説明

新規な熱硬化性樹脂組成物

【課題】 耐溶剤性、接着性、半田耐熱性に優れた熱硬化性樹脂を得る。
【解決手段】 (A)一般式(1)


で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂、及び(B)熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関し、さらに好ましくは、プリント配線板の基板上を被覆するための被覆形成材など、電子材料において回路面を被覆する材料として好適に用いることができる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などを回路の被覆膜として利用することは、例えば、固体素子への絶縁膜、パッシベーション膜、半導体集積回路、フレキシブル配線板などの絶縁被覆剤などの用途において知られている。一般に、絶縁被覆剤は硬化剤の併用が必要であり、その硬化剤に係わる保存安定性、二液調製のための作業性などの種々の問題があり、又、前述の絶縁被覆剤として使用した場合に、熱硬化によって形成される絶縁膜が剛直であり、柔軟性に欠け、屈曲性に劣るという問題があった。
又、ポリイミド樹脂は、有機溶媒に溶解し難いために、ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)の溶液として使用して、塗布膜を形成し、次いで乾燥とイミド化とを高温で長時間、加熱処理することによって、ポリイミド樹脂の保護膜を形成する必要があり、保護すべき電気又は電子部材自体が熱劣化するという問題があった。
一方、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を用いた被覆材料としては、例えば、特許文献1に記載されているようなビフェニルテトラカルボン酸とジアミン化合物とを有機極性溶媒中で重合及びイミド化した芳香族ポリイミドが知られているが、そのポリイミド樹脂は、シリコンウェハー、ガラス板、フレキシブル基板、銅箔などの基板や回路との密着性(接着性)が充分でなかったので予め基板などを密着促進剤で処理しておくなどの方法が必要であった。
【特許文献1】特公昭57−41491
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電子材料、特には、導体回路パターンを被覆するための被覆形成材として好適に用いることができる、物性バランスに優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下の新規な構成により上記課題を解決しうる。
1)(A)下記一般式(1)
【0005】
【化7】

(式中X、Yは下記一般式群(1)より選ばれる2価の芳香族基を示す。同一であってもよいし、異種であってもよい。Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。l、m、nは1以上の整数であって、0.5≦l/m≦3.0である。)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、重量平均分子量が6万以下であることを特徴とするポリイミド樹脂、及び
【0006】
【化8】

(B)熱硬化性樹脂
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
2)(A) 1)記載のポリイミド樹脂が、
(a)下記一般式(2)
【0007】
【化9】

(式中Xは下記一般式群(1)より選ばれる2価の芳香族基を示す)
【0008】
【化10】

で表される芳香族酸二無水物及び
(b)下記一般式(3)
【0009】
【化11】

で表されるジアミン及び
(c)下記一般式(4)
【0010】
【化12】

(式中Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。nは1以上の整数である。)
であらわされるシリコンジアミンを必須成分として反応させて得られるポリイミド樹脂、及び
(B)熱硬化性樹脂
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
3)前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分を1〜100重量部含有することを特徴とする1)〜2)記載の熱硬化性樹脂組成物。
4)前記(B)成分が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
5)さらに、マイカ、シリカ、雲母、タルクの無機フィラーを含有してなる1)〜4)のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、電子材料用途に必要な物性バランスに優れたポリイミド樹脂となっており、各種熱硬化性成分と配合した場合にも、熱硬化性成分と配合特性を損なうことなく導体回路パターンを被覆するための被覆形成材に用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)
【0013】
【化13】

(式中X、Yは一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す。同一であってもよいし、異種であってもよい。Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。l、m、nは1以上の整数であって、0.5≦l/m≦3.0である。)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、重量平均分子量が6万以下であることを特徴とするポリイミド樹脂、および(B)熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である。
【0014】
【化14】

更に、本発明のポリイミド樹脂は上記のポリイミドユニットからなるブロック構造を有するものであってもよいが、本発明のポリイミド樹脂の特徴は、下記の酸二無水物成分およびジアミン成分を必須成分として用いることにあり、ブロック構造を有していなくともよく
(a)一般式(2)
【0015】
【化15】

(式中Xは一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す)
【0016】
【化16】

で表される芳香族酸二無水物及び
(b)一般式(3)
【0017】
【化17】

で表されるジアミン及び
(c)一般式(4)
【0018】
【化18】

(式中Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。nは1以上の整数である。)
であらわされるシリコンジアミンを必須成分として反応させて得られるポリイミド樹脂であればよい。更に、本願発明の熱硬化性樹脂は上記(A)ポリイミド樹脂および(B)熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物であればよい。
(A)成分を含有することで、熱硬化性樹脂組成物に対して、優れた耐熱性、耐屈曲性、耐溶剤性、耐環境安定性、半田耐熱性などを付与するとともに、(B)成分を含有することで、優れた加工性、硬化特性及び高接着性を付与することが可能となる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(A)ポリイミド樹脂成分
本発明のポリイミド樹脂は、一般式(1)
【0019】
【化19】

(式中X、Yは一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す。同一であってもよいし、異種であってもよい。Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。l、m、nは1以上の整数であって、0.5≦l/m≦3.0である。)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、重量平均分子量が6万以下であることを特徴とするポリイミド樹脂である。
【0020】
【化20】

本発明のポリイミド樹脂は、上記のポリイミドユニットからなるブロック構造を有するものであってもよいが、本発明のポリイミド樹脂の特徴は、下記の酸二無水物成分およびジアミン成分を必須成分として用いることにあり、ブロック構造を有していなくともよく
(a)一般式(2)
【0021】
【化21】

(式中Xは一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す)
【0022】
【化22】

で表される芳香族酸二無水物及び
(b)一般式(3)
【0023】
【化23】

で表されるジアミン及び
(c)一般式(4)
【0024】
【化24】

(式中Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。nは1以上の整数である。)
であらわされるシリコンジアミンを必須成分として反応させて得られるポリイミド樹脂であればよい。
一般式(2)で記載される酸二無水物の中で、本願発明の溶解性及び機械特性、吸水特性を発現させる為に、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4'―オキシジフタル酸二無水物、3,3',4,4'―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を用いることが熱硬化性樹脂との相溶性を高め、ポリイミド樹脂としての靭性を付与するうえで好ましい。
一般式(3)で表されるジアミンとしては、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホンやビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホンを用いることがポリイミド樹脂の有機溶剤への溶解性を高め、熱硬化性樹脂との相溶性を高めるので望ましい。
一般式(4)で表されるジアミンとしては、α,ω―ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω―ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω―ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω―ビス(4―アミノ―3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω―ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω―ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω―ビス(2−アミノエチル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω―ビス(4−アミノフェニル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω―ビス(4―アミノ―3−メチルフェニル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω―ビス(4−アミノブチル)ポリメチルフェニルシロキサンが好適に用いられる。
更に、本願発明では、上記ジアミン成分に加えて水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを併用してもよい。併用の方法としては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを用いてポリアミド酸を製造して、ポリイミド樹脂を得れば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0025】
ポリイミド樹脂に水酸基及び/又はカルボキシル基が導入されていると、後述の(B)熱硬化性樹脂組成物、特に、エポキシ樹脂成分の硬化を促進する、従って、上記(B)エポキシ樹脂成分の熱硬化を低温又は短時間で行うことが可能になる。さらに、(B)エポキシ樹脂成分は、水酸基及び/又はカルボキシル基と反応するので、ポリイミド樹脂同士が(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ樹脂を介して架橋される。従って、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得るために、上記ジアミンとして、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンを用いれば、耐熱性、半田耐熱性、耐環境安定性(PCT)耐性等にさらに優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンとしては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有していれば特に限定されない。例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール系化合物;3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル等のジアミノビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェニル)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物等を挙げることができる。
上記のポリイミド樹脂を用いて形成した熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性、耐溶剤性、半田耐熱性、低吸水性、耐環境安定性、難燃性などの特性バランスに優れたものとなる。
特に耐熱性、長期安定性、絶縁性等の優れた特性を発現するためには、一般式(1)のlとmの比率は0.5≦l/m≦3.0であり、特に好ましくは0.5≦l/m≦2.5である。l/mを上記範囲とすることで、ポリイミド樹脂に柔軟性を付与しながら耐熱性及び有機溶剤への溶解性も付与することができるので望ましく。更に、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル) エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、γ―ブチロラクトンやN−メチル−2−ピロリドン、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤への溶解性の高い樹脂が得られるので望ましい。尚、この範囲を逸脱すると、被膜にした場合の特性バランスが崩れる場合がある。
尚、一般式(3)、一般式(4)以外の水酸基及び/又はカルボキシル基を有するジアミンの使用量は、本願発明のポリイミド樹脂の特性を維持するために、10モル%以下の割合で使用することが望ましい。
更に、本願発明のポリイミド樹脂の分子量は重量平均分子量が6万以下が好ましく、より好ましくは5.5万以下が好ましい。ポリイミド樹脂の重量平均分子量が6万以下に制御することで例えば上記列記の有機溶剤への溶解性が高く、基材との密着性が向上するので好ましい。基材との密着性が悪い場合には、導体回路被覆に使用した場合に回路と表面被覆剤との接着強度が低下してその部位からの導体劣化や、被覆剤の剥離が生じることになる。
本発明のポリイミド樹脂は、対応する前駆体ポリアミド酸重合体を脱水閉環して得られる。ポリアミド酸重合体は、酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル反応させて得られる。但し、本願発明の特徴であるポリイミド樹脂の重量平均分子量を5万以下に制御するためには、酸二無水物とジアミン量を調整してポリアミド酸の重量平均分子量を6万以下に制御することが望ましく、特に好ましくは5.5万以下に制御することが望ましい。より具体的には、酸二無水物のモル量/ジアミンのモル量をモル比率で0.80〜0.98に制御して、ポリイミド樹脂の末端基をアミン基にする。もしくは、1.03〜1.25に制御して酸無水物基とすることが望ましい。特に、ポリイミド樹脂の耐環境安定性を向上させるためには、ポリイミド樹脂の末端基はアミン基であることが好ましい。ポリイミドの合成反応では酸二無水物の純度が低下していると分子量が上昇しない現象が起こりうるため、上記範囲に設定していても重量平均分子量を最適な分子量に設定することが出来ない場合があるため、適宜モル比は変更することが望ましい。
反応の代表的な手順として、1種以上のジアミン成分を有機極性溶剤に溶解または分散させ、そののち1種以上の酸二無水物成分を添加し、ポリアミド酸溶液を得る方法があげられる。各モノマーの添加順序はとくに限定されず、酸二無水物成分を有機極性溶媒に先に加えておき、ジアミン成分を添加し、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよいし、ジアミン成分を有機極性溶媒中に先に適量加えて、つぎに過剰の酸二無水物成分を加え、過剰量に相当するジアミン成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。このほかにも、当業者に公知のさまざまな添加方法がある。具体的には下記の方法が挙げられる。なお、ここでいう「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解する場合のほかに、溶質が溶媒中に均一に分散されて実質的に溶解しているのと同様の状態になる場合を含む。反応時間、反応温度は、とくに限定されない。
1)ジアミン成分を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの酸二無水物成分を反応させて重合する方法。
2)酸二無水物成分とこれに対し過小モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分が実質的に等モルとなるようにジアミン成分を用いて重合させる方法。
3)酸二無水物成分とこれに対し過剰モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここにジアミン成分を追加添加後、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分が実質的に等モルとなるように酸二無水物成分を用いて重合する方法。
4)酸二無水物成分を有機極性溶媒中に溶解させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン化合物成分を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの酸二無水物成分とジアミン成分の混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法等が用いられる。
ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
本発明のポリアミド酸のイミド化方法について記載する。ポリアミド酸溶液をイミド化する方法には、触媒や脱水剤を用いずに加熱して脱水閉環する熱的イミド化方法や、脱水剤及び触媒を混合して加熱する化学的イミド化方法がある。
化学的イミド化方法に用いられる脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。好適には、無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の抽出工程に適している。触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、イソキノリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、ルチジンなどの複素環式第3級アミン類などが挙げられる。しかし、用いる触媒によっては反応時間が長くなることや、イミド化が充分に進まないことがあり、ポリイミド樹脂に好適な触媒は適宜選定することが好ましい。特に、本願発明に好適に用いることのできる触媒は、ピリジン、イソキノリン、β-ピコリンである。
ポリアミド酸に対する脱水剤及び触媒の添加量は、ポリアミド酸を構成する化学構造式に依存するが、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましく、触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましい。更に好ましくは、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましく、触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましい。
化学イミド化方法では、イミド化反応を促進するために、ポリアミド酸溶液に脱水剤と触媒を添加して攪拌している溶液を、200℃以下で加熱することが好ましく、更に150℃以下で加熱することがイミド化反応を進める上で好ましい。加熱する時間は、ポリイミド樹脂の種類や触媒、脱水剤の種類により適宜選定することが望ましいが、好ましくは1時間以上10時間以下が好ましく、更に好ましくは、1時間以上5時間以下であることがイミド化反応を進めることができるので好ましい。
上記イミド化反応はポリアミド酸溶液を溶解している溶剤中で反応させることが望ましい。
上記溶液中からイミド樹脂を抽出方法について記載する。上記ポリイミド樹脂の製造方法により製造されたポリイミド樹脂溶液から、ポリイミド樹脂を抽出する方法として、ポリイミド樹脂、イミド化の脱水剤、イミド化の触媒を含有するポリイミド樹脂溶液をポリイミド樹脂の貧溶媒中に、投入する、或いは、貧溶媒を投入することでポリイミド樹脂を固形状態に抽出する方法を用いる。本発明で用いられるポリイミド樹脂の貧溶媒は、たとえば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、イソプロピルアルコールなど、該当するポリイミドの貧溶剤で、ポリアミド酸及びポリイミド樹脂の溶解溶媒として使用した有機溶剤と混和するものが用いられ、上記したアルコール類が好ましく用いられる。
【0027】
ポリイミド樹脂の溶液を貧溶媒中に注入する際には、ポリイミド樹脂溶液の投入直前の直径は1mm以下が好ましく、更に好ましくは直径が0.5mmになるように投入することが乾燥工程で完全に溶媒を除去する上で好ましい。貧溶媒量はポリイミド樹脂溶液(触媒及び脱水剤を全て含む量)の3倍以上の量で抽出することが好ましい。
【0028】
本願発明では樹脂の投入直後は樹脂が糸状になるので、できるだけ細かいフレーク状のポリイミド樹脂に成形するために、貧溶媒の溶液の回転数は100回転/分以上の高速回転で攪拌することが好ましい。
【0029】
固形のポリイミド樹脂を取り出して、ソックスレー洗浄装置と同等の洗浄装置内で洗浄を行う。使用する溶媒は揮発性の溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノ−ル等の溶媒が好ましい。
【0030】
本発明で凝固させフレーク状にした樹脂固形物の乾燥方法は、真空乾燥によってもよいし熱風乾燥によってもよい。乾燥温度はイミド樹脂によるが、ガラス転移温度よりも低い温度で乾燥させることが望ましく、各種溶剤、触媒、脱水剤の沸点よりも高い温度で乾燥させることが望ましい。
【0031】
ポリイミド樹脂の重量平均分子利用を6万以下に制御するためには、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液の重量平均分子量を6万以下、好ましくは5.5万以下に制御したポリアミド酸溶液を用いて上記化学イミド化方法を用いてポリイミド樹脂を製造することが望ましい。
【0032】
熱イミド化方法としては、重量平均分子量を6万以下、好ましくは5.5万以下に制御したポリアミド酸溶液を用いて、真空乾燥装置内で溶剤を揮発させつつイミド化することが望ましい。特に、加熱温度は使用している溶剤の沸点を基準に±20℃で溶剤を完全に除去した後に、ポリイミド樹脂のガラス転移点温度よりも10℃以上高い温度で1時間以上加熱することが望ましく、真空度は10Torr以下が望ましい。このように、溶剤が揮発した後にポリイミド樹脂のガラス転移温度以上に上昇させることでポリイミド樹脂中の溶剤分が完全に揮発すると共に、ポリイミド樹脂のイミド化を進めることができるので望ましい。
(B)熱硬化性樹脂
本発明の樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子等を用いることができる。上記熱硬化性成分は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いればよい。
【0033】
この中でも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
【0034】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等のエポキシ樹脂類を挙げることができる。
(A)成分および(B)成分の好ましい配合比
なお、上記硬化剤,硬化促進剤,熱硬化成分は、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の諸特性を損なわない範囲で、ポリイミド樹脂に含有させることが好ましい。従って(A)成分100重量部に対して、(B)成分は1〜100重量部であることが好ましく、特に好ましくは1〜50重量部であることが好ましい。エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満であると、加工性、接着性が低下する傾向にあり、100重量部を超えると耐熱性、屈曲性などのバランスが崩れる場合がある。
(C)その他の成分
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、有機又は無機のフィラー、消泡材、レベリング材、安定剤、酸化防止剤などの各種添加剤、エポキシ樹脂成分の硬化剤、エポキシ樹脂成分と硬化剤との反応を促進するための硬化促進剤などの熱硬化成分等が含まれていてもよい。
【0035】
上記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ドデシル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の脂肪族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等の芳香族酸無水物;アミノ樹脂類、ユリア樹脂類、メラミン樹脂類、ジシアンジアミド、ジヒドラジン化合物類、イミダゾール化合物類、ルイス酸、及びブレンステッド酸塩類、ポリメルカプタン化合物類、イソシアネートおよびブロックイソシアネート化合物類、等を挙げる事ができる。
【0036】
上記硬化剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、全エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部〜100重量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0037】
また、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられる。イミド樹脂にアミノ基が含まれる場合、回路埋め込み性が向上させることができるる点で、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール類を用いることが好ましい。
【0038】
上記硬化促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、全熱硬化性樹脂組組成物100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0039】
(本発明の樹脂組成物の使用態様)
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物の使用態様について説明するが、以下の説明に限定されるものではない。
【0040】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、適当な溶媒に添加して攪拌することによって、樹脂溶液として用いることができる。あるいは、該樹脂溶液は、熱硬化性樹脂組成物の各成分を適当な溶媒に溶解してなる各成分毎の溶液を混合することによっても得ることができる。
【0041】
このような溶液を、導体回路が形成された面に、流延又は塗布し、該樹脂溶液を乾燥させることによって、被膜を形成することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例中では、使用する酸二無水物及びジアミンを下記の略称で記載している。
BPADA:2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物
ODPA:4,4'―オキシジフタル酸二無水物
DSDA:ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BAPS−m:ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン
BAPS:ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン
KF8010:α,ω-ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(信越化学社製シリコンジアミンの商品名)
X−22−9409:α,ω-ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン(信越化学社製シリコンジアミンの商品名)
(合成例1)
窒素で加圧した、セパラブルフラスコ中に、重合用溶媒としてN,N’−ジメチルフォルムアミド(DMF)を最終の固形分濃度が30重量%になるように仕込み、これに、KF−8010(0.06モル)及びBAPS−m(0.04モル)を投入して完全に溶解する。この溶液中に、全酸二無水物量のうちの90%にあたるBPADA(0.09モル)を投入して40℃に加熱して3時間重合反応を行い、その後に10%分のBPADAの粉末をポリアミド酸の分子量が6万以下になるように分子量を下記分子量測定方法にて確認しながら投入し、6万以上にならないように調整してポリアミド酸溶液を得た。
(ポリイミド樹脂の製造方法)
上記ポリアミド酸溶液に、β―ピコリンを0.3モル投入して完全に相溶させた後に、無水酢酸を3モル投入して相溶させた。このポリアミド酸溶液を油浴中で100℃に加熱して3時間加熱・還流を行った。
(ポリイミド樹脂の抽出)
上記ポリイミド樹脂溶液をポリアミド酸樹脂溶液の5倍量のイソプロパノ―ル中に添加してポリイミド樹脂の微粒子を得た。この微粒子を濾過して樹脂分を取り出して、イソプロパノ―ルで洗浄した後に、真空オーブン中で190℃/3時間、加熱乾燥を行った。
(重量平均分子量)上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量を、東ソー社製GPC(構成装置は、CO―8020、SD―8022、DP―8020、AS―8020、RI―8020)を用いて以下条件で測定した。(カラム:Shodex製KD−806M 2本(カラムサイズ 直径8mm×30cm)、ガードカラム:GPC KD―G(直径4.6mm×1cm)、カラム温度40℃、検出器:RI、流量:0.6ml/分、注入圧:約1.3〜1.7MPa、展開液:DMF(臭化リチウム0.03M、リン酸0.03M)、試料濃度:0.2wt%、注入量:30μl、基準物質:ポリエチレンオキサイド)
(合成例2〜4)
KF8010及びBAPS―mの使用割合を表1記載の割合にした以外は合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂の製造を行った。
(合成例5)
BAPS―mの替わりにBAPSを用いた以外は合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂の製造を行った。
(合成例6)
KF8010の替わりに、X―22―9409を用い、BAPS―mを0.055モル、X―22―9409を0.045モル用いた以外は合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂の製造を行った。
(合成例7)
BPADAの替わりにODPAを用いた以外は合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂の製造を行った。
(合成例8)
BPADAの替わりにDSDAを用いた以外は合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂の製造を行った。
(合成例9)
窒素で加圧した、セパラブルフラスコ中に、重合用溶媒としてN,N’−ジメチルフォルムアミド(DMF)を最終の固形分濃度が30重量%になるように仕込み、これに、X―22―9409(0.05モル)及びBAPS−m(0.05モル)を投入して完全に溶解する。この溶液中に、BPADA(0.05モル)を投入して40℃に加熱して完全に溶解した後に、この溶液中に、BPADAとの合計量で全酸二無水物量のうちの90%にあたるODPA(0.04モル)を投入して40℃に加熱して3時間重合反応を行い、その後に10%分のODPAの粉末をポリアミド酸の分子量が6万以下になるように分子量を測定して確認しながら投入し、6万以上にならないように調整してポリアミド酸溶液を得た。
(ポリイミド樹脂の製造方法)
上記ポリアミド酸溶液をフッ素樹脂コートしたバットに受けて、真空オーブン中で、140℃で3時間加熱・乾燥して、230℃で3時間加熱・乾燥を行いポリイミド樹脂を得た。
(重量平均分子量)上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量を、東ソー社製GPC(構成装置は、CO―8020、SD―8022、DP―8020、AS―8020、RI―8020)を用いて以下条件で測定した。(カラム:Shodex製KD−806M 2本(カラムサイズ 直径8mm×30cm)、ガードカラム:GPC KD―G(直径4.6mm×1cm)、カラム温度40℃、検出器:RI、流量:0.6ml/分、注入圧:約1.3〜1.7MPa、展開液:DMF(臭化リチウム0.03M、リン酸0.03M)、試料濃度:0.2wt%、注入量:30μl、基準物質:ポリエチレンオキサイド)
(合成例10)
窒素で加圧した、セパラブルフラスコ中に、重合用溶媒としてN,N’−ジメチルフォルムアミド(DMF)を最終の固形分濃度が30重量%になるように仕込み、これに、KF−8010(0.02モル)及びBAPS−m(0.08モル)を投入して完全に溶解する。この溶液中に、BPADA(0.1モル)を投入して40℃に加熱して5時間重合反応を行いポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液の重量平均分子量は130000であった。
(ポリイミド樹脂の製造方法)
上記ポリアミド酸溶液に、β―ピコリンを0.3モル投入して完全に相溶させた後に、無水酢酸を3モル投入して相溶させた。このポリアミド酸溶液を油浴中で100℃に加熱して3時間加熱・還流を行った。
(ポリイミド樹脂の抽出)
上記ポリイミド樹脂溶液をポリアミド酸樹脂溶液の5倍量のイソプロパノ―ル中に添加してポリイミド樹脂の微粒子を得た。この微粒子を濾過して樹脂分を取り出して、イソプロパノ―ルで洗浄した後に、真空オーブン中で190℃/3時間、加熱乾燥を行った。
(重量平均分子量)上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量を、東ソー社製GPC(構成装置は、CO―8020、SD―8022、DP―8020、AS―8020、RI―8020)を用いて以下条件で測定した。(カラム:Shodex製KD−806M 2本(カラムサイズ 直径8mm×30cm)、ガードカラム:GPC KD―G(直径4.6mm×1cm)、カラム温度40℃、検出器:RI、流量:0.6ml/分、注入圧:約1.3〜1.7MPa、展開液:DMF(臭化リチウム0.03M、リン酸0.03M)、試料濃度:0.2wt%、注入量:30μl、基準物質:ポリエチレンオキサイド)
(実施例1〜9)
合成例1〜9のポリイミド樹脂の樹脂分を100重量部に対して、YH−434(東都化学(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、メチルトリグライムで希釈して、不揮発分30重量%の熱硬化性樹脂組成物を得た。
(比較例1)
合成例10のポリイミド樹脂の樹脂分を100重量部に対して、YH−434(東都化学(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、メチルトリグライムで希釈して、不揮発分30重量%の熱硬化性樹脂組成物を得た。
(物性値評価)
(耐溶剤性)
厚さ18μmの電解銅箔の粗面上に、得られた熱硬化性樹脂組成物を塗布して、120℃60分乾燥した後、160℃で30分加熱した。塗布膜(厚み10μm)付きの銅箔を室温でアセトン中に1時間浸漬させ、塗布外観の変化について下記基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観変化あり
×:全面外観に変化あり
(接着強度)
実施例1〜9および比較例1の熱硬化性樹脂組成物を、18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T;ジャパンエナジー製)に塗布し、120℃で90分乾燥して、銅箔表面に20μm厚みのフィルムを形成した。この銅箔積層板の銅箔とポリイミド樹脂との接着強度をJIS C−6471に従って金属パターン5mmを180度ピールで評価した。
(吸湿半田耐熱性)
銅箔を積層したFR−4基板上に、熱融着ポリイミドフィルムの物性値評価結果得られた熱硬化性樹脂組成物を塗布して、80℃30分乾燥した後、160℃で60分加熱して、塗布膜(厚み10μm)を形成した。この基板にロジン系フラックスを塗布し、予め260℃に加熱した半田槽に30秒間浸漬して、プロピレングリコールモノメチルエーテルでフラックスを洗浄した後、目視による熱硬化性樹脂組成物膜の膨れ・剥がれ・変色について下記基準で評価を行った。
○:外観変化なし
△:一部外観変化あり
×:全面外観に変化あり
以上の物性値評価結果を表2に纏める。
【0043】
ポリイミド樹脂の組成
【表1】

【0044】
熱硬化性樹脂組成物の物性値評価結果
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)
【化1】

(式中X、Yは一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す。同一であってもよいし、異種であってもよい。Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。l、m、nは1以上の整数であって、0.5≦l/m≦3.0である。)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、重量平均分子量が6万以下であることを特徴とするポリイミド樹脂、及び
【化2】

(B)熱硬化性樹脂
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A) 請求項1記載のポリイミド樹脂が、
(a)一般式(2)
【化3】

(式中Xは下記一般式群(1)より選ばれる2価の有機基を示す)
【化4】

で表される芳香族酸二無水物及び
(b)一般式(3)
【化5】

で表されるジアミン及び
(c)一般式(4)
【化6】

(式中Zはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる1種以上の基であり、Wはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、3―メチルフェニレン基から選ばれる1種以上の基である。nは1以上の整数である。)
であらわされるシリコンジアミンを必須成分として反応させて得られるポリイミド樹脂、及び
(B)熱硬化性樹脂
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分を1〜100重量部含有することを特徴とする請求項1〜2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、マイカ、シリカ、雲母、タルクの無機フィラーを含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−297512(P2007−297512A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126405(P2006−126405)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】