説明

斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法及びその装置

【課題】圧縮機の稼働時に油膜の形成不良を精度よく検知することができるとともに、多様な運転条件にも対応可能であり、更には圧縮機の性能に影響を与えることなく検知することのできる斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法及びその装置を提供する。
【解決手段】ピストン20のシュー22に導通する第1の導電手段と、斜板30に導通する第2の導電手段とを斜板式圧縮機に備えるとともに、各シュー22と斜板30に電圧印加用回路54によって外部から所定の大きさの電圧を印加し、電圧印加用回路54の電圧値を電圧測定器55により測定することにより、シュー22と斜板30との間の油膜の形成不良を検知するようにしたので、圧縮機本体10の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置する必要がなく、油膜の形成不良を簡単な構造により確実に検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用空気調和装置の冷媒回路に用いられる斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の斜板式圧縮機としては、圧縮機本体内に互いに周方向に間隔をおいて設けられた複数のシリンダと、各シリンダ内をそれぞれ往復動する複数のピストンと、各ピストンの一端側に摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させる駆動シャフトとを備え、各ピストンの一端側を斜板を間に対向する一対のシューを介して斜板に摺動自在に接触させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、前記圧縮機においては、各シューと斜板との間に潤滑油の油膜を形成しているが、シューと斜板とは互いに高速で摺動するため、潤滑条件が厳しく、油膜切れによる金属同士の焼付きを生じ易いという問題がある。そこで、シューと斜板との間の油膜の形成不良を検知するために、斜板にセンサを埋設してシューとのクリアランスを計測する方法、摺動部を高速度カメラによって直接監視する方法、シューと斜板が接触したときに光信号や電波信号を出力して外部で検知する方法などが提案されている。
【特許文献1】実開平4−125682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記各検知方法では、圧縮機の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置しているため、圧縮機の稼働時に精度よく検知することができるか、多様な運転条件に対応することができるか、圧縮機の性能に影響を与えることなく検知することができるかなど、実用化に際して種々の問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機の稼働時に油膜の形成不良を精度よく検知することができるとともに、多様な運転条件にも対応可能であり、更には圧縮機の性能に影響を与えることなく検知することのできる斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、圧縮機本体内に互いに周方向に間隔をおいて設けられた複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動するピストンと、ピストンの一端側に摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させる駆動シャフトとを備え、斜板を間に対向する一対のシューを介してピストンの一端側が斜板に摺動自在に係合されている斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法において、前記ピストンのシューと斜板に導通する導電手段に電圧印加用回路によって外部から所定の定電圧電源の電圧を印加するとともに、電圧印加用回路の電圧値を測定して測定電圧の値が所定の基準値以上か否かを判定するようにしている。
【0007】
これにより、シューと斜板に電圧印加用回路の電源の電圧が印加されると、シューと斜板との間の油膜による隙間が電気抵抗となって電圧印加用回路の値が定電圧電源の電圧よりも小さくなるが、油膜の厚さが小さくなると電気抵抗が低下して電圧値が大きくなるため、油膜切れまたは油膜切れに近い状態になると、電圧印加用回路の電圧値がほぼ定電圧電源の電圧値と等しくなる。これにより、電圧印加用回路の電圧値が基準電圧値以上になると、測定電圧の値が基準電圧値以上になったことが判定されることから、その判定結果に基づいて油膜形成不良を検知することが可能となる。従って、圧縮機本体の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置することなく油膜形成不良を検知することができる。
【0008】
また、本発明は前記目的を達成するために、圧縮機本体内に互いに周方向に間隔をおいて設けられた複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動するピストンと、ピストンの一端側に摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させる駆動シャフトとを備え、斜板を間に対向する一対のシューを介してピストンの一端側が斜板に摺動自在に係合されている斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置において、前記ピストンのシューに導通する第1の導電手段と、斜板に導通する第2の導電手段と、第1及び第2の導電手段に外部から接続され、第1及び第2の導電手段に所定の大きさの電圧を印加する電圧印加用回路と、電圧印加用回路の電圧値を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段の測定電圧の値が所定の基準値以上か否かを判定する判定手段とを備えている。
【0009】
これにより、シューと斜板に第1及び第2の導電手段を介して電圧印加用回路の電源の電圧が印加されると、シューと斜板との間の油膜による隙間が電気抵抗となって電圧印加用回路の値が定電圧電源の電圧よりも小さくなるが、油膜の厚さが小さくなると電気抵抗が低下して電圧値が大きくなるため、油膜切れまたは油膜切れに近い状態になると、電圧印加用回路の電圧値がほぼ定電圧電源の電圧値と等しくなる。これにより、電圧印加用回路の電圧値が基準電圧値以上になると、電圧測定手段の測定電圧の値が基準電圧値以上になったことが判定手段によって判定されることから、その判定結果に基づいて油膜形成不良を検知することが可能となる。従って、圧縮機本体の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置することなく油膜形成不良を検知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧縮機本体の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置することなく油膜形成不良を検知することができるので、油膜の形成不良を簡単な構造により確実に検知することができる。従って、圧縮機の稼働時に油膜の形成不良を精度よく検知することができるとともに、多様な運転条件にも対応可能であり、更には圧縮機の性能に影響を与えることなく油膜の形成不良を検知することができ、実用化に際して極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図6は本発明の一実施形態を示すもので、図1は油膜形成不良検知装置の概略側面図、図2はその要部断面図、図3はその要部拡大断面図、図4はピストンの側面図、図5はその一部分解側面図、図6は電圧と隙間との関係を示すグラフである。
【0012】
同図に示す斜板式圧縮機は、冷媒を吸入及び吐出する圧縮機本体10と、圧縮機本体10内に設けられた複数のピストン20と、各ピストン20の一端側に摺動自在に係合する斜板30と、斜板30を回転させる駆動シャフト40とを備えている。
【0013】
圧縮機本体10は、ハウジング11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びバルブプレート14からなり、これらは図示しないボルトによって互いに軸方向に連結されている。
【0014】
ハウジング11は一端側を閉塞した円筒状に形成され、その他端側はシリンダブロック12側に開口している。
【0015】
シリンダブロック12は圧縮機本体10の軸方向に延びる複数のシリンダ12aを有し、各シリンダ12aの両端はそれぞれハウジング11側及びバルブプレート14側に開口している。
【0016】
シリンダヘッド13は冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bを有し、冷媒吐出室13a及び冷媒吸入室13bはそれぞれシリンダブロック12側に開口している。冷媒吐出室13aはシリンダヘッド13の中央部に設けられ、外部への吐出口(図示せず)に連通している。冷媒吸入室13bは冷媒吐出室13aの周囲に設けられ、外部からの吸入口(図示せず)に連通している。
【0017】
バルブプレート14はシリンダブロック12とシリンダヘッド13との間に配置され、各シリンダ12aに連通する複数の冷媒吐出孔14a及び冷媒吸入孔14bを有している。バルブプレート14の一方の面側(シリンダヘッド13側)には吐出側プレート14cが配置され、吐出側プレート14cには各冷媒吐出孔14aを開閉する吐出弁(図示せず)が設けられている。また、バルブプレート14の他方の面側(シリンダブロック12側)には吸入側プレート14dが配置され、吸入側プレート14dには各冷媒吸入孔14bを開閉する吸入弁(図示せず)が設けられている。
【0018】
各ピストン20は各シリンダ12a内に摺動自在に設けられ、その一端には斜板30と係合する係合部21が形成されている。係合部21は互いに対向する一対の半球面を有し、各半球面間には半球状のシュー22が摺動自在に設けられている。
【0019】
斜板30は駆動シャフト40の軸方向に対して傾斜自在に設けられ、その周縁部には各ピストン20の係合部21がシュー22を介して摺動自在に係合している。斜板30は駆動シャフト40と一体に回転する回転板31に傾動自在に連結されており、回転板31によって駆動シャフト40を中心に回転し、その傾斜角度に応じたストローク量で各ピストン20を往復動させるようになっている。また、各シュー22と斜板30との間には、圧縮機本体10内を循環する潤滑油によって油膜が形成されるようになっている。この場合、斜板30の非圧縮面(ピストン20の反力を受けない方の面)は薄膜状の絶縁材30aによって被覆されており、斜板30の非圧縮面と一方のシュー22とが絶縁材30aによって電気的に絶縁されている。これにより、斜板30の圧縮面(ピストン20の反力を受ける方の面)と他方のシュー22のみが導通するようになっている。尚、絶縁部材30aの代わりに、斜板30の圧縮面に絶縁コーティングからなる表面処理を施すようにしてもよい。
【0020】
駆動シャフト40は一端側をベアリング41を介してハウジング11に回動自在に支持され、その他端側はベアリング42を介してシリンダブロック12に回動自在に支持されている。
【0021】
次に、本実施形態の油膜形成不良検知装置について説明する。この油膜形成不良検知装置50は、ハウジング11の外面側に設けられた端子51と、ピストン20の側方に設けられた導電部材52と、ピストン20に設けられた接触部材としての接触ピン53と、各シュー22と斜板30に所定の大きさの電圧を印加する電圧印加用回路54と、電圧印加用回路54の電圧値を測定する電圧測定器55と、電圧測定器55の測定電圧が所定の基準値以上か否かを判定する判定処理部56とからなり、端子51、導電部材52及び接触ピン53はピストン20の幅方向両側にそれぞれ設けられている。
【0022】
端子51はボルト螺合用のネジ孔51aを有し、電圧印加用回路54の図示しない導線が接続されるようになっている。
【0023】
導電部材52はピストン20の摺動方向に延びる金属部材からなり、端子51に螺合するボルト52aによってハウジング11に締結されている。この場合、ボルト52aはハウジング11に設けた貫通孔11aを挿通して端子51に螺合するようになっており、貫通孔11aにはボルト52aとハウジング11とを絶縁するスリーブ52bが挿入されている。また、ハウジング11の内周面には絶縁被膜52cが形成され、絶縁被膜52cによって導電部材52とハウジング11が絶縁されている。
【0024】
接触ピン53は導電性の金属からなり、ピストン20の側面に設けた孔20aに摺動自在に挿入されている。この場合、孔20a内にはスプリング53aが設けられ、接触ピン53がスプリング53aによって導電部材52の側面に圧接するようになっている。
【0025】
また、ピストン20にはシュー22と導通する弾性部材としての導電用スプリング57が設けられ、導電用スプリング57は一端が他方のシュー22に接触するようにピストン20に固定されている。
【0026】
電圧印加用回路54は、定電圧電源54aと可変抵抗器54bとを直列に接続してなり、定電圧電源54aは所定の大きさの直流電圧(例えば2.0[V])を発生する。電圧印加用回路54は、一端側(可変抵抗器54b側)を端子51に接続され、その他端側(電源54a側)は圧縮機本体10のハウジング11に接続されている。
【0027】
電圧測定器55は電圧印加用回路54に可変抵抗器54bと並列に接続され、可変抵抗器54bの電圧を測定するようになっている。
【0028】
判定処理部56は電圧測定器55に接続され、電圧測定器55によって測定された電圧値が所定の基準電圧値V(例えば、1.9[V] )以上か否かを判定するようになっている。
【0029】
尚、前記油膜形成不良検知装置50では、端子51、導電部材52、接触ピン53、ピストン20及びシュー22が第1の導電手段として順次導通するようになっており、圧縮機本体10のハウジング11、駆動シャフト40及び斜板30が第2の導電手段として順次導通するようになっている。この場合、ピストン20とシュー22は導電用スプリング57によっても導通する。
【0030】
以上のように構成された圧縮機においては、外部からの駆動力によって駆動シャフト40が回転すると、斜板30の傾斜角度に応じて各ピストン20が各シリンダ12a内を往復動する。これにより、冷媒吸入室13bの冷媒が各シリンダ12a内に吸入され、冷媒吐出室13aに吐出される。その際、図示しない圧力制御手段によってハウジング11内の圧力が調整され、冷媒吸入室13bとハウジング11内との間に生ずる差圧により、各ピストン20の他端側(ハウジング11側)に加わる圧力に応じて斜板30の傾斜角度が変化する。これにより、各ピストン20のストローク量が大きくまたは小さくなり、冷媒の吐出量が変化する。
【0031】
また、本実施形態の油膜形成不良検知装置50では、各シュー22と斜板30に電圧印加用回路54の電源54aの電圧が印加されるとともに、電圧測定器55によって可変抵抗器54bの電圧が測定される。その際、シュー22と斜板30との間には潤滑油の油膜によって隙間が形成されるため、この隙間が電気抵抗となって測定電圧の値が電源54aの電圧よりも小さくなる。即ち、図5に示すように、油膜の厚さが正常値(例えば6[μm])以上であれば、ほぼ0[V]になるが、油膜の厚さが小さくなると電圧値が大きくなるため、油膜切れまたは油膜切れに近い状態になった場合には、電圧値がほぼ電源54aの電圧値(例えば2[V]になる。その際、測定電圧の値が基準電圧値V(例えば、1.9[V])以上か否かが判定処理部56によって判定され、その判定結果に基づいて油膜形成不良が検知される。即ち、判定処理部56によって測定電圧の値が基準電圧値V以上であると判定された場合は、例えば圧縮機の駆動を停止したり、或いは図示しない警報装置を作動するなど、所定の異常処理動作が行われる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、ピストン20の各シュー22と斜板30に電圧印加用回路54によって外部から所定の大きさの電圧を印加するとともに、電圧印加用回路54の電圧値を電圧測定器55により測定し、測定電圧の値が所定の基準値以上か否かを判定処理部56によって判定することにより、シュー22と斜板30との間の油膜の形成不良を検知するようにしたので、圧縮機本体10の内部にセンサ、カメラまたは発信器等の精密機器を設置する必要がなく、油膜の形成不良を簡単な構造により確実に検知することができる。従って、圧縮機の稼働時に油膜の形成不良を精度よく検知することができるとともに、多様な運転条件にも対応可能であり、更には圧縮機の性能に影響を与えることなく油膜の形成不良を検知することができ、実用化に際して極めて有利である。
【0033】
この場合、電圧印加用回路54を圧縮機に外部から接続することにより、油膜の形成不良を容易に検知することができるので、車両に搭載した圧縮機の油膜形成不良検知用として車両用空気調和装置に設けることができることは勿論、車両用空気調和装置に設けない場合でも、工場出荷時やメンテナンス時に電圧印加用回路54を圧縮機に接続することにより油膜の形成不良を容易に検知することができ、汎用性の向上を図ることができる。
【0034】
また、圧縮機本体10の外面側に電圧印加用回路54の一端側を接続可能な端子51を設けるとともに、ピストン20の側方に端子51に導通する導電部材52を設け、ピストン20には導電部材52に摺動自在に接触する導電性の接触ピン53を設けることにより、端子51、導電部材52、接触ピン53、ピストン20及びシュー22が順次導通するようにしたので、端子51、導電部材52及び接触ピン53といった簡単な部品を追加するだけで電圧印加用回路54の一端側をシュー22に導通させることができ、低コスト化に極めて有利である。
【0035】
更に、圧縮機本体10、駆動シャフト40及び斜板30が順次導通するようにしたので、圧縮機本体10に電圧印加用回路54の他端側を接続することにより、専用の導電部品を追加することなく電圧印加用回路54の他端側を斜板30に導通させることができ、低コスト化に極めて有利である。
【0036】
また、各接触ピン53をスプリング53aによって導電部材52に圧接させるようにしたので、導電部材52に接触ピン53を確実に接触させることができ、導電部材52と接触ピン53との導通を確実に行うことができる。
【0037】
この場合、導電部材52及び接触ピン53をピストン20の幅方向両側にそれぞれ設けたので、ピストン20が往復動作中に幅方向に変位した場合でも、常に何れか一方の導電部材52に一方の接触ピン53を接触させることができ、導電部材52と接触ピン53との導通をより確実に行うことができる。更に、幅方向両側に配置された各導電部材52によってピストン20の周方向の回転を規制することができるので、回り止め用の部品を別途設けなくとも、ピストン20を常に安定して往復動させることができる。
【0038】
また、ピストン20に、一端が他方のシュー22に接触する導電用スプリング57を設け、ピストン20と他方のシュー22とを導電用スプリング57によっても導通させるようにしたので、ピストン20とシュー22との導通をより確実に行うことができ、ピストン20と他方のシュー22との間の油膜による導電性の低下を確実に防止することができる。
【0039】
更に、電圧測定器55により、電圧印加用回路54に設けた可変抵抗器54bの電圧値を測定するようにしたので、可変抵抗器54bの抵抗値を調整することにより、図6に示す電圧と斜板/シュー間の隙間との相関関係を任意に設定することができる。
【0040】
また、斜板30の一方の面(非圧縮面)と一方のシュー22との間を絶縁材30aによって絶縁するようにしたので、斜板30の他方の面(圧縮面)と他方のシュー22との間のみを導通させることができ、潤滑状態の厳しい斜板30の圧縮面側における油膜の形成不良を確実に検知することができる。
【0041】
尚、前記実施形態における油膜形成不良検知装置50の導電部材52及び接触ピン53は各ピストン20ごとに設けてもよいが、一部のピストン20のみに設けるようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、斜板30の一方の面(非圧縮面)と一方のシュー22との間を絶縁するようにしたものを示したが、図7に示すように斜板30の他方の面(圧縮面)と他方のシュー22との間を絶縁材30bによって絶縁するようにすれば、斜板30の非圧縮面における油膜の形成不良を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示す油膜形成不良検知装置の概略側面図
【図2】油膜形成不良検知装置の要部断面図
【図3】油膜形成不良検知装置の要部拡大断面図
【図4】ピストンの側面図
【図5】ピストンの一部分解側面図
【図6】電圧と隙間との関係を示すグラフ
【図7】本発明の他の実施形態を示すピストンの一部分解側面図
【符号の説明】
【0044】
10…圧縮機本体、11…ハウジング、12a…シリンダ、20…ピストン、30…斜板、40…駆動シャフト、50…油膜形成不良検知装置、51…端子、52…導電部材、53…接触ピン、53a…スプリング、54…電圧印加用回路、55…電圧測定器、56…判定処理部、57…導電用スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体内に互いに周方向に間隔をおいて設けられた複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動するピストンと、ピストンの一端側に摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させる駆動シャフトとを備え、斜板を間に対向する一対のシューを介してピストンの一端側が斜板に摺動自在に係合されている斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法において、
前記ピストンのシューと斜板に導通する導電手段に電圧印加用回路によって所定の定電圧電源の電圧を印加するとともに、
電圧印加用回路の電圧値を測定し、測定電圧の値が所定の基準値以上か否かを判定する
ことを特徴とする斜板式圧縮機の油膜形成不良検知方法。
【請求項2】
圧縮機本体内に互いに周方向に間隔をおいて設けられた複数のシリンダと、各シリンダ内を往復動するピストンと、ピストンの一端側に摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させる駆動シャフトとを備え、斜板を間に対向する一対のシューを介してピストンの一端側が斜板に摺動自在に係合されている斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置において、
前記ピストンのシューに導通する第1の導電手段と、
斜板に導通する第2の導電手段と、
第1及び第2の導電手段に外部から接続され、第1及び第2の導電手段に所定の定電圧電源の電圧を印加する電圧印加用回路と、
電圧印加用回路の電圧値を測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段の測定電圧の値が所定の基準値以上か否かを判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とする斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項3】
前記圧縮機本体の外面側に設けられ、電圧印加用回路を接続可能な端子と、
ピストンの側方に設けられ、端子に導通する導電部材と、
ピストンに設けられ、導電部材に摺動自在に接触する導電性の接触部材とを備え、
前記第1の導電手段を、端子、導電部材、接触部材、ピストン及びシューが順次導通するように形成した
ことを特徴とする請求項2記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項4】
前記第2の導電手段を、圧縮機本体、駆動シャフト及び斜板が順次導通するように形成した
ことを特徴とする請求項2または3記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項5】
前記接触部材をスプリングによって導電部材に圧接するように設けた
ことを特徴とする請求項2、3または4記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項6】
前記導電部材及び接触部材をピストンの幅方向両側にそれぞれ設けた
ことを特徴とする請求項2、3、4または5記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項7】
前記各導電部材を、ピストンの周方向への回転が各導電部材によって規制されるように設けた
ことを特徴とする請求項6記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項8】
前記ピストンに、一端がシューに接触するように他端側をピストンに固定された導電性の弾性部材を設けた
ことを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項9】
前記電圧測定手段を、電圧印加用回路に設けられた可変抵抗器の電圧値を測定するように構成した
ことを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7または8記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。
【請求項10】
前記斜板と一方のシューとの間を絶縁材によって絶縁した
ことを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7、8または9記載の斜板式圧縮機の油膜形成不良検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−120332(P2007−120332A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310121(P2005−310121)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】