説明

新規スルホン酸塩及びその誘導体、光酸発生剤並びにスルホン酸塩の製造方法

【課題】ArFエキシマレーザー光等に対して高感度で、発生する酸(光発生酸)の酸性度が十分高く、かつレジスト被膜中での拡散長が適度に短く、またマスクパターンの疎密度への依存性が小さい新規な酸発生剤、当該酸発生剤を構成する新規なスルホン酸塩、当該酸発生剤から発生するスルホン酸、当該酸発生剤を合成する原料ないし中間体として有用なスルホン酸誘導体、並びに当該スルホン酸塩を製造するための方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有する酸発生剤によって、前記課題は解決する。


〔一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料の光酸発生剤等として好適に用いられる新規スルホン酸塩及びその誘導体並びにそれらスルホン酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)への短波長化により64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産が可能になった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造を実現するため、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが本格的に検討されており、高NAのレンズ(NA≧0.9)と組み合わせることにより65nmノードのデバイスの検討が行われている。その次の45nmノードのデバイス製作には波長157nmのF2レーザーの利用が候補に挙げられたが、スキャナーのコストアップ、光学系の変更、レジストの低エッチング耐性等に代表される多くの問題により適用が先送りされた。そして、F2リソグラフィーの代替として提案されたのがArF液浸リソグラフィーであり、現在その導入が始められつつある。また、45nm 以下のデザインルールでは、極端紫外線(EUV)リソグラフィーが有望視されている。
【0003】
このような露光波長に適したレジストとして、「化学増幅型レジスト材料」が注目されている。これは、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を形成する感放射線性酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という)を含有し、露光により発生した酸を触媒とする反応により、露光部と非露光部との現像液に対する溶解度を変化させてパターンを形成させるパターン形成材料である。
【0004】
ところで、化学増幅型レジスト材料における光酸発生剤に求められる特性として、放射線に対する透明性に優れ、かつ酸発生における量子収率が高いこと、発生する酸が十分強いこと、発生する酸の沸点が十分高いこと、発生する酸のレジスト被膜中での拡散距離(以下、「拡散長」という。)が適切であることなどが挙げられる。
【0005】
これらのうち、酸の強さ、沸点および拡散長に関しては、イオン性の感放射線性酸発生剤ではアニオン部分の構造が重要であり、また通常のスルホニル構造やスルホン酸エステル構造を有するノニオン性の感放射線性酸発生剤ではスルホニル部分の構造が重要となる。例えば、トリフルオロメタンスルホニル構造を有する感放射線性酸発生剤の場合、発生する酸は十分強い酸となり、フォトレジストとしての解像性能は十分高くなるが、酸の沸点が低く、また酸の拡散長が長いため、フォトレジストとしてマスク依存性が大きくなるという欠点がある。また、例えば10−カンファースルホニル構造のような大きな有機基に結合したスルホニル構造を有する感放射線性酸発生剤の場合は、発生する酸の沸点は十分高く、酸の拡散長が十分短いため、マスク依存性は小さくなるが、酸の強度が十分ではないために、フォトレジストとしての解像性能が十分ではない。
【0006】
一方、パーフルオロ−n−オクタンスルホン酸(PFOS)等のパーフルオロアルキルスルホニル構造を有する感放射線性酸発生剤は、十分な酸性度をもち、かつ酸の沸点や拡散長も概ね適当であるため、近年特に注目されている。
【0007】
しかしながら、PFOS等のパーフルオロアルキルスルホニル構造を有する感放射線性酸発生剤は、環境問題について考えた場合、一般に燃焼性が低く、また人体蓄積性も疑われており、米国のENVIRONMENTAL PROTECTION AGENCY による報告(非特許文献1参照)において、使用を規制する提案がなされている。したがって微細加工の分野では、このような欠点がなく、感放射線性酸発生剤としての機能にも優れた代替成分の開発が急務となっている。
【非特許文献1】"Perfluorooctyl Sulfonates ; Proposed Significant New Use Rule"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、活性放射線、特にArFエキシマレーザーあるいはEUVに代表される遠紫外線や電子線等に対する透明性に優れ、これらの活性放射線に感応する感放射線性酸発生剤として、燃焼性が比較的高く、また人体蓄積性にも問題がなく、しかも発生する酸の酸性度および沸点が十分高く、かつレジスト被膜中での拡散長が適度に短く、またマスクパターンの疎密度への依存性が小さい新規な酸発生剤、当該酸発生剤を構成する新規なスルホン酸塩、当該酸発生剤から発生するスルホン酸、当該酸発生剤を合成する原料ないし中間体として有用なスルホン酸誘導体、並びに当該スルホン酸塩を製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、下記一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物
【0010】
【化16】

【0011】
〔一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
を見出すに至った。
【0012】
中でも、下記一般式(5)で表されるスルホン酸
【0013】
【化17】

【0014】
〔一般式(5)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
が、フッ素含量が比較的少ない(4個)にもかかわらず、十分に強度の高い酸であり、レジストパターンの形成に有用であることを知見した。
【0015】
さらに下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物
【0016】
【化18】

【0017】
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。〕
が、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線等に感応し、一般式(5)で表されるスルホン酸を発生する前駆体化合物(これを「光酸発生剤」という)として作用し、従来品と比べ感度、解像度およびマスク依存性の一段と優れたレジストパターンを形成できることを知見した。
【0018】
下記一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物
【0019】
【化19】

【0020】
〔一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
もまた、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線等に感応し、一般式(5)で表されるスルホン酸を発生する光酸発生剤として作用し、従来品と比べ感度、解像度およびマスク依存性の一段と優れたレジストパターンを形成できることを知見した。
【0021】
一般式(1)で表される一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物は、主鎖に6つの炭素を有し、スルホン骨格側の2つの炭素上に4つのフッ素を有し(テトラフルオロエタンスルホン酸骨格)、スルホン骨格とは反対の末端にエステル構造(エステル骨格)を有することが大きな特徴である。すなわち、テトラフルオロエタンスルホン酸骨格によって酸の強度に顕著な増大がもたらされているうえ、エステル骨格がレジスト溶剤に対する溶解性及び樹脂との相溶性や発生するスルホン酸の沸点の制御をもたらしていると考えられる。ここで、導入するエステル基を工夫することによって、発生するスルホン酸の沸点や溶解性を調節することが可能となっている。
【0022】
さらに、本発明者らは、上述の光酸発生剤を製造するための共通の原料として有用な、下記一般式(4)で表されるスルホン酸塩、
【0023】
【化20】

【0024】
〔一般式(4)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。MはNa、KまたはLiを表す。〕
及び、下記一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物、
【0025】
【化21】

【0026】
〔一般式(6)において、Aはハロゲン原子を表す。〕
を見出した。
【0027】
またこれらの知見に関連して、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物
の製造方法の各発明を見出し、本発明の完成に到達した。
【0028】
すなわち、本願発明は下記の[発明1]〜[発明12]を含む。
[発明1]
下記一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物。
【0029】
【化22】

【0030】
〔一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
[発明2]
下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物。
【0031】
【化23】

【0032】
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。〕
[発明3]
+が下記一般式(i)で表されるスルホニウムカチオンである発明2に記載のスルホン酸オニウム塩化合物。
【0033】
【化24】

【0034】
〔一般式(i)において、R1、R2およびR3は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を表すか、あるいはR1、R2およびR3のうちの何れか2つ以上が相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成している。〕
[発明4]
+が下記一般式(ii)で表されるヨードニウムカチオンである発明2に記載スルホン酸オニウム塩
化合物。
【0035】
【化25】

【0036】
〔一般式(ii)において、R4およびR5は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を表すか、あるいはR4およびR5が相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成している。〕
[発明5]
下記一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【0037】
【化26】

【0038】
〔一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
[発明6]
下記一般式(4)で表されるスルホン酸塩。
【0039】
【化27】

【0040】
〔一般式(4)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。MはNa、KまたはLiを表す。〕
[発明7]
下記一般式(5)で表されるスルホン酸。
【0041】
【化28】

【0042】
〔一般式(5)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
[発明8]
下記一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物。
【0043】
【化29】

【0044】
〔一般式(6)において、Aはハロゲン原子を表す。〕
[発明9]
紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、発明7に記載のスルホン酸を発生することを特徴とする化学増幅レジスト材料用の感放射線性酸発生剤。
[発明10]
紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、発明2乃至発明4に記載のスルホン酸オニウム塩化合物もしくは発明5に記載のN−スルホニルオキシイミド化合物を含有することを特徴とする、化学増幅レジスト材料用の感放射線性酸発生剤。
[発明11]
トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−ヘキサン−1−スルホナート
[発明12]
次の4工程よりなる、下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物
【0045】
【化30】

【0046】
の製造方法。
第1工程: 6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールを、スルフィン化剤を用いてスルフィン化して、下記一般式(7)
【0047】
【化31】

【0048】
で表されるスルフィン酸塩を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を、酸化剤を用いて酸化し、下記一般式(4)
【0049】
【化32】

【0050】
で表されるスルホン酸塩を得る工程。
第3工程:第2工程で得られた一般式(4)で表されるスルホン酸塩を、下記一般式(8)で表される1価のオニウム塩
【0051】
【化33】

【0052】
と反応させ、下記一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩
【0053】
【化34】

【0054】
を得る工程。
第4工程:第3工程で得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を、
下記一般式(10)で表される酸もしくは酸ハライド
【0055】
【化35】

【0056】
もしくは下記一般式(11)で表される酸無水物
【0057】
【化36】

【0058】
と反応させ、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得る工程。
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。一般式(7)および一般式(4)において、MはNa、KまたはLiを表す。一般式(8)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義であり、X-は1価のアニオンを表す。一般式(9)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義である。一般式(10)において、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表し、Rは一般式(2)におけるRと同義である。一般式(11)におけるRは一般式(2)におけるRと同義である。〕
【発明の効果】
【0059】
本発明の含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物は、構造中のフッ素原子の割合が少ないために生態濃縮性、蓄積性に関する懸念が小さいが、露光により発生する酸の酸性度は十分高い。さらに、この光発生酸の構造は容易に調節でき、その結果、光発生酸の拡散抑制もしくは沸点の制御も可能となり、光発生酸の揮発や水への溶出といった問題を回避できる。
【0060】
また、本発明の含フッ素スルホン酸オニウム塩を光酸発生剤としてレジスト材料を形成させた場合、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線等に対して感応し、光酸発生剤として作用し、従来品と比べ感度、解像度およびマスク依存性の優れたレジストパターンを形成することができる。
【0061】
本発明は以上のような優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0063】
まず本発明に係る物質の関係について、下式1および式2に表す。
【0064】
【化37】

【0065】
[式1において、MはNa、KまたはLiを表す。Q+は1価のオニウムカチオンを示し、X-は1価のアニオンを表す。Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を示し、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。]
【0066】
【化38】

【0067】
[式2において、MはNa、KまたはLiを表す。Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を示し、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。Aはハロゲン原子を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。]
式1及び式2に表したように、本発明の、下記一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物、
【0068】
【化39】

【0069】
〔一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
は、いずれも6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールから誘導することができる。
[含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物]
まず、本発明の一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物について述べる。
【0070】
一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。
【0071】
ここでRについてより具体的に表すと、非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基等を挙げることができる。
【0072】
また、前記炭化水素基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、ヒドロキシル基やチオール基、アリール基やアルケニル基、もしくはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を含む有機基等を挙げることができる。さらには前記炭化水素基の同一炭素上の2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたケト基を例表することができる。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していても良い。
【0073】
前記置換基で置換された炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基としては、例えば、ベンジル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−フルオロプロピル基、トリフルオロアセチルメチル基、トリクロロアセチルメチル基、ペンタフルオロベンゾイルメチル基、アミノメチル基、シクロヘキシルアミノメチル基、ジフェニルホスフィノメチル基、トリメチルシリルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、2−アミノエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシカルボニルメチル基等を挙げることができる。
【0074】
炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ピナニル基、ツヨイル基、カルイル基、カンファニル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、ボルニルメチル基、ノルボルニルメチル基、アダマンチルメチル基等を挙げることができる。
【0075】
また、前記炭化水素基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、ヒドロキシル基やチオール基、アリール基やアルケニル基、もしくはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を含む有機基等を挙げることができる。さらには前記炭化水素基の同一炭素上の2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたケト基を例表することができる。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していても良い。
【0076】
前記置換基で置換された炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基としては、例えば、4−フルオロシクロヘキシル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、4−メトキシカルボニルシクロヘキシル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基、3−メトキシカルボニル−1−アダマンチル基、3−ヒドロキシカルボニル−1−アダマンチル基、3−ヒドロキシメチル−1−アダマンタンメチル基等を挙げることができる。
【0077】
炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基等を挙げることができる。前記アリール基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、ヒドロキシル基やチオール基、アルキル基、もしくはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を含む有機基等を挙げることができる。置換された炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、o−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、3,5−ビス(ヒドロキシ)フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、p−ブロモフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ヨードフェニル基等を挙げることができる。
【0078】
炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、単環式もしくは多環式ラクトンを挙げることができる。この中で、単環式もしくは多環式ラクトンとしてはγ−ブチロラクロン、γ−バレロラクトン、アンゲリカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、3−メチル−4−オクタノライド(ウイスキーラクトン)、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−ジャスモラクトン(7−デセノラクトン)、δ−ヘキサラクトン、4,6,6(4,4,6)−トリメチルテトラヒドロピラン−2−オン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−2−デセノラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、δ−テトラデカラクトン、ラクトスカトン、ε−デカラクトン、ε−ドデカラクトン、シクロヘキシルラクトン、ジャスミンラクトン、シスジャスモンラクトン、メチルγ−デカラクトンあるいは下記のものが挙げられる。
【0079】
【化40】

【0080】
(点線は結合位置を表す。)
また、前記ヘテロ環状有機基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、ヒドロキシル基やチオール基、アリール基やアルケニル基、もしくはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を含む有機基等を挙げることができる。さらには前記ヘテロ環状有機基の同一炭素上の2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたケト基を例表することができる。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していても良い。
置換された炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基としては、例えば、2−ブロモフリル基、3−メトキシチエニル基等を挙げることができる。
【0081】
従って、一般式(1)で表される構造は、より具体的には下記のように例表することができる。
【0082】
【化41】

【0083】
【化42】

【0084】
[光酸発生剤]
本発明の光酸発生剤は、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、下記一般式(5)で表されるスルホン酸
【0085】
【化43】

【0086】
〔一般式(5)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
を発生するもので、化学増幅レジスト材料用の光酸発生剤として用いられるものである。
【0087】
一般式(5)におけるRの具体的構造は、一般式(1)で例表した具体的構造を再び例表することができる。
【0088】
上述した本発明の一般式(5)で表されるスルホン酸は、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物、一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物に対して、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線等を照射することによって、生成させることができる(式3)。
【0089】
【化44】

【0090】
〔式3中の、一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
従って、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物及び一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物は光酸発生剤として使用できる。
【0091】
本発明の光酸発生剤は、上記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物及び一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物を有効成分として含有する。本発明の光酸発生剤は、酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂(感光性樹脂)と混合することで、感光性樹脂組成物(レジスト材料)を形成し、使用に供することができる。
【0092】
[スルホン酸オニウム塩化合物]
本発明の光酸発生剤の1つである、スルホン酸オニウム塩化合物は、下記一般式(2)で表されるものである。
【0093】
【化45】

【0094】
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。〕
一般式(2)におけるRの具体的構造は、一般式(1)で例表した具体的構造を再び例表することができる。
【0095】
一般式(2)における、Q+ の1価のオニウムカチオンとしては、例えば、O、S、Se、N、P、As、Sb、Cl、Br、I等のオニウムカチオンを挙げることができる。これらのオニウムカチオンのうち、SおよびIのオニウムカチオンが好ましい。
【0096】
一般式(2)において、Q+ の1価のオニウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(i)または一般式(ii)で表されるものを挙げることができる。
【0097】
【化46】



【0098】
〔一般式(i)において、R1、R2およびR3は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基を表すか、あるいはR1、R2およびR3のうちの何れか2つ以上が相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成している。〕
【0099】
【化47】

【0100】
〔一般式(ii)において、R4およびR5は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基を表すか、あるいはR4およびR5が相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成している。〕
+ の1価のオニウムカチオン部位は、例えば、「J. V. Crivello , Advances in Polymer Science 62 , 49 , 1984」に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
【0101】
好ましい1価のオニウムカチオンとしては、例えば、下記式(i−1)〜(i−64)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(ii−1)〜(ii−39)で表されるヨードニウムカチオン等を挙げることができる。
【0102】
【化48】

【0103】
【化49】

【0104】
【化50】

【0105】
【化51】

【0106】
【化52】

【0107】
【化53】

【0108】
これらの1価のオニウムカチオンのうち、例えば、前記式(i-1)、式(i-2)、式(i-6)、式(i-8)、式(i-13)、式(i-19)、式(i-25)、式(i-27)、式(i-29)、式(i-51)または式(i-54)で表されるスルホニウムカチオン;前記式(ii-1)または式(ii-11)で表されるヨードニウムカチオン等が好ましい。
【0109】
さらに、好適なアニオンと好適な1価のオニウムカチオンの組み合わせからなる、好適なスルホン酸オニウム塩化合物として、以下の化合物を例表することができる。
【0110】
(a)トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナート
【0111】
【化54】

【0112】
(b)ジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナート
【0113】
【化55】

【0114】
(c)トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシヘキサン−1−スルホナート
【0115】
【化56】

【0116】
(d)トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(o−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナート
【0117】
【化57】

【0118】
(e)トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(p−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナート
【0119】
【化58】

【0120】
一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物の製造方法については後述する。
[N−スルホニルオキシイミド化合物]
本発明の光酸発生剤の1つである、N−スルホニルオキシイミド化合物は、一般式(3)で表されるものである。
【0121】
【化59】

【0122】
〔一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
一般式(3)におけるRの具体的構造は、一般式(1)で例表した具体的構造を再び例表することができる。
【0123】
一般式(3)において、各式中のスルホニルオキシ基(SO2 −O−)に結合した好ましいイミド基としては、例えば、下記式(iii-1) 〜(iii-9) の基等を挙げることができる。
【0124】
【化60】


【0125】
これらのイミド基のうち、例えば、前記式(iii -1) 、式(iii -4) 、式(iii -8) または式(iii -9) で表される基等が好ましい。
【0126】
一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物の製造方法については後述する。
[スルホン酸塩]
本発明における光酸発生剤の1つである、スルホン酸オニウム塩化合物の原料化合物として有用なスルホン酸塩は、下記一般式(4)で表されるものである。
【0127】
【化61】

【0128】
〔一般式(4)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。MはNa、KまたはLiを表す。〕
一般式(4)におけるRの具体的構造は、一般式(1)で例表した具体的構造を再び例表することができる。
【0129】
一般式(4)におけるMとしてはNa、KまたはLiを表したが、これは合成の簡便さ、スルホン酸の単離のしやすさを考慮してのものである。これ以外の金属、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオンまたはアンモニウムイオン等を用いることも可能であり、安定なスルホン酸として存在できるものであれば特に制限なく使用することが可能である。
【0130】
該スルホン酸塩を前述の光酸発生剤の原料として使用する場合、Rは光酸発生剤のRに一致させればよい。
【0131】
[スルホニルハライド化合物]
本発明における光酸発生剤の1つである、N−スルホニルオキシイミド化合物の原料化合物として有用なスルホニルハライド化合物は、下記一般式(6)で表されるものである。
【0132】
【化62】

【0133】
〔一般式(6)において、Aはハロゲン原子を表す。〕
一般式(6)におけるAとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を例表することができる。この中でも塩素もしくは臭素が好ましく、合成のしやすさから塩素が特に好ましい。
【0134】
[スルホン酸オニウム塩化合物の製造方法]
下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物
【0135】
【化63】

【0136】
は、以下に表す4工程を経て製造することができる(式1参照)。
第1工程: 6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールを、スルフィン化剤を用いてスルフィン化して、下記一般式(7)
【0137】
【化64】

【0138】
で表されるスルフィン酸塩を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を、酸化剤を用いて酸化し、下記一般式(4)
【0139】
【化65】

【0140】
で表されるスルホン酸塩を得る工程。
第3工程:第2工程で得られた一般式(4)で表されるスルホン酸塩を、下記一般式(8)で表される1価のオニウム塩
【0141】
【化66】

【0142】
と反応させ、下記一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩
【0143】
【化67】

【0144】
を得る工程。
第4工程:第3工程で得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を、
下記一般式(10)で表される酸もしくは酸ハライド
【0145】
【化68】

【0146】
もしくは下記一般式(11)で表される酸無水物
【0147】
【化69】

【0148】
と反応させ、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得る工程。
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。一般式(7)および一般式(4)において、MはNa、KまたはLiを表す。一般式(8)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義であり、X-は1価のアニオンを表す。一般式(9)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義である。一般式(10)において、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表し、Rは一般式(2)におけるRと同義である。一般式(11)におけるRは一般式(2)におけるRと同義である。〕
以下、各工程に関して詳細に説明する。まず、本発明の第1工程について説明する。第1工程は、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールを、スルフィン化剤を用いてスルフィン化して、一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を得る工程(スルフィン化工程)である。
【0149】
本工程で使用されるスルフィン化剤は、下記の一般式(13)
【0150】
【化70】

【0151】
(前記一般式(13)において、S1はS24、HOCH2SO2、SO4またはHSO4を表し、mおよびnは整数を表し、pは0(零)もしくは整数を表す。M1はLi、Na、KもしくはNH4を表す。)
で表されるものが使用できるが、具体的には亜二チオン酸リチウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸アンモニウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸リチウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸カリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸アンモニウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等が例表される。この中で亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウムが好ましく、亜二チオン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0152】
スルフィン化剤の6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールに対するモル比は、通常、0.5〜10、好ましくは0.9〜5.0であり、特に好ましくは1.0〜2.0である。
【0153】
本反応は空気中でも実施することができるが、空気中の水分によってスルフィン化剤が分解する場合がある。したがって窒素やアルゴン雰囲気で実施するのが好ましい。
【0154】
本反応は、塩基を添加しなくても進行する場合があるが、添加することによって反応を促進させることができるため、通常添加する。添加される塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等挙げることができ、好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムである。
【0155】
この反応は、好ましくは有機溶媒と水との混合溶媒中で行われる。前記有機溶媒としては、例えば、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の、水との相溶性のよい溶媒が好ましく、さらに好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等であり、特に好ましくはアセトニトリルである。
【0156】
有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100重量部に対して、通常、5重量部以上、好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20〜90重量部である。
【0157】
反応温度は、通常、40〜200℃、好ましくは60〜100℃であり、反応時間は、通常、0.5〜120時間、好ましくは2〜72時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールが消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。反応時間を費やしても6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールが消費されない場合には、反応液を二層分離し、水層を廃棄した後に、再度水、スルフィン化剤そして塩基を添加して、反応を再開させることができる。なお、反応温度が有機溶媒あるいは水の沸点より高い場合は、オートクレーブなどの耐圧容器を使用する。
【0158】
ところで、スルフィン化剤のカチオン部と無機塩基のカチオン部が等しい場合(例えば、「スルフィン化剤として亜二チオン酸ナトリウム、無機塩基として炭酸ナトリウムを使用する場合」や「スルフィン化剤として亜硫酸カリウム、無機塩基として炭酸水素カリウムを使用する場合」等)には、一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を単一の生成物として得ることができる。この場合は反応液を濃縮等で処理した後、再結晶等の方法で更に精製することも可能である。
【0159】
スルフィン化剤のカチオン部と無機塩基のカチオン部が異なる場合には、厳密には単一の生成物とはならず、一般式(7)において、スルフィン化剤由来のカチオンと無機塩基由来のカチオンの混合物となる。カチオンの比率は使用するスルフィン化剤と無機塩基の比や、反応条件によって異なる。このような混合物の場合は一般に再結晶等による精製は困難になる。このようなカチオン混合物のまま次の工程に供することは可能であるが、分析や精製等が困難になることから、塩基として無機塩基を使用する場合には、スルフィン化剤のカチオン部と無機塩基のカチオン部が同じものを使用することが好ましい。
【0160】
次に、本発明の第2工程について説明する。第2工程は、第1工程で得られた一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を酸化剤と反応させ、一般式(4)で表されるスルホン酸塩を得る工程(酸化工程)である。
【0161】
本工程で使用される酸化剤としては、過酸化水素のほか、メタクロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキシ硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、メタヨウ素酸ナトリウム、クロム酸、二クロム酸ナトリウム、ハロゲン、ヨードベンゼンジクロリド、ヨードベンゼンジアセテート、酸化オスミウム(VIII)、酸化ルテニウム(VIII)、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、酸素ガス、オゾンガス等を挙げることができ、好ましくは、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド等である。
【0162】
酸化剤の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩に対するモル比は、通常、0.9〜10.0、好ましくは1.0〜2.0である。原料のスルフィン酸塩類が粗体であり、正確なモル量がわからない場合には、スルフィン化前の6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールのモル量に対して酸化剤を加えれば良い。
【0163】
また、前記酸化剤と共に遷移金属触媒を併用することもできる。前記遷移金属触媒としては、例えば、タングステン酸二ナトリウム、塩化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、酸化セレン(IV)等を挙げることができ、好ましくはタングステン酸二ナトリウムである。
【0164】
遷移金属触媒の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩に対するモル比は、通常、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.5、さらに好ましくは0.001〜0.1である。
【0165】
さらに、前記酸化剤および遷移金属触媒に加え、反応液のpH調整の目的で、緩衝剤を使用することもできる。前記緩衝剤としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等を挙げることができる。緩衝剤の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩に対するモル比は、通常、0.01〜2.0、好ましくは0.03〜1.0、さらに好ましくは0.05〜0.5である。
【0166】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。前記反応溶媒としては、水や、例えば、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等であり、特に好ましくは水、メタノールである。
【0167】
また必要に応じて、有機溶媒と水とを併用することもでき、その場合の有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100重量部に対して、通常、5重量部以上、好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20〜90重量部である。反応溶媒の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩1重量部に対する使用量は、通常、1〜100重量部、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0168】
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは5〜40℃であり、反応時間は、通常、0.1〜72時間、好ましくは0.5〜24時間であり、さらに好ましくは0.5〜12時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(7)で表されるスルフィン酸塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0169】
尚、反応液をそのまま濃縮する程度の処理で次工程に供することもできるし、場合によっては再結晶等で精製することも可能である。
【0170】
次いで、本発明の第3工程について説明する。第3工程は、第2工程で得られた一般式(4)で表されるスルホン酸塩を、下記一般式(8)で表される1価のオニウム塩
【0171】
【化71】

【0172】
と反応させ、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を得る工程(オニウム塩交換工程)である。
【0173】
一般式(8)に含まれるオニウムカチオンQ+については、一般式(2)におけるQ+と同じものを使用することができる。詳細な構造は上述したとおりである。
【0174】
次いで、一般式(8)におけるX-の1価のアニオンとしては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、HSO4-、H2PO4-、BF4-、PF6-、SbF6-、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、フルオロカルボン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等を挙げることができ、好ましくは、Cl-、Br-、HSO4-、BF4-、脂肪族スルホン酸イオン等であり、さらに好ましくは、Cl-、Br-、HSO4-である。
【0175】
一般式(8)で表される一価のオニウム塩の、一般式(4)で表されるスルホン酸塩に対するモル比は、通常、0.5〜10.0、好ましくは0.8〜2.0であり、さらに好ましくは0.9〜1.2である。
【0176】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。前記反応溶媒としては、水や、例えば、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等であり、特に好ましくは水である。
【0177】
また必要に応じて、水と有機溶媒とを併用することができ、この場合の有機溶媒の使用割合は、水と有機溶媒との合計100重量部に対して、通常、5重量部以上、好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20〜90重量部である。反応溶媒の使用量は、対イオン交換前駆体1重量部に対して、通常、1〜100、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0178】
反応温度は、通常、0〜80℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(4)で表されるスルホン酸塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0179】
このようにして得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩は、必要に応じて、有機溶剤で洗浄したり、抽出して精製したりすることもできる。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と混合しない有機溶剤が好ましい。一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩は、また、必要に応じて、再結晶や再沈殿で精製することもできる。
【0180】
次に、本発明の第4工程について説明する。第4工程は、第3工程で得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を、一般式(10)で表される酸もしくは酸ハライドもしくは一般式(11)で表される酸無水物と反応させ、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得る工程(エステル化工程)である。
【0181】
一般式(10)もしくは一般式(11)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表すが、具体的構造は、一般式(1)で例表した構造を再び例表することができる。また、一般式(10)において、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。
【0182】
一般式(10)で表されるカルボン酸類およびカルボン酸ハライド類、もしくは一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類と、第3工程で得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を反応させ、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を製造する具体的な方法としては、これまで公知となっているエステル化法のいずれも採用することができ、特に制限は無い。
【0183】
エステル化方法としては、一般式(10)で表されるカルボン酸(X’=OH)と、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩とを酸触媒の存在下脱水縮合させる方法(フィッシャー・エステル合成反応)や、一般式(10)で表されるカルボン酸ハライド類(X’=Cl、Br、I、F)もしくは一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類と、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩とを反応させる方法などが例示できる。
【0184】
一般式(10)で表されるカルボン酸(X’=OH)を用いる場合、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩に対して作用させる、一般式(10)で表されるカルボン酸の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩1モルに対して、0.1〜5モルであり、好ましくは、0.2〜3モルであり、より好ましくは、0.5〜2モルある。カルボン酸の使用量として、0.8〜1.5モルであることは、特に好ましい。
【0185】
反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒が用いられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0186】
反応温度は特に制限はなく、通常、0〜200℃の範囲であり、好ましくは、20〜180℃であり、より好ましくは、50〜150℃である。反応は攪拌しながら行うのが好ましい。
【0187】
反応時間は反応温度にも依存するが、通常、数分〜100時間であり、好ましくは、30分〜50時間であり、より好ましくは、1〜20時間であるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である2−ブロモ−2,2−ジフルオロエタノールが消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0188】
本反応においては、通常は酸触媒としてp−トルエンスルホン酸などの有機酸、および/または、硫酸等の無機酸を添加する。あるいは脱水剤として1,1'−カルボニルジイミダゾール、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド等を添加してもよい。かかる酸触媒の使用量としては、特に制限はないが、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩1モルに対して、0.0001〜10モルであり、好ましくは、0.001〜5モルであり、より好ましくは、0.01〜1.5モルである。
【0189】
酸触媒を用いたエステル化反応は、ディーンスターク装置を用いるなどして、脱水しながら実施すると、反応時間が短縮化される傾向があることから好ましい。
【0190】
反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製することもできる。
【0191】
一方、一般式(10)で表されるカルボン酸ハライド類(X’=Cl、Br、I、F)もしくは一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類を用いる場合、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩に対して作用させる、一般式(10)で表されるカルボン酸ハライド類もしくは一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩1モルに対して、0.1〜5モルであり、好ましくは、0.2〜3モルであり、より好ましくは、0.5〜2モルある。カルボン酸ハライド類もしくはカルボン酸無水物類の使用量として、0.8〜1.5モルであることは、特に好ましい。
【0192】
反応は、無溶媒で行ってもよく、あるいは反応に対して不活性な溶媒中で行ってもよい。かかる溶媒としては、反応不活性な溶媒であれば特に限定するものではなく、例えば、水、有機溶媒あるいはこれらの混合系で行ってもよい。該有機溶媒としては、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソクロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の極性溶媒などが例表される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0193】
反応温度は特に制限はなく、通常、−78〜150℃の範囲であり、好ましくは、−20〜120℃であり、より好ましくは、0〜100℃である。
【0194】
反応時間は反応温度にも依存するが、通常、数分〜100時間であり、好ましくは、30分〜50時間であり、より好ましくは、1〜20時間であるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0195】
一般式(10)で表されるカルボン酸ハライド類を使用する場合には、無触媒下、副生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素など)を、反応系外に除去しながら行ってもよく、あるいは、脱ハロゲン化水素剤(受酸剤)を用いて行ってもよく、一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類を用いる場合には、副生する酸を捕捉するための受酸剤を用いて行っても良い。
【0196】
該受酸剤としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等の有機塩基、あるいは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機塩基などが例表される。かかる受酸剤の使用量としては、特に制限はないが、一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩1モルに対して、0.05〜10モルであり、好ましくは、0.1〜5モルであり、より好ましくは、0.5〜3モルである。
【0197】
反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製することもできる。
【0198】
[N−スルホニルオキシイミド化合物の製造方法]
下記一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物
【0199】
【化72】

【0200】
〔一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
は、以下に表す4工程を経て製造することができる(式2参照)。
第1工程: 6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールを、スルフィン化剤を用いてスルフィン化して、下記一般式(7)
【0201】
【化73】

【0202】
で表されるスルフィン酸塩を得る工程(スルフィン化工程)。
第2工程:第1工程で得られた一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化し、下記一般式(6)
【0203】
【化74】

【0204】
〔一般式(6)において、Aはハロゲン原子を表す。〕
で表されるスルホニルハライド化合物を得る工程。
第3工程:第2工程で得られた一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物を、下記一般式(10)で表される酸もしくは酸ハライド
【0205】
【化75】

【0206】
もしくは下記一般式(11)で表される酸無水物
【0207】
【化76】

【0208】
と反応させ、下記一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物
【0209】
【化77】

【0210】
〔一般式(14)において、Rは一般式(3)におけるRと同義であり、Aは一般式(6)におけるAと同義である。〕
を得る工程。
第4工程:第3工程で得られた一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物を、下記一般式(12)で表されるN−ヒドロキシジカルボキシイミド
【0211】
【化78】

【0212】
〔一般式(12)において、R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
と反応させ、一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物を得る工程。
【0213】
以下、各工程に関して説明する。第1工程のスルフィン化工程は、上述したスルホン酸オニウム塩化合物の製造方法の第1工程で述べたとおりである。
【0214】
第2工程のハロゲン化に関しては、これまで公知となっているハロゲン化法のいずれも採用することができ、特に制限は無い。ハロゲン化の中でも、塩素化が簡便な方法である。
【0215】
一般式(7)で表されるスルフィン酸塩と塩素化剤との反応は、例えば、「D. D. DesMarteau, Inorganic Chemistry, Vol.32, 5007, 1993」に記載されている一般的な方法に準じて行うことができる。前記反応に際しては、例えば、塩素ガスを反応液中に吹き込むなどの方法を採用することができる。
【0216】
反応時の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩に対する塩素化剤の使用量は、通常、大過剰量である。
【0217】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。反応溶媒としては、例えば、水や、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が好ましく、特に好ましくは水である。
【0218】
反応溶媒の一般式(7)で表されるスルフィン酸塩100重量部に対する使用量は、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。また必要に応じて、水と前記有機溶媒とを併用することもでき、その場合の有機溶媒の使用割合は、水と有機溶媒との合計100重量部に対して、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜90重量部である。
【0219】
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは5〜40℃であり、反応時間は、通常、5分〜12時間、好ましくは10分〜5時間であるが、核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(7)で表されるスルフィン酸塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0220】
このようにして得られた一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物は、必要に応じて、蒸留や再結晶によって精製することもできる。
【0221】
次に第3工程のエステル化であるが、上述したスルホン酸オニウム塩化合物の製造方法の第4工程で述べた方法と同様にして実施できる。しかしながら、一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物は反応性が高く、自己縮合しやすいので、一般式(10)で表されるカルボン酸(X’=OH)を用いて、酸触媒の存在下脱水縮合させる方法(フィッシャー・エステル合成反応)は専ら困難であり、一般式(10)で表されるカルボン酸ハライド類(X’=Cl、Br、I、F)もしくは一般式(11)で表されるカルボン酸無水物類を用いる方法が好ましい。
【0222】
第4工程は、第3工程で得られた一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物と、一般式(12)で表されるN−ヒドロキシジカルボキシイミドを塩基触媒の存在下、反応溶媒中で反応させる工程である。
【0223】
反応に際して、N−ヒドロキシイミド化合物の一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物に対するモル比は、通常0.1〜10.0、好ましくは0.3〜5.0、さらに好ましくは0.5〜2.0である。
【0224】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。反応溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等である。
【0225】
反応溶媒の一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物100重量部に対する使用量は、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。
【0226】
前記塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジ−i−プロピル・エチルアミン、2,6−ルチジン、N,N−ジエチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等が好ましく、さらに好ましくはトリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等である。
【0227】
塩基触媒の一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物に対するモル比は、通常1.0〜10.0、好ましくは1.5〜5.0、さらに好ましくは1.5〜3.0である。
【0228】
反応温度は、通常、0〜80℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は、通常、5分〜6時間、好ましくは10分〜2時間であるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(14)で表されるスルホニルハライド化合物が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0229】
反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製することもできる。
【実施例】
【0230】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例、及び参考例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0231】
スルホン酸オニウム塩の合成
[実施例1−1]
2−(4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル)−マロン酸 ジエチルエステルの製造
【0232】
【化79】

【0233】
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム320g(60%ミネラルオイル含有品)(7.17mol)のジメチルホルムアミド1900mLに添加し、マロン酸ジエチル1208g(7.17mol)を氷浴下で添加した。1時間攪拌後、この溶液に1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロ−4−ヨード−ブタン2400g(7.17mol)を反応液が100℃以下になるよう制御しながら添加した。1時間攪拌後、1N塩酸水溶液を1000mL添加し、ジイソプロピルエーテルで抽出した。有機層を濃縮し、減圧蒸留(115−116℃/0.53kPa)により、目的物である2−(4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル)−マロン酸 ジエチルエステル1940g(収率74%、GC純度89%)を淡黄色液体として得た。
【0234】
[2−(4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル)−マロン酸 ジエチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.23(6H,t,J=7.1Hz),2.05−2.18(2H,m),2.20−2.40(2H,m),3.59(1H,t,J=7.0Hz),4.00−4.22(4H, m).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−66.2(2F,s),−112.0(2F,brt,J=18Hz).
[実施例1−2]6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン酸の製造
【0235】
【化80】

【0236】
上記で得られた2−(4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル)−マロン酸ジエチルエステル1940g(5.29mol)に15%水酸化ナトリウム水溶液7000g(26.4mol)を添加し、2時間加熱還流させた。室温まで冷却後、氷浴下濃塩酸(36%)を2900g(29.1mol)添加し、ジイソプロピルエーテルで抽出した。溶媒を留去した後、残渣を170℃に加熱し、目的物である6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン酸1338g(収率95%)を褐色液体として得た。
【0237】
[6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン酸の物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.86−1.99(2H,m),2.05−2.24(2H,m),2.42−2.52 (2H,m).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−66.2(2F,s),−112.6(2F,brdd,J=18Hz,15Hz.
[実施例1−3]6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサノイルクロリドの製造
【0238】
【化81】

【0239】
窒素雰囲気下、上記で得られた6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン酸1300g(4.87mol)に塩化チオニル780g(6.33mol)を添加し、50℃で4時間攪拌した。減圧蒸留(110℃/1kPa)により、目的物である6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサノイルクロリド1223g(収率88%、GC純度91%)を淡黄色液体として得た。
[6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサノイルクロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.97−1.05(2H,m),2.09−2.24(2H,m),3.02(2H,t, J=7.1Hz).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−66.4(2F,brs),−112.6(2F,brdd,J=21Hz,9Hz).
[実施例1−4]6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールの製造
【0240】
【化82】

【0241】
窒素雰囲気下、上記で得られた6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサノイルクロリド500g(1.75mol)をエチレングリコールジメチルエーテル1500mLに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム53g(1.40mol)を添加した。50℃で2時間攪拌後、反応液を希硫酸水溶液に添加し、ジイソプロピルエーテルで抽出した。(ここで、反応液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、目的生成物6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールと、副生成物5,5,6,6−テトラフルオロ−ヘキサン−1−オールの生成比は100%:0%であった。表1参照)溶媒留去後、減圧蒸留(113℃/3.8kPa)により、目的物である6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オール332g(収率94%、GC純度99.3%)を無色透明液体として得た。
【0242】
[6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.53−1.67(4H,m),1.98−2.10(2H,m),3.60(2H,t, J=6.1Hz).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−66.1(2F,s),−112.6(2F,t,J=16Hz).
[実施例1−5]1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルフィン酸ナトリウムの製造
【0243】
【化83】

【0244】
温度計、コンデンサーを備えたガラスのフラスコに1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサノール100g(0.39mol)、炭酸水素ナトリウム52.4g(0.62mol)、亜ジチオン酸ナトリウム94.0g(0.54mol)、アセトニトリル350mlおよび水350mlを投入し55℃で4時間撹拌した。19F NMRにて反応終了を確認した後、室温まで冷却し2層の反応液から有機層を分離した。続いて、有機層の濃縮および乾燥をおこない白色固体として1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシヘキサン−1−スルフィン酸ナトリウム(以下、「化合物(7−a)」とする。)120g(収率67%、純度56%)が得られた。
[1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシヘキサン−1−スルフィン酸ナトリウムの物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):3.37−3.36(t,2H),2.21−2.08(m,2H),1.51−1.41(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−111.2(s,2F)、−130.3(s,2F).
[実施例1−6]1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウムの製造
【0245】
【化84】

【0246】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えたガラスのフラスコに純度56%の化合物(7−a)110g(0.23mol)、タングステン酸(IV)ナトリウム二水和物を触媒量及び水200mlを投入し撹拌した。その後、氷浴にて30%過酸化水素水44.0g(0.39mol)を滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を継続し、19F NMRにて反応終了を確認した。反応液を濃縮後、ジイソプロピルエーテル200mlで洗浄した。続いてろ過し、得られた固体を乾燥後、白色固体として1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム(以下、「化合物(8−a)」とする。)93.8g(収率>99%、純度67%)が得られた。
[1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシヘキサン−1−スルホン酸ナトリウムの物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):3.36(t,2H),2.14(m,2H),1.46(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−111.8(s,2F)、−117.2(s,2F).
[実施例1−7]トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナートの製造
【0247】
【化85】

【0248】
温度計を備えたガラスのフラスコに純度67%の化合物(8−a)90.0g(0.21mol)、クロロホルム350mlを加え攪拌した。続いて、この溶液にトリフェニルスルホニウムクロリド65.7g(0.22mol)、水350mlの水溶液を加えて1時間撹拌した。その後、2層となった反応液の有機層を水300mlで5回洗浄した。有機層の溶媒を50%程度留去し、58%クロロホルム溶液としてトリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナート(以下、「化合物(10−a)」とする。)157g(収率84%、純度58%)が得られた。
[トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.72−7.61(m,15H),3.49(t,2H),2.26−2.14(m,2H),1.58−1.43(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−112.90〜―112.98(m,2F)、−117.6(s,2F).
[実施例1−8]トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナートの製造
【0249】
【化86】

【0250】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えたガラスのフラスコに化合物(10−a)の58%クロロホルム溶液150g(0.16mol)、1−アダマンタンカルボニルクロリド63.5g(0.32mol)、クロロホルム350mlを加え攪拌した。その後、氷浴にてトリエチルアミン62.7g(0.62mol)を滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌し、19F NMRにて反応終了を確認した。続いて、反応液に水300mlを加えた後、水層を除去した。得られた有機層を水300mlで4回洗浄した後、濃縮した。さらに得られた褐色の液体をジイソプロピルエーテル200mlで3回洗浄した後、クロロホルム100mlに溶解させ、種晶を添加したジイソプロピルエーテル500mlに滴下した。この溶液をろ過後、固体を乾燥し、淡褐色固体としてトリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナート90g(収率83%、純度98%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−1)とする。
[トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.75−7.65(m,15H),4.02−3.99(m,2H),2.39−2.34(m,2H),1.97(s,3H),1.84(s,6H),1.66(s,6H),1.63(d,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−113.9〜―114.1(m,2F)、−118.2(s,2F).
[実施例2−1]ジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナートの製造
【0251】
【化87】

【0252】
温度計を備えたガラスのフラスコに純度67%の化合物(8−a)90.0g(0.21mol)、クロロホルム350mlを加え攪拌した。続いて、この溶液にジフェニルヨードニウムクロリド69.0g(0.22mol)、水350mlの水溶液を加えて1時間撹拌した。その後、2層となった反応液の有機層を水300mlで5回洗浄した。有機層の溶媒を50%程度留去し、60%クロロホルム溶液としてジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナート(以下、「化合物(10−b)」とする。)160g(収率82%、純度60%)が得られた。
[ジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.73−7.60(m,10H),3.48(t,2H),2.26−2.13(m,2H),1.59−1.44(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−112.92〜―112.97(m,2F)、−117.2(s,2F).
[実施例2−2]ジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナートの製造
【0253】
【化88】

【0254】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えたガラスのフラスコに化合物(10−b)の60%クロロホルム溶液160g(0.18mol)、1−アダマンタンカルボニルクロリド71.4g(0.36mol)、クロロホルム350mlを加え攪拌した。その後、氷浴にてトリエチルアミン65.7g(0.65mol)を滴下した。滴下終了後、室温にて12時間攪拌し、19F NMRにて反応終了を確認した。続いて、反応液に水300mlを加えた後、水層を除去した。得られた有機層を水300mlで4回洗浄した後、濃縮した。さらに得られた褐色の液体をジイソプロピルエーテル200mlで3回洗浄した後、クロロホルム100mlに溶解させ、種晶を添加したジイソプロピルエーテル500mlに滴下した。この溶液をろ過後、固体を乾燥し、淡褐色固体としてジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナート110g(収率85%、純度97%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−2)とする。
[ジフェニルヨードニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)ヘキサン−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.73−7.60(m,10H),4.02−4.00(m,2H),2.38−2.33(m,2H),1.98(s,3H),1.83(s,6H),1.66(s,6H),1.62(d,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−114.0〜―114.1(m,2F)、−118.3(s,2F).
[実施例3]トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシヘキサン−1−スルホナートの製造
【0255】
【化89】

【0256】
化合物(10−a)の58%クロロホルム溶液15g(0.016mol)と塩化アセチル2.5ml(0.035mol)を用い、実施例1−8と同様の操作を行った。その結果、淡褐色粘稠液体としてトリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシヘキサン−1−スルホナート8.29g(収率90%、純度97%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−3)とする。
[トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシヘキサン−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.65−7.55(m,15H),3.51(t,2H),2.23−2.13(m,2H),1.97(s,3H),1.67−1.49(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−114.2〜―114.4(m,2F)、−117.9(m,2F).
[実施例4]トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(o−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナートの製造
【0257】
【化90】

【0258】
化合物(10−a)の58%クロロホルム溶液15g(0.016mol)と塩化(o−ヒドロキシ)ベンゾイル5.0g(0.032mol)を用い、実施例1−8と同様の操作を行った。その結果、淡褐色固体としてトリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(o−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナート7.8g(収率75%、純度98%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−4)とする。
[トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(o−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.78−7.76(m,1H),7.72−7.62(m,15H),7.41−7.36(m,1H),6.89−7.37(m,1H),6.80−6.76(m,1H),3.49(t,2H),4.56(t,2H),2.92−2.77(m,2H),1.77−1.56(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−112.7(s,2F)、−118.8(s,2F).
[実施例5]トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(p−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナートの製造
【0259】
【化91】

【0260】
化合物(10−a)の58%クロロホルム溶液15g(0.016mol)と塩化(p−ヒドロキシ)ベンゾイル5.0g(0.032mol)を用い、実施例1−8と同様の操作を行った。その結果、淡褐色固体としてトリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(o−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナート7.0g(収率67%、純度97%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−5)とする。
[トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(p−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1−スルホナートの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.88(d,2H),7.73−7.61(m,15H),6.82(d,2H),3.49(t,2H),4.56(t,2H),2.92−2.77(m,2H),1.77−1.56(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−112.5(s,2F)、−118.5(s,2F).
N−スルホニルオキシイミド化合物の合成
[実施例6−1]1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニルクロリドの製造
【0261】
【化92】

【0262】
純度56%の化合物(7−a)50g(0.108mol)を水150mlに溶解した溶液を、1lナスフラスコに入れ、室温で攪拌しつつ、過剰の塩素ガスを15分以上バブリングした。その後、フラスコの底部に溜まった油状物をクロロホルムで抽出し、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。その後減圧蒸留してクロロホルムを除去することにより、1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニルクロリド(以下、「化合物(6−a)とする。)24.7g(収率80%、純度95%)が得られた。
[1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニルクロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):3.50(t,2H),2.25−2.13(m,2H),1.57−1.43(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−112.85〜―112.93(m,2F)、−117.4(s,2F).
[実施例6−2]N−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの製造
【0263】
【化93】

【0264】
次いで、純度95%の化合物(6−a)20g(0.070mol)をテトラヒドロフラン100gに溶解した溶液に、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド15g(0.084mol)を加えたのち、トリエチルアミン14.2g(0.140mol)を滴下した。その後、反応液を室温で30分間攪拌したのち、水を滴下して、反応生成物を白色結晶として析出させた。その後、析出物をろ過して、クロロホルムに溶解したのち、溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液、5%塩酸水溶液および水で順次洗浄した。その後、溶液を無水硫酸マグネシウム上を用いて乾燥したのち、減圧蒸留してクロロホルムを除去することにより、N−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド (以下、「化合物(13−a)」とする。)20.5g(収率69%、純度98%)を得た。
[N−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):5.55(dd,2H),3.50(t,2H),4.58(t,2H),2.94−2.75(m,4H),2.49−2.51(m,2H),1.80−1.53(m,6H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−110.4(s,2F)、−116.6(s,2F).
[実施例6−3]N−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの製造
【0265】
【化94】

【0266】
純度98%の化合物(13−a)20g(0.047mol)と塩化アセチル5ml(0.070mol)を用い、実施例1−8と同様の操作を行った。その結果、淡褐色粘稠液体としてN−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド19.7g(収率88%、純度96%)が得られた。この化合物を、酸発生剤(A−6)とする。
[N−(1,1,2,2−テトラフルオロ−6−アセトキシ−ヘキサン−1−スルホニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン)δ(ppm):5.55(dd,2H),3.50(t,2H),4.58(t,2H),2.94−2.75(m,4H),2.49−2.51(m,2H),1.97(s,3H),1.80−1.53(m,6H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン)δ(ppm):−110.3(s,2F)、−116.5(s,2F).
[参考例]
評価条件
以下に記載する参考例で得られた感放射線性樹脂組成物の感度、解像度、MEEF、及びLWRの各評価結果は下記のようにして行った。
[感度]:
参考例に関して、ウエハー表面に77nmの厚みのARC29A(日産化学社製)膜を形成した基板を用い、組成物を基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2に示す温度で90秒間SB(Soft Bake)を行って形成した膜厚120nmのレジスト被膜に、Nikon社製のフルフィールド縮小投影露光装置「S306C」(開口数0.78)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す温度で90秒間PEB(Post Exposure Bake)を行った後、2.38質量%のTMAH水溶液により、25℃で60秒現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型レジストパターンを形成した。このとき、寸法90nmの1対1ラインアンドスペース(1L/1S)のマスクを介して形成した線幅が、線幅90nmの1L/1Sに形成される露光量(mJ/m2)を最適露光量とし、この最適露光量(mJ/m2)を「感度」とした。
[LWR]:
最適露光量にて解像した90nm1L/1Sパターンの観測において、日立製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をLWRとした。LWRの値が低い程、ラフネスが優れていることを示す。
[MEEF]:
90nmの線幅のマスクを用いて90nm1L/1Sパターン線幅が90nmとなるように、最適露光量感度を測定し、次いで、その感度で85.0nm、87.5nm、90.0nm、92.5nm、95.0nmの5点でのマスクサイズにおいて解像されるパターン寸法を測定した。その結果を横軸にマスクサイズ、縦軸に線幅を取り、最小二乗法により求めた傾きをMEEFとした。
【0267】

樹脂合成例
下記化合物(S−1)37.28g(40mol%)、(S−2)18.50g(15mol%)、(S−3)44.22g(45mol%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル4.83gを投入した単量体溶液準備した。100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのn−ヘプタンに分散させてスラリー状にして洗浄した後に濾別する操作を2回行い、その後、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体(樹脂B−1)を得た。この共重合体はMwが9000、Mw/Mn=1.7であり、13C−NMR分析の結果、化合物(S−1)、化合物(S−2)、化合物(S−3)で表される各繰り返し単位の含有率が45.4:11.3:43.3(mol%)の共重合体であった。この共重合体を重合体(B−1)とする。
【0268】
【化95】

【0269】
評価結果
得られた重合体(B−1)100部、下記感放射線性酸発生剤(酸発生剤)(A−1)10.1部、及び下記酸拡散制御剤(C)0.6部を混合して感放射線性樹脂組成物を得た。下記溶媒(D−1)1880部で得られた感放射線性樹脂組成物溶液を用いて、SB=100℃、PEB=115℃で上記各評価を行った結果は、感度が38.0J/m2であり、LWRが7.2nmであり、MEEFが3.0であった。
【0270】
感放射線性酸発生剤(A);
【0271】
【化96】

【0272】
【化97】

【0273】
【化98】

【0274】
酸拡散制御剤(C);
(C−1);トリオクチルアミン
溶媒(D);
(D−1);プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
化合物(S−1)等のモル比を、下記「共重合体(樹脂(B))」に示す各モル比として重合体(樹脂(B))(B−2)を作製し、得られた重合体(B−2)と、上記感放射線性酸発生剤(A)及び上記酸拡散制御剤(C)とを、表1に示す比率で混合した以外は参考例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(参考例2〜6、比較例1〜3)を作製した。得られた感放射線性樹脂組成物を、上記溶媒(D)に、溶解させて感放射線性樹脂組成物溶液を得た。表1において、「樹脂」は「共重合体(樹脂(B))」のことである。得られた感放射線性樹脂組成物溶液を用いて、上記各測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0275】
共重合体(樹脂(B));
B−2:(S−1)40/(S−2)15/(S−4)45(仕込み比(mol%))=41.0/12.8/46.2(13C−NMR分析値(mol%))、Mw=10500,Mw/Mn=1.7
【0276】
【表1】

【0277】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する含フッ素スルホン酸塩もしくは、含フッ素スルホン酸基含有化合物。
【化1】

〔一般式(1)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物。
【化2】

〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。〕
【請求項3】
+が下記一般式(i)で表されるスルホニウムカチオンである請求項2に記載のスルホン酸オニウム塩化合物。
【化3】

〔一般式(i)において、R1、R2およびR3は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を表すか、あるいはR1、R2およびR3のうちの何れか2つ以上が相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成している。〕
【請求項4】
+が下記一般式(ii)で表されるヨードニウムカチオンである請求項2に記載スルホン酸オニウム塩化合物。
【化4】

〔一般式(ii)において、R4およびR5は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を表すか、あるいはR4およびR5が相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成している。〕
【請求項5】
下記一般式(3)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【化5】

〔一般式(3)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。R6およびR7は相互に独立に水素原子または置換もしくは非置換の1価の有機基を表すか、あるいはR6およびR7が相互に結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合または2価の有機基を表す。〕
【請求項6】
下記一般式(4)で表されるスルホン酸塩。
【化6】

〔一般式(4)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。MはNa、KまたはLiを表す。〕
【請求項7】
下記一般式(5)で表されるスルホン酸。
【化7】

〔一般式(5)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。〕
【請求項8】
下記一般式(6)で表されるスルホニルハライド化合物。
【化8】

〔一般式(6)において、Aはハロゲン原子を表す。〕
【請求項9】
紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、請求項7に記載のスルホン酸を発生することを特徴とする化学増幅レジスト材料用の感放射線性酸発生剤。
【請求項10】
紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、請求項2乃至請求項4に記載のスルホン酸オニウム塩化合物もしくは請求項5に記載のN−スルホニルオキシイミド化合物を含有することを特徴とする、化学増幅レジスト材料用の感放射線性酸発生剤。
【請求項11】
トリフェニルスルホニウム 1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−ヘキサン−1−スルホナート
【請求項12】
次の4工程よりなる、下記一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物
【化9】

の製造方法。
第1工程: 6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキサン−1−オールを、スルフィン化剤を用いてスルフィン化して、下記一般式(7)
【化10】

で表されるスルフィン酸塩を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた一般式(7)で表されるスルフィン酸塩を、酸化剤を用いて酸化し、下記一般式(4)
【化11】

で表されるスルホン酸塩を得る工程。
第3工程:第2工程で得られた一般式(4)で表されるスルホン酸塩を、下記一般式(8)で表される1価のオニウム塩
【化12】

と反応させ、下記一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩
【化13】

を得る工程。
第4工程:第3工程で得られた一般式(9)で表されるスルホン酸オニウム塩を、
下記一般式(10)で表される酸もしくは酸ハライド
【化14】

もしくは下記一般式(11)で表される酸無水物
【化15】


と反応させ、一般式(2)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物を得る工程。
〔一般式(2)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30の環状もしくは環状の部分構造を有する1価の炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数4〜30の1価のヘテロ環状有機基を表す。Q+は1価のオニウムカチオンを表す。一般式(7)および一般式(4)において、MはNa、KまたはLiを表す。一般式(8)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義であり、X-は1価のアニオンを表す。一般式(9)において、Q+は一般式(2)におけるQ+と同義である。一般式(10)において、X´は水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表し、Rは一般式(2)におけるRと同義である。一般式(11)におけるRは一般式(2)におけるRと同義である。〕

【公開番号】特開2010−18573(P2010−18573A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182201(P2008−182201)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】