説明

暖房用パネル

【課題】面状発熱体とパネルとの熱膨張率の差が大きくても、面状発熱体の抵抗体形成部のはがれや亀裂等の損傷を生じさせるおそれがない暖房用パネルを提供する。
【解決手段】印刷等により抵抗体を形成した面状発熱体を、装着手段を用いてパネルに装着する場合に、装着手段と対向する部位には抵抗体を形成しないようにし、面状発熱体とパネルとの熱膨張率が大きく異なった場合でも、膨張を規制する装着手段の部位には抵抗体が印刷されていないので抵抗体にかかる応力が軽減される暖房用パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば床暖房に用いられる暖房用パネルの、特に面状発熱体をパネルに装着する部位に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の床暖房装置において、面状発熱体であるPTCヒータをパネルである表面仕上げ材に装着する際に、両者との間にホットメルトにより装着し、PTCヒータの熱膨張により発生する応力をホットメルトの粘弾性により吸収していた。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7は従来のPTC特性を持たせた床暖房装置の断面図である。下地材17と表面仕上げ材16との間にPTCヒータ18が埋設された床暖房装置であって、PTCヒータ18上に耐熱性を有するホットメルト19をコーティングし、該ホットメルト19上にフィルム20を介して表面仕上げ材16を積層してなることを特徴としており、このように構成することで、PTCヒータ18の熱膨張によって発生する応力をホットメルト19の粘弾性によって吸収できるようになり、表面仕上げ材16の部分的な盛上りを抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−245518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来の構成であっても、面状発熱体を抵抗体の印刷等により形成した場合は熱膨張率が大きいため、一般に木質材を用いるパネルとの熱膨張率との差は大きい。そのためホットメルトの粘弾性では両者の熱膨張率の差を吸収しきれず、面状発熱体の抵抗体形成部のはがれや亀裂等の損傷を生じさせるおそれがあると言う課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、熱膨張率の差により応力がかかっても抵抗体にかかる応力を軽減し、はがれや亀裂等の損傷が生じにくい暖房用パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために本発明の暖房用パネルは、印刷等により抵抗体を形成した面状発熱体を、装着手段を用いてパネルに装着する場合に、装着手段と対向する部位には抵抗体を形成しないようにしたものである。
【0007】
したがって、面状発熱体とパネルとの熱膨張率が大きく異なった場合でも、膨張を規制する装着手段の部位には抵抗体が印刷されていないので抵抗体にかかる応力が軽減される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の暖房用パネルによれば、抵抗体にかかる熱膨張の応力を軽減することができ、はがれや亀裂等の損傷を生じにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、電極および電極により電圧を印加して発熱する抵抗体を電気絶縁性基材上に印刷等により形成した面状発熱体を、装着手段を用いてパネルに装着する暖房パネルにおいて、装着手段と対向する部位には抵抗体を形成しないようにしたものである。そし
て、面状発熱体とパネルとの熱膨張率が大きく異なった場合でも、膨張を規制する装着手段の部位には抵抗体が印刷されていないので抵抗体にかかる応力が軽減される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の装着手段は、パネルに設けた突起と面状発熱体に設けた孔としたものである。そして、簡素な構成で装着できるとともに、膨張に対する規制も小さくすることができる。
【0011】
第3の発明は、第1の発明の装着手段は、パネルと面状発熱体とを接着により装着するために面状発熱体とパネルとの間に設けた接着層としたものである。そして、抵抗体を印刷していない部位に接着層を設けたため、熱膨張時の規制による応力が抵抗体にはかかりにくくなるとともに、面状発熱体とパネルとの密着を確保することができる。
【0012】
第4の発明は、電極および電極により電圧を印加して発熱する抵抗体を電気絶縁性基材上に印刷等により形成した面状発熱体の、抵抗体が形成されていない部位あるいは抵抗体が部分的にしか形成されていない部位と対向する位置に接着層を設け、パネルに装着したものである。そして、抵抗体が形成されていない部位だけでなく、抵抗体が部分的にしか形成されていない部位にも接着層を設けることにより、長い筋として接着層を設けることができ、抵抗体にかかる応力を軽減するとともに、面状発熱体とパネルとの密着を確保することができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図2は、本発明の実施の形態1における面状発熱体の概略構成図を示し、図1は要部平面図、図2は図1におけるA−A部の断面図である。
【0014】
図1において、面状発熱体1は、ポリエステルフィルム等の薄肉のロール状の図2における電気絶縁性基材2の上面に銀ペーストの印刷・乾燥により形成した一対(電気的に正側と負側)の電極3と、電極3に重なるように高分子抵抗体インクを印刷・乾燥により形成した高分子抵抗体としての高分子抵抗体4を有している。そして、上記電極3、高分子抵抗体4、及び電気絶縁性基材2と接着性を有するアクリル系接着剤等の接着性樹脂層5を予め形成されたポリエステルフィルム等の薄肉の電気絶縁性の被覆材6を貼り合わせて面状発熱体1が形成される。
【0015】
電極3は、相対向するように幅の広い一対の主電極3a、3b(電気的に正側と負側)を面状発熱体1の長手方向の外側部に沿って配設され、それぞれの主電極3a、3bから交互に相手側の主電極に向って複数の枝電極3c、3dを導出して全体として櫛形形状になっており、これに重なるように配設した高分子抵抗体4に多数の枝電極3c、3dより給電することで、高分子抵抗体4に電流が流れ、発熱する。
【0016】
そして、高分子抵抗体4は枝電極3c、3dの間に抵抗体を形成していない部位7を設けている。
この抵抗体を形成していない部位7とパネルの装着部位とは対向するように配置され、装着される。これら高分子抵抗体4や電極3は印刷・乾燥により形成されるが、印刷方法には、よくスクリ−ン印刷が用いられる。スクリ−ン印刷の版にあらかじめ抵抗体を印刷しない部分を設けることにより、簡単に枝電極3c、3dの間に抵抗体を形成しない部位7を配設することができる。
【0017】
上記した構成により、面状発熱体とパネルとの熱膨張率が大きく異なった場合でも、膨張を規制する装着手段の部位には抵抗体が印刷されていないので抵抗体にかかる応力が軽
減される。
【0018】
従来、この種の面状発熱体の抵抗体には、ベースポリマーと、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散して、特にベースポリマーとして結晶性樹脂を用いてPTC特性を持たせたものがあるが、このようなPTC特性をもつ抵抗体を備えた面状発熱体を熱膨張率の差が大きい物へ装着されても、印刷抵抗体にかかる応力が軽減されるので、伸縮が発生して抵抗体の断面積が変化することもなく、抵抗値が変化することもないので、部分的に温度が高くなったり低くなったりすることがない。
【0019】
従って、やけどの危険性やぬるい等の不快感が生ずることがなく、安全で快適な暖房を行うことができる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における概略構成図を示す。図3において、実施の形態1の装着手段は、パネル8に設けた突起9と面状発熱体に設けた孔10としたものである。穴10は突起9よりもわずかに小さめに構成されており、圧入することで装着を行う構成としてある。そして、面状発熱体の穴10は、前記実施の形態1に記載の抵抗体を形成しない部位に設けてあり、簡素な構成で装着できるとともに、膨張に対する規制も小さくすることができる。
【0020】
突起9の形状は、面状発熱体1とパネル8を良好に装着できれば、円筒状でも角柱状でも六角柱でも良く、また、突起9は六角柱で穴10は円とする組み合わせでも良く、装着したあと突起9をつぶしたりすることで、はずれない構成にしても良い。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における概略構成図を示す。図3において、実施の形態1の装着手段は、パネル8と面状発熱体1とを接着により装着するために面状発熱体1とパネル8との間に設けた接着層11としたものである。そして、抵抗体を印刷していない部位に接着層11を設けたため、熱膨張時の規制による応力が抵抗体にはかかりにくくなるとともに、面状発熱体1とパネル8との密着を確保することができる。接着層11はアクリル系接着剤やホットメルト、両面テ−プ等が良く用いられる。なお前記接着層11は面状発熱体1とパネル8を良好に装着できるものならば何でもよい。
(実施の形態4)
図5〜図6は、本発明の実施の形態4における概略構成図を示し、図5は面状発熱体1において、接着層の構成される範囲を示した平面図、図6はパネル8への装着を示す構成図である。
図5に示すように、実施の形態1の装着手段は、電極3および電極3により電圧を印加して発熱する抵抗体4を電気絶縁性基材上に印刷等により形成した面状発熱体1の、抵抗体4が形成されていない部位7あるいは抵抗体が部分的にしか形成されていない部位12と対向する位置に接着層13を設け、図6に示すようにパネル8に装着したものである。そして、抵抗体が形成されていない部位7だけでなく、抵抗体が部分的にしか形成されていない部位8にも接着層13を設けることにより、長い筋として接着層13を設けることができ、抵抗体4にかかる応力を軽減するとともに、面状発熱体1とパネル8との密着を確保することができる
接着層13はアクリル系接着剤やホットメルト、両面テ−プ等が良く用いられる。また、長い筋として接着層13を設けているので、ロ−ラ−を利用した接着層形成方法を用いることができ、作業が簡単なる。なお前記接着層13は面状発熱体1とパネル8を良好に装着できるものならば何でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように本発明にかかる暖房用パネルは、膨張率の差が大きい物への装着においても、印刷抵抗体にかかる応力を軽減することができるため、面状発熱体の平板への装着用
途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態における面状発熱体の要部平面図
【図2】同実施の形態における面状発熱体の要部断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態における概略構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における概略構成図
【図5】本発明の第4の実施の形態における面状発熱体の接着層の構成される範囲を示した平面図
【図6】同実施の形態における概略構成図
【図7】従来の床暖房装置における要部断面図
【符号の説明】
【0023】
1 面状発熱体
2 電気絶縁性基材
3 電極
3a、3b 主電極
3c、3d 枝電極
4 高分子抵抗体
5 接着性樹脂層
6 電気絶縁性被覆材
7 抵抗体を形成しない部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極および前記電極により電圧を印加して発熱する抵抗体を電気絶縁性基材上に印刷等により形成した面状発熱体を、装着手段を用いてパネルに装着する暖房パネルにおいて、前記装着手段と対向する部位には前記抵抗体を形成しない暖房用パネル。
【請求項2】
装着手段は、パネルに設けた突起と面状発熱体に設けた孔である請求項1に記載の暖房用パネル。
【請求項3】
装着手段は、パネルと面状発熱体とを接着により装着するために前記面状発熱体と前記パネルとの間に設けた接着層である請求項1に記載の暖房用パネル。
【請求項4】
電極および前記電極により電圧を印加して発熱する抵抗体を電気絶縁性基材上に印刷等により形成した面状発熱体の、前記抵抗体が形成されていない部位あるいは前記抵抗体が部分的にしか形成されていない部位と対向する位置に接着層を設け、パネルに装着した暖房用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−267628(P2008−267628A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107951(P2007−107951)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】