説明

故障位置確認装置及び故障位置確認方法

【課題】顧客から報告された障害に迅速に応答可能な故障位置確認装置を提供する。
【解決手段】顧客情報にネットワーク機器を関連付け、さらに、そのネットワーク機器の状態の組み合わせに故障情報を対応付けておき、顧客から故障の問い合わせを受けた場合、収集部12が、その顧客に関連つけられたネットワーク機器の状態を収集し、推定部13が、収集したネットワーク機器の状態の組み合わせに対応つけた故障情報を取得する。これにより、ネットワーク全体を調べることなく、特定の顧客に関する故障情報を簡易に迅速に確認することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客からネットワークの障害が報告されたときに故障位置を切り分ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顧客からネットワークの障害が報告された場合、故障対応者がネットワーク上に配置されたネットワーク機器のそれぞれに問い合わせをし、その問い合わせ結果に基づいて故障被疑箇所の推定を行っている。この作業は煩雑であり、高いスキルを要する人員の配置が必要であった。
【0003】
顧客からの故障問い合わせの際に、迅速に故障対応できることが急務であり、様々な故障切り分け技術が提案されている。例えば、特許文献1では、分類された要素に対して異常を示す事象を対応付けたテーブルを用意し、各ネットワーク機器の通信状況を監視して、ネットワーク上での障害発生箇所の切り分けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−167347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術はシステム全体についての故障を対象とするため、顧客から報告された障害を直接解決するための切り分けができない。また、システム全体についての故障切り分けがなされても、スキルレベルの低いオペレータでは対応できないという問題がある。
【0006】
一方、光ファイバの故障被疑箇所の推定については、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)など散乱光を利用したものがあるが、OTDR装置は高額であり、顧客回線全てへの適用はできない。そのため、簡易に、安価に、光区間の故障被疑箇所を推定することが課題である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、顧客から報告された障害に迅速に応答可能な故障位置確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明に係る故障位置確認装置は、ネットワークで発生した故障の位置を切り分ける故障位置確認装置であって、顧客情報に1つ以上の設備情報を関連付けて格納した設備情報蓄積手段と、設備情報の示す機器の状態の組み合わせと故障情報を対応させて格納した対応表蓄積手段と、顧客情報の入力を受け付ける入力手段と、入力手段が受け付けた顧客情報に関連付けられた設備情報を設備情報蓄積手段から検索し、当該設備情報の示す機器の状態を取得する状態取得手段と、取得した機器の状態の組み合わせに対応した故障情報を対応表蓄積手段から読み出して提示する故障推定手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記故障位置確認装置において、設備情報は、光ファイバの終端に接続される終端機器を示すものであって、故障情報は、障害の発生が推定される光ファイバの敷設区間を示すものであることを特徴とする。
【0010】
第2の本発明に係る故障位置確認方法は、ネットワークで発生した故障の位置を切り分ける故障位置確認方法であって、顧客情報の入力を受け付けるステップと、顧客情報に1つ以上の設備情報を関連付けて格納した設備情報蓄積手段から、入力した顧客情報に関連付けられた設備情報を検索し、当該設備情報の示す機器の状態を取得するステップと、設備情報の示す機器の状態の組み合わせと故障情報を対応させて格納した対応表蓄積手段から、取得した機器の状態の組み合わせに対応した故障情報を読み出して提示するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、顧客から報告された障害に迅速に応答可能な故障位置確認装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態における故障位置確認装置とネットワークの構成を示す概略図である。
【図2】上記故障位置確認装置の構成を示すブロック図である。
【図3】上記故障位置確認装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】顧客情報である契約IDとその契約IDに関連つけられた設備情報の例を示す図である。
【図5】図4の設備情報に基づいて収集したネットワーク機器の状態の例を示す図である。
【図6】ネットワーク機器の状態の組み合わせと故障情報とを対応付けた対応表の例を示す図である。
【図7】図1のネットワークの光ケーブル区間の構成例と疎通確認順序の例を示す概略図である。
【図8】終端機器の疎通状態の組み合わせと故障情報とを対応付けた対応表の例を示す図である。
【図9】終端機器の疎通状態の組み合わせと故障情報とを対応付けた別の対応表の例を示す図である。
【図10】図1のネットワークの光ケーブル区間の疎通確認順序の別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における故障位置確認装置とネットワークの構成を示す概略図である。同図に示すネットワークは、NW網200に接続されたOLT(Optical Line Terminal)21,22と、OLT21,22に接続され、光ファイバを分岐するスプリッタ31,32,33,34と、スプリッタ31,32,33,34で分岐された光ケーブルに接続されたONU(Optical Network Unit)41,42,43と、ONU41,42,43に接続され、各顧客宅に配置されるHGW51,52,53を有する。各HGW51,52,53には、顧客が用いる情報端末101,102,103が接続される。情報端末101,102,103として、図中に示したパーソナルコンピュータの他にも、電話機、FAX、家電等を接続するものでもよい。
【0015】
故障受付オペレータ300は、顧客から故障の問い合わせを受け付けると、顧客を識別する情報を故障位置確認装置1に入力して調査を開始する。故障位置確認装置1は、指定された顧客に関連付けられたネットワーク機器を検索し、そのネットワーク機器から情報を収集し、収集した情報に基づいて故障位置、対処方法などを推定して提示する。OLT21,22、およびHGW51,52,53などのネットワーク機器は、故障位置確認装置1からの問い合わせに応答するシステムを備える。ONU41,42,43への問い合わせは、OLT21,22がONU41,42,43の状態を取得して故障位置確認装置1に応答する。
【0016】
以下、故障位置確認装置1の詳細について説明する。
【0017】
図2は、本実施の形態における故障位置確認装置の構成を示すブロック図である。同図に示す故障位置確認装置1は、入力部11、収集部12、推定部13、出力部14、契約情報蓄積部15、設備情報蓄積部16、および対応表蓄積部17を有する。
【0018】
入力部11は、故障受付オペレータ300から顧客を識別する情報、例えば、契約IDの入力を受け付ける。
【0019】
収集部12は、入力部11が入力した契約IDに関連付けられたネットワーク機器の現在の状態を収集する。具体的には、契約IDに関連付けられたネットワーク機器の情報を契約情報蓄積部15から取得し、ネットワーク機器それぞれに関する設備情報を設備情報蓄積部16から取得し、取得した設備情報それぞれに基づいて各ネットワーク機器に状態を問い合わせ、各ネットワーク機器の現在の状態を収集する。契約IDに関連付けられるネットワーク機器としては、例えば図1に示すネットワーク構成例の場合、入力された契約IDが情報端末101を利用する顧客のものであるとすると、情報端末101とNW網200までの通信経路に存在するOLT21、ONU41、およびHGW51などが該当する。
【0020】
推定部13は、対応表蓄積部17に格納された対応表を参照し、収集部12が収集したネットワーク機器の現在の状態に基づいて故障位置、対処方法を推定する。対応表は、各ネットワーク機器の状態の組み合わせに故障位置、対処方法を対応付けたものである。利用するネットワーク機器は顧客毎に異なるので、対応表も顧客毎に異なったものとなる。
【0021】
出力部14は、推定部13が推定した故障位置、対処方法を提示する。
【0022】
次に、故障位置確認装置1の動作について説明する。
【0023】
図3は、本実施の形態の故障位置確認装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
【0024】
入力部11が顧客の契約IDを入力すると、その契約IDに関連付けられた設備情報を検索する(ステップS1)。図4に契約IDと契約IDに関連付けられた設備情報の例を示す。同図では、契約IDにOLT21、ONU41、HGW51が関連付けられている。
【0025】
続いて、検索した設備情報が示すネットワーク機器の状態を収集する(ステップS2)。図5に収集したネットワーク機器の状態の例を示す。同図は、図4に示した設備情報が示すネットワーク機器に問い合わせて収集した各ネットワーク機器の現在の状態である。OLT21、ONU41の状態はOKであり、HGW51の状態はNGである。
【0026】
そして、収集したネットワーク機器の状態の組み合わせに対応する故障位置、対処方法を対応表から検索する(ステップS3)。図6にネットワーク機器の状態の組み合わせと故障位置、対処方法とを対応させた対応表の例を示す。収集したネットワーク機器の現在の状態が図5に示す場合、図6に示す対応表のパターン3に該当するので、故障位置は「HGW51」であり、対処方法は「HGWを確認する」となる。
【0027】
次に、光ケーブル区間における故障位置の切り分けについて説明する。
【0028】
上述したように、故障位置確認装置1は、顧客に関連付けられた各ネットワーク機器から状態を取得し、その状態の組み合わせに基づいて故障位置を切り分ける。故障位置が光ケーブル区間と推定される場合は、光ケーブル区間においてさらに故障位置を切り分ける。光ケーブル区間のスプリッタや光ファイバの配置場所は様々で、故障修理箇所、修理方法、あるいは修理をする人が異なるため、光ケーブル区間内の故障位置を特定することは重要である。ところが、スプリッタや光ファイバなどは、故障位置確認装置1からの問い合わせに応答するシステムを備えていないので、故障位置確認装置1は状態を問い合わせて知ることができない。そこで、本実施の形態では、顧客毎にいくつかの終端機器を関連付けるとともに、その終端機器への疎通の状態の組み合わせに推定される障害発生箇所を対応付けておき、故障の問い合わせがあった場合、その顧客に関連付けられた終端機器への疎通を確認し、疎通の状態の組み合わせに基づいて障害の発生が推定される光ファイバの敷設区間を推定する。
【0029】
図7は、図1に示したネットワーク構成の光ケーブル区間の構成例を示す概略図である。同図に示す構成では、OLT20に接続された光ファイバは、スプリッタ30で4分岐、各スプリッタ30−1〜4で8分岐してONU40に接続され、OLT20に32ユーザが収容される。スプリッタ30はOLT20と同じ設備ビル内に配置され、スプリッタ30−1〜4は設備ビル外に配置される。
【0030】
故障の問い合わせをした顧客が利用するONU40への疎通確認だけでは、故障箇所である光ファイバやスプリッタを特定することができないので、複数のONU40への疎通を確認することで故障位置を切り分ける。例えば、11番のONU40を利用する顧客から故障の問い合わせがあった場合、11番のONU40、11番のONU40が接続されるスプリッタ30−2内の12番のONU40、およびスプリッタ30−2が接続されるスプリッタ30内の別のスプリッタ30−1に接続される1番のONU40への疎通を確認する。そして、11番、12番、1番それぞれのONU40への疎通状態の組み合わせに故障位置を対応付けた対応表を参照して故障位置を切り分ける。なお、各ONU40への疎通の確認はOLT20が行う。
【0031】
図8に、11番、12番、1番のONU40への疎通状態の組み合わせと故障位置とを対応させた対応表の例を示す。11番のONU40への疎通がNGで、12番のONU40への疎通がOKの場合、図8に示す対応表のパターン1に該当するので、故障位置はスプリッタ30−2とONU40の間(所外SP〜ONU)であると切り分けられる。以下同様に、11番、12番のONU40への疎通が共にNGで、1番のONU40への疎通がOKの場合、パターン2に該当するので、故障位置はスプリッタ30とスプリッタ30−2の間(所内SP〜所外SP)であると切り分けられる。11番、12番、1番のONU40への疎通が共にNGの場合、パターン3に該当するので、故障位置はOLT20とスプリッタ30の間(OLT〜所内SP)であると切り分けられる。なお、疎通確認対象のONU40の情報は、顧客の契約IDに関連付けて契約情報蓄積部15に格納し、光ケーブル区間における故障位置の切り分けに用いる対応表は、対応表蓄積部17に格納する。
【0032】
現状、故障率nは十分小さい値であるので、同一スプリッタ内で複数の故障が発生する故障率は非常に小さい値n2となる。したがって、8分岐スプリッタ30及び4分岐スプリッタ30−1〜4内の全てのONU40への疎通を確認しなくても、精度良く故障位置を推定することが可能となる。図8に示すように、パターン1,2,3それぞれの精度は、1,1−n2,1−(n2+n3)となる。
【0033】
また、疎通確認をするONU40の数を増やすことでさらに精度を上げることができる。図9は、スプリッタ30−2に接続された11番、12番、13番のONU40への疎通を確認し、故障位置を切り分ける対応表の例である。
【0034】
このように、ある顧客からの障害報告に基づいて光ケーブル区間における障害発生箇所を推定することにより、障害が発生した同一の光ファイバに収容される他の顧客からの報告を待つことなく、迅速に対応することが可能となる。
【0035】
図10は、故障問い合わせのあった11番のスプリッタ30−2に接続されたすべてのONU40への疎通を確認した後、1番のONU40から順番に全てのONU40への疎通を確認する例を示す概略図である。
【0036】
図10に示す例では、まず、故障問い合わせのあった11番のONU40と同じスプリッタ30−2に接続された9番から16番のONU40への疎通を確認する。この時点で、スプリッタ30−2と11番のONU40の間に問題があるか否か判定できる。
【0037】
続いて、1番から32番のONU40まで順番に疎通を確認する。このとき、9番から16番のONU40はすでに疎通確認済みなので確認しない。9番から16番のONU40以外が正常ならばスプリッタ30−2とスプリッタ30の間に問題があると推定できる。1番から32番のONU40全ての疎通が確認できない場合は、スプリッタ30とOLT20の間に問題があると推定できる。
【0038】
このように、故障問い合わせのあったONUと同じスプリッタに接続されたONUの疎通確認を先に行うことで、より早く結果を知ることが可能となる。もちろん、1番から32番まで順番に疎通を確認するものでもよい。
【0039】
したがって、本実施の形態によれば、顧客情報にネットワーク機器を関連付け、さらに、そのネットワーク機器の状態の組み合わせに故障情報を対応付けておき、顧客から故障の問い合わせを受けた場合に、収集部12が、その顧客に関連つけられたネットワーク機器の状態を収集し、推定部13が、収集したネットワーク機器の状態の組み合わせに対応つけた故障情報を取得することで、ネットワーク全体を調べることがなく、特定の顧客に関する故障情報を簡易に迅速に確認することが可能となる。特定の顧客に関する故障情報だけを確認することができるので、対応者に高いスキルを要することがない。そのため、顧客自身が故障位置確認装置1にアクセスして顧客宅内の機器の異常の有無を確認することも可能である。
【0040】
本実施の形態によれば、顧客情報に複数のONUを関連付け、そのONUの疎通状態の組み合わせに障害の発生が推定される光ファイバの敷設区間を示す故障情報を対応付けることにより、故障位置確認装置1からの問い合わせに応答できない光ファイバやスプリッタなどの機器の故障を推定することが可能となる。
【0041】
本実施の形態によれば、故障位置の切り分けを段階的に行うことにより、故障位置の特定する時間を短縮することが可能となる。
【0042】
なお、各ネットワーク機器の状態を取得する際に、そのネットワーク機器のソフトウェアのバージョンなどの情報もあわせて取得することにより、バージョン固有の不具合を判定することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…故障位置確認装置
11…入力部
12…収集部
13…推定部
14…出力部
15…契約情報蓄積部
16…設備情報蓄積部
17…対応表蓄積部
20,21,22…OLT
30,31,32,33,34,30−1〜4…スプリッタ
40,41,42,43…ONU
51,52,53…HGW
101,102,103…情報端末
200…NW網
300…故障受付オペレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークで発生した故障の位置を切り分ける故障位置確認装置であって、
顧客情報に1つ以上の設備情報を関連付けて格納した設備情報蓄積手段と、
前記設備情報の示す機器の状態の組み合わせと故障情報を対応させて格納した対応表蓄積手段と、
前記顧客情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段が受け付けた前記顧客情報に関連付けられた前記設備情報を前記設備情報蓄積手段から検索し、当該設備情報の示す機器の状態を取得する状態取得手段と、
取得した前記機器の状態の組み合わせに対応した前記故障情報を前記対応表蓄積手段から読み出して提示する故障推定手段と、
を有することを特徴とする故障位置確認装置。
【請求項2】
前記設備情報は、光ファイバの終端に接続される終端機器を示すものであって、
前記故障情報は、障害の発生が推定される光ファイバの敷設区間を示すものであることを特徴とする請求項1記載の故障位置確認装置。
【請求項3】
ネットワークで発生した故障の位置を切り分ける故障位置確認方法であって、
前記顧客情報の入力を受け付けるステップと、
顧客情報に1つ以上の設備情報を関連付けて格納した設備情報蓄積手段から、入力した前記顧客情報に関連付けられた前記設備情報を検索し、当該設備情報の示す機器の状態を取得するステップと、
前記設備情報の示す機器の状態の組み合わせと故障情報を対応させて格納した対応表蓄積手段から、取得した前記機器の状態の組み合わせに対応した前記故障情報を読み出して提示するステップと、
を有することを特徴とする故障位置確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−232970(P2010−232970A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78307(P2009−78307)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】