説明

日焼け止め化粧料

【課題】保存時の分散安定性に優れる日焼け止め化粧料の提供。
【解決手段】(a)揮発性オルガノポリシロキサン、(b)シリコーン系分散剤、(c)シリコーン表面処理金属酸化物微粒子及び(d)有機系紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料であって、前記成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子が主鎖に直鎖のメチルポリシロキサンを持ち、そのメチル基の一部を、炭素数4〜12のアルキル基、トリエトキシシラン基、及びメチルポリシロキサン基で置換した構造を持つシリコーン化合物で表面処理された金属酸化物微粒子である日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。さらに詳しくは、分散媒として揮発性オルガノポリシロキサンを用い、有機系紫外線吸収剤の存在下、これに表面処理金属酸化物微粒子を分散剤で分散させてなる、保存時の分散安定性に優れた日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線による肌への悪影響を防ぐために、金属酸化物の微粒子や有機系紫外線吸収剤を配合した日焼け止め化粧料が開発され、一般的に使用されている。すなわち、紫外線のうち皮膚の黒化をもたらす、長波長紫外線領域(320〜400nm)を効果的に防御し、かつ可視部の透明性が高い素材として酸化亜鉛など金属酸化物の微粒子が日焼け止め化粧料に一般的に配合されている。また、皮膚に紅斑を引き起こす中波長紫外線領域(280〜320nm)を防御するために、有機系紫外線吸収剤が一般的に配合されている。更に、金属酸化物の微粒子と有機系紫外線吸収剤とを一緒に配合した日焼け止め化粧料も良く知られている。
【0003】
上記の金属酸化物微粒子は、化粧料中に分散させて配合使用するが、凝集力が強いため安定に分散させることは困難である。紫外線防御力を増加させるべく粒子を小さくすればするほど、この傾向が強くなる。そのため、安定に分散させる手段として、粒子の表面を処理してその分散性を高める方法、また微粒子を良好に分散させる分散性能がよい分散剤などが種々提案されている。微粒子を表面処理してその分散性を高める方法に関しては、金属酸化物微粒子を表面処理剤で処理して疎水化する技術、例えば、ジメチコン・メチコンコポリマーで表面処理する技術(特許文献1)、有機基及び粒子との反応性基を有する特定のシリコーンで粉体を表面処理する技術(特許文献2)などが提案されている。また粉体を分散させる分散剤に関しては、無機化合物の微粉末を特定のHLBを持つポリエーテル変性メチルポリシロキサンで分散させる技術 (特許文献3)、油相へ粉体を分散させる分散剤として、メタクリル酸含有アクリルシリコーンを用いた水中油型乳化化粧料(特許文献4)などが提案されている。更に、各種油剤に対して優れた乳化性能を有するシリコーン化合物として、アルキル基及びポリオキシアルキレン基共変性シリコーンが提案されている(特許文献5)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−95655号公報
【特許文献2】特開2001−72891号公報
【特許文献3】特開平10−167946号公報
【特許文献4】特開2005−247722号公報
【特許文献5】特開2001−39819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、日焼け止め化粧料について、金属酸化物微粒子を安定に分散させる技術が種々提案されているが、溶媒、分散剤、表面処理金属酸化物微粒子、有機系紫外線吸収剤などの配合成分の組み合わせによっては、金属酸化物微粒子の凝集を阻止することが困難で、経時的に金属酸化物微粒子の凝集や沈降、バルクのゲル化がおこり、保存時の分散安定性を確保することが難しい。本発明は、分散媒として揮発性オルガノポリシロキサンを用い、有機系紫外線吸収剤の存在下、これに表面処理金属酸化物微粒子を分散剤で分散させた日焼け止め化粧料について、保存時の分散安定性に優れた日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、分散媒として揮発性オルガノポリシロキサンを用い、有機系紫外線吸収剤の存在下、これに表面処理金属酸化物微粒子を分散剤で分散させた日焼け止め化粧料において、金属酸化物微粒子の表面処理剤及び分散剤として共にシリコーン化合物を用い、且つこれらのシリコーン化合物に、それぞれ特定のシリコーン化合物を選択し、組み合わせることによって、経時で粉体の凝集や沈降、系のゲル化が起こらない効果を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)揮発性オルガノポリシロキサン、(b)シリコーン系分散剤、(c)シリコーン表面処理金属酸化物微粒子及び(d)有機系紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料であって、前記成分(b)のシリコーン系分散剤が次式の一般式(1)で表されるシリコーン化合物であり、前記成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子が次式の一般式(2)で表されるシリコーン化合物で表面処理された金属酸化物微粒子であることを特徴とする日焼け止め化粧料である。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
上記成分(b)のシリコーン系分散剤の配合量は0.1〜20質量%が好ましい。成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子の配合量は、1〜50質量%が好ましく、この金属酸化物微粒子は、酸化亜鉛微粒子又は酸化チタン微粒子が好ましい。また、成分(d)の有機系紫外線吸収剤の配合量は、0.1〜25質量%が好ましく、この有機系紫外線吸収剤としては、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルが好ましい。また、この日焼け止め化粧料の剤型は、油中水型が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
分散媒として揮発性オルガノポリシロキサンを用い、有機系紫外線吸収剤の存在下、これに表面処理金属酸化物微粒子を分散剤で分散させた日焼け止め化粧料においては、有機系紫外線吸収剤の存在によって、系の経時でのゲル化が生じ易く、また金属酸化物微粒子の凝集や沈降が起こるなどの問題があった。ところが、分散剤として前記の一般式(1)で表されるシリコーン化合物を用い、更に金属酸化物微粒子の表面処理剤として前記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物を用いた本発明の日焼け止め化粧料は、経時での金属酸化物微粒子の凝集や沈降、系のゲル化がおこらず、保存時の安定性に優れている。更に、日焼け止め化粧料においては、金属酸化物微粒子の分散が悪いと、紫外線遮蔽効果が充分でないだけでなく、肌に塗布したとき白浮きが目立つものとなるが、本発明の日焼け止め化粧料は、高分散のため、肌に塗布しても白浮きしない効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の日焼け止め化粧料の各成分について説明する。
本発明に使用する成分(a)の揮発性オルガノポリシロキサンは、金属酸化物微粒子の分散媒である。日焼け止め化粧料では、従来から、金属酸化物微粒子の分散媒として揮発性オルガノポリシロキサンが一般に用いられている。揮発性オルガノポリシロキサンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコンなどであり、これらは単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。なかでも、揮発速度や粉体の濡れ性からデカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンが特に好ましい。
成分(a)の日焼け止め化粧料への配合量は、10〜55質量%が好ましい。10質量%未満の場合、安定な日焼け止め化粧料を得るためには必然的に他の油分の配合量が多くなり、そのためさっぱりした使用感といった揮発性シリコーン配合のメリットが得られにくくなる。55質量%を越えると塗布中のなじみが遅くなり、使用感が油っぽくなるため好ましくない。
【0013】
本発明で使用する成分(b)のシリコーン系分散剤は、前記一般式(1)で表されるシリコーン化合物である。この一般式(1)で表されるシリコーン化合物は、前記の特許文献5に記載されたシリコーン化合物の一種である。一般式(1)で表されるシリコーン化合物は、主鎖に直鎖のメチルポリシロキサンを持ち、そのメチル基の一部を、炭素数8〜14のアルキル基、ポリオキシエチレン基、及びメチルポリシロキサン基で置換した構造を持つ。炭素数8〜14のアルキル基は有機系紫外線吸収剤との相溶性を調整するために分子中に導入されている。このアルキル基は特にラウリル基が好ましい。また、ポリオキシエチレン基は、粉体との吸着点となることを期待して分子中に導入されている。そして、主鎖の長さや、炭素数8〜14のアルキル基、ポリオキシエチレン基、メチルポリシロキサン基の導入量によって、粉体への吸着性や揮発性オルガノポリシロキサンもしくは、有機系紫外線吸収剤への相溶性に違いがある。本発明では、一般式(1)で表されるシリコーン化合物について、主鎖の長さ、並びに、炭素数8〜14のアルキル基、ポリオキシエチレン基及びメチルポリシロキサン基の導入量を決めるx,y,z,p,a及びbを特定の範囲にすることにより、これらの機能を最大限に発揮させて、優れた分散性能を持たせたものである。
【0014】
成分(b)の日焼け止め化粧料への配合量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。0.1質量%未満の場合には分散性が悪く、金属酸化物微粒子の凝集、沈降が起きる。また20質量%を超えると経時での系のゲル化がおきやすくなるとともに、べたつきを感じるため好ましくない。
【0015】
本発明で使用する成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子は、前記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物で表面処理された金属酸化物微粒子である。上記一般式(2)で表されるシリコーン化合物は、前記特許文献2に記載されたシリコーン化合物の一種である。一般式(2)で表されるシリコーン化合物は主鎖に直鎖のメチルポリシロキサンを持ち、そのメチル基の一部を、炭素数4〜12のアルキル基、トリエトキシシラン基、及びメチルポリシロキサン基で置換した構造を持つ。炭素数4〜12のアルキル基は一般式(2)の化合物で表面処理された粉体と有機系紫外線吸収剤との濡れ性を調整するために分子中に導入されている。このアルキル基はヘキシル基が特に好ましい。また、トリエトキシシラン基は金属酸化物微粒子の表面への反応性基として分子中に導入されている。そして、炭素数4〜12のアルキル基及びメチルポリシロキサン基の導入量によって、一般式(2)の化合物で表面処理される粉体の濡れ性が変り、初期の分散性や保存安定性を左右する因子となりえる。本発明では、一般式(2)で表されるシリコーン化合物のW,X,Y,Z及びnを特定の範囲にすることによって、金属酸化物微粒子の表面処理剤としての機能を最大限に発揮させ、且つ前記一般式(1)のシリコーン系分散剤によって良好に分散しえる表面処理金属酸化物微粒子を得たものである。
【0016】
上記の金属酸化物微粒子は、レーザー回析法による1次粒子径が1μm以下、好ましくは0.1μm以下の大きさのものが好ましい。また、金属酸化物微粒子は、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子が好ましく使用される。この金属酸化物微粒子は、シリカやアルミナなどで処理した金属酸化物微粒子であってもよい。ここに、1次粒子径とは、1次粒子の平均粒子径のことである。1次粒子径1μm以下の酸化亜鉛微粒子の市販品としては、例えば堺化学工業(株)製のFINEX−50、住友大阪セメント(株)製のZnO−350、石原産業(株)製の酸化亜鉛FZO−50、テイカ(株)製の微粒子酸化亜鉛MZ−500等が挙げられる。酸化チタン微粒子の市販品としては堺化学工業(株)製のSTR−60、STR−100、テイカ(株)製のMT−500Bなどが挙げられる。
【0017】
前記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物による金属酸化物微粒子の表面処理は、方法そのものは、従来公知の方法で行える。すなわち、例えば、(i)一般式(2)で表されるシリコーン化合物を含有させた水或いは有機溶剤から選択される媒体中に金属酸化物微粒子を分散させて表面処理する方法、(ii)金属酸化物微粒子と一般式(2)で表されるシリコーン化合物を混合した後、ボールミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いて表面処理する方法、(iii)一般式(2)で表されるシリコーン化合物の溶剤溶液に金属酸化物微粒子を分散させて、金属酸化物微粒子表面にシリコーン化合物を吸着させ、その後乾燥、焼結させる方法などで行う。金属酸化物微粒子に対する表面処理剤(シリコーン化合物)の量は、0.1〜12質量%が好ましく、より好ましくは3〜8質量%である。また、成分(c)の日焼け止め化粧料への配合量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは、5〜35質量%である。1質量%未満では紫外線防御効果を十分に得ることができない。また50質量%を超えて配合すると、沈降しやすくなるなど保存安定性上好ましくない上に、粉っぽい使用感になり好ましくない。
【0018】
本発明で使用する成分(d)の有機系紫外線吸収剤は、一般に化粧料に用いられているものであり、例えば、ケイ皮酸誘導体、パラ−アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、β,β−ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4−ジアリールブタジエン誘導体等である。そのうち、特に好ましいものはケイ皮酸誘導体である。
【0019】
上記ケイ皮酸誘導体としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(例えば「ユビヌルMC80」;BASF社製)、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社製)、シンノキサート、DEAメトキシシンナマート、メチルケイ皮酸ジイソプロピル、グリセリル−エチルヘキサノアート−ジメトキシシンナマートなどが用いられる。そのうち、特に好ましいものはパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルである。
【0020】
成分(d)の日焼け止め化粧料への配合量は、好ましくは、0.1〜25質量%、より好ましくは、3〜20質量%である。本発明においては、分散剤として前記の一般式(1)で表されるシリコーン化合物を用い、更に金属酸化物微粒子の表面処理剤として前記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物を用いたため、中波長紫外部領域(280〜320nm)を効率よく防御すべく、有機系紫外線吸収剤を3質量%以上配合する系であっても、高い日焼け止め効果を発揮しつつ、なおかつ経時での凝集や沈降、系のゲル化がおこらず、保存時の安定性に優れている。
【0021】
本発明の日焼け止め化粧料は、必要に応じて他の成分を併用して、常法により調製することができる。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状など種々の形態にて実施することができる。また、この化粧料の剤型は、例えば油中水型、油性(実質的に水を含まない)、水中油型などが挙げられるが、中でも油中水型が好ましい。また本発明の日焼け止め化粧料は、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム、化粧下地、ファンデーション、日焼け止めリップバームなどの製品にて実施することができる。
【0022】
本発明の日焼け止め化粧料は、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品に一般に使用される成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、水、油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、アルコール、エステル系オイル、エーテル系オイル、シリコーン系オイル、フッ素化合物等の油剤原料、成分(c)以外の粉体原料、金属石鹸、界面活性剤、成分(b)以外のシリコーン系界面活性剤、多価アルコール、酸化防止剤、高分子化合物、香料、防腐剤、保湿剤、pH調整剤、美容成分、色素、香料などが挙げられる。
【実施例】
【0023】
本発明を実施例、比較例により詳細に説明する。配合量については特記しない限り、質量%で示す。まず、実施例及び比較例で用いるシリコーン系分散剤及びシリコーン表面処理金属酸化物について説明する。
A.実施例及び比較例で用いるシリコーン系分散剤及びその製造例
1.実施例で用いるシリコーン系分散剤及びその製造例(製造例1)
反応器に、下記平均組成式(1−1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン560質量部と、下記平均組成式(1−2)で示されるオルガノポリシロキサン210質量部及びイソプロピルアルコール480質量部を混合し、塩化白金酸2質量%のイソプロピルアルコール溶液0.2質量部を加え、溶剤の還流下3時間反応させた。更に、1−ドデセン460質量部を添加し、溶剤の還流下3時間反応を継続させた後、下記平均組成式(1−3)で示されるポリオキシエチレンモノアリルエーテル380質量部を添加し、更に6時間加熱還流することによって反応を完結させた。次いで、0.01N塩酸水溶液を200質量部添加し、60〜70℃で加熱することで未反応のポリオキシアルキレンのアリルエーテル基を加水分解処理した。反応液を減圧下で加熱して溶剤を溜去した後、ろ過を行い下記平均組成式(1−4)で示されるオルガノポリシロキサンを得た。この生成物は、淡黄色透明な液体であり、粘度は、1120mm/s(25℃)、屈折率は1.4401(25℃)であった。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
2.比較例で用いるシリコーン系分散剤及びその製造例(比較製造例1〜5)
製造例1の各原料の質量比を変えた以外は、製造例1と同様にして比較製造例1〜5のオルガノポリシロキサンを得た。原料の比率、物性は表1に記す。
【0027】
【表1】

【0028】
B.実施例及び比較例で用いるシリコーン表面処理酸化亜鉛粒子及びその製造例
1.表面処理に用いるシリコーンの製造例(製造例2)
反応器に下記平均組成式(2−1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン1200質量部とトルエン920質量部を仕込み、塩化白金酸0.5質量%のトルエン溶液3質量部を加えた。次いで、前記平均組成式(1−2)で表されるオルガノポリシロキサン1330質量部と1−ヘキセン180質量部の混合物を滴下し、さらにビニルトリエトキシシラン380質量部を滴下しながら溶剤の還流下に6時間反応させた。反応物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記平均組成(2−2)で表されるオルガノポリシロキサンを得た。この生成物は、淡褐色透明な液体であり、粘度が47mm/s(25℃)、屈折率は1.4121(25℃)であった。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
2.表面処理に用いるシリコーンの製造例(製造例3)
製造例2の各原料の質量比を変えた以外は、製造例2と同様にして製造例3のオルガノポリシロキサンを得た。原料の比率及び物性は表2に記す。
【0032】
【表2】

【0033】
3.酸化亜鉛微粒子の表面処理
あらかじめ熱乾燥処理した未処理の平均粒径20〜30nmの酸化亜鉛微粒子(テイカ社製MZ−500)50質量部を反応器に仕込み、製造例2又は製造例3で得たシリコーン化合物2.5質量部をヘキサン100質量部に希釈した溶液を徐々に加えながら攪拌した。更に、昇温してヘキサンを留去し、150℃にて3時間攪拌することにより焼き付け処理を行い、その後粉体を窒素気流下で室温に戻し、シリコーン表面処理酸化亜鉛微粒子を得た。なお、シリコーン表面処理酸化チタン微粒子も同様の表面処理で得た。
【0034】
実施例1〜4及び比較例1〜8. W/O型日焼け止め化粧料
表3に示す組成の日焼け止め料(W/O型エマルション)を、下記の製造方法にて調製し、初期の分散性及び経時安定性(保存安定性)について、下記に示す方法により評価を行った。その結果も併せて表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
(製造方法)
イ:成分1〜12を、規格瓶に入れ、ジルコニアビーズを成分1〜12の合計質量の2倍質量加えペイントシェイカーで15時間混合分散し、ジルコニアビーズを取り除いて粉体分散物を得た。
ロ:イで得た粉体分散物をデスパーズミルで攪拌しながら、成分13〜16を順次入れ、10分間混合した。
ハ:ロに成分17〜19をデスパーで攪拌しながら加え10分間乳化してW/O型の日焼け止め料を得た。
【0037】
(評価)
表3における初期の分散性及び経時安定性の評価は以下の如くして行った。
1.初期の分散性は製造直後に、日焼け止め化粧料の200μlを石英板に滴下し、6milのドクターブレードを用いて薄膜を引き、可視部(750nm)から紫外部(250nm)までの透過スペクトルを測定し、下記の評価基準より判定した。
[評価基準]
360nmにおける透過率が低いほど粉体の凝集が少なく高分散していると判断して評価を行った。
[判定]360nmにおける透過率
◎:20%未満
○:20%以上〜30%未満
△:30%以上〜40%未満
×:40%以上
【0038】
2.経時安定性は、5℃、50℃、室温の各条件下にて1ヶ月保存した後、状態を目視により観察し、下記の基準により判定した。
[評価基準]
ゲル化もしくは、分離の有無を判定した。
[判定]
◎:ゲル化は見られず、さらさらしている
○:ゲル化の程度が低く、若干のとろみがある
△:ゲル化が見られ、傾けても流れないが、手で振ると流動性が出る
×:ゲル化していて、逆さにしても動かず、手で振ってもゲルが崩れない
××:粉体が沈降し分離している
【0039】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜4の日焼け止め化粧料は、初期の分散性が高く、また50℃、室温、5℃に1ヶ月間保存した後の分散性が良く、系のゲル化や粉体の沈降が起きておらず、経時の分散安定性に優れた日焼け止め化粧料であった。一方、金属酸化物微粒子の表面処理剤として、本発明の一般式(2)で表されるシリコーン化合物に代えて、ジメチコン・メチコンコポリマー(比較例1)又はメチコン(比較例2)を用いた日焼け止め化粧料は、初期の分散は良いものの、経時で系のゲル化が起き、経時分散安定性が悪かった。また未表面処理の酸化亜鉛微粒子を用いた比較例3の日焼け止め化粧料では、初期における分散性が悪く、経時の分散安定性も悪かった。また、分散剤として、本発明の一般式(1)で表されるシリコーン化合物に代えて、主鎖の長さ、並びに、ラウリル基、ポリオキシエチレン基及びメチルポリシロキサン基の導入量を決めるx,y,z,p及びbが、本発明の範囲内にないシリコーン化合物(比較製造例1〜5)を用いた比較例4〜8の日焼け止め化粧料は、初期の分散性は良好なものの、経時で系のゲル化が起き、経時分散安定性が悪かった。
【0040】
実施例5. O/W型日焼け止め乳液
成分 (%)
(1)製造例2のシリコーン5%処理酸化亜鉛微粒子 10.0
(2)ビニルピロリドン変成アクリル-シリコーン共重合体(注3) 2.0
(3)デカメチルシクロペンタシクロシロキサン 10.0
(4)製造例1のシリコーン化合物 3.0
(5)PEG11メチルエーテルジメチコン 2.0
(6)ミツロウ 2.0
(7)スクワラン 6.0
(8)メチルポリシロキサン(10CS) 5.0
(9)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
(10)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(注4) 1.0
(11)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0
(12)1,3−ブチレングリコール 8.0
(13)防腐剤 適量
(14)精製水 残量
(15)香料 適量
(注3) KP−545(信越化学工業(株)製)
(注4) KF−6017(信越化学工業(株)製)
【0041】
(製造方法)
イ:成分(1)〜(4)を15時間ペイントシェイカーにかけ均一に混合分散した。これに(5)〜(11)を加熱溶解し、70℃にした。
ロ:(12)〜(14)を加熱溶解して70℃にし、これをイに添加して10分間乳化混合した。
ハ:ロを冷却後、(15)を添加混合して日焼け止め乳液を得た。
上記のようにして得られたO/W型日焼け止め乳液は、製造直後も高い分散性を示し、保存安定性にも優れる化粧料であった。
【0042】
実施例6. O/W型クリームファンデーション
成分 (%)
(1)デカメチルテトラシロキサン 10.0
(2)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
(3)製造例3のシリコーン7%処理酸化亜鉛微粒子 8.0
(4)製造例1のシリコーン化合物 5.0
(5)ステアリン酸 5.0
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.5
(7)セトステアリルアルコール 1.5
(8)ベヘニルアルコール 1.0
(9)モノラウリル酸イソプロピレングリコール 2.5
(10)ミリスチン酸イソプロピル 6.0
(11)精製水 残量
(12)トリエタノールアミン 1.2
(13)ソルビトール 3.0
(14)パラオキシ安息香酸メチル 適量
(15)製造例2のシリコーン7%処理酸化チタン微粒子 5.0
(16)カオリン 5.0
(17)黒酸化鉄 1.0
(18)ベンガラ 2.5
(19)黄酸化鉄 2.0
(20)ベントナイト 0.2
【0043】
(製造方法)
イ:(1)〜(4)をペイントシェイカーにて均一に混合分散した。
ロ:(15)〜(19)を室温にて混合した。
ハ:(20)に(11)の一部を加えてよく膨潤させた。次に、(11)の残部と(12)〜(14)を加えて溶解させた。このものにイ及びロの混合物を加え70℃で混合した(水相)。
ニ:(5)〜(10)を70℃で溶解した(油相)。
ホ:ハで得た(水相)に、ニで得た(油相)を加えて10分間乳化し、乳化終了後、35℃まで撹拌冷却した。
上記のようにして得られたO/W型クリームファンデーションは、製造直後の粉体分散性が高く、経時でのゲル化がおこらない、保存安定性に優れたものであった。
【0044】
実施例7. W/O型リキッドファンデーション
成分 (%)
(1)製造例3のシリコーン5%処理酸化亜鉛微粒子 10.0
(2)製造例1のシリコーン化合物 5.0
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
(4)アクリル−シリコーン系グラフト共重合体(注5) 5.0
(5)トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 3.0
(6)ジカプリン酸プロピレングリコール 3.0
(7)ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 3.0
(8)ショ糖脂肪酸エステル 0.5
(9)有機変性ベントナイト 1.0
(10)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7.0
(11)酸化チタン 9.0
(12)ベンガラ 0.6
(13)黄色酸化鉄 2.1
(14)黒酸化鉄 0.15
(15)タルク 5.0
(16)球状PMMA粉体 0.5
(17)ヘプタオレイン酸デカグリセリル 1.0
(18)セスキオレイン酸ソルビタン 1.0
(19)ポリオキシエチレン・
メチルポリシロキサン共重合体(注6) 1.0
(20)ポリオキシエチレン・
アルキル変性シリコーン(注7) 1.0
(21)合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(注8) 0.3
(22)エタノール 1.5
(23)防腐剤 微量
(24)プロピレングリコール 5.0
(25)精製水 残量
(注5):KP−545:信越化学工業(株)製
(注6):KF6017:信越化学工業(株)製
(注7):アビルEM−90:ゴールドシュミット社製
(注8):ラポナイトXLS:ラポナイト社製
【0045】
(製造方法)
イ:成分(1)〜(3)をマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)=高圧ホモジナイザーで均一に分散した。
ロ:(4)〜(8)、(10)、(17)〜(20)を加熱して溶解し、均一に混合し放冷した。
ハ:ロに成分(9)、(11)〜(16)を加え、ロールミルにて均一混合した。
ニ:イにハを加え、均一に混合した。
ホ:成分(21)〜(25)を均一混合した。
ヘ:ニにホを攪拌しながら加え、乳化し、脱泡後、広口瓶に充填してリキッドファンデーションとした。
上記のようにして得られたW/O型リキッドファンデーションは、製造初期の粉体の分散性に優れ、その安定性においても、経時でのゲル化や粉体の凝集は見られず優れたものであった。
【0046】
実施例8. 日焼け止めリップバーム
(成分) (%)
(1)ポリエチレンワックス 2.0
(2)セレシン 1.0
(3)マイクロクリスタリンワックス 5.0
(4)リンゴ酸ジイソステアリル 9.0
(5)トリイソステアリン酸ポリグリセリル 残量
(6)ワセリン 10.0
(7)ポリブテン 10.0
(8)重質流動イソパラフィン 9.0
(9)2−エチルヘキサン酸セチル 16.0
(10)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 10.0
(11)製造例1のシリコーン化合物 3.0
(12)製造例2のシリコーン5%処理酸化亜鉛微粒子 7.0
(13)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7.0
(14)防腐剤 0.1
(15)香料 0.1
【0047】
(製造方法)
イ:(10)〜(13)を15時間ビーズミル処理し分散させた。
ロ:(1)〜(9)、(14)、(15)を加え、これをローラーで混合分散した
ハ:ロを加熱溶解後、イを加え均一に混合した。
ニ:ハを容器に充填し、急冷して日焼け止めリップバームを得た。
上記のようにして得られた日焼け止めリップバームは、金属酸化物微粒子の分散性がよく、50℃、室温、5℃に1ヶ月間保存した後も経時での変化がないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)揮発性オルガノポリシロキサン、(b)シリコーン系分散剤、(c)シリコーン表面処理金属酸化物微粒子及び(d)有機系紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料であって、前記成分(b)のシリコーン系分散剤が次式の一般式(1)で表されるシリコーン化合物であり、前記成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子が次式の一般式(2)で表されるシリコーン化合物で表面処理された金属酸化物微粒子であることを特徴とする日焼け止め化粧料。
【化1】

【化2】

【請求項2】
成分(b)のシリコーン系分散剤の配合量が0.1〜20質量%である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子の配合量が1〜50質量%である請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
成分(c)のシリコーン表面処理金属酸化物微粒子の金属酸化物微粒子が、酸化亜鉛微粒子又は酸化チタン微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【請求項5】
成分(d)の有機系紫外線吸収剤の配合量が0.1〜25質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【請求項6】
成分(d)の有機系紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルである請求項1〜5のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【請求項7】
剤型が、油中水型である請求項1〜6のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2009−84171(P2009−84171A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253489(P2007−253489)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】