説明

斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法およびそれに用いられるプログラム、並びに、斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置

【課題】特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることを可能とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を提供すること。
【解決手段】斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法は、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法およびそれに用いられるプログラム、並びに、斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置に関し、詳しくは、斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法で試料の表層の構成元素のみを選択的に分析するにあたり、特性X線の取出角度と測定深さ(特性X線が検出される試料表面からの深さ)との相関を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の微小領域や表面の元素分析を行う分析装置として、試料に電子線を照射し、照射された微小領域や表面から励起される特性X線をX線検出器により検出する電子線プローブマイクロX線分析装置(EPMA)が知られている。
EPMAは電子線を試料に照射すると、その照射領域に存在する各元素がそれぞれ固有のエネルギーや波長を有する特性X線を放出することを利用する。
電子線により励起された特性X線のエネルギースペクトラムや波長分布を分析することにより、照射領域に存在する元素を知ることができる。
【0003】
しかし、従来のEPMAでは、例えば、試料表面上に存在する微粒子や試料表面上の厚さがマイクロメーター以下の薄層の元素を分析することは困難であった。
これは、試料から放出される特性X線には、試料内部と試料表面の微粒子または薄層との両方から放出される特性X線が含まれ、しかも試料内部から放出されるX線強度が、試料表面の微粒子または薄層から放出される特性X線に比べて強いので、微粒子または薄層から放出される特性X線のみを選択的に抽出して分析できないからである。
【0004】
この点に関して、低エネルギー(低加速)の電子線を照射して試料内部への電子線の進入深度を浅くすることによって、試料表面近傍からのみ特性X線を励起させる方法が考えられる。
しかし、低エネルギー電子線の使用は検出可能な元素を限定してしまうため、例えば、検出すべき元素が未知であり全ての元素を検出対象とする必要がある場合などには適切でない。
【0005】
シリコンなど半導体ウェハー上に存在する微粒子(異物)は、半導体デバイスの歩留まりに悪影響を及ぼすことから、微粒子の組成・発生起源を明らかににして微粒子の発生を防がねばならない。
微粒子の組成を分析しようとすれば、電子線プローブなどで微粒子や薄層に電子線を照射し、電子線により励起される特性X線を分析することとなるが、シリコンウェハーからも大量の特性X線が発生するため、微粒子のみの組成分析は困難であった。
【0006】
このような問題の解決策として、斜出射X線測定による新しいEPMA(以下、「斜出射EPMA」と呼ぶ)が提案された。
この斜出射EPMAは、電子線の照射方向に対し、試料内部から発せられる特性X線が全反射現象により試料表面から放出されない角度範囲に試料を傾斜させ、試料表面に存在する微粒子又は薄層から放出される特性X線のみを検出し分析するものである(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−208708号公報
【特許文献2】特開2002−286661号公報
【非特許文献1】K.Tsuji et al.,Anal.Chem.71(1999):2497−2501
【非特許文献2】K.Tsuji et al.,Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy 56 (2001):2497−2504
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、斜出射EPMA装置としての市販品は存在しないが、比較的容易に市販のEPMA装置を用いて斜出射測定が可能である。
斜出射EPMAでは、試料表面の微粒子又は薄層から放出されX線検出器に入射する特性X線の試料表面に対する角度(特性X線の出射角又は取出角)を制御することが重要であり、このために試料ホルダを傾斜させる方法、X線検出器(エネルギー分散型X線検出器(energy-dispersive X-ray detector:EDX)および波長分散型X線検出器(wavelength-dispersive X-ray detector:WDX))を移動させる方法、試料ステージを上下に移動させる方法などが考えられている。
【0009】
いずれの方法を利用するにしても、上述のとおり斜出射EPMAでは、試料表面の微粒子又は薄層から発せられる特性X線のみを選択的に検出するために特性X線の取出角度を厳密に設定することが重要である。
また、試料表面の微粒子又は薄層といってもこれらには当然のことながらそこには僅かな厚さがある。
しかしながら、斜出射EPMAで試料表面の微粒子又は薄層の分析を行うにあたって、試料表面からどの深さを微粒子又は薄層と試料内部との境界とするかを厳密に設定することは極めて困難であった。
というのは斜出射EPMAにおいて、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求める方法が確立されていなかったからである。
【0010】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることを可能とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法およびそれに用いられるプログラム、並びに、斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、試料に電子線を照射し、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義することを特徴とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法によれば、所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度を定義するにあたって、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出す。定義された取出角度により所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できるということは、該取出角度により所定深さの測定が可能であるということと同義であるから、この発明による上記方法によって特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法は、試料に電子線を照射し、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義することを特徴とする。
【0014】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料とは試料内部としての下地と、下地の上に所定の厚さで形成された試料表層としての上地とから構成されたものを意味する。
ここで下地と上地はそれぞれ任意の構成元素で構成されていることが好ましい。
というのは、この発明は、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることを目的とするため、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたって、下地の構成元素と上地の構成元素は予め判明していることが好都合であるからである。
しかし、この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を実施するうえで、下地と上地の構成元素は必ずしも予め判明している必要はなく、この発明による上述の方法によって下地と上地の構成元素と上地の厚さが求められ、それによって特性X線の取出角度と測定深さの相関が求められてもよい。
【0015】
また、特性X線の消失角度とは、下地から発せられる特性X線が実質的に検出されなくなる取出角度を意味し、必ずしも特性X線が全く検出されなくなる角度である必要はなく、特性X線の強度が最小となる角度であってもよい。
【0016】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、下地の構成元素には、上地の構成元素以外に少なくとも1種類の元素Aが含まれ、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、元素Aから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われてもよい。
このような構成によれば、上地に含まれていないと予め判明している元素Aについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことにより元素Aの消失角度を見出すことができるので、より簡便、かつ、確実に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
なお、この発明において「相関測定」とは、ある特定の元素について、複数の取出角度で特性X線の強度を測定することにより、特性X線の強度とその取出角度との相関関係を求め、求められた相関関係に基づいて特性X線の消失角度を見出すことを意味する。
【0017】
また、下地の構成元素に上地の構成元素以外に少なくとも1種類の元素Aが含まれている上記構成において、元素Aの発する特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われてもよい。
【0018】
このような構成によれば、より厳密に下地の構成元素から発せられる特性X線の消失角度を見出し、ひいてはより厳密に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
というのは、エネルギーの大きな特性X線は取出角度を小さくしていっても消失し難い性質があり、エネルギーの大きな特性X線を測定対象としてその消失角度を見出すことにより、上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度をより厳密に定義できるようになるからである。
【0019】
なお、ここで、「対照用下地」および「対照用上地」とは、試料の下地に含まれる元素Aから発せられる特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さい場合に、下地から発せられる特性X線の消失角度をより精度よく求めるために用意される試料とは別のものであり、これら「対照用下地」および「対照用上地」を用いることにより、上述のとおりより厳密に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
【0020】
また、この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、下地の構成元素には、上地の構成元素以外に2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnが含まれ、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxを選択し、選択した元素Bmaxから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われてもよい。
【0021】
このような構成によれば、下地の構成元素に上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnが含まれている場合に、これら2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxが選択され、この元素Bmaxについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われるので、上地に含まれていないと予め判明している元素Bmaxについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことにより、より簡便、かつ、確実に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となるばかりでなく、より厳密に下地の構成元素から発せられる特性X線の消失角度を見出し、ひいてはより厳密に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
なお、よりエネルギーの大きな特性X線を発する元素が測定対象として好ましいのは上述のとおりである。
【0022】
また、下地の構成元素に上地の構成元素以外に2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnが含まれている上記構成において、元素Bmaxから発せられる特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われてもよい。
【0023】
このような構成によれば、上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dが測定対象とされるので、より厳密に下地の構成元素から発せられる特性X線の消失角度を見出し、ひいてはより厳密に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dが測定対象として好ましい理由は上述のとおりである。
【0024】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、下地の構成元素に上地の構成元素以外の元素が含まれていないとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われてもよい。
【0025】
このような構成によれば、上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dを含有する対照用下地と上地の構成元素からなる対照用上地が試料の代わりに用意され、大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われるので、下地の構成元素に上地の構成元素以外の元素が含まれていない場合であっても、厳密に下地の構成元素から発せられる特性X線の消失角度を見出し、厳密に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dが測定対象として好ましい理由は上述のとおりである。
【0026】
この発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料は半導体ウェハであってもよい。
このような構成によれば、半導体デバイスの基本的な構成材料である半導体ウェハについて、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることを可能としたこの発明による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を適用することができ、半導体ウェハの表層を選択的に分析する手法を提供することができる。
これにより、半導体ウェハの表面に付着した微粒子または半導体ウェハの表面に形成された薄層の発生起源を明らかにするうえで有力な手掛かりを得ることができ、半導体ウェハから得られる各種半導体デバイスの歩留まり向上に寄与することができる。
【0027】
この発明は別の観点からみると、試料に電子線を照射し、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法に用いられるプログラムであって、コンピュータに、上地の構成元素を入力させる手順と、下地の構成元素を入力させる手順と、入力された下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる手順と、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる手順とを実行させることを特徴とするプログラムを提供するものでもある。
【0028】
この発明による上記プログラムによれば、上地と下地の構成元素がそれぞれ入力された後、下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素が判定され、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度が見出されるので、簡便かつ自動的に所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度を定義することが可能となり、ひいては、簡便かつ自動的に特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となる。
【0029】
この発明による上記プログラムにおいて、下地の構成元素を入力させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない少なくとも1種類の元素Aを入力させる手順であり、下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない元素Aを判定させる手順であり、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる前記手順は、元素Aから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行わせて消失角度を見出させる手順であってもよい。
【0030】
このような構成によれば、上地に含まれていない元素Aが判定され、判定された元素Aについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われるので、簡便、かつ、自動的に元素Aから発せられる特性X線の消失角度を見出すことができる。
【0031】
また、上地の構成元素に含まれない少なくとも1種類の元素Aを入力させる手順と、上地の構成元素に含まれない元素Aを判定させる手順を備える上記プログラムは、入力された上地と下地の構成元素について特性X線のエネルギーの大小を比較させる手順と、上地の構成元素に含まれない元素として判定された元素Aの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときに上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dを対照用下地に含有させるべき元素として選択させる手順とをさらに備えてもよい。
【0032】
このような構成によれば、上地と下地の構成元素ついて特性X線のエネルギーの大小が比較され、上地に含まれない元素として判定された元素Aの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときには、上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dが対照用下地に含有されるべき元素として選択されるので、下地にのみ含まれる元素Aの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さい場合に、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めるうえで的確な測定方法を示唆することができる。
【0033】
また、この発明による上記プログラムにおいて、下地の構成元素を入力させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを入力させる手順であり、下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを判定させる手順であり、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる前記手順は、2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxを選択し、選択された元素Bmaxから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行わせて消失角度を見出させる手順であってもよい。
【0034】
このような構成によれば、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnが判定され、元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxが選択され、元素Bmaxについて特性X線の強度とその取出角度との相関測定が行われるので、簡便、かつ、自動的に元素Bmaxから発せられる特性X線の消失角度を見出すことができる。
【0035】
また、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを入力させる手順と、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを判定させる手順と、2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxを選択し、元素Bmaxから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行わせる手順を備える上記プログラムは、入力された上地と下地の構成元素について特性X線のエネルギーの大小を比較させる手順と、元素Bmaxから発せられる特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときに上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dを対照用下地に含有させるべき元素として選択させる手順をさらに備えていてもよい。
【0036】
このような構成によれば、上地と下地の構成元素ついて特性X線のエネルギーの大小が比較され、上地に含まれない元素のうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素として選択された元素Bmaxの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときには、上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dが対照用下地に含有されるべき元素として選択されるので、下地にのみ含まれる元素Bmaxの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さい場合に、特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めるうえで的確な測定方法を示唆することができる。
【0037】
この発明はさらに別の観点からみると、試料ステージと、試料ステージを駆動する駆動部と、試料ステージに保持された試料に対して電子線を照射する電子線照射部と、試料表面から発せられる特性X線を検出するX線検出部と、駆動部、電子線照射部およびX線検出部を制御する制御部を備え、制御部は試料表層としての上地と試料内部としての下地の構成元素をそれぞれ比較して下地にのみ含まれる元素を判定し、駆動部を介して試料ステージの位置調整を行いつつ判定した元素から発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行い、判定した元素から発せられる特性X線の消失角度を見出すことを特徴とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置を提供するものでもある。
なお、この発明による上記斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置において、制御部は、下地にのみ含まれる元素が複数種である場合、これらの元素のうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素を選択することが好ましい。
【0038】
以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0039】
図1〜8に基づいて、この発明の実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法について説明する。
図1は実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法に用いられる斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置の概略的な構成図、図2は図1に示される斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置における波長分散型X線検出器の配置を概略的に示す説明図である。
【0040】
この発明の実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法は、図1に示される斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置を用いて実施される。
図1に示される斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置1は、試料ステージ2と、試料ステージ2を駆動する駆動部3と、試料4の表面における任意の分析点に焦点を合わせるための光学顕微鏡5と、試料ステージ2に保持された試料4に対して電子線Eを走査するための電子線走査部(電子線照射部)6と、試料4の表面から発せられる特性X線Cを検出するX線検出部7と、駆動部3、電子線走査部6およびX線検出部7を制御する制御部8とを備えている。
【0041】
図1に示される斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置1は、上記構成に加えて、電子線Eの照射を受けた試料4から発せられる二次電子Sを検出する二次電子検出部10と、二次電子検出部10によって検出された二次電子Sに基づいて可視化された電子顕微鏡画像を表示する表示部11とをさらに備えている。表示部11には電子顕微鏡画像以外にも分析結果やオペレータに対して入力を促すメッセージ等が表示される。
また、斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置1は、オペレータからの指示や回答を制御部8に入力するための入力部9をさらに備えている。
【0042】
より詳しくは、斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置1は、電子線走査部6が収容される鏡筒12、試料ステージ2が収容される試料室13、X線分光が行われる分光室14とから主に構成されている。
試料室13に収容される試料ステージ2は、X軸ステージ2a、Y軸ステージ2b、Z軸ステージ2c、回転ステージ2dおよび傾斜ステージ2eとから構成されており、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動でき、かつ、任意の方向に傾斜・回転できる構成となっている。
X軸ステージ2a、Y軸ステージ2b、Z軸ステージ2c、回転ステージ2dおよび傾斜ステージ2eは、駆動部3としてのパルスモータ(図示せず)でそれぞれ駆動される。
試料4は、試料ホルダ15にセットされたうえで図示しない試料出入口から試料ステージ2上に運ばれる。
【0043】
鏡筒12に収容される電子線走査部6は、電子線Eを出射する電子銃16と、電子銃16から出射された電子線Eを収束させる収束レンズ17と、収束レンズ17によって収束された電子線Eを走査させる走査コイル18と、電子線Eを細く絞って電子プローブ状にする電磁対物レンズ19とから主に構成されている。
電磁対物レンズ19の近傍には、光学対物レンズ20が配置され、光学反射鏡21によって反射された試料像は試料室13に装着された光学顕微鏡5に入射するよう構成されている。
光学顕微鏡5は焦点調整を行う際に利用されるもので、光学顕微鏡5の焦点調整とZ軸ステージ2cの移動は連動しており、光学顕微鏡5の像が鮮明になるように調整することにより試料4の高さ調整が行われる。
【0044】
試料室13に収容された二次電子検出部10は、図示しない二次電子検出器および増幅器とから構成され、表示部11は図示しない画像処理装置と表示装置とから構成され、二次電子検出器に捉えられた二次電子Sに基づいて形成された電子顕微鏡画像、分析結果、各種メッセージ等が表示部11に表示される。
【0045】
制御部8は、図示しないI/Oポート、CPU、制御用のプログラムを格納したROM、各種設定条件を記憶したRAM、各種ドライバ回路とから主に構成されるコンピュータであり、制御用のプログラムに基づいて試料ステージを制御する制御データを求め、求めた制御データに基づいて駆動部3を制御する。
上述の駆動部3、電子線走査部6、X線検出部7、入力部9および表示部11は、バスライン22を介して制御部8に接続され、制御部8の制御の下に一連の動作を行う。
また、図示しないが、鏡筒12、試料室13および分光室14は真空排気装置と接続されており、制御部8は真空排気装置の制御も行う。
【0046】
X線検出部7は、試料室13に特性X線Cの入射口23aが突き出たエネルギー分散型X線検出器(EDX)23と、分光室14に収容された波長分散型X線検出器(WDX)24とからなる。
なお、図1では1つのWDX24しか示されていないが、図2に示されるようにWDX24は試料室13の周囲にチャンネル1(CH1)〜チャンネル5(CH5)まで5つ設けられている。
【0047】
EDX23は、特性X線Cを検出して特性X線のエネルギーに比例したパルス電流を生みだす半導体検出器(図示せず)と、半導体検出器によって生み出されたパルス電流を選別する多チャンネル波分析器(図示せず)とから主に構成される。
一方、WDX24は、分光室14に収容され特定波長のX線と選別(分光)する分光結晶25と、分光結晶25により分光されたX線を検出するX線検出器26とから主に構成される。
EDX23およびWDX24はいずれもバスライン22に接続され、EDX23およびWDX24によって検出されたデータは制御部8によって処理され、表示部11に分析結果が表示される。
【0048】
以下、このような斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置1を用いて行われる斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法について図3〜8に基づいて説明する。図3は試料の概略的な構成を示す説明図、図4および図5は実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を実施する際に制御部が行う一連の制御フローを示すフローチャート図、図6は試料ステージが設定された取出角度の最大角度まで傾斜させられた状態を示す説明図、図7は試料ステージが選択された所望のWDXに向けて回転させられた状態を示す説明図、図8は実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法によって相関測定を行うことにより求められた特性X線の強度とその取出角度との相関関係を示すグラフ図である。なお、以下の説明において引用される斜出射電子線プローブマイクロX線装置の各部については、適宜、図1および図2を参照されたい。
【0049】
まず、図3に示されるような構成からなる試料4を試料ホルダ15にセットしたうえで試料ステージ2に設置する。図3に示される試料4は、AlGaInPからなる厚さ1200nmの下地4b上に、GaInPからなる膜厚35nmの薄膜が上地4aとして形成されたものである。
この後は、試料4の下地4bのみに含まれる上地4a以外の構成元素について特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことになるが、この相関測定は制御部8によるガイダンスの下で自動的に行われる。以下、制御部8が行う制御フローについて図4および図5に基づいて説明する。
【0050】
まず、制御部8は、下地4bの構成元素の入力を促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータは下地4bに含まれる構成元素を制御部8に入力する(ステップ1)。次いで、制御部8は表示部11に上地4aの構成元素の入力を促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータは上地4aに含まれる構成元素を制御部8に入力する(ステップ2)。
オペレータによって試料4の下地4bと上地4aの構成元素が入力部9を介してそれぞれ制御部8に入力されると、制御部8は下地4bの構成元素のうち上地4aの構成元素に含まれない元素があるか否かを判断する(ステップ3)。
【0051】
ステップ3において、下地4bの構成元素のうち上地4aの構成元素に含まれない元素があると判断すると、制御部8は、下地4bの構成元素のうち上地4aの構成元素に含まれない元素が複数種類であるか否かを判断し(ステップ4)、複数種類であると判断した場合は、ステップ5に進んで下地4bのみに含まれると判定された複数種類の元素のうち、最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素を測定候補の元素として選択する。
一方、ステップ4において下地4bの構成元素のうち上地4aの構成元素に含まれない元素が複数種類でないと判断した場合は、ステップ5に進むことなくステップ6に進み、制御部8は当該元素を測定候補の元素として選択する。
ステップ5又はステップ6において測定候補の元素が選択されると、制御部8は選択された測定候補の元素が上地4aの構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発するか否かを判断する(ステップ7)。
【0052】
ステップ7において測定候補の元素が上地4aの構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発すると判断すると、制御部8は当該元素を測定すべき元素として確定し表示部11に表示する(ステップ8)。なお、この実施例では、下地4bのみに含まれるAlが測定すべき元素として選択された。
ステップ8で測定すべき元素として表示された元素に対してオペレータから当該元素を測定すべき元素として承認する旨の回答がなされると(ステップ9)、制御部8は当該元素を測定できるWDX24のチャンネルと所望のチャンネルを選択するよう促す旨のメッセージを表示部11に表示し、オペレータに所望のチャンネルを選択させる(ステップ10)。
一方、ステップ9においてオペレータからの承認が得られない場合は、相関測定を中止するものと判断し(ステップ20)、一連のフローを終了する。
【0053】
ステップ10において、所望のチャンネルが選択されると、制御部8は特性X線の取出角度の範囲設定を促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータに相関測定を実施すべき取出角度の範囲(θmax−θmin)を入力させる(ステップ11)。
ステップ11において相関測定を実施すべき取出角度の範囲が入力されると、制御部8は測定ステップの設定を促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータに所望の測定ステップを入力させる(ステップ12)。なお、ここで測定ステップとは特性X線の取出角度をθmaxからθminへ変化させていく際に何度ずつ取出角度を変化させていくかという角度のことである。
ステップ12において所望の測定ステップが入力されると、制御部8は測定ステップによって変化させられる取出角度毎の測定時間の設定を促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータに所望の測定時間を入力させる(ステップ13)。
【0054】
ステップ13において所望の測定時間が入力されると、制御部8は駆動部3を介して試料ステージ2を駆動し、試料ステージ2を相関測定の測定開始位置に移動させる(ステップ14)。
具体的には、図6に示されるように、制御部8は設定された取出角度の範囲のうち最大となる取出角度θmaxまで試料ステージ2を傾斜させ、さらに図7に示されるように、試料ステージ2の傾斜軸Aと直交する方向に選択されたチャンネルのWDX24が位置するように試料ステージ2を回転させる。
【0055】
ステップ14において試料ステージ2が相関測定の測定開始位置に移動させられると、制御部8はオペレータに試料4上の任意の分析点に焦点を合わせるよう促すメッセージを表示部11に表示し、オペレータは光学顕微鏡5を用いて試料4上の所望の分析点に焦点を合わせる(ステップ15)。
ステップ15において試料4上の任意の分析点に焦点が合わせられると、制御部8は焦点が合わせられた際の試料ステージ2のX方向、Y方向およびZ方向の座標を合焦位置として入力するよう促すメッセージを表示し、オペレータは合焦位置の座標を制御部8に入力する(ステップ16)。
【0056】
ステップ16において合焦位置の座標が入力されると、制御部8は駆動部3を介して試料ステージ2の位置を調整し、特性X線の取出角度θmaxからθminまで測定ステップに従って順次変化させ、各取出角度において設定された測定時間だけ特性X線の強度を順次測定する相関測定を実施する(ステップ17)。なお、この実施例ではAlが測定すべき元素として選択・承認されたため、Al−Kβ1強度とその取出角度との相関測定が行われた。
また、この相関測定が実施されている間、制御部8は分析点の焦点を維持するうえで必要となる試料ステージ2の補正移動量を合焦位置の座標に基づいて算出し、測定ステップ毎に分析点の焦点を維持するべく試料ステージ2の位置を順次補正する。
ステップ17において相関測定が実施されると、制御部8は相関測定によって得られた特性X線の強度とその取出角度との相関関係を測定結果として表示部11に表示し(ステップ18)、一連のフローを終了する。
【0057】
なお、ステップ3において下地4bの構成元素に上地4aの構成元素以外の元素がないと判断した場合、およびステップ7において測定候補の元素から発せられる特性X線のエネルギーが上地4aの構成元素よりも小さいと判断された場合にはステップ19に進み、上地4aの構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素を選択し、当該元素を対照用試料の下地に含有させるべき元素として表示部11に表示し一連のフローを終了する。
【0058】
ここで、対照用試料とは、下地4bの構成元素に上地4aの構成元素以外の元素が含まれない場合、若しくは、下地4bにのみ含まれる元素から発せられる特性X線のエネルギーが、上地4aの構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さい場合に、別途調整される試料のことであり、図3に示される試料4と同様に下地と上地とから構成される。
上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素を含有する対照用試料を別途調整し、この対照用試料について同様の相関測定を行うことにより、特性X線の強度と取出角度との相関関係を厳密に求めることが可能となる。
というのは、エネルギーの大きな特性X線は取出角度を小さくしていっても消失し難い性質があり、エネルギーの大きな特性X線を測定対象としてその消失角度を見出すことにより、上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度をより厳密に定義できるようになるからである。
【0059】
ここで、上述の相関測定によって得られたAl−Kβ1強度とその取出角度との相関関係を図8に示す。
図8に示されるように、取出角度0.3°においてAl−Kβ1強度が消失しており、上地4aの膜厚が35nmである場合、0.3°がAl−Kβ1強度の消失角度であり、上地4aの構成元素のみを選択的に分析できる取出角度であると定義することができた。
このようにして定義された取出角度0.3°により膜厚35nmの上地4aの構成元素のみを選択的に分析できるということは、当該取出角度により試料表面から35nmの深さまで選択的な測定が可能であるということと同義であるから、この発明による上記方法によって特性X線の取出角度と測定深さとの相関を求めることが可能となった。
【0060】
なお、上記実施例で用いた各元素の特性X線のエネルギーの最大値は次のとおりである。
Ga−Kβ1=10.263(KeV)
In−Lβ2=3.713(KeV)
P−Kβ1=2.136(KeV)
Al−Kβ1=1.553(KeV)
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法に用いられる斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置の概略的な構成図である。
【図2】図1に示される斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置における波長分散型X線検出器の配置を概略的に示す説明図である。
【図3】実施例で用いられる試料の概略的な構成を示す説明図である。
【図4】実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を実施する際に制御部が行う一連の制御フローを示すフローチャート図である。
【図5】実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法を実施する際に制御部が行う一連の制御フローを示すフローチャート図である。
【図6】実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において試料ステージが設定された取出角度の範囲のうち最大角度まで傾斜させられた状態を示す説明図である。
【図7】実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において試料ステージが選択された所望のチャンネルのWDX(波長分散型X線検出器)へ向けて回転させられた状態を示す説明図である。
【図8】実施例による斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法によって相関測定を行うことにより求められた特性X線の強度とその取出角度との相関関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置
2・・・試料ステージ
2a・・・X軸ステージ
2b・・・Y軸ステージ
2c・・・Z軸ステージ
2d・・・回転ステージ
2e・・・傾斜ステージ
3・・・駆動部
4・・・試料
4a・・・上地
4b・・・下地
5・・・光学顕微鏡
6・・・電子線走査部
7・・・X線検出部
8・・・制御部
9・・・入力部
10・・・二次電子検出部
11・・・表示部
12・・・鏡筒
13・・・試料室
14・・・分光室
15・・・試料ホルダ
16・・・電子銃
17・・・収束レンズ
18・・・走査コイル
19・・・電磁対物レンズ
20・・・光学対物レンズ
21・・・光学反射鏡
22・・・バスライン
23・・・エネルギー分散型X線検出器(EDX)
23a・・・入射口
24・・・波長分散型X線検出器(WDX)
25・・・分光結晶
26・・・X線検出器
A・・・傾斜軸
C・・・特性X線
E・・・電子線
S・・・二次電子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に電子線を照射し、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義することを特徴とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項2】
下地の構成元素には、上地の構成元素以外に少なくとも1種類の元素Aが含まれ、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、元素Aから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項3】
元素Aの発する特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことを特徴とする請求項2に記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項4】
下地の構成元素には、上地の構成元素以外に2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnが含まれ、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxを選択し、選択した元素Bmaxから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項5】
元素Bmaxから発せられる特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことを特徴とする請求項4に記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項6】
下地の構成元素に上地の構成元素以外の元素が含まれていないとき、下地から発せられる特性X線の消失角度を見出すにあたり、上地の構成元素よりもエネルギーの大きな特性X線を発する元素Dを含有する基板または薄膜を対照用下地とし、対照用下地上に上地の構成元素からなる薄膜を対照用上地として所定厚で形成し、元素Dから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項7】
試料が半導体ウェハであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法。
【請求項8】
試料に電子線を照射し、試料内部から発せられる特性X線が試料表面での全反射現象により検出されない角度以下に特性X線の取出角度を設定することにより試料の表層から発せられる特性X線のみを選択的に検出する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法において、試料を試料内部としての下地と試料表層としての所定厚の上地で構成し、下地から発せられる特性X線の取出角度を所定角度から徐々に小さくして前記特性X線の消失角度を見出し、見出された消失角度を所定厚の上地の構成元素のみを選択的に分析できる取出角度として定義する斜出射電子線プローブマイクロX線分析方法に用いられるプログラムであって、コンピュータに、上地の構成元素を入力させる手順と、下地の構成元素を入力させる手順と、入力された下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる手順と、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる手順とを実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
下地の構成元素を入力させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない少なくとも1種類の元素Aを入力させる手順であり、下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない元素Aを判定させる手順であり、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる前記手順は、元素Aから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行わせて消失角度を見出させる手順であることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
入力された上地と下地の構成元素について特性X線のエネルギーの大小を比較させる手順と、上地の構成元素に含まれない元素として判定された元素Aの特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときに上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dを対照用下地に含有させるべき元素として選択させる手順とをさらに備える請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
下地の構成元素を入力させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを入力させる手順であり、下地の構成元素のうち上地の構成元素に含まれない元素を判定させる前記手順は、上地の構成元素に含まれない2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnを判定させる手順であり、判定された元素から発せられる特性X線の消失角度を見出させる前記手順は、2種類以上の元素B1,B2,B3・・・Bnのうち最もエネルギーの大きな特性X線を発する元素Bmaxを選択し、選択された元素Bmaxから発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行わせて消失角度を見出させる手順であることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項12】
入力された上地と下地の構成元素について特性X線のエネルギーの大小を比較させる手順と、元素Bmaxから発せられる特性X線のエネルギーが上地の構成元素から発せられる特性X線のエネルギーよりも小さいときに上地の構成元素よりも大きなエネルギーの特性X線を発する元素Dを対照用下地に含有させるべき元素として選択させる手順とをさらに備える請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
試料ステージと、試料ステージを駆動する駆動部と、試料ステージに保持された試料に対して電子線を照射する電子線照射部と、試料表面から発せられる特性X線を検出するX線検出部と、駆動部、電子線照射部およびX線検出部を制御する制御部を備え、制御部は試料表層としての上地と試料内部としての下地の構成元素をそれぞれ比較して下地にのみ含まれる元素を判定し、駆動部を介して試料ステージの位置調整を行いつつ判定した元素から発せられる特性X線の強度とその取出角度との相関測定を行い、判定した元素から発せられる特性X線の消失角度を見出すことを特徴とする斜出射電子線プローブマイクロX線分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−26129(P2008−26129A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198523(P2006−198523)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】