説明

新規神経疼痛経路

本発明は、高等動物において持続性疼痛に関連している、感覚ニューロンの長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)に関与する新規分子経路の知見に関する。それは、ニューロンの軸索への損傷の後、一酸化窒素シンターゼ活性の増強が一酸化窒素産生の増加をもたらし、そしてこれが次にグアニリルシクラーゼを活性化し、それによりcGMPのレベルを増加させるという知見に基づく。cGMPの増加はタンパク質キナーゼG(「PKG」)の活性化を招き、ついでこれは軸索に沿ってニューロン細胞体へ逆行性輸送され、そこでMAPKerkをリン酸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年9月1日付け出願の米国仮出願第60/713,435号および2005年3月21日付け出願の米国仮出願第60/664,071号(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の優先権を主張するものである。
【0002】
助成情報
本出願の内容は、少なくとも部分的には、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)助成金のNS12250およびNS35979に基づいて生み出された。したがって、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1.緒言
本発明は、高等動物において持続性疼痛に関連している、感覚ニューロンの長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)に関与する新規分子経路の発見に関する。
【背景技術】
【0004】
2.発明の背景
疼痛は神経系の2つの主要部分(中枢および末梢)の間の情報伝達の結果として知覚される。それらの2つの部分は協同して働いて我々の自覚的体験をもたらすが、中枢神経系および末梢神経系は解剖学的および機能的に異なるものである。
【0005】
専門化された疼痛受容体に作用する疼痛刺激は、感覚軸索の末梢分枝に沿って、背根神経節(末梢神経系の一部)内に存在するニューロンへ、ついで軸索の中枢分枝に沿って脊髄(中枢神経系)内へと伝播する。ついで、このシグナルは脊髄内の中枢神経系ニューロンへ中継され、これが次にその軸索を通じて該シグナルを脊髄の反対側(「対側」)へと伝達し、ついで脳内の疼痛知覚構造体に至るまで伝達する。
【0006】
末梢疼痛受容体は、機械的、熱的または化学的刺激に応答しうる遊離神経終末に位置する。疼痛は急性または慢性でありうる。急性疼痛は、典型的には、その受容体からAδ感覚神経線維(これは、インパルス伝達を促進する絶縁性化合物ミエリンで薄く被覆されている)を通じて伝達される。慢性疼痛は、典型的には、C線維を通じて伝達されるが、ここでC線維はミエリン化されていないため、それはインパルスを遅く伝達し、特徴的な鈍く広範な慢性疼痛の性質をもたらす。ブラジキニンおよびプロスタグランジンのような炎症の化学メディエーターは、疼痛受容体を刺激し、関節炎または神経炎症に関連した持続性疼痛のような慢性疼痛症候群における重要な物質である。
【0007】
疼痛の知覚は疼痛経路の種々の段階で変更されうる。例えば、疼痛刺激は、末梢受容体に局所麻酔薬を投与することにより排除しうる。オピオイドのような薬物は疼痛経路の中枢神経系段階を妨げ、非ステロイド性抗炎症薬は末梢段階を妨げる(尤も、現在では、両方の何らかの交差反応性が存在することが認められている)ことが古くから公知である。同様に、慢性疼痛として知覚されるもの(一次脊髄損傷によるものではなく)は、典型的には、末梢疼痛受容体の感作および脊髄ニューロンの興奮性の変化を伴い、したがって、末梢神経系成分および中枢神経系成分の両方を有する。慢性疼痛に関与する末梢成分および中枢成分は、それぞれ、「一次」および「二次」痛覚過敏と称される(UrbanおよびGebhart, 1999(Woolf, 1983およびLa Motteら, 1991を引用))。
【0008】
慢性疼痛の中枢神経系成分に関しては、背根神経節軸索からの刺激を受け取る脊髄ニューロンは慢性疼痛の場合に遺伝子発現の変化を示し、「中枢感作」または「脊髄痛覚過敏」の現象に寄与すると考えられている。脊髄N-メチル-D-アスパラギン酸(「NMDA」)受容体はこの過程において重要な役割を果たすと考えられている(UrbanおよびGebhart, 1999(UrbanおよびGebhart, 1998を引用); Palacekら, 2003; Leeら, 1993)。末梢神経系の活性化を伴わない脊髄損傷は、中枢疼痛症候群を招く脊髄痛覚過敏を引き起こしうる(Zhangら, 2005)。神経因性疼痛は、転写因子であるサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(「CREB」)のリン酸化に関連づけられている(Cronら, 2005)。
【0009】
神経損傷に関連した慢性疼痛(「神経因性疼痛」)の末梢神経系成分に関しては、有効な治療に対してほとんど抵抗性を示す持続性神経因性疼痛は、主要な臨床問題である。ヒト(Gracelyら, 1992)および哺乳類モデル系(Millan, 1999)においては、神経損傷後の持続性疼痛は、損傷神経内に軸索を有する感覚ニューロン(SN)の長期過剰興奮(LTH)に関連している。LTHは、損傷部位におけるSN細胞体および軸索における電気刺激に対する感受性の増加として現れる(WallおよびDevor, 1983; StudyおよびKral, 1996; Zhangら, 1997; ChenおよびDevor, 1998; Kimら, 1998; AbdullaおよびSmith, 2001)。これらの変化は、静止時または無害な刺激の際にSNから活動電位の放電を引き起こして、中枢神経系内の、より高次のニューロンの連続的な興奮、ならびに二次的または脊髄痛覚過敏および持続性疼痛を引き起こす。LTHの出現は遺伝子発現の変化を伴うため(Waxmanら, 1994; Wangら, 2002; Parkら, 2003)、核心的な疑問は、細胞体から遠い位置で生じる損傷により誘発される核内のそのような変化がどのようなものであるかということである。この疑問に答えることは、複雑な哺乳類神経系を使用しても極めて難解なことである。
【0010】
実験的に有利な代替物は、軟体動物Aplysia californica(アプリシア・カルフォルニカ)の両側性側神経節内に存在するSNの均一クラスターである(Waltersら, 2004)。体壁の有害な機械的刺激(Waltersら, 1983a)またはin vivoまたはin vitroでのSN軸索の破砕は、哺乳類SNの軸索切断後に見られるものに類似した電気生理学的特性を有するLTHを惹起する(Waltersら, 1991; Walters, 1994; Ambronら, 1996; Bediら, 1998; Unglessら, 2002; SungおよびAmbron, 2004)。LTHは遅延の後に出現し、このことは、神経破砕後のその誘導が、正の分子損傷シグナルに起因することを示唆している(Waltersら, 1991; AmbronおよびWalters, 1996; Linら, 2003)。2つの研究がこの見解を支持している。第1に、切断された神経系における神経損傷後の軸索輸送の阻止はLTHの出現を妨げた(Gunstreamら, 1995)。第2に、損傷軸索からの軸索原形質を注入することにより、未損傷のSNにおいてLTHが誘導された(Ambronら, 1995)。LTHは、MAPK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)ファミリーのERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)メンバーの細胞体内注入後のSNにおいても惹起された(Sungら, 2000)。他の実験は、cGMPおよびPKG(cGMP依存性タンパク質キナーゼ; タンパク質キナーゼG)が恐らく関与していることを示唆している(LewinおよびWalters, 1999)。しかし、これらの観察にもかかわらず、該軸索からのシグナルの実体、PKGおよび該ERKがどのようにして活性化されるのか、あるいはこれらのキナーゼがどのようにして相互作用しうるのかは不明である。さらに、LTHは、学習パラダイム(learning paradigm)において、PKA(タンパク質キナーゼA)に作用するcAMPにより誘導されることも報告された(Daleら, 1988; ScholzおよびByrne, 1988)。
【0011】
TaoおよびJohnsによる米国特許第6,476,007号(「TaoおよびJohns」)は、N-メチル-D-アスパラギン酸(「NMDA」)受容体の刺激が一酸化窒素シンターゼ(「NOS」)の活性化および一酸化窒素(「NO」)の産生を招き、ついで、これがグアニル酸シクラーゼ(「GC」)を刺激し、サイクリックグアノシド一リン酸(cGMP)を産生し、これが次にcGMP依存性タンパク質キナーゼIα(「PKG」)を活性化するという、中枢神経系におけるシグナリング経路の提唱に関する。炎症反応の誘導後のくも膜下投与による中枢神経系内へのPKGインヒビターであるRp-8-[4-クロロフェニル)チオ-cGMPSトリエチルアミンの投与は、10および60分後にラットにおいて有意な痛覚抑制をもたらすことが観察された。さらに、彼らは、有害刺激の96時間後の腰部脊髄内のPKG発現のアップレギュレーションがニューロンNOSインヒビター、可溶性GCインヒビターおよびNMDA受容体アンタゴニストの投与により阻止されたことに言及した。
【0012】
しかし、TaoおよびJohnsは、中枢神経系における炎症性疼痛過敏のメカニズムを検討することを表明しているものの、本発明以前に、末梢神経系の感覚ニューロンにおける疼痛、特に慢性疼痛および長期過剰興奮のメカニズムを決定することが依然として必要なままであった。
【0013】
末梢神経系における疼痛のメカニズムを検討する必要性は幾つかの理由により重要であり、その第1は薬物の接近しやすさである。中枢神経系は、血液脳関門により他の身体部分から隔絶されている。血液脳関門は中枢神経系の内皮細胞間のタイトジャンクションにより作られており、多くの治療薬をそもそも中枢神経系に到達しないように阻止している。血液脳関門の透過性は非常に限られたものであるため、TaoおよびJohnsによる脊髄痛覚過敏の治療は問題があろう。本発明に従い、その透過性の問題を有さない末梢神経系への物質の送達により疼痛の一次痛覚過敏態様を治療しうることは、大きな利点をもたらす。
【0014】
末梢疼痛メカニズムの治療が重要である第2の理由は、末梢が疼痛知覚の入り口であることにある。本発明は、例えば、長期過剰興奮(LTH)の結果として疼痛の知覚を引き起こすような通常は痛みを伴わない刺激の場合に、自覚痛が最初に生じた時点で自覚痛に介入するという利点をもたらす。慢性疼痛罹患者においては、通常は痛みを伴わない刺激(例えば、シーツの軽い接触または微風の通過)により自覚痛が誘発されうる。本発明は疼痛経路のこの第1段階に向けられるものである。
【発明の開示】
【0015】
3.発明の概要
本発明は、高等動物において持続性疼痛に関連している、末梢神経系における感覚ニューロンの長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)に関与する新規分子経路の発見に関する。それは、感覚ニューロンの軸索への損傷の後、一酸化窒素シンターゼ(「NOS」)活性の増強が一酸化窒素(「NO」)産生の増加をもたらし、これが次にグアニリルシクラーゼ(「GC」)を活性化し、それによりサイクリックグアノシン一リン酸(「cGMP」)のレベルを増加させるという発見に基づく。cGMPの増加はタンパク質キナーゼG(「PKG」)の活性化を招き、ついでこれは軸索に沿ってニューロン細胞体へ逆行性輸送され、そこでマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ-erk(「MAPKerk」)をリン酸化する。ついで、活性化されたMAPKerkは細胞核内に移行し、該細胞核内でそれは疼痛関連遺伝子の発現をモジュレーションする。
【0016】
種々の実施形態において、本発明は、一次(末梢神経系)痛覚過敏に罹患した被験体において長期過剰興奮および/または持続性疼痛を抑制および/または治療するための方法および組成物を提供するが、その方法は、前記経路内の或る段階を抑制する物質を該被験体に投与することを含む。特定の実施形態においては、その物質は、背根神経節内の感覚ニューロンに運搬されるよう投与される。特定の実施形態においては、その物質は、末梢から感覚ニューロン細胞体への逆行性輸送を促進するペプチドを含む。他の実施形態において、本発明は、この経路内の段階をモジュレーション(抑制または促進)して長期過剰興奮および/または疼痛知覚をモジュレーションしうる分子を同定するために使用されうるアッセイを提供する。
【0017】
さらに他の実施形態において、本発明は、Aplysia californicaのクローン化PKG遺伝子、そのコード化タンパク質およびそのホモログ、ならびに該精製タンパク質に対する抗体を提供する。
【0018】
4.図面の簡単な説明
(図面の簡単な説明については後述)
5.発明の詳細な説明
限定的なものではないが、説明の明瞭化のために、この節を以下の小節に分ける:
(i)NO/cGMP/PKG経路、
(ii)NO/cGMP/PKG経路のモジュレーターを同定するためのアッセイ、および
(iii)NO/cGMP/PKG経路のモジュレーション、
(iv)ニューロン逆行性輸送メカニズムを利用した疼痛経路のモジュレーション、および
(v)apPKG。
【0019】
5.1 NO/cGMP/PKG経路
本発明は、神経損傷が軸索におけるニューロン一酸化窒素シンターゼ(「nNOS」)を活性化し、それがNO産生を招き、その結果、可溶性グアニリルシクラーゼ(「GC」)の活性化、サイクリックグアノシン一リン酸(「cGMP」)の産生およびタンパク質キナーゼG(「PKG」)の活性化を引き起こす、LTHおよび/または持続性疼痛の誘導のモデルを提供する。活性化されたPKGは感覚ニューロン(SN)の細胞体へ逆行性輸送され、そこでそれは細胞質内でMAPK-erkを活性化し、ついでそれが核に進入し、LTHおよび/または持続性疼痛の出現を引き起こす遺伝子の転写を活性化する。
【0020】
本明細書において定義される長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)(「LTH」)は、刺激に対する感覚ニューロン細胞体または軸索の感受性の増加である。電気生理学的試験の際、LTHは、スパイク閾値の減少、反復発火(repetitive firing)の増加、より幅広いスパイク、および/またはスパイク増幅の増加として現れる。疼痛を知覚する動物において、LTHは持続性疼痛に関連している(SungおよびAmbron, March 22, 2004を参照されたい)。
【0021】
電気生理学的試験は、当技術分野で公知の方法を用いて行われうる。Aplysia californica(以下、「Aplysia californica」または単に「Aplysia」(アメフラシ)と称する)SNを使用する電気生理学的試験の具体的な非限定的な一例は以下のとおりに行われうる(Liaoら, 1999を参照されたい)。SN細胞体からの細胞内記録は、3M 酢酸カリウムで満たされたガラス管微小電極(電極抵抗8〜20M)を用いて行われうる。該調製物を緩衝化人工海水(「ASW」)、L15培地、またはASWとL15との1:1混合物(pH 7.6)に浸しながら、19〜21℃で記録を行うことができる。細胞体スパイク閾値は20m秒の脱分極パルスの標準系列で測定されうる。反復発火(スパイク順応)は、20m秒パルスで測定された閾値電流の2.5倍を用いる1秒の細胞内脱分極パルスにより惹起されたスパイクの数を計数することにより定量されうる。反復発火は、例えば、閾値電流の1.25、2.5および5倍の一連の1秒の脱分極パルスによりまたは1、2、3および5nAにより惹起されたスパイクの数を計数することにより検査されうる。入力抵抗(Rin)は、1秒の過分極パルス(0.5nA)の導入の際に生じた電圧変化から測定されうる。軸索興奮性は、神経p7、p8およびp9を含有する狭いワセリン密封開口部を通じて2つの区画間に電流を通すことにより試験されうる。閾値は、迅速な一連の2m秒のパルスを用いて測定されうる。反復発火は、2m秒の閾値電流の0.4および0.8倍の2回の1秒のパルスを適用することにより試験されうる。
【0022】
持続性疼痛には、急性損傷の期間より長く持続する疼痛が含まれ、慢性疼痛症候群、例えば、限定するものではないが、神経因性疼痛が含まれる(Bennettら, 2005)。特定の非限定的な実施形態においては、持続性疼痛の持続期間は少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月または少なくとも1年である。
【0023】
5.2 NO/cGMP/PKG経路のモジュレーターを同定するためのアッセイ
本発明は、NO/cGMP/PKG経路のモジュレーター(インヒビターまたはプロモーター/インデューサー)を同定するアッセイを提供する。そのようなアッセイを使用して、試験物質が、該経路の少なくとも1つの段階をモジュレーションしてLTHをモジュレーションする物質であるかどうかを判定するために、該試験物質を評価することができる。該経路のインヒビターは、LTHを抑制するために使用することが可能であり、感覚ニューロンおよび/または被験体における持続性疼痛を抑制および/または治療するために使用することが可能である。本明細書中で用いる「抑制」なる語は低減、遅延または阻害を意味する。LTHのプロモーター/インデューサーは、好ましくはAplysiaと同様に疼痛を自覚的に体験しないと考えられる動物における、持続性疼痛のモデル系を開発するために使用されうる。
【0024】
本発明のアッセイは、感覚ニューロンが天然で存在するin vivo環境に少なくとも近似した生理学的条件下に試験用感覚ニューロン(「TSN」)を含むモデル系を使用する。TSNは、核を含有する細胞体、そして、TSN軸索の少なくとも一部分を構成し、より好ましくは完全な軸索を構成する軸索セグメントを含む。ある非限定的な実施形態においては、TSNはAplysia SNである。他の非限定的な実施形態においては、TSNは脊椎動物SN、好ましくは哺乳動物SNである。TSNは、全てがSNであってもそうでなくてもよい一群のニューロンの一部分として、または外植神経もしくはその断片(例えば、ラット坐骨神経の切り出されたセグメント)として、単離された培養状態で維持されうる。他の実施形態においては、TSNは動物においてin vivoで保持されうる。さらに他の非限定的な実施形態においては、軸索セグメントは少なくとも1つの結紮を含有しうる。
【0025】
TSNは損傷している。例えば、限定的なものではないが、該損傷は、当技術分野で公知の方法を用いてTSNを破砕、切断および/または化学的に損傷することにより生じさせることが可能である。他の方法には、炎症反応、虚血、ニューロンへの血液供給の低下および高血糖の誘導が含まれる。
【0026】
本発明のアッセイにおいては、損傷の前、損傷と同時に、または損傷の後、培地中に含めるか、全身投与するか、局所注射するかもしくは直接的な注射または他の方法でのTSN内への導入により、試験物質をTSNに投与する。非限定的な実施形態においては、試験物質をTSNの特定の細胞位置、例えば細胞体または軸索に投与することが可能である。好ましくは、TSNに対する試験物質の効果を、対照SN(「CSN」)、例えば損傷したCSNにおける比較しうる値と比較する。ついで、後続の評価工程の1つを行う。特定の非限定的な実施形態においては、該評価工程を損傷の48時間以内に行う。
【0027】
第1の実施形態においては、本発明のアッセイは、損傷TSNにおいて、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNにおけるNOS活性と比較して、該物質が一酸化窒素シンターゼ(「NOS」;これは好ましくはnNOSであるが、eNOSおよび/またはiNOSであってもよい)活性をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連したNOS(好ましくはnNOS)活性の増強を抑制できることは、試験物質がLTHインヒビターであることを示している。対照値と比較してNOS活性の更なる増強を促進できることは、試験物質がLTHプロモーターであることを示す。NOS活性は、例えば、限定的なものではないが、nNOS mRNAの量、nNOSタンパク質の量、または生成した一酸化窒素(「NO」)の量を測定することにより測定されうる。例えば、nNOS mRNAは、後記の配列番号15および16を有するオリゴヌクレオチドなどのプライマーを使用するPCR増幅により、または検出可能に標識された相補的オリゴヌクレオチドプローブを使用するin situハイブリダイゼーションにより測定されうる。例えば、nNOSタンパク質は、nNOSに特異的な検出可能に標識された抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を使用する免疫組織化学法により測定されうる。生成したNOの量は、例えば、細胞性物質の量が十分な場合、Smithら, 2002に記載されているようにL-[14C]アルギニンからL-[14C]-シトルリンへの変換を測定することにより測定されうる。
【0028】
第2の組の実施形態においては、本発明のアッセイは、損傷TSNにおいて、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNにおけるGC活性と比較して、該試験物質がグアニリルシクラーゼ(「GC」)活性をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連したGC活性の増強を抑制できることは、該試験物質がLTHインヒビターであることを示している。対照値と比較してGC活性の更なる増強を促進できることは、該試験物質がLTHプロモーターであることを示す。GC活性は、例えば、限定的なものではないが、GC mRNAの量、GCタンパク質の量、または生成したcGMPの量を測定することにより測定されうる。例えば、GC mRNAは、GC核酸配列に基づいて設計されたプライマーを使用するPCR増幅により測定することができ、またGCタンパク質は、GCに特異的な検出可能に標識された抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を使用する免疫組織化学法により測定されうる。1つの非限定的な例として、細胞内物質の体積が適当な場合、GC活性は、Moら, 2004に記載の方法の変法により測定されうる。例えば、TSNを、200μM ジチオトレイトールとEDTA非含有プロテアーゼインヒビターとを含有する2倍濃縮細胞溶解バッファーを使用して細胞溶解すればよく、該混合物を超音波処理し、氷上に維持すればよい。3mM MgCl2、0.1mM EGTA、0.05%(w/v)ウシ血清アルブミン、1mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン、5mM リン酸クレアチン、200μg/ml クレアチンホスホキナーゼ、300μM GTP、1000単位/ml スーパーオキシドジスムターゼ、300μM 尿酸および200μM cPTIO(2-(4-カルボキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシル-3-オキシド)を補充した50mM Tris-HClバッファー(pH7.4)中で、該細胞溶解TSNをアッセイすることが可能である。SPER/NO(N-4-1-3-アミノプロピル-2-ヒドロキシ-2-ニトロソヒドラジノブチル-1,3-プロパン-ジアミン)を加えたが、アリコートを種々の間隔で取り出し、不活性化し、cGMPに関してアッセイすることが可能である。生成したcGMPの量は、例えば、細胞内物質の量が十分な場合、化学発光アッセイ(HitHunter, Amersham Biosciences Corp., Piscataway, N.J.)により測定されうる。
【0029】
第3の組の実施形態においては、本発明のアッセイは、損傷TSNにおいて、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNにおけるPKG活性と比較して、該試験物質がタンパク質キナーゼG(「PKG」)活性をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連したPKG活性の増強を抑制できることは、該試験物質がLTHインヒビターであることを示している。対照値と比較してPKG活性の更なる増強を促進しうることは、試験物質がLTHプロモーターであることを示す。PKG活性は、例えば、限定的なものではないが、SN抽出物におけるキナーゼ活性を測定することにより測定されうる。例えば、SN抽出物におけるPKG活性は、32Pを[32P]-ATPからBPDEtide(Calbiochem, La Jolla, CA)へ転移させる抽出物の能力を測定することにより測定されうる。
【0030】
第4の組の実施形態においては、本発明のアッセイは、損傷TSNにおいて、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNにおけるPKG輸送と比較して、該試験物質がタンパク質キナーゼG(「PKG」)輸送をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連したPKGの輸送を抑制できることは、試験物質がLTHインヒビターであることを示す。対照値と比較してPKG輸送の更なる増強を促進できることは、該試験物質がLTHプロモーターであることを示す。PKG輸送は、例えば、限定的なものではないが、PKG活性の増強が損傷しているSNの領域から細胞体へ経時的に移動するかどうかを決定することにより測定されうる。この増強は、遠位から近位へと連続的な軸索セグメントをPKG活性に関して試験すること(図9を参照されたい)を含む(しかしこれらに限定されるものではない)多数の方法により測定されうる。別の非限定的な例においては、軸索セグメントを結紮することができ、軸索物質を、該損傷および/または結紮から異なる相対距離の軸索領域から集めることができ、この場合、例えば、該損傷領域における活性化PKGの量は、該損傷に対向する結紮の側のPKG活性の量と比較して経時的に減少する(図4を参照されたい)。
【0031】
第5の組の実施形態においては、本発明のアッセイは、損傷TSNにおいて、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNにおけるMAPKerkのリン酸化と比較して、該試験物質がマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ-erk(「MAPKerk」)のリン酸化をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連したMAPKerkのリン酸化を抑制できることは、該試験物質がLTHインヒビターであることを示す。対照値と比較してMAPKerkのリン酸化の更なる増強を促進できることは、該試験物質がLTHプロモーターであることを示す。MAPKerkのリン酸化は、その基質のリン酸化においてMAPKerk活性のレベルを測定することにより、または非リン酸化タンパク質ではなくリン酸化タンパク質に選択的に結合する抗体(限定的なものではないが、例えば、AbpTpYmapk)を使用してリン酸化MAPKerkの存在を検出することにより、測定されうる。
【0032】
第6の組の実施形態においては、本発明のアッセイは、好ましくは、試験物質が投与されていない損傷CSNの核内へのMAPKerk移行と比較して、該試験物質が損傷TSNの核内へのMAPKerk移行をモジュレーションするかどうかを決定する。SN損傷に関連した核内へのMAPKerk移行を抑制できることは、該試験物質がLTHインヒビターであることを示す。対照値と比較して核内へのMAPKerk移行の更なる増強を促進できることは、該試験物質がLTHプロモーターであることを示す。核内へのMAPKerk移行は、レーザー共焦点免疫組織化学技術を用いてMAPKerk特異的抗体を使用してSN核内のMAPKerkの量を測定することにより測定されうる。
【0033】
5.3 NO/cGMP/PKG経路のモジュレーション
本発明においては、この節に開示されているインヒビターまたは前節5.2に記載の性質を有するか若しくは同定されたプロモーター/インデューサーを使用して、NO/cGMP/PKG経路ならびにそれによるLTHおよび持続性疼痛の発生をモジュレーションすることが可能である。特定の実施形態においては、インヒビターを、LTHを抑制するのに有効な量で、そのような治療を要する感覚ニューロンに投与することが可能である。該インヒビターを投与すべきSNが動物被験体中のin vivoのSNである場合、該インヒビターを(例えば、静脈内注射、経口投与、吸入などにより)全身投与することが可能であり、(損傷神経の近くに)局所注射することが可能であり、(例えば、化合物または電気刺激のような皮膚透過性促進因子と共に)局所適用することが可能であり、あるいは当技術分野で公知の任意の他の手段により投与することが可能である。ただし、くも膜下投与のような中枢神経系内への導入はSNへのインヒビターの投与には用いられないであろう。投与するインヒビターの量は、例えば前記のAplysia系または末梢神経因性疼痛の哺乳動物モデルのような1以上のモデル系において用量応答研究を行い、次いでヒトにおける承認された臨床試験を行うことにより、当技術分野で公知の方法を用いて決定されうる。以下において濃度が記載されている場合、それは、感覚ニューロンまたはその任意の成分(例えば、軸索、細胞体または受容体)が曝露されている濃度を意味する。
【0034】
関連実施形態においては、慢性疼痛に罹患した、そのような治療を要する被験体に、インヒビターの有効量を投与すればよい。慢性疼痛は、好ましくは、末梢神経系(一次)痛覚過敏成分を有し、ここで、前記方法は、該末梢神経系により媒介される疼痛を抑制するが、特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、慢性疼痛の成分またはその基礎としての脊髄痛覚過敏(例えば、脊髄損傷により生じた慢性中枢神経因性疼痛)の治療をも含む。前記の投与方法のいずれかが用いられうるが、脊髄痛覚過敏成分を治療する場合には、背根神経節内ではなく中枢神経系内に細胞体を有するニューロンに対するインヒビターはくも膜下に投与すべきである。
【0035】
有効量は、被験体により自覚的に知覚される疼痛のレベルを低下させるインヒビター量、好ましくは、プラシーボ効果よりも大きな、コントロール実験において決定された量である。限定的なものではないが例えば、知覚される疼痛が0〜10の尺度(ここで、0は無疼痛、1〜5は、漸進的強度の軽度な疼痛、6〜7は、漸進的強度の中等度の疼痛、8〜9は、漸進的強度の重度の疼痛、そして10は、起こりうる最悪の疼痛)で定量されうる本発明の特定の実施形態においては、インヒビターの有効量は知覚される疼痛の疼痛尺度定量値を少なくとも2ポイントまたは少なくとも3ポイント減少させうる。
【0036】
特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、本明細書に記載のインヒビター(あるいは「LTHインヒビター」と称される)の有効量を、疼痛が生じた位置に投与することを含む、被験体における慢性疼痛の治療方法を提供し、ここで、投与は、(例えば、クリーム剤による、あるいは軟膏剤による、あるいはパッチであるかまたは装置であるか若しくはパッチを含有するか若しくはパッチを伴う装置であってよい経皮デバイスによる)局所注射または局所適用によるものであってよく、該位置は、非限定的な具体例としては、創傷部位、炎症関節の上を覆う組織、または知覚疼痛に関連した皮膚分節内の領域(例えば、L4、L5、S1、C3、C4、C5、C6またはC7; 後記を参照されたい)でありうる。
【0037】
5.3.1 NOSのモジュレーション
1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、NOS(好ましくはnNOSおよび/またはeNOSおよび/またはiNOS)のインヒビター、例えば、限定するものではないが、L-NAME[NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩]、L-チオシトルリン、またはNOS発現を抑制するアンチセンス核酸もしくはRNAiの有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。そのようなアンチセンス核酸分子またはRNAiは、後述のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、標的NOSにハイブリダイズしうる。
【0038】
5.3.2 NOレベルのモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、NOレベルを減少させる物質、例えば、限定するものではないが、クエルセチン(quercetin)(これはNOスカベンジャーである(Griffithsら, 2003))の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。
【0039】
5.3.3 GCのモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、GC活性を増強する物質、例えば、限定するものではないが、L-H-[1,2,4]オキサジアゾロ[4,3-a]キノキサリン-1-オン(「ODQ」)またはGCの発現を抑制するアンチセンス核酸分子もしくはRNAiの有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。そのようなアンチセンス核酸分子またはRNAiは、後述のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、標的GCにハイブリダイズしうる。
【0040】
5.3.4 cGMPレベルのモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、cGMPレベルを減少させる物質、例えば、限定するものではないが、ホスホジエステラーゼ(好ましくはPDE5)活性を増加させる物質、例えば、限定するものではないが、ホスホジエステラーゼ(例えば、PDE5)自体、またはPDE5アクチベーターであるAnt-cGMP-2'-O-アントラニロイルcGMP(グアノシン3',5'サイクリック一リン酸,2'-O-アントラニロイルcGMP)の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。
【0041】
5.3.5 PKG活性のモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、PKG活性を抑制する物質の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。特定の非限定的な実施形態においては、該物質は、活性化PKGおよび/またはニューロン細胞体における軸索からのその到達を抑制する。
【0042】
非限定的な実施形態においては、該物質はPKGのペプチドインヒビターである。PKGのペプチドインヒビターの非限定的な具体例はDostmann, 2000に開示されており、配列LRKKKKKH (配列番号26)、LRAKKKKH (配列番号27)、LRKAKKKH (配列番号28)、LRKKAKKH (配列番号29)、LRKKKAKH (配列番号30)またはLRKKKKKH (配列番号31)を含むペプチドを包含する。他の実施形態においては、PKGのペプチドインヒビターはコア配列RKKまたはRKKK (配列番号32)を含んでよく、約5〜100、または5〜50、または10〜30、または10〜20アミノ酸長でありうる。
【0043】
本発明のPKGのペプチドインヒビターは、1以上の輸送ペプチド、1以上の担体ペプチド、または輸送ペプチドと担体ペプチドとの両方、ならびに輸送、有効性および/または安定性を改善しうる追加的なペプチドまたは非ペプチド成分を更に含みうる。したがって、本発明は、インヒビター-Δ-担体、担体-Δ-インヒビター、インヒビター-Σ-輸送体、輸送体-Σ-インヒビター、担体-Δ-インヒビター-Σ-輸送体、および輸送体-Σ-インヒビター-Δ-担体を含むペプチド(ここで、本明細書に記載のとおり、ΔおよびΣは、任意に用いられうるリンカーペプチドであり、担体とは担体ペプチドであり、インヒビターとはインヒビターペプチドであり、輸送体とは輸送ペプチドである)を提供し、ここで、非限定的な実施形態においては、ペプチド全体のサイズは10〜100、または10〜50、または10〜30アミノ酸長である。本発明の特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、以下:
LRKKKKKHΔYGRKKRRQRRRPP (配列番号33)、
YGRKKRRQRRRPPΔLRKKKKKH (配列番号34)、
LRKKKKKHΔRQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号35)、
RQIKIWFQNRRMKWKKΔLRKKKKKH (配列番号36)、
LRKKKKKHΣPKKKRK (配列番号37)、
PKKKRKΣLRKKKKKH (配列番号38)、
YGRKKRRQRRRPPΔLRKKKKKHΣPKKKRK (配列番号39)、
PKKKRKΣLRKKKKKHΔYGRKKRRQRRRPP (配列番号40)、
RQIKIWFQNRRMKWKKΔLRKKKKKHΣPKKKRK (配列番号41)、
PKKKRKΣLRKKKKKHΔRQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号42)
(ここで、ΔおよびΣは、0〜5、または0〜10、または0〜20アミノ酸の任意に用いられうるリンカー分子である)
を含むペプチドであって、5〜100、または5〜50、または10〜30アミノ酸長でありうる該ペプチドを提供する。本発明は更に、BLASTまたはFASTAのような標準的な相同性評価ソフトウェアを使用して判定した場合に前記ペプチドに対して少なくとも約90または約95%相同であり、かつPKGを抑制し、さらに約5〜100、または5〜50、または10〜30、または10〜20アミノ酸長でありうるペプチドインヒビターを提供する。特定の非限定的な実施形態においては、ペプチドインヒビターの有効濃度は1ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度でありうる。
【0044】
他の非限定的な実施形態においては、PKGのインヒビターは、以下の式Iの化合物である。
【化1】

【0045】
式Iにおいて、nは1、2または3であり、ZはNまたはCHである。
【0046】
式Iにおいて、Xは以下の官能基のうちの1つを表す。
【化2】

【0047】
式Iにおいて、Yは以下の官能基のうちの1つを表す。
【化3】

【0048】
式Iにおいて、Aは、置換されていないかまたは1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノもしくはハロゲン基により置換されているアリール基またはヘテロアリール基を表す。該アリール基またはヘテロアリール基の具体例を以下に挙げる。
【化4】

【化5】

【0049】
式Iにおいて、Rは水素、低級アルキルまたはアミジノである。
【0050】
式Iにおいて、R1、R2、R4、R5は、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノ、ハロゲンである。
【0051】
式Iにおいて、R3はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたは以下に挙げる基の1つである。
【化6】

【0052】
ここで、R6〜R10は、独立して、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ(例えば、CF3SO2NH-、CH3SO2NH-)、テトラゾールである。1つの特定の非限定的な実施形態においては、式Iの化合物は、国際特許出願番号PCT/US92/07124、公開番号WO93/03730に開示されているバラノール(balanol)またはその誘導体であり、バラノールは以下の式Iaを有する。
【化7】

【0053】
本発明の特定の非限定的な実施形態においては、式Iaは、PKGを抑制する「バラノール変異体」を提供するように変化しうる。そのようなバラノール変異体の非限定的な具体例には、それぞれ291nM、19nMおよび31nMの濃度でPKGに対して抑制性である、図10A〜Cに記載のバラノール-7R、14”デカルボキシバラノール、および10”デオキシバラノールが含まれる。一方、バラノールは1.6nMで抑制性である(Setyawanら, 1999を参照されたい)。
【0054】
本発明は更に、1以上の担体ペプチド、1以上の輸送ペプチド、または1以上の担体ペプチドおよび1以上の輸送ペプチドに結合した式I、式Iaの分子およびバラノール変異体(バラノール変異体またはバラノール二重変異体とも称される)を提供する。特定の非限定的な実施形態においては、ニューロンに例えばその軸索を経由して投与するバラノールまたはバラノール変異体の濃度は、該化合物の効力に応じて、約1〜500nM、または約2〜100nMでありうる。
【0055】
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、前記物質はRp-8-pCPT-cGMPSである。関連実施形態においては、該物質は、1以上の輸送ペプチドに結合したRp-8-pCPT-cGMPSである。もう1つの関連実施形態においては、該物質は、1以上の担体ペプチドに結合したRp-8-pCPT-cGMPSである。さらにもう1つの関連実施形態においては、該物質は、1以上の輸送ペプチドと1以上の担体ペプチドとの両方に結合したRp-8-pCPT-cGMPSである(輸送ペプチドおよび担体ペプチドの定義に関しては後述を参照されたい)。特定の非限定的な実施形態においては、Rp-8-pCPT-cGMPSの濃度は1マイクロモル濃度〜500マイクロモル濃度でありうる。
【0056】
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、前記物質は、PKGの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiである。そのようなアンチセンス核酸分子またはRNAiは、後述のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、標的PKGにハイブリダイズしうる。
【0057】
5.3.6 PKG輸送のモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、PKG輸送を抑制する物質の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。
【0058】
本発明の非限定的な実施形態においては、PKG輸送を抑制する物質は、後述の、軸索逆行性輸送系を抑制するのに有効な量の輸送ペプチドを含みうる。非限定的な特定の実施形態においては、PKG輸送を抑制する物質は、限定するものではないが、例えばデコイ分子の表面ループに含まれるものなどの、複数の輸送ペプチドを含みうる。
【0059】
5.3.7 MAPKerk活性のモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、MAPKerkの活性化(リン酸化)を抑制する物質の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。そのような分子には、チロシンキナーゼインヒビター、例えばK252aおよびゲニステイン(genistein)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
5.3.8 MAPKerk輸送のモジュレーション
もう1つの特定の非限定的な実施形態においては、本発明は、核内へのMAPKerkの移行を抑制する物質、例えば、限定するものではないが、カルシウムアンタゴニスト、例えばフェロジピン(felodipine)(Yangら, 2002)、ベラパミル(verapamil)、ジルチアゼム(diltiazem)、ニフェジピン(nifedipine)など、またはアポリポタンパク質D(Sarjeantら, 2003)の有効量をSN(これは被験体におけるin vivoでのSNであってもそうでなくてもよい)に投与することを含む方法による、NO/cGMP/LTH経路、LTHおよび/または持続性疼痛の抑制を提供する。
【0061】
5.3.9 疼痛を治療するための組成物
本発明の組成物は、ニューロン細胞または核膜を通じたその移行を促進する担体分子を任意に含みうる、前記のインヒビター物質を含みうる。使用しうる担体分子の例には、HIV-1 tatタンパク質(YGRKKRRQRRRPP; 配列番号43)、およびコア配列RKKRRQRRR (配列番号44)を含む約9〜30または約9〜20残基長のペプチド、Drosophilaアンテナペディア・ホメオドメイン(RQIKIWFQNRRMKWKK; 配列番号45)が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明において使用しうる他の担体分子は、アルギニン(Wenderetら, 2000)および/またはリシン(Maiら, 2002)のような正荷電アミノ酸から主として(その少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%含有しうる)構成されうる。本発明には、BLASTまたはFASTAのような標準的な相同性評価ソフトウェアを使用して判定した場合に前記ペプチドに対して少なくとも約90または約95%相同であるペプチドおよび誘導体化ペプチドも含まれる。該インヒビター物質は、所望により、代替的にまたは追加的に、後述の輸送ペプチドを含みうる。
【0062】
本発明は、凍結乾燥形態または適当な医薬担体に溶解された形態でそのようなインヒビター物質を提供する。2以上のインヒビター物質を含む組成物も本発明に含まれる。
【0063】
非限定的な実施形態においては、本発明は、前記の1以上のインヒビター物質と、末梢神経内への該インヒビター物質の取り込みを促進する少なくとも1つの物質とを一緒に含む医薬組成物を提供する。そのような物質の例には、膜透過促進物質、例えばジメチルスルホキシドおよび/または2ヒドロキシプロピル-b-シクロデキストリンが含まれる。
【0064】
他の非限定的な実施形態においては、本発明は、前記の1以上のインヒビター物質と、疼痛の根本原因を治療する少なくとも1つの物質、例えば、限定するものではないが、抗炎症薬(例えばアスピリン、非ステロイド性抗炎症薬、例えばイブプロフェンまたはコルチコステロイド)とを一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0065】
他の非限定的な実施形態においては、本発明は、前記の1以上のインヒビター物質と、局所麻酔作用を有する少なくとも1つの物質、例えばリドカインとを含む医薬組成物を提供する。
【0066】
もう1つの非限定的な実施形態においては、本発明は、前記の1以上のインヒビター物質と、所望により、末梢神経内への物質の取り込みを促進し、疼痛の根本原因を治療し、および/または局所麻酔作用を有する1以上の追加的な物質(ここで、これらの範疇のそれぞれの例示化合物は前記のとおりである)とを含む経皮デバイス、例えばパッチまたは装置を提供する。該デバイスは、一般に、被験体の皮膚を介したその治療用物質の徐放を促進するための、当技術分野で公知の経皮パッチ技術を用いる。特定の非限定的な実施形態においては、該デバイスは、局所組織内へのインヒビター物質の取り込みを促進する電位を発生し(イオントホレシス)、あるいは超音波または高周波を使用して薬物導入を改善する(Bryan, 2004; 米国特許第5,405,614号, 米国特許第4,708,716号を参照されたい)。
【0067】
5.4 ニューロン逆行性輸送メカニズムを利用した疼痛経路のモジュレーション
本発明は、感覚神経の軸索へ疼痛インヒビター化合物を送達して該軸索に沿って背根神経節内の感覚ニューロン細胞体へ該疼痛インヒビター化合物が逆行性輸送されるようにすることを含む、疼痛経路、疼痛の知覚および一次(末梢神経系)痛覚過敏をモジュレーションし特異的に抑制するための方法を提供する。本発明のこの実施形態においては、疼痛インヒビター化合物は、本明細書に記載のLTHインヒビターに限定されず、逆行性軸索輸送を促進する輸送ペプチドに結合した、感覚ニューロンに作用する任意の疼痛インヒビター、例えばプロスタグランジンインヒビター(例えば、COX-2インヒビター)、末梢作用性オピオイド、麻酔化合物などでありうる。
【0068】
1つの非限定的な具体例においては、輸送ペプチドはPKKKRK (配列番号46)、またはBLASTもしくはFASTAのような標準的な相同性評価ソフトウェアを使用して判定した場合にそれに対して少なくとも約80%相同であり、かつ軸索輸送を促進するペプチドもしくは誘導体化ペプチドである。もう1つの非限定的な具体例においては、輸送ペプチドは関連ペプチドCTPPKKKRKV (配列番号47)(Ambron, 1992)を参照されたい)、またはBLASTもしくはFASTAのような標準的な相同性評価ソフトウェアを使用して判定した場合にそれに対して少なくとも約70%、少なくとも約80%もしくは少なくとも約90%相同であり、かつ軸索輸送を促進するペプチドもしくは誘導体化ペプチドである。本発明の特定の非限定的な実施形態においては、輸送ペプチドは5〜20アミノ酸長であり、ペプチドKKKRK (配列番号48)、PKKKRK (配列番号46)、PPKKKRK (配列番号49)、TPPKKKRK (配列番号50)またはPKKKKRKV (配列番号51)を含む。
【0069】
例えば、疼痛インヒビター化合物(感覚ニューロンに関連した疼痛を抑制する物質および輸送ペプチド、好ましくは、前記のLTHインヒビターを含む)を損傷部位または該損傷と同じ皮膚分節内(なぜなら、該皮膚分節の全体にわたって存在する感覚軸索は同一背根神経節で1つに集まっているからである)の末梢疼痛受容体に送達すればよい。図11A〜Bは感覚皮膚分節を示す(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, Section 14, Chapter 165, Figure 165-2より。これはKeegan JJおよびGarrett FD, “Anatomical Record 102:409-437, 1948を参照しており、これはWistar Institute, Philadelphia, PAの許可を得て用いられている)。例えば、指に関連した関節炎痛は、細胞体がレベルC5-T1のDRGに存在する軸索を経由して伝達され、膝からの疼痛は、細胞体がレベルL3-S2のDRGに存在する軸索を経由して伝達される。
【0070】
したがって、本発明は、被験体における、特定の脊髄レベルで背根神経節に関連していることが確認されている疼痛の治療方法であって、該疼痛に関連した脊髄レベルに対応する皮膚分節内に存在する皮膚に、輸送ペプチドを含む疼痛インヒビターを局所適用することを含む方法を提供する。
【0071】
該疼痛インヒビター化合物は、適当な皮膚分節に適用されるクリーム剤、軟膏剤または経皮デバイス(前記を参照されたい)中に含められうる。
【0072】
例えば、下部脊椎内の骨孔から出る神経の圧迫による腰痛(腰、仙椎または腰仙神経根障害)の患者は、該患者の症状および身体検査により特定されうる圧迫神経が由来する脊髄レベルに対応する皮膚分節に適用される、疼痛インヒビター化合物(輸送ペプチドを含む)を含有する経皮パッチで治療されうる。1つの特定の例としては、神経根障害は、しばしば、L4、L5および/またはS1皮膚分節を支配する神経に関わるため、本発明の経皮パッチは患者の臀部に適用されうる。もう1つの特定の非限定的な例においては、指関節(皮膚分節C6-C8)に関わる関節炎を有する患者は、上腕または肩、例えば肩甲棘の上方に本発明のパッチを身に着けることが可能であろう。
【0073】
本発明のこの態様は、痛覚抑制化合物の全身投与を回避し、それにより薬物乱用の可能性を実質的に減少させ潜在的な副作用(例えば、COX-2インヒビターに関連したもの)を回避しつつ、それが疼痛を治療するという利点をもたらす。
【0074】
5.5 apPKG
本発明は更に、タンパク質キナーゼ(プロテインキナーゼ)Gをコードする核酸分子およびそのコード化タンパク質を提供する。
【0075】
ある非限定的な実施形態においては、本発明は、GenBankアクセッション番号AY362340および本明細書中の配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するAplysiaのタンパク質キナーゼGをコードする単離された核酸を提供する。特定の実施形態においては、本発明は、GenBankアクセッション番号AY362340および本明細書中の配列番号9に記載の配列を有する単離された核酸分子、ならびにそれらに対してBLASTまたはFASTAのような標準的な相同性判定ソフトウェアにより相同性を判定した場合に少なくとも85、少なくとも90または少なくとも95%相同である核酸分子を提供する。本発明は更に、配列番号9を有する核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタンパク質キナーゼ活性を有する分子をコードする単離された核酸分子を提供する。ストリンジェントな条件は、本明細書においては、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC/0.1% SDS中、68℃での洗浄として定義される(Ausubel F.M.ら編, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & sons, Inc., New York, at p. 2.10.3)。
【0076】
本発明の核酸は、ファージ、プラスミド、ファージミドまたはウイルスでありうるベクター分子内に含まれうる。
【0077】
本発明の核酸をプロモーターエレメントに機能しうる形で連結して、発現カセットを得ることが可能である。
【0078】
本発明は更に、配列番号10に記載の配列を有する単離されたタンパク質、およびそれに対して少なくとも85、少なくとも90または少なくとも95%相同であり、かつタンパク質キナーゼ活性を示すタンパク質を提供する。本発明のタンパク質は融合タンパク質内に含まれうる。1つの非限定的な例として、本発明のタンパク質は、免疫学的に認識されうるタグ、例えばHisタグに融合されていてもよい(後述の第6節を参照されたい)。
【0079】
他の実施形態においては、本発明は、apPKGの触媒部分、例えば、次のアミノ酸配列:
VAKEFENCSLDDLQLVTTLGMGGFGRVELVQLSKEKGKTFALKCLKKKHIVETRQQEHIYSEKKIMMEADSPFITKLHKTFRDRKYVYMLMEVCLGGELWTILRDRGNFDDLTARFCVACVLEAFSYLHAKGIIYRDLKPENLLLDARGYVKLVDFGFAKKIGVGKKTWTFCGTPEYVAPEIILNKGHDHSADYWSLGILMYELLNGTPPFSGSDPMRTYNIILKGIDHIEFPKKISRSAHVLIKKLCRDNPMERLGYGKNGISDIRKNKWF (配列番号 25)
を有するapPKGの触媒部分、またはそれに対して少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%相同なアミノ酸配列、を含む単離されたタンパク質を提供する。apPKGの触媒部分、およびそれに対して少なくとも85、少なくとも90または少なくとも95%相同な分子は、そのNおよび/またはC末端において別のアミノ酸配列に連結された融合タンパク質内に含まれうる。本発明は更に、発現カセットおよび/またはベクター分子内に含まれるプロモーターエレメントに機能しうる形で連結されていてもよい、前記単離タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0080】
本発明は更に、本発明の精製タンパク質で動物を免疫することにより製造された抗体分子を提供する。そのような抗体分子は、標準的な実験技術を用いて製造されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体でありうる。
【実施例】
【0081】
6.実施例:Aplysia感覚ニューロンにおいてタンパク質キナーゼGのニューロンアイソフォームはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼの核内移行を軸索切断誘導性長期的過剰興奮に関連づける
6.1 材料および方法
in vivo神経破砕
Aplysia(アメフラシ)(100〜150g)を等張性MgCl2で麻酔し、体壁の片側に小さな切開を施した。足部神経5-9を、片側の足-側神経節から2cmの位置で破砕した。該創傷を縫合し、該動物をそのタンクへ戻した。その用いた破砕-結紮プロトコルは、記載されているとおり(Ambronら, 1995)であった。
【0082】
クローニング
縮重オリゴヌクレオチドプライマー5'-tayaaytgyacnmgiacngc (配列番号1)および5'-ccrcaraangtccangtytt (配列番号2)を使用して、Aplysia CNS cDNAからapPKG cDNA断片を増幅した。この増幅から得られたPCR産物をpCR-II(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にクローニングし、ついでColumbia Universityの基盤施設で配列決定した。該cDNAの5'末端および3'末端を、それぞれ5'-RACE(cDNA末端迅速増幅;rapid amplification of cDNA ends)および3'-RACEを用いてクローニングした。Marathon cDNA増幅キット(BD Clontech, Palo Alto, CA)を製造業者の使用説明書に従い使用して、Aplysia CNSポリ(A+)RNAからcDNAを作製した。その5'-RACE反応では、特異的プライマー5'-cgcctgtccagcacccatagcg (配列番号3)を使用した。ついでこのPCR反応の産物を、ネスティッド特異的5'プライマー5'-gggtgaccgctttcacggagg (配列番号4)を使用する第2の増幅により確認した。該3'-RACE反応では、特異的プライマー5'-cggcaaggttctgcgtcgcc (配列番号5)を使用した。ついで該PCR産物を、ネスティッド3'プライマー5'-ggacgcgaggggatacgtc (配列番号6)を使用する第2の増幅に付した。5'-RACE産物および3'-RACE産物の両方をpCR-II内にサブクローニングし、配列決定した。完全長cDNAを1断片として得るために、それぞれ5'-および3'-RACE産物の5'および3'末端に対応するオリゴヌクレオチド5'-ggtggaggagatagcggcggttctgtgaacgcc (配列番号7) および5'-ggaggagtgagggtcagatcc (配列番号8)を使用する別のPCRを行った。該PCR産物を配列決定し、apPKGと命名し、GenBankデータベースにアクセッション番号AY362340(配列番号9)として登録した。推定アミノ酸配列は配列番号10である。
【0083】
配列解析
種々のPKGの配列アライメントおよび保存残基の同定を、Biology Workbench(http://workbench.sdsc.edu/)から入手可能なプログラム一式として提供されるClustal Wおよびボックス・シェイド(box-shade)・アルゴリズムを使用して行った。タンパク質の発現および精製。プライマー:5'-tggcggccgctcatgagaggatcgcatcaccatcaccatcacggcaacggtgccagttcgaacacgcacttc (配列番号11)および5'-gcaggctctagagaaatcaatgtcccagccggataactcgtc (配列番号12)を使用するAplysia CNS cDNAからのPCR増幅により、apPKGコード領域のN末端にHisタグを付加した。該PCR産物をpFasBac-1(Invitrogen)のNotIおよびXbaI部位内にサブクローニングし、ついで配列決定により確認した。得られた構築物pFB1apPKGはN末端ヒスチジンエピトープタグを含有する。Max Efficiency DH10Bac細胞(Invitrogen)内へのpFB1apPKGの形質転換、組換えクローンの同定、および組換えバキュロウイルスシャトルベクターDNA(bacmid)の単離を、製造業者の使用説明書(Invitrogen)に従い行った。Sf9細胞(Spodoptera frugiperda)にトランスフェクトし、それを、100U/ml ペニシリン(Invitrogen)および0.1mg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するSf-900 IISFM培地(Invitrogen)内で27℃で単層として増殖させることにより、組換えバキュロウイルスを得た。組換えbacmid DNAでのトランスフェクションは、CellFectin(Invitrogen)を該製造業者の使用説明書に従い使用して行った。陽性ウイルスクローンを、適切なタンパク質の発現を導くその能力により特定した。該発現は、トランスフェクションの3日後に集めたトランスフェクトされたSf9細胞の全細胞抽出物の、該タンパク質のHisタグに対する抗体を使用した免疫ブロッティングにより示した。apPKGタンパク質発現のため、該組換えバキュロウイルスを、10を超える感染多重度でSf9細胞に感染させた。72時間後に細胞を集め、組換えHis-apPKGをニッケルニトリロ酢酸樹脂(Qiagen, Valencia, CA)上で該製造業者の使用説明書に従い精製した。VASP(血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(vasodilator-stimulated phosphoprotein))を発現させるために、まず、以下のプライマー:5'-gtcgtgggatccccatcgatagcgagacggtcatctgt (配列番号13) および 5'-atcttgaattcctcgagggtcaaggagaaccccgctt (配列番号14)を使用するマウス脳cDNAからのPCR増幅により、VASPのコード領域を得た。該PCR産物をpGEX3X(Amersham Biosciences, Arlington Heights, IL)のEcoRIおよびBamHI部位内にサブクローニングし、ついで配列決定により確認した。得られた構築物pGEXVASPはC末端GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)エピトープタグを含有する。VASP-GST、Elk1-GST、MEKK1C(MAPキナーゼキナーゼキナーゼ1C)-GST、MEK1(MAPキナーゼキナーゼ1)-GSTおよびERK1-GST融合タンパク質を大腸菌(Escherichia coli)DH5α内で発現させ、精製した(Sungら, 1996に記載されているとおりに行った)。
【0084】
ノーザンブロット
全RNAを種々の組織から抽出し、変性アガロースゲル電気泳動により分離した。ついで該ゲルをナイロンメンブレンに転写した。得られたブロットを、既に記載されている(Alberiniら, 1994; Sungら, 2001)ようにして、放射性標識apPKGおよび5SリボソームcDNAとハイブリダイズさせた。
【0085】
単一細胞RT-PCR
単一のSNを500μlのTri Reagent(Molecular Research Center, Cincinnati, OH)に移し、全RNAを該製造業者の使用説明書に従い単離した。各サンプルからのcDNAを、プライマーとしてのランダムヘキサマーおよび逆転写酵素(SuperScript II)を使用して合成した。各サンプルからのアリコート(2μl)を使用して、以下の特異的プライマーセットを使用するPCR(40サイクル)により特異的断片を増幅した:(1) ニューロン一酸化窒素シンターゼ (NOS) (GenBankアクセッション番号AAK83069), 5'-gtaccctcacaggacgagtc (配列番号15) および5'-tccttggacctctcttggtg (配列番号16) (nt 3610-4049); (2) SN特異的神経ペプチドであるセンソリン(sensorin)A (GenBankアクセッション番号X56770), 5'-aacagaaacagtctttcccc (配列番号17) および5'-tcttgactcaccaactgcc (配列番号18) (nt 43-331); ならびに(3) ニューロン特異的アクチン (GenBankアクセッション番号U01352), 5'-cagagagaagatgacccag (配列番号19) および5'-gggtaagagaagcaagaaag (配列番号20) (nt416-1298)。
【0086】
キナーゼアッセイ
in vitro PKG活性を、記載されている(Pohlerら, 1995)ようにして測定した。簡潔に説明すると、以下(単位はmM):25 Tris-HCl(pH 7.5)、5β-グリセロールリン酸、2 DTT、0.1 Na3VO4および10 MgCl2を含有するバッファー中、100ngのHis-apPKGを5μgの種々のペプチドと共にインキュベートした。10μM [γ-32P]ATPを加えることにより、該反応を開始させた。該インキュベーションを室温で20分間継続し、50mM EDTA(最終濃度)を用いて終結させた。標識ペプチドをP81フィルター(Whatman, Maidstone, UK)上に捕捉した。該フィルターを0.5%リン酸で洗浄し、乾燥させ、結合した32P-ホスホペプチドを液体シンチレーション計数により検出した。値の全てを、該基質の非存在下で得られた1分間当たりのバックグラウンドカウントに対して補正した。内在性apPKG活性を評価するために、5μgの神経節抽出物または軸索原形質を、1μM cGMPの存在下または非存在下で5μgのPKAインヒビターを含有するキナーゼバッファー(前記)中で使用した。ERK活性を、記載されている(Sungら, 2001)ようにしてアッセイした。簡潔に説明すると、タンパク質および500μM ATPをキナーゼバッファー中、室温で20分間インキュベートした。該反応混合物を10% SDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、抗体(Ab)pTpYmapk、AbpYmapk、AbpTmapkまたはAbpElk1を使用するウエスタンブロッティングに付した。
【0087】
in situハイブリダイゼーション
まず、神経節を動物から単離し、脱鞘(desheathed)し、PBS(pH 7.4)中の4% パラホルムアルデヒド中で3時間固定した。ついで該神経節を1×PBS中で数回洗浄し、ついで1μPBS中の80μg/ml プロテイナーゼK(Ambion, Austin, TX)で室温(RT)で30分間消化した。1×PBS中での数回の洗浄後、該神経節を再び、4% パラホルムアルデヒドにより20分間固定し、ついで1×PBS中で更に数回洗浄した。1.32% トリエタノールアミンHCl(pH 8.0)での処理(室温で10分間)、1.32% トリエタノールアミンHCl(pH 8.0)中の0.24% 無水酢酸での処理(室温で20分間)および1×PBSでの数回の洗浄の後、該神経節をHybバッファー(50%ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト液、0.25mg/ml 酵母tRNAおよび0.5mg/ml サケ精子DNA)中、60℃で2時間プレハイブリダイズさせ、ついでアンチセンスまたはセンスのジゴキシゲニン(DIG)標識cRNA(1μg/ml)を含有する新鮮なHybバッファーで60℃で一晩ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、まず、神経節を、新鮮なHybバッファー中で68℃で30分間、ついで0.2×SSC中で68℃で1時間洗浄した。PBST(1×PBSおよび0.1% Triton X-100)中での平衡化の後、神経節をPBST中の10%ヒツジ血清で室温で30分間ブロッキングし、ついで、1%ヒツジ血清を含有する1×PBST中、アルカリホスファターゼ(Roche, Indianapolis, IN)に結合した抗DIG抗体(1:5000)と共に4℃で一晩インキュベートした。ハイブリダイゼーションシグナルをニトロブルーテトラゾリウムクロリド/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファート(Roche)で可視化した。
【0088】
ウエスタンブロット法
タンパク質サンプルを10%SDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、ついでニトロセルロースメンブレン(Schleicher & Schuell, Keene, NH)上に転写した。該ブロットを種々の遺伝子特異的一次抗体および適当なホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体でプローブした。Picoタグ化学発光系(Pierce, Rockford, IL)を使用して、免疫反応性を検出した。
【0089】
免疫細胞化学
神経節、神経または培養細胞をPBS(pH 7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで固定した。一次抗体を、0.1〜0.5% Triton X-100を含むTBSおよび5%ヤギ血清で補足されたTBSで希釈し、4℃で一晩インキュベートした。数回の洗浄の後、Alexa Fluor 594-または488-結合二次抗体(Molecular Probes,Eugene, OR)を室温で1時間適用した。ついで該細胞を共焦点蛍光顕微鏡検査(LSM510共焦点顕微鏡; Zeiss, Oberkochen, Germany)により可視化し、画像を集めた。
【0090】
細胞培養
SNを50〜80gの動物の側神経節から単離し、L15培地および50%血リンパを含有するポリ-L-リシン被覆ディッシュ上にプレーティングした(DaganおよびLevitan, 1981; Glanzmanら, 1989)。培養を18℃で7日間まで維持した。培地を2日ごとに交換した。電気生理学的試験の1時間前に、薬物を洗い落とした。
【0091】
電気生理学
各記録を開始する前に、血リンパを人工海水と培地との1:1混合物(血リンパを含まない; pH 7.6)で置換した。細胞内刺激および記録には標準的な技術を用いた(Ambronら, 1996)。細胞体スパイク閾値を20m秒の脱分極パルスの標準系列で測定した。反復発火を、1、2、3および5nAでの一連の2秒の脱分極パルスまたは20m秒の閾値の電流の2.5倍での1秒の脱分極パルスにより惹起されたスパイクの数を計数することにより定量した。スパイク振幅を活動電位のベースラインからピークまで測定した。スパイク持続時間は、その最大高の半分における活動電位の幅であった。
【0092】
蛍光タンパク質標識
Alexa Fluor 546 Protein Labelingキット(Molecular Probes)を該製造業者の使用説明書に従い使用して、BSA、apPKGおよびERK1タンパク質を標識した。
【0093】
SNマイクロインジェクション
マイクロインジェクションピペットを、Sutterプログラム制御型引上げ機プラー(programmable puller)を用いて調製した。ピコスピリッツァー(picospritzer)を使用して一定条件(1平方インチ当たりのポンドおよび持続時間)下で正の空気圧をかけることにより、Alexa Fluor 546標識タンパク質(0.75μg/μl; 10mM Tris-HCl(pH 7.3)、100mM NaClおよび0.05% ファストグリーン色素中)を培養SN内にマイクロインジェクションした(Sungら, 2000)。
【0094】
材料
組換えウシPKG 1α、グアノシン3',5'-サイクリックモノホスホロチオアート,8-(4-クロロフェニルチオ)-,Rp異性体(Rp-8-pCPT-cGMPS)、アデノシン3',5'-サイクリックモノホスホロチオアート,Rp異性体(Rp-cAMPS)、1-H[1,2,4]オキサジアゾロ[4,3-a]キノキサリン-1-オン(ODQ)、L-チオシトルリン、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩(L-NAME)、タンパク質キナーゼAインヒビター6-22アミドおよびPKG基質BPDEtideはCalbiochem (La Jolla, CA)から購入した。ペプチドA、CおよびDならびにMAPK p42タンパク質はSanta Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から入手した。以下の抗体を入手し、製造業者の使用説明書に従い使用した:抗ホスホ-VASP (Ser239)(UpstateCell Signaling Solutions (Lake Placid, NY)から入手)、リン酸化MAPKに対するポリクローナル抗体(AbpTpYmapk)およびホスホ-Elk1(Ser383; AbpElk1)(Cell Signaling Technology (Beverly, MA)から入手)、ならびに抗pY MAPK (AbpYmapk)、抗pT MAPK (AbpTmapk)およびα-アクチン(Sigma (St. Louis, MO)から入手)。
【0095】
6.2 結果
Aplysia SNはニューロンI型PKGを含有する
LTHの誘導におけるPKG経路の役割を調べるために、Aplysia PKGをクローニングした(GenBankアクセッション番号AY362340)。ApPKG cDNAは、推定733アミノ酸のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有する。公知PKGの全てに合致して、該Aplysiaキナーゼは、2つのタンデムな環状ヌクレオチド結合ドメインおよびC末端触媒ドメインを含有する(図1A、上図)。該apPKG配列によりコードされる推定タンパク質は、Drosophila PKGに対して50%を超えるアミノ酸同一性を有する公知cGMP依存性タンパク質キナーゼならびに哺乳類I型およびII型PKGアイソフォームに非常に類似している(図1A、下図)。しかし、それはDrosophila DG1に最も近縁なようである(図1B)。
【0096】
apPKG発現のパターンを判定するために、成体動物の種々の組織からの全RNAのノーザンブロットを、該cDNAの塩基209-492に対応する32P標識した283bp断片でプローブした。該プローブは、神経節では発現されたが筋肉や生殖器では発現されなかった単一の3.0kbの転写産物を検出した(図1C)。5SリボソームRNAに対する32P標識プローブは該組織の全てにおいて0.19 kbの転写産物を検出した(図1C)。
【0097】
該メッセージの起源を位置特定するために、該apPKGプローブを使用して、in situハイブリダイゼーション用のセンスおよびアンチセンスリボプローブを作製した。該アンチセンスプローブは、SNクラスターにおいて、ならびに足神経節および側神経節内のニューロンのほとんどにおいて、高レベルのapPKG mRNA発現を検出した(図1D、左パネル)。該センスプローブからは、取るに足らない程度の標識しか生じなかった(図1D、右パネル)。
【0098】
ついで、まず、バキュロウイルス/Sf9系においてapPKG cDNAを発現させることにより、apPKGの触媒特性を調べた。該細胞を血清の存在下で増殖させて不活性なHisタグ付き組換えapPKGを産生させ、一方で、該細胞から血清を枯渇させて構成的に活性なapPKGを作製した。両方の組換えapPKG形態をアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。
【0099】
不活性apPKGを100nM 8-Br-cGMPにより活性化させたところ、これは、I型PKGの全てに対するペプチド基質であるBPDEtide(GlassおよびKrebs, 1982)をたやすくリン酸化した(図2A)。活性apPKGと組換えウシIα型可溶性PKGとの比較は、どちらのキナーゼも幾つかのPKGペプチド基質をたやすくリン酸化することを示した(図2B)。重要なことに、いずれのキナーゼも、膜結合II型PKGに対する好ましい基質であるペプチドC(Hallら, 1999)をリン酸化しなかった(図2B)。239位のセリンがI型可溶性PKGにより特異的に認識されるタンパク質VASP(Smolenskiら, 1998)も調べたところ、ウシおよびAplysiaキナーゼは共にこの部位をリン酸化することが判明した(図2C)。これらの研究は、apPKGがPKGの可溶性I型ファミリーのメンバーであることを立証するものである。
【0100】
apPKGは軸索に局在し、そこでapPKGは神経損傷により活性化されSNの細胞体に逆行性輸送される
Aplysia末梢神経p5-p9は中央体壁および尾領域を神経支配し、SNの軸索を含有する(Waltersら, 1983a,b; BillyおよびWalters, 1989)。apPKGが軸索に存在することを確認するために、ウサギポリクローナル抗体AbapPKGを、該タンパク質のN末端(アミノ酸18-128)に位置するペプチドに対して産生させた。AbapPKGをアフィニティ精製し、それを使用してウエスタンブロットをプローブした。AbapPKGは足神経節および側神経節抽出物中の80kDaおよび100kDaのポリペプチドを認識したが、筋肉または生殖器組織のものを認識せず、また、アフィニティ精製された80kDaの組換えタンパク質を認識した(図3A)。該100kDaバンドはapPKGの優勢形態であると考えられる。なぜなら、それは最も豊富であり、80kDa成分と比べてcGMPに対してより高いアフィニティを有するからである。両方のバンドは、ヒトIα型PKG(アミノ酸残基657-671: apPKGに対して50%の同一性)に対して作製された市販抗体によっても認識された。apPKGは幾つかのキナーゼおよび他の酵素に関するコンセンサス配列を含有し、該100kDa成分は1以上の翻訳後修飾を含有しうるであろう。
【0101】
apPKGが軸索に存在するかどうかを確認するために、軸索原形質を神経p5-p9から押し出した。図3Aは、両方のポリペプチドが存在したことを示している。該SNは神経p5-p9に軸索を有し、AbapPKGについての免疫細胞化学法は該クラスターにおけるSNの実質的に全てを染色した(図3B)。軸索apPKGに対する神経損傷の効果を確認するために、片側の神経p5-p9を破砕し、それにより各神経における軸索を切断した。その後の種々の時点で、SN細胞体のクラスターを含む同側および対側の足神経節および側神経節においてapPKG活性をアッセイした。図4Aに示すとおり、神経破砕後、有意なapPKG活性が同側側神経節に出現するまでに約16時間の遅延が認められた。ついで該活性は少なくとも24時間増加したが、48時間の時点ではベースラインとの有意差は認められなかった。対側対照側神経節においてはapPKGはほとんどまたは全く検出されなかった(図4A)。重要なことに、同側足神経節ニューロンの細胞体におけるapPKG活性は軸索切断後の48時間にわたって基底レベルのままであったが(図4A)、このことは、apPKGの活性化が側神経節におけるニューロンに選択的であることを示している。
【0102】
細胞体においてapPKG活性が現れるまでの長い遅延は、該キナーゼが正の損傷シグナルであるという考えに符合する。さらに、apPKGは、逆行性輸送系へのアクセスをもたらしうる核局在配列(NLS)を含有する(AmbronおよびWalters, 1996; SchmiedおよびAmbron, 1997; Hanzら, 2003)。この可能性を調べるために、標準的な破砕-結紮プロトコルを用いた(Ambronら, 1995; Johansonら, 1995)(図4B)。神経p5-p9を片側のみにおいて破砕し、該破砕部位の近位の各神経に結紮を施した。破砕部位から遠くへ(細胞体に向かって)輸送されるタンパク質は結紮の後方の軸索原形質内に蓄積し、それをそこから回収することが可能である。24時間後、以下のような神経セグメント0.5cmを取り出した:(1)破砕(Cr)部位の近位、(2)破砕神経の結紮(Cr/Lig部位)に対する遠位、および(3)対照の同側の結紮(Lig部位)に対する遠位(図4B、上)。ついで各セグメントから、および神経損傷を受けていない動物由来の神経p5-p9のセグメントから、軸索原形質を押し出した。等量の各軸索原形質をapPKG活性に関してスクリーニングしたところ、非損傷の動物からの軸索原形質における基底活性と比較して、Cr/Ligセグメントからの軸索におけるapPKG活性には10倍の上昇が認められた(図4B、下)。これとは対照的に、CrセグメントにおけるapPKG活性は基底活性より3倍大きいに過ぎず、LigセグメントにおけるapPKG活性は基底レベルであった。
【0103】
Cr/Lig部位におけるapPKG活性の蓄積は、非損傷および損傷神経におけるapPKGタンパク質の分布を調べるためにAbapPKGを使用した免疫細胞化学研究により裏付けられた。apPKG染色はナイーブ(未処置)神経において軸索に沿って均一に分布した(図4C、パネル1)。しかし、神経破砕後、Cr部位における染色の減弱(図4C、パネル3)およびCr/Lig部位における軸索の端部での有意な増強(パネル4)が認められた。Lig部位における染色の増強は認められなかった(図4C、パネル2)。CrおよびLig部位と比較した場合のCr/Lig部位におけるapPKGタンパク質および活性の両方の蓄積は、apPKGが正の損傷シグナル(Ambronら, 1995)であることの有力な証拠である。
【0104】
一酸化窒素-cGMP-PKG経路はin vitroでSNにおけるLTHの誘導を調節する
Aplysia SNを神経節から取り出して軸索切断し、個別に培養下に置くと、それらはその軸索を再生し、LTHの2つの特徴であるスパイク閾値の減少および反復発火の増加を示す(Ambronら, 1996; Bediら, 1998; SungおよびAmbron, 2004)。このLTHの出現をより詳細に調べるために、in vitroでのSNからの電気的特性を第2日〜第7日に記録し、in situでの該クラスター内のSNからの電気的記録と比較した。in vitroで試験した細胞の約10%は十分な静止電位を有していないか、あるいは発火に無反応性であったので、この研究に使用しなかった。既に報告されているのと同様の、閾値の減少および反復発火の増加が検出され、軸索切断したSNは、対照と比較して有意なスパイク拡大およびスパイク振幅増加を示すことも判明した(図5)。該変化は第2日において顕著であり、それは少なくとも第7日まで持続した。電気的特性におけるこれらの同様の4つの変化が軸索切断後の過剰興奮性ラットDRG SN(AbdullaおよびSmith, 2001)において生じることは、神経因性疼痛の一因となりうる感覚変化の研究のためのモデル系としての、分離したAplysia SNの使用を支持するものである。
【0105】
LTHの出現にapPKG活性を要するかどうかを調べるために、該SNを神経節から可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)インヒビターODQ、PKGインヒビターRp-8-pCPT-cGMPSまたはPKAインヒビターRp-cAMPSの存在下で取り出した。その最後者を使用したのは、PKAが、PKGと共通の特性を有し(Scott, 1991; FrancisおよびCorbin, 1994)、Aplysia SNにおける種々の形態のシナプス可塑性と関連づけられているからである(Ghirardiら, 1992; ByrneおよびKandel, 1996; Bediら, 1998; MullerおよびCarew, 1998; Chainら, 1999; Liaoら, 1999; SuttonおよびCarew, 2000; Antonovら, 2003)。ついでその細胞を、in vitroで前記インヒビターの存在下で再生できるようにし、第3日に、それらの電気生理学的特性を、同一神経節から同時に取り出したが薬物に曝露されていないSNのものと比較した。Rp-8-pCPT-cGMPSおよびODQは共に、反復発火の増加(図6A)およびスパイク閾値の減少(B)を妨げることが判明した。これとは対照的に、該PKAインヒビターはいずれのパラメーターにも有意な影響を及ぼさなかった。Rp-8-pCPT-cGMPSもODQも、2日培養したSNに添加された場合には、興奮の出現を抑制しなかったが、このことは、apPKG活性化が一過性であることを示す図4Aのデータを裏付けるものである。これらの実験においてはスパイク拡大も振幅も評価しなかった。
【0106】
哺乳類ニューロン(Monfortら, 2002)およびAplysiaニューロン(LewinおよびWalters, 1999)に関して報告されているのと同様のまたはそれらより更に低い薬物濃度を用いたこれらの処理はいずれも、静止膜電位に影響を及ぼさなかった。重要なことに、それらの処理は神経突起成長の度合またはパターンも改変しなかった。これとは対照的に、選択的MEKインヒビターであるU0126に対するSNの曝露は、重篤な成長欠損を引き起こした。
【0107】
sGCおよびPKGインヒビターによるLTHの抑制は、cGMP合成およびPKG活性化が感覚ニューロン内で生じることを示した。NOはsGCを介してcGMP産生を上昇させることが公知であり(Schlossmannら, 2003)、NOは酵素NOSにより産生される(BredtおよびSnyder, 1990; Morozら, 1996)。NOS活性化がLTHに必要とされる可能性を調べるために、神経節から取り出した直後(0時間)またはin vitroで16時間後の1個のSNにおけるapn-NOS mRNAの細胞レベルを検出するためにRT-PCRを用いた。図6C(上パネル)に示すとおり、in vitroで16時間後には5個中4個の細胞が、有意な量のapnNOS mRNAを発現し、一方、0時間の細胞においては何も検出されなかった。これとは対照的に、SN特異的神経ペプチドであるセンソリン(sensorin)A(Brunetら, 1991)およびアクチンのニューロン特異的アイソフォーム(DesGroseillersら, 1994)のmRNAは、各細胞において豊富に存在していた(図6C、それぞれ第2および第3パネル)。
【0108】
L-チオシトルリンはapNOSの有効なインヒビターであり、前記のようなin vitroでのこの薬物へのSNの曝露は、非処理対照と比較して最高発火を顕著に低減させた(図6D)。もう1つのNOSインヒビターであるL-NAMEはまた、同一条件下でLTHを低減させたが、L-チオシトルリンほど有効ではなかった(図6D)。これらのデータは、SNにおけるLTHの誘導にNO-cGMP-PKG経路が必要とされることを示している。
【0109】
細胞体apMAPKはその活性化部位においてapPKGによりリン酸化される
末梢損傷後のAplysia SNにおけるLTHの誘導には遺伝子転写を必要とするが(LewinおよびWalters, 1999)、apPKGキナーゼが細胞体への進入後に核に移行するならば該誘導はapPKGにより直接的にもたらされうるであろう。免疫染色は、いくつかのSN核において、低い構成的レベルのapPKGを示したが、軸索切断後には増加は認められなかった(図3B)。このことは、apPKGが、核内に輸送される因子を活性化することにより、LTHの誘導に寄与することを示唆していた。MAPKファミリーのERKメンバーはこの因子の有力な候補である。なぜなら、LTHは、SN細胞体内に組換えERK1を注入することにより誘導されうるからである(Sungら, 2001)。ERKが損傷後に活性化されるかどうかを評価するために、p5-p9をin vivoで破砕し、それを使用して損傷および対照の側性ニューロン(pleural neuron)のウエスタンブロットを作製し、これらを、T-E-Y部位における二重リン酸化により活性化されたERKを認識する抗体(AbpTpYmapk)でプローブした。該抗体は、該損傷の4または8時間後の側性ニューロンにおいて活性をほとんど有さなかった単一の43kDaのポリペプチドを認識した(図7A、上パネル)。しかし、16時間までに、対側対照と比較して、破砕側のより活性なキナーゼが認められ、そのレベルは少なくとも48時間にわたり上昇し続けた(図7A、上パネル)。
【0110】
Aplysiaニューロンは、ERK2ホモログであるapMAPK(Michaelら, 1998)を含有し、これはin vitroで損傷後に核内に進入する(Martinら, 1997)。apMAPKはERK 1および2と同じ触媒ドメインおよびT-E-Y活性化部位を有する。apMAPKが、損傷後に活性化されたキナーゼであるかどうかを確認するために、同じブロットを、apMAPKを特異的に認識する抗体であるD8(Martinら, 1997)でプローブしたところ、該抗体は43kDaの損傷で活性化されたキナーゼを認識することが判明した(図7A、下パネル)。該抗体は活性と不活性の両方のapMAPKを検出し、該サンプル間で全apMAPKタンパク質の量の差異はほとんど認められなかった。細胞体における活性apPKGの到達の直後にapMAPK活性が増加し始めるという知見(図4A、7Aを比較されたい)は、apPKGとapMAPKとの間の関連性を示唆している。側神経節ニューロンのライセート(lysate)を調製し、AbpTpYmapkを使用して活性apMAPKに関してサンプルをモニターすることにより、この考えを調べた。該ライセートにおいては内在性ホスホapMAPKはほとんど検出されなかった(図7B、レーン1)が、活性apPKGまたは8-Br-cGMPの添加は、抗体D8により認識された活性ap-MAPKのレベルを顕著に増加させた(レーン2、3)。驚くべきことに、該活性化は、上流のキナーゼMEKの強力なインヒビターであるU0126により阻止されなかった(図7B、レーン4)。興味深いことに、軸索原形質への活性apPKGの添加はapMAPKを活性化しなかった(図7B、レーン5、6)(「考察」を参照されたい)。該ライセートでの別の試験は、apPKG活性化ap-MAPKがその生理学的基質Elk1を適当なSer383においてリン酸化したことを示した(図7C、レーン3)。
【0111】
U0126の存在下のapMAPKの活性化は、apPKGがapMAPKを直接的に活性化することを示唆しており、そこで、活性apPKGを組換え哺乳類ERK2と共にインキュベートした。ERK2はapMAPKの代替物(surrogate)であった。しかし、どちらのキナーゼも標的T-E-Y部位を含有する。該ライセートの場合と同様に、apPKGはERK2を活性化してElk1をリン酸化した(図7C、レーン6)。この実験を反復したところ、活性化ERK2がAbpTpYMAPKにより認識されたが、このことは、それが二重にリン酸化されたことを示している(図7D、上段、レーン2)。該活性化は特異的であった。なぜなら、それはBPDEtideの存在下では低下したからである(図7D、上段、レーン3)。ERK2は、-T-および-Y-アミノ酸の両方がリン酸化される場合に最大限に活性化されるが、それでもなお、PKGはセリン/トレオニンキナーゼである。したがってそれは、細菌性組換えERK2は、-Y-成分上のホスファートの存在に起因して低レベルの活性を有する(ChaおよびShapiro, 2001)ことと関係する。実際、ERKpY185に対する抗体はウエスタンブロット上の該組換えERK2基質を認識した(図7D、中段)。ERK2をapPKGと共にインキュベートした場合、-Y-のリン酸化の増強は認められなかった(図7D、中段、レーン2)。しかし、二重ブロットをERKpT183に対する抗体でプローブした場合、apPKGの存在下で-T-のリン酸化の増強が認められた(図7D、下段、レーン2)。この抗体は一リン酸化トレオニンおよび二重リン酸化ERKと特異的に反応する。この結果は、ap-PKGが、Y-185上にホスファートを既に含有するERK2をリン酸化することによりERK2を完全に活性化しうることを示している。
【0112】
つぎに、apPKGと組換えERK2のインキュベーションにより、最大限に活性化されたキナーゼを産生するMEK1により産生されるものに匹敵する酵素活性を有する活性ERK2が産生されるかどうかを調べた。ERK2活性をSer383におけるElk1のリン酸化により測定し、MEK1をMEKK1の触媒サブユニット(Xuら, 1995)により活性化した。予想どおり、apPKGは、MEK1により産生されるものに類似した活性を有するERK2を産生した(図7E)。この結果は、MEK1に加えて、PKGがERK2のアクチベーターであることを示している。
【0113】
PKGがY185にホスファートを既に有するERK2上のT183をリン酸化することから(図7D)、本質的な疑問は、-Y-において一リン酸化されたapMAPKが軸索切断後のapPKGによるリン酸化に利用可能かどうかである。この疑問の解答は、まず、p5-p9をin vivoで破砕することにより得られた。ついで、サンプルをブロットし、ERKpY185に対する抗体でプローブした。実際、apMAPKpYは損傷の8時間後の側性ニューロン中に存在し、その発現は、16時間の時点で対側対照と比較して、破砕側で増強された(図7F、上パネル)。apMAPKpYは、分析した2匹のナイーブ動物においては検出されなかった(図7F、上パネル)。活性および不活性の両方のapMAPKを検出する抗体を用いた該ブロットのプロービングは、該サンプル間で全apMAPKタンパク質の量における差異がほとんど存在しなかったことを示した(図7F、下パネル)。したがって、損傷の16時間後の細胞体におけるapMAPKpYの存在は、破砕部位からのapPKGの到着と相まって(図4A)、apMAPKの完全な活性化を引き起こすはずである。
【0114】
apPKG活性が抑制されるとin vitroでのSNの核におけるapMAPKのレベルは低下する
前記の証拠は、apPKGが、in vivoにおいて神経破砕に応答してSNの核に進入しないことを示している(図3B)。それにもかかわらず、I型PKGは推定NLSを有し(Gudiら, 1997)、apPKGは、NLSとして機能しうるATP結合ドメイン内の短く伸びた正荷電アミノ酸(453KCLKKKHI)を有する。Aplysiaニューロンの核内へのタンパク質の輸送は、その蛍光標識コグネイトを細胞体内に直接注入することにより容易に評価される(Ambronら, 1992; Schmiedら, 1993; Gunstreamら, 1995)。したがって、Alexa標識組換えapPKGをin vitroで2日後にSNの細胞体内に注入し、神経突起を切断して損傷応答を開始させ、30分後、該細胞を蛍光顕微鏡法により検査した。該標識タンパク質の全ては依然として細胞質内に存在していた(図8A)。予想されるとおり(Ambronら, 1992; Schmiedら, 1993; Gunstreamら, 1995)、Alexa標識BSAも、注入後に細胞質内に残存していた。これとは対照的に、種々の細胞型の核内に輸送される(Karin, 1994)注入されたAlexa標識活性組換え脊椎動物ERK1は、迅速に核内に進入し、分離した斑点として核内に分布した(図8A)。Aplysia核内への他のタンパク質の輸送後に、同様の斑点が認められている(Ambronら, 1992; Schmiedら, 1993; Gunstreamら, 1995)。
【0115】
apPKGがAplysia SNの核に進入できないことは、それがapMAPKの核輸送を促進することによりLTHの誘導に寄与するという考えと一致する。そうであるならば、apPKG経路の抑制は核内へのapMAPKの軸索切断誘導性進入を阻止するはずである。したがって、LTHを誘導する条件下、PKGブロッカーであるRp-8-pCPTcGMPSまたはPKAブロッカーであるRp-cAMPSにSNをin vitroで曝露させた(図6A)。第3日に、該細胞を固定し、透過処理し、抗体D8に曝露してap-MAPKを可視化した。共焦点顕微鏡検査は、未処理細胞およびRp-cAMPS曝露細胞が同レベルの核染色を有することを示した(図8B)。これとは対照的に、Rp-8-pCPTcGMPSで処理された細胞では、核染色の劇的な減弱が認められた(図8B)。すなわち、LTHの誘導および核内のap-MAPKの存在の両方がapPKG活性に依存している。
【0116】
6.3 考察
神経損傷後のヒトにおける持続性神経因性疼痛は身体的および精神的に消耗させる。この疼痛の重要な成分は、しばしば、一次求心性ニューロンにおいて出現するLTHであるため、軸索切断がどのようにしてLTHを誘導するのかを理解することが重要である。類似した特性を有するLTHが、軸索切断後のAplysiaの侵害受容SNにおいて出現することから、LTHの誘導を担うシグナリング経路を特定するために、これらのニューロンの実験上の利点を利用した。1つの大きな驚きは、この経路がPKGによるapMAPKのリン酸化を伴うことであった。これは、伝統的なMAPキナーゼカスケードに代わるものであり、PKGおよびMAPKが、神経損傷後に、特有の役割を果たすことを示唆している。
【0117】
apPKGはSNにおける正の損傷シグナルである
側神経節内のSN内および他のニューロン内にそのmRNAが存在しているAplysia I型PKGをクローニングした(図1D)。末梢神経をin vivoで破砕したところ、約16時間の遅延の後にようやく、側性ニューロンの細胞体においてapPKG活性が出現した(図4A)。神経損傷に対する応答における同様の遅延は正の損傷シグナルに起因すると考えられている(Schmiedら, 1993; Sungら, 2001; Linら, 2003)。AbapPKGでプローブされたウエスタンブロットは、末梢神経から押し出された軸索原形質内にapPKGが存在することを示した(図3A)。また、タンパク質はAplysia軸索に沿って1.5mm/時間の速度で逆行性輸送されるため(Ambronら, 1992; Schmiedら, 1993; Gunstreamら, 1995)、該遅延は、神経節から2cm離れて位置する破砕部位からapPKGが輸送されたことに合致する。破砕部位の近位に結紮を施したところ、活性化apPKGおよび全apPKGタンパク質は破砕部位に対して結紮の遠位側に蓄積することが判明した(図4B、C)。これらの知見は、apPKGが正の損傷シグナルであることを立証するものである。
【0118】
損傷誘導性輸送を引き起こすメカニズムは不明である。apPKGは、損傷後にそれを小胞に結合させうる幾つかの潜在的なミリストイル化部位を含有するが、apPKGは細胞下分画後に可溶性であることが判明した。Hanzら (2003)は、NLSを含有するタンパク質がラット坐骨神経においてダイニンおよびインポーチン(importin)を介して逆行性輸送されることを示しており、apPKGは、同様のメカニズムを用いて輸送されている可能性がある。
【0119】
in vitroでの軸索切断されたAplysia SNにおけるLTHの出現はNOS、sGC、apPKGおよびapMAPKに依存する
該SN(図5)および神経損傷後の哺乳類侵害受容SN(AbdullaおよびSmith, 2001)の両方において出現するLTHは、類似した電気生理学的特性を有する。この合致が、保存されたメカニズムを反映しているならば、LTHは、両方の細胞型に共通の経路により誘導されるものでありうる。SNをin vitroで検査したところ、スパイク閾値の軸索切断誘導性減少および過剰興奮の増強は、それぞれapPKG、sGCおよびNOSのインヒビターであるRp-8-pCPT-cGMPS、ODQおよびL-チオシトルリンにより阻止されることが判明した(図6A、B、D)。さらに、Rp-8-pCPT-cGMPSはまた、SNの核内のapMAPKのレベルを約1/3に減少させた(図8B)。これらの知見は、NOSおよびapPKGの活性化、核内へのapMAPKの進入ならびにLTHの誘導の間の直接的な関係性を示している。該SNにおけるNOS mRNA発現が損傷後に増加したという知見(図6C)は、NOSタンパク質のレベルが該経路の律速段階でありうることを示唆している。ニューロンNOS(nNOS)のmRNAおよびタンパク質の発現も、末梢軸索切断後のDRGニューロンにおいて増加する(Vergeら, 1992; Fiallos-Estradaら, 1993; Zhangら, 1993)。
【0120】
cAMPおよびPKAもLTHの誘導および維持に関与しており(ScholzおよびByrne, 1988; GoldsmithおよびAbrams, 1992; Bediら, 1998)、これは、PKAおよびPKGが共通の特性を有することから、ここでの関心事であった。しかし、PKAの膜透過性インヒビターであるRp-cAMPSへのSNの曝露は、LTHの誘導を妨げることもapMAPKの核内進入を阻止することもないことが判明した。これは、有害刺激により誘導されるLTHをPKAインヒビターが阻止しなかったという従来の知見(LewinおよびWalters, 1999)を確認するものである。
【0121】
損傷によるapPKGおよびap-MAPKの両方の活性化は興味深いものであった。なぜなら、それはこれらの2つのキナーゼ間の考えられうる関連性を示唆したからである(Zaragozaら, 2002)。実際、活性apPKGをニューロンライセートに加えたところ、それはap-MAPKを活性化したばかりでなく(図7B)、ERKの遍在性上流アクチベーターであるMEKを要しない経路によってもそれを行った。この応答は生理学的に適切なものである。なぜなら、活性化apMAPKはその核基質Elk1をSer383においてリン酸化し(図7C)、それは転写活性に必須だからである(Maraisら, 1993; Whitmarshら, 1995)。apMAPKと同じT-E-Y活性化部位を有する組換え脊椎動物ERK2と共に活性apPKGをインキュベートしたところ、該キナーゼ間の直接的な相互作用が確認された。ERK2は活性化される(図7C)と共に二重にリン酸化された(D、上)ことが判明した。後者の知見は、ERK2が十分に活性があることを示していたが、これは、等量のap-PKGまたはMEK1が、同等レベルまでERK2を活性化した別の研究により裏付けられた(図7E)。
【0122】
PKGはチロシンをリン酸化できないセリン-トレオニンキナーゼであるため、apPKGが最大限に活性化されたERK2を産生するという示唆は矛盾を生じる。しかし、組換えERK2はホスホ-チロシン-185を既に含有するため(図7D、中)、apPKGによるトレオニン-183のリン酸化(図7D、下)は、十分に活性化されたERK2を産生するはずである。apPKGによるapMAPKpYのリン酸化は興味深い。というのも、ERK2pY185が脊椎動物細胞において検出されており(Yaoら, 2000; ChaおよびShapiro, 2001; ZhouおよびZhang, 2002)、その証拠は、apMAPKpY発現が神経損傷後のAplysiaニューロンにおいて増加することを示しているからである(図7F)。apMAPKpYは、二重リン酸化されたapMAPKからホスファートを除去するホスファターゼにより、あるいはT-E-Y部位においてチロシンをリン酸化する損傷活性化チロシンキナーゼにより産生されうる。LTHの誘導にapMAPKへのapPKGおよびチロシンキナーゼの集中を要するという可能性は、この経路に対する更なる制御をもたらすものであろう。LTHが損傷ニューロンの機能を根本的に改変し、該動物の行動の有意な変化を招くことを考えれば、これは理にかなっている。
【0123】
apMAPKは軸索原形質にも存在するが、神経損傷によっては活性化されない(Sungら, 2001; Linら, 2003)。損傷が軸索原形質のapPKGを活性化することを考えると、このことは逆説的である。1つの説明は、それらの2つのキナーゼが、異なる軸索に位置するというものであろう。しかし、末梢神経から押し出された軸索原形質に活性apPKGを加えたところ、apMAPKは、細胞体においてその活性化を引き起こしたのと同じ条件下で活性化されなかった(図7B)。明らかに、apMAPKをapPKGから遮断する軸索内のメカニズムが存在する。それにもかかわらず、これらの観察は、損傷による軸索中でのその活性化後、apPKGは、apMAPKを介した核事象に影響を及ぼすためには細胞体へ輸送され戻されなければならないことを意味している。
【0124】
本明細書に記載の分子経路に関しては、神経損傷がさらに他の経路によってapMAPKの移行または細胞体PKGの活性化を引き起こしうるという可能性が尚も存在する。また、NO-cGMP-PKG-MAPKシグナリング経路は、哺乳動物(Millan, 1999; Zimmermann, 2001)およびAplysia(Clatworthyら, 1995; ClatworthyおよびGrose, 1999; Farrら, 1999, 2001)の両方において、神経損傷部位の周辺で発生する炎症により誘導されるLTHにとって重要と思われる。どのようにして核apMAPKはLTHを調節するのであろうか?apMAPKは、CREB2(cAMP応答エレメント結合性タンパク質2)、cAMP応答エレメント(CRE)部位リプレッサー(Bartschら, 1995; Michaelら, 1998)、C/EBP(CCAAT/エンハンサー結合性タンパク質)、エストロゲン応答エレメント(ERE)部位に結合する転写因子(Alberiniら, 1994)、および血清応答エレメント(SRE)部位を調節する転写因子であるElk1(Linら, 2003)をリン酸化しうる。全3つの部位に対する結合は、神経損傷後に、異なる時間経過で増加する。したがって、EREおよびCREのそれぞれへのC/EBPおよびCREBの結合は迅速であるが、比較的短寿命であり(Dashら, 1998; Sungら, 2001)、一方、SREへのElk1の結合は二相性であり、数時間続く初期相と、数週間持続する第2相とを伴う(Linら, 2003)。CREBは、強力な活性に応答してDRGニューロンにおいてリン酸化されることから(JiおよびWoolf, 2001)、Aplysia SNにおける有害刺激に対するLTH応答にはCRE部位が必要である(LewinおよびWalters, 1999)。これらの考えは、SNにおけるLTHの初期誘導の際のapMAPKの標的としてCREB2およびC/EBPを指し示している。数週間のLTHの持続はapMAPKによるElk1のリン酸化により媒介されうる。この経路は選択的である。というのも、NOS、sGCまたはPKGの抑制は分離したSNにおけるLTHの出現を妨げたが、成長を阻止しなかったからである。この経路とLTHとの関連性が、基礎的かつ広く保存された関係であるならば、この経路を標的とする治療的介入を用いて、軸索再生を阻止することなく神経損傷後の持続性疼痛を緩和することが可能である。
【0125】
7.実施例:ラットにおけるPKG活性の阻害
図9は、PKGのインヒビターであるRp-8-pCPT-cGMPS(「RP-G」)を使用してPKGの活性化を損傷部位において阻害しうることを示している。この実験は以下のとおりに行った。標準的なプロトコールを用いてラットを麻酔し、坐骨神経を露出させ、RP-G、またはPKAのインヒビターであるRp-8-pCPT-cAMPS(「RP-A」)の非存在下または存在下で損傷させた。4時間後、図9のグラフの上の概要図に示されているようにして該神経を切断し、各セグメントをPKG活性に関してアッセイした。インヒビターの非存在下では(黒の棒グラフ)、活性PKGは細胞体に向かって輸送され、P3において豊富に存在していた。RP-A(灰色の棒グラフ)はこのパターンを変化させなかった。これとは対照的に、RP-G(白の棒グラフ)は該活性を喪失させた。
【0126】
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本明細書中には種々の刊行物が引用されているが、それらの内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A−1】上図, 保存された縦列cGMP結合ドメイン、ATP結合および触媒部位の位置、ならびに自己阻害配列の位置を示すapPKGの概要図。下図, Drosophila DG1(GenBankアクセッション番号AAB03405; 配列番号52)およびDG2T3a(AAA28459; 配列番号53)、ヒトIα(BAA08297; 配列番号54)およびII(CAA64318; 配列番号55)、マウスIβ(AAD16044; 配列番号56)およびII(AAA02572; 配列番号57)ならびにラットII(CAA85284; 配列番号58)PKGに対する予想apPKGアミノ酸配列のClustal W配列アライメント。保存アミノ酸は黒の陰影で示されており、類似アミノ酸は淡灰色の陰影で示されている。
【図1A−2】図1A−1の下図の続きである。
【図1A−3】図1A−2の続きである。
【図1B−D】B: PKGファミリーの系統学的解析。C: ニューロンにおけるapPKGの発現。多組織ノーザンブロットを32P標識N末端apPKG cDNA断片でハイブリダイズさせた。矢印はapPKG mRNAを示す。図の左側にRNA標準のサイズが示されている。ローディングの均一性を保証するために、5SリボソームRNA(矢印)に対する32P標識プローブを使用した。D: ジゴキシゲニン標識アンチセンスRNA(左)またはセンスRNA(右)でのin situハイブリダイゼーションによる側神経節および足神経節におけるapPKG mRNAの局在性。apPKG mRNAは側性感覚クラスター(矢印)において発現される。縮尺線, 200μm。
【図2A−C】apPKGはI型PKGである。A: 100nM 8-Br-cGMPSの存在下(+)または非存在下(-)の[32P]ATPからBPDEtideへの32Pの移行により、精製不活性組換えapPKGタンパク質(100ng)のキナーゼ活性を測定した。ペプチド対照反応を用いて、自己リン酸化により生じた活性を差し引いた(「材料および方法」を参照されたい)。10μM PKGインヒビターRp-8-pCPT-cGMPS(RP-G)の存在下、キナーゼ活性が抑制されたことに注目されたい。B: 4種類のI型PKGペプチド基質、すなわち、ペプチドA, RKISASGP(配列番号21); B, RKISASEFDRPLR(配列番号22; BPDEtide); およびD, RKRSRAE(配列番号23)H2Btide)の存在下の活性組換えapPKG(25ng)およびウシPKG Iα型(bPKG1α)(50ng)のキナーゼ活性。ペプチドC, QKRPRRKDTP(配列番号24)はII型PKG基質である。C: apPKGは組換えVASPをセリン-239においてリン酸化する。精製組換えVASP-GST(0.5μg)を、活性apPKG(100ng)もしくは組換えウシPKG(50ng)と共に、またはキナーゼバッファーの単体中、室温で20分間インキュベートした。SDS-PAGE後、ウエスタンブロットを抗ホスホVASP (Ser 239) (p-VASP S239)抗体でプローブした。
【図3A−B】神経系におけるapPKGタンパク質発現。上図, ウエスタンブロット(レーン当たり10μgのタンパク質)をapPKGタンパク質のN末端ペプチドに対する抗体Ab apPKGでプローブした。レーン1, 足神経節; レーン2, 側神経節; レーン3, 末梢神経から押し出された(extruded)軸索原形質; レーン4, 体壁筋; レーン5, 口球(buccal mass); レーン6, 生殖器; レーン7, 組換えapPKG。2つの特異的apPKGシグナルが矢印で示されている。下図, 該ブロットを剥ぎ取り、タンパク質ロード(protein load)を示すためにαアクチンに対する抗体で再プローブした。キロダルトン単位の分子量マーカーの位置が左側に示されている。B, apPKGはAplysia SNにおいて発現される。in vivoにおける神経破砕の24時間後にAb apPKGに曝露された側性感覚クラスターを通るZ系列から採取した2μm光学切片の共焦点顕微鏡検査。核を示すためにニューロンの中央における切片からの対側非損傷(CC)および損傷感覚クラスターの代表的イメージが示されている。二次Abの存在下で染色された損傷感覚クラスターはバックグラウンド染色を示しているに過ぎない。縮尺線, 20μm。染色は主として細胞質におけるものであるが、いくつかのニューロンの核も染色されている。apPKG染色パターンは損傷感覚クラスターと対側非損傷感覚クラスターとの間で実質的に同一であることに注目されたい。
【図4A−C】側神経節においては神経破砕後の遅延の後にapPKG活性が出現する。A, 末梢神経p5-p9を片側で破砕した。示されている時点で、側神経節(白色/灰色の四角形)および足神経節(付点/黒色の四角形)を損傷(黒色/灰色)および対側対照(CC)(白色/付点)側から集め、PKA特異的インヒビター6-22アミドの存在下でBPDEtideを基質として使用してapPKG活性に関してアッセイした。各点におけるapPKG活性を自己リン酸化に関して補正し、重複(duplicate)サンプルへの1M 8-Br-cGMPSの添加により惹起された全apPKG活性に対して基準化した。相対apPKG活性は、ナイーブ(未処理)動物からのサンプルにおける基底apPKG活性に対する各サンプルのapPKG活性の比であった。6匹の動物を、独立して、各時点で検査した。反復測定での2元ANOVAは、側神経節における軸索切断、時間およびそれらの交互作用の有意な効果を示した(各場合においてp < 0.001)。B, apPKGは損傷後に活性化され逆行性輸送される。p5-p9神経を破砕し、結紮した。該概要図において角括弧の一方により示されているとおり、24時間後、軸索原形質を該破砕(Cr)部位、破砕/結紮(Cr/Lig)部位および結紮(Lig)部位(対照神経上)から押し出した。各セグメントからの等量のタンパク質を含有する軸索原形質を、Aの場合と同様にして、apPKG活性に関してアッセイした。線は、非損傷神経から集めた軸索原形質をアッセイすることにより決定した基底apPKG活性のレベルを示す。誤差線は±SEMを表す。アステリスクは、その他の群の全てと比較した場合の有意差を示す(p<0.05; ANOVAおよびNewman-Keuls検定)。Cr/Lig部位における活性apPKGの富化は正の分子損傷シグナルに特徴的である。C, apPKGタンパク質は損傷後に逆行性輸送される。Bの場合と同様にして、末梢神経を破砕し、結紮した。24時間後、損傷神経および対照神経を固定し、Ab apPKGに曝露し、免疫組織化学用に加工した。各神経を貫く光学切片(2μm)を共焦点顕微鏡法により検査した。該イメージの全ては同一倍率であり、共焦点ビームへの同一曝露の後に捕捉した。各イメージは同じ方向に並べられている。すなわち、中央の細胞体は、示されているセグメントの左側になっている。1, 非損傷動物からの神経のセグメント。2, 損傷の対側の神経上にLig部位(矢印)を含有するセグメント。3, 24時間にわたって成長させた、Cr部位(矢印)を含有する神経のセグメント。4, Cr/Lig部位(矢印)を含有する神経のセグメント。5, 二次抗体のみに曝露された神経のセグメント。縮尺線, 該イメージの全てに関して20μm。
【図5A】図5A〜B.SNはin vitroでLTHを発生する。in vitroにおける時間後のSNの電気的特性を、in vivoにおける感覚クラスターにおける対照SNの場合(第0日)と比較した。A, 上図, in vitroにおける7日後のスパイク振幅の増加を示す、20m秒の脱分極パルスに応答して惹起された代表的な単一の活動電位。下図, 基準化(normalized)された1秒間の細胞内試験パルスに応答した活動電位放電。in vitroにおける7日後の該ニューロンにおける反復発火に注目されたい。
【図5B】図5A〜B.SNはin vitroでLTHを発生する。in vitroにおける時間後のSNの電気的特性を、in vivoにおける感覚クラスターにおける対照SNの場合(第0日)と比較した。B, 対照SNのスパイク持続時間、スパイク振幅、スパイク閾値および反復発火(灰色の棒グラフ)をin vitroにおける2〜7日後のもの(白色の棒グラフ)と比較するデータ。各棒グラフには、検査した細胞の数が示されている。誤差線は±SEMを表す。アステリスクはin vivo値からの有意差を示す(p<0.01; ANOVAおよびNewman-Keuls検定)。
【図6A−C】図6A〜D.NOS、sGCまたはapPKGの抑制はin vitroでのSNにおけるLTHの誘導を妨げる。SNを該クラスターから摘出し、Rp-8-pCPT-cGMPS(RpcGMPS)、Rp-8-pCPT-cAMPS(RpcAMPS)またはODQ(すべて10μM)の存在下でin vitroで成長させた。同時に摘出した他のSNは、対照(C)として、いずれのインヒビターにも曝露しなかった。A、B: in vitroでの第3日に、3つの試験電流での刺激に応答した反復発火を評価するために(A)、およびスパイク閾値を決定するために(B)、Rp-cGMPS、Rp-cAMPSまたはODQに曝露された12個のSN、および12個の対照SNを微小電極で固定した。該薬物に対する、より長期の曝露を避けるために、第3日より後ではなく第3日に該細胞を検査した。反復測定での2元ANOVAは、Rp-cGMPSおよびODQの両方が、2および3nAの試験電流により惹起される反復発火を、対照と比較して軽減することを示した。誤差線はSEMを示し、アステリスクは有意性を示す(各場合においてp<0.0001)。同様に、Rp-cGMPSおよびODQは、C細胞での4と比較して、閾値における損傷誘発性低下を有意に妨げた(ANOVAおよびFisher's PLSD検定; p<0.05)。Rp-cAMPSの存在下では閾値におけるかなりの変動が認められ、対照からの平均差は有意ではなかった。C: RT-PCRによる単一SNにおけるnNOS mRNAの検出。in vivo(0)またはin vitroで16時間後のSNからのサンプルの5つの別々のセットから、apnNOS、センソリン(sensorin)A、およびアクチンのニューロン特異的アイソフォーム用のプライマーセットを使用して、適当な長さの断片を増幅した。2%アガロースゲル上での臭化エチジウム染色により検出された合成断片のサイズは、データベース内の既知配列から予想されたものと同じであった。また、該PCR産物をDNA配列解析により確認した。最終的に、逆転写酵素の非存在下では増幅は全く認められず、このことは、該RNA調製物がゲノムDNAによって汚染されていないことを示している(下パネル)。左側に分子マーカーの位置が示されている。
【図6D】図6A〜D.NOS、sGCまたはapPKGの抑制はin vitroでのSNにおけるLTHの誘導を妨げる。SNを該クラスターから摘出し、Rp-8-pCPT-cGMPS(RpcGMPS)、Rp-8-pCPT-cAMPS(RpcAMPS)またはODQ(すべて10μM)の存在下でin vitroで成長させた。同時に摘出した他のSNは、対照(C)として、いずれのインヒビターにも曝露しなかった。D: LTHに対するNOSインヒビターの効果。前記のとおりにL-チオシトルリン(50μM)およびL-NAME(1mM)を使用した。n, SNの数。データを、同じ調製における対照細胞の平均興奮性に対して基準化した。アステリスクは、ANOVAおよびDunnett's検定によりインヒビターの存在下および非存在下でLTHを比較した場合の有意性を示す(p<0.001)。誤差線はSEMを示す。
【図7A−C】A: 神経破砕後の側神経節におけるapMAPKの活性化。上図, 左, p5-p9神経破砕後の示されている時点で集めた25μgの側神経節ライセートをSDS-PAGEにより分離し、ウエスタンブロットをAb pTp Ymapkでプローブして、活性ERK-MAPKを検出した。該抗体は、損傷の16時間後およびそれ以降に対側対照(CC)と比較して損傷側(I)で活性が増加した43kDaのキナーゼを認識した。下図, 左, 損傷活性化キナーゼはapMAPKであった。該ブロットを剥ぎ取り、活性および不活性の両方のapMAPKを認識するD8抗体でプローブした。D8は、pTpY抗体により認識された同じ43kDaのタンパク質を認識した。右, 相対MAPK pTpYをデンシトメトリーにより決定した(Sungら, 2003)。該値の全てを全apMAPKのレベルに対して基準化した。基準化されたナイーブ(未処理)対照に対する各時点における基準化MAPK pTpY強度の比が示されている。ナイーブ対照に関する値を任意に1.0に設定した。この図におけるウエスタン分析は、図4AにおいてapPKG活性を評価するために使用したのと同じ材料で行った。該apMAPK値は6匹の動物の平均を表している。線はナイーブ動物からのapPKG活性の基底レベルを示す。以下の実験(B〜E)のそれぞれは、少なくとも2回繰返したものであり、代表的な結果が示されている。B: apPKGはニューロン内の内在性apMAPKをリン酸化するが、軸索原形質をin vitroでリン酸化しない。左, 側性ニューロンを非損傷動物から摘出し、ライセートを調製し、25μgを、10μM U0126の存在下または非存在下、100ngの活性apPKGタンパク質または1μM 8-Br-cGMPと共にインキュベートした。右, 25μgの軸索原形質を前記のとおりに活性apPKGと共にインキュベートした。Ab pTpYmapkを使用する免疫ブロット法により活性apPKGが検出された。C: apPKGはElk1内のセリン-383をリン酸化する。100ngのapPKGおよび0.5μgの精製組換えElk1タンパク質を5μgの該側性ニューロンライセートまたは0.2μgの精製組換えERK2と共にインキュベートした。リン酸化Ser383を認識する抗体でウエスタンブロットをプローブすることにより、リン酸化Elk1(p-Elk1)が検出された。
【図7D−F】D: apPKGによるT183におけるERK2の直接リン酸化。200ngの組換えERK2を、1μgのBPDEtideの存在下または非存在下、100ngのapPKGと共にインキュベートした。該反応混合物を3分の1に分割し、それぞれのウエスタンブロットを調製し、ERK2をそれぞれAbpTpYmapk(上)、AbpYmapk(中)およびAbpTmapk(下)で検出した。E: apPKGおよびMEK1によるERK2の相対活性化。100ngのapPKG、MEKK1の触媒サブユニットおよびMEK1を、示されているとおりに使用し、ホスホ-Elk1の産生を、Cにおいて示したとおりにAbpElk1で測定した。F: 神経損傷は、対側対照(CC)ニューロンと比較して、損傷細胞体(I)においてapMAPK pYのレベルを増加させる。p5-P9神経破砕後の示されている時点で集めた25μgの側性ニューロンライセートを使用して調製したウエスタンブロットを、単一特異性pY抗体AbpYmapkで、ついでD8でプローブして、Aの場合と同様にして全apMAPKを検出した。該ブロットは各点に関する2匹の動物の結果を示す。N, 神経破砕を伴わない動物からのライセート。
【図8A−B】図8A〜B.A: apPKGはSNの核内に進入しない。in vitroにおいて2日後に等量のAlexa Fluor 546標識BSA、apPKGまたはERK1をSNの細胞質内にマイクロインジェクションした。ついで神経突起を細い針で切断して損傷応答を惹起させ、30分後、該細胞を共焦点顕微鏡法により検査した。該イメージは、核を示す細胞の中心を通る2μm光学切片である。縮尺線, 20μm。B: Rp-8-pCPT-cGMPsは軸索切断誘発性apMAPK核移行を抑制する。対照として未処理のSN、および10μM Rp-8-pCPT-cGMPs(Rp-cGMPs)またはRp-cAMPsにin vitroで2日間曝露されたSNを、D8抗体で免疫染色して、apMAPKを局在化した。上図, 対照SNおよびRp-8-pCPT-cGMPsまたはRp-cAMPsに曝露されたSNの2μm光学切片の代表例。縮尺線, 20μm。下図, 核MAPK免疫反応性の平均値のヒストグラム。細胞がどのような処理を受けたかを知らされていない者により、染色強度が決定された。n, 各処理に関する細胞の数。アステリスクは対照からの有意差を示す(ANOVAおよびNewman-Keulsによりp<0.05)。
【図9】図9.グラフの上に図示されている損傷点に対する坐骨神経の種々の位置における相対PKG活性。
【図10A−C】図10A〜C.A: バラノール-7R、B: 10”デオキシバラノール、C: 14”デカルボキシバラノール。
【図11A】表面皮膚分節。A: 前面。B: 背面。
【図11B】表面皮膚分節。A: 前面。B: 背面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、タンパク質キナーゼG活性を低下させる物質の有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、タンパク質キナーゼG活性のペプチドインヒビターの有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項3】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKKを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドインヒビターが担体ペプチドを含む、請求項2、3または4記載の方法。
【請求項6】
担体ペプチドが、YGRKKRRQRRRPP、RKKRRQRRRおよびRQIKIWFQNRRMKWKKよりなる群から選ばれる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項2、3または4記載の方法。
【請求項8】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、式I:
【化1】

[式中、
nは1、2または3であり;ZはNまたはCHであり;
Xは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化2】


Yは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化3】


Aは、置換されていないかまたは1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノもしくはハロゲン基により置換されているアリール基またはヘテロアリール基を表し、ここで、Aがアリール基またはヘテロアリール基であるとき、
【化4】

そして
【化5】


Rは水素、低級アルキルまたはアミジノであり;
R1、R2、R4、R5は、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり;
R3はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたは以下のものから選ばれる基であり:
【化6】

ここで、R6〜R10は、独立して、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ(例えば、CF3SO2NH-、CH3SO2NH-)およびテトラゾールである]
で示される物質の有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項12】
前記物質がバラノール(balanol)である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記物質がバラノール(balanol)変異体である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
バラノール(balanol)変異体が、バラノール-7R、14-デカルボキシ-バラノール、10-デオキシ-バラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール変異体、担体ペプチドに結合したバラノール、担体ペプチドに結合したバラノール変異体、輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール、ならびに輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール変異体よりなる群から選ばれる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記物質がRp-8-pCPT-cGMPSである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記物質が、輸送ペプチドに結合したRp-8-pCPT-cGMPSである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記物質が、タンパク質キナーゼGの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩、L-チオシトルリン、およびnNOS発現を抑制するアンチセンス核酸またはRNAiよりなる群から選ばれるニューロン一酸化窒素シンターゼ抑制物質の有効量を、該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項19】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、細胞内一酸化窒素を減少させる物質の有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
前記物質がクエルセチン(quercetin)である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、L-H-[1,2,4]オキサジアゾロ[4,3-a]キノキサリン-1-オン、およびグアニリルシクラーゼの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiよりなる群から選ばれるグアニリルシクラーゼ抑制物質の有効量を、該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項22】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、細胞内サイクリックグアノシン一リン酸を減少させる物質の有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項23】
前記物質がホスホジエステラーゼである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ホスホジエステラーゼがPDE5である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記物質がホスホジエステラーゼ活性を増強する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記物質がAnt-cGMP-2'-O-アントラニロイルcGMPである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
末梢神経系痛覚過敏に罹患した被験体における慢性疼痛の治療方法であって、活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ-erkの核内への移行を抑制する物質の有効量を該被験体の背根神経節内の感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項28】
前記物質がカルシウムチャネルブロッカーである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記物質がフェロドピン(felodopine)である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、タンパク質キナーゼG活性を低下させる物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項31】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、タンパク質キナーゼG活性のペプチドインヒビターの有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項32】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKKを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドインヒビターが担体ペプチドを含む、請求項31、32または33記載の方法。
【請求項35】
担体ペプチドが、YGRKKRRQRRRPP、RKKRRQRRRおよびRQIKIWFQNRRMKWKKよりなる群から選ばれる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項31、32または33記載の方法。
【請求項37】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、式I:
【化7】

[式中、
nは1、2または3であり;ZはNまたはCHであり;
Xは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化8】


Yは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化9】


Aは、置換されていないかまたは1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノもしくはハロゲン基により置換されているアリール基またはヘテロアリール基を表し、ここで、Aがアリール基またはヘテロアリール基であるとき、
【化10】

そして
【化11】


Rは水素、低級アルキルまたはアミジノであり;
R1、R2、R4、R5は、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり;
R3はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたは以下のものから選ばれる基であり:
【化12】

ここで、R6〜R10は、独立して、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ(例えば、CF3SO2NH-、CH3SO2NH-)およびテトラゾールである]
で示される物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項41】
前記物質がバラノール(balanol)である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記物質がバラノール(balanol)変異体である、請求項40記載の方法。
【請求項43】
バラノール(balanol)変異体が、バラノール-7R、14-デカルボキシ-バラノール、10-デオキシ-バラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール変異体、担体ペプチドに結合したバラノール、担体ペプチドに結合したバラノール変異体、輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール、ならびに輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール変異体よりなる群から選ばれる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記物質がRp-8-pCPT-cGMPSである、請求項30記載の方法。
【請求項45】
前記物質が、輸送ペプチドに結合したRp-8-pCPT-cGMPSである、請求項30記載の方法。
【請求項46】
前記物質が、タンパク質キナーゼGの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiである、請求項30記載の方法。
【請求項47】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩、L-チオシトルリン、およびnNOS発現を抑制するアンチセンス核酸またはRNAiよりなる群から選ばれるニューロン一酸化窒素シンターゼ抑制物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項48】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、細胞内一酸化窒素を減少させる物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項49】
前記物質がクエルセチン(quercetin)である、請求項8記載の方法。
【請求項50】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、L-H-[1,2,4]オキサジアゾロ[4,3-a]キノキサリン-1-オン、およびグアニリルシクラーゼの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiよりなる群から選ばれるグアニリルシクラーゼ抑制物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項51】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、細胞内サイクリックグアノシン一リン酸を減少させる物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項52】
前記物質がホスホジエステラーゼである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記ホスホジエステラーゼがPDE5である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記物質がホスホジエステラーゼ活性を増強する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
前記物質がグアノシン3',5'サイクリック一リン酸,2'-O-アントラニロイルcGMPである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
感覚ニューロンにおける長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)の抑制方法であって、活性化マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ-erkの核内への移行を抑制する物質の有効量を該感覚ニューロンに投与することを含んでなる方法。
【請求項57】
前記物質がカルシウムチャネルブロッカーである、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記物質がフェロドピン(felodopine)である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
被験体における、特定の脊髄レベルの背根神経節と関連していることが確認されている疼痛の治療方法であって、該疼痛と関連した脊髄レベルに対応する皮膚分節内に存在する皮膚に、輸送ペプチドを含む疼痛インヒビターを局所適用することを含んでなる方法。
【請求項60】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターが抗炎症薬を更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターがオピオイドを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項62】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターがタンパク質キナーゼGのインヒビターを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターが一酸化窒素シンターゼのインヒビターを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項64】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターがグアニル酸シクラーゼのインヒビターを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項65】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターがMAPKerkキナーゼのインヒビターを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項66】
輸送ペプチドを含む前記疼痛インヒビターがカルシウムチャネルブロッカーを更に含む、請求項59記載の方法。
【請求項67】
前記疼痛インヒビターが複数の輸送ペプチドを含む、請求項59記載の方法。
【請求項68】
前記疼痛インヒビターが経皮パッチ内に含有されている、請求項60〜67のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
前記疼痛インヒビターが経皮デバイス内に含有されている、請求項60〜67のいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
タンパク質キナーゼGのインヒビターを含有する経皮デバイス。
【請求項71】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKを含む、請求項70記載の経皮デバイス。
【請求項72】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKKを含む、請求項70記載の経皮デバイス。
【請求項73】
前記ペプチドインヒビターが担体ペプチドを含む、請求項70、71または72記載の経皮デバイス。
【請求項74】
担体ペプチドが、YGRKKRRQRRRPP、RKKRRQRRRおよびRQIKIWFQNRRMKWKKよりなる群から選ばれる、請求項73記載の経皮デバイス。
【請求項75】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項70、71または72記載の経皮デバイス。
【請求項76】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項75記載の経皮デバイス。
【請求項77】
前記ペプチドインヒビターが輸送ペプチドを含む、請求項73記載の経皮デバイス。
【請求項78】
輸送ペプチドが配列PKKKRKを含む、請求項77記載の経皮デバイス。
【請求項79】
式I:
【化13】

[式中、
nは1、2または3であり;ZはNまたはCHであり;
Xは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化14】


Yは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化15】


Aは、置換されていないかまたは1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノもしくはハロゲン基により置換されているアリール基またはヘテロアリール基を表し、ここで、Aがアリール基またはヘテロアリール基であるとき、
【化16】

そして
【化17】


Rは水素、低級アルキルまたはアミジノであり;
R1、R2、R4、R5は、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり;
R3はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたは以下のものから選ばれる基であり:
【化18】

ここで、R6〜R10は、独立して、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ(例えば、CF3SO2NH-、CH3SO2NH-)およびテトラゾールである]
で示される物質の有効量を含有する経皮デバイス。
【請求項80】
前記物質がバラノール(balanol)である、請求項79記載の経皮デバイス。
【請求項81】
前記物質がバラノール(balanol)変異体である、請求項79記載の経皮デバイス。
【請求項82】
バラノール(balanol)変異体が、バラノール-7R、14-デカルボキシ-バラノール、10-デオキシ-バラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール、輸送ペプチドに結合したバラノール変異体、担体ペプチドに結合したバラノール、担体ペプチドに結合したバラノール変異体、輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール、ならびに輸送ペプチドおよび担体ペプチドに結合したバラノール変異体よりなる群から選ばれる、請求項81記載の経皮デバイス。
【請求項83】
式Iの化合物が輸送ペプチドに結合している、請求項79、80、81または82記載の経皮デバイス。
【請求項84】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与する工程、そして
(iv)該試験物質が、損傷した該試験用感覚ニューロンにおける一酸化窒素シンターゼ活性のレベルの増加を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおける一酸化窒素シンターゼ活性のレベルの増加の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項85】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与し、そして
(iv)該試験物質が損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるグアニリルシクラーゼ活性のレベルの増加を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるグアニリルシクラーゼ活性の増加の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項86】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与する工程、そして
(iv)該試験物質が損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるタンパク質キナーゼG活性のレベルの増加を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるタンパク質キナーゼG活性の増加の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項87】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与する工程、そして
(iv)該試験物質が損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるタンパク質キナーゼGの輸送を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるタンパク質キナーゼGの輸送の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項88】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与する工程、そして
(iv)該試験物質が損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるMAPKerkのリン酸化の増強を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるMAPKerkのリン酸化の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項89】
試験物質が長期過剰興奮(long-term hyperexcitability)のインヒビターであるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
(i)軸索セグメントを含む試験用感覚ニューロンを準備する工程、
(ii)該軸索セグメント内に損傷を施す工程、
(iii)工程(ii)の損傷を施す前、それと同時またはその後のいずれかに、該試験物質を該試験用感覚ニューロンに投与する工程、そして
(iv)該試験物質が損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるMAPKerkの核内への移行を抑制するかどうかを確認する工程を含んでなり、
ここで、損傷した該試験用感覚ニューロンにおけるMAPKerkの核内への移行の抑制が、該試験物質が長期過剰興奮のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項90】
配列番号9を有する核酸分子に対して少なくとも90%相同である核酸分子を含んでなる単離された核酸分子。
【請求項91】
配列番号9を有する核酸分子に対して少なくとも90%相同である核酸分子が、機能しうる形でプロモーター要素に連結されている、請求項90記載の単離された核酸分子。
【請求項92】
ベクター内に含まれている、請求項90記載の単離された核酸分子。
【請求項93】
ベクター内に含まれている、請求項91記載の単離された核酸分子。
【請求項94】
配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質に対して少なくとも90%相同であり、かつタンパク質キナーゼ活性を有する、単離されたタンパク質。
【請求項95】
被験体における慢性疼痛の治療方法であって、タンパク質キナーゼG活性のペプチドインヒビターの有効量を該被験体の中枢神経系内に投与することを含んでなる方法。
【請求項96】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKを含む、請求項96記載の方法。
【請求項97】
前記ペプチドインヒビターがペプチド配列RKKKを含む、請求項95記載の方法。
【請求項98】
前記ペプチドインヒビターが担体ペプチドを含む、請求項95、96または97記載の方法。
【請求項99】
担体ペプチドが、YGRKKRRQRRRPP、RKKRRQRRRおよびRQIKIWFQNRRMKWKKよりなる群から選ばれる、請求項89記載の方法。
【請求項100】
被験体における慢性疼痛の治療方法であって、式I:
【化19】

[式中、
nは1、2または3であり;ZはNまたはCHであり;
Xは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化20】


Yは以下の官能基のうちの1つを表し:
【化21】


Aは、置換されていないかまたは1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノもしくはハロゲン基により置換されているアリール基またはヘテロアリール基を表し、ここで、Aがアリール基またはヘテロアリール基であるとき、
【化22】

そして
【化23】


Rは水素、低級アルキルまたはアミジノであり;
R1、R2、R4、R5は、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり;
R3はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたは以下のものから選ばれる基であり:
【化24】

ここで、R6〜R10は、独立して、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ(例えば、CF3SO2NH-、CH3SO2NH-)およびテトラゾールである]
で示される物質の有効量を該被験体の中枢神経系内に投与することを含んでなる方法。
【請求項101】
前記物質がバラノール(balanol)である、請求項100記載の方法。
【請求項102】
前記物質がバラノール(balanol)変異体である、請求項100記載の方法。
【請求項103】
前記バラノール(balanol)変異体が、バラノール-7R、14-デカルボキシ-バラノール、10-デオキシ-バラノール、担体ペプチドに結合したバラノール、および担体ペプチドに結合したバラノール変異体よりなる群から選ばれる、請求項102記載の方法。
【請求項104】
前記物質が、担体ペプチドに結合したRp-8-pCPT-cGMPSである、請求項95記載の方法。
【請求項105】
前記物質が、タンパク質キナーゼGの発現を抑制するアンチセンス核酸分子またはRNAiである、請求項95記載の方法。

【図1A−1】
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【図1A−2】
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【図1A−3】
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【図1B−D】
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【図2A−C】
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【図3A−B】
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【図4A−C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A−C】
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【図6D】
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【図7A−C】
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【図7D−F】
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【図8A−B】
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【図9】
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【図10A−C】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2008−537739(P2008−537739A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503076(P2008−503076)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/010107
【国際公開番号】WO2006/102267
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(501306715)ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】