説明

方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法

【課題】 あらゆる方向のキー操作を検知することができ、一つの操作キーでカーソルの移動が自由に出来るという優れた方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法を提供する。
【解決手段】 入力信号から操作キーの操作方向を特定するための基準として最小分割領域を単位とする初期値を設定し、操作キーの押圧時の位置を前記入力信号から検知して操作方向をメモリに記憶し、次に、前記操作キーの操作方向を含む最小分割領域の複数の領域からなる有効操作範囲を制御部で設定し、その有効操作範囲にある状態での操作キーの操作は同一方向と判定し、操作キーが前記有効操作範囲から外れた位置での操作に対してはその外れた位置での新たな操作方向と有効操作範囲が設定される操作キーの方向性判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等の携帯端末機、その他の電子端末機の方向検知スイッチを用いて操作キーの操作方向を記憶し、その特定した操作方向を含む有効操作範囲内では同じ方向を指示し、その有効操作範囲が外れた位置での操作キーの操作に対しては新たな操作方向とその新たの操作方向を含む有効操作範囲が設定されることが可能な方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯情報端末における操作キーの方向性の決定は、全方向に操作可能な操作キーにより表示部に表示されているカーソルを移動させる携帯情報端末において、方向検出部により操作キーの操作方向を検出すると、制御部では、操作方向表示部に表示されたカーソルの可動方向に対応して、方向検出部により検出された操作方向を特定の移動方向に変換し、表示部上でのカーソルの移動を制御する。これにより、操作キーが如何なる方向に操作されても、カーソルは操作方向表示部に表示された可動方向のみに移動するようにしている(特許文献1の明細書「0036」参照)。
【0003】
また上記特許文献1においては、制御部は方向変換テーブルを参照して表示部上に表示されるカーソルの移動を制御しているが、方向変換テーブルを表示部に表示したり、方向変換テーブルの内容についてユーザ編集等を可能とすることにより、より使い勝手が良くなり、操作性を向上させることができる(明細書「0037」参照)。
【0004】
上記特許文献1においては、表示切換キーにより、方向変換テーブルからカーソル可動方向パターンの1つを選択して、制御部によるカーソルの移動制御に供するようにしている。これにより、複数種のカーソルの可動方向パターンから任意の選択が可能となり、使用目的や表示画面の内容等に応じてユーザがカーソルの可動方向や移動速度を設定することができるので、使い勝手や操作性を向上させることができる(明細書「0038」参照)。
【0005】
さらに、上記特許文献1においては、表示切換キー等を可動方向選択手段として、操作方向表示部上に表示されるカーソルの可動方向を選択することにより、使用目的や表示画面の内容等に応じてユーザがカーソルの可動方向を特定することができ、使い勝手や操作性を向上させることができる(明細書「0039」参照)。
【0006】
さらにまた、上記特許文献1においては、表示切換キーや確定キー等の特定キーを操作手段として、該特定キーの操作時間または操作回数に応じて、表示部上でのカーソルの移動速度を変化させても良い。例えば、表示切換キーにより操作方向表示部の方向表示を切り換える際に、表示切換キーを一定時間以上押下したり、ダブルクリックしたりすると、切り換えた方向内でカーソルが高速動作するように移動速度データを方向変換テーブルに付加しておけば、カーソルの移動方向だけでなく移動速度についても設定変更が可能となる。これにより、例えば、使用目的や表示画面の内容等に応じて素早く操作したり、微妙なカーソルの位置合わせでは遅くしたりと、カーソルの移動速度の変更が可能となり、より使い勝手が良く操作性に優れた携帯情報端末を実現することができる(明細書「0040」参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−44204号公報の明細書「0037」から「0040」参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来技術は操作キーが如何なる方向に操作されても、カーソルは操作方向表示部に表示された可動方向のみに移動する方式であるために、操作方向を特定の移動方向に変換しなければならず、方向変化に伴う煩わしい操作をしなければならない。すなわち、方向変換テーブルを表示部に表示したり、方向変換テーブルの内容についてユーザ編集等を行なって方向変化を行なわなければならない。
【0009】
また、方向検知スイッチにあっては、操作方向を8方向、16方向、32方向、…と、どれだけ細分化しても、操作方向の検知には、隣接する2つの方向の中間にあってどちらの方向にも属しない部分が存在してしまう。方向検知スイッチが8方向キーの場合、例えば、操作者が「右方向」を操作したつもりであっても、その操作位置が少しずれ、右方向と右上方向とに挟まれたどちらの方向にも属しない部分を操作してしまった場合では、操作方向が右上方向と検知されて操作者の意図とは違う動作をしてしまうことがあった。このような場合では、操作者は方向検知スイッチが誤動作していると感じることになる。
【0010】
本発明は上記の点等を考慮して、360度のあらゆる方向のキー操作を検知することができ、操作キーの押下げ操作により特定の操作方向が決定されると、有効操作範囲が自動的に設定され、その有効操作範囲で操作キーを押している限りは、同じ操作方向を維持したままであり、その有効操作範囲から外れた箇所の操作キーを押すと、新たな操作方向が自動的に設定され、その新たな操作方向を中心として新たな有効操作範囲が自動的に設定できるという操作性の利便性が増し、一つの操作キーでカーソルの移動が自由に出来るという優れた方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、 全方向に操作可能な操作キーの操作に伴って移動可能に配置された可動電極と、該可動電極に対向するように分割して配置された固定電極とを有し、上記可動電極と固定電極間の静電容量を入力信号として検知することによって、操作キーの操作方向、操作速度等に関する方向検知情報を得ることができるようにされた方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法であって、上記入力信号から操作キーの操作方向を特定するための基準として最小分割領域を単位とする初期値を設定し、操作キーの押圧時の位置を前記入力信号から検知して操作方向をメモリに記憶し、次に、前記操作キーの操作方向を含む最小分割領域の複数の領域からなる有効操作範囲を制御部であるCPUで設定し、その有効操作範囲にある状態での操作キーの操作は同一方向を指示し、操作キーが前記有効操作範囲から外れた位置での操作に対してはその外れた位置での新たな操作方向と有効操作範囲が設定されるものである。
【0012】
本発明係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、前記方向検知スイッチが認識可能な方向が上下左右の方向及びこれらの中間方向の8方向であり、前記有効操作範囲は最大90度未満の領域としたことを特徴とする。
【0013】
本発明係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、操作キーによって新たの操作方向が特定されると、その操作方向を中心として新たな有効操作範囲が設定されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、前記設定された有効操作範囲と180度反対の方向にも、その方向を含む最小分割領域の複数の領域から成る別の有効操作範囲を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、操作キーの押下げ操作により特定の操作方向が決定されると、有効操作範囲が自動的に設定され、その有効操作範囲で操作キーを押している限りは、同じ操作方向を維持したままであり、その有効操作範囲から外れた箇所の操作キーを押すと、新たな操作方向が自動的に設定され、その新たな操作方向を中心として新たな有効操作範囲が自動的に設定できるという操作性の利便性が増し、一つの操作キーでカーソルの移動が自由に出来る。
【0016】
また、本発明に係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、360度のあらゆる操作方向での方向検知が出来、操作者に誤動作である認識されることが少なくなり、8方向スイッチとして安定した動作が期待できる。
【0017】
さらに、本発明に係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、操作者が操作キーを押すときにあらかじめ決められた操作方向の箇所からずれた位置の操作キーを押した場合等においても、あらかじめ決められた操作方向を確実に示す事が出来、操作者に合同さであると認識されることも少なくなり、操作上の迷動作が解消される。
【0018】
更にまた、本発明に係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法は、前回の操作とは違った方向を操作する場合にその確率が最も高い、既に設定された有効操作範囲と180度反対の方向の操作を行なう場合でも、あらかじめ決められた操作方向を確実に示す事が出来、操作者の操作上の迷動作が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る操作キーの方向性判定方法で使用する方向検知スイッチを組み込んだ携帯電話機等の携帯端末機の平面図、図2は携帯端末機に組み込む前の方向検知スイッチの操作キー、テンキー、各種機能キーなどを一体成形したキーシート1の概略を示す斜視図である。2は方向検知スイッチである操作キー、3、3、…はテンキー及び機能キー、4は画面、5は携帯端末機をそれぞれ示す。画面4は携帯端末機5の制御部5a(図8参照)で制御されており、テンキー及び機能キー3、3、…、操作キー2からの入力により画面表示が切り替わる機能を有している。例えば、操作キー2を画面4内のカーソルキーの移動に使用した場合には、図1に示すように、その移動方向が斜め方向であっても、カーソル4aが破線で示す位置から実線で示す位置にスムーズに移動する。キーシート1は、シリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー等の弾性材料から1枚のシート状に一体成形されて成るキーパッド6上に操作キー2、テンキー及び機能キー3、3、…のキートップが多数配設されて成る。なお、キーパッド6は、ゴム状弾性を有する柔軟な材料だけではなく、キーパッドに剛性を付加しキーシート全体に形状安定性を付加するために、金属やポリカーボネートなどの各種合成樹脂から成る所謂補強板と一体に成形されることもある。また、キートップは、金属や各種合成樹脂によって別体に成型されたものの他、シリコーンゴムなどの上記ゴム状弾性を有する柔軟な材料によってキーパッド6と一体に成形されることもある。
【0021】
図3(a)、(b)、(c)及び図4は本発明に係る操作キーの方向性判定方法で使用する操作キーを備えた方向検知スイッチの一実施例を示す動作状態の拡大断面図であり、図5は本発明に係る操作キーの方向性判定方法で使用する方向検知スイッチの他の実施例を示す。すなわち、図5は可動電極と固定電極とをほぼ平行に配置した場合を示す。
【0022】
操作キー2は中央部に配した確定キー2aとその確定キー2aを囲むようにして配したリングキー2bとよりなる。確定キー2aは中央部に硬質樹脂等の硬質材により形成したキートップ7を有し、そのキートップ7の裏面に下方に突出する突起部(押し子)8を備える。キートップ7の突起部8を除く裏面にはシリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー等の弾性材料から成る薄膜又は適宜の膜厚に形成したシート状ゴム弾性部材9が接着されている。キートップ7の下部周縁からは、水平方向に張り出したフランジ10がキートップ2bと一体的に同じ材料で形成されている。このフランジ10の裏面にもシート状ゴム弾性部材9が接着されている。なお、本実施例では、操作キー2は中央部に配した確定キー2aとその確定キー2aを囲むようにして配したリングキー2bとよりなる場合について説明したが、操作キー2は確定キー2aの無い構造であっても良い。
【0023】
図6はリング状の可動電極を示す拡大平面図、図7は上記可動電極の形状と対応しリング形状を4つの領域に分割した形状の固定電極を示す拡大平面図、図8は本発明に係る操作キーの方向性判定方法で使用する方向検知スイッチの概略説明図をそれぞれ示す。
【0024】
11はリングキー2bの構成要素であるリングキートップで、例えば、硬質樹脂等の硬質材から円環状に形成され、確定キー2aを囲繞する周囲に配置される。リングキートップ11の外側下部周縁から水平方向に張り出したフランジ12がリングキートップ11と一体的に形成されている。リングキートップ11の任意の箇所を押した時に、その押した箇所と真反対(180度)の位置のリングキートップ11のフランジ12端部が携帯端末機5のケース体の開口縁部13などの係止部材に係止されて傾動支点となる構造である。
【0025】
リングキートップ11の裏面には、その内側が段部11bを介して平坦な凹部11aが形成されており、確定キー2aのキートップ7のフランジ10の一部が凹部11aに入り込むようにして当接状態となっている。フランジ10の端面と凹部11aの段部11bとの間には第1の隙間11cが形成され、該第1の隙間11cに略U字状に折り曲げて略蛇腹状に形成されたシート状ゴム弾性部材9の一部分(屈曲部18)が収納されるようになる。該屈曲部18は、確定キー2aの押し下げに伴って屈曲された部分が適宜展開してシート状ゴム弾性体9の変形がスムーズに行なわれるようにするものである。シート状ゴム弾性部材9はフランジ12の裏面に接着剤等により接着されており、さらに第1の隙間11cでU字状に曲げられて収納され、リングキートップ11の平坦な裏面の一部に当接し、その後はプリント回路基板(以後、PCBという)15に向けて徐々に近づくように傾斜部9aを形成することによって、該傾斜部9aとリングキートップ11の裏面との間に空隙部16が形成されるようにし、その傾斜部9aに連接してフランジ12の端面延長上に設けられた第2の隙間17にU字状に折り曲げられて蛇腹状に形成された屈曲部19が収納される。この屈曲部19は、任意の方向へのリングキー2bの押し下げに伴って屈曲された部分が適宜展開しシート状ゴム弾性体9の変形がスムーズに行われるようにするものである。
【0026】
14はリングキートップ12の裏面下方に位置するシート状ゴム弾性部材9の傾斜部9aの裏面に設けたリング状の可動電極で、例えば、導電性ゴム材等をシート状ゴム弾性部材に印刷することや蒸着、スパッタリング等の適宜な金属薄膜の成膜方法を用いることにより形成される。なお、上記第1の隙間11c及び第2の隙間17に収納され略U字状(蛇腹状)に折り曲げられたシート状ゴム弾性部材9の屈曲部18、19は、図3(a)、(b)、(c)及び図6に示すように、確定キー2aの外周部及びリングキー2bの外周部に沿ってそれぞれ同心円状に形成されている。
【0027】
20はPCB15上の突起部8に対向する位置に配置されたメタルドーム等のクリック動作可能なクリック動作体であり、押圧されることによって図示しない固定接点を導通させる。このクリック動作体20は、後述するように、確定キー2bの押し下げ時だけでなく、リングキー2bの押し下げ時にも変形してクリック感を発生させる。21、21、…は可動電極14に対向する位置のPCB15上に配設した4つの固定電極であり、PCB15の他の部分に形成された図示しない配線パターンと同様に、例えば、銅などによって形成され、本例ではリング形状を周方向における90度毎に等間隔で4分割した場合を示したが、4分割に限らず8分割等の各種用途に応じた分割であっても良い。
【0028】
なお、本実施例ではリングキーの操作にクリック感を与えるクリック動作体20を作動させるために、リングキートップ11の押し下げストロークを大きく取った場合においても、静電容量値の変化量を確実に検知するために、リングキートップ11の裏面側に配置される可動電極14と、これと対向してPCB15上に配置された固定電極21との間隔を狭くできる構造を採用したものについて説明したが、之に限定される事無く可動電極と固定電極との間隔が広くても静電容量値の変化量が検知できるならば、図5に示すように、リング電極14を傾斜させない構造、すなわち、可動電極14と固定電極21とが平行に配置され対向した状態であっても良い。
【0029】
また、隣り合う固定電極21、21間の間隔は本例では比較的狭く形成した場合について説明したがその間隔は用途等に応じて適宜間隔を広げたりしても良い。固定電極21のそれぞれの表面はテフロン(商標名)、樹脂フィルム等の絶縁材で被覆されている。22は固定電極21、21、…の外側に近接して設けた2本の線状リング電極である。リングキートップ11のどこか一箇所を押すと可動電極14の傾斜角度が次第に小さくなるように変形しながら2本の線状リング電極22に近づき、なおもリングキートップ12を押すという操作を行なうと、図3(b)に示すように、その操作の初期段階で可動電極14が2本の線状リング電極22に接触し、これらを導通させてオンの信号発生させ、離反すると当該導通状態が解除される。なお、これらの導通によるオン信号は、リングキー2bの操作中は継続して発生する。
【0030】
次に、図3(a)、(b)、(c)、図4、図8乃至図10に基づいて本発明に係る操作キーの方向性判定方法で使用する方向検知スイッチ(操作キー)2の動作及び操作者によってリングキー2aが押された方向の判定方法、すなわち、方向性の判定方法について説明する。
【0031】
操作キーの方向性を判定するに際し、図9 (a)、(b)、(c)、(d)、(e)
に示す操作方向の模式図に従って説明する。以下の説明は、一例として、本発明に係る操作キーの方向性の判定方法で使用する方向検知スイッチ2を上下左右方向及びその中間斜め方向の8方向キーとして使用する場合である。なお、操作キー2を8方向以上の方向を判定することができるキーとして使用する場合であっても、本発明においては基本的に同じある。
【0032】
図9 (a)〜(e)に示すように、先ず、360度を例えば32等分に分割した最小分割領域23、23、…を設定し、この最小分割領域23の2つを一組としてこれを最小単位とする。例えば、右方向のX軸上を (0,0,0,0,0,0,0,0)としてメモリに記憶し、右方向のX軸上から第1番目に右上に傾斜する位置を(0,0,0,0,0,0,0,1)、右方向のX軸上から第2番目に右上に傾斜する位置を(0,0,0,0,0,0,1,0)、‥‥順次傾斜角度が大きくなり、上方向のY軸上を(1,0,0,0,0,0,0,0)とし、以下、第2象現から第4象現も同様にしてメモリに記憶する。そして、図9(a)に示すように、2つの最小分割領域23、23を8方向それぞれに割り当てて、これを方向性判定の初期値として設定しておく(図10のS1)。
【0033】
次に、リングキー2bを、例えば、右斜め上に押した場合について説明する。上記初期値による各方向の設定は図9(a)に示す通りである。24は、リングキー2bの押された部分を示す。
【0034】
リングキー2aが押し下げられると、図3(b)に示すように、初期状態においては、可動電極14が固定電極21に近づき、その一端側が2本の線状リング電極22と接触する。これによって2本の線状リング電極22が導通されてオン信号が得られる。このオン信号をトリガーとして、例えば、図8に示すように、可動電極14と各固定電極21、21、…間の静電容量の変化量ΔCの検知が開始され、C/V変換ICを介して、制御部(CPU)5aで前記初期設定に従って、右方向のX軸上から第4番目に右上に傾斜する位置(0,0,0,0,1,0,0,0)と第5番目に右上に傾斜する位置(0,0,0,1,0,0,0,0) に相当する2つの最小分割領域23、23に割り当てられた右斜め上方向が押された方向であると判定され、(0,0,0,1,1,0,0,0)が右斜め上と設定される。その結果、上記右斜め上方向の操作方向がメモリに記憶されると共に、例えば、画面上のカーソルを移動させる場合では、画面上のカーソルが右上方向に移動する(図10のS2乃至S3)。
【0035】
次に、前記操作キーの操作方向(右斜め上方向)に相当する最小分割領域23を中心として最小分割領域23の複数の領域からなる有効操作範囲25が制御部5aで設定される(図9(b)、図10のS4参照)。すなわち、これは、右斜め上方向と判定される領域が拡大されたということである。そして、その有効操作範囲25にある状態での操作キー2の操作はその有効範囲25内のどの箇所を押しても同一方向を指示するように制御部5aで制御される。図9(c)に示すように、この後の操作で、例えリングキー2bが通常では右方向と右斜め上方向との中間部分となる26で示す箇所が押された場合であっても、この部分は有効操作範囲25内となり、その操作の方向性は右斜め上方向であると判定される(図10のS6、S7)。
【0036】
操作キーが前記有効操作範囲25から外れた位置での操作(図9(d)参照)に対してはその外れた位置での新たな操作方向の有効操作範囲(図9(d)参照)が制御部5aで設定される。以上の方向性の判定のための手順は図10のフローシートに基づいて行なわれる。
【0037】
なお、上記した有効操作範囲25を設定すること等のリングキー2aの押圧に伴う操作方向の判定領域の拡大は、有効操作範囲25を設定した方向だけではなく、図9(b)〜(e)に示すように、有効操作範囲25を設定した方向と180度ずれた正反対の方向(この場合では左斜め下方向)や、有効操作範囲25を設定した方向と隣接する2方向(この場合では右方向及び上方向)も合わせて行なうことが望ましい。これは、次の操作で有効操作範囲から外れる方向を操作する場合に、その確率が高い方向であるとして設定したものである。また、上記有効操作範囲25の場合、約67,5度の角度を為す領域に拡大したものを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、最大で90度の角度を為す領域が有効操作範囲25として設定される。
【0038】
そして、なおもリングキートップ12を押し下げると、図3(c)に示すように、可動電極14の一端側が2本の線状リング電極22と接触したままこの部分を作用点として空隙部16が押し潰されて潰れていく。これによって、接触シート状ゴム弾性体9の傾斜部9aの傾斜角度(リングキー2bの裏面に対する角度)が小さくなって可動電極14の傾斜角度も小さくなり、可動電極14と固定電極21との間隔がさらに狭くなって、可動電極14と固定電極21間に発生する静電容量の変化量がΔCとして捉えられ、この静電容量の変化量ΔCがC/V変換ICで電圧の変化量ΔVとして変換され、信号として取り出される(図8参照)。また、上記した動作と同時に、確定キー2bの突起部8によってクリック動作体20が押し潰されてその反力がリングキートップ12に伝わってクリック感が得られる。上記動作は、リングキー2bのキートップ12の周方向におけるどの部分を押圧しても全く同じであり、同時にクリック感も得られる。なお、確定キー2bの突起部8によってクリック動作体20が押圧され潰れることによって、PCB15上の図示しない電極間が導通されオン信号が発生するが、この信号は適宜に使用すればよい。
【0039】
リングキートップへの押し下げを解除すると、押し下げによって展開させられていたシート状ゴム弾性部材9の屈曲部19及び伸張されていた部分が元の形状に戻ろうとする復元力によって確定キー2a及びリングキー2bが図3(a)に示す水平な状態に戻ると共に、シート状ゴム弾性部材9の傾斜部9aの傾斜角度が緩くなって押し潰されていた空隙部16もシート状ゴム弾性部材9の傾斜部9aの復元力によって元の形状に戻る。
【0040】
このように、可動電極14を、リングキートップ11の底面との間で内部に空隙部16を有するシート状ゴム弾性部材9の傾斜部9aに配置したのは、本体、確定キー2aのために用いられているクリック動作体20をリングキー押し下げ時のクリック感の発生のために用いるようにしたという構造に起因している。すなわち、例えば、クリック動作体20にクリック感を発生させるための必要ストロークを0.2mmとすると、クリック動作体20の位置よりも傾動支点からの距離が2倍程度となる可動電極14の部分では、0.4mmのストロークとなってしまう。静電容量は各電極間の距離に反比例して小さくなるので、静電容量の変化からリングキー2aの操作量を検知するというセンサの特性から、静電容量の絶対値が大きい状態での変化量を検知する方が精度を出しやすいからである。従って、各電極間の距離は何も操作されていない初期状態においてもできるだけ近づけておきたい。シート状ゴム弾性部材9に傾斜部9aを設けて、ここに可動電極14を斜めに配置するという構成を採用することによって、クリック動作体20にクリック感を発生させるための必要ストロークを確保しながら、各電極間の距離を近づけておくという相反する必要条件を満足させることが可能になった。
【0041】
一般的に、対向する電極の間隔を変化させて静電容量の変化ΔCを検知する場合、検知される静電容量値は、各電極間の距離が広い場合は小さく、各電極間の間隔が小さい場合は大きくなる。なお、図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態への移行時でも、可動電極14と固定電極21間の静電容量を検知することは可能であるが、本実施の一例においては、可動電極14の一端側が2本の線状リング電極22と接触してオン信号が検知された時以降の静電容量の変化量ΔCのみを処理するようにした。
【0042】
また、操作キー2の確定キー2aを操作(押圧)した場合には、リングキー2bのリングキートップ11は変位せず、図4に示すように、確定キー2aのキートップ7のみが真下に移動してその突起部8によってPCB15上のクリック動作体20が押圧され潰れて、PCB15上の図示しない電極間が導通されオン信号が発生する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、本発明は携帯電話機等の携帯端末機、その他の電子端末機に用いる方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法であって、360度全方向への操作キーを操作することにより静電容量の変化を検知し、操作方向を特定し、その操作方向を中心とした有効操作範囲内ではどの箇所を押しても同一方向を指示し、その有効操作範囲から外れた箇所の操作キーを押した時には、新たな操作方向が特定され、その新たな操作方向を中心として新たな有効操作範囲が動的に変位できる新規な操作キーの方向性判定方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】携帯電話機等の携帯端末機の平面図である。
【図2】携帯端末機に組み込む前の本発明に使用する方向検知スイッチの概略を示す斜視図である。
【図3】(a)(b)(c)は本発明に使用する方向検知スイッチの一実施例の動作状態を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に使用する方向検知スイッチの一実施例において、確定キーを操作した時の状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に使用する方向検知スイッチの他の実施例を示す拡大断面図である。
【図6】可動電極を示す拡大平面図である。
【図7】固定電極を示す拡大平面図である。
【図8】本発明に使用する方向検知スイッチの概略説明図を示す。
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は操作方向を示す模式図である。
【図10】本発明の操作キーの方向性を決める手順を示すフローシートを示す。
【符号の説明】
【0045】
1 キーシート
2 操作キー
2a 確定キー
2b リングキー
3 テンキー及び機能キー

4 画面
4a カーソル
5 携帯端末機
5a 制御部
6 キーパッド
7 (確定キーの)キートップ
8 突起部
9 シート状ゴム弾性部材
9a 傾斜部
10 (確定キーの)フランジ
11 リングキートップ
11a 凹部
11b 段部
11c 第1の隙間
12 (リングキーの)フランジ
13 (携帯端末機ケース体の)開口縁部
14 可動電極
15 PCB
16 空隙部
17 第2の隙間
18 屈曲部(内側)
19 屈曲部(外側)
20 クリック動作体
21 固定電極
22 2本の線状リング電極
23 最小分割領域
24 (リングキーの)押圧箇所
25 有効操作範囲
26 (リングキーの)押圧箇所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方向に操作可能な操作キーの操作に伴って移動可能に配置された可動電極と、該可動電極に対向するように分割して配置された固定電極とを有し、上記可動電極と固定電極間の静電容量を入力信号として検知することによって、操作キーの操作方向、操作速度等に関する方向検知情報を得ることができるようにされた方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法であって、
上記入力信号から操作キーの操作方向を特定するための基準として最小分割領域を単位とする初期値を設定し、操作キーの押圧時の位置を前記入力信号から検知して操作方向をメモリに記憶し、
次に、前記操作キーの操作方向を含む最小分割領域の複数の領域からなる有効操作範囲を制御部で設定し、その有効操作範囲にある状態での操作キーの操作は同一方向と判定し、
操作キーが前記有効操作範囲から外れた位置での操作に対してはその外れた位置での新たな操作方向と有効操作範囲が設定されることを特徴とする方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法。
【請求項2】
前記方向検知スイッチが認識可能な方向が上下左右の方向及びこれらの中間方向の8方向であり、前記有効操作範囲は角度で最大90度未満の領域としたことを特徴とする請求項1記載の操作キーの方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法。
【請求項3】
操作キーの前記有効捜査範囲から外れた操作方向が特定されると、その操作方向を中心として新たな有効操作範囲が設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の操作キーの方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法。
【請求項4】
前記設定された有効操作範囲と180度反対の方向にも、その方向を含む最小分割領域の複数の領域からなる別の有効操作範囲を設定することを特徴とする請求項1記載の操作キーの方向検知スイッチにおける操作キーの方向性判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−185190(P2006−185190A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378225(P2004−378225)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】