説明

放熱部品及び電子部品装置

【課題】電子部品の動作時の熱による基板の形状変化が生じた場合でも、電子部品と放熱部品の間に介在されるTIMの安定した熱伝導性を確保し、放熱性を安定させると共に、全体として放熱性能を高めること。
【解決手段】放熱部品20は、配線基板12に実装された電子部品(チップ)10との間に熱インタフェース材(TIM)15を介して接合され、TIM15を介してチップ10に熱結合される板状部21と、該板状部のチップ10に対向する側の面に形成されたフット部22とを備えている。このフット部22は、板状部21の周縁から内側の部分の、チップ10の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所に、リング状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部品及び電子部品装置に関し、より詳細には、配線基板に実装された半導体素子(チップ)等の電子部品との間に熱インタフェース材を介して接合される放熱部品及びこれを用いた電子部品装置に関する。
【0002】
かかる電子部品装置において配線基板は、半導体素子の他にもチップキャパシタ等の受動素子を搭載するという点で、以下の記述では便宜上、「パッケージ」ともいう。
【背景技術】
【0003】
MPU(マイクロプロセッサユニット)等に使用される半導体素子(チップ)は、配線基板(パッケージ)上に電気的に接続されて固定されている(例えば、フリップチップ実装)。半導体素子はその動作時にかなり高温になるので、その半導体素子温度を強制的に下げないと、半導体素子としての性能を発揮できないばかりか、場合によっては半導体素子が壊れるおそれがある。
【0004】
このため、半導体素子が発する熱を大気に放出するための放熱部品(例えば、金属製のヒートスプレッダ)を半導体素子上に配置し、半導体素子が発する熱を外部に放出する経路を確保している。その際、半導体素子とヒートスプレッダの間に、TIM(サーマル・インタフェース・マテリアル)と呼ばれる材料を挟んで熱的に結合させている。つまり、TIMを介在させることで、半導体素子とヒートスプレッダのそれぞれの表面の凹凸を吸収しながらその接触熱抵抗を減らし、半導体素子からヒートスプレッダへの熱伝導がスムーズに行われるようにしている。このような熱インタフェース材(TIM)には、シリコングリース、インジウム、グラファイト等の高熱伝導性物質を樹脂バインダでシート状に成形したものなどがある。
【0005】
図5は従来のヒートスプレッダを用いた半導体装置の一例を示したものである。図中、1は配線基板(パッケージ)、2はパッケージ1の外部接続端子としてのピン、3はパッケージ1に実装された半導体素子(CPU等の発熱量の大きいチップ)、4はチップ3の実装エリアの周囲に配置されたデカップリング用のチップキャパシタ、5はヒートスプレッダを示す。このヒートスプレッダ5は、その主要部分が板状に成形されており(板状部5a)、その周囲にフット部5bが一体的に形成された構造を有している。ヒートスプレッダ5は、板状部5aとチップ3との間に熱インタフェース材(TIM)6を介在させて熱結合されるとともに、フット部5bとパッケージ1との間にシーラント(封止剤)7を介在させて機械的に接合されている。つまり、ヒートスプレッダ5は、半導体チップ3とともにチップキャパシタ4を封止するように搭載されている。さらに、ヒートスプレッダ5上にはヒートシンク8が搭載されている。
【0006】
かかる従来技術に関連する技術の一例は、下記の特許文献1に記載されている。この文献には、発熱部品が電気的に接続された配線基板とヒートシンクとが熱伝導性電気絶縁部材を介して接続されたパワーモジュールが記載されており(段落0084、図7等)、熱伝導性電気絶縁部材は、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、潜在性硬化剤及び無機フィラーを含む硬化組成物からなっている。
【0007】
また、これに関連する他の技術として、下記の特許文献2に記載されるように、多層回路基板の凹部に半導体素子がフリップチップ実装されると共に該凹部の周辺の基板上に受動素子が実装され、半導体素子の表面に接合材を介して放熱部材が接合された半導体装置がある(段落0027、図1等)。放熱部材は、基板の凹部の開口面積よりも広く、凹部の外周部に配設された接地電極に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−51573号公報
【特許文献2】特開2004−119882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来のヒートスプレッダを用いた半導体装置の構成(図5)では、ヒートスプレッダ5は半導体チップ3の周囲に配置されたチップキャパシタ4も封止するように搭載されているため、そのフット部5bが封止剤7を介して基板1に固定されている位置と、基板1上でチップ3が実装されている位置との距離が相対的に長くなり、基板1の熱的な挙動(チップ3の発熱に起因して起こり得る基板1の湾曲)に対してTIM6が追従できない場合があった。
【0010】
すなわち、基板(パッケージ)1に熱が加わると、図5に例示するように、封止剤7で固定されている位置を基点にパッケージ1が外側に(図示の例では下側に)湾曲する。この時、TIM6のチップ3もしくはヒートスプレッダ5との接触状態、又はTIM6の厚さが変わるため、熱的に不安定な状態となる。その結果、チップ3からヒートスプレッダ5への熱伝導がスムーズに行われず、放熱性を安定に維持することができない。
【0011】
特に、TIM6の材料として安価なグリースを使用していると、パッケージ1が湾曲したときに、TIM6が部分的にチップ3もしくはヒートスプレッダ5から剥がれてしまうことがある(図示の例では、チップ3から剥がれている状態を誇張して示している)。その場合、その部分での熱抵抗が大きくなってしまうため、本来有している高熱伝導性を発揮することができない。
【0012】
また、ヒートスプレッダ5はパッケージ1上でCPU等の発熱量の大きいチップ3を封止しており、そのヒートスプレッダ5の凹部内でチップ3が熱結合している部分は一部分にすぎないため、ヒートスプレッダ5の凹部内は熱気が溜まり易い状態となっている。このような点からも、放熱性能を改善する余地が残されている。
【0013】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、電子部品の動作時の熱による基板の形状変化が生じた場合でも、電子部品と放熱部品の間に介在されるTIMの安定した熱伝導性を確保し、放熱性を安定させると共に、全体として放熱性能を高めることができる放熱部品及びこれを用いた電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、配線基板に実装された電子部品との間に熱インタフェース材を介して接合される放熱部品であって、前記熱インタフェース材を介して前記電子部品に熱結合される板状部と、該板状部の前記電子部品に対向する側の面に形成されたフット部とを備え、前記フット部が、前記板状部の周縁から内側の部分の、前記電子部品の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所に、リング状に形成されていることを特徴とする放熱部品が提供される。
【0015】
また、本発明の他の形態によれば、配線基板に実装された電子部品が、上記の形態に係る放熱部品によって封止された構造を有し、さらに、前記板状部において前記電子部品に対向する側と反対側の面に更なる放熱部品が搭載されていることを特徴とする電子部品装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る放熱部品及びこれを用いた電子部品装置の構成によれば、放熱部品のフット部が板状部の周縁から内側の所定の箇所(電子部品の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所)に形成されているので、フット部の位置を電子部品に近づけることができる。つまり、基板上でフット部が固定される位置(電子部品の動作時の熱により基板が湾曲する際の基点)と、基板上で電子部品が実装される位置との距離が相対的に短くなるため、熱による基板の形状変化(湾曲)が生じた場合でも、その湾曲の程度は極小化され得る。
【0017】
これにより、電子部品と放熱部品の間に介在される熱インタフェース材は、基板の湾曲に柔軟に追従でき、熱的に安定した状態を維持することができる。その結果、電子部品から放熱部品へのスムーズな熱伝導が維持され、放熱性を安定させることができる。
【0018】
また、放熱部品においてフット部の形成位置から外側の部分も放熱部として機能し得るので、全体として放熱性能を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヒートスプレッダ(放熱部品)を用いた半導体装置(電子部品装置)の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るヒートスプレッダの各種変形例に係る構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るヒートスプレッダ(放熱部品)を用いた半導体装置(電子部品装置)の構成を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係るヒートスプレッダの各種変形例に係る構成を示す断面図である。
【図5】従来のヒートスプレッダを用いた半導体装置の一例及びその問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1の実施形態…図1、図2参照)
図1は本発明の第1の実施形態に係るヒートスプレッダ(放熱部品)を用いた半導体装置(電子部品装置)の構成を断面図の形態で示したものである。
【0022】
本実施形態の半導体装置30は、基本的には、放熱対象とされる電子部品としての半導体素子(発熱量の大きいCPU等のロジックチップ)10と、このチップ10を一方の面に実装したPGA(ピン・グリッド・アレイ)型のパッケージ(配線基板)12と、このパッケージ12上でチップ10との間に熱インタフェース材(TIM)15を介して接合されたヒートスプレッダ20と、このヒートスプレッダ20上に搭載されたヒートシンク24とを備えている。さらに、パッケージ12上で半導体チップ10の実装エリアの周囲には、チップ10(CPU等)の高速動作を支援するための複数のデカップリング用のチップキャパシタ11が配置されている。
【0023】
配線基板(パッケージ)12には樹脂基板を用いている。樹脂基板の形態としては、少なくとも最外層の絶縁層(ソルダレジスト層)から露出するパッド(ソルダレジスト層によって覆われた配線層の所要の箇所に画定される部分)が、基板内部を介して相互に電気的に接続された構造を有していれば十分である。樹脂基板(パッケージ12)の内部には配線層が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。基板内部に配線層が形成された形態の場合、複数の配線層が層間絶縁層(樹脂層)を介して積層され、各配線層及び各樹脂層に形成されたビアを介して最外層の配線層(各パッド)が相互に接続されている。例えば、ビルドアップ法を用いて形成される多層配線基板がある。
【0024】
この樹脂基板(パッケージ12)の、半導体チップ10及びチップキャパシタ12が実装されている側と反対側の面には、図示のように外部接続端子としてのピン13が接合されている。図示の例ではピン13を接合しているが、外部接続端子の形態がこれに限定されないことはもちろんである。ピン13の代わりに、はんだボールを当該パッドに接合したBGA(ボール・グリッド・アレイ)型のパッケージ構造としてもよい。また、かかる外部接続端子は必ずしも接合されている必要はなく、後で必要なときに外部接続端子を接合できるように当該パッドを露出させた状態(LGA(ランド・グリッド・アレイ)型のパッケージ構造)としてもよい。
【0025】
放熱対象である半導体チップ10は、そのフェイス面(回路が形成されている側の面)を下にしてパッケージ12上に実装されている。パッケージ12とチップ10の接続部分については具体的な図示を省略しているが、この部分の構成は、通常のパッケージにチップをフリップチップ接続した場合の構成と同じである。すなわち、パッケージ12の最外層の絶縁層(ソルダレジスト層)から露出するパッドに、チップ10の電極端子がはんだバンプ等を介して電気的に接続されている(フリップチップ実装)。さらに、その実装されたチップ10とパッケージ12との間隙に熱硬化性のエポキシ系樹脂等のアンダーフィル樹脂(図示せず)が充填され、熱硬化により機械的に接合されている。
【0026】
半導体チップ10のフェイス面と反対側の面(露出している側の面)は、熱インタフェース材(TIM)15を介してヒートスプレッダ20と熱的に結合されている。このTIM15の材料は特に限定しないが、少なくとも高熱伝導性を有した材料であれば十分である。具体的には、インジウム、シリコーン(または炭化水素)グリース、金属フィラー、グラファイトなどの高熱伝導性物質を樹脂バインダでシート状に成形したものが用いられる。
【0027】
例えば、インジウムの場合、シート状のものをチップ10とヒートスプレッダ20の間に挟み、インジウムの融点以下の温度で硬化する樹脂材料(封止剤16)を用いて、いったんヒートスプレッダ20とパッケージ12を固定した後、インジウムの融点以上の温度でリフローを行い、インジウムの厚さを制御しながらヒートスプレッダ20とチップ10を接合させる。その際、リフロー時にボイドが発生しないように慎重に処理を行う必要がある。
【0028】
なお、インジウムは比較的高価であり、また希少金属であることから、入手が困難となることも予想され、さらにリフロー等の熱処理が必要なことから、処理工程の面でも比較的複雑である。この点に鑑み、TIM15の材料として、熱処理が不要で比較的安価なグリースが好適に用いられる。
【0029】
ヒートスプレッダ20は、チップ10(CPU等)が動作時に発する熱をヒートシンク24に伝えて発散させるためのものである。このヒートスプレッダ20には、その材料として銅(Cu)が用いられ、さらにその表面にニッケル(Ni)めっきが施されている。ヒートスプレッダ20は、図示のように中央部分においてTIM15を介してチップ10に熱結合される板状部21と、この板状部21のチップ10に対向する側の面に形成されたフット部22とを備えている。
【0030】
このフット部22は、板状部21の周縁から内側の部分の、チップ10の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所に形成されている。ただし、その形成位置は、パッケージ12上でチップキャパシタ11が搭載されている位置に対応する部分よりも内側の箇所に選定されている。より具体的には、チップ10は平面視したときに方形もしくは矩形の形状を有しているので、それに対応させてフット部22も、方形もしくは矩形のリング状に形成されている。
【0031】
ヒートスプレッダ20は、そのリング状のフット部22とパッケージ(配線基板)12上の対応する箇所との間に封止剤16を介在させて、パッケージ12に接合されている。その際、パッケージ12上のチップキャパシタ11は、ヒートスプレッダ20(フット部22)の外側に位置している。封止剤16の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等に代表される熱硬化性樹脂が用いられる。
【0032】
ヒートスプレッダ20は、以下のようにして作製することができる。先ず、所要の大きさ(例えば、40×40mm程度)を有した厚めの銅板を用意する。次に、この銅板の一方の面に対し、その周縁から内側の所定の箇所(チップ実装エリアに対応する部分の周囲のリング状の部分)を残して他の部分(そのリング状の内側及び外側の部分)を、プレス加工、切削加工、エッチング等により、所要の深さまで凹部状に除去する。この深さは、チップ10の厚さ及びTIM15の厚さに応じて適宜選定される。さらに、全面にニッケル(Ni)めっきを施すことで、所要のヒートスプレッダ20を得ることができる。
【0033】
このヒートスプレッダ20上に搭載されるヒートシンク24には、その材料として、軽量で加工がし易く、しかも低コストであるという点から、アルミニウムもしくはその合金が好適に用いられる。これは、ヒートシンク24がヒートスプレッダ20上に搭載されて使用され、ヒートスプレッダ20から伝達された熱を大気中に効率良く発散させるためのフィン構造に成形する必要があるからである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るヒートスプレッダ20(図1)を用いた半導体装置30の構成によれば、ヒートスプレッダ20のフット部22を板状部21の周縁から内側の所定の箇所(チップ10の実装エリアに対応する部分の周囲で、チップキャパシタ11の搭載位置に対応する部分よりも内側の箇所)に設けているので、フット部22の位置をチップ10に近づけることができる。つまり、基板12上でヒートスプレッダ20のフット部22が封止剤16を介して固定されている位置(チップ10の動作時の熱により基板12が湾曲する際の基点)と、基板12上でチップ10が実装されている位置との距離が短くなるため、熱で基板12が反った場合でも、その反り(湾曲)の程度は極小化され得る。
【0035】
これにより、チップ10とヒートスプレッダ20の間に介在されるTIM15は、基板12の反りに柔軟に追従でき(つまり、基板12の反りの影響を受け難く、TIM15の厚さが安定する)、熱的に安定した状態を維持することができる。その結果、チップ10からヒートスプレッダ20へのスムーズな熱伝導が維持され、放熱性を安定させることができる。
【0036】
また、ヒートスプレッダ20においてフット部22の形成位置から外側の部分(フット部22の形成位置から外側の板状部21の、フット部22が形成されている側の部分と、フット部22の側壁部分)も放熱部として機能するため、ヒートスプレッダ20全体として放熱性能を高めることができる。
【0037】
図2は、第1の実施形態に係るヒートスプレッダ20の各種変形例に係る構成を断面図の形態で示したものである。
【0038】
先ず、図2(a)に示す第1変形例に係るヒートスプレッダ20aの構成では、板状部21においてフット部22の形成位置から外側の部分の一方の面(フット部22が形成されている側の面)に、多数の針状の突起部分21aが設けられている。他の構成については、第1の実施形態(図1)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0039】
この針状の突起部分21aは、種々の方法を用いて形成することができる。本発明の要旨と関係しないので詳細な説明は省略するが、めっき法や蒸着法等を用いて所要の突起部分21aを形成することができる。
【0040】
例えば、無電解銅めっきにより、ヒートスプレッダ20aの表面(板状部21においてフット部22の形成位置から外側の部分の一方の面)に針状の突起を形成してもよい。具体的には、銅−ニッケル−リンに還元剤として次亜リン酸を添加しためっき液を用いて、ヒートスプレッダ20aの表面に無電解銅めっきを施すことにより、ヒートスプレッダ20aの表面に高さ約1μmの針状の突起部分21aを形成することができる。
【0041】
他の方法としては、例えば、CVD法を用いて多数のカーボンナノチューブをヒートスプレッダ20aの表面に成長させることで、所要の突起部分21aを形成してもよい。カーボンナノチューブをヒートスプレッダ20a上に成長させる代わりに、例えば、シリコン基板等からなる支持体(仮基板)上にカーボンナノチューブを形成しておき、このカーボンナノチューブをヒートスプレッダ20aの表面に転写するようにしてもよい。
【0042】
この第1変形例のヒートスプレッダ20aによれば、板状部21のフット部22の形成位置から外側の部分に針状の表面処理(突起部分21aの形成)を施しているので、この部分の表面積(放熱面積)を増やすことができる。これにより、上述した実施形態のヒートスプレッダ20(図1)と比べて、さらに放熱性を向上させることができる。特に、突起部分21aの材料としてカーボンナノチューブを用いた場合、熱伝導性に優れているため、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0043】
この構成では、単に放熱面積が増えるだけではなく、以下の点からも有効である。すなわち、ヒートスプレッダ20a上にはヒートシンク24(図1)が搭載されているが、このヒートシンク24の材料にはアルミニウムもしくはその合金が用いられており、ヒートスプレッダ20aの材料(銅)と比べて熱抵抗が大きい。従って、熱抵抗が小さい方の銅材(ヒートスプレッダ20a)の表面積を増やすことで、より有効な放熱対策を講じることができる。
【0044】
次に、図2(b)に示す第2変形例に係るヒートスプレッダ20bの構成では、上述した第1変形例の場合と同様に、板状部21においてフット部22の形成位置から外側の部分の一方の面(フット部22が形成されている側の面)に、多数のフィン形状の突起部分21bが設けられている。この突起部分21bは、切削加工や型などを用いて機械的に形成されている。他の構成については、第1の実施形態(図1)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0045】
この第2変形例のヒートスプレッダ20bにおいても、第1変形例(図2(a))の場合と同様に、板状部21のフット部22の形成位置から外側の部分の表面積(放熱面積)を増やすことができるので、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0046】
次に、図2(c)に示す第3変形例に係るヒートスプレッダ20cの構成では、板状部21においてフット部22の形成位置から外側の部分に、板状部21を厚さ方向に貫通する多数の孔21cが設けられている。この孔21cは、プレス加工等により形成することができる。他の構成については、第1の実施形態(図1)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0047】
この第3変形例のヒートスプレッダ20cによれば、上記の突起部分21a,21bに代えて孔21cを設けている点で構成上の相違はあるものの、上記の場合と同様に、板状部21のフット部22の形成位置から外側の部分の放熱面積を増やすことができるので、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0048】
(第2の実施形態…図3、図4参照)
図3は本発明の第2の実施形態に係るヒートスプレッダ(放熱部品)を用いた半導体装置(電子部品装置)の構成を断面図の形態で示したものである。
【0049】
本実施形態の半導体装置30aは、上述した第1の実施形態の半導体装置30(図1)と比べて、ヒートスプレッダ25の形状及びその配置態様においてのみ相違する。他の構成については、第1の実施形態の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0050】
この第2の実施形態に係るヒートスプレッダ25の構成では、第1の実施形態の場合と同様に、フット部27は、板状部26の周縁から内側の部分の、チップ10の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所に形成されている。ただし、その形成位置は、パッケージ12上でチップキャパシタ11が搭載されている位置に対応する部分よりも外側の箇所で、パッケージ12の周縁部に対応する箇所に選定されている。
【0051】
このため、ヒートシンク24は、板状部26においてフット部27の形成位置から内側の部分の、チップ10に対向する側と反対側の面に搭載されている。つまり、板状部26においてフット部27の形成位置から外側の部分は、図示のようにヒートシンク24の側端面から水平方向に突出している。
【0052】
この第2の実施形態に係るヒートスプレッダ25を用いた半導体装置30aの構成によれば、上述した第1の実施形態の場合と同様に、ヒートスプレッダ25のフット部27は板状部26の周縁から内側の所定の箇所に設けられ、フット部27の形成位置から外側の板状部26の部分は放熱部として機能し得るため、ヒートスプレッダ25全体として放熱性能を高めることができる。さらに、この第2の実施形態では、フット部27の形成位置から外側の板状部26の部分は上下両面とも開放されているので、第1の実施形態における板状部21の部分と比べて、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0053】
なお、この第2の実施形態では、フット部27の形成位置がチップキャパシタ11の搭載位置よりも外側にあるため、チップ10の実装位置との距離は、第1の実施形態の場合よりも長くなっている。このため、熱で基板12が反った場合に、チップ10とヒートスプレッダ25の間に介在されるTIM15が基板12の反りに柔軟に追従できないことも想定される。その場合には、フット部27の位置をチップ10側に極力近づけるようにヒートスプレッダ25の形状を適宜変更するとよい。
【0054】
図4は、第2の実施形態に係るヒートスプレッダ25の各種変形例に係る構成を断面図の形態で示したものである。
【0055】
先ず、図4(a)に示す第1変形例に係るヒートスプレッダ25aの構成では、板状部26においてフット部27の形成位置から外側の部分の両面に、それぞれ多数の針状の突起部分26aが設けられている。この突起部分26aを形成する方法については、上述した第1の実施形態の第1変形例(図2(a))の場合と同様に、めっき法や蒸着法、CVD法等を用いて形成することができる。他の構成については、第2の実施形態(図3)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0056】
この第1変形例のヒートスプレッダ25aによれば、板状部26においてフット部27の形成位置から外側の部分の両面に針状の表面処理(突起部分26aの形成)を施しているので、この部分の表面積(放熱面積)を増やすことができ、第2の実施形態(図3)の場合と比べて、さらに放熱性を向上させることができる。また、フット部27の形成位置から外側の部分に注目すれば、上述した第1の実施形態の第1変形例(図2(a))の場合と比べて、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0057】
次に、図4(b)に示す第2変形例に係るヒートスプレッダ25bの構成では、上述した第1変形例(図4(a))の場合と同様に、板状部26においてフット部27の形成位置から外側の部分の両面に、それぞれ多数のフィン形状の突起部分26bが設けられている。この突起部分26bを形成する方法については、上述した第1の実施形態の第2変形例(図2(b))の場合と同様に、切削加工等により形成することができる。他の構成については、第2の実施形態(図3)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0058】
この第2変形例のヒートスプレッダ25bにおいても、上述した第2の実施形態の第1変形例(図4(a))の場合と同様に、板状部26のフット部27の形成位置から外側の部分の表面積(放熱面積)を増やすことができるので、放熱性の更なる向上を図ることができる。また、フット部27の形成位置から外側の部分に注目すれば、上述した第1の実施形態の第2変形例(図2(b))の場合と比べて、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0059】
次に、図4(c)に示す第3変形例に係るヒートスプレッダ25cの構成では、上述した第1の実施形態の第3変形例(図2(c))の場合と同様に、板状部26においてフット部27の形成位置から外側の部分に、板状部26を厚さ方向に貫通する多数の孔26cが設けられている。この孔26cを形成する方法については、上記の場合と同様に、プレス加工等により形成することができる。他の構成については、第2の実施形態(図3)の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0060】
この第3変形例のヒートスプレッダ25cによれば、第1変形例、第2変形例の突起部分26a,26bに代えて孔26cを設けている点で構成上の相違はあるものの、上記の場合と同様に、板状部26のフット部27の形成位置から外側の部分の放熱面積を増やすことができるので、放熱性の更なる向上を図ることができる。また、上述した第1の実施形態の第3変形例に係るヒートスプレッダ20c(図2(c))と比べて構成上は同じであるが、この第2の実施形態(図3)ではフット部27の形成位置から内側の部分にヒートシンク24が搭載されているため、フット部27の形成位置から外側の部分は、上下両面とも開放されている。従って、フット部27の形成位置から外側の部分に注目すれば、上述した第1の実施形態の第3変形例(図2(c))の場合と比べて、放熱性の更なる向上を図ることができる。
【0061】
上述した各実施形態では、パッケージ12に半導体チップ10と共にチップキャパシタ11が搭載された半導体装置30,30aを例にとって説明したが、本発明の要旨(放熱部品のフット部を板状部の周縁から内側の部分の所定の箇所に設けること)からも明らかなように、チップキャパシタは必ずしも搭載する必要はない。また、チップキャパシタ以外の受動素子(抵抗素子など)を搭載したものにも本発明は適用可能である。
【0062】
要は、放熱を必要とする電子部品が配線基板(パッケージ)に実装され、この電子部品との間に熱インタフェース材(TIM)を介して放熱部品(ヒートスプレッダ)が接合された構造を有していれば十分であり、このような構造を有した電子部品装置であれば本発明は同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…半導体素子(チップ/電子部品)、
12…パッケージ(配線基板)、
15…熱インタフェース材(TIM)、
16…封止剤(シーラント)、
20(a,b,c),25(a,b,c)…ヒートスプレッダ(放熱部品)、
21,26…板状部、
21a,21b,26a,26b…突起部分、
21c,26c…孔、
22,27…フット部、
24…ヒートシンク、
30,30a…半導体装置(電子部品装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に実装された電子部品との間に熱インタフェース材を介して接合される放熱部品であって、
前記熱インタフェース材を介して前記電子部品に熱結合される板状部と、該板状部の前記電子部品に対向する側の面に形成されたフット部とを備え、
前記フット部が、前記板状部の周縁から内側の部分の、前記電子部品の実装エリアに対応する部分の周囲の箇所に、リング状に形成されていることを特徴とする放熱部品。
【請求項2】
前記板状部において前記フット部の形成位置から外側の部分の、少なくとも前記フット部が形成されている側の面に、多数の突起部分が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部品。
【請求項3】
前記突起部分は、カーボンナノチューブからなることを特徴とする請求項2に記載の放熱部品。
【請求項4】
前記板状部において前記フット部の形成位置から外側の部分に、該板状部を厚さ方向に貫通する多数の孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部品。
【請求項5】
配線基板に実装された電子部品が、請求項1から4のいずれか一項に記載の放熱部品によって封止された構造を有し、さらに、前記板状部において前記電子部品に対向する側と反対側の面に更なる放熱部品が搭載されていることを特徴とする電子部品装置。
【請求項6】
前記更なる放熱部品は、前記板状部において前記フット部の形成位置から内側の部分に搭載され、該フット部の形成位置から外側の部分の両面に前記突起部分がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−134769(P2011−134769A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290655(P2009−290655)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】