためTCP用のアライメントマークが必要である。透明電極で形成することが望ましいが、透明なため認識が難しく、不透明な材料として、例えばこの基板の構成部材であるカラーフィルター層534を用いて合わせマークを形成する。
【0119】
次に、放射線検出層522について説明する。図12は、放射線検出基板500の構成を模式的に示した概略図である。放射線検出層は、図12に示すように、記録用光導電層542、電荷蓄積層544、読取用光導電層546、電極界面層548、下引き層550、上引き層552を備えて構成されている。
【0120】
<記録用光導電層>
記録用光導電層542は、電磁波を吸収し電荷を発生する光導電物質であり、アモルファスセレン化合物、Bi12MO20(M:Ti、Si、Ge)、Bi4M3O12 (M:Ti、Si、Ge)、Bi2O3、BiMO4(M:Nb、Ta、V)、Bi2WO6、Bi24B2O39、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe,MNbO3(M:Li、Na、K)、PbO,HgI2、PbI2,CdS、CdSe、CdTe、BiI3、GaAs等のうち少なくとも1つを主成分とする化合物により構成される。この中で特にアモルファスセレン化合物よりなることが好ましい。
【0121】
アモルファスセレン化合物の場合には、その層中にLi, Na, K, Cs, Rb等のアルカリ金属を0.001ppmから1ppmまでの間で微量にドープしたもの、LiF, NaF, KF, CsF, RbF等のフッ化物を10ppmから10000ppmまでの間で微量にドープしたもの、P、As、Sb、Geを50ppmから0.5%までの間添加したもの、Asを10ppmから0.5%までドープしたもの、 Cl、Br、Iを1ppmから100ppmの間で微量にドープしたもの、を用いることができる。
【0122】
特に、Asを10ppmから200ppm程度含有させたアモルファスセレン、Asを0.2%〜1%程度含有させさらにClを5ppm〜100ppm含有させたアモルファスセレン、0.001ppm〜1ppm程度のアルカリ金属を含有させたアモルファスセレンが好ましく用いられる。
【0123】
また、数ナノから数ミクロンのBi12MO20(M:Ti、Si、Ge)、Bi4M3O12 (M:Ti、Si、Ge)、Bi2O3、BiMO4(M:Nb、Ta、V)、Bi2WO6、Bi24B2O39、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe,MNbO3(M:Li、Na、K)、PbO,HgI2、PbI2,CdS、CdSe、CdTe、BiI3、GaAs等の光導電性物質微粒子を含有させたものも用いることができる。
【0124】
記録用光導電層542の厚みは、アモルファスセレンの場合100μm以上2000μm以下であることが好ましい。特にマンモグラフィ用途では150μm以上250μm以下、一般撮影用途においては500μm以上1200μm以下の範囲であることが特に好ましい。
【0125】
<電荷蓄積層>
電荷蓄積層544は、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性の膜であれば良く、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーやAs2S3、Sb2S3、ZnS等の硫化物、その他に酸化物、フッ化物より構成される。更には、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性であり、それと逆の極性の電荷に対しては導電性を有する方がより好ましく、移動度×寿命の積が、電荷の極性により3桁以上差がある物質が好ましい。
【0126】
好ましい化合物としては、As2Se3、As2Se3にCl、Br、Iを500ppmから20000ppmまでドープしたもの、As2Se3のSeをTeで50%程度まで置換したAS2(SexTe1-x)3(0.5<x<1)もの、As2Se3のSeをSで50%程度まで置換したもの、As2Se3からAs濃度を±15%程度変化させたもの、アモルファスSe-Te系でTeを5-30wt%のものを挙げることができる。
【0127】
この様なカルコゲナイド系元素を含む物質を用いる場合、電荷蓄積層544の厚みは0.4μm以上3.0μm以下であること好ましく、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。この様な電荷蓄積層544は、1度の製膜で形成しても良いし、複数回に分けて積層しても良い。
【0128】
有機膜を用いた好ましい電荷蓄積層544としては、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーに対し、電荷輸送剤をドープした化合物が好ましく用いられる。好ましい電荷輸送剤としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、N,N-シ゛フェニル-N,N-シ゛(m-トリル)ヘ゛ンシ゛シ゛ン(TPD)、ホ゜リハ゜ラフェニレンヒ゛ニレン(PPV)、ホ゜リアルキルチオフェン、ホ゜リヒ゛ニルカルハ゛ソ゛ール(PVK)、トリフェニレン(TNF)、金属フタロシアニン、4-(シ゛シアノメチレン)-2-メチル-6-(p-シ゛メチルアミノスチリル)-4H-ヒ゜ラン(DCM)、液晶分子、ヘキサヘ゜ンチロキシトリフェニレン、中心部コアがπ共役縮合環あるいは遷移金属を含有するテ゛ィスコティック液晶分子、カーホ゛ンナノチューフ゛、フラーレンからなる群より選択される分子を挙げることができる。ト゛ーフ゜量は0.1から50wt.%の間で設定される。
【0129】
<読取用光電導層>
読取用光導電層546は、電磁波、特に可視光を吸収し電荷を発生する光導電物質であり、アモルファスセレン化合物、アモルファスSi:H、結晶Si、GaAs等のエネルギーギャップが0.7-2.5eVの範囲に含まれる半導体物質を用いることができる。特にアモルファスセレンであることが好ましい。
【0130】
アモルファスセレン化合物の場合には、その層中にLi, Na, K, Cs, Rb等のアルカリ金属を0.001ppmから1ppmまでの間で微量にドープしたもの、LiF, NaF, KF, CsF, RbF等のフッ化物を10ppmから10000ppmまでの間で微量にドープしたもの、P、As、Sb、Geを50ppmから0.5%までの間添加したもの、Asを10ppmから0.5%までドープしたもの、Cl、Br、Iを1ppmから100ppmの間で微量にドープしたもの、を用いることができる。
特に、Asを10ppmから200ppm程度含有させたアモルファスセレン、Asを0.2%〜1%程度含有させさらにClを5ppm〜100ppm含有させたアモルファスセレン、0.001ppm〜1ppm程度のアルカリ金属を含有させたアモルファスセレンが好ましく用いられる。
【0131】
読取光導電層546の厚みは、読取光を十分吸収でき、かつ電荷蓄積層544に蓄積された電荷による電界が光励起された電荷をドリフトできれば良く、1umから30um程度が好ましい。
【0132】
<電極界面層>
電極界面層548は、記録用光導電層542と上部電極518の間、あるいは読取用光導電層546と下部電極520の間に敷設される。結晶化を防止する目的において、アモルファスセレンにAsが1%-20%の範囲で添加されたもの、S、Te、P、Sb、Geを1%から10%の範囲で添加したもの、上記の元素と他の元素を組合せて添加したものが好ましい。
【0133】
または、より結晶化温度の高いAs2S3やAs2Se3も好ましく用いることができる。更に、電極層からの電荷注入を防止する目的で上記、添加元素に加えて、特に正孔注入を防止するためにLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属や、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、LiCl、NaCl、KCl、RbF、CsF、CsCl、CsBr等の分子を10ppm-5000ppmの範囲でト゛ーフ゜することも好ましい。 逆に電子注入を防止するためには、Cl、I、Br等のハロゲン元素や、In2O3等の分子を10ppm-5000ppmの範囲でト゛ーフ゜することも好ましい。界面層の厚みは、上記目的を十分果たすように0.05umから1umの間に設定されることが好ましい。
【0134】
上記の電極界面層548、読取用光導電層546、電荷蓄積層544、記録用光導電層542は、真空度10-3から10-7Torrの間の真空槽内において、基板を25℃以上70℃以下の間に保持し、上記各合金を入れたホ゛ート、あるいはルツボを、抵抗加熱あるいは電子ヒ゛ームにより昇温し、合金、化合物を蒸発または昇華させることにより基板上に積層される。
【0135】
合金、化合物の蒸発温度が大きく異なる場合には、複数の蒸着源に対応した複数のホ゛ートを同時に加熱し個々に制御することで、添加濃度、ト゛ーフ゜濃度を制御することも好ましく用いられる。例えば、As2Se3・アモルファスセレン・LiFをそれぞれホ゛ートに入れ、As2Se3のホ゛ートを340℃、アモルファスセレン(a-Se)のホ゛ートを240℃、LiFのホ゛ートを800℃として、各ホ゛ートのシャッターを開閉することで、As10%ドープアモルファスセレンにLiFを5000ppmドープした層を形成することができる。
【0136】
<下引き層>
読取用光導電層546と下部電極(電荷収集電極)520の間には、下引き層550を設けることが出来る。電極界面層(結晶化防止層(A層))548がある場合には、電極界面層548と下部電極520の間に設けることが好ましい。下引き層550は、暗電流、リーク電流低減の観点から、整流特性を有することが好ましい。上部電極518に正バイアスが印加される時には電子ブロック性を、負バイアスが印加される時にはホールブロック性を有することが好ましい。
【0137】
この下引き層の抵抗率は、10Ωcm以上であること、膜厚は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。電子ブロック性を有する層、すなわち電子注入阻止層としては、Sb,SbTe,ZnTe,CdTe,SbS,AsSe,As等の組成から成る層、または有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、PVK等のホール輸送性高分子、またはポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、NPD,TPDを混合した膜を好ましく用いることが出来る。
【0138】
ホールブロック性を有する層、すなわち正孔注入阻止層としては、CdS,CeO,等の膜、または有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、たはポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、C60(フラーレン)、C70等のカーボンクラスターを混合した膜を好ましく用いることが出来る。
【0139】
一方、薄い絶縁性高分子層も好ましく用いることが出来、例えば、パリレン、ポリカーボネート、PVA、PVP,PVB,ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。この時の膜厚としては、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0140】
<上引き層>
記録用光導電層542と上部電極(電圧印加電極)518の間には、上引き層552を設けることが出来る。電極界面層(結晶化防止層(C層))548がある場合には、電極界面層548と上部電極518の間に設けることが好ましい。上引き層552は、暗電流、リーク電流低減の観点から、暗電流、リーク電流低減の観点から、整流特性を有することが好ましい。
【0141】
上部電極518に正バイアスが印加される時にはホールブロック性を、負バイアスが印加される時には電子ブロック性を有することが好ましい。この上塗り層の抵抗率は、10Ωcm以上であること、膜厚は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。
【0142】
電子ブロック性を有する層、すなわち電子注入阻止層としては、Sb,SbTe,ZnTe,CdTe,SbS,AsSe,As等の組成から成る層、または有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、PVK等のホール輸送性高分子、またはポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、NPD,TPDを混合した膜を好ましく用いることが出来る。
【0143】
ホールブロック性を有する層、すなわち正孔注入阻止層としては、CdS,CeO,等の膜、または有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、C60(フラーレン)、C70等のカーボンクラスターを混合した膜を好ましく用いることが出来る。
【0144】
一方、薄い絶縁性高分子層も好ましく用いることが出来、例えば、パリレン、ポリカーボネート、PVA、PVP,PVB,ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。この時の膜厚としては、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0145】
次に、上部電極518及びその上部電極518の表面に形成される表面保護層554について説明する。
【0146】
<上部電極>
記録用光導電層542の上面に形成される上部電極518としては金属薄膜が好ましく用いられる。材料としてはAu、Ni、Cr、Au、Pt、Ti、Al、Cu、Pd、Ag、Mg、MgAg3-20%合金、Mg-Ag系金属間化合物、MgCu3-20%合金、Mg-Cu系金属間化合物などの金属から形成するようにすればよい。
【0147】
特にAuやPt、Mg-Ag系金属間化合物が好ましく用いられる。例えばAuを用いた場合、厚みとして15nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上100nm以下である。例えばMgAg3-20%合金を用いた場合は、厚さ100nm以上400nm以下を用いることがより好ましい。
【0148】
作成方法は任意であるが、抵抗加熱方式による蒸着により形成されることが好ましい。
たとえば、抵抗加熱方式によりボート内で金属塊が融解後にシャッターを開け、15秒間蒸着し一旦冷却する。抵抗値が十分低くなるまで複数回繰り返すことで形成される。
【0149】
<表面保護層>
放射線照射によって放射線検出デバイスに潜像を形成するため、上部電極518には数kVの高電圧を印加する。この上部電極518が大気に開放されていると沿面放電を生じ、被写体が感電する危険がある。上部電極518における沿面放電を防止するため、電極上面に表面保護層554を形成し絶縁処理を施す。
【0150】
絶縁処理は電極面が全く大気に触れない構造にすることが必要で、絶縁体で密着被覆する構造とする。尚且つ、この絶縁体は印加電位を上回る絶縁破壊強度を有することが必要である。更に、放射線検出デバイスの機能上、放射線透過を妨げない部材であることが必要である。これら要求される被覆性、絶縁破壊強度および放射線透過率の高い材料および製法として、絶縁性ポリマーの蒸着または溶剤塗布が好ましい。
【0151】
具体例としては、常温硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシリレン誘導体をCVD法で成膜する方法等があげられる。この中でも常温硬化型エポキシ樹脂、ポリパラキシリレンをCVD法で成膜するが好ましく、特にポリパラキシリレン誘導体をCVD法で成膜する方法が好ましい。好ましい膜厚は10μm以上1000μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0152】
ポリパラキシリレン膜は、室温で形成できるため被着体に熱ストレスを与えることなく、極めて段差被覆性の高い絶縁膜が得られるが、化学的に非常に安定であるため、被着体との密着性は一般に好ましくない場合が多い。被着体との密着性を上げるため、ポリパラキシリレン形成前の被着体への処理として、カップリング剤、コロナ放電、プラズマ処理、オゾン洗浄、酸処理、表面租化等の物理的、化学的処理が一般的に知られており用いることができる。特にシランカップリング剤もしくはシランカップリング剤を必要によりアルコール等で希釈したものを、少なくとも被着体との密着性を向上させたい部分に塗布処理を施した後ポリパラキシリレン膜を形成することで被着体との密着性を向上させる方法が好ましい。
【0153】
さらに、放射線検出デバイスの経時劣化防止のため、防湿処理を施すことが好ましい。具体的には防湿部材で覆う構造とする。防湿部材としては、前記絶縁性ポリマーのような樹脂単独では機能不足であり、ガラス、アルミラミネートフィルムといった少なくとも無機材層を有する構成が効果的である。但し、ガラスは放射線透過を減衰するため、防湿部材は薄いアルミラミネートフィルムが望ましい。例えば、一般的に防湿包材として用いられているアルミラミネートフィルムとして、PET12μm/圧延アルミ9μm/ナイロン15μmを積層したものがある。
【0154】
アルミの厚みは5μm以上30μm以下が好ましく、前後のPET厚み、ナイロン厚みはそれぞれ10μm以上100μm以下が好ましい。このフィルムのX線減衰は約1%程度であり、防湿効果とX線透過を両立する部材として最適である。
【0155】
例えば、図13に示すように、ポリパラキシリレン554Aによる絶縁処理を施した放射線検出デバイス全面を防湿フィルム554Bで覆い、放射線検出デバイス領域外において防湿フィルム554Bの周囲を接着剤で基板と接着固定する。これによって、放射線検出デバイスを基板と防湿フィルム554Bで密封した構成とする。
【0156】
この接着固定に際し、ポリパラキシリレン554Aは、化学的に非常に安定であるため、一般的には接着材による他の部材との接着性が悪いが、接着に先立ち紫外光による光照射処理を施すことにより接着性を向上させることが出来る。必要な照射時間は使用する紫外光源の波長、ワット数により適時、最適な時間に調節するが、低圧水銀灯で1から50Wのものが好ましく、光照射は1分から30分で行なうのが好ましい。
【0157】
尚、本実施形態に係る放射線検出デバイスは、アモルファスセレンを用いており、40℃以上の高温ではアモルファスセレンが結晶化して潜像形成の機能が得られなくなるおそれがあることから、接着加工においては加熱処理は適さない。そこで、室温硬化型の接着剤が望ましく、接着強度が高い2液混合室温硬化型エポキシ接着剤が最適である。このエポキシ接着剤を放射線検出デバイスの外周に塗布し、防湿フィルム554Bを被せる。接着部を防湿フィルム554Bの上面から均一に押圧固定し、この状態のまま室温環境にて12時間以上置いて硬化させる。接着剤硬化後に押圧を開放して封止構造が完成する。
【0158】
封止構造部材について補足する。放射線検出デバイスをマンモグラフィに用いる場合、X線撮影における被爆を抑えるため、低線量での撮影検出が望まれる。低線量照射での陰影変化を検出するため、放射線源からデバイスまでの経路における、被写体(マンモ)以外の部材はX線の透過率を高くすること望ましく、これにより明瞭な画像が得られる。
【0159】
好ましい保護層・封止構造の一例を図13に示しているが、これに限定されるものではない。保護膜の形成によりデバイスの湿度環境が30%以下、より好ましくは10%以下になるように維持されることが好ましい。
【0160】
以下、好ましい層構成の例を示すが、本発明はこれに限定される物ではない。その断面のモデル図を図12に示す。
【0161】
<構成1>
図10、図11に示すような、放射線検出用下部基板524の上に、以下の順に層構成を作製した。下部電極520としては表面粗さRa<1nmの平坦なIZO電極を用いた。
下引き層550 :CeO2 厚み20nm
下電極界面層548 :As10%ドープアモルファスセレン:LiF500ppmドープ、厚み0.1μm
読取用光電導層546:アモルファスセレン 、厚み7μm
電荷蓄積層544 :As2Se3 、厚み1μm
記録用光導電層542:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有 、厚み200μm
上電極界面層548 :As10%ドープアモルファスセレン 、厚み0.2μm
上引き層552 :Sb2S3 厚み0.5μm
上部電極518 :Au 厚み70nm
【0162】
<構成2>
図10、図11に示すような、放射線検出用下部基板524の上に、以下の順に層構成を作製した。下部電極520としては表面粗さRa<1nmの平坦なIZO電極を用いた。
下引き層550 :なし
下電極界面層548 :As3%ドープアモルファスセレン 、厚み0.15μm
読取用光電導層546:アモルファスセレン 、厚み15μm
電荷蓄積層544 :As2Se3 、厚み2μm
記録用光導電層542:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有 、厚み180μm
上電極界面層548 :As10%ドープアモルファスセレン 、厚み0.1μm
上引き層552 :Sb2S3 厚み0.2μm
上部電極518 :Au 厚み150nm
【0163】
<構成3>
図10、図11に示すような、放射線検出用下部基板524の上に、以下の順に層構成を作製した。下部電極520としては表面粗さRa<1nmの平坦なIZO電極を用いた。
下引き層550 :CeO2 厚み30nm
下電極界面層548 :As6%ドープアモルファスセレン 、厚み0.25μm
読取用光電導層546:アモルファスセレン 、厚み10μm
電荷蓄積層544 :As2Se3 、厚み0.6μm
記録用光導電層542:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有 、厚み230μm
上電極界面層548 :As10%ドープアモルファスセレン 、厚み0.3μm
上引き層552 :Sb2S3 厚み0.3μm
上部電極518 :Au 厚み100nm
【0164】
<電荷取り出しアンプ>
本実施形態において、電荷はアンプを通して増幅後AD変換される。図14は、電荷取り出しアンプの構成、並びにこれらと放射線検出基板500の外部に配された画像処理装置150などとの接続態様を示したブロック図である。
【0165】
電荷取り出しアンプとしてのチャージアンプIC511は、放射線検出基板500の各エレメント15aごとに接続された多数のチャージアンプ33aおよびサンプルホールド(S/H)33b、各サンプルホールド33bからの信号をマルチプレクスするマルチプレクサ33cを備えている。
【0166】
下部電極から流れ出す電流は、各チャージアンプ33aにより電圧に変換され、該電圧がサンプルホールド33bにより所定のタイミングでサンプルホールドされ、サンプルホールドされた各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ33cから順次出力される(主走査の一部に相当する)。
【0167】
マルチプレクサ33cから順次出力された信号はプリント基板31上に設けられたマルチプレクサ31cに入力され、さらに各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ31cから順次出力され主走査が完了する。
【0168】
マルチプレクサ31cから順次出力された信号はA/D変換部31aによりデジタル信号に変換され、デジタル信号がメモリ31bに格納される。一旦メモリ31bに格納された画像信号は、信号ケーブルを介して外部の画像処理装置150に送られ、この画像処理装置150において適当な画像処理が施され、撮影情報と共にネットワーク151にアップロードされ、サーバもしくはプリンタに送られる。
【0169】
<画像取得シーケンス>
本画像記録読取システムの画像形成シーケンスは、基本的には、高圧印加中に記録光(例えばX線)を照射し潜像電荷を蓄積する過程、および、高圧印加を終了後、読取光を照射して潜像電荷を読み出す過程からなる。読取光Lとしてはライン光源301を電極方向に走査する方法(図15参照)が最適であるが、他の方法でも可能である。
【0170】
さらに、必要に応じて、読み残した潜像電荷を十分に消去する過程を組み合わせることができる。この消去過程は、パネル全面に消去光を照射することにより行われ、全面に一度に照射させても、あるいはライン光やスポット光を全面に走査させても良く、読取過程の後、または/および、潜像蓄積過程の前に行われる。消去光を照射する際に、高圧印加を組み合わせて消去効率を高めることもできる。また、高圧印加後、記録光を照射する前に「前露光」を行うことにより、高圧印加の際に発生する暗電流による電荷(暗電流電荷)を消去することができる。
【0171】
さらに、これら以外の原因によっても静電記録体に種々な電荷が記録光の照射の前に蓄積されることが知られている。これらの残存信号は、残像現象として次に出力される画像情報信号に影響を及ぼすため、補正により低減させることが望ましい。
【0172】
残像信号を補正する方法として、上記の画像記録読取過程に、残像画像読取過程を加える方法が有効である。この残像画像記録過程は、記録光を照射しないで高圧印加のみ行った後、読取光により「残像画像」を読取ることで行われ、この「残像画像」信号に適当な処理を施し、「記録画像」信号から差し引くことで、残像信号を補正することができる。残像画像読取過程は、画像記録読取過程の前、あるいは後に行われる。また、残像画像読取過程の前、または/および後に、適当な消去過程を組み合わせることができる。
【0173】
光読取方式の放射線検出器としての放射線検出基板500では、上部電極518が、本発明の上部電極部に相当し、放射線検出層522が、本発明に係る電荷変換層に相当し、下部電極520が、本発明に係る下部電極部に相当する。また、放射線検出用下部基板524が、本発明に係る基板に相当し、高電圧配線514が、本発明に係る導線に相当する。
【0174】
光読取方式の放射線検出基板500では、図1に示す構成と同様に、以下のように構成することができる。
【0175】
上部電極518の上方には、図16に示すように、上部電極518を覆うカバー部材の一例としてのカバーガラス566が設けられている。
【0176】
ガラス基板536には、カバーガラス566が接合される保護部材562が設けられている。保護部材562は、ガラス基板536の外周部上に立設されており、放射線検出層522を含む所定領域を四方から囲んでいる。すなわち、この所定領域は、周囲を囲む保護部材562により画される。
【0177】
また、カバーガラス566と保護部材562とガラス基板536とに囲まれた空間(保護部材562で画された所定領域)には、充填部材としての硬化性樹脂568が充填されている。
また、放射線検出層522を含む所定領域を四方から囲む保護部材562の4辺のうち、1辺をなす保護部材562の部位には、上部が開放された空間564が形成される。
【0178】
図16に示すように、延長電極部519が上部電極518から、保護部材562の内壁よりも外側へ、すなわち保護部材562が画する所定領域の外側へ延長される。
【0179】
延長電極部519は、上部電極518の側部から突出し、放射線検出層522の下方へ傾斜する下り勾配の側面に沿って、ガラス基板536まで引き下ろされる。
【0180】
さらに、延長電極部519は、放射線検出層522の側面を下ってガラス基板536上の放射線検出層522の無い領域へ延び、保護部材562内の空間564まで延長されている。
【0181】
延長電極部519は、延長電極部519から上部電極518を介して放射線検出層522へバイアス電圧を印加する導線としての高電圧配線514と、ガラス基板536上の放射線検出層522の無い領域であって、保護部材562内の空間564において電気的に接続される。
【0182】
なお、光読取方式の放射線検出器で用いた部材及び材料は、TFT方式の放射線検出器において同じ機能を有する対応部分に、その部材及び材料を適用することが可能である。また、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、TFT方式の放射線検出器の全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、TFT方式の放射線検出器の要部を示す概略構成図である。
【図3】図3は、TFT方式の放射線検出器の1画素単位の構造を示す断面図である。
【図4】図4は、TFT方式の放射線検出器の1画素単位の構造を示す平面図である。
【図5】図5は、TFT方式の放射線検出器において、延長電極部と高電圧線とが接続される接続部分を示す概略平面図である。
【図6】図6は、保護部材に用いられる樹脂の一例を示した表である。
【図7】図7は、比較例に係るTFT方式の放射線検出器の構成を示す概略図である。
【図8】図8は、変形例に係るTFT方式の放射線検出器の全体構成を示す概略図である。
【図9】図9は、変形例に係るTFT方式の放射線検出器において、延長電極部と高電圧線とが接続される接続部分を示す概略平面図である。
【図10】図10は、光読取方式の放射線検出器としての放射線検出基板の概略構成を示す図である。
【図11】図11は、図10に示す放射線検出基板の放射線検出用下部基板の概略構造を示す図である。
【図12】図12は、図10に示す放射線検出基板の構成を模式的に示した概略図である。
【図13】図13は、図10に示す放射線検出基板の上部電極を封止する封止構造を示す図である。
【図14】図14は、電荷取り出しアンプの構成並びにこれらと放射線検出基板の外部に配された画像処理装置などとの接続態様を示したブロック図である。
【図15】図15は、読取光としてはライン光の走査を示す概略図である。
【図16】図16は、図10に示す放射線検出基板において、図1に示すTFT方式の放射線検出器と同様に、放射線検出層を被覆する構成及び上部電極と高電圧線とを電気的に接続する構成を適用した例を示す図である。
【符号の説明】
【0184】
300 放射線検出器
400 放射線検出器
401 バイアス電極(上部電極部)
402 正孔注入阻止層(中間層)
404 光導電層(電荷変換層)
407a 電荷収集電極(下部電極部)
408 ガラス基板(基板)
431 延長電極部
432 高電圧線(導線)
440 カバーガラス(カバー部材)
442 保護部材
444 硬化性樹脂(充填部材)
448 ブリッジ(中間部材)
500 放射線検出基板(放射線検出器)
518 上部電極(上部電極部)
522 放射線検出層(電荷変換層)
520 下部電極(下部電極部)
524 放射線検出用下部基板(基板)
514 高電圧配線(導線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が入射されることにより電荷を生成する電荷変換層と、
前記電荷変換層下に設けられ、前記電荷変換層が生成した電荷を収集する下部電極部を有する基板と、
前記基板の外周部上に立設され、前記電荷変換層を囲む保護部材と、
前記電荷変換層上に積層され、前記電荷変換層へバイアス電圧を印加するための上部電極部と、
前記上部電極部から、前記保護部材の内壁よりも外側へ延長された延長電極部と、
前記内壁よりも外側で前記延長電極部と電気的に接続され、前記延長電極部から前記上部電極部を介して前記電荷変換層へバイアス電圧を印加する導線と、
を備えたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記導線は、前記保護部材内に配置され、前記保護部材内で前記延長電極部と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記保護部材は、絶縁性を有する絶縁性部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記基板と前記延長電極部との間に形成され、前記基板と前記延長電極部との間を所定間隔に維持する中間部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記電荷変換層と前記上部電極部との間から前記延長電極部と前記基板との間へわたって形成され、前記延長電極部と前記基板との接合力を高める中間層を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記上部電極部の上方に設けられ、外周部が前記保護部材に接合され、その前記保護部材との接合部分が前記電荷変換層の外側に配置されたカバー部材と、
前記カバー部材と前記上部電極部との間に充填された充填部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−32975(P2009−32975A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196524(P2007−196524)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】