説明

断熱ブロックによる構造物の施工方法及び断熱ブロック構造

【課題】ブロック体内に断熱材からなる断熱層を側壁面に沿って形成した複数の断熱ブロックを積み重ね、断熱性の高い壁面部を形成し構造物を簡単に施工することができる、断熱ブロックによる構造物の施工方法及び断熱ブロック構造を提供する。
【解決手段】コンクリート製のブロック体内で側壁面に沿って発泡プラスチック材等の断熱材からなる断熱層2を形成し、ブロック体の上端面と下端面に長手方向に沿う突起部8と凹溝部9を形成した複数の断熱ブロック1を、互いの突起部8と凹溝部9を嵌合させて上下に積み重ねたのち、上下の断熱ブロック1,1を連結具10によって連結し構造物の壁面部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱部材からなる断熱層を形成した断熱ブロックによる構造物の施工方法及び断熱ブロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャスト成形によって、コンクリート製のブロック体内に通孔を形成し中空断熱層を備えた断熱ブロックは、特許文献1に示されるように既に公知である。
このブロック体はセメント材料を押出成型により、細長い数列の通孔を上下方向に形成した中空状の断熱層として製造される。またブロック体の長手方向の端部を切欠して階段状の切欠段部を形成し、互いの切欠段部を噛合させた状態で直交させて積層することにより、ブロック体による構造物の壁面部を一連に形成する構造になっている。
【特許文献1】特開昭52−26715号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献1で示されるブロック体は、細長い通孔からなる中空状の断熱層になるので、ブロック体の軽量化を図れる利点はあるものの、細長いスペースの中空断熱層は内部の対流や通気によって断熱効率が低い欠点がある。また中空断熱層内での通気を防止し断熱効率を上げようとするとき、及び地下室等の建築の際に通孔内への地下水の侵入を防止しようとすると、通孔の両端開口部を全て機密に閉じ施工しなければならず、また施工時に気密不良を生じ易いので、壁面部の仕上げ施工が煩雑になる等の欠点がある。
【0004】
また施工された建物等構造物の内側と外側に位置する内側面と外側面に連なるコンクリート断面部分が多くなるので、ブロック体自身の材質による熱伝導が大きくなること、及び通孔のみによる空間部で形成される断熱層の断熱不足によって、壁面部での結露が生じ易い欠点がある。一方、各ブロック体の積み重ね固定は、端部に形成した階段状の切欠段部を互いに噛合させ、各ブロック体に固定杆(ボルト等)を上下に貫通して固定されるため、該固定杆と中空断熱層との気密を保持する施工が煩雑になること、及び結露防止や地下水の侵入防止を必要とする地下室の建築が困難になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の断熱ブロックによる構造物の施工方法及び断熱ブロック構造は、第1に、コンクリート製のブロック体内で側壁面に沿って発泡プラスチック材等の断熱材からなる断熱層2を形成し、ブロック体の上端面と下端面に長手方向に沿う突起部8と凹溝部9を形成した複数の断熱ブロック1を、互いの突起部8と凹溝部9を嵌合させて上下に積み重ねたのち、上下の断熱ブロック1,1を連結具6によって連結し構造物の壁面部を形成することを特徴としている。
【0006】
第2に、複数の断熱ブロック1を積み重ねて形成される直線状の壁面部を、断熱ブロック1と同様の断熱層2と突起部8と凹溝部9を有する曲面ブロック体1a,1b,1cを上下に積み重ねて形成される壁面部と接続し、一連の壁面部を形成することを特徴としている。
【0007】
第3に、断熱ブロック1の下端面をコンクリート製の床パネル5の周辺に形成した載置面30に位置決め嵌合し、該断熱ブロック1の上端面に上段の断熱ブロック1を積み重ねて壁面部を形成することを特徴としている。
【0008】
第4に、断熱ブロック1を積み重ねて形成される複数の壁面部の上部に断熱層2を備えた天井パネル28を載置し、該天井パネル28によって複数の壁面部を接続することを特徴としている。
【0009】
第5に、断熱ブロック1或いは曲面ブロック体1a等を積み重ねて形成される壁面部の上端面にアンカーボルト27を突設し、上端面に載置した建築用の土台6aをアンカーボルト27に挿入して固定することを特徴としている。
【0010】
第6に、床パネル5又は断熱ブロック1又は他のブロック体に接続される土台基礎51等の基礎部材57を、地盤に穿設した穴62内に挿入される蛇籠パイル60によって支持することを特徴としている。
【0011】
第7に、積み重ねて構造物の壁面部を形成するコンクリート製のブロック体の上端面と下端面に、積み重ね嵌合用の突起部8と凹溝部9を形成すると共に、ブロック体の内部に側壁面に沿って発泡プラスチック材等の断熱材からなる断熱層2を形成した断熱ブロックであることを特徴としている。
【0012】
第8に、ブロック体内に設ける断熱層2を構造物の内側寄りに偏寄させて形成すると共に、断熱層2の外側寄りのブロック体内に連結ボルト10を挿入させる連結孔11を上下方向に形成したことを特徴としている。
【0013】
第9に、ブロック体内に断熱層2を形成する断熱空間部14の開口端の中途部に、断熱層2の両側の側壁を接続するブロック内連結部16を設けたことを特徴としている。
【0014】
第10に、ブロック体の上端部に、連結ボルト10に締着すると共にアンカーボルト27を連結可能なロングナット21を設置する取付穴25を穿設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明による断熱ブロックによる構造物の施工方法及び断熱ブロック構造は、ブロック体内に断熱材からなる断熱層を側壁面に沿って形成した複数の断熱ブロックを互いの突起部と凹溝部を嵌合させて上下に積み重ねたのち、連結具によって上下方向に連結するので、複数の断熱ブロックを積み重ねるだけで断熱性の高い壁面部を形成した構造物を簡単に施工することができる。
【0016】
また断熱ブロックと同様の断熱層と突起部と凹溝部を有する曲面ブロック体を上下に積み重ねて形成される壁面部に、複数の断熱ブロックを積み重ねて形成される直線状の壁面部を接続するので一連の屈曲した壁面部を形成し断熱性の高い構造物を簡単に施工することができる。また曲面ブロック体によって壁面部のコーナー部の気密形成を簡単に行うことができる。
【0017】
ブロック体内に側壁面に沿って断熱材からなる断熱層を形成した複数の断熱ブロックは、上端面と下端面の突起部と凹溝部を互いに嵌合させて積み重ね、連結具で上下方向に連結することができるから、断熱性を有する壁面部を簡単に構成することができる。また複数の断熱ブロックを積み重ね壁面部を接続するだけで、断熱性の高い構造物を簡単に施工することができる。
【0018】
また断熱層をブロック体内で構造物の内側寄りに偏寄させることにより、構造物内の温度を外側に伝え難くし断熱効率を高めることができる。またブロック体の厚さ中心部に断熱層を避けて連結具の連結ボルトを通すことができるから、断熱ブロックを強固に連結し剛構造の壁面部を構成することができる。
【0019】
またブロック体内に断熱層を形成する断熱空間部の開口端の中途部にブロック内連結部を設けることにより、断熱層の厚さ方向で両側壁を接続しブロックの強度を高めるので、ブロック体の内部に広い面積の断熱層を強度を維持して形成することができる。
そして、ブロック体の上部に形成された取付穴内で、連結ボルトに螺装したナットにアンカーボルトを連結することにより、アンカーボルトによって壁面部の上部に載置される建築物の土台或いは天井パネル等屋根構造物の固定を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図面において符号1はコンクリート製のブロック体に後述する断熱手段からなる断熱層2を形成した、平面視でI字状をなすストレートな断熱ブロックを示す。また上記断熱ブロック1と同様の断熱層2を有した別実施形態のブロック体として、平面視コ字状の曲面ブロック体1aと、T字状の曲面ブロック体1bと、L字状の曲面ブロック体1cと、+字状の曲面ブロック体1d等が準備される。
【0021】
これにより断熱ブロック1と、コ字状の曲面ブロック体1a又は曲面ブロック体1b又は曲面ブロック体1cや曲面ブロック体1d等を適宜選択し組み合わせることにより、図1で示されるような地下室型の部屋3を構成する。尚、各ブロック体を組み合わせて施工される構造物は、地下室型の部屋3に限られることなく地上の建築物や各種の工作物にすることができる。
【0022】
図1で示す部屋3は、地下室形成が可能な大きさと深さに掘削された地中底部の地面に、6畳の間程度の部屋床面を形成する床パネル5を敷設し、該床パネル5の所定の各辺(4辺)に最下段の断熱ブロック1とコ字状の曲面ブロック体1aを位置決め固定し、それぞれの上部に同様な断熱ブロック1と曲面ブロック体1aを積み重ねて固定し、各周辺に立設する壁面部をそれぞれ立設して一連の壁面部を形成して構成される。
【0023】
図示例の部屋3は、各壁面部の上部を家屋,事務所,物置等の建築物6を建築する基礎にすることが可能な、建物基礎兼用型の地下室にしている。
即ち、部屋3の各壁面部はその上部を地中から地表(GL線)に建物基礎高さを成すように露出させ、壁面部の最上段のブロック体の上端面に建築物6の土台6aを載置固定することが可能な構成にしている。
【0024】
尚、この部屋3への出入りは、建築物6内から設けた階段又は外部に設けた図示しない階段から行うことができる。外部の階段は上記部屋3に続き間として同様な手段によって設置される部屋に設けることができる。
【0025】
先ず、断熱ブロック1の構造について図2,図5〜図9を参照し説明する。図示例の断熱ブロック1はコンクリート型枠加工(プレキャスト)によって、左壁側(外側面)と右壁側(内側面)が平行状の平坦面をなす方形状のブロック体で形成される。
この断熱ブロック1の上端面と下端面には、その厚さ方向の中央部に側面視で台形状又は半円弧状の突条をなす突起部8と、別の断熱ブロック1の上端面に形成される突起部8と嵌合せしめる凹溝9が形成される。
【0026】
そして、断熱ブロック1の長手方向(巾方向)には、後述する連結ボルト10を上下方向(高さ方向)に嵌挿させる複数の連結孔11が、上記突起部8と凹溝9の略中央部を結ぶように穿設される。
また断熱ブロック1の両側端には、突起部8と凹溝9の側端を接続する位置に、該突起部8と同形状の側面突起部12と側面凹溝13が一体的に形成される。この側面突起部12は別のブロック体即ち、曲面ブロック体1a等の両側端(接続端)に形成される側面凹溝13に嵌合する。
【0027】
図1で示す部屋3の壁面部は、平面視ストレート状の断熱ブロック体1と平面視コ字状の曲面ブロック体1aを組み合わせ複数段に積み重ねて形成される。また両ブロック体は壁面部高さが2400ミリ程度である場合に、略600ミリ程度の高さと、略230ミリ程度の厚さに形成することが望ましく、各ブロック体の製作及び運搬,施工等を容易に行うことができ、また接続カ所をより少なくすることができる。
【0028】
この実施形態で示される各ブロック体の断熱手段は、断熱層2をポリスチレンフォーム等の発泡プラスチック板材からなる断熱部材としブロック体の側壁面と略同じ面積になるように形成される。また断熱層2はコンクリート成形時に平坦な内側面に沿って、ブロック体内で建物の内側寄りに偏寄した位置に形成することが望ましい。即ち、ブロック体は厚さが230ミリ程度で、断熱層2の厚さが20ミリ程度の場合、左右のコンクリート部の厚さは150ミリと60ミリ程度にすることができる。
【0029】
これにより厚い側のコンクリート部に突起部8と凹溝9等を噛合し易い大きさと強度を有して形成することができる。断熱板材2をブロック体内で建物の内側寄りに偏寄させることにより、構造物内の温度を薄い側のコンクリート部を介し断熱板材2で遮り外側に伝え難くして断熱効率を高める。またブロック体の厚さ中心部で断熱板材2を避けて連結具の連結ボルト10を通すから、断熱層の気密を損なうことなく断熱ブロックを強固に連結し剛構造の壁面部を構成することができる。
【0030】
また断熱層となる断熱板材2は、補強筋が施されたブロック型枠内の所定位置に予めセットされ、型枠内に充填供給されるコンクリートが断熱板材2を囲み埋設状態にして、各種のブロック体がプレキャスト製造される。
この際実施形態の断熱板材2は、その上辺部と下辺部或いは側辺部の必要カ所に方形状の切欠部を複数形成し、該切欠部を介し断熱板材2の厚さ方向のコンクリート流動を可能にしている。これにより断熱板材2の厚さに相当する断熱層形成用の断熱空間部14は、その開口端の中途部を複数のブロック内連結部16によって接続するので、側壁に沿って断熱板材2が埋設状に形成される断熱ブロック1を補強することができる。
【0031】
また断熱ブロック1は断熱空間部14の開口端の強度を有するので、断熱空間部14の全体に広い面積の断熱板材2を十分なブロック体強度を有して簡単に製造することができる。尚、図7の点線で示す符号2aは断熱部材からなる補強用の連結部材であり、断熱板材2の中途部に必要により貫通させて、両側に位置する内側と外側のコンクリート壁を連結補強する。
【0032】
またブロック体内に断熱板材2を予めセットしない場合は、ブロック体内に断熱部材挿入用の断熱空間部14を形成しておき、該空間部内に断熱板材2を別途挿入するか、断熱発泡剤を注入し発泡させることにより断熱層を形成することもできる。また上記断熱層はコンクリート成形型にブロック体ベースとなるコンクリートを流し入れる前又は後に、発泡粒子等の断熱板材を混入したコンクリートを入れて積層状に形成することもできる。
【0033】
次ぎに、図2〜図5,図7〜図9を参照し、断熱ブロック1並びに曲面ブロック体1a,1b,1c等の上下方向の連結を行う連結手段について説明する。先ず最下段の断熱ブロック1と曲面ブロック体1aは、その下端面を床パネル5の各周辺に沿って形成される接合部20に嵌合状態で位置決めして載置される。次いで最下段の断熱ブロック1及び曲面ブロック体1aの上端面に、上段の断熱ブロック1及び曲面ブロック体1aが積み重ねられ、積み重ねた上段のブロック体に必要数のブロック体が順次積み重ねられることにより一連の壁面部が構成される。
【0034】
このとき図7で示すように各断熱ブロック1は、連結孔11が床パネル5側から立設される連結ボルト10に挿入される。そして、最上段の断熱ブロック1に形成される取付穴25内に突出する連結ボルト10のネジ部にナット21が螺挿され締め付けられることにより、積み重ねたブロック体の上下方向の連結固定が行われる。
【0035】
上記ブロック体の連結構造において、図示例の連結具22は地面基礎部にモルタル施工等によって固定されるL型チャンネル23と、連結間隔を有して該L型チャンネル23の裏側から頭部を接合して立設される連結ボルト10と、該連結ボルト10のネジ部に螺装されるナット12等からなる。またナット21が接当する最上段のブロック体には、ナット締着用の径大な取付穴25が凹入形成される。この取付穴25の底部にはナット21に接当する座金26が設置され、該座金26はハ状に拡開した脚部をコンクリート内に埋設して補強支持される。
【0036】
上記取付穴25はロングタイプのナット21が表面に突出しないで挿入される深さ形状で形成され、連結ボルト10に螺装し締着されるナット21の上部内に、上方からアンカーボルト(接続ボルト)27を螺装し延長接続することができる。
接続されたアンカーボルト27は、建築物6の土台6a或いは図6で示すような、部屋3の天井を閉鎖する蓋としての屋根構造部材(以下単に天井パネルと言う)28が壁面部に載置されるとき、土台6a及び天井パネル28又は任意な屋根構造部材に穿設された通孔に挿入した状態で、別の固定用のナット21で締着固定することができる。
【0037】
上記連結構造によれば、ロングナット21を利用して必要カ所にアンカーボルト27を接続することができるので、この分連結ボルト10を予め長さを短くしておくことができ、ブロック体の積み重ね時に連結孔11の挿入作業を簡単に行うことができる。尚、連結ボルト10はその中途部に、図示しない別のボルト延長棒を溶接等の連結手段によって接続することにより、必要な長さに延長することができる。
【0038】
また部屋3に天井パネル28を設ける場合は、図6で示すように最上段の断熱ブロック1,曲面ブロック体1aに、天井パネル28の下面に形成した凹溝29を嵌合させると、天井パネル28によって一連の壁面部の補強支持をした状態にすることができ、次いで連結ボルト10に固定用のナット21を締着することにより、剛体構造の機密性の高い構造物にすることができる。
【0039】
また上記構成によれば、例えば断熱ブロック1を積み重ねて形成される壁面部と曲面ブロック体1aを積み重ねて形成される壁面部は、両者に挿入されるボルト10,10とアンカーボルト27,27が共に床パネル5と天井パネル27或いは土台6aによって連結されるから、両壁面部の接合を簡単に行うことができる。
また天井パネル28で覆われる気密構造の部屋3は、地下室や地上設置型の断熱型倉庫にすることができる他、大型,小型の冷蔵庫や冷凍庫を簡単に構成することができる。
【0040】
次ぎに図2〜図7を参照し、床パネル5について説明する。図7で示すように床パネル5は、外周となる各辺に前記断熱ブロック1と曲面ブロック体1aの各ブロック体の厚さと略同巾の載置面30が床表面から一段と低い位置に形成され、且つ載置面30に各ブロック体の凹溝9に嵌合せしめる突起部31が表面高さに形成される。
【0041】
この構成により断熱ブロック1,曲面ブロック体1a等は、各載置面30に嵌合状態で載置されるので、部屋3の輪郭線に沿って精度よく位置決めすることができ、剛構造を以て簡単に固定することができる。
また図3,図4で示されるように実施例の床パネル5は、左右の外側床パネル5a,5aと中側床パネル5b,5bとの複数に分割形成され、互いの接当面に形成した凹凸部を防水施工をしながら嵌合接続することにより、防水性に優れた平坦な床面を敷設構成することができる。
【0042】
また各床パネル内には前記断熱ブロック1と同様な手段によって断熱層(断熱板材)2が形成され、該断熱層2の外側端は断熱ブロック1の断熱板材2の下方に一致する。
そして、各床パネルはその連結カ所で突起部31の中心部に、前記複数の連結ボルト10を挿通せしめる取付孔5dが穿設形成される。
【0043】
また部屋3を構成する際の接当部の気密は、従来のものと同様に各ブロック体の隙間及び連結部に、シール部材やコーキング部材を埋め込んだり貼着する等のシール施工によって行われる。また地下室型或いは空調室型の部屋等には、結露防止機能を有する防水性塗料を壁面部の全体又は要部に塗布することが望ましい。さらに部屋3はその外側を防水シート,断熱シート等の幕体で覆った状態で施工することもできる。
【0044】
以上のように構成される断熱ブロック1及び曲面ブロック体1a等からなる部屋3は、既述したものと同様な工法によって、地上設置型の建物にする場合でも低コストで短期間に建設することができる。また上記工法による部屋3は、山腹や丘陵地等に形成される横穴内への設置も容易に行うことができる。
また全壁面部の断熱性を高め地震等にも強い剛体構造の構造物にすることができるから、空調装置を付設する場合に、外気温の影響を軽減し空調効率の高い、利便性に優れた建物として広い分野で使用することができる。
【0045】
さらに、この工法による構造物は各種の市場や施設に設置される、農水産物や食品等を保存する大型の保冷用建物、また建物の内外に備えられる比較的小型の冷蔵庫や保管庫等も廉価に構成することができ、また高断熱及び高気密の施工が可能でランニングコストも低減することができる。
また大きな強度を必要としない建物や冷蔵庫や保管庫等の場合には、各ブロック体を形成する材料を例えば、フライアッシュ,排棄プラスチック,排木材等の再生資源を利用してブロック体の断熱性を高めて製造することができる。
【0046】
またブロック形成材料中にマイナスイオン,遠赤外線等を発生する鉱物や機能性素材を混入したり、ブロック体やパネル体の表面に、上記機能性素材を塗布又は紙や布類を介して貼着施工をすると、人に対して健康的で快適な空間を提供することができる。またマイナスイオン,遠赤外線等により収容物の鮮度維持や劣化防止等が可能になる。さらにウド,キニラ,モヤシ類,キノコ類その他作物を栽培する冷暗室、キノコ類の栽培室、その他農水産物の栽培養殖室等として好適化することができる。
この他本発明の施工方法及び断熱ブロック構造は、建築土木構造物の工作物として、例えばプールや防火水槽及び各種の液体を収容する大型容器に適用できる。
【0047】
次ぎに図11,図12を参照し、本発明の工法により6畳の部屋3と8畳の部屋3とを、続き間として施工する応用例について説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成については説明を省略する。
図示例において、8畳用の曲面ブロック体1aは前記6畳用のものと兼用され、8畳の部屋で使用する断熱ブロック1及び床パネル5等は8畳用の長さのものが使用される。
【0048】
また6畳用の断熱ブロック1と8畳用の断熱ブロック1は、前記曲面ブロック体1aの本体壁34から両側に屈曲形成される接続壁35と同様な接続構造及び工法によって、平面視T字型の曲面ブロック体1b,1bの接続壁35,35に接続される。
また両部屋3,3の間に間仕切壁36を設ける場合には、接続壁35,35に直交する接続壁37,37の接続端に間仕切壁36を接続して構成する。
【0049】
図示例の間仕切壁36は、床パネル5に立設する左右のドア壁39,39に門型の上ドア壁40を接合することにより、ドアを設置可能な出入口3aを簡単に構成することができる。
以上のように断熱ブロック1を積み重ねて続き間となるように直線状に列設される壁面部は、曲面ブロック体1bの接続壁35,35に接続され、これに一体的に直交する接続壁37によって、続き間の長い壁面部を補強支持することができる。
【0050】
次ぎに、図13,図14を参照し本発明の応用実施形態について説明する。同図の建築物6は一般的な住宅の間取りの例を示すと共に、該間取りを自由に形成する壁面部を本発明の技術を利用した、断熱ブロック1と各種のパネルブロック等によって建築した例を示している。そして、間取りの一部の地下に6畳用の部屋3と8畳用の部屋3とを構成している。この地下室構造の部屋3,3は、それぞれ建築物6の6畳用の部屋と8畳用の部屋の基礎を兼用構成している。
【0051】
また部屋3のコーナー部を構成する曲面ブロック体1cは、図14で示すように接続壁35の延長方向に接続基礎部50を一体的に設けている。この接続基礎部50は建築物6の布基礎となる土台基礎51を組み合わせて接続することができる。
即ち、地下で直交する壁面部を形成する断熱ブロック1,1は、L形の曲面ブロック体1cによって接続され、曲面ブロック体1cの直交する接続壁35,35の延長方向には、基礎面の高さを面一にした接続基礎部50が一体的に突出形成される。
【0052】
そして、接続基礎部50の側端には、予めプレキャスト加工によって製作される土台基礎51に形成した接続部に合致する組合せ面が形成される。これにより部屋3を構成した状態の曲面ブロック体1cの接続基礎部50に対し、土台基礎51をその組合せ面を載せて連結することができ、両者の接続施工を簡単且つ能率よく行うことができる。
【0053】
この接続施工によれば、プレキャスト加工されフィーチング部52を有する土台基礎51と接続基礎部50は、天端面の面一仕上げを精度よく簡単に行うことができ、また天端面に土台6aを載置する基礎構造が簡単となり、建築コストを低減することができる。
【0054】
尚、図14で示されるように曲面ブロック体1cは、複数の断熱ブロック1を上下に接続して形成される壁面部と同じ高さで製作した一つのブロック体にすることもできる。
また基礎構造になる部屋3及び土台基礎51上に構成される建築物6は、従来工法による木造建物の他に、図13で示す断熱ブロック1や各種のパネルブロック等を用いたコンクリート製の壁面構造の建築物に好適化することができる。
【0055】
即ち、図示例の建築物6のように、木造建築物の柱部分とその両側の壁面部を兼ね備えた部屋高さを有する曲面ブロック体1b,1cと、種々の大きさと形状に形成された断熱ブロック1とを接続することにより、在来の木造住宅と同様な間取り及び使用形態を得ることが可能なコンクリート製住宅、並びに車庫等の付属的建物を簡単且つ廉価に短期間で建築することができる。
【0056】
また上記の建築方法によれば、曲面ブロック体1a,1b,1cを立設し且つ互いを連結するだけで、部屋コーナー部の柱と壁を同時的に形成することができ、またブロック体の積み重ねによって大壁状の壁面部を形成できるので、在来の柱,壁加工や軸組作業等を大巾に省力化することができる等の特徴がある。
【0057】
次ぎに、図15,図16を参照し本発明の別実施形態について説明する。図示例の部屋3は、長さを異にしたストレート状のブロック体からなる各種の断熱ブロック1を種別に積み重ねて各壁面部を形成すると共に、相隣る断熱ブロック1を以下のような連結手段によって接続し建築される。
【0058】
即ち、図16で示されるように既述のものと同様に断熱層2及び突起部8,凹溝9等を有する各断熱ブロック1は、ブロック体内の内側寄り上部に埋設した連結ボルト10のネジ部を上方に向けて突設すると共に、内側寄りの下部に別の断熱ブロック1に突設される連結ボルト10を挿入する通孔55を穿設し、該通孔55に通ずるナット掛け用の窓状の操作穴56を室内側となる内側面に穿設している。
【0059】
床パネル5は突起部31の内側寄りに上記断熱ブロック1の通孔55に挿入せしめる連結ボルト10を連結間隔を有し複数立設している。
この構成により床パネル5に対し最下段の断熱ブロック1を突起部31と連結ボルト10を介して位置決め載置し、この断熱ブロック1に突起部8と連結ボルト10を介し上段の断熱ブロック1を順次積み重ね、次いで操作穴56を介しナット21を挿入し連結ボルト10に締着して剛構造の壁面部を形成する。
【0060】
また断熱ブロック1と断熱ブロック1の両側の接続は、上記のものと同様な構成からなる横方向の連結ボルト10にナット21を締着することによって行うことができる。また連結ボルト10はブロック体内に埋設した連結手段の他に、図6の点線で示すように一方のブロック体(床パネル5)から、他方のブロック体(断熱ブロック1)に抜き差し自在に挿入される連結ボルト10を利用することができる。
【0061】
この連結手段は図15で示されるように、壁面部を形成する断熱ブロック1の端部に、他方の壁面部を形成する断熱ブロック1の内側面を突き合わせて接続する場合に、該断熱ブロック1の外側から連結ボルト10を挿入することによって行われる。
尚、図示例の断熱ブロック1は、ブロック体内に下方から凹入形成した断熱空間部14内に断熱板材2を設けた構造にしている。
【0062】
以上のように、予め規格化しプレキャスト製造された形状と大きさの個々の断熱ブロック1は、短い連結ボルト10によって接続することができ、またナット21の締着を室内側から行うので、ブロック体の積み重ね及び接続作業を簡単にすることができる。
また組立てられた各ブロック体は解体工事も組立ての逆順を追って殆どネジ具類を弛めるだけの簡単な作業で行なうことができ、建物解体に伴うブロック体の損傷を防止することができるから、分解したブロック体の再使用が可能になる。
【0063】
次に図17〜図20に示す、床パネル5又は各ブロック体或いは前記土台基礎51等(以下単に基礎部材57と言う)を支持する摩擦パイル工法について説明する。
この支持工法は図17で示す穴あけ作業と、図18で示す蛇籠パイル60の挿入作業と、図19で示す蛇籠パイル60に基礎部材57を設置する基礎設置作業と、図20で示す蛇籠パイル60或いは基礎部材57に土の埋め戻し等を行う仕上げ作業等からなる。
【0064】
即ち、この工法による穴あけ作業は、建柱車或いは移動作業機等が備えるアースドリル61によって、所定の径と深さの穴62が地盤に穿設される。この際に穿設される穴62の位置と深さ及び本数等は、地盤の硬軟並びに基礎部材57の重量,形状等の条件に基づいて定められる。また穴62には必要により、セメントミル又は消石灰液等の硬化剤63が注入される。この硬化剤63は蛇籠パイル60内に侵入し骨材等を固定し、また穴62の内周の土と密着し摩擦支持力をより高めることができる。
【0065】
パイル挿入作業は、穴62の径と深さに適応させ基礎部材57を支持可能に形成された蛇籠パイル60を挿入側から穴62内に挿入する。このとき蛇籠パイル60の天端は基礎部材57の支持位置に合わせ押圧調整することが望ましい。また支持位置の浮陸調整はモルタル等の天端の水平を調節する調整モルタル64を供給し、仕上げ施工をすることによって行う。また深い穴62に対しては、複数の蛇籠パイル60を準備しこれを選択し挿入することにより、支持長さを調整することが望ましい。
【0066】
上記蛇籠パイル60は、予め所定の大きさと形状を以て形成された金網又は合成樹脂製のネット状筒体からなる籠内に、栗石又は瓦やコンクリート等の廃材その他の骨材等を収容し、通常は円柱形状で製作される。尚、蛇籠パイル60の断面形状は、穴62内への挿入抵抗の少ない三角形及び多角形にすることができる。また径大な穴62に対しては径小の蛇籠パイル60を複数挿入して充填することができる。
【0067】
次いで基礎設置作業は、天端が整えられた蛇籠パイル60に基礎部材57を運搬載置することによって行われる。このとき基礎部材57のベース部52を地表より下位にする場合は、図19で示すようにベース部52の設置地面を掘削して設置する。また基礎部材57の浮陸調整は点在する蛇籠パイル60の頭部に対してのみ行えばよいから、基礎設置作業を簡単且つ速やかに行うことができる。
【0068】
仕上げ作業は図20で示すように、掘削した土を埋め戻して蛇籠パイル60及び基礎部材57の基部を覆い地均しをして一連の作業が完了される。
以上のように蛇籠パイル式の摩擦パイル工法によれば、基礎部材57の支持カ所に蛇籠パイル60を点在的に施工するだけで、十分な支持力を簡単に得ることができ、また沈下を防止し耐震性も上げることができる。
【0069】
従って、在来工法による現場打ちコンクリート基礎作業のように、基礎部材57のベース下部の全体に栗石やコンクリート等を敢えて敷設施工をする必要がないので、一連の作業を省力化し廉価に行うことができる。
【0070】
また在来の杭支柱等を圧入する簡易摩擦パイル打ち込み以上の摩擦係数を簡単に得ることができるから、埋め立て直後や軟弱地盤の場所において高支持力を発揮し地盤改良工事等にも有効利用することができる。この際にも摩擦パイル工法は打ち込み時の大きな振動や騒音を伴わないものであると共に、高い地下水位の場所でも地下水に支障されることのない作業をスムーズに行うことができる等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の断熱ブロックによって建築された建物の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の部屋の形状を示す平面図である。
【図3】図1,図2で使用される床パネルの斜視図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図1の部屋の要部の構成を示す側断面図である。
【図6】図5の別実施形態の構成を示す側断面図である。
【図7】床パネルの上に複数のブロック体を積み重ねて壁面部を構成した断面図である。
【図8】断熱ブロック及び曲面ブロック体を積み重ねた状態を一部破断をして示す側面図である。
【図9】図8の壁面部のA−A線平面図である。
【図10】(A)は曲面ブロック体の一例を示す正面図である。(B)は(A)の平面図である。
【図11】本発明の断熱ブロックによって建築された建物の続き間の部屋を示す平面図である。
【図12】図11の間仕切壁の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の断熱ブロックによって建築される部屋を家屋等の建築物に施工した例を示す斜視図である。
【図14】図1の建物の別実施形態を示す斜視図である。
【図15】本発明の別実施形態に係わるブロック体によって建築された建物を一部破断をして示す斜視図である。
【図16】図15の床パネルと断熱ブロックの構成を示す側断面図である。
【図17】基礎部材を支持する摩擦パイル工法の穴あけ作業を示す正面図である。
【図18】摩擦パイル工法の蛇籠パイルの挿入作業を示す正面図である。
【図19】摩擦パイル工法の基礎部材を設置する基礎設置作業を示す正面図である。
【図20】摩擦パイル工法の仕上げ作業を示す正面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 断熱ブロック(ブロック体)
1a,1b,1c 曲面ブロック体(ブロック体)
2 断熱層(断熱板材)
3 部屋
5 床パネル
6 建築物
6a 土台
8 突起部
9 凹溝部
10 連結ボルト
11 連結孔
14 断熱空間部
16 ブロック内連結部
21 ナット(ロングナット)
25 取付穴
27 アンカーボルト
28 天井パネル
30 載置面
60 蛇籠パイル
62 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製のブロック体内で側壁面に沿って発泡プラスチック材等の断熱材からなる断熱層(2)を形成し、ブロック体の上端面と下端面に長手方向に沿う突起部(8)と凹溝部(9)を形成した複数の断熱ブロック(1)を、互いの突起部(8)と凹溝部(9)を嵌合させて上下に積み重ねたのち、上下の断熱ブロック(1),(1)を連結具(6)によって連結し構造物の壁面部を形成する断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項2】
複数の断熱ブロック(1)を積み重ねて形成される直線状の壁面部を、断熱ブロック(1)と同様の断熱層(2)と突起部(8)と凹溝部(9)を有する曲面ブロック体(1a),(1b),(1c)を上下に積み重ねて形成される壁面部と接続し、一連の壁面部を形成する請求項1の断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項3】
断熱ブロック(1)の下端面をコンクリート製の床パネル(5)の周辺に形成した載置面(30)に位置決め嵌合し、該断熱ブロック(1)の上端面に上段の断熱ブロック(1)を積み重ねて壁面部を形成する請求項1又は2の断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項4】
断熱ブロック(1)を積み重ねて形成される複数の壁面部の上部に断熱層(2)を備えた天井パネル(28)を載置し、該天井パネル(28)によって複数の壁面部を接続する請求項1又は2又は3の断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項5】
断熱ブロック(1)或いは曲面ブロック体(1a)等を積み重ねて形成される壁面部の上端面にアンカーボルト(27)を突設し、上端面に載置した建築用の土台(6a)をアンカーボルト(27)に挿入して固定する請求項1又は2又は3又は4の断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項6】
床パネル(5)又は断熱ブロック(1)又は他のブロック体に接続される土台基礎(51)等の基礎部材(57)を、地盤に穿設した穴(62)内に挿入される蛇籠パイル(60)によって支持する請求項1又は2又は3又は4又は5の断熱ブロックによる構造物の施工方法。
【請求項7】
積み重ねて構造物の壁面部を形成するコンクリート製のブロック体の上端面と下端面に、積み重ね嵌合用の突起部(8)と凹溝部(9)を形成すると共に、ブロック体の内部に側壁面に沿って発泡プラスチック材等の断熱材からなる断熱層(2)を形成した断熱ブロック構造。
【請求項8】
ブロック体内に設ける断熱層(2)を構造物の内側寄りに偏寄させて形成すると共に、断熱層(2)の外側寄りのブロック体内に連結ボルト(10)を挿入させる連結孔(11)を上下方向に形成した請求項7の断熱ブロック構造。
【請求項9】
ブロック体内に断熱層(2)を形成する断熱空間部(14)の開口端の中途部に、断熱層(2)の両側の側壁を接続するブロック内連結部(16)を設けた請求項7又は8の断熱ブロック構造。
【請求項10】
ブロック体の上端部に、連結ボルト(10)に締着すると共にアンカーボルト27)を連結可能なロングナット(21)を設置する取付穴(25)を穿設した請求項7又は8又は9の断熱ブロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−2438(P2006−2438A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179855(P2004−179855)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(300057492)
【Fターム(参考)】