説明

暖房便座

【課題】便座を短時間で適温に昇温させることにより、ヒーターを常時通電させて便座を加温しておく必要がなく、極めて省エネルギーな暖房便座を提供すること。
【解決手段】下枠体27と、内面に輻射熱吸収層38を設けた上枠体26とを合わせることにより内部に空洞部28を形成した便座22と、空洞部28に設けた輻射型発熱体30とを備え、前記便座の上枠体26を高熱伝導材料で構成することにより、使用者がトイレに入室した後に輻射型発熱体に通電しても、便座に着座するまでの数秒間で便座の着座部を適温に昇温させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の暖房便座には、面状のヒーターを便座内に埋設するか、便座裏面に貼り付けている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は、前記公報に記載された、従来の暖房便座を示すものである。図5に示すように、便座本体1の断面形状は、上方に向かって膨出され、しかも、上面がその内周縁および外周縁に向けてゆるやかに傾斜する形状となっており、さらに、裏面には合成樹脂あるいはゴム製の当片2が所要の間隔を空けて設けられていた。
【0004】
また、便座本体1の上面には、導電材料を両面より絶縁シートで覆った可撓性の面発熱体3が貼着又は便座本体1の表面に露出させた状態で便座本体1に埋設する等して設けられていた。この面発熱体3は、所定のパターンに印刷配線を形成し、表面に合成樹脂シートを貼着することにより構成されていた。
【0005】
4は便座本体1の上面に設けた面発熱体3上を被覆するようにして便座本体1上に被着されたポリアミドあるいはポリエステル等の合成樹脂からなる絶縁樹脂層である。
【0006】
絶縁樹脂層4が薄膜状に構成されているので、便座本体1の上面に設けた面発熱体3に通電を行うことにより、便座本体1を加温することなく直ちに人体の要部を適温で暖めることができ、ヒーターを常時通電させておいて便座を加温させておく必要がなく、非常に省エネになるものである。
【特許文献1】実開昭59−194897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の暖房便座では、絶縁樹脂層内を伝導で熱が伝わるので、着座部の表面が適温になるまでかなりの時間を要するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、着座部の表面を極めて短時間で適温にする暖房便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の暖房便座は、下枠体と、内面に輻射熱吸収層を設けた上枠体とを合わせることにより内部に空洞部を形成した便座と、前記空洞部に設けられた輻射型発熱体とを備え、着座時、人体と接触する前記便座の上枠体を金属に代表される高熱伝導材料で構成することにより、着座面の瞬時加熱を可能にするとともに、着座面の温度均一性を実現できるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の暖房便座は使用者がトイレに入室した後、便座に着座するまでの数秒間で便座の着座部を適温に昇温させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、下枠体と、内面に輻射熱吸収層を設けた上枠体とを合わせることにより内部に空洞部を形成した便座と、空洞部に設けた輻射型発熱体とを備え、前記便座の上枠体を高熱伝導材料で構成することにより、上枠体の内面に設けた輻射熱吸収層で発生する輻射熱を急速に便座表面まで伝えるため、使用者がトイレに入室した後に輻射型発熱体に通電しても、便座に着座するまでの数秒間で便座の着座部を適温に昇温させることができる。
【0012】
第2の発明は特に第1の発明の上枠体を金属で構成することにより、一般的に市場で流通している材料を加工し製造することができるため、信頼性が高く、安価に生産することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の下枠体の内面に輻射反射手段を設けたことにより、輻射型発熱体から発生する下面方向への輻射を上枠体方向に偏向することとなり、便座裏面への熱ロスを軽減し、熱源と輻射反射手段との位置関係の調節で便座採暖面の温度ムラを防止することができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか1つの発明の輻射型発熱体を、石英管にアルゴンと窒素を主成分としたガスを封入したランプヒーターとすることにより、長時間の使用に耐えるとともに、熱容量の小さいフィラメントを使用することができるために極めて速い立ち上がり性能を実現できる。
【0015】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか1つの発明の便座または便座を保持する本体に人体検知手段を設け、前記人体検知手段の信号により輻射型発熱体を付勢する構成にすることにより、便座に人が近づくと輻射型発熱体が自動的に発熱するものとなり、使用者が便座暖房の作動操作をしなくても、自動的に便座が暖められるので、使い勝手が向上する。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって、発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における温水洗浄機能付き暖房便座の斜視図を示すものである。
【0018】
図1において、便器20に本体21が取り付けられており、この本体21に便座22および便ふた23が回動自在に設けられている。
【0019】
また、本体21の袖部24には赤外線透過部が設けられ、その内側にはトイレ空間の人体の有無を検知する赤外線センサー25が内装されている。
【0020】
図2は本発明の第1の実施の形態における便座22の一部切り欠き平面図であり、図3は本発明の第1の実施の形態における便座22の要部断面図である。
【0021】
便座22は、アルミ等に代表される高熱伝導率を有する金属製の上枠体26と下枠体27のそれぞれの内周縁および外周縁を接合固定することにより、内部に空洞部28を有する構造となっている。
【0022】
その空洞部28の内部には便座22の着座部に対向して、アルミ板を鏡面仕上げした輻射反射板29と輻射型発熱体であるランプヒーター30とが設けられている。その輻射反射板29の端部は全周にわたり上方への折り曲げ部を有しており、その折り曲げ部によりランプヒーター30からの熱輻射が偏向されるので、ランプヒーター30から離れている外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、上枠体26への輻射分布の均一化を図っている。
【0023】
ランプヒーター30の近傍には、ランプヒーター30と直列に電気接続したサーモスタット31および温度ヒューズ32が設けられ、万一の不安全事態に対して温度過昇を防止するよう作用する。
【0024】
また、上枠体26の内面にはサーミスタ33が配設されており、このサーミスタ33の信号に基づいて採暖面の温度が所定の温度になるようランプヒーター30への通電を制御する制御器(図示せず)が本体21に設けられている。
【0025】
さらに、ランプヒーター30は、石英管管34の内部にタングステンフィラメント35を貫通しアルゴンと窒素を主成分としたガス36を封入して構成されており、タングステンフィラメント35の消耗を防止するよう作用している。
【0026】
ガス36中にさらにハロゲンガスを加えることにより、タングステンフィラメント35の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、タングステンフィラメント35の消耗をさらに防止するよう作用する。
【0027】
この作用により熱容量の小さいタングステンフィラメント35を熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。
【0028】
図4は本発明の第1の実施の形態における上枠体26の要部断面図であり、上枠体26はアルミ等の金属材料を用いて成形した上枠体本体37の内面に、カーボンブラックを多量に含有する輻射熱吸収層38を塗装し、上枠体本体37の外面に表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した表面化粧層39を塗装したものである。
【0029】
上枠体本体37は金属材料を平均厚み1.2mmにて成形することにより、熱伝導性を高めると同時に、その剛性から便座の構造矩体として機能している。
【0030】
また、内面に塗装されている輻射熱吸収層38の厚みは0.1mmであり、輻射熱を完全に吸収すると同時に、熱容量が非常に小さいので瞬時に昇温する。
【0031】
また、外面に塗装される表面化粧層39の厚みは0.2mmであり、この層も熱容量が非常に小さいので上枠体本体37を伝導する熱により瞬時に昇温する。
【0032】
以上のように構成された暖房便座について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
上記構成により、使用者がトイレに入室し、暖房便座に近づくと、赤外線センサー25が人体を検知し、その信号によりランプヒーター30へ通電が開始される。これにより投入エネルギーは瞬時に輻射エネルギーに変換され、石英管管34を透過して便座内部の全方向に向かって放射される。上枠体26へは直接および輻射反射板29を経て輻射エネルギーが照射される。
【0034】
上枠体26に到達した輻射エネルギーは輻射熱吸収層38に吸収され、熱エネルギーに変換される。前記熱エネルギーにより金属製の上枠体26は短時間に昇温し、上枠体26が所定の温度に到達するとサーミスタ33が検知し、ランプヒーター30への通電を制御し、上枠体26を一定温度に維持する。
【0035】
以上のように本実施の形態の暖房便座は、人体を検知して着座部となる上枠体をほぼ瞬時に加温することができるので、便座を予め予熱する必要がなく、使用するときの自動的に通電するものであるから、省エネルギーの効果と、快適で使い勝手のよい暖房便座を提供することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる暖房便座は、短時間に所定箇所を適温に昇温させることが可能となるので、各種暖房器具の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における暖房便座の一部切り欠き平面図
【図3】本発明の実施の形態1における暖房便座の要部断面図
【図4】本発明の実施の形態1における暖房便座の上枠体の要部断面図
【図5】従来の暖房便座の要部断面図
【符号の説明】
【0038】
21 本体
22 便座
25 赤外線センサー(人体検知手段)
26 上枠体
27 下枠体
28 空洞部
29 輻射反射板
30 ランプヒーター(輻射型発熱体)
34 石英管
36 ガス
38 輻射熱吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠体と、内面に輻射熱吸収層を設けた上枠体とを合わせることにより内部に空洞部を形成した便座と、前記空洞部に設けた輻射型発熱体とを備え、前記便座の上枠体を高熱伝導材料で構成した暖房便座。
【請求項2】
上枠体は金属材料で構成した請求項1に記載の暖房便座。
【請求項3】
下枠体の内面に、輻射熱反射手段を設けた請求項1または2に記載の暖房便座。
【請求項4】
輻射型発熱体は、石英管にアルゴンと窒素を主成分としたガスを封入したランプヒーターである請求項1から3のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項5】
便座または便座を保持する本体に人体検知手段を設け、前記人体検知手段の信号により輻射型発熱体を付勢する請求項1から4のいずれか1項に記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−305096(P2006−305096A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131972(P2005−131972)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】