放電灯点灯回路
【課題】点灯制御の再実行に要する時間を短くできる放電灯点灯回路を提供する。
【解決手段】放電灯点灯回路1は、トランジスタ5a,5bを含む直列共振回路及びブリッジドライバ6を有する電力供給部2と、放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部3と、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する点灯確認部4と、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御信号Scを生成する制御部10とを備える。点灯確認部4は、放電灯Lに高圧パルスが印加されてから所定の時間Δtが経過した時点における、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧V4との大小関係に基づいて点灯確認信号Sfを生成する。
【解決手段】放電灯点灯回路1は、トランジスタ5a,5bを含む直列共振回路及びブリッジドライバ6を有する電力供給部2と、放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部3と、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する点灯確認部4と、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御信号Scを生成する制御部10とを備える。点灯確認部4は、放電灯Lに高圧パルスが印加されてから所定の時間Δtが経過した時点における、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧V4との大小関係に基づいて点灯確認信号Sfを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前照灯などに用いられるメタルハライドランプ等の放電灯を点灯させるためには、電力を安定的に供給するための点灯回路(バラスト)が必要となる。例えば、特許文献1に開示された放電灯点灯回路は、Hブリッジ回路を備えており、このHブリッジ回路から放電灯へ交流電力が供給される。
【0003】
また、放電灯点灯回路は、放電灯の点灯制御も行う。すなわち、放電灯点灯回路は、放電灯の点灯前においては無負荷時出力電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を制御し、放電灯に高圧パルスを印加して放電灯を点灯させたのち、過渡投入電力を低減しながら定常点灯状態へと移行させる。
【特許文献1】特開2001−6894
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような構成の放電灯点灯回路では、大容量のコンデンサに電力を蓄えておき、点灯直後に該コンデンサからの電流を放電灯へ一気に供給することにより、放電灯を安定して点灯させることができる。しかし、直列共振回路を有する放電灯点灯回路では、回路の小型化のため、このようなコンデンサが設けられないことが多い。従って、高圧パルス印加後、放電灯内のアークが成長せず点灯に失敗することがある。点灯に失敗した場合、放電灯点灯回路は、点灯制御を再び実行する必要がある。このため、放電灯の点灯に成功したか否かの判断が重要となる。
【0005】
従来より、点灯に成功したか否かの判断は、放電灯を流れる電流(以下、ランプ電流という)の有無(具体的には、ランプ電流値が所定の閾値を超えたか否か)により行われていた。しかし、点灯直後のランプ電流は微弱であり、検出可能な程度にランプ電流値が大きくなるまで点灯可否の判断を待っていたのでは、点灯制御の再実行に時間を要してしまう。特に、車輌用の前照灯などに放電灯が用いられる場合、電源投入から点灯までの時間はできるだけ短いことが好ましい。
【0006】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる放電灯点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明による放電灯点灯回路は、放電灯を点灯させるための交流電力を該放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、複数のスイッチング素子、インダクタ及びトランスのうち少なくとも一方、並びにコンデンサを含む直列共振回路と、複数のスイッチング素子を駆動する駆動部とを有し、交流電力を放電灯へ供給する電力供給部と、放電灯に高圧パルスを印加して点灯を促す起動部と、高圧パルスによる放電灯の点灯の成否を示す点灯確認信号を生成する点灯確認部と、点灯確認信号に基づいて駆動部の駆動周波数を制御する制御部とを備え、点灯確認部は、放電灯に高圧パルスが印加されてから所定の時間が経過した時点における、放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて点灯確認信号を生成することを特徴とする。
【0008】
上記した放電灯点灯回路では、点灯確認部が、放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて点灯確認信号を生成している。放電灯に高圧パルスを印加したのち、放電灯の点灯に成功した場合には放電灯の電極間にアークが形成されるため電極間電圧(以下、ランプ電圧という)が急激に低下するが、放電灯の点灯に失敗した場合には、電極間は非導通状態を維持するためランプ電圧は瞬時にOCVへ戻る。従って、ランプ電圧(またはその相当電圧でもよい)が第1の所定電圧より大きい場合には放電灯の点灯に失敗したと判断でき、且つ、この判断を短い時間内に行うことができる。また、放電灯に高圧パルスが印加されてから所定の時間(好ましくは、ランプ電圧が第1の所定電圧まで戻る時間より長い時間)が経過した時点で上記判断を行うことにより、点灯可否の判断を確実に行うことができる。このように、上記した放電灯点灯回路によれば、点灯可否の判断を短時間に且つ確実に行うことができるので、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。
【0009】
また、放電灯点灯回路は、点灯確認部が、電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧とを比較する比較回路と、高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号を生成するパルス検出回路と、パルス印加信号を所定の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延したパルス印加信号に示されるタイミングで比較回路からの出力信号を参照し、電極間電圧またはその相当電圧が第1の所定電圧よりも高い場合に、不点灯を示す点灯確認信号を生成する信号生成回路とを有することを特徴としてもよい。このような構成により、上記点灯確認部を好適に実現できる。
【0010】
また、放電灯点灯回路は、起動部が、高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、パルス検出回路は、容量素子の両端電圧が第2の所定電圧を超えた後に該第2の所定電圧より低下したタイミングを高圧パルスが印加されたタイミングとすることを特徴としてもよい。或いは、放電灯点灯回路は、起動部が、高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、パルス検出回路が、容量素子の両端電圧を微分する微分回路を含み、該微分回路からの出力電圧に基づいてパルス印加信号を生成することを特徴としてもよい。これらのうち何れかの構成により、上記パルス印加信号を好適に生成できる。
【0011】
また、放電灯点灯回路は、制御部は、不点灯を示す点灯確認信号を点灯確認部から入力した場合に、駆動周波数を所定の無負荷時出力電圧(OCV)に対応する周波数より大きい所定の周波数に近づけ、その後、電極間電圧が所定の無負荷時出力電圧に近づくように駆動周波数を低下させることを特徴としてもよい。放電灯の点灯に失敗した場合、高圧パルス印加前と同じ駆動周波数で駆動部を制御したとしても、所定のOCVを維持できるとは限らない。従って、放電灯の点灯に失敗した場合には、上記のように、ランプ電圧が所定のOCVに近づくように駆動周波数を再び制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放電灯点灯回路によれば、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放電灯点灯回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す放電灯点灯回路1は、放電灯Lを点灯させるための交流電力を放電灯Lへ供給する回路であって、直流電源Bからの直流電圧VBを交流電圧に変換して放電灯Lに供給する。放電灯点灯回路1は、主に車輌用の、特に前照灯などの灯具に用いられる。なお、放電灯Lとしては、例えば水銀フリーのメタルハライドランプが好適に用いられるが、他の構造をもつ放電灯であってもよい。
【0015】
放電灯点灯回路1は、直流電源Bから電源供給を受けて交流電力を放電灯Lに供給する電力供給部2と、点灯開始時に放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部3と、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する点灯確認部4と、放電灯Lのランプ電圧VL、ランプ電流IL、及び点灯確認信号Sfに基づいてブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御部10とを備える。
【0016】
電力供給部2は、制御部10からの制御信号Scに基づく大きさの電力またはOCVを放電灯Lへ供給する。電力供給部2は、点灯操作のためのスイッチ20を介して直流電源B(バッテリーなど)に接続されており、直流電源Bから直流電圧VBを受けて交流変換及び昇圧を行う。本実施形態の電力供給部2は、スイッチング素子である2つのトランジスタ5a及び5bと、トランジスタ5a及び5bを駆動する駆動部であるブリッジドライバ6とを有する。トランジスタ5a,5bとしては、例えば図1に示すようにNチャネルMOSFETが好適に用いられるが、他のFETやバイポーラトランジスタでもよい。本実施形態では、トランジスタ5aのドレイン端子は直流電源Bのプラス側端子に接続されており、トランジスタ5aのソース端子はトランジスタ5bのドレイン端子に接続されており、トランジスタ5aのゲート端子はブリッジドライバ6に接続されている。また、トランジスタ5bのソース端子は接地電位線GND(すなわち直流電源Bのマイナス側端子)に接続されており、トランジスタ5bのゲート端子はブリッジドライバ6に接続されている。ブリッジドライバ6は、互いに逆相となる駆動信号Sdrv1、Sdrv2をトランジスタ5a、5bのゲート端子へ供給することにより、トランジスタ5a、5bを交互に導通させる。
【0017】
本実施形態の電力供給部2は、トランス7、コンデンサ8、及びインダクタ9を更に有する。トランス7は、放電灯Lへ高圧パルスを印加し、また、電力を伝えると共に該電力を昇圧するために設けられる。また、トランス7、コンデンサ8、及びインダクタ9は、直列共振回路を構成している。すなわち、トランス7の一次巻線7aと、インダクタ9と、コンデンサ8とが互いに直列に接続されている。そして、その直列回路の一端はトランジスタ5aのソース端子及びトランジスタ5bのドレイン端子に接続されており、他端は接地電位線GNDに接続されている。この構成においては、トランス7の一次巻線7aのリーケージ(漏れ)インダクタンス、及びインダクタ9のインダクタンスからなる合成リアクタンスと、コンデンサ8の容量とによって共振周波数が決定される。なお、一次巻線7a及びコンデンサ8のみによって直列共振回路を構成し、インダクタ9を省略してもよい。また、一次巻線7aのインダクタンスをインダクタ9と較べて極めて小さく設定し、共振周波数が、インダクタ9とコンデンサ8の容量とによってほぼ決定されるようにしてもよい。
【0018】
電力供給部2においては、コンデンサ8及び誘導性要素(インダクタンス成分やインダクタ)による直列共振現象を利用し、トランジスタ5a,5bの駆動周波数をこの直列共振周波数以上の値に規定して該トランジスタ5a,5bを交互にオン/オフさせ、トランス7の一次巻線7aに交流電力またはOCVを生じさせる。この交流電力またはOCVは、トランス7の二次巻線7bへ昇圧されて伝達され、二次巻線7bに接続された放電灯Lへ供給される。なお、トランジスタ5a,5bを駆動するブリッジドライバ6は、トランジスタ5a,5bが共に接続状態とならないように相反的に各トランジスタ5a,5bを駆動する。なお、本実施形態におけるブリッジドライバ6の駆動周波数は、例えば1MHz以上の高周波である。
【0019】
また、この直列共振回路のインピーダンスは、ブリッジドライバ6によるトランジスタ5a,5bの駆動周波数によって変化する。従って、放電灯Lに供給される交流電力やOCVの大きさを、該駆動周波数を変化させることにより制御できる。ここで、図2は、トランジスタ5a,5bの駆動周波数と供給電力及びOCVの大きさとの関係を概念的に示すグラフである。図2に示すように、放電灯Lに供給されるOCV及び電力の大きさは、駆動周波数が直列共振周波数f0(点灯前と点灯後で異なる)と等しいときに最大値OCVmax及びPmaxとなり、駆動周波数が直列共振周波数f0よりも大きくなる(または小さくなる)に従ってそれぞれ減少する。但し、駆動周波数が直列共振周波数f0よりも小さい場合、スイッチング損失が大きくなり効率が低下する。従って、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、直列共振周波数f0よりも大きい領域(図中の領域X)においてその大きさが制御される。なお、直列共振周波数f0よりも小さい周波数領域を容量性領域と呼び、直列共振周波数f0よりも大きい周波数領域を誘導性領域と呼ぶ。本実施形態においては、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、ブリッジドライバ6に接続された制御部10からの制御信号Sc(周波数変調されたパルス列を含む信号)のパルス周波数に従って制御される。
【0020】
また、この直列共振回路の点灯前における直列共振周波数をfa、点灯後における直列共振周波数をfbとすると、それぞれ以下の式(1)、(2)によって表される。但し、式中においてCはコンデンサ8の容量であり、Lrはインダクタ9のインダクタンスであり、Lp1は点灯前における一次巻線7bのインダクタンスであり、Lp2は点灯後における一次巻線7bのインダクタンスである。
【数1】
【数2】
一般的にLp1>Lp2であることから、点灯前における直列共振周波数faは点灯後における直列共振周波数fbよりも小さくなることがわかる。
【0021】
起動部3は、放電灯Lの点灯を促すために、高圧パルスを放電灯Lに印加する。すなわち、起動部3からトリガー電圧及び電流がトランス7の一次巻線7aに印加されると、二次巻線7bにおいて生成される交流電圧に、高電圧値および狭パルス幅を有する高圧パルスが畳重される。起動部3は、ダイオード31と、高圧パルスを生成するための電力を蓄えるコンデンサ(容量素子)32と、スパークギャップやガスアレスタ等の自己降伏型スイッチ素子33とを有する。ダイオード31のアノードはトランス7の補助巻線7cの一端に接続されており、ダイオード31のカソードはコンデンサ32の一端に接続されている。補助巻線7c及びコンデンサ32それぞれの他端は、共に接地電位線GNDに接続されている。なお、ダイオード31のアノードへの入力電圧については、例えば、トランス7の二次巻線7bから得てもよく、或いはインダクタ9と共にトランスを構成する補助巻線を設けて該補助巻線から得てもよい。
【0022】
自己降伏型スイッチ素子33の一端はコンデンサ32の一端と接続されており、自己降伏型スイッチ素子33の他端は一次巻線7aの途中に接続されている。起動部3においては、コンデンサ32の両端電圧Vcdが自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧に達すると、自己降伏型スイッチ素子33が瞬間的に導通状態となることによってトリガー電圧及び電流が出力される。また、コンデンサ32の一端は点灯確認部4と接続されており、起動部3は、コンデンサ32の両端電圧Vcdを点灯確認部4へ提供する。
【0023】
点灯確認部4は、コンデンサ32の両端電圧Vcdと放電灯Lのランプ電圧VLとに基づいて、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する。点灯確認部4は、入力端4a及び4bと、出力端4cとを有する。入力端4aは、コンデンサ32の両端電圧Vcdを入力するために、起動部3のコンデンサ32の一端に接続されている。入力端4bは、放電灯Lのランプ電圧VLの振幅を示す信号(以下、ランプ電圧相当信号という)VSを入力するために、ピークホールド回路21を介して二次巻線7bの中間タップに接続されている。ランプ電圧相当信号VSは、ランプ電圧VLの相当電圧を示し、ランプ電圧VLのピーク値の例えば0.35倍に設定される。出力端4cは制御部10と接続されており、点灯確認信号Sfが制御部10へ提供される。
【0024】
点灯確認部4は、次のようにして点灯確認信号Sfを生成する。コンデンサ32の両端電圧Vcdが、所定電圧(第2の所定電圧、例えば自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧の90%)を超えた後にこの所定電圧より低下すると、点灯確認部4は、起動部3から放電灯Lへ高圧パルスが印加されたことを認識する。そして、点灯確認部4は、放電灯Lへ高圧パルスが印加されてから所定の時間(例えば2〜3ミリ秒)が経過した時点における、ランプ電圧相当信号VSの値を参照する。放電灯Lの点灯が成功した場合にはランプ電圧VLは急激に低下する筈なので、点灯確認部4は、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧(第1の所定電圧)との大小関係に基づいて、点灯確認信号Sfを生成する。例えば、本実施形態の点灯確認部4は、ランプ電圧相当信号VSの値が上記所定電圧よりも大きい場合に、放電灯Lの点灯に失敗したこと(不点灯)を示すため、通常はLレベルを維持している点灯確認信号Sfを或る短い時間だけHレベルとする。
【0025】
制御部10は、放電灯Lのランプ電圧VL及びランプ電流IL、並びに点灯確認信号Sfに基づいて、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する。すなわち、制御部10は、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御することによって、放電灯Lの点灯前においては放電灯Lへ供給されるOCVを制御し、放電灯Lの点灯後においては放電灯Lへの供給電力の大きさを制御する。また、制御部10は、点灯確認信号Sfが放電灯Lの不点灯を示した場合に、点灯制御をOCVの制御からやり直す。
【0026】
制御部10は、入力端10a〜10c、及び出力端10dを有する。入力端10aは、ランプ電圧相当信号VSを入力するために、ピークホールド回路21に接続されている。入力端10bは、放電灯Lのランプ電流ILを検出するために設けられた抵抗素子14の一端に、ピークホールド回路22及びバッファ23を介して接続されている。抵抗素子14の一端は、更に放電灯点灯回路1の出力端子を介して放電灯Lの一方の電極に接続され、抵抗素子14の他端は、接地電位線GNDに接続されている。そして、バッファ23からは、ランプ電流ILの振幅を示す信号(以下、ランプ電流相当信号という)ISが出力される。入力端10cは、点灯確認信号Sfを入力するために点灯確認部4の出力端4cと接続されている。出力端10dはブリッジドライバ6と接続されており、制御信号Scがブリッジドライバ6へ提供される。
【0027】
本実施形態の制御部10は、演算部11、誤差増幅器12、及びV−F変換部13を有する。演算部11は、制御部10の入力端10aを介してランプ電圧相当信号VSを入力し、制御部10の入力端10bを介してランプ電流相当信号ISを入力する。演算部11は、放電灯Lの点灯前においては、OCVの大きさを示すランプ電圧相当信号VSが所定値に近づくように出力電圧V1を生成し、放電灯Lの点灯後においては、ランプ電圧相当信号VS及びランプ電流相当信号ISに基づいて、供給電力の大きさが所定値に近づくように出力電圧V1を生成する。
【0028】
誤差増幅器12は、演算部11の後段に設けられている。誤差増幅器12の反転入力端子には、演算部11からの出力電圧V1、及び点灯確認部4からの点灯確認信号Sfのうち一方が入力される。本実施形態では、演算部11及び点灯確認部4は各々ダイオード16a及び16bを介して誤差増幅器12と接続されており、出力電圧V1及び点灯確認信号Sfのうち電圧が高い方の信号電圧(すなわち、ブリッジドライバ6の駆動周波数をより高くする信号電圧)が誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。具体的には、高圧パルスが発生したにも拘わらず放電灯Lの点灯に失敗した場合、点灯確認信号Sfが短い時間だけHレベルとなり出力電圧V1よりも高くなるので、この間は点灯確認信号Sfが誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。これ以外のときは、点灯確認信号SfはLレベルであり出力電圧V1よりも低いので、出力電圧V1が誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。誤差増幅器12の非反転入力端子は、所定の基準電圧V2を生成する電圧源15に接続されている。誤差増幅器12からの出力電圧V3は、V−F変換部13へ提供される。なお、誤差増幅器12の入出力の位相を補償したい場合には、反転入力端子と出力端子とをコンデンサを介して接続し、負帰還回路を構成してもよい。この場合、制御部10の応答速度は該コンデンサの容量により変化する。
【0029】
V−F変換部13は、アナログ信号である出力電圧V3をV−F変換し、出力電圧V3の電圧値に応じた周波数のパルス列を含む制御信号Scを生成する。V−F変換部13は、この制御信号Scをブリッジドライバ6へ出力する。
【0030】
以上の構成を備える放電灯点灯回路1の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、(a)駆動周波数、(b)コンデンサ32の両端電圧Vcd、(c)ランプ電圧VL、(d)点灯確認信号Sf、(e)供給電力、の電源投入からの遷移をそれぞれ示すグラフである。また、図4は、放電灯Lの点灯前におけるOCVと駆動周波数との関係(グラフG1)、及び放電灯Lの点灯後における供給電力と駆動周波数との関係(グラフG2)とを示すグラフである。なお、図4において、グラフG1の中心周波数faは点灯前における直列共振周波数であり、グラフG2の中心周波数fbは点灯後における直列共振周波数である。
【0031】
放電灯点灯回路1に電源が投入されると(時刻t0)、制御部10は、図3(a)に示すように、ブリッジドライバ6の駆動周波数を所定の周波数f2に近づける。この周波数f2は、電力供給部2の定常時の駆動周波数帯(例えば1MHz〜2.5MHz)よりも高い周波数(例えば3MHz)であり、図4に示すように、目標OCVである所定のOCV1に対応する周波数f1(>fa)よりも大きい。
【0032】
続いて、制御部10は、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように、フィードバック制御によって駆動周波数を低下させる(図4の矢印A)。こうしてOCVが所定のOCV1で安定すると、制御部10の演算部11は、OCVが所定のOCV1を保持する様に制御を行い、OCV1に対応する周波数f1で動作する出力電圧V1を生成する。その後、図3(b)に示すように、コンデンサ32に電荷が蓄積され、その両端電圧Vcdが徐々に上昇する。そして、両端電圧Vcdが自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧Vbkに達すると、自己降伏型スイッチ素子33が瞬間的に短絡し、放電灯Lに高圧パルスP(図3(c)、時刻t1)が印加される。ここで、放電灯Lの点灯に失敗すると、放電灯Lにおいてアークが成長しないので、図3(c)に示すようにランプ電圧VLは瞬時にOCV1付近へ戻る。
【0033】
このとき、点灯確認部4は、放電灯Lへ高圧パルスが印加された時刻t1から所定の時間Δtが経過した時刻t2における、ランプ電圧相当信号VSの値を参照する。この例では不点灯によりランプ電圧VLはOCV1付近に戻っているので、点灯確認部4は、不点灯を示すHレベルの点灯確認信号Sfを制御部10へ出力する(図3(d))。
【0034】
制御部10では、Hレベルの点灯確認信号Sfが入力されると、誤差増幅器12の出力電圧V3が瞬時に低下し、制御信号Scの周波数が高くなる。これにより、ブリッジドライバ6の駆動周波数は再びf2へ移行する。点灯確認信号SfがLレベルに戻ると、制御部10の演算部11は、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように、駆動周波数を低下させる。以降、放電灯Lの点灯が成功するまで、放電灯点灯回路1は上記動作を繰り返す。
【0035】
そして、高圧パルスPの印加により放電灯Lの点灯に成功すると(時刻t3)、放電灯Lにおいてアークが成長し、ランプ電圧VLが低下する(図3(c))。従って、点灯確認部4から出力される点灯確認信号SfはLレベルに維持される。その後、ランプ電流ILが或る程度大きくなってランプ電流相当信号ISが検出可能になると(時刻t4)、制御部10は、放電灯Lへの供給電力(すなわちランプ電圧VLとランプ電流ILとの積)が或る供給電力値P1に近づくように駆動周波数を上昇させる(図4の矢印B)。その後、制御部10は、或る所定の時間関数に従って放電灯Lへの供給電力が定常値P2(<P1)へ近づくように、駆動周波数を更に上昇させる(図4の矢印C)。
【0036】
次に、本実施形態の点灯確認部4の内部構成の一例について説明する。図5は、点灯確認部4の内部構成例を示す図である。図5を参照すると、点灯確認部4は、比較回路41、パルス検出回路42、遅延回路43、及び信号生成回路44を有する。
【0037】
比較回路41は、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧(第1の所定電圧)V4とを比較する回路である。比較回路41は、コンパレータ41a及びシュミットトリガ41bを含む。コンパレータ41aの負入力端子には、点灯確認部4の入力端4bを介してランプ電圧相当信号VSが入力される。コンパレータ41aの正入力端子には、所定電圧V4が入力される。なお、所定電圧V4は、例えば図3及び図4に示したOCV1の50%に相当するランプ電圧相当信号VSの大きさに設定される。コンパレータ41aは、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えたときにLレベルの電圧を出力し、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えないときにはHレベルの電圧を出力する。コンパレータ41aからの出力電圧V6は、プルアップ回路41cを経てシュミットトリガ41bへ入力される。そして、電圧V6のHレベル/Lレベルが反転された電圧V7が、シュミットトリガ41bから信号生成回路44へ出力される。
【0038】
パルス検出回路42は、高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号Sp1を生成する回路である。パルス検出回路42は、コンパレータ42aを含む。コンパレータ42aの正入力端子には、点灯確認部4の入力端4aを介してコンデンサ32の両端電圧Vcdが入力される。なお、コンパレータ42aの正入力端子と接地電位線GNDとの間には、コンデンサ42bが設けられている。コンパレータ42aの負入力端子には、所定電圧(第2の所定電圧)V5が入力される。所定電圧V5は、上述したように、例えば自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧Vbkの90%に設定される。コンパレータ42aは、両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えたときにHレベルの電圧を出力し、両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えないときにはLレベルの電圧を出力する。コンパレータ42aから出力された電圧信号は、パルス印加信号Sp1として遅延回路43へ入力される。そして、パルス印加信号Sp1は、遅延回路43において所定の時間(図3(d)のΔt)だけ遅延され、パルス印加信号Sp2として信号生成回路44へ入力される。
【0039】
信号生成回路44は、比較回路41からの出力電圧V7と、遅延回路43からのパルス印加信号Sp2とに基づいて、高圧パルスの印加による点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する。すなわち、信号生成回路44は、パルス印加信号Sp2に示されるタイミングで比較回路41からの出力電圧V7を参照し、出力電圧V7がHレベルである(すなわち、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4よりも高い)場合に点灯確認信号SfをHレベル(不点灯)とし、出力電圧V7がLレベルである(すなわち、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4よりも低い)場合には点灯確認信号SfをLレベルに維持する。
【0040】
図6は、遅延回路43の具体的構成例を示す回路図である。遅延回路43は、例えば図6に示すように、Dフリップフロップ43a、JKフリップフロップ43b、ANDゲート43c、及びNORゲート43dを含んで構成される。Dフリップフロップ43aのD端子にはパルス検出回路42からパルス印加信号Sp1が入力され、クロック(CK)端子には所定時間Δt(例えば2ミリ秒)を一周期とするクロック信号Sclkが入力される。そして、Dフリップフロップ43aのQ出力(信号S1)が、後段のANDゲート43c及びNORゲート43dの双方へ出力される。
【0041】
ANDゲート43cには、Dフリップフロップ43aからの信号S1の他に、パルス印加信号Sp1が入力される。そして、これらの信号の論理積を示す信号S2が、後段のJKフリップフロップ43bのJ端子へ出力される。同様に、NORゲート43dにも、信号S1の他にパルス印加信号Sp1が入力される。そして、これらの信号の否定論理和を示す信号S3が、後段のJKフリップフロップ43bのK端子へ出力される。JKフリップフロップ43bのクロック(CK)端子には、クロック信号Sclkが入力される。そして、JKフリップフロップ43bのQバー出力(Q出力の反転出力)が、パルス印加信号Sp2として後段の信号生成回路44へ出力される。
【0042】
なお、Dフリップフロップ43a及びJKフリップフロップ43bのクリア(CLR)端子には、放電灯点灯回路1に電源が投入された際に生成されるパワーオンリセット信号Srstが入力される。
【0043】
図7は、信号生成回路44の具体的構成例を示す回路図である。信号生成回路44は、例えば図7に示すように、Dフリップフロップ44a、フィルタ回路44b、シュミットトリガ44c及び44d、及びANDゲート44e及び44fを含んで構成される。Dフリップフロップ44aのD端子には比較回路41から電圧V7が入力され、クロック(CK)端子には遅延回路43からパルス印加信号Sp2が入力される。そして、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)が、後段のフィルタ回路44b及びANDゲート44eの双方へ出力される。フィルタ回路44bは抵抗及びコンデンサからなるローパスフィルタであり、このフィルタ回路44bと、その後段に設けられたシュミットトリガ44cとによって、信号S4が遅延され且つ反転される。シュミットトリガ44cからの出力信号S5は、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)とともにANDゲート44eに入力される。そして、これらの信号の論理積を示す信号が、点灯確認信号Sfとして制御部10(図1参照)へ出力される。
【0044】
なお、ANDゲート44fには、パルス印加信号Sp1がシュミットトリガ44dを介して反転された信号S6と、パワーオンリセット信号Srstとが入力される。ANDゲート44fからの出力信号S7は、Dフリップフロップ44aのクリア(CLR)端子に入力される。
【0045】
図8は、上記構成を有する点灯確認部4の動作を説明するためのタイミングチャートである。図8において、(a)はランプ電圧VL、(b)はコンデンサ32の両端電圧Vcd、(c)はパルス印加信号Sp1、(d)は遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力、(e)は比較回路41からの出力電圧V7、(f)は遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQバー出力(すなわちパルス印加信号Sp2)、(g)は信号生成回路44のDフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)、(h)は点灯確認信号Sf、の遷移をそれぞれ示している。
【0046】
放電灯点灯回路1に電源電圧が投入されると、制御部10によってランプ電圧VLが所定のOCV1に制御される(図8(a))。このとき、ランプ電圧VLがV4を超えた時点(時刻ta)で、比較回路41の出力電圧V7がHレベルに立ち上がる(図8(e))。次に、コンデンサ32の両端電圧Vcdが所定電圧V5に達すると(時刻tb)、パルス検出回路42から出力されるパルス印加信号Sp1がHレベルに立ち上がる(図8(c))。そして、遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力が所定時間Δt経過後に立ち上がり(図8(d))、同時に、その反転信号であるQバー出力、すなわちパルス印加信号Sp2が立ち下がる(図8(f))。
【0047】
続いて、両端電圧Vcdが放電開始電圧Vbkに達すると(時刻tc)、放電灯Lに高圧パルスが印加され、同時に両端電圧Vcdが0V付近まで低下する。このとき、両端電圧Vcdが所定電圧V5より低下するので、このタイミングでパルス印加信号Sp1がLレベルに立ち下がる(図8(c))。従って、パルス印加信号Sp1は、その立ち下がりによって高圧パルスの印加タイミングを示すこととなる。そして、遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力が所定時間Δt経過後に立ち下がり(図8(d))、同時に、その反転信号であるパルス印加信号Sp2が立ち上がる(図8(f))。
【0048】
このとき、放電灯Lの点灯に失敗すると、ランプ電圧VLがOCV1となる様に制御されるので、比較回路41の出力電圧V7は極めて短い時間後に再びHレベルとなる(図8(e))。この状態でパルス印加信号Sp2が立ち上がると、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)が立ち上がり(図8(g))、これを受けて、パルス状の点灯確認信号SfがANDゲート44eから出力される(図8(h))。このように、点灯確認信号Sfは、放電灯Lに高圧パルスが印加された時刻tcから所定時間Δt経過後に、パルス状に立ち上がる。この点灯確認信号Sfが制御部10へ提供され、図3(d)に示したように、制御部10は点灯制御を再度実行することとなる。
【0049】
なお、放電灯Lの点灯に成功した場合(時刻td)には、その直後にランプ電圧VLが0V付近まで低下するので、比較回路41の出力電圧V7はLレベルに立ち下がる(図8(e))。従って、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)はLレベルを継続し(図8(g))、ANDゲート44eからの点灯確認信号SfもLレベルを継続する(図8(h))。
【0050】
以上に説明した、本実施形態の放電灯点灯回路1による効果について説明する。放電灯点灯回路1では、点灯確認部4が、放電灯Lのランプ電圧VLの相当電圧であるランプ電圧相当信号VSと所定電圧V4との大小関係に基づいて点灯確認信号Sfを生成している。放電灯Lに高圧パルスを印加したのち、放電灯Lの点灯に成功した場合には放電灯Lの電極間にアークが形成されるためランプ電圧VLが急激に低下するが、放電灯Lの点灯に失敗した場合には、電極間は非導通状態を維持しているためランプ電圧VLは瞬時にOCV1付近へ戻る。
【0051】
ここで、図9は、放電灯Lの点灯に失敗した場合におけるランプ電圧VLの変化の様子を示すグラフである。図9に示すように、高圧パルスを印加してから極めて短い時間(この図では約20マイクロ秒)で、ランプ電圧VLがOCV1の50%まで戻る。従って、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4(例えば、OCV1の50%)より大きい場合には放電灯Lの点灯に失敗したと判断でき、且つ、この判断を極めて短い時間内に行うことができる。また、放電灯Lに高圧パルスが印加されてから所定の時間Δtが経過した時点で上記判断を行うことにより、点灯可否の判断を確実に行うことができる。このように、本実施形態の放電灯点灯回路1によれば、点灯可否の判断を短時間に且つ確実に行うことができるので、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。なお、この時間Δtは、高圧パルスが印加されてからランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えるまでの時間(図9では約20マイクロ秒)よりも長く設定されるとよい。
【0052】
また、本実施形態では、制御部10が、不点灯を示す点灯確認信号Sfを点灯確認部4から入力した場合に、ブリッジドライバ6の駆動周波数を所定のOCV1に対応する周波数f1(図4参照)より大きい所定の周波数f2に近づけ、その後、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように駆動周波数を低下させている。制御部10は、不点灯の際にブリッジドライバ6の駆動周波数をこのように制御することが好ましい。すなわち、放電灯Lの点灯に失敗した場合、高圧パルス印加前と同じ駆動周波数でブリッジドライバ6を制御したとしても、OCV特性が変動する場合があり、所定のOCV1を維持できるとは限らない。従って、点灯に失敗した場合には、電源投入時における点灯シーケンスと同じくランプ電圧が所定のOCV1に近づくように高周波数側から駆動周波数を再び制御することにより、ランプ電圧VLを所定のOCV1に好適に維持できる。また、このような制御により、点灯に失敗した場合に点灯制御を直ちに再実行(リトライ)できるので、目視的な点灯遅れを抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、パルス検出回路42が、コンデンサ32の両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えた後に該所定電圧V5より低下したタイミングを、高圧パルスが印加されたタイミングとしている。このように、起動部3の回路部品をパルス検出に利用することにより、回路規模を抑えることができる。また、高圧パルス印加時には、コンデンサ32の充電エネルギが一気に放出されて両端電圧Vcdが瞬時に低下する。他方、コンデンサ32が充電される際には、両端電圧Vcdは徐々に上昇する。従って、本実施形態によれば、高圧パルスの印加タイミングを確実に検出できる。
【0054】
(変形例)
図10は、点灯確認部4が有するパルス検出回路の一変形例を示す回路図である。図10に示すパルス検出回路45は、微分回路部45aと、クランプ部45bと、シュミットトリガ45cとを含んで構成されている。
【0055】
微分回路部45aは、コンデンサ32(図1参照)の両端電圧Vcdを微分する。微分回路部45aは、コンデンサ45d及び抵抗素子45e,45fを含む。コンデンサ45dの一端には両端電圧Vcdが入力され、コンデンサ45dの他端には抵抗素子45e,45fを介して電源電圧Vccが供給される。また、コンデンサ45dの他端は、抵抗素子45eを介してクランプ部45bに接続されている。
【0056】
クランプ部45bは、微分回路部45aからの出力電圧V8を或る電圧範囲に制限する。クランプ部45bは、電源電圧Vccと接地電位線GNDとの間に逆方向に直列接続されたダイオード45g及び45hを含む。ダイオード45g及び45hの間の接続点は、微分回路部45aの出力端と接続され、且つシュミットトリガ45cの入力端と接続される。シュミットトリガ45cから出力される電圧は、パルス印加信号Sp1として後段の遅延回路に入力される。
【0057】
図11は、本変形例によるパルス検出回路45の動作を示すグラフである。図11において、(a)はコンデンサ32の両端電圧Vcd、(b)は微分回路部45aからの出力電圧V8、(c)はシュミットトリガ45cからの出力電圧(パルス印加信号Sp1)、の遷移をそれぞれ示している。
【0058】
コンデンサ32の両端電圧Vcdが放電開始電圧Vbkに達すると(時刻tc)、放電灯Lに高圧パルスが印加され、同時に両端電圧Vcdが0V付近まで低下する。このとき、両端電圧Vcdが急激に低下するので、微分回路部45aからの出力電圧V8の波形は図11(b)に示すような一定電圧Vccに対して負のパルス状となる。この出力電圧V8のパルス波形は、クランプ部45b及びシュミットトリガ45cによって整形され且つ反転し、図11(c)に示すような矩形状のパルス波形となる。従って、シュミットトリガ45cからの出力電圧(パルス印加信号Sp1)は、その立ち上がりによって高圧パルスの印加タイミングを示すこととなる。
【0059】
本変形例のように、点灯確認部が有するパルス検出回路45は、両端電圧Vcdを微分する微分回路部45aを含み、該微分回路部45aからの出力電圧V8に基づいてパルス印加信号Sp1を生成してもよい。
【0060】
本発明による放電灯点灯回路は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態の制御部10では、点灯確認信号Sfを演算部11からの出力電圧V1に畳重させることによって点灯制御を再実行しているが、演算部が点灯確認部から点灯確認信号を受け、この点灯確認信号に応じて演算部の出力電圧が変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】トランジスタの駆動周波数と供給電力及びOCVの大きさとの関係を概念的に示すグラフである。
【図3】(a)駆動周波数、(b)コンデンサの両端電圧、(c)ランプ電圧、(d)点灯確認信号、(e)供給電力、の電源投入からの遷移をそれぞれ示すグラフである。
【図4】放電灯の点灯前におけるOCVと駆動周波数との関係(グラフG1)、及び放電灯の点灯後における供給電力と駆動周波数との関係(グラフG2)とを示すグラフである。
【図5】点灯確認部の内部構成例を示す図である。
【図6】遅延回路の具体的構成例を示す回路図である。
【図7】信号生成回路の具体的構成例を示す回路図である。
【図8】点灯確認部の動作を説明するためのタイミングチャートである。(a)はランプ電圧、(b)はコンデンサの両端電圧、(c)はパルス印加信号、(d)は遅延回路のJKフリップフロップのQ出力、(e)は比較回路からの出力電圧、(f)は遅延回路のJKフリップフロップのQバー出力、(g)は信号生成回路のDフリップフロップのQ出力、(h)は点灯確認信号、の遷移をそれぞれ示している。
【図9】放電灯の点灯に失敗した場合におけるランプ電圧の変化の様子を示すグラフである。
【図10】点灯確認部が有するパルス検出回路の一変形例を示す回路図である。
【図11】変形例によるパルス検出回路の動作を示すグラフである。(a)はコンデンサの両端電圧、(b)は微分回路部からの出力電圧、(c)はシュミットトリガからの出力電圧、の遷移をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0062】
1…放電灯点灯回路、2…電力供給部、3…起動部、4…点灯確認部、5a,5b…トランジスタ、6…ブリッジドライバ、7…トランス、7a…一次巻線、7b…二次巻線、7c…補助巻線、10…制御部、11…演算部、12…誤差増幅器、13…変換部、15…電圧源、21,22…ピークホールド回路、23…バッファ、33…自己降伏型スイッチ素子、41…比較回路、42,45…パルス検出回路、43…遅延回路、44…信号生成回路、B…直流電源、L…放電灯、Sc…制御信号、Sf…点灯確認信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前照灯などに用いられるメタルハライドランプ等の放電灯を点灯させるためには、電力を安定的に供給するための点灯回路(バラスト)が必要となる。例えば、特許文献1に開示された放電灯点灯回路は、Hブリッジ回路を備えており、このHブリッジ回路から放電灯へ交流電力が供給される。
【0003】
また、放電灯点灯回路は、放電灯の点灯制御も行う。すなわち、放電灯点灯回路は、放電灯の点灯前においては無負荷時出力電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を制御し、放電灯に高圧パルスを印加して放電灯を点灯させたのち、過渡投入電力を低減しながら定常点灯状態へと移行させる。
【特許文献1】特開2001−6894
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような構成の放電灯点灯回路では、大容量のコンデンサに電力を蓄えておき、点灯直後に該コンデンサからの電流を放電灯へ一気に供給することにより、放電灯を安定して点灯させることができる。しかし、直列共振回路を有する放電灯点灯回路では、回路の小型化のため、このようなコンデンサが設けられないことが多い。従って、高圧パルス印加後、放電灯内のアークが成長せず点灯に失敗することがある。点灯に失敗した場合、放電灯点灯回路は、点灯制御を再び実行する必要がある。このため、放電灯の点灯に成功したか否かの判断が重要となる。
【0005】
従来より、点灯に成功したか否かの判断は、放電灯を流れる電流(以下、ランプ電流という)の有無(具体的には、ランプ電流値が所定の閾値を超えたか否か)により行われていた。しかし、点灯直後のランプ電流は微弱であり、検出可能な程度にランプ電流値が大きくなるまで点灯可否の判断を待っていたのでは、点灯制御の再実行に時間を要してしまう。特に、車輌用の前照灯などに放電灯が用いられる場合、電源投入から点灯までの時間はできるだけ短いことが好ましい。
【0006】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる放電灯点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明による放電灯点灯回路は、放電灯を点灯させるための交流電力を該放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、複数のスイッチング素子、インダクタ及びトランスのうち少なくとも一方、並びにコンデンサを含む直列共振回路と、複数のスイッチング素子を駆動する駆動部とを有し、交流電力を放電灯へ供給する電力供給部と、放電灯に高圧パルスを印加して点灯を促す起動部と、高圧パルスによる放電灯の点灯の成否を示す点灯確認信号を生成する点灯確認部と、点灯確認信号に基づいて駆動部の駆動周波数を制御する制御部とを備え、点灯確認部は、放電灯に高圧パルスが印加されてから所定の時間が経過した時点における、放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて点灯確認信号を生成することを特徴とする。
【0008】
上記した放電灯点灯回路では、点灯確認部が、放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて点灯確認信号を生成している。放電灯に高圧パルスを印加したのち、放電灯の点灯に成功した場合には放電灯の電極間にアークが形成されるため電極間電圧(以下、ランプ電圧という)が急激に低下するが、放電灯の点灯に失敗した場合には、電極間は非導通状態を維持するためランプ電圧は瞬時にOCVへ戻る。従って、ランプ電圧(またはその相当電圧でもよい)が第1の所定電圧より大きい場合には放電灯の点灯に失敗したと判断でき、且つ、この判断を短い時間内に行うことができる。また、放電灯に高圧パルスが印加されてから所定の時間(好ましくは、ランプ電圧が第1の所定電圧まで戻る時間より長い時間)が経過した時点で上記判断を行うことにより、点灯可否の判断を確実に行うことができる。このように、上記した放電灯点灯回路によれば、点灯可否の判断を短時間に且つ確実に行うことができるので、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。
【0009】
また、放電灯点灯回路は、点灯確認部が、電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧とを比較する比較回路と、高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号を生成するパルス検出回路と、パルス印加信号を所定の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延したパルス印加信号に示されるタイミングで比較回路からの出力信号を参照し、電極間電圧またはその相当電圧が第1の所定電圧よりも高い場合に、不点灯を示す点灯確認信号を生成する信号生成回路とを有することを特徴としてもよい。このような構成により、上記点灯確認部を好適に実現できる。
【0010】
また、放電灯点灯回路は、起動部が、高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、パルス検出回路は、容量素子の両端電圧が第2の所定電圧を超えた後に該第2の所定電圧より低下したタイミングを高圧パルスが印加されたタイミングとすることを特徴としてもよい。或いは、放電灯点灯回路は、起動部が、高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、パルス検出回路が、容量素子の両端電圧を微分する微分回路を含み、該微分回路からの出力電圧に基づいてパルス印加信号を生成することを特徴としてもよい。これらのうち何れかの構成により、上記パルス印加信号を好適に生成できる。
【0011】
また、放電灯点灯回路は、制御部は、不点灯を示す点灯確認信号を点灯確認部から入力した場合に、駆動周波数を所定の無負荷時出力電圧(OCV)に対応する周波数より大きい所定の周波数に近づけ、その後、電極間電圧が所定の無負荷時出力電圧に近づくように駆動周波数を低下させることを特徴としてもよい。放電灯の点灯に失敗した場合、高圧パルス印加前と同じ駆動周波数で駆動部を制御したとしても、所定のOCVを維持できるとは限らない。従って、放電灯の点灯に失敗した場合には、上記のように、ランプ電圧が所定のOCVに近づくように駆動周波数を再び制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放電灯点灯回路によれば、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放電灯点灯回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す放電灯点灯回路1は、放電灯Lを点灯させるための交流電力を放電灯Lへ供給する回路であって、直流電源Bからの直流電圧VBを交流電圧に変換して放電灯Lに供給する。放電灯点灯回路1は、主に車輌用の、特に前照灯などの灯具に用いられる。なお、放電灯Lとしては、例えば水銀フリーのメタルハライドランプが好適に用いられるが、他の構造をもつ放電灯であってもよい。
【0015】
放電灯点灯回路1は、直流電源Bから電源供給を受けて交流電力を放電灯Lに供給する電力供給部2と、点灯開始時に放電灯Lに高圧パルスを印加して点灯を促す起動部3と、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する点灯確認部4と、放電灯Lのランプ電圧VL、ランプ電流IL、及び点灯確認信号Sfに基づいてブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する制御部10とを備える。
【0016】
電力供給部2は、制御部10からの制御信号Scに基づく大きさの電力またはOCVを放電灯Lへ供給する。電力供給部2は、点灯操作のためのスイッチ20を介して直流電源B(バッテリーなど)に接続されており、直流電源Bから直流電圧VBを受けて交流変換及び昇圧を行う。本実施形態の電力供給部2は、スイッチング素子である2つのトランジスタ5a及び5bと、トランジスタ5a及び5bを駆動する駆動部であるブリッジドライバ6とを有する。トランジスタ5a,5bとしては、例えば図1に示すようにNチャネルMOSFETが好適に用いられるが、他のFETやバイポーラトランジスタでもよい。本実施形態では、トランジスタ5aのドレイン端子は直流電源Bのプラス側端子に接続されており、トランジスタ5aのソース端子はトランジスタ5bのドレイン端子に接続されており、トランジスタ5aのゲート端子はブリッジドライバ6に接続されている。また、トランジスタ5bのソース端子は接地電位線GND(すなわち直流電源Bのマイナス側端子)に接続されており、トランジスタ5bのゲート端子はブリッジドライバ6に接続されている。ブリッジドライバ6は、互いに逆相となる駆動信号Sdrv1、Sdrv2をトランジスタ5a、5bのゲート端子へ供給することにより、トランジスタ5a、5bを交互に導通させる。
【0017】
本実施形態の電力供給部2は、トランス7、コンデンサ8、及びインダクタ9を更に有する。トランス7は、放電灯Lへ高圧パルスを印加し、また、電力を伝えると共に該電力を昇圧するために設けられる。また、トランス7、コンデンサ8、及びインダクタ9は、直列共振回路を構成している。すなわち、トランス7の一次巻線7aと、インダクタ9と、コンデンサ8とが互いに直列に接続されている。そして、その直列回路の一端はトランジスタ5aのソース端子及びトランジスタ5bのドレイン端子に接続されており、他端は接地電位線GNDに接続されている。この構成においては、トランス7の一次巻線7aのリーケージ(漏れ)インダクタンス、及びインダクタ9のインダクタンスからなる合成リアクタンスと、コンデンサ8の容量とによって共振周波数が決定される。なお、一次巻線7a及びコンデンサ8のみによって直列共振回路を構成し、インダクタ9を省略してもよい。また、一次巻線7aのインダクタンスをインダクタ9と較べて極めて小さく設定し、共振周波数が、インダクタ9とコンデンサ8の容量とによってほぼ決定されるようにしてもよい。
【0018】
電力供給部2においては、コンデンサ8及び誘導性要素(インダクタンス成分やインダクタ)による直列共振現象を利用し、トランジスタ5a,5bの駆動周波数をこの直列共振周波数以上の値に規定して該トランジスタ5a,5bを交互にオン/オフさせ、トランス7の一次巻線7aに交流電力またはOCVを生じさせる。この交流電力またはOCVは、トランス7の二次巻線7bへ昇圧されて伝達され、二次巻線7bに接続された放電灯Lへ供給される。なお、トランジスタ5a,5bを駆動するブリッジドライバ6は、トランジスタ5a,5bが共に接続状態とならないように相反的に各トランジスタ5a,5bを駆動する。なお、本実施形態におけるブリッジドライバ6の駆動周波数は、例えば1MHz以上の高周波である。
【0019】
また、この直列共振回路のインピーダンスは、ブリッジドライバ6によるトランジスタ5a,5bの駆動周波数によって変化する。従って、放電灯Lに供給される交流電力やOCVの大きさを、該駆動周波数を変化させることにより制御できる。ここで、図2は、トランジスタ5a,5bの駆動周波数と供給電力及びOCVの大きさとの関係を概念的に示すグラフである。図2に示すように、放電灯Lに供給されるOCV及び電力の大きさは、駆動周波数が直列共振周波数f0(点灯前と点灯後で異なる)と等しいときに最大値OCVmax及びPmaxとなり、駆動周波数が直列共振周波数f0よりも大きくなる(または小さくなる)に従ってそれぞれ減少する。但し、駆動周波数が直列共振周波数f0よりも小さい場合、スイッチング損失が大きくなり効率が低下する。従って、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、直列共振周波数f0よりも大きい領域(図中の領域X)においてその大きさが制御される。なお、直列共振周波数f0よりも小さい周波数領域を容量性領域と呼び、直列共振周波数f0よりも大きい周波数領域を誘導性領域と呼ぶ。本実施形態においては、ブリッジドライバ6の駆動周波数は、ブリッジドライバ6に接続された制御部10からの制御信号Sc(周波数変調されたパルス列を含む信号)のパルス周波数に従って制御される。
【0020】
また、この直列共振回路の点灯前における直列共振周波数をfa、点灯後における直列共振周波数をfbとすると、それぞれ以下の式(1)、(2)によって表される。但し、式中においてCはコンデンサ8の容量であり、Lrはインダクタ9のインダクタンスであり、Lp1は点灯前における一次巻線7bのインダクタンスであり、Lp2は点灯後における一次巻線7bのインダクタンスである。
【数1】
【数2】
一般的にLp1>Lp2であることから、点灯前における直列共振周波数faは点灯後における直列共振周波数fbよりも小さくなることがわかる。
【0021】
起動部3は、放電灯Lの点灯を促すために、高圧パルスを放電灯Lに印加する。すなわち、起動部3からトリガー電圧及び電流がトランス7の一次巻線7aに印加されると、二次巻線7bにおいて生成される交流電圧に、高電圧値および狭パルス幅を有する高圧パルスが畳重される。起動部3は、ダイオード31と、高圧パルスを生成するための電力を蓄えるコンデンサ(容量素子)32と、スパークギャップやガスアレスタ等の自己降伏型スイッチ素子33とを有する。ダイオード31のアノードはトランス7の補助巻線7cの一端に接続されており、ダイオード31のカソードはコンデンサ32の一端に接続されている。補助巻線7c及びコンデンサ32それぞれの他端は、共に接地電位線GNDに接続されている。なお、ダイオード31のアノードへの入力電圧については、例えば、トランス7の二次巻線7bから得てもよく、或いはインダクタ9と共にトランスを構成する補助巻線を設けて該補助巻線から得てもよい。
【0022】
自己降伏型スイッチ素子33の一端はコンデンサ32の一端と接続されており、自己降伏型スイッチ素子33の他端は一次巻線7aの途中に接続されている。起動部3においては、コンデンサ32の両端電圧Vcdが自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧に達すると、自己降伏型スイッチ素子33が瞬間的に導通状態となることによってトリガー電圧及び電流が出力される。また、コンデンサ32の一端は点灯確認部4と接続されており、起動部3は、コンデンサ32の両端電圧Vcdを点灯確認部4へ提供する。
【0023】
点灯確認部4は、コンデンサ32の両端電圧Vcdと放電灯Lのランプ電圧VLとに基づいて、高圧パルスによる放電灯Lの点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する。点灯確認部4は、入力端4a及び4bと、出力端4cとを有する。入力端4aは、コンデンサ32の両端電圧Vcdを入力するために、起動部3のコンデンサ32の一端に接続されている。入力端4bは、放電灯Lのランプ電圧VLの振幅を示す信号(以下、ランプ電圧相当信号という)VSを入力するために、ピークホールド回路21を介して二次巻線7bの中間タップに接続されている。ランプ電圧相当信号VSは、ランプ電圧VLの相当電圧を示し、ランプ電圧VLのピーク値の例えば0.35倍に設定される。出力端4cは制御部10と接続されており、点灯確認信号Sfが制御部10へ提供される。
【0024】
点灯確認部4は、次のようにして点灯確認信号Sfを生成する。コンデンサ32の両端電圧Vcdが、所定電圧(第2の所定電圧、例えば自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧の90%)を超えた後にこの所定電圧より低下すると、点灯確認部4は、起動部3から放電灯Lへ高圧パルスが印加されたことを認識する。そして、点灯確認部4は、放電灯Lへ高圧パルスが印加されてから所定の時間(例えば2〜3ミリ秒)が経過した時点における、ランプ電圧相当信号VSの値を参照する。放電灯Lの点灯が成功した場合にはランプ電圧VLは急激に低下する筈なので、点灯確認部4は、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧(第1の所定電圧)との大小関係に基づいて、点灯確認信号Sfを生成する。例えば、本実施形態の点灯確認部4は、ランプ電圧相当信号VSの値が上記所定電圧よりも大きい場合に、放電灯Lの点灯に失敗したこと(不点灯)を示すため、通常はLレベルを維持している点灯確認信号Sfを或る短い時間だけHレベルとする。
【0025】
制御部10は、放電灯Lのランプ電圧VL及びランプ電流IL、並びに点灯確認信号Sfに基づいて、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御する。すなわち、制御部10は、ブリッジドライバ6の駆動周波数を制御することによって、放電灯Lの点灯前においては放電灯Lへ供給されるOCVを制御し、放電灯Lの点灯後においては放電灯Lへの供給電力の大きさを制御する。また、制御部10は、点灯確認信号Sfが放電灯Lの不点灯を示した場合に、点灯制御をOCVの制御からやり直す。
【0026】
制御部10は、入力端10a〜10c、及び出力端10dを有する。入力端10aは、ランプ電圧相当信号VSを入力するために、ピークホールド回路21に接続されている。入力端10bは、放電灯Lのランプ電流ILを検出するために設けられた抵抗素子14の一端に、ピークホールド回路22及びバッファ23を介して接続されている。抵抗素子14の一端は、更に放電灯点灯回路1の出力端子を介して放電灯Lの一方の電極に接続され、抵抗素子14の他端は、接地電位線GNDに接続されている。そして、バッファ23からは、ランプ電流ILの振幅を示す信号(以下、ランプ電流相当信号という)ISが出力される。入力端10cは、点灯確認信号Sfを入力するために点灯確認部4の出力端4cと接続されている。出力端10dはブリッジドライバ6と接続されており、制御信号Scがブリッジドライバ6へ提供される。
【0027】
本実施形態の制御部10は、演算部11、誤差増幅器12、及びV−F変換部13を有する。演算部11は、制御部10の入力端10aを介してランプ電圧相当信号VSを入力し、制御部10の入力端10bを介してランプ電流相当信号ISを入力する。演算部11は、放電灯Lの点灯前においては、OCVの大きさを示すランプ電圧相当信号VSが所定値に近づくように出力電圧V1を生成し、放電灯Lの点灯後においては、ランプ電圧相当信号VS及びランプ電流相当信号ISに基づいて、供給電力の大きさが所定値に近づくように出力電圧V1を生成する。
【0028】
誤差増幅器12は、演算部11の後段に設けられている。誤差増幅器12の反転入力端子には、演算部11からの出力電圧V1、及び点灯確認部4からの点灯確認信号Sfのうち一方が入力される。本実施形態では、演算部11及び点灯確認部4は各々ダイオード16a及び16bを介して誤差増幅器12と接続されており、出力電圧V1及び点灯確認信号Sfのうち電圧が高い方の信号電圧(すなわち、ブリッジドライバ6の駆動周波数をより高くする信号電圧)が誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。具体的には、高圧パルスが発生したにも拘わらず放電灯Lの点灯に失敗した場合、点灯確認信号Sfが短い時間だけHレベルとなり出力電圧V1よりも高くなるので、この間は点灯確認信号Sfが誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。これ以外のときは、点灯確認信号SfはLレベルであり出力電圧V1よりも低いので、出力電圧V1が誤差増幅器12の反転入力端子へ入力される。誤差増幅器12の非反転入力端子は、所定の基準電圧V2を生成する電圧源15に接続されている。誤差増幅器12からの出力電圧V3は、V−F変換部13へ提供される。なお、誤差増幅器12の入出力の位相を補償したい場合には、反転入力端子と出力端子とをコンデンサを介して接続し、負帰還回路を構成してもよい。この場合、制御部10の応答速度は該コンデンサの容量により変化する。
【0029】
V−F変換部13は、アナログ信号である出力電圧V3をV−F変換し、出力電圧V3の電圧値に応じた周波数のパルス列を含む制御信号Scを生成する。V−F変換部13は、この制御信号Scをブリッジドライバ6へ出力する。
【0030】
以上の構成を備える放電灯点灯回路1の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、(a)駆動周波数、(b)コンデンサ32の両端電圧Vcd、(c)ランプ電圧VL、(d)点灯確認信号Sf、(e)供給電力、の電源投入からの遷移をそれぞれ示すグラフである。また、図4は、放電灯Lの点灯前におけるOCVと駆動周波数との関係(グラフG1)、及び放電灯Lの点灯後における供給電力と駆動周波数との関係(グラフG2)とを示すグラフである。なお、図4において、グラフG1の中心周波数faは点灯前における直列共振周波数であり、グラフG2の中心周波数fbは点灯後における直列共振周波数である。
【0031】
放電灯点灯回路1に電源が投入されると(時刻t0)、制御部10は、図3(a)に示すように、ブリッジドライバ6の駆動周波数を所定の周波数f2に近づける。この周波数f2は、電力供給部2の定常時の駆動周波数帯(例えば1MHz〜2.5MHz)よりも高い周波数(例えば3MHz)であり、図4に示すように、目標OCVである所定のOCV1に対応する周波数f1(>fa)よりも大きい。
【0032】
続いて、制御部10は、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように、フィードバック制御によって駆動周波数を低下させる(図4の矢印A)。こうしてOCVが所定のOCV1で安定すると、制御部10の演算部11は、OCVが所定のOCV1を保持する様に制御を行い、OCV1に対応する周波数f1で動作する出力電圧V1を生成する。その後、図3(b)に示すように、コンデンサ32に電荷が蓄積され、その両端電圧Vcdが徐々に上昇する。そして、両端電圧Vcdが自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧Vbkに達すると、自己降伏型スイッチ素子33が瞬間的に短絡し、放電灯Lに高圧パルスP(図3(c)、時刻t1)が印加される。ここで、放電灯Lの点灯に失敗すると、放電灯Lにおいてアークが成長しないので、図3(c)に示すようにランプ電圧VLは瞬時にOCV1付近へ戻る。
【0033】
このとき、点灯確認部4は、放電灯Lへ高圧パルスが印加された時刻t1から所定の時間Δtが経過した時刻t2における、ランプ電圧相当信号VSの値を参照する。この例では不点灯によりランプ電圧VLはOCV1付近に戻っているので、点灯確認部4は、不点灯を示すHレベルの点灯確認信号Sfを制御部10へ出力する(図3(d))。
【0034】
制御部10では、Hレベルの点灯確認信号Sfが入力されると、誤差増幅器12の出力電圧V3が瞬時に低下し、制御信号Scの周波数が高くなる。これにより、ブリッジドライバ6の駆動周波数は再びf2へ移行する。点灯確認信号SfがLレベルに戻ると、制御部10の演算部11は、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように、駆動周波数を低下させる。以降、放電灯Lの点灯が成功するまで、放電灯点灯回路1は上記動作を繰り返す。
【0035】
そして、高圧パルスPの印加により放電灯Lの点灯に成功すると(時刻t3)、放電灯Lにおいてアークが成長し、ランプ電圧VLが低下する(図3(c))。従って、点灯確認部4から出力される点灯確認信号SfはLレベルに維持される。その後、ランプ電流ILが或る程度大きくなってランプ電流相当信号ISが検出可能になると(時刻t4)、制御部10は、放電灯Lへの供給電力(すなわちランプ電圧VLとランプ電流ILとの積)が或る供給電力値P1に近づくように駆動周波数を上昇させる(図4の矢印B)。その後、制御部10は、或る所定の時間関数に従って放電灯Lへの供給電力が定常値P2(<P1)へ近づくように、駆動周波数を更に上昇させる(図4の矢印C)。
【0036】
次に、本実施形態の点灯確認部4の内部構成の一例について説明する。図5は、点灯確認部4の内部構成例を示す図である。図5を参照すると、点灯確認部4は、比較回路41、パルス検出回路42、遅延回路43、及び信号生成回路44を有する。
【0037】
比較回路41は、ランプ電圧相当信号VSと所定電圧(第1の所定電圧)V4とを比較する回路である。比較回路41は、コンパレータ41a及びシュミットトリガ41bを含む。コンパレータ41aの負入力端子には、点灯確認部4の入力端4bを介してランプ電圧相当信号VSが入力される。コンパレータ41aの正入力端子には、所定電圧V4が入力される。なお、所定電圧V4は、例えば図3及び図4に示したOCV1の50%に相当するランプ電圧相当信号VSの大きさに設定される。コンパレータ41aは、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えたときにLレベルの電圧を出力し、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えないときにはHレベルの電圧を出力する。コンパレータ41aからの出力電圧V6は、プルアップ回路41cを経てシュミットトリガ41bへ入力される。そして、電圧V6のHレベル/Lレベルが反転された電圧V7が、シュミットトリガ41bから信号生成回路44へ出力される。
【0038】
パルス検出回路42は、高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号Sp1を生成する回路である。パルス検出回路42は、コンパレータ42aを含む。コンパレータ42aの正入力端子には、点灯確認部4の入力端4aを介してコンデンサ32の両端電圧Vcdが入力される。なお、コンパレータ42aの正入力端子と接地電位線GNDとの間には、コンデンサ42bが設けられている。コンパレータ42aの負入力端子には、所定電圧(第2の所定電圧)V5が入力される。所定電圧V5は、上述したように、例えば自己降伏型スイッチ素子33の放電開始電圧Vbkの90%に設定される。コンパレータ42aは、両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えたときにHレベルの電圧を出力し、両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えないときにはLレベルの電圧を出力する。コンパレータ42aから出力された電圧信号は、パルス印加信号Sp1として遅延回路43へ入力される。そして、パルス印加信号Sp1は、遅延回路43において所定の時間(図3(d)のΔt)だけ遅延され、パルス印加信号Sp2として信号生成回路44へ入力される。
【0039】
信号生成回路44は、比較回路41からの出力電圧V7と、遅延回路43からのパルス印加信号Sp2とに基づいて、高圧パルスの印加による点灯の成否を示す点灯確認信号Sfを生成する。すなわち、信号生成回路44は、パルス印加信号Sp2に示されるタイミングで比較回路41からの出力電圧V7を参照し、出力電圧V7がHレベルである(すなわち、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4よりも高い)場合に点灯確認信号SfをHレベル(不点灯)とし、出力電圧V7がLレベルである(すなわち、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4よりも低い)場合には点灯確認信号SfをLレベルに維持する。
【0040】
図6は、遅延回路43の具体的構成例を示す回路図である。遅延回路43は、例えば図6に示すように、Dフリップフロップ43a、JKフリップフロップ43b、ANDゲート43c、及びNORゲート43dを含んで構成される。Dフリップフロップ43aのD端子にはパルス検出回路42からパルス印加信号Sp1が入力され、クロック(CK)端子には所定時間Δt(例えば2ミリ秒)を一周期とするクロック信号Sclkが入力される。そして、Dフリップフロップ43aのQ出力(信号S1)が、後段のANDゲート43c及びNORゲート43dの双方へ出力される。
【0041】
ANDゲート43cには、Dフリップフロップ43aからの信号S1の他に、パルス印加信号Sp1が入力される。そして、これらの信号の論理積を示す信号S2が、後段のJKフリップフロップ43bのJ端子へ出力される。同様に、NORゲート43dにも、信号S1の他にパルス印加信号Sp1が入力される。そして、これらの信号の否定論理和を示す信号S3が、後段のJKフリップフロップ43bのK端子へ出力される。JKフリップフロップ43bのクロック(CK)端子には、クロック信号Sclkが入力される。そして、JKフリップフロップ43bのQバー出力(Q出力の反転出力)が、パルス印加信号Sp2として後段の信号生成回路44へ出力される。
【0042】
なお、Dフリップフロップ43a及びJKフリップフロップ43bのクリア(CLR)端子には、放電灯点灯回路1に電源が投入された際に生成されるパワーオンリセット信号Srstが入力される。
【0043】
図7は、信号生成回路44の具体的構成例を示す回路図である。信号生成回路44は、例えば図7に示すように、Dフリップフロップ44a、フィルタ回路44b、シュミットトリガ44c及び44d、及びANDゲート44e及び44fを含んで構成される。Dフリップフロップ44aのD端子には比較回路41から電圧V7が入力され、クロック(CK)端子には遅延回路43からパルス印加信号Sp2が入力される。そして、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)が、後段のフィルタ回路44b及びANDゲート44eの双方へ出力される。フィルタ回路44bは抵抗及びコンデンサからなるローパスフィルタであり、このフィルタ回路44bと、その後段に設けられたシュミットトリガ44cとによって、信号S4が遅延され且つ反転される。シュミットトリガ44cからの出力信号S5は、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)とともにANDゲート44eに入力される。そして、これらの信号の論理積を示す信号が、点灯確認信号Sfとして制御部10(図1参照)へ出力される。
【0044】
なお、ANDゲート44fには、パルス印加信号Sp1がシュミットトリガ44dを介して反転された信号S6と、パワーオンリセット信号Srstとが入力される。ANDゲート44fからの出力信号S7は、Dフリップフロップ44aのクリア(CLR)端子に入力される。
【0045】
図8は、上記構成を有する点灯確認部4の動作を説明するためのタイミングチャートである。図8において、(a)はランプ電圧VL、(b)はコンデンサ32の両端電圧Vcd、(c)はパルス印加信号Sp1、(d)は遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力、(e)は比較回路41からの出力電圧V7、(f)は遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQバー出力(すなわちパルス印加信号Sp2)、(g)は信号生成回路44のDフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)、(h)は点灯確認信号Sf、の遷移をそれぞれ示している。
【0046】
放電灯点灯回路1に電源電圧が投入されると、制御部10によってランプ電圧VLが所定のOCV1に制御される(図8(a))。このとき、ランプ電圧VLがV4を超えた時点(時刻ta)で、比較回路41の出力電圧V7がHレベルに立ち上がる(図8(e))。次に、コンデンサ32の両端電圧Vcdが所定電圧V5に達すると(時刻tb)、パルス検出回路42から出力されるパルス印加信号Sp1がHレベルに立ち上がる(図8(c))。そして、遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力が所定時間Δt経過後に立ち上がり(図8(d))、同時に、その反転信号であるQバー出力、すなわちパルス印加信号Sp2が立ち下がる(図8(f))。
【0047】
続いて、両端電圧Vcdが放電開始電圧Vbkに達すると(時刻tc)、放電灯Lに高圧パルスが印加され、同時に両端電圧Vcdが0V付近まで低下する。このとき、両端電圧Vcdが所定電圧V5より低下するので、このタイミングでパルス印加信号Sp1がLレベルに立ち下がる(図8(c))。従って、パルス印加信号Sp1は、その立ち下がりによって高圧パルスの印加タイミングを示すこととなる。そして、遅延回路43のJKフリップフロップ43bのQ出力が所定時間Δt経過後に立ち下がり(図8(d))、同時に、その反転信号であるパルス印加信号Sp2が立ち上がる(図8(f))。
【0048】
このとき、放電灯Lの点灯に失敗すると、ランプ電圧VLがOCV1となる様に制御されるので、比較回路41の出力電圧V7は極めて短い時間後に再びHレベルとなる(図8(e))。この状態でパルス印加信号Sp2が立ち上がると、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)が立ち上がり(図8(g))、これを受けて、パルス状の点灯確認信号SfがANDゲート44eから出力される(図8(h))。このように、点灯確認信号Sfは、放電灯Lに高圧パルスが印加された時刻tcから所定時間Δt経過後に、パルス状に立ち上がる。この点灯確認信号Sfが制御部10へ提供され、図3(d)に示したように、制御部10は点灯制御を再度実行することとなる。
【0049】
なお、放電灯Lの点灯に成功した場合(時刻td)には、その直後にランプ電圧VLが0V付近まで低下するので、比較回路41の出力電圧V7はLレベルに立ち下がる(図8(e))。従って、Dフリップフロップ44aのQ出力(信号S4)はLレベルを継続し(図8(g))、ANDゲート44eからの点灯確認信号SfもLレベルを継続する(図8(h))。
【0050】
以上に説明した、本実施形態の放電灯点灯回路1による効果について説明する。放電灯点灯回路1では、点灯確認部4が、放電灯Lのランプ電圧VLの相当電圧であるランプ電圧相当信号VSと所定電圧V4との大小関係に基づいて点灯確認信号Sfを生成している。放電灯Lに高圧パルスを印加したのち、放電灯Lの点灯に成功した場合には放電灯Lの電極間にアークが形成されるためランプ電圧VLが急激に低下するが、放電灯Lの点灯に失敗した場合には、電極間は非導通状態を維持しているためランプ電圧VLは瞬時にOCV1付近へ戻る。
【0051】
ここで、図9は、放電灯Lの点灯に失敗した場合におけるランプ電圧VLの変化の様子を示すグラフである。図9に示すように、高圧パルスを印加してから極めて短い時間(この図では約20マイクロ秒)で、ランプ電圧VLがOCV1の50%まで戻る。従って、ランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4(例えば、OCV1の50%)より大きい場合には放電灯Lの点灯に失敗したと判断でき、且つ、この判断を極めて短い時間内に行うことができる。また、放電灯Lに高圧パルスが印加されてから所定の時間Δtが経過した時点で上記判断を行うことにより、点灯可否の判断を確実に行うことができる。このように、本実施形態の放電灯点灯回路1によれば、点灯可否の判断を短時間に且つ確実に行うことができるので、点灯制御の再実行に要する時間を短くできる。なお、この時間Δtは、高圧パルスが印加されてからランプ電圧相当信号VSが所定電圧V4を超えるまでの時間(図9では約20マイクロ秒)よりも長く設定されるとよい。
【0052】
また、本実施形態では、制御部10が、不点灯を示す点灯確認信号Sfを点灯確認部4から入力した場合に、ブリッジドライバ6の駆動周波数を所定のOCV1に対応する周波数f1(図4参照)より大きい所定の周波数f2に近づけ、その後、ランプ電圧VLが所定のOCV1に近づくように駆動周波数を低下させている。制御部10は、不点灯の際にブリッジドライバ6の駆動周波数をこのように制御することが好ましい。すなわち、放電灯Lの点灯に失敗した場合、高圧パルス印加前と同じ駆動周波数でブリッジドライバ6を制御したとしても、OCV特性が変動する場合があり、所定のOCV1を維持できるとは限らない。従って、点灯に失敗した場合には、電源投入時における点灯シーケンスと同じくランプ電圧が所定のOCV1に近づくように高周波数側から駆動周波数を再び制御することにより、ランプ電圧VLを所定のOCV1に好適に維持できる。また、このような制御により、点灯に失敗した場合に点灯制御を直ちに再実行(リトライ)できるので、目視的な点灯遅れを抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、パルス検出回路42が、コンデンサ32の両端電圧Vcdが所定電圧V5を超えた後に該所定電圧V5より低下したタイミングを、高圧パルスが印加されたタイミングとしている。このように、起動部3の回路部品をパルス検出に利用することにより、回路規模を抑えることができる。また、高圧パルス印加時には、コンデンサ32の充電エネルギが一気に放出されて両端電圧Vcdが瞬時に低下する。他方、コンデンサ32が充電される際には、両端電圧Vcdは徐々に上昇する。従って、本実施形態によれば、高圧パルスの印加タイミングを確実に検出できる。
【0054】
(変形例)
図10は、点灯確認部4が有するパルス検出回路の一変形例を示す回路図である。図10に示すパルス検出回路45は、微分回路部45aと、クランプ部45bと、シュミットトリガ45cとを含んで構成されている。
【0055】
微分回路部45aは、コンデンサ32(図1参照)の両端電圧Vcdを微分する。微分回路部45aは、コンデンサ45d及び抵抗素子45e,45fを含む。コンデンサ45dの一端には両端電圧Vcdが入力され、コンデンサ45dの他端には抵抗素子45e,45fを介して電源電圧Vccが供給される。また、コンデンサ45dの他端は、抵抗素子45eを介してクランプ部45bに接続されている。
【0056】
クランプ部45bは、微分回路部45aからの出力電圧V8を或る電圧範囲に制限する。クランプ部45bは、電源電圧Vccと接地電位線GNDとの間に逆方向に直列接続されたダイオード45g及び45hを含む。ダイオード45g及び45hの間の接続点は、微分回路部45aの出力端と接続され、且つシュミットトリガ45cの入力端と接続される。シュミットトリガ45cから出力される電圧は、パルス印加信号Sp1として後段の遅延回路に入力される。
【0057】
図11は、本変形例によるパルス検出回路45の動作を示すグラフである。図11において、(a)はコンデンサ32の両端電圧Vcd、(b)は微分回路部45aからの出力電圧V8、(c)はシュミットトリガ45cからの出力電圧(パルス印加信号Sp1)、の遷移をそれぞれ示している。
【0058】
コンデンサ32の両端電圧Vcdが放電開始電圧Vbkに達すると(時刻tc)、放電灯Lに高圧パルスが印加され、同時に両端電圧Vcdが0V付近まで低下する。このとき、両端電圧Vcdが急激に低下するので、微分回路部45aからの出力電圧V8の波形は図11(b)に示すような一定電圧Vccに対して負のパルス状となる。この出力電圧V8のパルス波形は、クランプ部45b及びシュミットトリガ45cによって整形され且つ反転し、図11(c)に示すような矩形状のパルス波形となる。従って、シュミットトリガ45cからの出力電圧(パルス印加信号Sp1)は、その立ち上がりによって高圧パルスの印加タイミングを示すこととなる。
【0059】
本変形例のように、点灯確認部が有するパルス検出回路45は、両端電圧Vcdを微分する微分回路部45aを含み、該微分回路部45aからの出力電圧V8に基づいてパルス印加信号Sp1を生成してもよい。
【0060】
本発明による放電灯点灯回路は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態の制御部10では、点灯確認信号Sfを演算部11からの出力電圧V1に畳重させることによって点灯制御を再実行しているが、演算部が点灯確認部から点灯確認信号を受け、この点灯確認信号に応じて演算部の出力電圧が変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による放電灯点灯回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】トランジスタの駆動周波数と供給電力及びOCVの大きさとの関係を概念的に示すグラフである。
【図3】(a)駆動周波数、(b)コンデンサの両端電圧、(c)ランプ電圧、(d)点灯確認信号、(e)供給電力、の電源投入からの遷移をそれぞれ示すグラフである。
【図4】放電灯の点灯前におけるOCVと駆動周波数との関係(グラフG1)、及び放電灯の点灯後における供給電力と駆動周波数との関係(グラフG2)とを示すグラフである。
【図5】点灯確認部の内部構成例を示す図である。
【図6】遅延回路の具体的構成例を示す回路図である。
【図7】信号生成回路の具体的構成例を示す回路図である。
【図8】点灯確認部の動作を説明するためのタイミングチャートである。(a)はランプ電圧、(b)はコンデンサの両端電圧、(c)はパルス印加信号、(d)は遅延回路のJKフリップフロップのQ出力、(e)は比較回路からの出力電圧、(f)は遅延回路のJKフリップフロップのQバー出力、(g)は信号生成回路のDフリップフロップのQ出力、(h)は点灯確認信号、の遷移をそれぞれ示している。
【図9】放電灯の点灯に失敗した場合におけるランプ電圧の変化の様子を示すグラフである。
【図10】点灯確認部が有するパルス検出回路の一変形例を示す回路図である。
【図11】変形例によるパルス検出回路の動作を示すグラフである。(a)はコンデンサの両端電圧、(b)は微分回路部からの出力電圧、(c)はシュミットトリガからの出力電圧、の遷移をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0062】
1…放電灯点灯回路、2…電力供給部、3…起動部、4…点灯確認部、5a,5b…トランジスタ、6…ブリッジドライバ、7…トランス、7a…一次巻線、7b…二次巻線、7c…補助巻線、10…制御部、11…演算部、12…誤差増幅器、13…変換部、15…電圧源、21,22…ピークホールド回路、23…バッファ、33…自己降伏型スイッチ素子、41…比較回路、42,45…パルス検出回路、43…遅延回路、44…信号生成回路、B…直流電源、L…放電灯、Sc…制御信号、Sf…点灯確認信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を点灯させるための交流電力を該放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、
複数のスイッチング素子、インダクタ及びトランスのうち少なくとも一方、並びにコンデンサを含む直列共振回路と、前記複数のスイッチング素子を駆動する駆動部とを有し、前記交流電力を前記放電灯へ供給する電力供給部と、
前記放電灯に高圧パルスを印加して点灯を促す起動部と、
前記高圧パルスによる前記放電灯の点灯の成否を示す点灯確認信号を生成する点灯確認部と、
前記点灯確認信号に基づいて前記駆動部の駆動周波数を制御する制御部と
を備え、
前記点灯確認部は、前記放電灯に前記高圧パルスが印加されてから所定の時間が経過した時点における、前記放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて前記点灯確認信号を生成することを特徴とする、放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記点灯確認部が、
前記電極間電圧またはその相当電圧と前記第1の所定電圧とを比較する比較回路と、
前記高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号を生成するパルス検出回路と、
前記パルス印加信号を前記所定の時間だけ遅延させる遅延回路と、
遅延した前記パルス印加信号に示されるタイミングで前記比較回路からの出力信号を参照し、前記電極間電圧またはその相当電圧が前記第1の所定電圧よりも高い場合に、不点灯を示す前記点灯確認信号を生成する信号生成回路と
を有することを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記起動部が、前記高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、
前記パルス検出回路は、前記容量素子の両端電圧が第2の所定電圧を超えた後に該第2の所定電圧より低下したタイミングを前記高圧パルスが印加されたタイミングとすることを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記起動部が、前記高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、
前記パルス検出回路が、前記容量素子の両端電圧を微分する微分回路を含み、該微分回路からの出力電圧に基づいて前記パルス印加信号を生成することを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項5】
前記制御部は、不点灯を示す前記点灯確認信号を前記点灯確認部から入力した場合に、前記駆動周波数を所定の無負荷時出力電圧に対応する周波数より大きい所定の周波数に近づけ、その後、前記電極間電圧が前記所定の無負荷時出力電圧に近づくように前記駆動周波数を低下させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放電灯点灯回路。
【請求項1】
放電灯を点灯させるための交流電力を該放電灯へ供給する放電灯点灯回路であって、
複数のスイッチング素子、インダクタ及びトランスのうち少なくとも一方、並びにコンデンサを含む直列共振回路と、前記複数のスイッチング素子を駆動する駆動部とを有し、前記交流電力を前記放電灯へ供給する電力供給部と、
前記放電灯に高圧パルスを印加して点灯を促す起動部と、
前記高圧パルスによる前記放電灯の点灯の成否を示す点灯確認信号を生成する点灯確認部と、
前記点灯確認信号に基づいて前記駆動部の駆動周波数を制御する制御部と
を備え、
前記点灯確認部は、前記放電灯に前記高圧パルスが印加されてから所定の時間が経過した時点における、前記放電灯の電極間電圧またはその相当電圧と第1の所定電圧との大小関係に基づいて前記点灯確認信号を生成することを特徴とする、放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記点灯確認部が、
前記電極間電圧またはその相当電圧と前記第1の所定電圧とを比較する比較回路と、
前記高圧パルスが印加されたタイミングを示すパルス印加信号を生成するパルス検出回路と、
前記パルス印加信号を前記所定の時間だけ遅延させる遅延回路と、
遅延した前記パルス印加信号に示されるタイミングで前記比較回路からの出力信号を参照し、前記電極間電圧またはその相当電圧が前記第1の所定電圧よりも高い場合に、不点灯を示す前記点灯確認信号を生成する信号生成回路と
を有することを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記起動部が、前記高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、
前記パルス検出回路は、前記容量素子の両端電圧が第2の所定電圧を超えた後に該第2の所定電圧より低下したタイミングを前記高圧パルスが印加されたタイミングとすることを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記起動部が、前記高圧パルスを生成するための電力を蓄える容量素子を有し、
前記パルス検出回路が、前記容量素子の両端電圧を微分する微分回路を含み、該微分回路からの出力電圧に基づいて前記パルス印加信号を生成することを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項5】
前記制御部は、不点灯を示す前記点灯確認信号を前記点灯確認部から入力した場合に、前記駆動周波数を所定の無負荷時出力電圧に対応する周波数より大きい所定の周波数に近づけ、その後、前記電極間電圧が前記所定の無負荷時出力電圧に近づくように前記駆動周波数を低下させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放電灯点灯回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−66243(P2008−66243A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245793(P2006−245793)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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