説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法

【課題】適切に光電変換素子の残留電荷を低減することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法を提供する。
【解決手段】放射線が照射されると、当該放射線に応じて発生した電荷を、アンプ52をサンプリング状態にし、さらにTFTスイッチ4をオン状態にして、放射線画像の画像データを生成するための電荷を読み出させる。S/HスイッチSW2を所定期間オン状態にして電荷をADC54に出力させた後、CAサンプリング期間以外の期間に、再びTFTスイッチ4をオン状態にして、TFTスイッチ4によりセンサ部103から読み出した電荷を、画像データの生成に用いずに読み捨てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法に係り、特に医療用の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が知られている。当該放射線画像撮影装置は、放射線照射装置から照射され、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を撮影する。当該放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じて発生した電荷を収集して読み出すことにより放射線画像の撮影を行う。
【0003】
このような放射線画像撮影装置は、放射線を検出する放射線検出素子を備えている。当該検放射線出素子として、放射線または、放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生する光電変換素子と、光電変換素子で発生した電荷を読み出すスイッチング素子と、を備えた放射線検出素子がある。
【0004】
光電変換素子から電荷を読み出した後に、光電変換素子に残留電荷が残る場合がある。例えば、特許文献1に記載の技術のように、電荷読出期間の終了から、次の行の電荷の読出期間の開始までの間に、光電変換素子から読み出した電荷を増幅するアンプのリセットや、基準電位の取得、取得した電荷情報の信号処理を行わなければいけないために、光電変換素子から充分に電荷が読み出せないことがあり、読み出せなかった電荷が残留電荷として光電変換素子内に残留する(図11参照)。
【0005】
特に、光電変換素子で発生した電荷を読み出すスイッチング素子の駆動能力が充分ではない場合、電荷が光電変換素子内に残留(残留電荷)し、当該残留電荷が残った状態で放射線画像の撮影を行うと、残留電化が撮影された画像データに重畳し、残像となる問題が知られている。そのため、残留電荷を低減する技術が求められている。
【0006】
残留電荷を低減する技術としては、例えば、上記スイッチング素子の電荷読出期間を長くすることや、スイッチング素子のサイズを大きくすること等が一般的に行われている。 また、特許文献2には、残像抑制のために、光電変換素子のリフレッシュ動作を行うことを目的として、光電変換素子から電荷を読み出した後に、再度スイッチング素子をオンにすると共に、光電変換素子から読み出した電荷を基準電位に基づいて増幅するアンプの当該基準電位をHighレベルに切り換えて、光電変換素子に正バイアスを印加する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−287773号公報
【特許文献2】特開2010−5212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上述したように、スイッチング素子の電荷読出期間を長くすることは、フレームレートの低下を招いてしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、アンプの基準電位をHighレベルに変えて、正バイアスを光電変換素子に印加しているため、残留電荷は低減されないという問題がある(図12参照)。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、適切に光電変換素子の残留電荷を低減することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行う制御手段と、を備える。
【0012】
放射線画像の画像データを生成するために、スイッチング素子をオンにし、光電変換素子から読み出された電荷が増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行った後に、光電変換素子に、読み取りきれなかった電荷、いわゆる残留電荷が残ることがある。
【0013】
本発明によれば、制御手段が、スイッチング素子をオンにし、増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行った後、増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行う。
【0014】
このように本発明では、残留電荷を読み捨てる読捨動作を、増幅手段の電荷蓄積期間(以外の期間に行っているため、スイッチング素子のオン時間を長くした場合と同様の状態になるため、適切に残留電荷を低減させることができる。
【0015】
また、本発明は請求項2に記載の放射線画像撮影装置のように、前記制御手段は前記電気信号を読み捨てる動作を複数行の前記画素に対して同一タイミングで行うことが好ましい。このように動作することにより、より残留電荷を低減させることができる。
【0016】
また、本発明は、請求項3に記載の放射線画像撮影装置のように、前記制御手段は、前記電気信号を読み捨てる動作を同一の画素に対して複数回行うことが好ましい。このように動作することにより、より残留電荷を低減させることができる。
【0017】
また、本発明は、請求項4に記載の放射線画像撮影装置のように、前記制御手段は、前記増幅手段が蓄積した電荷を放出させるリセット期間に、前記電気信号を読み捨てる動作を行うことが好ましい。このようにすることにより、よりフレームレートを向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載の放射線画像撮影プログラムは、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置による放射線画像の撮影を行う処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラムであって、前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行うステップと、前記読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行うステップと、を備えた処理をコンピュータに実行させるためのものである放射線画像撮影プログラム。
【0019】
請求項6に記載の放射線画像撮影方法は、照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置において、前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行う工程と、前記読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行う工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、適切に光電変換素子の残留電荷を低減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影システムの一例の概略構成を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図3】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の構成の一例を示す平面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の一例の線断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の信号検出回路の概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図6】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図7】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れのその他の一例を示したタイムチャートである。
【図8】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れのその他の一例を示したタイムチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の信号検出回路の概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図10】第2の実施の形態に係る放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図11】従来の放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【図12】従来の放射線画像撮影装置における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
【0023】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
【0024】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置を用いた放射線画像撮影システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の概略構成図である。
【0025】
放射線画像撮影システム200は、放射線(例えばエックス線(X線)等)を被検体206に照射する放射線照射装置204と、放射線照射装置204から照射され、被検体206を透過した放射線を検出する放射線検出素子10を備えた放射線画像撮影装置100と、放射線画像の撮影を指示すると共に、放射線画像撮影装置100から放射画像を取得する制御装置202と、を備えて構成されている。制御装置202の制御に基づいたタイミングで、放射線照射装置204から照射され撮影位置に位置している被検体206を透過することで画像情報を担持した放射線は放射線画像撮影装置100に照射される。
【0026】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置100の概略構成について説明する。本実施の形態では、X線等の放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出素子10に本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出素子10を備えて構成されている。なお、図2では、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0027】
放射線検出素子10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチング素子であるTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が複数、マトリックス状に配置されている。本実施の形態では、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、センサ部103が、電荷が発生する。
【0028】
画素20は、一方向(図2の横方向、以下「行方向」ともいう)及び当該行方向に対する交差方向(図2の縦方向、以下「列方向」ともいう)にマトリクス状に複数配置されている。図2では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は行方向及び列方向に1024×1024個配置されている。
【0029】
また、放射線検出素子10には、基板1(図3参照)上に、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられており、例えば、画素20が行向及び列方向に1024×1024個配置されている場合、信号配線3及び走査配線101は1024本ずつ設けられている。
【0030】
さらに、放射線検出素子10には、各信号配線3と並列に共通電極配線25が設けられている。共通電極配線25は、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する電源110に接続されている。センサ部103は共通電極配線25に接続されており、共通電極配線25を介してバイアス電圧が印加されている。
【0031】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチングされる。
【0032】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がONされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0033】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路104が接続されている。図2では、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を1つに簡略化して示しているが、例えば、信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104を複数設けて所定本(例えば、256本)毎に信号配線3又は走査配線101を接続する。例えば、信号配線3及び走査配線101が1024本ずつ設けられている場合、スキャン信号制御回路104を4個設けて256本ずつ走査配線101を接続し、信号検出回路105も4個設けて256本ずつ信号配線3を接続する。
【0034】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路(増幅回路50、図5参照)を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅し、ADC(アナログ・デジタル変換器)によりデジタル信号へ変換する(詳細後述)。
【0035】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104には、信号検出回路105において変換されたデジタル信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
【0036】
本実施の形態の制御部106は、マイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)、ROMおよびRAM、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部を備えている。制御部106は、信号検出回路105から入力された、各放射線検出用の画素20の電荷情報を示す電気信号に基づいて、照射された放射線が示す画像を生成する。
【0037】
図3には、本実施形態に係る間接変換方式の放射線検出素子10の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3の放射線画像撮影用の画素20AのA−A線断面図が示されている。
【0038】
図4に示すように、放射線検出素子10の画素20Aは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101(図3参照)、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照)。この走査配線101、ゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0039】
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0040】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0041】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図3参照。)。ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。当該ソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(図示省略)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0042】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFTスイッチ4や信号配線3を保護するために、TFT保護膜層30が形成されている。このTFT保護膜層30は、例えば、SiN 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0043】
このTFT保護膜層30上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0044】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層30のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0045】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0046】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0047】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n+層、i層、p+層(n+アモルファスシリコン、アモルファスシリコン、p+アモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層21A、i層21B、p+層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(一対の自由電子と自由正孔)が発生する。n+層21A及びp+層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0048】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0049】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27Aを持ち、各半導体層21を覆うように、塗布型の層間絶縁膜23が形成されている。
【0050】
この層間絶縁膜23上には、共通電極配線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、層間絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0051】
このように形成された放射線検出素子10には、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。
【0052】
次に、本実施の形態の信号検出回路105の概略構成について説明する。図5は、本実施の形態の信号検出回路105の一例の概略構成図である。本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50、及びADC(アナログ・デジタル変換器)54を備えて構成されている。なお、図5では、図示を省略したが増幅回路50は、信号配線3毎に設けられている。すなわち、信号検出回路105は、放射線検出素子10の信号配線3の数と同じ数の、複数の増幅回路50を備えて構成されている。
【0053】
増幅回路50は、チャージアンプ回路で構成されており、基準電位に基づいて電荷を増幅するオペアンプ等のアンプ52と、アンプ52に並列に接続されたコンデンサCと、アンプ52に並列に接続された電荷リセット用のスイッチSW1と、を備えて構成されている。
【0054】
増幅回路50では、電荷リセット用のスイッチSW1がオフの状態で画素20のTFTスイッチ4により電荷(電気信号)が読み出され、コンデンサCにTFTスイッチ4により読み出された電荷が蓄積され、蓄積される電荷量に応じてアンプ52から出力される電圧値が増加(昇圧)するようになっている。
【0055】
また、制御部106は、電荷リセット用スイッチSw1に電荷リセット信号を印加して電荷リセット用のスイッチSW1のオン/オフを制御するようになっている。なお、電荷リセット用のスイッチSW1がオン状態とされると、アンプ52の入力側と出力側とが短絡され、コンデンサCの電荷が放電される。これにより、アンプ52内の電荷がリセット(本実施の形態ではグランドレベルにリセット)される。
【0056】
ADC54は、S/H(サンプルホールド)スイッチSW5がオン状態において、増幅回路50から入力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換する機能を有するものである。ADC54は、デジタル信号に変換した電気信号を制御部106に順次出力する。
【0057】
なお、本実施の形態のADC54には、信号検出回路105に備えられた全ての増幅回路50から出力された電気信号が入力される。すなわち、本実施の形態の信号検出回路105は、増幅回路50(信号配線3)の数にかかわらず、1つのADC54を備えている。
【0058】
本実施の形態の制御部106は、TFTスイッチ4をオンにし、放射線画像のための電荷情報を信号検出回路105(ADC54)から読み取って、撮影された放射線画像の画像データを生成し、かつ、当該電荷情報の読取り後、信号検出回路105の増幅回路50のサンプルホールド期間(コンデンサCに電荷が蓄積される期間)以外の期間にTFTスイッチ4を再度オンにし、TFTスイッチ4によりセンサ部103から読み出されて信号検出回路105から出力された電荷情報を、放射線画像の画像データの生成に用いずに読み捨てる機能を有している。
【0059】
次に、図6を参照して、上記構成の放射線画像撮影装置100による放射線画像を撮影する際の動作の流れについて、残留電荷の低減動作を中心に説明する。図6は、放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。なお、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、放射線画像の撮影の際の各動作は、画素20の行毎(走査配線101毎)に行われる。
【0060】
放射線照射装置204から放射線が照射される(図6、放射線信号参照)と、照射された放射線は、シンチレータに吸収され、可視光に変換される。なお、放射線は、放射線検出素子10の表側、裏側の何れから照射されてもかまわない。シンチレータで可視光に変換された光は、各画素20のセンサ部103に照射される。
【0061】
センサ部103では、光が照射されると内部に電荷が発生する。この発生した電荷は下部電極11により収集されることにより、センサ部103の電荷が増加する(図6、画素電荷Qnの推移参照)。
【0062】
まず、所定期間、増幅回路50の電荷リセット用スイッチSW1及びADC54をオンにする(図6、アンプリセット&AD変換参照)。なお、本実施の形態では、アンプリセット(電荷リセット用スイッチSW1のオン期間)と、ADC54におけるAD変換とは、同時期に実施しても支障がないため、フレームレートの向上のため、同時期、かつ同一期間としている。
【0063】
その後、蓄積された電荷を読み出すために、CAサンプリングがオン状態になり、増幅回路50のコンデンサCに電荷が蓄積される状態になる。さらに、ゲート信号GnがVghになり、ゲート信号Gnが入力される走査配線101に接続された1行分の画素20では、TFTスイッチ4がオン状態になり、センサ部103に蓄積された電荷が読み出されて、増幅回路50のコンデンサCに蓄積される(図6、Read参照、以下、Read動作という)。
【0064】
所定の読出期間の経過後、TFTスイッチ4がオフ状態になり、クローズする。読出動作が終了すると、続いて、CAサンプリングがオフ状態になる。
【0065】
その後、S/HスイッチSW2が所定期間オン状態になり、ADC54に増幅回路50でサンプリングされ、増幅された電気信号が出力される。
【0066】
このとき、図6の画素電荷Qnの推移に示されるように、TFTスイッチ4により読み出しきれなかった電荷が残留電荷として、画素20(センサ部103)に残留する。
【0067】
そこで、本実施の形態では、サンプルホールド期間が終了後、アンプ52のアンプのリセット期間に再度ゲート信号GnをVghにして、TFTスイッチ4をオン状態にし、TFTスイッチ4により残留電荷を読み出させて放電する(図6、読捨て参照)。なお、この読み出した電荷は、放射線画像の画像データとして用いられずに、制御部106で読み捨てられる(以下、当該動作を読捨動作という)。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態の放射線画像撮影装置100では、放射線が照射されると、当該放射線に応じて発生した電荷を、アンプ52をサンプリング状態にし、さらにTFTスイッチ4をオン状態にして、放射線画像の画像データを生成するための電荷を読み出させる。S/HスイッチSW2を所定期間オン状態にして電荷をADC54に出力させた後、CAサンプリング期間以外の期間に、再びTFTスイッチ4をオン状態にして、TFTスイッチ4によりセンサ部103から読み出した残留電荷を、画像データの生成に用いずに読み捨てる。
【0069】
このように本実施の形態では、残留電荷を読み捨てる読捨動作を、アンプ52のコンデンサCの電荷蓄積期間(CAサンプリング期間)以外の期間(本実施の形態では、アンプ52のアンプのリセット期間)に行っているため、TFTスイッチ4のオン時間を長くした場合と同様の状態になり、残留電荷を低減させることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、上述のように、アンプのリセット期間に読捨動作を行っているため、フレームレートを低下させることがなく、残留電荷を低減させることができる。
【0071】
また、本実施の形態の放射線画像撮影装置100は、上述のように、TFTスイッチ4のサイズ(容量)を大きくすることなく、かつフレームレートを低下させずに適切に残留電荷を低減させることができるため、フレームレートを早くする必要のある撮影(例えば、動画撮影)に好適である。
【0072】
なお、読捨動作等の各動作は、上述の例(図6)に限らない。なお、CAサンプリング期間に読捨動作を行ってしまうと、放射線画像の画像データを生成するための電荷と、残留電荷とが混ざってしまい好ましくないため、読捨動作は、アンプ52のコンデンサCの電荷蓄積期間(CAサンプリング期間)以外の期間(実施の形態では、アンプ52のアンプのリセット期間)に行う。その他の例を図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、放射線画像を撮影する際の動作の流れのその他の一例を示したタイムチャートである。
【0073】
図7では、読捨動作を複数行の画素20に対して同時に実施する場合を示している。本実施の形態では、このように読捨動作を行うことにより1つの画素20のセンサ部103に対して、複数回、読捨動作が行われる(図7、読捨て1、読捨て2参照)ことになり、よりセンサ部103の残留電荷を除去することができる。なお、読捨動作を行う回数(同時に読捨動作が行われる行数)は、残留電荷が除去できるように予め定めておけばよく、特に限定されるものではない。
【0074】
また、図8では、Read動作と、読捨動作とで、TFTスイッチ4のゲート電圧が異なる場合を示しており、具体的には、Read動作時のゲート電圧Vgh1よりも、読捨動作時のゲート電圧Vgh2の方が高い場合を示している。このようにRead動作時よりも、読捨動作時にTFTスイッチ4に印加するゲート電圧を高くすることにより、Read動作時のフィードスルー電荷を低減することができると共に、残留電荷の低減に世得る時間を短期間にすることができる。
【0075】
[第2の実施の形態]
【0076】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と略同様であり、放射線画像撮影装置の信号検出回路及び、放射線画像撮影動作の一部が第1の実施の形態とは異なるため、同一部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略し、異なる部分のみ説明する。図9は、本実施の形態の信号検出回路の一例の概略構成図である。また、図10は、本実施の形態における放射線画像を撮影する際の動作の流れの一例を示したタイムチャートである。
【0077】
本実施の形態の信号検出回路305では、サンプルホールド期間とCAサンプリング期間とを同一とし、サンプルホールド動作とCAサンプリング動作とを同時に行っている。そのため、信号検出回路305は、S/HスイッチSW2とADC54との間に、コンデンサC2を備えて構成されている。
【0078】
本実施の形態の放射線画像を撮影する際の動作の流れについて、図10を参照して残留電荷の低減動作を中心に説明する。
【0079】
放射線照射装置204から放射線が照射されると、所定期間、増幅回路50の電荷リセット用スイッチSW1をオン状態にしてアンプ52をリセットする。
【0080】
その後、スイッチSW1をオフ状態にし、S/HスイッチSW2をオン状態にすると共に、CAサンプリング期間が開始する。その後、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すために、ゲート信号GnがVghになり、TFTスイッチ4のゲートがオン状態になって、Read動作により、センサ部103に蓄積された電荷Qが読み出されて増幅回路50のコンデンサCが充電され、アンプ52の出力電位が昇圧(増幅)される。
【0081】
Read動作が終了すると、TFTスイッチ4のゲートがオフ状態になって、TFTスイッチ4がクローズする。さらに、S/HスイッチSW2がオフ状態になる。これにより、出力された電位がホールドされる。
【0082】
その後、スイッチSW1がオン状態になり、アンプ52内の電位がリセットされる。当該リセット期間に、再度ゲート信号GnをVghにして、TFTスイッチ4をオン状態にし、TFTスイッチ4により残留電荷を読み出させて放電する(図10、読捨て参照)。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、サンプルホールド期間及びCAサンプリング期間を同一とし、サンプルホールド動作とCAサンプリング動作とを同時に行い、TFTスイッチ4をオン状態にして、放射線画像の画像データを生成するための電荷を読み出させる。その後、CAサンプリング期間以外の期間に、再びTFTスイッチ4をオン状態にして、TFTスイッチ4によりセンサ部103から読み出した残留電荷を、画像データの生成に用いずに読み捨てる。
【0084】
従って、第1の実施の形態と同様に、TFTスイッチ4のサイズ(容量)を大きくすることなく、かつフレームレートを低下させずに適切に残留電荷を低減させることができる。
【0085】
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100、放射線検出素子10等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0086】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、本発明の放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
3 信号配線
4 TFTスイッチ
10 放射線検出素子
20 画素
50 増幅回路
100 放射線画像撮影装置
101 走査配線
103 センサ部
105、305 信号検出回路
106 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、
前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、
前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行う制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記電気信号を読み捨てる動作を複数行の前記画素に対して同一タイミングで行う、請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電気信号を読み捨てる動作を同一の画素に対して複数回行う、請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記増幅手段が蓄積した電荷を放出させるリセット期間に、前記電気信号を読み捨てる動作を行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置による放射線画像の撮影を行う処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラムであって、
前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行うステップと、
前記読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行うステップと、
を備えた処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラム。
【請求項6】
照射された放射線に応じた電荷を発生する光電変換素子、及び前記光電変換素子から前記電荷を読み出して前記電荷を出力するスイッチング素子を各々備え、かつ行列状に配置された画素と、前記スイッチング素子から出力された電荷を蓄積し、蓄積した電荷を増幅した電気信号を出力する増幅手段と、を備えた放射線画像撮影装置において、
前記スイッチング素子をオンにし、前記増幅手段により増幅された電気信号を読み取る読み取り動作を行う工程と、
前記読み取り動作を行った後、前記増幅手段の電荷蓄積期間以外の期間に、前記スイッチング素子を再度オンにし、前記読み取り動作で読み出されなかった電荷を増幅した電気信号を読み捨てる動作を行う工程と、
を備えた放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−151812(P2012−151812A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10994(P2011−10994)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】