説明

日射調整フィルムおよびこれを用いたフィルム付きガラス

【課題】生産性を低下させずに良好な安定性、耐久性を得ることができ、また良好な光学特性を得ることができる日射調整フィルム。
【解決手段】日射調整フィルム1は、ポリエステルフィルム2の一方の主面にハードコート層3を有し、他方の主面に日射反射積層膜4を有する。日射反射積層膜4は、ポリエステルフィルム2側から順に、第1の亜鉛酸化物層41、第1の銀合金層42、第2の亜鉛酸化物層43、第2の銀合金層44、第3の亜鉛酸化物層45が積層されてなるものである。第1〜第3の亜鉛酸化物層41、43、45は、亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなり、これら亜鉛と亜鉛以外の金属元素とにおいて亜鉛が主たる酸化物構成元素となるものであり、第1〜第2の銀合金層42、44は、パラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射調整フィルムおよびこれを用いたフィルム付きガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日射調整フィルムとして、誘電体層と金属層とを交互に積層した層状構造を有するものが知られている。このような層状構造を有する日射調整フィルムは、可視光線を透過させ、また近赤外部から赤外部にかけての光線(熱線)を反射させることから、建物や車両等の窓ガラスに貼着し、入射する太陽エネルギーを遮断して冷房効果を向上させるために用いられている。また、このような日射調整フィルムは電磁波遮蔽効果を有することから、電磁波シールドフィルムとして電子機器の誤動作を抑制するために外部の不要な電磁場を遮蔽し、更には内部の無線化による情報の漏洩を防止するためにも用いられている。さらに、窓ガラスが破損したときの飛散を抑制できることから、安全性を向上させるためにも用いられている。
【0003】
日射調整フィルムとしては、例えば誘電体層を酸化インジウムとし、金属層を実質的に銀とし、5層の層状構造としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば誘電体層を酸化チタンとし、金属層を実質的に銀とし、5層の層状構造としたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。一方、誘電体層を酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化インジウム、または酸化亜鉛とし、金属層を金、銀、銅、またはアルミニウムとし、3層の層状構造としたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−523798号公報
【特許文献2】特表2006−505811号公報
【特許文献3】特開2001−310407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、誘電体層を酸化チタンとし、金属層を銀とし、これらの層状構造部分を5層としたものについては、必ずしも誘電体層と金属層との相性が良好でなく、銀からなる金属層の安定性、耐久性が十分でないために白濁あるいは白化するおそれがある。このため、層状構造部分を一対のポリエステルフィルム等で挟持する構造とすることにより安定性、耐久性を向上させることも検討されているが、新たにポリエステルフィルム等を設ける工程が必要となり、生産性等の観点から必ずしも好ましくない。一方、誘電体層を酸化チタン以外とし、層状構造部分を3層としたものについては、必ずしも良好な光学特性、例えば可視光線透過率と日射反射率とのバランスのとれたものを得ることができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、生産性を低下させずに良好な安定性、耐久性を得ることができ、また良好な光学特性を得ることができる日射調整フィルムおよびこれを用いたフィルム付きガラスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の日射調整フィルムは、ポリエステルフィルムの一方の主面にハードコート層を有し、他方の主面に日射反射積層膜を有するものであって、この日射反射積層膜が、ポリエステルフィルム側から順に、第1の亜鉛酸化物層、第1の銀合金層、第2の亜鉛酸化物層、第2の銀合金層、第3の亜鉛酸化物層が積層されてなるものである。そして、第1〜第3の亜鉛酸化物層は、亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなり、これら亜鉛と亜鉛以外の金属元素とにおいて亜鉛が主たる酸化物構成元素となるものであり、第1〜第2の銀合金層は、パラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のフィルム付きガラスは、ガラス板にフィルムが貼着されてなるフィルム付きガラスであって、前記フィルムが上記した本発明の日射調整フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の日射調整フィルムによれば、ポリエステルフィルムの一方の主面にハードコート層を設け、他方の主面に日射反射積層膜を設けるとともに、この日射反射積層膜を亜鉛酸化物層と銀含有層とが交互に積層され、かつ亜鉛酸化物層と銀含有層とが全体として5層構造となるようにすることで、生産性を低下させずに良好な安定性、耐久性を得ることができ、かつ良好な光学特性を得ることができる。また、本発明のフィルム付きガラスによれば、上記した日射調整フィルムを有することで、良好な安定性、耐久性を得ることができ、かつ良好な光学特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の日射調整フィルムの一例を示す断面図。
【図2】本発明のフィルム付きガラスの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の日射調整フィルムについて図面を参照して説明する。
図1は、日射調整フィルムの一例を示す断面図である。
【0012】
日射調整フィルム1は、ポリエステルフィルム2の一方の主面にハードコート層3を有し、他方の主面に日射反射積層膜4を有するものである。なお、この日射調整フィルム1には、図示するように日射反射積層膜4上に保護層5や粘着層6が形成されていてもよい。
【0013】
ポリエステルフィルム2は、日射調整フィルム1における基材となるものである。ポリエステルフィルム2は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリレート等からなるものである。
【0014】
これらのなかでもポリエチレンテレフタレートフィルムのように延伸法で作製されるものは比較的に高強度であり、製造時や加工時における折れなどの欠陥の発生を抑制できることから好ましい。ポリエステルフィルム2の厚さは必ずしも限定されるものではないが、5〜200μmが好ましい。厚さを5μm以上とすることで、ポリエステルフィルム2の製造時や加工時における折れなどの欠陥の発生を抑制することができるために好ましい。また、200μm以下とすることで、日射調整フィルム1の全体の厚さを抑制することができるために好ましい。ポリエステルフィルム2の厚さは、30〜150μmが好ましく、40〜110μmがより好ましい。
【0015】
ハードコート層3は、ポリエステルフィルム2に比べて高い硬度を有するものであり、日射調整フィルム1をガラス貼付時にポリエステルフィルム2の表面に細かな擦り傷が発生することを抑制し、またポリエステルフィルム2の収縮を抑制するために設けられている。
【0016】
ハードコート層3の硬度は、鉛筆硬度でH以上が好ましく、H〜3Hがより好ましい。鉛筆硬度をH以上とすることで、ポリエステルフィルム2における擦り傷等を効果的に抑制することができる。一方、鉛筆硬度は2H程度もあれば擦り傷等を十分に抑制することができ、またハードコート層3が硬くなりすぎるためにクラック等が発生することも抑制することができる。なお、本発明におけるハードコート層3の鉛筆硬度は、ポリエステルフィルム2上に形成したハードコート層3について、JISK5400(1990)に準じて荷重100gで測定されるものである。
【0017】
ハードコート層3の厚さは、0.5〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。ハードコート層3の厚さを0.5μm以上とすることで、ポリエステルフィルム2における擦り傷、収縮等を効果的に抑制することができる。一方、ハードコート層3の厚さは20μm程度もあればポリエステルフィルム2における擦り傷、収縮等を十分に抑制することができ、またハードコート層3が硬くなりすぎるためにクラック等が発生することも抑制することができる。
【0018】
このようなハードコート層3は、例えば樹脂自身の作用あるいは硬化剤等によって架橋硬化する硬化性樹脂からなるものである。具体的には、ウレタン系樹脂、アミノプラスト系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の単独硬化型の熱・紫外線・電子線硬化性樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化剤によって硬化する熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、良好なハードコート層3を簡便に形成できることから、アクリル系樹脂が好適なものとして挙げられる。
【0019】
日射反射積層膜4は、近赤外部から赤外部にかけての光線(熱線)を反射させるために設けられており、ポリエステルフィルム2側から順に、第1の亜鉛酸化物層41、第1の銀合金層42、第2の亜鉛酸化物層43、第2の銀合金層44、第3の亜鉛酸化物層45が積層されてなるものである。
【0020】
第1、第2、第3の亜鉛酸化物層41、43、45(以下、これらをまとめて単に亜鉛酸化物層という場合がある)は、いずれも亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなるものである。このような酸化物としては、亜鉛単独の酸化物(酸化亜鉛)と、亜鉛および亜鉛以外の金属元素の複合酸化物とを含むものが挙げられる。このような酸化物は、さらに亜鉛以外の金属元素単独の酸化物を含んでいてもよい。
【0021】
また、この酸化物は、酸化物を構成する亜鉛と亜鉛以外の金属元素とにおいて亜鉛が主たる酸化物構成元素となるものである。具体的には、亜鉛と亜鉛以外の金属元素との合計量において好ましくは亜鉛が50原子%以上、より好ましくは75原子%以上、さらに好ましくは85%以上となるものである。そして、亜鉛以外の金属元素の含有量は、亜鉛と亜鉛以外の金属元素との合計量において好ましくは、50原子%以下、より好ましくは25原子%以下、さらに好ましくは15%以下となるものである。
【0022】
このような亜鉛酸化物層によれば、例えばその結晶性等により銀合金層との相性が良好となるために、銀合金層の安定性、耐久性を良好とすることができる。なお、第1、第2、第3の亜鉛酸化物層41、43、45は、互いに異なる組成を有することができるが、通常は同一の組成を有することが好ましい。
【0023】
一方、第1、第2の銀合金層42、44(以下、これらをまとめて単に銀合金層という場合がある)は、いずれもパラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなるものである。このような銀合金層によれば、パラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有することで、良好な安定性、耐久性を得ることができる。なお、第1、第2の銀合金層42、44についても、互いに異なる組成を有することができるが、通常は同一の組成を有するものとされている。
【0024】
このような亜鉛酸化物層と銀合金層とからなる日射反射積層膜4によれば、銀合金層自体の安定性、耐久性が良好であることに加えて、亜鉛酸化物層と銀合金層との相性が良好であるために、銀合金層の安定性、耐久性をさらに良好とすることができる。このため、従来の日射反射積層膜のように安定性、耐久性を良好とするために一対のポリエステルフィルムで挟持する必要がなく、生産性を良好としつつ、安定性、耐久性の良好なものとすることができる。
【0025】
また、日射反射積層膜4を亜鉛酸化物層と銀合金層との5層構造、すなわち銀合金層を2層有するものとすることで、良好な光学特性、例えば可視光線透過率と日射反射率とのバランスのとれたものとすることができる。すなわち、亜鉛酸化物層と銀合金層との3層構造、すなわち銀合金層を1層有するものの場合、必ずしも可視光線透過率と日射反射率とのバランスのとれたものを得ることができない。また、7層構造、すなわち銀合金層を3層有するものについても、必ずしも可視光線透過率と日射反射率とのバランスのとれたものを得ることができず、また生産性にも優れない。
【0026】
亜鉛酸化物層と銀合金層との5層構造の日射反射積層膜4を有するものによれば、例えばガラス板に貼着した場合、JIS A5759に準じて測定される可視光線透過率を70%以上、かつ日射反射率を30%以上とすることができ、可視光線透過率と日射反射率とのバランスのとれたものとすることができる。
【0027】
第1、第2、第3の亜鉛酸化物層41、43、45は、屈折率が1.7〜2.3であることが好ましく、1.8〜2.2であることがより好ましく、1.9〜2.1であることがさらに好ましい。このような屈折率とすることにより、第1、第2の銀合金層42、44との干渉効果で可視光線透過率、日射反射率共に高くすることができる。なお、屈折率は、波長555nmにおける屈折率を意味する。
【0028】
第1、第2、第3の亜鉛酸化物層41、43、45における亜鉛以外の金属元素としては、例えばスズ、アルミニウム、クロム、チタン、マグネシウム、ガリウムが好適なものとして挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上を用いることができる。これらの中でも、特にアルミニウム、チタン、またはガリウムを用いることで、例えば銀合金層との相性を良好とすることができ、また内部応力を効果的に低減して銀合金層との密着性を高めることができ、結果として安定性、耐久性を良好とすることができる。
【0029】
亜鉛以外の金属元素がアルミニウムまたはガリウムの場合、酸化物中におけるアルミニウム元素またはガリウム元素の含有量は、亜鉛元素とアルミニウム元素またはガリウム元素との合計量中、1〜15原子%が好ましい。アルミニウム元素またはガリウム元素の含有量を1原子%以上とすることで、例えば亜鉛酸化物層の内部応力を効果的に低減し、銀合金層との密着性を高めて安定性、耐久性を良好とすることができる。一方、10原子%以下とすることで、例えばその結晶性を保って銀合金層との相性を維持し、結果として耐湿性等を良好とすることができる。アルミニウム元素またはガリウム元素の含有量は、亜鉛元素とアルミニウム元素またはガリウム元素との合計量中、1.5〜10原子%が好ましく、1.5〜8.0原子%がより好ましい。
【0030】
一方、亜鉛以外の元素がチタンの場合、チタン元素の含有量は、亜鉛元素とチタン元素との合計量中、2〜20原子%が好ましい。チタン元素の含有量を2原子%以上とすることで、例えば亜鉛酸化物層の内部応力を効果的に低減し、銀合金層との密着性を高めて安定性、耐久性を良好とすることができる。一方、20原子%以下とすることで、例えばその結晶性を保って銀合金層との相性を維持し、結果として耐湿性等を良好とすることができる。チタン元素の含有量は、亜鉛元素とチタン元素との合計量中、3〜15原子%が好ましい。
【0031】
第1、第3の亜鉛酸化物層41、45の膜厚(物理的膜厚、以下同様)はそれぞれ25〜45nmが好ましく、第2の亜鉛酸化物層43の膜厚は60〜90nmが好ましい。第1の亜鉛酸化物層41は35〜45nmがより好ましく、第3の亜鉛酸化物層45の膜厚は30〜40nmがより好ましい。第2の亜鉛酸化物層43の膜厚は70〜90nmがより好ましい。
【0032】
第1、第2の銀合金層42、44は、いずれもパラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなるものである。パラジウムおよび金の合計した含有量は、銀、パラジウム、および金の合計量中、0.2〜3質量%が好ましく、0.2〜1.5質量%がより好ましい。パラジウム、金の含有量をこのような範囲内とすることで、例えば銀の拡散を抑制し、これにより耐湿性を高くすることができ、また銀合金層の比抵抗を10μΩcm以下にすることができる。
【0033】
第1、第2の銀合金層42、44の厚みは、いずれも5〜25nmが好ましく、5〜20nmがより好ましく、5〜15nmがさらに好ましい。また、第1の銀合金層42よりも第2の銀合金層44が厚いことが好ましく、第1の銀合金層42よりも第2の銀合金層44が1〜8nm厚いことが好ましく、1〜6nm厚いことがより好ましく、1〜5nm厚いことがさらに好ましい。
【0034】
このような日射反射積層膜4は表面抵抗値が2〜4Ω/sqであることが好ましい。このような表面抵抗値を有するものによれば、電磁波遮蔽効果が良好となり、電磁波シールドフィルムとして電子機器の誤動作を効果的に抑制することができる。
【0035】
保護層5は、粘着層6との密着性を向上させるために設けられるものであり、日射反射積層膜4を水分等から保護する役割も果たしている。保護層5は必要に応じて日射反射積層膜4上に設けられるものであり、スズ、インジウム、チタン、ケイ素、ガリウム等の金属の酸化物もしくは窒化物の層、または水素化炭素を主成分として含む層等が挙げられる。保護層5としては、特に、インジウム、スズ、およびガリウムの酸化物層、または水素化炭素を主成分として含む層が好ましい。
【0036】
保護層5の膜厚は、2〜30nmが好ましく、3〜20nmがより好ましく、3〜10nmがさらに好ましい。保護層5の膜厚を2nm以上とすることで、粘着層6との密着性を向上させ、日射反射積層膜4を水分等から効果的に保護することができる。また、保護層5の膜厚を30nm以下とすることで、日射反射積層膜4を水分等から効果的に保護しつつ、日射調整フィルム1の全体の厚みも抑制することができる。
【0037】
粘着層6は、日射調整フィルム1を建物や車両等の窓ガラスに貼着するために利用されるものであり、必要に応じて設けられるものである。粘着層6としては、粘着剤のみからなるもの、または粘着剤中に紫外線吸収剤が含有されたものが挙げられる。これらの中でも紫外線吸収剤を含有するものは、日射調整フィルム1を建物や車両等の窓ガラスに貼着した場合に、紫外線による室内の人体や物品における日焼けを抑制し、また人体への悪影響を抑制することができるために好ましい。
【0038】
紫外線吸収剤としては、例えばトリアジン系紫外線吸収剤が好適に用いられる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤も知られているが、これらの紫外線吸収剤は、粘着剤の架橋を不足させ、保持力を低下させたり、黄変させたりするおそれがある。このため、紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0039】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤が挙げられ、これらの中でもアクリル系粘着剤が好適に用いられる。アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体単位を主成分として含む重合体であって、アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、クロトン酸、これらのアルキルエステルが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称として使用している。
【0040】
このような粘着層6、特に紫外線吸収剤を含有する粘着層6を有するものによれば、例えばガラス板に貼着した場合、JIS A5759に準じて測定される紫外線透過率を1%以下とすることができ、紫外線による室内の人体や物品における日焼けを効果的に抑制し、また人体への悪影響を効果的に抑制することができる。
【0041】
このような日射調整フィルム1は、例えば粘着層6を利用してガラス板に貼着してフィルム付きガラスとして用いることができる。図2は、フィルム付きガラスの一例を示す断面図である。
【0042】
フィルム付きガラス11は、ガラス板12を有し、このガラス板12に粘着層6を利用して日射調整フィルム1が貼着されている。ガラス板12としては、建物や車両等の窓ガラスが代表的なものとして挙げられるが、必ずしもこれらのものに限定されるものではなく、例えば冷蔵・冷凍ショーケース等のガラス板であっても構わない。
【0043】
建物や車両等の窓ガラスに日射調整フィルム1を設けることで、入射する太陽エネルギーを遮断して冷房効果を向上させることができる。また、この日射調整フィルム1は、電磁波遮蔽効果を有することから、電磁波シールドフィルムとして電子機器の誤動作を抑制し、電波の漏洩を防止することもできる。さらに、窓ガラスが破損したときの飛散を抑制できることから、安全性も向上させることもできる。
【0044】
フィルム付きガラス11は、例えばJIS A5759に準じて測定される可視光線透過率が70%以上、日射反射率が30%以上であることが好ましい。可視光線透過率は、72%以上であることがより好ましい。日射反射率は32%以上であることがより好ましい。このような可視光線透過率、日射反射率等を有するものとすることで、例えば内部から外部にかけての視認性と太陽エネルギーの遮断による冷房効果とを両立することができる。なお、このような可視光線透過率、日射反射率は、上記したように主として日射調整フィルム1における日射反射積層膜4を亜鉛酸化物層と銀合金層とからなるものとし、かつその積層数を5層、すなわち銀合金層を2層とすることにより達成することができる。
【0045】
また、フィルム付きガラス11は、例えばJIS A5759に準じて測定される紫外線透過率が1%以下であることが好ましい。このような紫外線透過率とすることで、紫外線による室内の人体や物品における日焼けを抑制し、また人体への悪影響を効果的に抑制することができる。なお、このような紫外線透過率についても、上記したように日射調整フィルム1に紫外線吸収剤を含有する粘着層6を設けることにより達成することができる。
【0046】
次に、日射調整フィルム1の製造方法について説明する。
日射調整フィルム1は、ポリエステルフィルム2の一方の主面に熱硬化性樹脂等を塗布および硬化させてハードコート層3を形成するとともに、他方の主面にスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相成長法等により日射反射積層膜4を形成し、必要に応じて日射反射積層膜4上に保護層5、粘着層6を形成することにより製造することができる。
【0047】
日射反射積層膜4の形成は、品質、特性の安定性が良好であることから、特にスパッタ法により行うことが好ましい。スパッタ法としては、DCスパッタ法、ACスパッタ法、高周波スパッタ法等が挙げられる。スパッタ法による日射反射積層膜4の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0048】
まず、酸素ガスを混合したアルゴンガスを導入しながら、ポリエステルフィルム2の表面に亜鉛およびチタンの酸化物からなる混合ターゲットを用いてDCスパッタを行い、第1の亜鉛酸化物層41を形成する。また、アルゴンガスを導入しながら、銀合金ターゲットを用いてDCスパッタを行い、第1の銀合金層42を形成する。このような操作を繰り返して行い、第1の銀合金層42上に、第2の亜鉛酸化物層43、第2の銀合金層44、第3の亜鉛酸化物層45を順に形成することで日射反射積層膜4を形成することができる。
【0049】
亜鉛酸化物層、銀合金層の各層の厚みは、DCスパッタを行う際の電力密度とスパッタ時間とにより調整することができる。また、上記した混合ターゲットは、各金属単独の酸化物の高純度(通常99.9%)粉末を混合し、冷間静水圧プレス等を用いて成形し焼結することにより製造できる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。なお、実施例における膜厚は光学特性あるいはスパッタ成膜レートとスパッタ時間とから求めた値であり、実際に測定した膜厚ではない。実施例における各特性は、以下のよう測定した。
【0051】
(可視光線透過率(Tv)、日射透過率(Te)、日射反射率(Re)の測定)
日射調整フィルムを50mm×50mmのサイズに切断し、その粘着層を介して50mm×50mm、厚さ3mmのソーダライムガラス板に気泡の入らないように均一に貼り付けてフィルム付きガラスを作製した。このフィルム付きガラスについて、JIS A5759に準拠して島津製作所社製のUV−3150分光光度計により測定した。光源はガラス側より入射させた。
【0052】
(遮蔽係数、熱貫流率の測定)
日射調整フィルムを50mm×50mmのサイズに切断し、その粘着層を介して50mm×50mm、厚さ3mmのソーダライムガラス板に気泡の入らないように均一に貼り付けてフィルム付きガラスを作製した。このフィルム付きガラスについて、JIS R3106に準拠して日本分光株式会社製のFT/IR−420フーリエ変換赤外分光光度計により垂直放射率を測定し、JIS A5759に準拠して計算により求めた。
【0053】
(耐侯性試験)
日射調整フィルムを70mm×150mmのサイズに切断し、その粘着層を介して70mm×150mm、厚さ2mmのソーダライムガラス板に気泡の入らないように均一に貼り付けてフィルム付きガラスを作製した。このフィルム付きガラスについて、JIS A5759に準拠してサンシャインカーボンアーク灯式の耐侯性試験機を用いて1,000時間および2,000時間の耐侯性試験を行い、目視によるフィルムの異常の有無と、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率の測定を行った。
【0054】
(シート抵抗値の測定)
日射調整フィルムを100mm×100mmのサイズに切断し、Nagy社製の渦電流型抵抗測定器(商品名:SRM12)を用いてシート抵抗値(表面抵抗値)を測定した。
【0055】
[試料1]
ロールコータを用いて以下のようにして日射調整フィルムを作製した。
まず、ハードコート層が形成されたPETフィルム(PETフィルムの厚さ:100μm)のハードコート層が形成されていない表面(日射反射積層膜の形成面)の洗浄を目的としてイオンビームによる乾式洗浄を行った。この乾式洗浄は、アルゴンガスに約30%の酸素を混合した混合ガスを導入しながら100Wの電力を投入し、イオンビームソースによりイオン化されたアルゴンイオンおよび酸素イオンを照射して行った。
【0056】
次いで、上記形成面に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.1Paの圧力で、ACマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ39nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率2.02、第1の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成した。
【0057】
第1の亜鉛酸化物層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、0.3Paの圧力で周波数100kHz、反転パルス幅5μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間とを調整して厚さ10nmの金属膜(第1の銀合金層)を形成した。
【0058】
第1の銀合金層上に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.1Paの圧力で、ACマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ78nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率屈折率2.02、第2の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成した。
【0059】
第2の亜鉛酸化物層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、0.3Paの圧力で周波数100kHz、反転パルス幅5μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間とを調整して厚さ13nmの金属膜(第2の銀合金層)を形成した。
【0060】
第2の銀合金層上に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.1Paの圧力で、ACマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ34nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率屈折率2.02、第3の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成した。
【0061】
さらに、この日射反射積層膜(第3の亜鉛酸化物層)上に、ガリウム、インジウム、およびスズの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:GITターゲット)を用いてアルゴンガスに7体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、0.1Paの圧力で周波数100kHz、反転パルス幅1μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ5nmの保護層(屈折率2.08)を形成した。さらに、保護層上に紫外線吸収剤を含む粘着フィルム(リンテック社製、商品名:PU−V)を貼り合わせて粘着層とし、日射調整フィルムとした。
【0062】
[試料2]
PETフィルムの厚さを75μmに変更した以外は試料1と同様に日射調整フィルムを作製した。
【0063】
[試料3]
PETフィルムの厚さを50μmに変更した以外は試料1と同様に日射調整フィルムを作製した。
【0064】
[試料4]
試料1と略同様にして、ハードコート層が形成されたPETフィルム上に、第1の亜鉛酸化物層(厚さ39nm)、第1の銀合金層(厚さ10nm)、第2の亜鉛酸化物層(厚さ34nm)の3層を順に形成して日射反射積層膜とした。その後、試料1と同様にして、日射反射積層膜上に保護層、粘着層を順に形成して、日射調整フィルムとした。なお、この試料4は、日射反射積層膜が3層(銀合金層が1層)のものであり、本発明の比較例となるものである。
【0065】
[試料5]
試料1と略同様にして、ハードコート層が形成されたPETフィルム上に、第1の亜鉛酸化物層(厚さ36nm)、第1の銀合金層(厚さ10nm)、第2の亜鉛酸化物層(厚さ72nm)、第2の銀合金層(厚さ11nm)、第3の亜鉛酸化物層(厚さ72nm)、第3の銀合金層(厚さ10nm)、第4の亜鉛酸化物層(厚さ31nm)の7層を順に形成して日射反射積層膜とした。その後、試料1と同様にして、日射反射積層膜上に保護層、粘着層を順に形成して、日射調整フィルムとした。なお、この試料5は、日射反射積層膜が7層(銀合金層が3層)のものであり、本発明の比較例となるものである。
【0066】
[試料6]
バッチ式スパッタ装置を用いて以下のように日射調整フィルムを作製した。
まず、試料1と同様に洗浄が行われたハードコート層を有するPETフィルムの表面(日射反射積層膜の形成面)に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ39nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率2.02、第1の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成した。
【0067】
第1の亜鉛酸化物層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、1.0Paの圧力で周波数50kHz、反転パルス幅10μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間とを調整して厚さ10nmの金属膜(第1の銀合金層)を形成した。
【0068】
第1の銀合金層上に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ78nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率2.02、第2の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成した。
【0069】
第2の亜鉛酸化物層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、1.0Paの圧力で周波数50kHz、反転パルス幅10μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間とを調整して厚さ12nmの金属膜(第2の銀合金層)を形成した。
【0070】
第2の銀合金層上に、酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化チタン=90:10(質量比))を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ34nmの亜鉛およびチタンの酸化物膜(屈折率2.02、第3の亜鉛酸化物層、組成略称:TZO)を形成して、日射反射積層膜とした。
【0071】
さらに、この日射反射積層膜(第3の亜鉛酸化物層)上に、ガリウム、インジウム、およびスズの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:GITターゲット)を用いてアルゴンガスに7体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、0.1Paの圧力で周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ5nmの保護層(屈折率2.08)を形成した。さらに、保護層上に紫外線吸収剤を含む粘着フィルムを貼り合わせて粘着層とし、日射調整フィルムとした。
【0072】
[試料7]
パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットの代わりに金を1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いて、第1の銀合金層を8nm、第2の銀合金層を10nmとした以外は試料6と同様に日射調整フィルムを作製した。
【0073】
[試料8]
酸化亜鉛および酸化チタンを混合し焼成して得たターゲットの代わりに、酸化亜鉛および酸化アルミニウムを混合し焼成して得たターゲット(酸化亜鉛:酸化アルミニウム=97:3(質量比))を用いて亜鉛およびアルミニウムの酸化物膜(屈折率1.95、亜鉛酸化物層、組成略称:AZO)を形成した以外は試料6と同様に日射調整フィルムを作製した。
【0074】
[試料9]
試料6と同様のバッチ式スパッタ装置を用いて日射調整フィルムを作製した。
まず、試料1と同様に洗浄が行われたハードコート層を有するPETフィルムの表面(日射反射積層膜の形成面)に、チタンの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ25nmの酸化チタン膜(屈折率2.4、第1の酸化チタン層、組成略称:TiOx)を形成した。
【0075】
第1の酸化チタン層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、1.0Paの圧力で周波数50kHz、反転パルス幅10μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ10nmの金属層(第1の銀合金層)を形成した。
【0076】
第1の銀合金層上に、チタンの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いてアルゴンガスを導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ3nmの第1のバリア膜を形成した。
【0077】
第1のバリア膜上に、チタンの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ47nmの酸化チタン膜(屈折率2.4、第2の酸化チタン層、組成略称:TiOx)を形成した。
【0078】
第2の酸化チタン層上に、パラジウムを1.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いてアルゴンガスを導入しながら、1.0Paの圧力で周波数50kHz、反転パルス幅10μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ12nmの金属層(第2の銀合金層)を形成した。
【0079】
第2の銀合金層上に、チタンの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いてアルゴンガスを導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ3nmの第2のバリア膜を形成した。
【0080】
第2のバリア膜上に、チタンの酸化物ターゲット(AGCセラミックス社製、商品名:TXOターゲット)を用いてアルゴンガスに6体積%の酸素ガスを混合して導入し、0.2Paの圧力で、周波数50kHz、反転パルス幅2μsecのDCマグネトロンスパッタを行い、電力密度とスパッタ時間を調整して厚さ22nmの酸化チタン膜(屈折率2.4、第3の酸化チタン層、組成略称:TiOx)を形成して日射反射積層膜とした。
【0081】
さらに、この日射反射積層膜(第3の酸化チタン層)上に、紫外線吸収剤を含む粘着フィルムを貼り合わせて粘着層とし、日射調整フィルムとした。なお、この試料9は、日射反射積層膜が酸化チタン層と銀合金層とからなるものであり、本発明の比較例となるものである。
【0082】
[試料10]
第1の銀合金層を12nm、第2の銀合金層を15nmとした以外は試料9と同様に日射調整フィルムを作製した。なお、この試料10についても、日射反射積層膜が酸化チタン層と銀合金層とからなるものであり、本発明の比較例となるものである。
【0083】
[試料11]
第1の銀合金層を12nm、第2の銀合金層を14nmとし、第1および第2の銀合金層の形成に用いたターゲットをパラジウムを5.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いたこと、並びに保護層を形成しなかったこと以外は試料1と同様にして日射調整フィルムを作製した。
【0084】
[試料12]
第1の銀合金層を13nm、第2の銀合金層を16nmとし、第1および第2の銀合金の形成に用いたターゲットをスズを5.0質量%ドープした銀合金ターゲットを用いたこと以外は試料11と同様にして日射調整フィルムを作製した。なお、この試料12は、銀合金に、パラジウムおよび金から選ばれる1種以上の金属が含有されていないものであるので、本発明の比較例となるものである。
【0085】
[試料13]
第1の銀合金層を10nm、第2の銀合金層を12nmとし、第1および第2の銀合金の形成に用いたターゲットを、パラジウムを2質量%および金を3質量%ドープした銀合金ターゲットを用いたこと以外は試料11と同様にして日射調整フィルムを作製した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
このようにして得られた日射調整フィルムについて、上記方法により測定を行った。表4に電気特性および光学特性の結果を、表5に遮蔽係数および熱貫流率の結果を、表6に耐候性試験の結果をそれぞれ示す。
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
表4から明らかなように、亜鉛酸化物層と銀含有層とからなる5層構造の日射反射積層膜を有する日射調整フィルムは、いずれも可視光線透過率(Tv)が70%以上、日射反射率(Re)が30%以上となることが認められた。また、表6から明らかなように、亜鉛酸化物層と銀含有層とからなる日射反射積層膜を有する日射調整フィルムは、耐久性も良好となることが認められた。
【符号の説明】
【0094】
1…日射調整フィルム1
2…ポリエステルフィルム
3…ハードコート層
4…日射反射積層膜
41…第1の亜鉛酸化物層
42…第1の銀合金層
43…第2の亜鉛酸化物層
44…第2の銀合金層
45…第3の亜鉛酸化物層
5…保護層
6…粘着層
11…フィルム付きガラス
12…ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の主面にハードコート層を有し、他方の主面に日射反射積層膜を有するフィルムであって、
前記日射反射積層膜は、前記ポリエステルフィルム側から順に、
亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなり、前記亜鉛と前記亜鉛以外の金属元素とにおいて前記亜鉛が主たる酸化物構成元素となる第1の亜鉛酸化物層、
パラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなる第1の銀合金層、
亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなり、前記亜鉛と前記亜鉛以外の金属元素とにおいて前記亜鉛が主たる酸化物構成元素となる第2の亜鉛酸化物層、
パラジウムおよび金から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する銀合金からなる第2の銀合金層、および
亜鉛および亜鉛以外の金属元素の酸化物からなり、前記亜鉛と前記亜鉛以外の金属元素とにおいて前記亜鉛が主たる酸化物構成元素となる第3の亜鉛酸化物層
が積層されてなることを特徴とする日射調整フィルム。
【請求項2】
前記日射反射積層膜上に酸化スズを主成分とする保護層を有することを特徴とする請求項1記載の日射調整フィルム。
【請求項3】
前記保護層上に紫外線吸収剤を含有する粘着層を有することを特徴とする請求項2記載の日射調整フィルム。
【請求項4】
前記第1の亜鉛酸化物層および前記第3の亜鉛酸化物層は25〜45nmの厚みを有し、
前記第2の亜鉛酸化物層は60〜90nmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の日射調整フィルム。
【請求項5】
前記第1の銀合金層および前記第2の銀合金層は10〜25nmの厚みを有し、
前記第1の銀合金層よりも前記第2の銀合金層が厚いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の日射調整フィルム。
【請求項6】
前記亜鉛以外の金属元素は、アルミニウム、チタン、またはガリウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の日射調整フィルム。
【請求項7】
前記日射反射積層膜の表面抵抗値が2〜4Ω/sqであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の日射調整フィルム。
【請求項8】
ガラス板にフィルムが貼着されてなるフィルム付きガラスであって、
前記フィルムが請求項1乃至7のいずれか1項記載の日射調整フィルムであることをフィルム付きガラス。
【請求項9】
JIS A5759に準じて測定される可視光線透過率が70%以上、日射反射率が30%以上であることを特徴とする請求項8記載のフィルム付きガラス。
【請求項10】
JIS A5759に準じて測定される紫外線透過率が1%以下であることを特徴とする請求項8または9記載のフィルム付きガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−37634(P2012−37634A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175980(P2010−175980)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】