放電灯点灯回路
【課題】直列共振回路を含む放電灯点灯回路において、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給する。
【解決手段】放電灯点灯回路1は、インバータ回路3と、インバータ回路3からの出力電圧を受けてトランス7を介して放電灯Lに交流電力を供給する直列共振回路4と、インバータ回路3を駆動するブリッジドライバ6と、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御部10とを備える。制御部10は、交流電力を定常値に維持する定常点灯制御回路11を有する。トランス7のインダクタンスは、一次巻線7aを流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じて第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に第2の減少率で減少するか又は略一定となる。
【解決手段】放電灯点灯回路1は、インバータ回路3と、インバータ回路3からの出力電圧を受けてトランス7を介して放電灯Lに交流電力を供給する直列共振回路4と、インバータ回路3を駆動するブリッジドライバ6と、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御部10とを備える。制御部10は、交流電力を定常値に維持する定常点灯制御回路11を有する。トランス7のインダクタンスは、一次巻線7aを流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じて第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に第2の減少率で減少するか又は略一定となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前照灯などに用いられるメタルハライドランプ等の放電灯を点灯させるためには、電力を安定的に供給するための点灯回路(バラスト)が必要となる。例えば、特許文献1に開示された放電灯点灯回路は、直列共振回路を含む直流−交流変換回路を備えており、この直流−交流変換回路からトランスを介して放電灯へ交流電力が供給される。そして、供給電力の大きさは、直列共振回路を駆動するブリッジドライバの駆動周波数を変化させることにより制御される。
【特許文献1】特開2005−63819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放電灯のインピーダンスは、その点灯状態によって大きく変化する。例えば、点灯直後のグロー放電時においては放電灯のインピーダンスは極めて大きく、グロー放電からアーク放電への移行に従って急激に小さくなる。また、定常点灯状態においても、直流−交流変換回路から供給される交流電力の大きさによって放電灯のインピーダンスは変化する。この放電灯のインピーダンスは直列共振回路の負荷抵抗に相当するので、直列共振回路のQ値は、放電灯のインピーダンスが大きくなるほど、また小さくなるほど大きくなり、放電灯のインピーダンスが或る値のときに最小値となる。従来の放電灯点灯回路においては、放電灯のインピーダンスが、直列共振回路のQ値が過度に小さくなるような値となるおそれがあり、この場合、放電灯へ十分な電力を供給することができなくなり、放電灯の点灯維持が困難となる。
【0004】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、直列共振回路を含む放電灯点灯回路において、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明による放電灯点灯回路は、交流電力を放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、インバータ回路と、トランスの一次巻線及びコンデンサを含み、インバータ回路からの出力電圧を受けてトランスの二次巻線を介して放電灯に交流電力を供給する直列共振回路と、インバータ回路を駆動する駆動部と、駆動部の駆動周波数を制御するための制御信号を生成する制御部とを備え、制御部は、交流電力が定常値に維持されるように駆動周波数を制御する定常点灯制御回路を有し、トランスは、一次巻線を流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定であり、所定の値は、定常点灯制御回路による定常点灯状態における励磁電流の最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流の変動範囲に含まれることを特徴とする。
【0006】
本発明者らの知見によれば、トランスのインダクタンスを小さくすると最大供給電力を大きくすることができるが、同時にトランスの二次側への電力伝達効率が低下して電力損失も増大してしまう。しかし、点灯直後のグロー放電状態からアーク放電状態へ至るごく僅かな期間(以下、初期点灯期間とする)であれば、トランスのインダクタンスを小さくして電力損失が増大したとしても全体的な消費電力量には殆ど影響しない。逆に、アーク成長後の定常点灯期間では、トランスのインダクタンスを小さくして電力損失が増大すると全体的な消費電力量に大きく影響するので、この期間においてはトランスのインダクタンスが大きいことが望ましい。
【0007】
上述した初期点灯期間においては、アークが十分に成長していないため放電灯のインピーダンスは数十キロオームないし数十オームと高く、且つ放電灯のインピーダンスは急激に変化する。また、定常点灯期間においては、アークが十分に成長しているため、放電灯のインピーダンスは定格電力で点灯した場合数十オームないし数百オームと低くなり、放電灯のインピーダンス変化は緩やかである。従って、初期点灯期間においてトランスのインダクタンスを小さくし、定常点灯期間においてトランスのインダクタンスを大きくすれば、消費電力に殆ど影響することなく最大供給電力を増大させることができる。本発明者らは、放電灯のインピーダンスが大きくなるほどトランスの一次巻線を流れる励磁電流が増大するという事実に着目し、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが減少するような特性をトランスに持たせることを考えた。
【0008】
しかしながら、トランスのインダクタンスが減少し過ぎた場合、トランスの磁気結合が低下し過ぎて、必要な電力を放電灯へ伝達できなくなるおそれがある。特に、放電灯の点灯直後はインピーダンスが高く励磁電流も大きいが、このときに必要な電力を伝達できないとアーク放電状態へ移行できない。
【0009】
以上の点に鑑み、上述した放電灯点灯回路においては、直列共振回路を構成するトランスに工夫がなされている。すなわち、上記放電灯点灯回路においては、励磁電流が所定の値より小さい場合には励磁電流の増加に応じてトランスのインダクタンスが第1の減少率で減少する。そして、この所定の値は、定常点灯制御回路による定常点灯状態における励磁電流の最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流の変動範囲に含まれる。これにより、定常点灯期間においては放電灯のインピーダンスが小さいほどトランスのインダクタンスが大きくなるので、電力損失を抑えることができる。また、励磁電流が所定の値より大きい場合には、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定となる。これにより、放電灯のインピーダンスが大きい初期点灯期間においてトランスのインダクタンスを小さく抑え、十分な電力を放電灯へ供給でき、且つインダクタンスの過度の減少を防止してアーク放電状態への移行を促進できる。このように、上記した放電灯点灯回路によれば、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給することができる。
【0010】
また、放電灯点灯回路は、トランスのコアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ)が、励磁電流が所定の値より小さい場合に該励磁電流の増加に応じて第1の減少率に相当する割合で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に該励磁電流の増加に応じて第2の減少率に相当する割合で減少するか又は略一定であることを特徴としてもよい。これにより、励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第2の減少率で減少するか又は略一定となるトランスを好適に実現できる。
【0011】
また、放電灯点灯回路は、トランスが、一次巻線及び二次巻線が巻回される軸芯部、及び軸芯部の一端に磁気的に結合され軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、軸芯部の他端と脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材とを有し、第1及び第2のコア部材が互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材の透磁率が第1のコア部材の透磁率より小さいことを特徴としてもよい。或いは、トランスが、一次巻線及び二次巻線が巻回される軸芯部、及び軸芯部の一端に磁気的に結合され軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、軸芯部の他端と脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材とを有し、第1及び第2のコア部材が同一の磁性材料からなり、第2のコア部材の最小断面積が第1のコア部材の最小断面積より小さいことを特徴としてもよい。これらのうち何れかの構成によって、励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第2の減少率で減少するか又は略一定となるトランスを好適に実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放電灯点灯回路によれば、直列共振回路を含む放電灯点灯回路において、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放電灯点灯回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示す図である。図1に示す放電灯点灯回路1は、放電灯Lを点灯させるための交流電力を放電灯Lへ供給する回路であって、直流電源Bからの直流電圧VBを交流電圧に変換して放電灯Lに供給する。放電灯点灯回路1は、主に車輌用の、特に前照灯などの灯具に用いられる。なお、放電灯Lとしては、例えば水銀フリーのメタルハライドランプが好適に用いられるが、他の構造をもつ放電灯であってもよい。
【0015】
放電灯点灯回路1は、電力供給部2、制御部10、及びV−F変換部24を備える。電力供給部2は、制御部10からの制御信号Sc1に基づく大きさの電力を放電灯Lへ供給する。電力供給部2は、点灯操作のためのスイッチ20を介して直流電源B(バッテリーなど)に接続されており、直流電源Bから直流電圧VBを受けて交流変換及び昇圧を行う。本実施形態の電力供給部2は、直流電圧VBを矩形波の電圧に変換するハーフブリッジインバータ回路(以下、単にインバータ回路という)3と、インバータ回路3の後段に設けられた直列共振回路4と、点灯開始時に放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部5と、インバータ回路3を駆動する駆動部であるブリッジドライバ6とを有する。
【0016】
インバータ回路3は、二つの出力端3a,3bを有しており、出力端3aと出力端3bとの間に矩形波の電圧を出力する。インバータ回路3は、スイッチング素子である2つのトランジスタ31及び32が直列に接続されて構成されている。具体的には、トランジスタ31の一方の電流端子(ドレイン端子)は直流電源Bのプラス側端子に接続されており、トランジスタ31の他方の電流端子(ソース端子)はトランジスタ32の一方の電流端子(ドレイン端子)に接続されており、トランジスタ31の制御端子(ゲート端子)はブリッジドライバ6に接続されている。また、トランジスタ32の他方の電流端子(ソース端子)は電位の基準となる接地電位線GND(すなわち直流電源Bのマイナス側端子)に接続されており、トランジスタ32の制御端子(ゲート端子)はブリッジドライバ6に接続されている。そして、出力端3aはトランジスタ31のソース端子(トランジスタ32のドレイン端子)に設定されており、出力端3bはトランジスタ32のソース端子に設定されている。ブリッジドライバ6は、互いに逆相となる駆動信号Sdrv1、Sdrv2をトランジスタ31、32のゲート端子へ供給することにより、トランジスタ31,32を交互に導通させる。なお、トランジスタ31,32としては、例えば図1に示すようにNチャネルMOS型FETが好適に用いられるが、他のFETやバイポーラトランジスタでもよい。また、駆動信号Sdrv1、Sdrv2のデューティ比は各々50%とするとよい。
【0017】
直列共振回路4は、トランス7の一次巻線7a、コンデンサ8、及びインダクタ9を有する。トランス7は、放電灯Lへ高圧パルスを印加し、また、直列共振回路4からの交流電力を放電灯Lへ伝えると共に該交流電力を昇圧するために設けられる。本実施形態では、コンデンサ8と、インダクタ9と、トランス7の一次巻線7aとが、この順で互いに直列に接続されている。そして、その直列回路のコンデンサ8側の一端はインバータ回路3の一方の出力端3aに接続されており、一次巻線7a側の一端はインバータ回路3の他方の出力端3bに接続されている。この構成においては、トランス7の一次巻線7aのリーケージ(漏れ)インダクタンス、及びインダクタ9のインダクタンスからなる合成リアクタンスと、コンデンサ8の容量とによって共振周波数が決定される。なお、一次巻線7a及びコンデンサ8のみによって直列共振回路を構成し、インダクタ9を省略してもよい。
【0018】
インバータ回路3及び直列共振回路4においては、コンデンサ8及び誘導性要素(インダクタンス成分やインダクタ)による直列共振現象を利用し、トランジスタ31,32の駆動周波数をこの直列共振周波数以上の値に規定して該トランジスタ31,32を交互にオン/オフさせ、トランス7の一次巻線7aに交流電力を生じさせる。この交流電力は、トランス7の二次巻線7bへ昇圧されて伝達され、二次巻線7bに接続された放電灯Lへ供給される。なお、トランジスタ31,32を駆動するブリッジドライバ6は、トランジスタ31,32が共に導通状態とならないように相反的に各トランジスタ31,32を駆動する。
【0019】
直列共振回路4のインピーダンスは、ブリッジドライバ6によるトランジスタ31,32の駆動周波数によって変化する。従って、放電灯Lに供給される交流電力の大きさを、該駆動周波数を変化させることにより制御できる。ここで、図2は、トランジスタ31,32の駆動周波数と供給電力の大きさとの関係を概念的に示すグラフである。図2に示すように、放電灯Lに供給される電力の大きさは、駆動周波数が直列共振周波数fonと等しいときに最大値Pmaxとなり、駆動周波数が直列共振周波数fonよりも大きくなる(または小さくなる)に従って減少する。但し、駆動周波数が直列共振周波数fonよりも小さい場合、スイッチング損失が大きくなり電力効率が低下したり、放電灯Lへ供給する電力制御が不安定になるおそれがある。従って、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、直列共振周波数fonよりも大きい領域(図中の領域F)においてその大きさが制御される。本実施形態においては、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、ブリッジドライバ6に接続されたV−F変換部24からの制御信号Sc2(周波数変調されたパルス列を含む信号)のパルス周波数に従って制御される。
【0020】
起動部5は、放電灯Lに起動用の高圧パルスを印加するための回路であり、起動部5からトリガー電圧及び電流がトランス7に印加されると、トランス7の二次巻線7bにおいて生成される交流電圧に高圧パルスが畳重される。起動部5は、高圧パルスを生成するための電力を蓄える起動用コンデンサ(容量素子)51と、スパークギャップやガスアレスタ等の自己降伏型スイッチング素子52とを有する。起動用コンデンサ51の一端は整流素子(ダイオード)53及び抵抗素子54を介してトランス7の補助巻線7cの一端に接続されており、起動部5への入力電圧が提供される。補助巻線7c及び起動用コンデンサ51それぞれの他端は、共にインバータ回路3の出力端3b(すなわち接地電位線GND)に接続されている。なお、起動部5への入力電圧については、例えば、トランス7の二次巻線7bから得てもよく、或いはインダクタ9と共にトランスを構成する補助巻線を設けて該補助巻線から得てもよい。
【0021】
自己降伏型スイッチング素子52の一端は起動用コンデンサ51の一端と接続されており、自己降伏型スイッチング素子52の他端は一次巻線7aの途中に接続されている。起動部5においては、起動用コンデンサ51の両端電圧が自己降伏型スイッチング素子52の放電開始電圧に達すると、自己降伏型スイッチング素子52が瞬間的に導通状態となることによってトリガー電圧及び電流が出力される。
【0022】
制御部10は、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御することにより、放電灯Lの未点灯時には無負荷時出力電圧(OCV)の大きさを制御し、放電灯Lの点灯後には放電灯Lへの供給電力の大きさを制御する。制御部10は、例えばオペアンプ等によるアナログ演算回路や、或いはマイコン、特定用途向け集積回路(ASIC)等のディジタル演算回路によって好適に実現される。
【0023】
制御部10は、入力端10a及び10b、並びに出力端10cを有する。入力端10aは、放電灯Lのランプ電圧VLの振幅を示す信号(以下、ランプ電圧相当信号という)VSを入力するために、ピークホールド回路21を介して二次巻線7bの中間タップに接続されている。ランプ電圧相当信号VSは、ランプ電圧VLのピーク値の例えば0.35倍に設定される。入力端10bは、放電灯Lのランプ電流ILを検出するために設けられた抵抗素子25の一端に、ピークホールド回路22及びバッファ23を介して接続されている。抵抗素子25の一端は、更に放電灯点灯回路1の出力端子を介して放電灯Lの一方の電極に接続され、抵抗素子25の他端は、インバータ回路3の出力端3b(接地電位線GND)に接続されている。そして、バッファ23からは、ランプ電流ILの振幅を示す信号(以下、ランプ電流相当信号という)ISが出力される。
【0024】
制御部10は、定常点灯制御回路11を有する。定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯後において、放電灯Lへ供給される交流電力が定常値(例えば35W)に維持されるようにインバータ回路3の駆動周波数を制御するための回路である。定常点灯制御回路11は、ランプ電圧相当信号VS及びランプ電流相当信号ISに基づいて制御信号Sc1を生成する。なお、定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯前において、放電灯Lに供給されるべきOCVの大きさが或る値に近づくようにランプ電圧相当信号VSに基づいて制御信号Sc1を生成する機能を兼ね備えても良い。また、定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯後において、放電灯Lに供給される電力の大きさが例えば定常値より大きい値(例えば75W)から所定の時間関数及びランプ電圧VLに従って定常値(35W)に近づくように制御信号Sc1を生成する機能を兼ね備えても良い。
【0025】
すなわち、本実施形態の制御部10は、放電灯Lの点灯後、所定の時間関数に従って、まず供給電力の大きさが初期値(例えば75W)となるように、そして、或る時刻(この時刻は、ランプ電圧の変化によって決定される)以降、供給電力の大きさが初期値から定常値(例えば35W)へ徐々に近づくように、制御信号Sc1を生成する。
【0026】
こうして生成された制御信号Sc1は、V−F変換部24に入力される。V−F変換部24は、アナログ信号である制御信号Sc1を制御部10の出力端10cから入力し、この制御信号Sc1をV−F変換して制御信号Sc2を生成する。V−F変換部24は、生成した制御信号Sc2をブリッジドライバ6へ提供する。
【0027】
ここで、本実施形態のトランス7が有するインダクタンス特性について説明する。図3は、本実施形態のトランス7が有するインダクタンス特性を示すグラフである。なお、図3において、縦軸はトランス7の一次巻線7aのインダクタンスである一次インダクタンスLpを示し、横軸は一次巻線7aを流れる励磁電流Ipを示す。同図に示すように、トランス7の一次インダクタンスLpは、一次巻線7aを流れる励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合(図中の領域I1)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少し、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合(図中の領域I2)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少するか、又は図中に一点鎖線で示すように略一定となる。なお、一般的に、励磁電流Ipが過度に大きな領域(図中の領域I3)においては、磁気飽和が起き一次インダクタンスLpは励磁電流Ipの増加と共に大きく減少する。
【0028】
領域I1と領域I2との境界となる励磁電流Ipの所定の値Ipaは、例えば車輌の前照灯に適用される放電灯点灯回路の場合、2〜6[A]であり、特に3.0[A]程度が好ましい。また、領域I2と領域I3との境界となる励磁電流Ipの値Ipbを例示すると、例えば100[A]である。また、励磁電流Ipが所定の値Ipaであるときの一次インダクタンスLpの値Lpaは例えば100〜200[nH]であり、特に150[nH]程度が好ましい。また、励磁電流Ipがほぼゼロのときの一次インダクタンスLpの値Lpbは例えば300〜500[nH]であり、特に330[nH]程度が好ましい。なお、値Ipaを3.0[A]とし、値Lpaを150[nH]とし、値Lpbを330[nH]とした場合、第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)は、(330[nH]−150[nH])/3.0[A]=60[nH/A]となる。なお、第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)は、この第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)と比べて絶対値が小さいほど好ましく、ほぼゼロ(すなわちインダクタンスLpが略一定)であると尚好ましい。
【0029】
また、励磁電流Ipの所定の値Ipaは、定常点灯制御回路11による定常点灯状態(すなわち、放電灯Lへの供給電力が定常値に維持される状態)における励磁電流Ipの最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流Ipの変動範囲に含まれる。
【0030】
以下、トランス7のこのようなインダクタンス特性による作用及び効果について説明する。
【0031】
図4は、直列共振回路4の共振部分のみを等価的に表現した回路図である。図4において、Crはコンデンサ8の容量、Lrはインダクタ9のインダクタンス、Lpはトランス7の一次インダクタンス、Lsはトランス7の二次インダクタンス、RLは放電灯Lのインピーダンス、Nはトランス7の一次巻線7aと二次巻線7bとの巻数比、kはトランス7の結合係数、ILはランプ電流、Ipは一次巻線7aを流れる励磁電流である。この等価回路においては、IpとILとの和が全体の共振電流であり、これらの関係は次の(1)式で表される。
【数1】
この(1)式は、放電灯LのインピーダンスRLが高いと励磁電流Ipが増加することを表している。
【0032】
一方、直列共振回路4が放電灯Lへ供給可能な最大電力値は、直列共振回路4の負荷インピーダンスすなわち放電灯LのインピーダンスRLに応じて変化する。図5は、このような最大電力値の変化を概念的に説明するための図である。同図において、縦軸は放電灯Lへの最大供給電力値を示し、横軸はインバータ回路3の駆動周波数を示す。同図に示すように、放電灯Lのインピーダンスが高い場合(グラフG1)や低い場合(グラフG2)には、直列共振回路4の共振のQ値が大きくなり、最大供給電力値が大きくなる。これに対し、放電灯Lのインピーダンスが中間的な或る値のとき(グラフG3)に直列共振回路4の共振のQ値が最小値をとり、最大供給電力値が最小となる。なお、従来の放電灯点灯回路においては、このようなインピーダンスのときに放電灯Lに十分な電力を供給できず、点灯を維持させることが難しい場合があった。
【0033】
図6は、放電灯Lのインピーダンスと最大供給電力値(図5の各グラフG1〜G3のピーク電力に相当)との相関を概略的に示すグラフである。同図に示すとおり、最大供給電力値は放電灯Lのインピーダンスが高いほど、また低いほど大きく、インピーダンスが或る値RLaとなる場合に最小値Pminとなる。この値RLaは、通常、放電灯Lが始動してから定常状態に至るまでのインピーダンスの変動範囲内に属する。放電灯Lが点灯維持可能な電力(或いは定格電力)をP0とすると、同図に示すように、最大供給電力値の最小値PminがP0を下回る場合、放電灯Lのインピーダンスが変化して値RLa付近を通過する際に放電灯Lの点灯を維持することができない。従って、このような場合、最大供給電力値の最小値Pminを図中の一点鎖線で示す位置まで引き上げ、最小値PminがP0を上回るようにすればよい。
【0034】
ここで、最大供給電力値が最小値Pminとなるときの放電灯LのインピーダンスRLaは、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、トランス7の巻数比Nなどに依存する。すなわち、これらの数値を調整することにより、インピーダンスRLaの大きさを調整できる。図7は、放電灯Lの点灯を開始してから定常点灯状態へ移行するまでの放電灯Lのインピーダンスの推移の典型例を示すグラフである。図7において、縦軸は放電灯Lのインピーダンスを示し、横軸は点灯開始からの経過時間を示す。同図に示すように、点灯開始後の放電灯Lのインピーダンスの推移は、放電灯Lの状態に応じて期間A〜Cの3つに分けられる。
【0035】
期間Aは、起動部5(図1参照)により放電灯Lに高圧パルスが印加されてから10ミリ秒以下という極めて短い期間である。放電灯Lは、この期間Aにおいて、高圧パルスによりブレークダウンして電極間にグロー放電を生じ、更にグロー放電からアーク放電へ移行する。放電灯Lのインピーダンスは、この期間Aにおいて初期の数十キロオームから数十オームへと大きく変化する。期間Bは、期間Aが終了してから定常点灯状態に至るまでの過渡的な期間であり、その長さは例えば数十秒である。この期間Bにおいて、図1に示した制御部10は、放電灯Lに供給される電力の大きさを定常値(定格電力)より大きい値(例えば75W)に維持することにより、放電灯Lの発光強度を急速に立ち上げる。車輌用放電灯の場合、期間Bにおけるインピーダンスは数オーム程度まで低下する。期間Cは、定常点灯状態を維持する期間である。この期間Cにおいて、制御部10の定常点灯制御回路11は、放電灯Lへ供給される交流電力が定常値(例えば35W)に維持されるようにインバータ回路3の駆動周波数を制御する。車輌用放電灯で定常値を定格電力とした場合、期間Cにおけるインピーダンスは数十オームないし数百オームの間で変化する。
【0036】
図6に示した最小値PminがP0を下回る場合、最小値Pminのタイミングが図7の期間Aに属すると、グロー放電からアーク放電への移行に電力不足が影響し、点灯始動性が低下してしまう。また、最小値Pminのタイミングが期間Bに属すると、放電灯Lの発光強度の立ち上がりが遅くなる。例えば車輌用放電灯においては、規定の明るさに達するまでの時間が厳格に定められており、発光強度の立ち上がりの遅れは好ましくない。また、最小値Pminのタイミングが期間Cに属すると、電力不足により放電灯Lが立ち消えるおそれがある。このように、最大供給電力が最小値Pminとなるタイミングが期間A〜Cのうちどの期間に属したとしても、最小値Pminは図6に示したP0を上回ることが要求される。すなわち、数十キロオームから数オームといった広いインピーダンス範囲において最大供給電力値がP0を上回ることが要求される。
【0037】
最大供給電力値を引き上げる最も簡易な方法は、トランス7の一次インダクタンスLpを小さくする方法である。すなわち、前述した(1)式より、トランス7の一次インダクタンスLpを小さくすれば、励磁電流Ipが大きくなるので供給電力を大きくすることができ、図6に示した最小値Pminを引き上げることができる。一次インダクタンスLpを小さくするには、例えばトランス7のコアのギャップを拡げるなどして結合係数を小さくするとよい。しかし、単に一次インダクタンスLpを小さくするだけでは、漏洩磁束が増して損失が大きくなり、電力効率が低下してしまう。
【0038】
電力効率の低下による回路装置への影響としては、放熱のために装置寸法が大きくなってしまうことが挙げられる。しかし、期間Aは極めて短期間であり、この期間に電力効率が低下したとしても発熱量は僅かである。従って、この期間Aにおいては多少の電力効率の低下は許容され、寧ろ放電灯Lへの十分な電力供給が優先される。電力効率の低下が好ましくないのは期間B及びCである。その中でも期間Bは一過性であり、より高い電力効率が求められるのは期間Cである。
【0039】
(1)式で説明したように、放電灯LのインピーダンスRLが高くなると励磁電流Ipは増加する。また、前述したように、放電灯LのインピーダンスRLは期間Aにおいて概ね高く、期間B及びCにおいて低い。そこで、励磁電流Ipの増加に伴いインダクタンスLpが低下するような特性をトランス7に持たせることにより、期間AにおいてインダクタンスLpを低く、且つ期間B,CにおいてインダクタンスLpを高くできる。更に、最大供給電力値が最小値PminとなるときのインピーダンスRLaが期間Aに属するように、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、及びトランス7の巻数比Nなどを予め設定しておくとよい。これにより、電力効率が最も低下するタイミングを期間Aに含め、期間B及びCにおいてより高い電力効率を確保できる。
【0040】
図8は、トランス7のインダクタンスLp、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、及びトランス7の巻数比Nを上記のように設定した場合における、最大供給電力値の改善の様子を示す図である。同図において、縦軸は最大供給電力値を示し、横軸は放電灯LのインピーダンスRLを示す。また、グラフG4は図6に示したグラフと同一であり、グラフG5は改善された特性を示している。また、図8には、グラフG4及びG5を期間A〜Cに区分する領域R1〜R3が図示されている。図8に示すように、放電灯LのインピーダンスRLが比較的高い期間AにおいてはインダクタンスLpが低くなるため、最大供給電力値の増加分(グラフG4からG5への増加分)が大きくなる。いま、最大供給電力値が最小値PminとなるインピーダンスRLaが期間Aのインピーダンス変動区間内に属しているので、最小値Pminはこの最大供給電力値の増加分の寄与を受け、グラフG5に示すようにP0を上回ることができる。これにより、期間Aにおける点灯始動性を確保できる。また、放電灯Lのインピーダンスが比較的低い期間B,CにおいてはインダクタンスLpが高くなるため、最大供給電力値の増加分は少ないが、電力損失を抑えることができる。
【0041】
ここで、一つ問題点がある。期間Aにおいて励磁電流Ipの増加(すなわち放電灯インピーダンスRLの増加)に伴いインダクタンスLpを単調に減少させてしまうと、放電灯インピーダンスRLが極めて大きい場合にトランス7の磁気結合が過度に低下してしまい、一次側(直列共振回路4)で生成された電力を二次側(放電灯L)へ伝達することが困難となってしまう。従って、例えば放電灯点灯回路1への電源投入から起動部5による高圧パルス発生までの期間にトランス7が十分なエネルギーを発生できず、高圧パルス発生に関わるエネルギーが不十分となり放電灯Lの放電を開始できないおそれがある。また、点灯直後など放電灯LのインピーダンスRLが極めて高い状態で電力損失が大きくなり過ぎ、放電灯Lに十分なエネルギーを供給できずアーク放電への移行に失敗するおそれがある。
【0042】
そこで、励磁電流Ipが或る値より大きい場合には、励磁電流Ipの増加に応じた一次インダクタンスLpの減少率の絶対値を小さくするか、又は励磁電流Ipの増加に関わらずインダクタンスLpを略一定とするとよい。すなわち、図3に示したように、トランス7の一次インダクタンスLpを、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合(領域I1)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少させ、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合(領域I2)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも絶対値が小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少させるか、又は図中に一点鎖線で示すように略一定とするとよい。そして、図3の領域I1が期間B,Cに該当するように、且つ領域I2が期間Aに該当するように、所定の値Ipaを設定するとよい。すなわち、この所定の値Ipaを、期間Cにおける励磁電流Ipの最大値よりも高くするか、又は期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含むとよい。
【0043】
また、電力効率について更に考慮すべき点がある。図9は、インバータ回路3の駆動周波数と供給電力との関係において、2つの典型的な状態を示すグラフである。同図において、グラフG6は最大供給電力が放電灯Lの定格電力(定常値)Paに極めて近い状態を示しており、グラフG7は最大供給電力が定格電力Paより十分に大きい状態を示している。グラフG6のように最大供給電力が定格電力Paに対して余裕のない場合、駆動周波数を共振周波数fonに近づけて直列共振回路4を動作させることとなる(図9のα点での動作)。また、グラフG7のように最大供給電力が定格電力Paに対して余裕をもつ場合、駆動周波数を共振周波数fonから遠ざけて直列共振回路4を動作させることとなる(図9のβ点での動作)。
【0044】
図10(a)及び(b)は、スイッチング素子(トランジスタ31)のドレイン−ソース間電圧Vdsの時間波形と、ドレイン電流Idの時間波形との相関を示す図である。なお、図10(a)は図9のグラフG6に示す状態において駆動周波数を共振周波数fonとほぼ一致させた場合を示しており、図10(b)は図9のグラフG7において駆動周波数を共振周波数fonから遠ざけた場合を示している。
【0045】
図9のα点で直列共振回路4を動作させた場合、図10(a)に示すようにスイッチング素子(トランジスタ31)をターンオフする瞬間のドレイン電流Idが0[A]となり、ゼロ電流スイッチング(ZCS:スイッチング素子を流れるドレイン電流がゼロとなるタイミングに近いタイミングでスイッチング素子をオン/オフさせることにより、スイッチング損失を軽減させる方法)を実現できる。これに対し、図9のβ点で直列共振回路4を動作させた場合、図10(b)に示すようにスイッチング素子をターンオフする瞬間のドレイン電流Idが大きく、ZCSとはならずにスイッチング損失が増加してしまう。電力効率を最も考慮すべき期間Cにおいては、このようなスイッチング損失も可能な限り低減することが望ましい。また、期間Cにおいては、インダクタンスLpの減少に伴うトランス7の磁気結合低下による損失も抑えることが望ましい。
【0046】
図11は、トランス7の一次インダクタンスLpが図3に示した特性を有する場合における、電力損失とインピーダンスRL(または励磁電流Ip)との関係を示す図である。なお、同図のグラフG8はインダクタンスLpの減少に伴う電力損失を示しており、グラフG9は駆動周波数が共振周波数fonから離れることによる電力損失(スイッチング損失)を示している。また、グラフG10はグラフG8及びG9を合わせた電力損失を示している。期間Cにおいて電力効率を効果的に高めるためには、図11に示すグラフG10の最小値付近(領域R4)が期間Cに該当することが望ましい。このため、図12に示すように、最大供給電力が最小値PminとなるインピーダンスRLaが期間Aだけでなく期間Cのインピーダンス変動範囲にも含まれるように、図3に示した所定の値Ipaを期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含めることが好ましい。これにより、定常点灯時における電力効率を最大限に高めることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の放電灯点灯回路1においては、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合には励磁電流Ipの増加に応じてトランス7の一次インダクタンスLpが第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少する。そして、この所定の値Ipaは、定常点灯制御回路11による定常点灯状態(すなわち期間C)における励磁電流Ipの最大値よりも高いか、又は期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含まれる。これにより、定常点灯期間Cにおいては放電灯LのインピーダンスRLが小さいほどトランス7の一次インダクタンスLpが大きくなるので、電力損失を抑えることができる。また、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合には、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpが第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも絶対値が小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少するか又は略一定となる。これにより、放電灯LのインピーダンスRLが大きい初期点灯期間Aにおいてトランス7の一次インダクタンスLpを小さく抑え、十分な電力を放電灯Lへ供給でき、且つ一次インダクタンスLpの過度の減少を防止してアーク放電状態への移行を促進できる。このように、本実施形態の放電灯点灯回路1によれば、放電灯Lのインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯Lへ供給することができる。
【0048】
続いて、図3に示したようなインダクタンス特性を実現するためのトランスの構成について説明する。このようなトランスを実現するための一つの方法としては、コアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ。すなわちB−Hカーブの傾き)を励磁電流Ipに応じて変化させるとよい。すなわち、コアの微分透磁率を、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合に励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)に相当する割合で減少させ、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合に励磁電流Ipの増加に応じて第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)に相当する割合で減少させるか又は略一定とするとよい。
【0049】
図13(a)は、このような特性を有するトランスのコアの構成例を示す図である。同図に示すコア60は、いわゆるE−Iコアによって閉磁路を構成しており、第1のコア部材(E型コア)61及び第2のコア部材(I型コア)62を有する。具体的には、第1のコア部材61は、一次巻線7a及び二次巻線7bが巻回される軸芯部63と、軸芯部63の一端63aに磁気的に結合され軸芯部63に沿って延びる部分を含む二本の脚部64,65とを有する。また、第2のコア部材62は、軸芯部63の他端63bと脚部64,65の先端64a,65aとに亘って設けられ、これらの端部63b、64a、及び65aを磁気的に結合する。第2のコア部材62の長手方向の両端部は端部64a,65aと接しており、第2のコア部材62の中央部は隙間(ギャップ)をあけて軸芯部63の他端63bと対向している。そして、第1のコア部材61と第2のコア部材62とは互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材62の透磁率は、第1のコア部材61の透磁率よりも小さい。なお、図1に示した補助巻線7cは、軸芯部63とは別の支柱(例えば脚部65)に巻回するのが好ましい。
【0050】
図13(b)は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア70は、第1のコア部材(E型コア)71及び第2のコア部材(I型コア)72を有する。第1のコア部材71の構成は図13(a)に示した第1のコア部材61と同様であり、軸芯部73と、二本の脚部74,75とを有する。また、第2のコア部材72は、軸芯部73の他端73bと脚部74,75の先端74a,75aとに亘って設けられ、これらの端部73b、74a、及び75aを磁気的に結合する。第2のコア部材72の長手方向の両端部は端部74a,75aと接しており、第2のコア部材72の中央部は隙間(ギャップ)をあけて軸芯部73の他端73bと対向している。そして、第1のコア部材71と第2のコア部材72とは同一の磁性材料からなり、第2のコア部材72の最小断面積(本例では、第2のコア部材72の断面積は長手方向に一定)が第1のコア部材71の最小断面積(本例では脚部74,75の断面積)より小さい。
【0051】
図13(a)または図13(b)に示した構成により、第2のコア部材62(72)において磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを或る減少率で減少させることができる。また、第1のコア部材61(71)及び第2のコア部材62(72)それぞれの磁性材料や最小断面積を適切に選択・設定することにより、励磁電流Ipが所定の値Ipaを超えた場合には励磁電流Ipが増加しても一次インダクタンスLpが殆ど減少しない(又は略一定となる)ようなトランスを好適に実現できる。
【0052】
図14は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア80は、第1のコア部材(E型コア)81及び第2のコア部材(I型コア)82を有する。第2のコア部材82の構成は図13(a)に示した第2のコア部材62と同様である。また、第1のコア部材81は、軸芯部83と、二本の脚部84,85とを有する。本例の軸芯部83は、その他端83bが第2のコア部材82に向けて次第に細くなるようなテーパ状に形成されている。そして、軸芯部83と第2のコア部材82との間のギャップが第2のコア部材82の長手方向に次第に縮小している。なお、本例においては、第1のコア部材81と第2のコア部材82とが同一の磁性材料により構成されてもよく、その場合、第2のコア部材82の最小断面積が第1のコア部材81の最小断面積より小さいことが好ましい。また、第1のコア部材81と第2のコア部材82とが互いに異なる磁性材料により構成されてもよく、その場合、第2のコア部材82の透磁率が、第1のコア部材81の透磁率よりも小さいことが好ましい。図14に示した構成により、軸芯部83と第2のコア部材82との間のギャップにおける磁気の飽和度合いを操作できるので、励磁電流Ipの増加に応じた一次インダクタンスLpの減少率をより適切に設定できる。
【0053】
図15は、図13(b)に示したコア70の変形例として、コア90を示す図である。図15(a)はコア90の上面図を示しており、図15(b)はコア90の正面図を示している。同図に示すコア90は、第1のコア部材(E型コア)91及び第2のコア部材(I型コア)92を有する。第1のコア部材91の構成は図13(b)に示した第1のコア部材71と同様であり、軸芯部93と、二本の脚部94,95とを有する。また、第2のコア部材92は、軸芯部93の他端93bと脚部94,95の先端94a,95aとに亘って設けられ、これらの端部93b、94a、及び95aを磁気的に結合する。第2のコア部材92の長手方向の両端部92a,92bは端部94a,95aとそれぞれ接しており、第2のコア部材92の中央部92cは隙間(ギャップ)をあけて軸芯部93の他端93bと対向している。そして、第1のコア部材91と第2のコア部材92とは同一の磁性材料からなる。
【0054】
また、第2のコア部材92は、その両端部92a、92b及び中央部92cを除く部分が、両端部92a、92b及び中央部92cと比べて細くくびれている(図15(a)参照)。すなわち、第2のコア部材92の最小断面積は、このくびれた部分によって規定される。そして、この最小断面積は、第1のコア部材91の最小断面積(脚部94,95の断面積)よりも小さく設定されている。本例においては、第2のコア部材92のくびれにおいて磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを好適に減少させることができる。なお、本例において、第2のコア部材92の長手方向における両端部92a、92b及び中央部92cの断面積は、くびれた部分の断面積より大きければ特に規定しなくてよい。
【0055】
図16は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア100は、第1のコア部材(U型コア)101及び第2のコア部材(I型コア)102を有する。第1のコア部材101は、一次巻線7a及び二次巻線7bが巻回される軸芯部103と、軸芯部103の一端103aに磁気的に結合され軸芯部103に沿って延びる部分を含む一本の脚部104とを有する。また、第2のコア部材102は、軸芯部103の他端103bと脚部104の先端104aとに亘って設けられ、これらの端部103b及び104aを磁気的に結合する。第2のコア部材102の長手方向の一方の端部は軸芯部103の先端103bと接しており、第2のコア部材102の他方の端部は隙間(ギャップ)をあけて脚部104の先端104aと対向している。そして、第1のコア部材101と第2のコア部材102とは互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材102の透磁率は、第1のコア部材101の透磁率よりも小さい。或いは、第1のコア部材101と第2のコア部材102とが同一の磁性材料からなり、第2のコア部材102の最小断面積が第1のコア部材101の最小断面積より小さい。このような構成により、第2のコア部材102において磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを或る減少率で減少させることができる。
【0056】
本発明による放電灯点灯回路は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、図3のインダクタンス特性を実現するトランスのコア形状は、E−I型コアやU−I型コア以外にも様々な形状を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】トランジスタの駆動周波数と供給電力の大きさとの関係を概念的に示すグラフである。
【図3】実施形態に係るトランスが有するインダクタンス特性を示すグラフである。
【図4】直列共振回路の共振部分のみを等価的に表現した回路図である。
【図5】最大電力値の変化を概念的に説明するための図である。
【図6】放電灯のインピーダンスと最大供給電力値との相関を概略的に示すグラフである。
【図7】放電灯の点灯を開始してから定常点灯状態へ移行するまでの放電灯のインピーダンスの推移の典型例を示すグラフである。
【図8】トランスのインダクタンス、コンデンサの容量、インダクタのインダクタンス、及びトランスの巻数比を上記のように設定した場合における、最大供給電力値の改善の様子を示す図である。
【図9】インバータ回路の駆動周波数と供給電力との関係において、2つの典型的な状態を示すグラフである。
【図10】(a)(b)スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧Vdsの時間波形と、ドレイン電流Idの時間波形との相関を示す図である。(a)は図9のグラフG6に示す状態において駆動周波数を共振周波数とほぼ一致させた場合を示しており、(b)は図9のグラフG7において駆動周波数を共振周波数から遠ざけた場合を示している。
【図11】トランスの一次インダクタンスが図3に示した特性を有する場合における、電力損失とインピーダンス(または励磁電流)との関係を示す図である。
【図12】図3に示した所定の値Ipaを期間Cにおける励磁電流の変動範囲に含めた場合の、最大供給電力値の特性を示す図である。
【図13】(a)図3のインダクタンス特性を有するトランスのコアの構成例を示す図である。(b)トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【図14】トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【図15】図13(b)に示したコアの変形例を示す図である。(a)はコアの上面図を示しており、(b)はコアの正面図を示している。
【図16】トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…放電灯点灯回路、2…電力供給部、3…インバータ回路、4…直列共振回路、5…起動部、6…ブリッジドライバ、7…トランス、7a…一次巻線、7b…二次巻線、7c…補助巻線、8…コンデンサ、9…インダクタ、10…制御部、11…定常点灯制御回路、60,70,80,90,100…コア、61,71,81,91,101…第1のコア部材、62,72,82,92,102…第2のコア部材、Sc1,Sc2…制御信号、Sdrv1,Sdrv2…駆動信号、VB…直流電圧、IL…ランプ電流、VL…ランプ電圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前照灯などに用いられるメタルハライドランプ等の放電灯を点灯させるためには、電力を安定的に供給するための点灯回路(バラスト)が必要となる。例えば、特許文献1に開示された放電灯点灯回路は、直列共振回路を含む直流−交流変換回路を備えており、この直流−交流変換回路からトランスを介して放電灯へ交流電力が供給される。そして、供給電力の大きさは、直列共振回路を駆動するブリッジドライバの駆動周波数を変化させることにより制御される。
【特許文献1】特開2005−63819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放電灯のインピーダンスは、その点灯状態によって大きく変化する。例えば、点灯直後のグロー放電時においては放電灯のインピーダンスは極めて大きく、グロー放電からアーク放電への移行に従って急激に小さくなる。また、定常点灯状態においても、直流−交流変換回路から供給される交流電力の大きさによって放電灯のインピーダンスは変化する。この放電灯のインピーダンスは直列共振回路の負荷抵抗に相当するので、直列共振回路のQ値は、放電灯のインピーダンスが大きくなるほど、また小さくなるほど大きくなり、放電灯のインピーダンスが或る値のときに最小値となる。従来の放電灯点灯回路においては、放電灯のインピーダンスが、直列共振回路のQ値が過度に小さくなるような値となるおそれがあり、この場合、放電灯へ十分な電力を供給することができなくなり、放電灯の点灯維持が困難となる。
【0004】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、直列共振回路を含む放電灯点灯回路において、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明による放電灯点灯回路は、交流電力を放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、インバータ回路と、トランスの一次巻線及びコンデンサを含み、インバータ回路からの出力電圧を受けてトランスの二次巻線を介して放電灯に交流電力を供給する直列共振回路と、インバータ回路を駆動する駆動部と、駆動部の駆動周波数を制御するための制御信号を生成する制御部とを備え、制御部は、交流電力が定常値に維持されるように駆動周波数を制御する定常点灯制御回路を有し、トランスは、一次巻線を流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定であり、所定の値は、定常点灯制御回路による定常点灯状態における励磁電流の最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流の変動範囲に含まれることを特徴とする。
【0006】
本発明者らの知見によれば、トランスのインダクタンスを小さくすると最大供給電力を大きくすることができるが、同時にトランスの二次側への電力伝達効率が低下して電力損失も増大してしまう。しかし、点灯直後のグロー放電状態からアーク放電状態へ至るごく僅かな期間(以下、初期点灯期間とする)であれば、トランスのインダクタンスを小さくして電力損失が増大したとしても全体的な消費電力量には殆ど影響しない。逆に、アーク成長後の定常点灯期間では、トランスのインダクタンスを小さくして電力損失が増大すると全体的な消費電力量に大きく影響するので、この期間においてはトランスのインダクタンスが大きいことが望ましい。
【0007】
上述した初期点灯期間においては、アークが十分に成長していないため放電灯のインピーダンスは数十キロオームないし数十オームと高く、且つ放電灯のインピーダンスは急激に変化する。また、定常点灯期間においては、アークが十分に成長しているため、放電灯のインピーダンスは定格電力で点灯した場合数十オームないし数百オームと低くなり、放電灯のインピーダンス変化は緩やかである。従って、初期点灯期間においてトランスのインダクタンスを小さくし、定常点灯期間においてトランスのインダクタンスを大きくすれば、消費電力に殆ど影響することなく最大供給電力を増大させることができる。本発明者らは、放電灯のインピーダンスが大きくなるほどトランスの一次巻線を流れる励磁電流が増大するという事実に着目し、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが減少するような特性をトランスに持たせることを考えた。
【0008】
しかしながら、トランスのインダクタンスが減少し過ぎた場合、トランスの磁気結合が低下し過ぎて、必要な電力を放電灯へ伝達できなくなるおそれがある。特に、放電灯の点灯直後はインピーダンスが高く励磁電流も大きいが、このときに必要な電力を伝達できないとアーク放電状態へ移行できない。
【0009】
以上の点に鑑み、上述した放電灯点灯回路においては、直列共振回路を構成するトランスに工夫がなされている。すなわち、上記放電灯点灯回路においては、励磁電流が所定の値より小さい場合には励磁電流の増加に応じてトランスのインダクタンスが第1の減少率で減少する。そして、この所定の値は、定常点灯制御回路による定常点灯状態における励磁電流の最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流の変動範囲に含まれる。これにより、定常点灯期間においては放電灯のインピーダンスが小さいほどトランスのインダクタンスが大きくなるので、電力損失を抑えることができる。また、励磁電流が所定の値より大きい場合には、励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定となる。これにより、放電灯のインピーダンスが大きい初期点灯期間においてトランスのインダクタンスを小さく抑え、十分な電力を放電灯へ供給でき、且つインダクタンスの過度の減少を防止してアーク放電状態への移行を促進できる。このように、上記した放電灯点灯回路によれば、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給することができる。
【0010】
また、放電灯点灯回路は、トランスのコアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ)が、励磁電流が所定の値より小さい場合に該励磁電流の増加に応じて第1の減少率に相当する割合で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に該励磁電流の増加に応じて第2の減少率に相当する割合で減少するか又は略一定であることを特徴としてもよい。これにより、励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第2の減少率で減少するか又は略一定となるトランスを好適に実現できる。
【0011】
また、放電灯点灯回路は、トランスが、一次巻線及び二次巻線が巻回される軸芯部、及び軸芯部の一端に磁気的に結合され軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、軸芯部の他端と脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材とを有し、第1及び第2のコア部材が互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材の透磁率が第1のコア部材の透磁率より小さいことを特徴としてもよい。或いは、トランスが、一次巻線及び二次巻線が巻回される軸芯部、及び軸芯部の一端に磁気的に結合され軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、軸芯部の他端と脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材とを有し、第1及び第2のコア部材が同一の磁性材料からなり、第2のコア部材の最小断面積が第1のコア部材の最小断面積より小さいことを特徴としてもよい。これらのうち何れかの構成によって、励磁電流が所定の値より小さい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、励磁電流が所定の値より大きい場合に励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第2の減少率で減少するか又は略一定となるトランスを好適に実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放電灯点灯回路によれば、直列共振回路を含む放電灯点灯回路において、放電灯のインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯へ供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放電灯点灯回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示す図である。図1に示す放電灯点灯回路1は、放電灯Lを点灯させるための交流電力を放電灯Lへ供給する回路であって、直流電源Bからの直流電圧VBを交流電圧に変換して放電灯Lに供給する。放電灯点灯回路1は、主に車輌用の、特に前照灯などの灯具に用いられる。なお、放電灯Lとしては、例えば水銀フリーのメタルハライドランプが好適に用いられるが、他の構造をもつ放電灯であってもよい。
【0015】
放電灯点灯回路1は、電力供給部2、制御部10、及びV−F変換部24を備える。電力供給部2は、制御部10からの制御信号Sc1に基づく大きさの電力を放電灯Lへ供給する。電力供給部2は、点灯操作のためのスイッチ20を介して直流電源B(バッテリーなど)に接続されており、直流電源Bから直流電圧VBを受けて交流変換及び昇圧を行う。本実施形態の電力供給部2は、直流電圧VBを矩形波の電圧に変換するハーフブリッジインバータ回路(以下、単にインバータ回路という)3と、インバータ回路3の後段に設けられた直列共振回路4と、点灯開始時に放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部5と、インバータ回路3を駆動する駆動部であるブリッジドライバ6とを有する。
【0016】
インバータ回路3は、二つの出力端3a,3bを有しており、出力端3aと出力端3bとの間に矩形波の電圧を出力する。インバータ回路3は、スイッチング素子である2つのトランジスタ31及び32が直列に接続されて構成されている。具体的には、トランジスタ31の一方の電流端子(ドレイン端子)は直流電源Bのプラス側端子に接続されており、トランジスタ31の他方の電流端子(ソース端子)はトランジスタ32の一方の電流端子(ドレイン端子)に接続されており、トランジスタ31の制御端子(ゲート端子)はブリッジドライバ6に接続されている。また、トランジスタ32の他方の電流端子(ソース端子)は電位の基準となる接地電位線GND(すなわち直流電源Bのマイナス側端子)に接続されており、トランジスタ32の制御端子(ゲート端子)はブリッジドライバ6に接続されている。そして、出力端3aはトランジスタ31のソース端子(トランジスタ32のドレイン端子)に設定されており、出力端3bはトランジスタ32のソース端子に設定されている。ブリッジドライバ6は、互いに逆相となる駆動信号Sdrv1、Sdrv2をトランジスタ31、32のゲート端子へ供給することにより、トランジスタ31,32を交互に導通させる。なお、トランジスタ31,32としては、例えば図1に示すようにNチャネルMOS型FETが好適に用いられるが、他のFETやバイポーラトランジスタでもよい。また、駆動信号Sdrv1、Sdrv2のデューティ比は各々50%とするとよい。
【0017】
直列共振回路4は、トランス7の一次巻線7a、コンデンサ8、及びインダクタ9を有する。トランス7は、放電灯Lへ高圧パルスを印加し、また、直列共振回路4からの交流電力を放電灯Lへ伝えると共に該交流電力を昇圧するために設けられる。本実施形態では、コンデンサ8と、インダクタ9と、トランス7の一次巻線7aとが、この順で互いに直列に接続されている。そして、その直列回路のコンデンサ8側の一端はインバータ回路3の一方の出力端3aに接続されており、一次巻線7a側の一端はインバータ回路3の他方の出力端3bに接続されている。この構成においては、トランス7の一次巻線7aのリーケージ(漏れ)インダクタンス、及びインダクタ9のインダクタンスからなる合成リアクタンスと、コンデンサ8の容量とによって共振周波数が決定される。なお、一次巻線7a及びコンデンサ8のみによって直列共振回路を構成し、インダクタ9を省略してもよい。
【0018】
インバータ回路3及び直列共振回路4においては、コンデンサ8及び誘導性要素(インダクタンス成分やインダクタ)による直列共振現象を利用し、トランジスタ31,32の駆動周波数をこの直列共振周波数以上の値に規定して該トランジスタ31,32を交互にオン/オフさせ、トランス7の一次巻線7aに交流電力を生じさせる。この交流電力は、トランス7の二次巻線7bへ昇圧されて伝達され、二次巻線7bに接続された放電灯Lへ供給される。なお、トランジスタ31,32を駆動するブリッジドライバ6は、トランジスタ31,32が共に導通状態とならないように相反的に各トランジスタ31,32を駆動する。
【0019】
直列共振回路4のインピーダンスは、ブリッジドライバ6によるトランジスタ31,32の駆動周波数によって変化する。従って、放電灯Lに供給される交流電力の大きさを、該駆動周波数を変化させることにより制御できる。ここで、図2は、トランジスタ31,32の駆動周波数と供給電力の大きさとの関係を概念的に示すグラフである。図2に示すように、放電灯Lに供給される電力の大きさは、駆動周波数が直列共振周波数fonと等しいときに最大値Pmaxとなり、駆動周波数が直列共振周波数fonよりも大きくなる(または小さくなる)に従って減少する。但し、駆動周波数が直列共振周波数fonよりも小さい場合、スイッチング損失が大きくなり電力効率が低下したり、放電灯Lへ供給する電力制御が不安定になるおそれがある。従って、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、直列共振周波数fonよりも大きい領域(図中の領域F)においてその大きさが制御される。本実施形態においては、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、ブリッジドライバ6に接続されたV−F変換部24からの制御信号Sc2(周波数変調されたパルス列を含む信号)のパルス周波数に従って制御される。
【0020】
起動部5は、放電灯Lに起動用の高圧パルスを印加するための回路であり、起動部5からトリガー電圧及び電流がトランス7に印加されると、トランス7の二次巻線7bにおいて生成される交流電圧に高圧パルスが畳重される。起動部5は、高圧パルスを生成するための電力を蓄える起動用コンデンサ(容量素子)51と、スパークギャップやガスアレスタ等の自己降伏型スイッチング素子52とを有する。起動用コンデンサ51の一端は整流素子(ダイオード)53及び抵抗素子54を介してトランス7の補助巻線7cの一端に接続されており、起動部5への入力電圧が提供される。補助巻線7c及び起動用コンデンサ51それぞれの他端は、共にインバータ回路3の出力端3b(すなわち接地電位線GND)に接続されている。なお、起動部5への入力電圧については、例えば、トランス7の二次巻線7bから得てもよく、或いはインダクタ9と共にトランスを構成する補助巻線を設けて該補助巻線から得てもよい。
【0021】
自己降伏型スイッチング素子52の一端は起動用コンデンサ51の一端と接続されており、自己降伏型スイッチング素子52の他端は一次巻線7aの途中に接続されている。起動部5においては、起動用コンデンサ51の両端電圧が自己降伏型スイッチング素子52の放電開始電圧に達すると、自己降伏型スイッチング素子52が瞬間的に導通状態となることによってトリガー電圧及び電流が出力される。
【0022】
制御部10は、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御することにより、放電灯Lの未点灯時には無負荷時出力電圧(OCV)の大きさを制御し、放電灯Lの点灯後には放電灯Lへの供給電力の大きさを制御する。制御部10は、例えばオペアンプ等によるアナログ演算回路や、或いはマイコン、特定用途向け集積回路(ASIC)等のディジタル演算回路によって好適に実現される。
【0023】
制御部10は、入力端10a及び10b、並びに出力端10cを有する。入力端10aは、放電灯Lのランプ電圧VLの振幅を示す信号(以下、ランプ電圧相当信号という)VSを入力するために、ピークホールド回路21を介して二次巻線7bの中間タップに接続されている。ランプ電圧相当信号VSは、ランプ電圧VLのピーク値の例えば0.35倍に設定される。入力端10bは、放電灯Lのランプ電流ILを検出するために設けられた抵抗素子25の一端に、ピークホールド回路22及びバッファ23を介して接続されている。抵抗素子25の一端は、更に放電灯点灯回路1の出力端子を介して放電灯Lの一方の電極に接続され、抵抗素子25の他端は、インバータ回路3の出力端3b(接地電位線GND)に接続されている。そして、バッファ23からは、ランプ電流ILの振幅を示す信号(以下、ランプ電流相当信号という)ISが出力される。
【0024】
制御部10は、定常点灯制御回路11を有する。定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯後において、放電灯Lへ供給される交流電力が定常値(例えば35W)に維持されるようにインバータ回路3の駆動周波数を制御するための回路である。定常点灯制御回路11は、ランプ電圧相当信号VS及びランプ電流相当信号ISに基づいて制御信号Sc1を生成する。なお、定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯前において、放電灯Lに供給されるべきOCVの大きさが或る値に近づくようにランプ電圧相当信号VSに基づいて制御信号Sc1を生成する機能を兼ね備えても良い。また、定常点灯制御回路11は、放電灯Lの点灯後において、放電灯Lに供給される電力の大きさが例えば定常値より大きい値(例えば75W)から所定の時間関数及びランプ電圧VLに従って定常値(35W)に近づくように制御信号Sc1を生成する機能を兼ね備えても良い。
【0025】
すなわち、本実施形態の制御部10は、放電灯Lの点灯後、所定の時間関数に従って、まず供給電力の大きさが初期値(例えば75W)となるように、そして、或る時刻(この時刻は、ランプ電圧の変化によって決定される)以降、供給電力の大きさが初期値から定常値(例えば35W)へ徐々に近づくように、制御信号Sc1を生成する。
【0026】
こうして生成された制御信号Sc1は、V−F変換部24に入力される。V−F変換部24は、アナログ信号である制御信号Sc1を制御部10の出力端10cから入力し、この制御信号Sc1をV−F変換して制御信号Sc2を生成する。V−F変換部24は、生成した制御信号Sc2をブリッジドライバ6へ提供する。
【0027】
ここで、本実施形態のトランス7が有するインダクタンス特性について説明する。図3は、本実施形態のトランス7が有するインダクタンス特性を示すグラフである。なお、図3において、縦軸はトランス7の一次巻線7aのインダクタンスである一次インダクタンスLpを示し、横軸は一次巻線7aを流れる励磁電流Ipを示す。同図に示すように、トランス7の一次インダクタンスLpは、一次巻線7aを流れる励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合(図中の領域I1)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少し、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合(図中の領域I2)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少するか、又は図中に一点鎖線で示すように略一定となる。なお、一般的に、励磁電流Ipが過度に大きな領域(図中の領域I3)においては、磁気飽和が起き一次インダクタンスLpは励磁電流Ipの増加と共に大きく減少する。
【0028】
領域I1と領域I2との境界となる励磁電流Ipの所定の値Ipaは、例えば車輌の前照灯に適用される放電灯点灯回路の場合、2〜6[A]であり、特に3.0[A]程度が好ましい。また、領域I2と領域I3との境界となる励磁電流Ipの値Ipbを例示すると、例えば100[A]である。また、励磁電流Ipが所定の値Ipaであるときの一次インダクタンスLpの値Lpaは例えば100〜200[nH]であり、特に150[nH]程度が好ましい。また、励磁電流Ipがほぼゼロのときの一次インダクタンスLpの値Lpbは例えば300〜500[nH]であり、特に330[nH]程度が好ましい。なお、値Ipaを3.0[A]とし、値Lpaを150[nH]とし、値Lpbを330[nH]とした場合、第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)は、(330[nH]−150[nH])/3.0[A]=60[nH/A]となる。なお、第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)は、この第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)と比べて絶対値が小さいほど好ましく、ほぼゼロ(すなわちインダクタンスLpが略一定)であると尚好ましい。
【0029】
また、励磁電流Ipの所定の値Ipaは、定常点灯制御回路11による定常点灯状態(すなわち、放電灯Lへの供給電力が定常値に維持される状態)における励磁電流Ipの最大値よりも高いか、又は定常点灯状態における励磁電流Ipの変動範囲に含まれる。
【0030】
以下、トランス7のこのようなインダクタンス特性による作用及び効果について説明する。
【0031】
図4は、直列共振回路4の共振部分のみを等価的に表現した回路図である。図4において、Crはコンデンサ8の容量、Lrはインダクタ9のインダクタンス、Lpはトランス7の一次インダクタンス、Lsはトランス7の二次インダクタンス、RLは放電灯Lのインピーダンス、Nはトランス7の一次巻線7aと二次巻線7bとの巻数比、kはトランス7の結合係数、ILはランプ電流、Ipは一次巻線7aを流れる励磁電流である。この等価回路においては、IpとILとの和が全体の共振電流であり、これらの関係は次の(1)式で表される。
【数1】
この(1)式は、放電灯LのインピーダンスRLが高いと励磁電流Ipが増加することを表している。
【0032】
一方、直列共振回路4が放電灯Lへ供給可能な最大電力値は、直列共振回路4の負荷インピーダンスすなわち放電灯LのインピーダンスRLに応じて変化する。図5は、このような最大電力値の変化を概念的に説明するための図である。同図において、縦軸は放電灯Lへの最大供給電力値を示し、横軸はインバータ回路3の駆動周波数を示す。同図に示すように、放電灯Lのインピーダンスが高い場合(グラフG1)や低い場合(グラフG2)には、直列共振回路4の共振のQ値が大きくなり、最大供給電力値が大きくなる。これに対し、放電灯Lのインピーダンスが中間的な或る値のとき(グラフG3)に直列共振回路4の共振のQ値が最小値をとり、最大供給電力値が最小となる。なお、従来の放電灯点灯回路においては、このようなインピーダンスのときに放電灯Lに十分な電力を供給できず、点灯を維持させることが難しい場合があった。
【0033】
図6は、放電灯Lのインピーダンスと最大供給電力値(図5の各グラフG1〜G3のピーク電力に相当)との相関を概略的に示すグラフである。同図に示すとおり、最大供給電力値は放電灯Lのインピーダンスが高いほど、また低いほど大きく、インピーダンスが或る値RLaとなる場合に最小値Pminとなる。この値RLaは、通常、放電灯Lが始動してから定常状態に至るまでのインピーダンスの変動範囲内に属する。放電灯Lが点灯維持可能な電力(或いは定格電力)をP0とすると、同図に示すように、最大供給電力値の最小値PminがP0を下回る場合、放電灯Lのインピーダンスが変化して値RLa付近を通過する際に放電灯Lの点灯を維持することができない。従って、このような場合、最大供給電力値の最小値Pminを図中の一点鎖線で示す位置まで引き上げ、最小値PminがP0を上回るようにすればよい。
【0034】
ここで、最大供給電力値が最小値Pminとなるときの放電灯LのインピーダンスRLaは、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、トランス7の巻数比Nなどに依存する。すなわち、これらの数値を調整することにより、インピーダンスRLaの大きさを調整できる。図7は、放電灯Lの点灯を開始してから定常点灯状態へ移行するまでの放電灯Lのインピーダンスの推移の典型例を示すグラフである。図7において、縦軸は放電灯Lのインピーダンスを示し、横軸は点灯開始からの経過時間を示す。同図に示すように、点灯開始後の放電灯Lのインピーダンスの推移は、放電灯Lの状態に応じて期間A〜Cの3つに分けられる。
【0035】
期間Aは、起動部5(図1参照)により放電灯Lに高圧パルスが印加されてから10ミリ秒以下という極めて短い期間である。放電灯Lは、この期間Aにおいて、高圧パルスによりブレークダウンして電極間にグロー放電を生じ、更にグロー放電からアーク放電へ移行する。放電灯Lのインピーダンスは、この期間Aにおいて初期の数十キロオームから数十オームへと大きく変化する。期間Bは、期間Aが終了してから定常点灯状態に至るまでの過渡的な期間であり、その長さは例えば数十秒である。この期間Bにおいて、図1に示した制御部10は、放電灯Lに供給される電力の大きさを定常値(定格電力)より大きい値(例えば75W)に維持することにより、放電灯Lの発光強度を急速に立ち上げる。車輌用放電灯の場合、期間Bにおけるインピーダンスは数オーム程度まで低下する。期間Cは、定常点灯状態を維持する期間である。この期間Cにおいて、制御部10の定常点灯制御回路11は、放電灯Lへ供給される交流電力が定常値(例えば35W)に維持されるようにインバータ回路3の駆動周波数を制御する。車輌用放電灯で定常値を定格電力とした場合、期間Cにおけるインピーダンスは数十オームないし数百オームの間で変化する。
【0036】
図6に示した最小値PminがP0を下回る場合、最小値Pminのタイミングが図7の期間Aに属すると、グロー放電からアーク放電への移行に電力不足が影響し、点灯始動性が低下してしまう。また、最小値Pminのタイミングが期間Bに属すると、放電灯Lの発光強度の立ち上がりが遅くなる。例えば車輌用放電灯においては、規定の明るさに達するまでの時間が厳格に定められており、発光強度の立ち上がりの遅れは好ましくない。また、最小値Pminのタイミングが期間Cに属すると、電力不足により放電灯Lが立ち消えるおそれがある。このように、最大供給電力が最小値Pminとなるタイミングが期間A〜Cのうちどの期間に属したとしても、最小値Pminは図6に示したP0を上回ることが要求される。すなわち、数十キロオームから数オームといった広いインピーダンス範囲において最大供給電力値がP0を上回ることが要求される。
【0037】
最大供給電力値を引き上げる最も簡易な方法は、トランス7の一次インダクタンスLpを小さくする方法である。すなわち、前述した(1)式より、トランス7の一次インダクタンスLpを小さくすれば、励磁電流Ipが大きくなるので供給電力を大きくすることができ、図6に示した最小値Pminを引き上げることができる。一次インダクタンスLpを小さくするには、例えばトランス7のコアのギャップを拡げるなどして結合係数を小さくするとよい。しかし、単に一次インダクタンスLpを小さくするだけでは、漏洩磁束が増して損失が大きくなり、電力効率が低下してしまう。
【0038】
電力効率の低下による回路装置への影響としては、放熱のために装置寸法が大きくなってしまうことが挙げられる。しかし、期間Aは極めて短期間であり、この期間に電力効率が低下したとしても発熱量は僅かである。従って、この期間Aにおいては多少の電力効率の低下は許容され、寧ろ放電灯Lへの十分な電力供給が優先される。電力効率の低下が好ましくないのは期間B及びCである。その中でも期間Bは一過性であり、より高い電力効率が求められるのは期間Cである。
【0039】
(1)式で説明したように、放電灯LのインピーダンスRLが高くなると励磁電流Ipは増加する。また、前述したように、放電灯LのインピーダンスRLは期間Aにおいて概ね高く、期間B及びCにおいて低い。そこで、励磁電流Ipの増加に伴いインダクタンスLpが低下するような特性をトランス7に持たせることにより、期間AにおいてインダクタンスLpを低く、且つ期間B,CにおいてインダクタンスLpを高くできる。更に、最大供給電力値が最小値PminとなるときのインピーダンスRLaが期間Aに属するように、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、及びトランス7の巻数比Nなどを予め設定しておくとよい。これにより、電力効率が最も低下するタイミングを期間Aに含め、期間B及びCにおいてより高い電力効率を確保できる。
【0040】
図8は、トランス7のインダクタンスLp、コンデンサ8の容量Cr、インダクタ9のインダクタンスLr、及びトランス7の巻数比Nを上記のように設定した場合における、最大供給電力値の改善の様子を示す図である。同図において、縦軸は最大供給電力値を示し、横軸は放電灯LのインピーダンスRLを示す。また、グラフG4は図6に示したグラフと同一であり、グラフG5は改善された特性を示している。また、図8には、グラフG4及びG5を期間A〜Cに区分する領域R1〜R3が図示されている。図8に示すように、放電灯LのインピーダンスRLが比較的高い期間AにおいてはインダクタンスLpが低くなるため、最大供給電力値の増加分(グラフG4からG5への増加分)が大きくなる。いま、最大供給電力値が最小値PminとなるインピーダンスRLaが期間Aのインピーダンス変動区間内に属しているので、最小値Pminはこの最大供給電力値の増加分の寄与を受け、グラフG5に示すようにP0を上回ることができる。これにより、期間Aにおける点灯始動性を確保できる。また、放電灯Lのインピーダンスが比較的低い期間B,CにおいてはインダクタンスLpが高くなるため、最大供給電力値の増加分は少ないが、電力損失を抑えることができる。
【0041】
ここで、一つ問題点がある。期間Aにおいて励磁電流Ipの増加(すなわち放電灯インピーダンスRLの増加)に伴いインダクタンスLpを単調に減少させてしまうと、放電灯インピーダンスRLが極めて大きい場合にトランス7の磁気結合が過度に低下してしまい、一次側(直列共振回路4)で生成された電力を二次側(放電灯L)へ伝達することが困難となってしまう。従って、例えば放電灯点灯回路1への電源投入から起動部5による高圧パルス発生までの期間にトランス7が十分なエネルギーを発生できず、高圧パルス発生に関わるエネルギーが不十分となり放電灯Lの放電を開始できないおそれがある。また、点灯直後など放電灯LのインピーダンスRLが極めて高い状態で電力損失が大きくなり過ぎ、放電灯Lに十分なエネルギーを供給できずアーク放電への移行に失敗するおそれがある。
【0042】
そこで、励磁電流Ipが或る値より大きい場合には、励磁電流Ipの増加に応じた一次インダクタンスLpの減少率の絶対値を小さくするか、又は励磁電流Ipの増加に関わらずインダクタンスLpを略一定とするとよい。すなわち、図3に示したように、トランス7の一次インダクタンスLpを、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合(領域I1)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少させ、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合(領域I2)には、励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも絶対値が小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少させるか、又は図中に一点鎖線で示すように略一定とするとよい。そして、図3の領域I1が期間B,Cに該当するように、且つ領域I2が期間Aに該当するように、所定の値Ipaを設定するとよい。すなわち、この所定の値Ipaを、期間Cにおける励磁電流Ipの最大値よりも高くするか、又は期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含むとよい。
【0043】
また、電力効率について更に考慮すべき点がある。図9は、インバータ回路3の駆動周波数と供給電力との関係において、2つの典型的な状態を示すグラフである。同図において、グラフG6は最大供給電力が放電灯Lの定格電力(定常値)Paに極めて近い状態を示しており、グラフG7は最大供給電力が定格電力Paより十分に大きい状態を示している。グラフG6のように最大供給電力が定格電力Paに対して余裕のない場合、駆動周波数を共振周波数fonに近づけて直列共振回路4を動作させることとなる(図9のα点での動作)。また、グラフG7のように最大供給電力が定格電力Paに対して余裕をもつ場合、駆動周波数を共振周波数fonから遠ざけて直列共振回路4を動作させることとなる(図9のβ点での動作)。
【0044】
図10(a)及び(b)は、スイッチング素子(トランジスタ31)のドレイン−ソース間電圧Vdsの時間波形と、ドレイン電流Idの時間波形との相関を示す図である。なお、図10(a)は図9のグラフG6に示す状態において駆動周波数を共振周波数fonとほぼ一致させた場合を示しており、図10(b)は図9のグラフG7において駆動周波数を共振周波数fonから遠ざけた場合を示している。
【0045】
図9のα点で直列共振回路4を動作させた場合、図10(a)に示すようにスイッチング素子(トランジスタ31)をターンオフする瞬間のドレイン電流Idが0[A]となり、ゼロ電流スイッチング(ZCS:スイッチング素子を流れるドレイン電流がゼロとなるタイミングに近いタイミングでスイッチング素子をオン/オフさせることにより、スイッチング損失を軽減させる方法)を実現できる。これに対し、図9のβ点で直列共振回路4を動作させた場合、図10(b)に示すようにスイッチング素子をターンオフする瞬間のドレイン電流Idが大きく、ZCSとはならずにスイッチング損失が増加してしまう。電力効率を最も考慮すべき期間Cにおいては、このようなスイッチング損失も可能な限り低減することが望ましい。また、期間Cにおいては、インダクタンスLpの減少に伴うトランス7の磁気結合低下による損失も抑えることが望ましい。
【0046】
図11は、トランス7の一次インダクタンスLpが図3に示した特性を有する場合における、電力損失とインピーダンスRL(または励磁電流Ip)との関係を示す図である。なお、同図のグラフG8はインダクタンスLpの減少に伴う電力損失を示しており、グラフG9は駆動周波数が共振周波数fonから離れることによる電力損失(スイッチング損失)を示している。また、グラフG10はグラフG8及びG9を合わせた電力損失を示している。期間Cにおいて電力効率を効果的に高めるためには、図11に示すグラフG10の最小値付近(領域R4)が期間Cに該当することが望ましい。このため、図12に示すように、最大供給電力が最小値PminとなるインピーダンスRLaが期間Aだけでなく期間Cのインピーダンス変動範囲にも含まれるように、図3に示した所定の値Ipaを期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含めることが好ましい。これにより、定常点灯時における電力効率を最大限に高めることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の放電灯点灯回路1においては、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合には励磁電流Ipの増加に応じてトランス7の一次インダクタンスLpが第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)で減少する。そして、この所定の値Ipaは、定常点灯制御回路11による定常点灯状態(すなわち期間C)における励磁電流Ipの最大値よりも高いか、又は期間Cにおける励磁電流Ipの変動範囲に含まれる。これにより、定常点灯期間Cにおいては放電灯LのインピーダンスRLが小さいほどトランス7の一次インダクタンスLpが大きくなるので、電力損失を抑えることができる。また、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合には、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpが第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)よりも絶対値が小さい第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)で減少するか又は略一定となる。これにより、放電灯LのインピーダンスRLが大きい初期点灯期間Aにおいてトランス7の一次インダクタンスLpを小さく抑え、十分な電力を放電灯Lへ供給でき、且つ一次インダクタンスLpの過度の減少を防止してアーク放電状態への移行を促進できる。このように、本実施形態の放電灯点灯回路1によれば、放電灯Lのインピーダンス変化にかかわらず、点灯維持に必要な電力を放電灯Lへ供給することができる。
【0048】
続いて、図3に示したようなインダクタンス特性を実現するためのトランスの構成について説明する。このようなトランスを実現するための一つの方法としては、コアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ。すなわちB−Hカーブの傾き)を励磁電流Ipに応じて変化させるとよい。すなわち、コアの微分透磁率を、励磁電流Ipが所定の値Ipaより小さい場合に励磁電流Ipの増加に応じて第1の減少率(ΔLp1/ΔIp)に相当する割合で減少させ、励磁電流Ipが所定の値Ipaより大きい場合に励磁電流Ipの増加に応じて第2の減少率(ΔLp2/ΔIp)に相当する割合で減少させるか又は略一定とするとよい。
【0049】
図13(a)は、このような特性を有するトランスのコアの構成例を示す図である。同図に示すコア60は、いわゆるE−Iコアによって閉磁路を構成しており、第1のコア部材(E型コア)61及び第2のコア部材(I型コア)62を有する。具体的には、第1のコア部材61は、一次巻線7a及び二次巻線7bが巻回される軸芯部63と、軸芯部63の一端63aに磁気的に結合され軸芯部63に沿って延びる部分を含む二本の脚部64,65とを有する。また、第2のコア部材62は、軸芯部63の他端63bと脚部64,65の先端64a,65aとに亘って設けられ、これらの端部63b、64a、及び65aを磁気的に結合する。第2のコア部材62の長手方向の両端部は端部64a,65aと接しており、第2のコア部材62の中央部は隙間(ギャップ)をあけて軸芯部63の他端63bと対向している。そして、第1のコア部材61と第2のコア部材62とは互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材62の透磁率は、第1のコア部材61の透磁率よりも小さい。なお、図1に示した補助巻線7cは、軸芯部63とは別の支柱(例えば脚部65)に巻回するのが好ましい。
【0050】
図13(b)は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア70は、第1のコア部材(E型コア)71及び第2のコア部材(I型コア)72を有する。第1のコア部材71の構成は図13(a)に示した第1のコア部材61と同様であり、軸芯部73と、二本の脚部74,75とを有する。また、第2のコア部材72は、軸芯部73の他端73bと脚部74,75の先端74a,75aとに亘って設けられ、これらの端部73b、74a、及び75aを磁気的に結合する。第2のコア部材72の長手方向の両端部は端部74a,75aと接しており、第2のコア部材72の中央部は隙間(ギャップ)をあけて軸芯部73の他端73bと対向している。そして、第1のコア部材71と第2のコア部材72とは同一の磁性材料からなり、第2のコア部材72の最小断面積(本例では、第2のコア部材72の断面積は長手方向に一定)が第1のコア部材71の最小断面積(本例では脚部74,75の断面積)より小さい。
【0051】
図13(a)または図13(b)に示した構成により、第2のコア部材62(72)において磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを或る減少率で減少させることができる。また、第1のコア部材61(71)及び第2のコア部材62(72)それぞれの磁性材料や最小断面積を適切に選択・設定することにより、励磁電流Ipが所定の値Ipaを超えた場合には励磁電流Ipが増加しても一次インダクタンスLpが殆ど減少しない(又は略一定となる)ようなトランスを好適に実現できる。
【0052】
図14は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア80は、第1のコア部材(E型コア)81及び第2のコア部材(I型コア)82を有する。第2のコア部材82の構成は図13(a)に示した第2のコア部材62と同様である。また、第1のコア部材81は、軸芯部83と、二本の脚部84,85とを有する。本例の軸芯部83は、その他端83bが第2のコア部材82に向けて次第に細くなるようなテーパ状に形成されている。そして、軸芯部83と第2のコア部材82との間のギャップが第2のコア部材82の長手方向に次第に縮小している。なお、本例においては、第1のコア部材81と第2のコア部材82とが同一の磁性材料により構成されてもよく、その場合、第2のコア部材82の最小断面積が第1のコア部材81の最小断面積より小さいことが好ましい。また、第1のコア部材81と第2のコア部材82とが互いに異なる磁性材料により構成されてもよく、その場合、第2のコア部材82の透磁率が、第1のコア部材81の透磁率よりも小さいことが好ましい。図14に示した構成により、軸芯部83と第2のコア部材82との間のギャップにおける磁気の飽和度合いを操作できるので、励磁電流Ipの増加に応じた一次インダクタンスLpの減少率をより適切に設定できる。
【0053】
図15は、図13(b)に示したコア70の変形例として、コア90を示す図である。図15(a)はコア90の上面図を示しており、図15(b)はコア90の正面図を示している。同図に示すコア90は、第1のコア部材(E型コア)91及び第2のコア部材(I型コア)92を有する。第1のコア部材91の構成は図13(b)に示した第1のコア部材71と同様であり、軸芯部93と、二本の脚部94,95とを有する。また、第2のコア部材92は、軸芯部93の他端93bと脚部94,95の先端94a,95aとに亘って設けられ、これらの端部93b、94a、及び95aを磁気的に結合する。第2のコア部材92の長手方向の両端部92a,92bは端部94a,95aとそれぞれ接しており、第2のコア部材92の中央部92cは隙間(ギャップ)をあけて軸芯部93の他端93bと対向している。そして、第1のコア部材91と第2のコア部材92とは同一の磁性材料からなる。
【0054】
また、第2のコア部材92は、その両端部92a、92b及び中央部92cを除く部分が、両端部92a、92b及び中央部92cと比べて細くくびれている(図15(a)参照)。すなわち、第2のコア部材92の最小断面積は、このくびれた部分によって規定される。そして、この最小断面積は、第1のコア部材91の最小断面積(脚部94,95の断面積)よりも小さく設定されている。本例においては、第2のコア部材92のくびれにおいて磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを好適に減少させることができる。なお、本例において、第2のコア部材92の長手方向における両端部92a、92b及び中央部92cの断面積は、くびれた部分の断面積より大きければ特に規定しなくてよい。
【0055】
図16は、トランスのコアの他の構成例を示す図である。同図に示すコア100は、第1のコア部材(U型コア)101及び第2のコア部材(I型コア)102を有する。第1のコア部材101は、一次巻線7a及び二次巻線7bが巻回される軸芯部103と、軸芯部103の一端103aに磁気的に結合され軸芯部103に沿って延びる部分を含む一本の脚部104とを有する。また、第2のコア部材102は、軸芯部103の他端103bと脚部104の先端104aとに亘って設けられ、これらの端部103b及び104aを磁気的に結合する。第2のコア部材102の長手方向の一方の端部は軸芯部103の先端103bと接しており、第2のコア部材102の他方の端部は隙間(ギャップ)をあけて脚部104の先端104aと対向している。そして、第1のコア部材101と第2のコア部材102とは互いに異なる磁性材料からなり、第2のコア部材102の透磁率は、第1のコア部材101の透磁率よりも小さい。或いは、第1のコア部材101と第2のコア部材102とが同一の磁性材料からなり、第2のコア部材102の最小断面積が第1のコア部材101の最小断面積より小さい。このような構成により、第2のコア部材102において磁気が飽和するので、励磁電流Ipの増加に応じて一次インダクタンスLpを或る減少率で減少させることができる。
【0056】
本発明による放電灯点灯回路は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、図3のインダクタンス特性を実現するトランスのコア形状は、E−I型コアやU−I型コア以外にも様々な形状を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】トランジスタの駆動周波数と供給電力の大きさとの関係を概念的に示すグラフである。
【図3】実施形態に係るトランスが有するインダクタンス特性を示すグラフである。
【図4】直列共振回路の共振部分のみを等価的に表現した回路図である。
【図5】最大電力値の変化を概念的に説明するための図である。
【図6】放電灯のインピーダンスと最大供給電力値との相関を概略的に示すグラフである。
【図7】放電灯の点灯を開始してから定常点灯状態へ移行するまでの放電灯のインピーダンスの推移の典型例を示すグラフである。
【図8】トランスのインダクタンス、コンデンサの容量、インダクタのインダクタンス、及びトランスの巻数比を上記のように設定した場合における、最大供給電力値の改善の様子を示す図である。
【図9】インバータ回路の駆動周波数と供給電力との関係において、2つの典型的な状態を示すグラフである。
【図10】(a)(b)スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧Vdsの時間波形と、ドレイン電流Idの時間波形との相関を示す図である。(a)は図9のグラフG6に示す状態において駆動周波数を共振周波数とほぼ一致させた場合を示しており、(b)は図9のグラフG7において駆動周波数を共振周波数から遠ざけた場合を示している。
【図11】トランスの一次インダクタンスが図3に示した特性を有する場合における、電力損失とインピーダンス(または励磁電流)との関係を示す図である。
【図12】図3に示した所定の値Ipaを期間Cにおける励磁電流の変動範囲に含めた場合の、最大供給電力値の特性を示す図である。
【図13】(a)図3のインダクタンス特性を有するトランスのコアの構成例を示す図である。(b)トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【図14】トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【図15】図13(b)に示したコアの変形例を示す図である。(a)はコアの上面図を示しており、(b)はコアの正面図を示している。
【図16】トランスのコアの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…放電灯点灯回路、2…電力供給部、3…インバータ回路、4…直列共振回路、5…起動部、6…ブリッジドライバ、7…トランス、7a…一次巻線、7b…二次巻線、7c…補助巻線、8…コンデンサ、9…インダクタ、10…制御部、11…定常点灯制御回路、60,70,80,90,100…コア、61,71,81,91,101…第1のコア部材、62,72,82,92,102…第2のコア部材、Sc1,Sc2…制御信号、Sdrv1,Sdrv2…駆動信号、VB…直流電圧、IL…ランプ電流、VL…ランプ電圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、
インバータ回路と、
トランスの一次巻線及びコンデンサを含み、前記インバータ回路からの出力電圧を受けて前記トランスの二次巻線を介して前記放電灯に前記交流電力を供給する直列共振回路と、
前記インバータ回路を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動周波数を制御するための制御信号を生成する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記交流電力が定常値に維持されるように前記駆動周波数を制御する定常点灯制御回路を有し、
前記トランスは、前記一次巻線を流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に、前記励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、前記励磁電流が前記所定の値より大きい場合に、前記励磁電流の増加に応じてインダクタンスが前記第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定であり、
前記所定の値は、前記定常点灯制御回路による定常点灯状態における前記励磁電流の最大値よりも高いか、又は前記定常点灯状態における前記励磁電流の変動範囲に含まれることを特徴とする、放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記トランスのコアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ)は、前記励磁電流が前記所定の値より小さい場合に該励磁電流の増加に応じて前記第1の減少率に相当する割合で減少し、前記励磁電流が前記所定の値より大きい場合に該励磁電流の増加に応じて前記第2の減少率に相当する割合で減少するか又は略一定であることを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記トランスは、
前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回される軸芯部、及び前記軸芯部の一端に磁気的に結合され前記軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、
前記軸芯部の他端と前記脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材と
を有し、
前記第1及び第2のコア部材が互いに異なる磁性材料からなり、前記第2のコア部材の透磁率が前記第1のコア部材の透磁率より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記トランスは、
前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回される軸芯部、及び前記軸芯部の一端に磁気的に結合され前記軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、
前記軸芯部の他端と前記脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材と
を有し、
前記第1及び第2のコア部材が同一の磁性材料からなり、前記第2のコア部材の最小断面積が前記第1のコア部材の最小断面積より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項1】
交流電力を放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、
インバータ回路と、
トランスの一次巻線及びコンデンサを含み、前記インバータ回路からの出力電圧を受けて前記トランスの二次巻線を介して前記放電灯に前記交流電力を供給する直列共振回路と、
前記インバータ回路を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動周波数を制御するための制御信号を生成する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記交流電力が定常値に維持されるように前記駆動周波数を制御する定常点灯制御回路を有し、
前記トランスは、前記一次巻線を流れる励磁電流が所定の値より小さい場合に、前記励磁電流の増加に応じてインダクタンスが第1の減少率で減少し、前記励磁電流が前記所定の値より大きい場合に、前記励磁電流の増加に応じてインダクタンスが前記第1の減少率よりも絶対値が小さい第2の減少率で減少するか又は略一定であり、
前記所定の値は、前記定常点灯制御回路による定常点灯状態における前記励磁電流の最大値よりも高いか、又は前記定常点灯状態における前記励磁電流の変動範囲に含まれることを特徴とする、放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記トランスのコアの微分透磁率(=ΔB/ΔH:Bは磁束密度、Hは磁界の強さ)は、前記励磁電流が前記所定の値より小さい場合に該励磁電流の増加に応じて前記第1の減少率に相当する割合で減少し、前記励磁電流が前記所定の値より大きい場合に該励磁電流の増加に応じて前記第2の減少率に相当する割合で減少するか又は略一定であることを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記トランスは、
前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回される軸芯部、及び前記軸芯部の一端に磁気的に結合され前記軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、
前記軸芯部の他端と前記脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材と
を有し、
前記第1及び第2のコア部材が互いに異なる磁性材料からなり、前記第2のコア部材の透磁率が前記第1のコア部材の透磁率より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記トランスは、
前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回される軸芯部、及び前記軸芯部の一端に磁気的に結合され前記軸芯部に沿って延びる二本の脚部を有する第1のコア部材と、
前記軸芯部の他端と前記脚部の先端とを磁気的に結合する第2のコア部材と
を有し、
前記第1及び第2のコア部材が同一の磁性材料からなり、前記第2のコア部材の最小断面積が前記第1のコア部材の最小断面積より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−192566(P2008−192566A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28479(P2007−28479)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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