有機トランジスタの製造方法
【課題】電界効果移動度が高い有機トランジスタを製造する方法を提供すること。
【解決手段】式
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、及びR2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]で表される構造単位を含む化合物を含有する有機膜を形成する工程と、Yで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、有機半導体層を製造する工程とを、有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【解決手段】式
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、及びR2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]で表される構造単位を含む化合物を含有する有機膜を形成する工程と、Yで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、有機半導体層を製造する工程とを、有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ等の有機半導体素子の製造過程では、シリコン系トランジスタ等の無機半導体素子の製造に必要な高温プロセス及び真空プロセスを省くことができ、製造に要するエネルギーを低減できる。また、有機半導体素子は、柔軟性を有するフィルム状の素子とすることが可能であり、次世代の素子として注目されている。
【0003】
π共役構造を有する化合物は導電性及び半導体性を示し、有機トランジスタに用いられる有機半導体化合物として注目されている。π共役構造を有する化合物として、具体的には、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)などが知られている。
【0004】
非特許文献1には、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)のクロロホルム溶液をシリコンウエハー上にスピンコートして有機半導体層を形成した有機トランジスタが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記有機トランジスタは電界効果移動度が10−5〜10−4cm2/Vsであり、電界効果移動度がより高い有機トランジスタを製造する方法が求められている。
【0006】
非特許文献2には、π共役構造を有する化合物として、アントラセンのホモポリマー、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーが記載されている。アントラセン部分の多くは発光性であり、π共役構造の一部としてアントラセン部分を有するポリマーは、エレクトロルミネッセンス性を示す可能性が高い材料である。
【0007】
π共役構造を有する化合物の多くは非溶解性であり、合成方法が複雑になり易い。そのため、非特許文献2では、加熱してアントラセンのホモポリマー、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーに変化させることができ、溶剤に対して溶解性を示す前駆体が提案されている。上記前駆体は、アントラセンのホモポリマー、又はアントラセンとベンゼンとのコポリマーのアントラセン部分に、無水マレイン酸がディールスアルダー付加した構造を持っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アプライド フィジックス レターズ(Appl. Phys. Lett.)、第53巻、第18号、第195〜197頁(1988年)
【非特許文献2】ケミカル コミュニケーション(Chem. Commun.)、第73〜74頁(1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、電界効果移動度が高い有機トランジスタを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法を提供する。
なお、前記式(1)において、左側のベンゼン環には、その右側の2つのC原子(これらの内の一つにはR3が結合し、他方にはR4が結合している)と結合している2つのベンゼン環炭素原子以外のベンゼン環炭素原子の内のいずれかにおいて、水素原子の代わりにn個のR1基、及び一つの隣接構造単位(図示せず)と結合している。式(1)に類似した他の式も同様に解釈される。
【0015】
ある一形態においては、Yで表される2価の基を少なくとも一部を脱離させるために、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記にエネルギーが印加される。
【0016】
ある一形態においては、前記有機半導体前駆体膜が、式(1)で表される構造単位を含む化合物と溶媒とを含有する溶液を、有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布することにより形成される。
【0017】
また、本発明は、式(1)
【0018】
【化3】
【0019】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を広げることにより、該化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、
該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法を提供する。
【0022】
ある一形態においては、Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【0023】
【化5】
【0024】
[式(Y−1)〜(Y−8)中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。X1は、水素原子又はハロゲン原子を表す。X1が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。]
からなる群から選択される少なくとも一種の基である。すなわち、前記化合物は、式(1)で表される構造単位を1個だけ有するとき、Yで表される2価の基は、上記式(Y−1)〜(Y−8)のいずれか1つで表され、前記化合物が式(1)で表される構造単位を2個以上有するとき、それらの構造単位におけるYは、互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0025】
また、本発明は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層は、式(3)
【0026】
【化6】
(3)
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタを提供する。
【0027】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、さらにゲート絶縁層を有する。
【0028】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記有機半導体層を有し、前記ゲート電極と該有機半導体層との間に前記ゲート絶縁層を有する。
【0029】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、前記ゲート電極上に前記ゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に前記有機半導体層を有し、該有機半導体層上に前記ソース電極及び前記ドレイン電極を有する。
【0030】
また、本発明は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、該第1の有機半導体層は、式(2)
【0031】
【化7】
【0032】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、該第2の有機半導体層は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタを提供する。
【0033】
また、本発明は、上記いずれかの有機トランジスタを含むエレクトロニクスデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、電界効果移動度が高い有機トランジスタの製造方法を提供するため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機トランジスタを含む面状光源の一例を示す模式断面図である。
【図9】実施例1及び2で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図10】実施例3で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図11】実施例4〜11で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明の有機トランジスタの製造方法は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法である。
本発明において、「有機半導体」とは、半導体としての機能を有する有機化合物を意味する。「有機半導体層」とは、有機半導体を含有する層を意味し、「有機半導体前駆体膜」とは、有機半導体の前駆体を含有する膜を意味する。ここで、「有機半導体の前駆体」は、それ自身が有機半導体であってもよく、有機絶縁体であってもよい。
【0038】
ここで、化合物を広げる(spread)とは、化合物を薄膜状に成形する操作を意味し、塗布又は蒸着等の通常使用される薄膜成形方法を全部包含することが意図されている。
【0039】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜30の基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0040】
炭素数1〜30の基の例としては、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、チエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、シアノ基が挙げられる。炭素数1〜30の基中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。炭素数1〜30の基中の水素原子がハロゲン原子で置換されている場合、ハロゲン原子の中でもフッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0041】
n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。n及びmは、0であることが好ましい。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0042】
式(1)中、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。R3又はR4で表される置換基の例としては、R1で表される置換基の例と同じ基が挙げられる。化合物の合成の容易さの観点からは、R3及びR4は、水素原子が好ましい。
【0043】
式(1)中、Yは、2価の基を表す。2価の基の中でも、熱や光などのエネルギーを与えることで脱離しうる基が好ましい。Yで表される2価の基としては、以下の基が例示される。
【0044】
【化8】
【0045】
式(Y−1)〜式(Y−8)中、R10〜R20は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。中でも、水素原子又は炭素数1〜30の基が好ましい。
【0046】
R10〜R19が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0047】
R20が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、エステル構造を含む基が挙げられる。
【0048】
X1は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の中でも、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0049】
式(Y−1)〜式(Y−8)で表される基の中でも、式(Y−3)〜式(Y−7)で表される基が好ましく、式(Y−3)〜式(Y−5)で表される基がより好ましい。例えば、好ましいYは、式(Y−3)又は(Y−4)中で、R16、R17、R18及びR19が、炭素数1〜10のアルコキシ基、特に、炭素数1〜4のアルコキシ基となる基である。
【0050】
式(1)で表される構造単位を含む化合物は、さらに式(3)で表される構造単位を有していてもよい。
【0051】
【化9】
(3)
【0052】
式(3)中、Ar1は、アリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、Ar1は、式(1)で表される構造単位とは異なる。
【0053】
アリーレン基としては、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0054】
アリーレン基が、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、8〜60であることが好ましく、8〜48であることがより好ましく、8〜30であることがさらに好ましく、8〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0055】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、10〜60であることが好ましく、10〜48であることがより好ましく、10〜30であることがさらに好ましく、10〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0056】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rが置換基である場合、メチル基、エチル基、ブチル基、2−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル、ナフチル等のアリール基、チエニルなどのヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられる。Rがアルキル基である場合、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0065】
アリーレン基が、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、芳香族炭化水素としてはベンゼンが好ましい。アリーレン基が、2個以上のベンゼンが直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
【化19】
【0069】
式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0070】
ヘテロアリーレン基としては、単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0071】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、該ヘテロアリーレン基の炭素数は、3〜60であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0072】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としは、下記の基があげられる。
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
【化25】
【0079】
【化26】
【0080】
【化27】
【0081】
【化28】
【0082】
【化29】
【0083】
【化30】
【0084】
【化31】
【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0088】
ヘテロアリーレン基が少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0089】
【化34】
【0090】
【化35】
【0091】
【化36】
【0092】
【化37】
【0093】
【化38】
【0094】
【化39】
【0095】
【化40】
【0096】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。X2は−CH=又は窒素原子を表す。X2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0097】
2価の芳香族アミン残基とは、芳香族アミン化合物から水素原子を2個取り除いた基である。2価の芳香族アミン残基の例としては、式160、式161で表される基が挙げられる。
【0098】
【化41】
【0099】
上記式中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0100】
アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニエン基等が挙げられる。
【0101】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物の分子量は特に制限なく、どのような分子量でも使用することができる。式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、高分子化合物であることが好ましい。本発明における高分子化合物とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×103以上の化合物を指す。
【0102】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物の中でも、重量平均分子量で3×103〜1×107の高分子化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量が3×103以上であるとデバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生が抑制され、1×107以下であると溶媒への溶解性や素子作成時の塗布性が高くなる。
【0103】
重量平均分子量としてさらに好ましくは、8×103〜5×106であり、特に好ましくは1×104〜1×106である。デバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生を抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
【0104】
なお、本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンスタンダードを用いて算出した重量平均分子量のことを指す。
【0105】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、1×103〜1×108であることが好ましく、より好ましくは2×103〜1×107である。
ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、108以下である場合には、高分子化合物の溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。
【0106】
なお、本発明における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンスタンダードを用いて算出した数平均分子量のことを指す。
【0107】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が高分子化合物である場合、該化合物の溶媒に対する溶解度の観点からは、該化合物が有する全構造単位の合計を100とした場合、式(1)で表される構造単位の量が20〜100であることが好ましく、30〜60であることがより好ましい。
【0108】
前記高分子化合物は、分子鎖末端に重合に関与する基が残っていると、得られた高分子化合物を有機素子に用いたときの特性が低下する可能性があるので、末端が重合に関与しない安定な基で保護されていることが好ましい。該安定な基としては、分子鎖主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基が例示される。
【0109】
また、前記高分子化合物は、素子に用いる場合、素子作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、0.01wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することが好ましく、0.1wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがより好ましく、0.4wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがさらに好ましい。
【0110】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物の製造方法としては、特に制限されるものではなく、Ni触媒を用いた還元的カップリング反応を用いる方法、Stilleカップリング反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法があげられる。化合物の合成の容易さ、交互共重合化合物が得られやすい観点からは、Suzukiカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0111】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式
Q1−E1−Q2 (100)
[式中、E1は、式(1)で表される構造単位を表す。Q1及びQ2は、同一又は相異なり、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を表す。]
で表される1種類以上の化合物と、式
T1−E2−T2 (200)
[式中、E2は、式(3)で表される構造単位を表す。T1及びT2は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。]
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0112】
反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0113】
式(200)における、T1及びT2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0114】
式(200)における、T1及びT2で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0115】
Suzukiカップリング反応に用いられるパラジウム触媒としては、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては、パラジウム〔テトラキス(トリフェニルホスフィン)〕、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムアセテート類が好ましい。
【0116】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モルであり、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0117】
Suzukiカップリング反応に用いられる塩基は、無機塩基、有機塩基、無機塩等である。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
【0118】
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0119】
前記パラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、配位子としてリン化合物を添加してもよい。リン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。リン化合物を添加する場合、その添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0120】
Suzukiカップリング反応において、反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられる。高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基を水溶液として反応系中に加え、水相と有機相の2相の溶媒中でモノマーを反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、通常、水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる。
【0121】
なお、塩基を水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を反応系中に加えてもよい。
【0122】
Suzukiカップリング反応の温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度である。高分子化合物の高分子量化の観点からは、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
【0123】
Suzukiカップリング反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度であり、1時間〜30時間程度が好ましい。
【0124】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下であってパラジウム触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、反応容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、反応容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、脱気したトルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、脱気した炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0125】
<有機半導体前駆体膜を形成する工程>
本発明の有機トランジスタの製造方法は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程を含む。該有機半導体前駆体膜は、例えば、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物と溶媒とを含む溶液を有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布し、その後、溶媒を蒸発させて形成することができる。
【0126】
該溶媒としては、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を溶解できるものであればよく、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の例としては、キシレン、メシチレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼンが挙げられる。ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒の例としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の例としては、テトラリンが挙げられる。ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンが挙げられる。エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが挙げられる。
【0127】
該溶液を用いて有機半導体前駆体膜を形成する場合、溶液中の溶媒の沸点が低いと、均一な薄膜を形成するための乾燥工程の制御が困難な場合がある。そのため、溶媒の沸点は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
【0128】
該溶液を塗布する層としては、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などが挙げられる。有機トランジスタが、ゲート絶縁層等の絶縁層を有する場合、溶液を塗布する層は絶縁層であってもよい。
【0129】
該溶液を基体上に塗布する塗布方法としては、キャスト方法、スピンコート方法、バーコート法、インクジェット方法、凸版を用いる印刷方法、孔版を用いる印刷方法、第1の版に塗布した後に第2の版に転写し、第2の版を用いて印刷する方法などがあげられる。
【0130】
<有機半導体層の製造>
本発明の有機トランジスタの製造方法は、前記有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程を含む。
【0131】
脱離方法としては、式(1)で表される構造単位を含む化合物にエネルギーを印加する方法が挙げられる。該エネルギーの例としては、熱エネルギー、光エネルギーが挙げられる。
【0132】
熱エネルギーを用いる場合は、前記化合物からYで表される2価の基が脱離する温度以上、かつ、該化合物が分解する温度よりも低い温度であれば、任意の温度を設定することができる。通常は150℃から400℃の範囲が好ましく、より好ましくは200℃から350℃である。熱処理を行う時間としては、工業的な範囲で選定できるが、通常は1分から50時間であり、好ましくは10分から24時間である。熱処理の雰囲気としては、不活性雰囲気が好ましく、窒素ガス中、アルゴンガス中、真空中が例示される。不活性雰囲気中に酸素を含む場合、酸素濃度が100体積ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。また、不活性雰囲気が真空である場合、酸素分圧が200Pa以下であることが好ましく、より好ましくは50Paである。
【0133】
光によりYで表される2価の基を脱離させる方法としては、400nm以下の波長の紫外線を照射する方法が例示される。光強度はYで表される2価の基が脱離する強さであれば特に制限はない。光を照射する場合の雰囲気も、不活性雰囲気が好ましく、その範囲は上記に例示した範囲を好適に用いることができる。
【0134】
式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、式(1)で表される構造単位を含んでいてもよい。該化合物は、例えば、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が有する式(1)で表される構造単位のうちの少なくとも一部のYで表される2価の基を脱離させることにより製造することができる。
【0135】
本発明の有機トランジスタの製造方法の他の態様は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法である。
【0136】
第1の有機半導体前駆体膜を形成する方法及び第2の有機半導体前駆体膜を形成する方法としては、前述の有機半導体前駆体膜を形成する方法が挙げられる。また、第1の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法及び第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法は、前述の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法が挙げられる。
【0137】
<有機トランジスタ>
次に、本発明の製造方法で製造した有機トランジスタの好適な実施形態について説明する。
【0138】
有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり式(2)で表される構造単位を有する化合物を含有する有機半導体層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えるものであり、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0139】
電界効果型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0140】
静電誘導型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0141】
図1は、第1実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0142】
図2は、第2実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0143】
図3は、第3実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0144】
図4は、第4実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0145】
図5は、第5実施形態に係る有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0146】
図6は、第6実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0147】
図7は、第7実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔をもって有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0148】
上述した第1〜第7実施形態に係る有機トランジスタにおいては、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aは、上述した高分子化合物を含む薄膜から構成されており、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0149】
上述した有機トランジスタの有機半導体層以外の部材は、公知の方法で製造することができる。電界効果型有機トランジスタの場合は、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタの場合は、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0150】
基板1は、有機トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0151】
有機半導体層2は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含むものであり、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物のみから構成されていてもよく、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物以外の材料を含んで構成されていてもよい。また、有機半導体層2は、1種類の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含んでよく、2種類以上の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含んでいてもよい。有機半導体層2は、電子輸送性又はホール輸送性を高めるために、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物以外に、電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物や高分子化合物をさらに含有していてもよい。
【0152】
ホール輸送性材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、並びに、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が例示される。
【0153】
電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、並びに、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0154】
また、有機半導体層2は、機械的特性を高めるために、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物とは異なる高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0155】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、並びに、ポリシロキサンが例示される。
【0156】
有機半導体層2の膜厚は、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは3nm〜500nmであり、特に好ましくは5nm〜200nmである。
【0157】
有機半導体層2中の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、配向していてもよい。配向した式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を有する有機半導体層2は、有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を配向させる工程を行い、その後、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させることで製造することができる。該有機半導体層2は、分子が規則性を持つため、電子移動度又はホール移動度が向上するため好ましい。
【0158】
式(1)で表される構造単位を含む化合物が高分子化合物である場合、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が、配向手法として簡便かつ有用で利用しやすいため好ましく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0159】
絶縁層3を構成する材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。絶縁層3を構成する材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジストが挙げられる。低電圧化の観点からは、絶縁層3には誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0160】
絶縁層3の上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理し、表面改質した後に有機半導体層2を形成してもよい。
【0161】
電界効果型有機トランジスタの場合、電子やホール等のキャリアは、一般に絶縁層3と有機半導体層2の界面付近を通過する。したがって、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、この界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が知られている(例えば、表面科学,Vol.28.No.5,pp242−248,2007年)。
【0162】
シランカップリング剤としては、オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前には、絶縁層表面をオゾン紫外線(UV)、酸素(O2)プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0163】
このような表面処理によって、絶縁層3として用いられるシリコン酸化膜などの表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、有機半導体層2を構成している式(2)で表される構造単位を含む化合物の絶縁層3上での配向性が向上し、これによって高いキャリア輸送性(移動度)が得られる。
【0164】
ゲート電極4の材料としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等が挙げられる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0165】
なお、ゲート電極4として、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性質とともに、基板としての性質も併せて有する。このような基板としての性質をも有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。例えば、上述した第3、4、7実施形態の有機トランジスタにおいて、ゲート電極4が基板1を兼ねる構成とすることができる。
【0166】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成される。低抵抗の材料としては、例えば、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム及びモリブデンが挙げられる。これらの材料の中でも、電荷注入の観点からは、金、白金が好ましく、プロセス容易性の観点から、金がさらに好ましい。これらの材料は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0167】
以上、好適な実施形態の有機トランジスタとして幾つかの例を説明したが、有機トランジスタは上記の実施形態に限定されない。例えば、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間には、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物とは異なる化合物からなる層が介在していてもよい。これにより、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間の接触抵抗が低減され、有機トランジスタのキャリア移動度をさらに高めることができる場合がある。
【0168】
このような層としては、上述したような電子又はホール輸送性を有する低分子化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属やこれらの金属と有機化合物との錯体等;ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0169】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、保護膜によって、その形成工程における有機トランジスタへの影響も低減することができる。
【0170】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0171】
本発明の有機トランジスタの好ましい一態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層中に式(3)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタである。
【0172】
【化42】
(3)
【0173】
有機トランジスタは、ソース電極とドレイン電極との間に有機半導体層を有していてもよい。有機トランジスタがゲート絶縁層を有する場合、ソース電極とドレイン電極との間に有機半導体層を有し、ゲート電極と該有機半導体層との間にゲート絶縁層を有する有機トランジスタでもよく、ゲート電極上にゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に有機半導体層を有し、該有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を有する有機トランジスタであってもよい。
【0174】
本発明の有機トランジスタの好ましい他の態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、該第1の有機半導体層中に式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、該第2の有機半導体層中に式(2)で表される構造単位を含む少なくとも1個化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタである。
【0175】
本発明の有機トランジスタは、エレクトロニクスデバイスに用いることができる。ここで、エレクトロニクスデバイスとは、有機EL素子が挙げられる。
【0176】
<面状光源及び表示装置>
次に、本発明の有機トランジスタを用いた面状光源及び表示装置について説明する。
【0177】
面状光源及び表示装置は、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの少なくとも2つの有機トランジスタを備えるものである。面状光源及び表示装置は、このうちの少なくとも1つの有機トランジスタとして、上述した本発明の有機トランジスタを用いたものである。
【0178】
図8は、好適な実施形態に係る面状光源の模式断面図である。図8に示す面状光源200においては、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2全体を覆うように有機半導体層2上に形成された保護膜11とにより、有機トランジスタTが構成されている。
【0179】
また、面状光源200においては、有機トランジスタT上に、層間絶縁膜12を介して、下部電極(陽極)13、発光素子14及び上部電極(陰極)15が順次積層されており、層間絶縁膜12に設けられたビアホールを通じて下部電極13とドレイン電極6とが電気的に接続されている。また、下部電極13及び発光素子14の周囲にはバンク部16が設けられている。さらに、上部電極15上方には基板18が配置され、上部電極15と基板18との間は封止部材17により封止されている。
【0180】
図8に示した面状光源200において、有機トランジスタTは、駆動トランジスタとして機能する。また、図8に示した面状光源200においては、スイッチングトランジスタは省略されている。
【0181】
本実施形態に係る面状光源200においては、有機トランジスタTに上述した本発明の有機トランジスタが用いられる。それ以外の構成部材については、公知の面状光源における構成部材を用いることができる。なお、上部電極15、封止部材17及び基板18としては、透明なものが用いられる。
【0182】
また、図8に示した面状光源200は、発光素子14に白色発光材料を用いることで面状光源として機能するが、発光素子14に赤色発光材料、青色発光材料及び緑色発光材料を用い、それぞれの発光素子の駆動を制御することで、カラー表示装置とすることができる。
【0183】
面状光源及び表示装置において、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、発光素子を構成する発光層の非発光とすべき部分を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。さらに、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0184】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリエチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。GPC装置は、島津製作所製、商品名:LC−10Avp(カラム:TsKgel SuperHM−H(東ソー製)2本と、TsKgel SuperH2000(東ソー製)1本との直列接続、移動相:テトラハイドロフラン、流速:0.6ml/分、サンプル濃度:約0.5wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)または、Waters製、商品名:Alliance GPC/V2000(カラム:PLgel MIXED−B(Varian製)3本の直列接続、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/分、サンプル濃度:約0.77wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)を用いた。
【0186】
合成例1
(化合物(C−2)の合成)
【0187】
【化43】
【0188】
化合物(C−1)(東京化成工業社製)を20.16g(60.00mmol)、無水マレイン酸を20.59g(210.0mmol)、及び、トルエンを250mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。この時、化合物(C−1)はトルエンに対して不溶であり、反応系中は不均一であった。オイルバス温度を120℃にして、反応液を3.5時間還流させることにより、Diels−Alder反応が進行し、反応系内は均一溶液となった。その後、反応液にメタノール20mLを30分おきに5回(計100mL)加え、3時間加熱環流させることで、無水物が開環したモノエステル体を得た。その後、反応液に濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた。エバポレータを用いて反応液中の溶媒を除去した後、ヘキサン200mLを加え、室温で1時間撹拌することで、無水マレイン酸を除去した。反応液にメタノール200mLを加え、濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた後、反応液を濾過して不溶物を取り除いた。クロロホルムを展開溶媒に用いたカラムで反応液の分離を行い、分離物をヘキサンで再沈殿を行い、無色粉末のアントラセンの架橋体(化合物(C−2))を25.17g得た。
【0189】
合成例2
(高分子化合物1の合成)
【0190】
【化44】
(C−2) (A)
【0191】
グローブボックス内の100ml反応管に、化合物(C−2)を311mg、ビチオフェンのジホウ酸エステル体(化合物(A))を292mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を秤量して加え、その後、窒素雰囲気のグローブボックス内で、脱気したトルエンを12g、脱気した炭酸カリウム水溶液を12g、及び、触媒であるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を1.5mg反応管に加えた。前記炭酸カリウム水溶液は、炭酸カリウム282mgを脱気した純水12gに溶解させて製造した。
【0192】
還流条件で17時間反応させた後、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のブロモベンゼンを加え1.5時間還流を続け、さらに、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のフェニルホウ酸を加え、1.5時間還流を続けた後、反応を停止した。
【0193】
反応液中の水層を除去後、有機層にクロロホルムを添加し、加熱溶解させた後、エバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い、粗精製物を得た。得られた粗精製物にクロロホルムを加えて加熱溶解させた後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製処理を3回行った。カラム処理後の溶液をエバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い黄色粉状の高分子化合物1を得た。高分子化合物1の得量は100mgであった。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は17,100であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は31,300であった。
【0194】
実施例1
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物1を用い、以下の方法で図9に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。
【0195】
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、フォトリソグラフィ工程によりシリコン酸化膜32上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(シリコン酸化膜側から、クロム、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、スピンコート法により基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物1をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、メンブランフィルターでろ過した。
ろ過後の溶液を、上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。
【0196】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から電界効果移動度を算出したところ、5×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0197】
合成例3
(高分子化合物2の合成)
【0198】
【化45】
高分子化合物2
【0199】
グローブボックス内、100ml反応管に、化合物(C−2)を339mg、及び、2,2’−ビピリジルを298mg秤量して入れ、脱気した脱水テトラハイドロフランを16g添加して溶解させた。その後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルを528mg添加した後、60℃で3時間反応をさせた。
【0200】
反応液を、水/メタノール/アンモニア水の混合溶液に加え、析出物を回収し乾燥した。
得られた回収物のクロロホルム溶液を、セライト(商品名)のカラムで処理し、次にアルミナとシリカとを積層したカラムで処理した。処理液を濃縮し、高分子化合物2を得た。
高分子化合物2の得量は40mgであった。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は27,700であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は274,000であった。
【0201】
実施例2
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物1にかえて高分子化合物2を用いた以外は、実施例1と同様に有機トランジスタを作製した。
【0202】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。
測定した特性から電界効果移動度を算出したところ、2×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0203】
実施例3
(有機トランジスタの作製)
以下の方法で図10に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物1をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、この溶液を上記基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、第1の有機半導体層35を形成した。次に、第2の層として高分子化合物2をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、この溶液を第1の有機半導体層の上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、第2の有機半導体層35aを形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により第2の有機半導体層35aの上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0204】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。この特性から電界効果移動度を算出したところ、2.4×10−2cm2/Vsであった。
【0205】
合成例4
(化合物(C−3)の合成)
【0206】
【化46】
【0207】
四つ口フラスコに、化合物(C−2)を4.802g、ビスピナコラートジボロンを10.16g及びジオキサンを150mL加え、室温(25℃)でアルゴンガスを用いて四つ口フラスコ中をバブリングした。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を408.3mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを277.2mg及び酢酸カリウムを3.926g加えた後、反応液を7時間加熱環流させた。反応後。液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。フィルターを用いて反応液に難溶である塩基を分離した。反応液をエバポレータで30分程乾燥させ、溶媒を取り除いた。参考例1と同様の方法で、反応液をカラムで分離した後、分離物を少量のアセトンに溶解させ、メタノールを加えて撹拌し、少量の水を加えていくことで、化合物(C−2)のビスピナコールエステル体(化合物(C−3))を3.50g得た。化合物(C−3)の収量は60.9%であり、液体クロマトグラフィーから求めたHPLC面百値による純度は、97.5%であっ
た。
【0208】
合成例5
(高分子化合物3の合成)
【0209】
【化47】
【0210】
50mlの3つ首フラスコに、化合物(C−3)を230mg、トリフェニルアミン誘導体(化合物(B))を184mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を81mg秤量して加えた後、アルゴン雰囲気下で、脱気したトルエン12mlを加えた後、90℃まで昇温した。つづいて、反応液にパラジウムジアセテート(Pd(OAc)2)を0.92mgとトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン(P(o−MeOPh))を34.95mg加え、100℃まで昇温した後、脱気した16.7%の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を2.54g滴下した。その後、100℃で5時間27分半反応を行なった後、トルエン4mlに化合物(C−3)を4.59mg、Pd(OAc)2を0.95mg、P(o−MeOPh)3を4.95mg溶解させ、得られたトルエン溶液を反応液に加えた。その後、100℃で2時間10分反応を行なった。室温まで冷却して放置した後、反応液の油層を水で2回洗浄し、3%の酢酸水溶液で1回洗浄し、水で3回洗浄した後、硫酸ナトリウム(Na2SO4)を加えて乾燥した。その後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製を行い、カラムで処理した溶液を濃縮し、濃縮液にメタノールに加えて、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物3を得た。高分子化合物3の得量は133mgであった。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は8,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は14,000であった。
【0211】
実施例4
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物3を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物3をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0212】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0213】
合成例6
(高分子化合物4の合成)
【0214】
【化48】
【0215】
200mlの四つ口フラスコに、化合物(D)を392.2mg、化合物(C−2)を480.2mg、テトラハイドロフランを20ml加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。次いで、反応液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを18.31mg、トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム テトラフルオロボレートを23.21mg加えた。反応液を室温で撹拌しながら、27.6wt%の炭酸カリウム水溶液2gを30分かけて滴下し、50℃まで昇温した。10分後、80℃まで昇温し3時間還流を行った。
【0216】
得られた反応液を、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液で洗浄を行い、高分子化合物を濾過した。得られた高分子化合物の内、加熱クロロホルムに可溶分を、アルミナとシリカを積層したカラムに通液した。カラムで処理した液をメタノールに加え、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物4を得た。高分子化合物4の得量は100mgであった。高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量は17,500であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は42,400であった。
【0217】
実施例5
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物4を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物4をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を50℃に加熱し、50℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0218】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0219】
合成例7
(高分子化合物5の合成)
【0220】
【化49】
【0221】
化合物(B)にかえて化合物(E)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物5を合成した。高分子化合物5の得量は35mgであった。
【0222】
実施例6
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物5を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、高分子化合物5をオクタジクロロベンゼンに溶解して0.2質量%の溶液を作製した。この溶液を140℃に加熱し、140℃に加熱した上記基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0223】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0224】
合成例8
(高分子化合物6の合成)
【0225】
【化50】
【0226】
化合物(B)にかえて化合物(F)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物6を合成した。高分子化合物6の得量は、190mgであった。高分子化合物6のポリスチレン換算の数平均分子量は60,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は94,000であった。
【0227】
実施例7
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物6を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物6をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0228】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0229】
合成例9
(高分子化合物7の合成)
【0230】
【化51】
【0231】
化合物(B)にかえて化合物(G)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物7を合成した。高分子化合物7の得量は100mgであった。高分子化合物7のポリスチレン換算の数平均分子量は20,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は28,000であった。
【0232】
実施例8
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物7を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物7をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を100℃に加熱し、100℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0233】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0234】
合成例10
(高分子化合物8の合成)
【0235】
【化52】
【0236】
化合物(B)にかえて化合物(H)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物8を合成した。高分子化合物8の得量は、74mgであった。高分子化合物8のポリスチレン換算の数平均分子量は59,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は89,000であった。
【0237】
実施例9
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物8を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物8をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。
その後、窒素雰囲気下で、270℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0238】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0239】
合成例11
(高分子化合物9の合成)
【0240】
【化53】
【0241】
化合物(C−2)にかえて化合物(C−4)を用いた以外は、合成例2と同様の方法で高分子化合物9を合成した。高分子化合物9の得量は100mgであった。
【0242】
実施例10
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物9を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物9をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で30分間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0243】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0244】
合成例12
(高分子化合物10の合成)
【0245】
【化54】
【0246】
化合物(B)にかえて化合物(J)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物10を合成した。高分子化合物10の得量は、142mgであった。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は52,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は82,000であった。
【0247】
実施例11
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物10を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物10をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、250℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0248】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0249】
合成例13
(高分子化合物11の合成)
【0250】
【化55】
【0251】
化合物(B)にかえて化合物(K)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物11を合成した。高分子化合物11の得量は、133mgであった。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は54,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は90,000であった。
【0252】
実施例12
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物11を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物11をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、330℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0253】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、4.8×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0254】
合成例14
(高分子化合物12の合成)
【0255】
【化56】
【0256】
化合物(B)にかえて化合物(L)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物12を合成した。高分子化合物12の得量は、145mgであった。高分子化合物12のポリスチレン換算の数平均分子量は25,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は41,000であった。
【0257】
実施例13
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物12を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物12をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0258】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、2.9×10−4cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0259】
[表1]
【符号の説明】
【0260】
1…基板、
2、2a…有機半導体層、
3…絶縁層、
4…ゲート電極、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
100、110、120、130、140、150、160…有機トランジスタ、
12…層間絶縁膜、
13…下部電極(陽極)、
14…発光素子、
15…上部電極(陰極)、
16…バンク部、
17…封止部材、
18…基板、
T…有機トランジスタ、
200…面状光源、
31…n−型シリコン基板、
32…シリコン酸化膜、
33…ソース電極、
34…ドレイン電極、
35、35a…有機半導体層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ等の有機半導体素子の製造過程では、シリコン系トランジスタ等の無機半導体素子の製造に必要な高温プロセス及び真空プロセスを省くことができ、製造に要するエネルギーを低減できる。また、有機半導体素子は、柔軟性を有するフィルム状の素子とすることが可能であり、次世代の素子として注目されている。
【0003】
π共役構造を有する化合物は導電性及び半導体性を示し、有機トランジスタに用いられる有機半導体化合物として注目されている。π共役構造を有する化合物として、具体的には、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)などが知られている。
【0004】
非特許文献1には、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)のクロロホルム溶液をシリコンウエハー上にスピンコートして有機半導体層を形成した有機トランジスタが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記有機トランジスタは電界効果移動度が10−5〜10−4cm2/Vsであり、電界効果移動度がより高い有機トランジスタを製造する方法が求められている。
【0006】
非特許文献2には、π共役構造を有する化合物として、アントラセンのホモポリマー、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーが記載されている。アントラセン部分の多くは発光性であり、π共役構造の一部としてアントラセン部分を有するポリマーは、エレクトロルミネッセンス性を示す可能性が高い材料である。
【0007】
π共役構造を有する化合物の多くは非溶解性であり、合成方法が複雑になり易い。そのため、非特許文献2では、加熱してアントラセンのホモポリマー、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーに変化させることができ、溶剤に対して溶解性を示す前駆体が提案されている。上記前駆体は、アントラセンのホモポリマー、又はアントラセンとベンゼンとのコポリマーのアントラセン部分に、無水マレイン酸がディールスアルダー付加した構造を持っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アプライド フィジックス レターズ(Appl. Phys. Lett.)、第53巻、第18号、第195〜197頁(1988年)
【非特許文献2】ケミカル コミュニケーション(Chem. Commun.)、第73〜74頁(1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、電界効果移動度が高い有機トランジスタを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法を提供する。
なお、前記式(1)において、左側のベンゼン環には、その右側の2つのC原子(これらの内の一つにはR3が結合し、他方にはR4が結合している)と結合している2つのベンゼン環炭素原子以外のベンゼン環炭素原子の内のいずれかにおいて、水素原子の代わりにn個のR1基、及び一つの隣接構造単位(図示せず)と結合している。式(1)に類似した他の式も同様に解釈される。
【0015】
ある一形態においては、Yで表される2価の基を少なくとも一部を脱離させるために、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記にエネルギーが印加される。
【0016】
ある一形態においては、前記有機半導体前駆体膜が、式(1)で表される構造単位を含む化合物と溶媒とを含有する溶液を、有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布することにより形成される。
【0017】
また、本発明は、式(1)
【0018】
【化3】
【0019】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を広げることにより、該化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、
該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法を提供する。
【0022】
ある一形態においては、Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【0023】
【化5】
【0024】
[式(Y−1)〜(Y−8)中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。X1は、水素原子又はハロゲン原子を表す。X1が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。]
からなる群から選択される少なくとも一種の基である。すなわち、前記化合物は、式(1)で表される構造単位を1個だけ有するとき、Yで表される2価の基は、上記式(Y−1)〜(Y−8)のいずれか1つで表され、前記化合物が式(1)で表される構造単位を2個以上有するとき、それらの構造単位におけるYは、互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0025】
また、本発明は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層は、式(3)
【0026】
【化6】
(3)
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタを提供する。
【0027】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、さらにゲート絶縁層を有する。
【0028】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記有機半導体層を有し、前記ゲート電極と該有機半導体層との間に前記ゲート絶縁層を有する。
【0029】
ある一形態においては、上記有機トランジスタは、前記ゲート電極上に前記ゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に前記有機半導体層を有し、該有機半導体層上に前記ソース電極及び前記ドレイン電極を有する。
【0030】
また、本発明は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、該第1の有機半導体層は、式(2)
【0031】
【化7】
【0032】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、該第2の有機半導体層は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタを提供する。
【0033】
また、本発明は、上記いずれかの有機トランジスタを含むエレクトロニクスデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、電界効果移動度が高い有機トランジスタの製造方法を提供するため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機トランジスタを含む面状光源の一例を示す模式断面図である。
【図9】実施例1及び2で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図10】実施例3で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図11】実施例4〜11で製造した有機トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明の有機トランジスタの製造方法は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法である。
本発明において、「有機半導体」とは、半導体としての機能を有する有機化合物を意味する。「有機半導体層」とは、有機半導体を含有する層を意味し、「有機半導体前駆体膜」とは、有機半導体の前駆体を含有する膜を意味する。ここで、「有機半導体の前駆体」は、それ自身が有機半導体であってもよく、有機絶縁体であってもよい。
【0038】
ここで、化合物を広げる(spread)とは、化合物を薄膜状に成形する操作を意味し、塗布又は蒸着等の通常使用される薄膜成形方法を全部包含することが意図されている。
【0039】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜30の基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0040】
炭素数1〜30の基の例としては、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、チエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、シアノ基が挙げられる。炭素数1〜30の基中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。炭素数1〜30の基中の水素原子がハロゲン原子で置換されている場合、ハロゲン原子の中でもフッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0041】
n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。n及びmは、0であることが好ましい。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0042】
式(1)中、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。R3又はR4で表される置換基の例としては、R1で表される置換基の例と同じ基が挙げられる。化合物の合成の容易さの観点からは、R3及びR4は、水素原子が好ましい。
【0043】
式(1)中、Yは、2価の基を表す。2価の基の中でも、熱や光などのエネルギーを与えることで脱離しうる基が好ましい。Yで表される2価の基としては、以下の基が例示される。
【0044】
【化8】
【0045】
式(Y−1)〜式(Y−8)中、R10〜R20は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。中でも、水素原子又は炭素数1〜30の基が好ましい。
【0046】
R10〜R19が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0047】
R20が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、エステル構造を含む基が挙げられる。
【0048】
X1は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の中でも、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0049】
式(Y−1)〜式(Y−8)で表される基の中でも、式(Y−3)〜式(Y−7)で表される基が好ましく、式(Y−3)〜式(Y−5)で表される基がより好ましい。例えば、好ましいYは、式(Y−3)又は(Y−4)中で、R16、R17、R18及びR19が、炭素数1〜10のアルコキシ基、特に、炭素数1〜4のアルコキシ基となる基である。
【0050】
式(1)で表される構造単位を含む化合物は、さらに式(3)で表される構造単位を有していてもよい。
【0051】
【化9】
(3)
【0052】
式(3)中、Ar1は、アリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、Ar1は、式(1)で表される構造単位とは異なる。
【0053】
アリーレン基としては、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0054】
アリーレン基が、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、8〜60であることが好ましく、8〜48であることがより好ましく、8〜30であることがさらに好ましく、8〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0055】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、10〜60であることが好ましく、10〜48であることがより好ましく、10〜30であることがさらに好ましく、10〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0056】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rが置換基である場合、メチル基、エチル基、ブチル基、2−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル、ナフチル等のアリール基、チエニルなどのヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられる。Rがアルキル基である場合、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0065】
アリーレン基が、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、芳香族炭化水素としてはベンゼンが好ましい。アリーレン基が、2個以上のベンゼンが直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
【化19】
【0069】
式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0070】
ヘテロアリーレン基としては、単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0071】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、該ヘテロアリーレン基の炭素数は、3〜60であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0072】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としは、下記の基があげられる。
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
【化25】
【0079】
【化26】
【0080】
【化27】
【0081】
【化28】
【0082】
【化29】
【0083】
【化30】
【0084】
【化31】
【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0088】
ヘテロアリーレン基が少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0089】
【化34】
【0090】
【化35】
【0091】
【化36】
【0092】
【化37】
【0093】
【化38】
【0094】
【化39】
【0095】
【化40】
【0096】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。X2は−CH=又は窒素原子を表す。X2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0097】
2価の芳香族アミン残基とは、芳香族アミン化合物から水素原子を2個取り除いた基である。2価の芳香族アミン残基の例としては、式160、式161で表される基が挙げられる。
【0098】
【化41】
【0099】
上記式中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0100】
アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニエン基等が挙げられる。
【0101】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物の分子量は特に制限なく、どのような分子量でも使用することができる。式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、高分子化合物であることが好ましい。本発明における高分子化合物とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×103以上の化合物を指す。
【0102】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物の中でも、重量平均分子量で3×103〜1×107の高分子化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量が3×103以上であるとデバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生が抑制され、1×107以下であると溶媒への溶解性や素子作成時の塗布性が高くなる。
【0103】
重量平均分子量としてさらに好ましくは、8×103〜5×106であり、特に好ましくは1×104〜1×106である。デバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生を抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
【0104】
なお、本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンスタンダードを用いて算出した重量平均分子量のことを指す。
【0105】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、1×103〜1×108であることが好ましく、より好ましくは2×103〜1×107である。
ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、108以下である場合には、高分子化合物の溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。
【0106】
なお、本発明における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンスタンダードを用いて算出した数平均分子量のことを指す。
【0107】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が高分子化合物である場合、該化合物の溶媒に対する溶解度の観点からは、該化合物が有する全構造単位の合計を100とした場合、式(1)で表される構造単位の量が20〜100であることが好ましく、30〜60であることがより好ましい。
【0108】
前記高分子化合物は、分子鎖末端に重合に関与する基が残っていると、得られた高分子化合物を有機素子に用いたときの特性が低下する可能性があるので、末端が重合に関与しない安定な基で保護されていることが好ましい。該安定な基としては、分子鎖主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基が例示される。
【0109】
また、前記高分子化合物は、素子に用いる場合、素子作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、0.01wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することが好ましく、0.1wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがより好ましく、0.4wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがさらに好ましい。
【0110】
式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物の製造方法としては、特に制限されるものではなく、Ni触媒を用いた還元的カップリング反応を用いる方法、Stilleカップリング反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法があげられる。化合物の合成の容易さ、交互共重合化合物が得られやすい観点からは、Suzukiカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0111】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式
Q1−E1−Q2 (100)
[式中、E1は、式(1)で表される構造単位を表す。Q1及びQ2は、同一又は相異なり、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を表す。]
で表される1種類以上の化合物と、式
T1−E2−T2 (200)
[式中、E2は、式(3)で表される構造単位を表す。T1及びT2は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。]
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0112】
反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0113】
式(200)における、T1及びT2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0114】
式(200)における、T1及びT2で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0115】
Suzukiカップリング反応に用いられるパラジウム触媒としては、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては、パラジウム〔テトラキス(トリフェニルホスフィン)〕、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムアセテート類が好ましい。
【0116】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モルであり、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0117】
Suzukiカップリング反応に用いられる塩基は、無機塩基、有機塩基、無機塩等である。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
【0118】
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0119】
前記パラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、配位子としてリン化合物を添加してもよい。リン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。リン化合物を添加する場合、その添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0120】
Suzukiカップリング反応において、反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられる。高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基を水溶液として反応系中に加え、水相と有機相の2相の溶媒中でモノマーを反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、通常、水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる。
【0121】
なお、塩基を水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を反応系中に加えてもよい。
【0122】
Suzukiカップリング反応の温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度である。高分子化合物の高分子量化の観点からは、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
【0123】
Suzukiカップリング反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度であり、1時間〜30時間程度が好ましい。
【0124】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下であってパラジウム触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、反応容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、反応容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、脱気したトルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、脱気した炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0125】
<有機半導体前駆体膜を形成する工程>
本発明の有機トランジスタの製造方法は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程を含む。該有機半導体前駆体膜は、例えば、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物と溶媒とを含む溶液を有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布し、その後、溶媒を蒸発させて形成することができる。
【0126】
該溶媒としては、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を溶解できるものであればよく、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の例としては、キシレン、メシチレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼンが挙げられる。ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒の例としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の例としては、テトラリンが挙げられる。ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンが挙げられる。エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが挙げられる。
【0127】
該溶液を用いて有機半導体前駆体膜を形成する場合、溶液中の溶媒の沸点が低いと、均一な薄膜を形成するための乾燥工程の制御が困難な場合がある。そのため、溶媒の沸点は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
【0128】
該溶液を塗布する層としては、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などが挙げられる。有機トランジスタが、ゲート絶縁層等の絶縁層を有する場合、溶液を塗布する層は絶縁層であってもよい。
【0129】
該溶液を基体上に塗布する塗布方法としては、キャスト方法、スピンコート方法、バーコート法、インクジェット方法、凸版を用いる印刷方法、孔版を用いる印刷方法、第1の版に塗布した後に第2の版に転写し、第2の版を用いて印刷する方法などがあげられる。
【0130】
<有機半導体層の製造>
本発明の有機トランジスタの製造方法は、前記有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程を含む。
【0131】
脱離方法としては、式(1)で表される構造単位を含む化合物にエネルギーを印加する方法が挙げられる。該エネルギーの例としては、熱エネルギー、光エネルギーが挙げられる。
【0132】
熱エネルギーを用いる場合は、前記化合物からYで表される2価の基が脱離する温度以上、かつ、該化合物が分解する温度よりも低い温度であれば、任意の温度を設定することができる。通常は150℃から400℃の範囲が好ましく、より好ましくは200℃から350℃である。熱処理を行う時間としては、工業的な範囲で選定できるが、通常は1分から50時間であり、好ましくは10分から24時間である。熱処理の雰囲気としては、不活性雰囲気が好ましく、窒素ガス中、アルゴンガス中、真空中が例示される。不活性雰囲気中に酸素を含む場合、酸素濃度が100体積ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。また、不活性雰囲気が真空である場合、酸素分圧が200Pa以下であることが好ましく、より好ましくは50Paである。
【0133】
光によりYで表される2価の基を脱離させる方法としては、400nm以下の波長の紫外線を照射する方法が例示される。光強度はYで表される2価の基が脱離する強さであれば特に制限はない。光を照射する場合の雰囲気も、不活性雰囲気が好ましく、その範囲は上記に例示した範囲を好適に用いることができる。
【0134】
式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、式(1)で表される構造単位を含んでいてもよい。該化合物は、例えば、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が有する式(1)で表される構造単位のうちの少なくとも一部のYで表される2価の基を脱離させることにより製造することができる。
【0135】
本発明の有機トランジスタの製造方法の他の態様は、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法である。
【0136】
第1の有機半導体前駆体膜を形成する方法及び第2の有機半導体前駆体膜を形成する方法としては、前述の有機半導体前駆体膜を形成する方法が挙げられる。また、第1の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法及び第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法は、前述の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させる方法が挙げられる。
【0137】
<有機トランジスタ>
次に、本発明の製造方法で製造した有機トランジスタの好適な実施形態について説明する。
【0138】
有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり式(2)で表される構造単位を有する化合物を含有する有機半導体層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えるものであり、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0139】
電界効果型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0140】
静電誘導型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0141】
図1は、第1実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0142】
図2は、第2実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0143】
図3は、第3実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0144】
図4は、第4実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0145】
図5は、第5実施形態に係る有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0146】
図6は、第6実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0147】
図7は、第7実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔をもって有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0148】
上述した第1〜第7実施形態に係る有機トランジスタにおいては、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aは、上述した高分子化合物を含む薄膜から構成されており、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0149】
上述した有機トランジスタの有機半導体層以外の部材は、公知の方法で製造することができる。電界効果型有機トランジスタの場合は、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタの場合は、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0150】
基板1は、有機トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0151】
有機半導体層2は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含むものであり、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物のみから構成されていてもよく、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物以外の材料を含んで構成されていてもよい。また、有機半導体層2は、1種類の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含んでよく、2種類以上の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含んでいてもよい。有機半導体層2は、電子輸送性又はホール輸送性を高めるために、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物以外に、電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物や高分子化合物をさらに含有していてもよい。
【0152】
ホール輸送性材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、並びに、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が例示される。
【0153】
電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、並びに、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0154】
また、有機半導体層2は、機械的特性を高めるために、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物とは異なる高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0155】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、並びに、ポリシロキサンが例示される。
【0156】
有機半導体層2の膜厚は、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは3nm〜500nmであり、特に好ましくは5nm〜200nmである。
【0157】
有機半導体層2中の式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物は、配向していてもよい。配向した式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を有する有機半導体層2は、有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を配向させる工程を行い、その後、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させることで製造することができる。該有機半導体層2は、分子が規則性を持つため、電子移動度又はホール移動度が向上するため好ましい。
【0158】
式(1)で表される構造単位を含む化合物が高分子化合物である場合、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が、配向手法として簡便かつ有用で利用しやすいため好ましく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0159】
絶縁層3を構成する材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。絶縁層3を構成する材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジストが挙げられる。低電圧化の観点からは、絶縁層3には誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0160】
絶縁層3の上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理し、表面改質した後に有機半導体層2を形成してもよい。
【0161】
電界効果型有機トランジスタの場合、電子やホール等のキャリアは、一般に絶縁層3と有機半導体層2の界面付近を通過する。したがって、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、この界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が知られている(例えば、表面科学,Vol.28.No.5,pp242−248,2007年)。
【0162】
シランカップリング剤としては、オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前には、絶縁層表面をオゾン紫外線(UV)、酸素(O2)プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0163】
このような表面処理によって、絶縁層3として用いられるシリコン酸化膜などの表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、有機半導体層2を構成している式(2)で表される構造単位を含む化合物の絶縁層3上での配向性が向上し、これによって高いキャリア輸送性(移動度)が得られる。
【0164】
ゲート電極4の材料としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等が挙げられる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0165】
なお、ゲート電極4として、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性質とともに、基板としての性質も併せて有する。このような基板としての性質をも有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。例えば、上述した第3、4、7実施形態の有機トランジスタにおいて、ゲート電極4が基板1を兼ねる構成とすることができる。
【0166】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成される。低抵抗の材料としては、例えば、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム及びモリブデンが挙げられる。これらの材料の中でも、電荷注入の観点からは、金、白金が好ましく、プロセス容易性の観点から、金がさらに好ましい。これらの材料は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0167】
以上、好適な実施形態の有機トランジスタとして幾つかの例を説明したが、有機トランジスタは上記の実施形態に限定されない。例えば、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間には、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物とは異なる化合物からなる層が介在していてもよい。これにより、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間の接触抵抗が低減され、有機トランジスタのキャリア移動度をさらに高めることができる場合がある。
【0168】
このような層としては、上述したような電子又はホール輸送性を有する低分子化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属やこれらの金属と有機化合物との錯体等;ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0169】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、保護膜によって、その形成工程における有機トランジスタへの影響も低減することができる。
【0170】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0171】
本発明の有機トランジスタの好ましい一態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層中に式(3)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタである。
【0172】
【化42】
(3)
【0173】
有機トランジスタは、ソース電極とドレイン電極との間に有機半導体層を有していてもよい。有機トランジスタがゲート絶縁層を有する場合、ソース電極とドレイン電極との間に有機半導体層を有し、ゲート電極と該有機半導体層との間にゲート絶縁層を有する有機トランジスタでもよく、ゲート電極上にゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に有機半導体層を有し、該有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を有する有機トランジスタであってもよい。
【0174】
本発明の有機トランジスタの好ましい他の態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、該第1の有機半導体層中に式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、該第2の有機半導体層中に式(2)で表される構造単位を含む少なくとも1個化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタである。
【0175】
本発明の有機トランジスタは、エレクトロニクスデバイスに用いることができる。ここで、エレクトロニクスデバイスとは、有機EL素子が挙げられる。
【0176】
<面状光源及び表示装置>
次に、本発明の有機トランジスタを用いた面状光源及び表示装置について説明する。
【0177】
面状光源及び表示装置は、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの少なくとも2つの有機トランジスタを備えるものである。面状光源及び表示装置は、このうちの少なくとも1つの有機トランジスタとして、上述した本発明の有機トランジスタを用いたものである。
【0178】
図8は、好適な実施形態に係る面状光源の模式断面図である。図8に示す面状光源200においては、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2全体を覆うように有機半導体層2上に形成された保護膜11とにより、有機トランジスタTが構成されている。
【0179】
また、面状光源200においては、有機トランジスタT上に、層間絶縁膜12を介して、下部電極(陽極)13、発光素子14及び上部電極(陰極)15が順次積層されており、層間絶縁膜12に設けられたビアホールを通じて下部電極13とドレイン電極6とが電気的に接続されている。また、下部電極13及び発光素子14の周囲にはバンク部16が設けられている。さらに、上部電極15上方には基板18が配置され、上部電極15と基板18との間は封止部材17により封止されている。
【0180】
図8に示した面状光源200において、有機トランジスタTは、駆動トランジスタとして機能する。また、図8に示した面状光源200においては、スイッチングトランジスタは省略されている。
【0181】
本実施形態に係る面状光源200においては、有機トランジスタTに上述した本発明の有機トランジスタが用いられる。それ以外の構成部材については、公知の面状光源における構成部材を用いることができる。なお、上部電極15、封止部材17及び基板18としては、透明なものが用いられる。
【0182】
また、図8に示した面状光源200は、発光素子14に白色発光材料を用いることで面状光源として機能するが、発光素子14に赤色発光材料、青色発光材料及び緑色発光材料を用い、それぞれの発光素子の駆動を制御することで、カラー表示装置とすることができる。
【0183】
面状光源及び表示装置において、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、発光素子を構成する発光層の非発光とすべき部分を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。さらに、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0184】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリエチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。GPC装置は、島津製作所製、商品名:LC−10Avp(カラム:TsKgel SuperHM−H(東ソー製)2本と、TsKgel SuperH2000(東ソー製)1本との直列接続、移動相:テトラハイドロフラン、流速:0.6ml/分、サンプル濃度:約0.5wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)または、Waters製、商品名:Alliance GPC/V2000(カラム:PLgel MIXED−B(Varian製)3本の直列接続、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/分、サンプル濃度:約0.77wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)を用いた。
【0186】
合成例1
(化合物(C−2)の合成)
【0187】
【化43】
【0188】
化合物(C−1)(東京化成工業社製)を20.16g(60.00mmol)、無水マレイン酸を20.59g(210.0mmol)、及び、トルエンを250mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。この時、化合物(C−1)はトルエンに対して不溶であり、反応系中は不均一であった。オイルバス温度を120℃にして、反応液を3.5時間還流させることにより、Diels−Alder反応が進行し、反応系内は均一溶液となった。その後、反応液にメタノール20mLを30分おきに5回(計100mL)加え、3時間加熱環流させることで、無水物が開環したモノエステル体を得た。その後、反応液に濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた。エバポレータを用いて反応液中の溶媒を除去した後、ヘキサン200mLを加え、室温で1時間撹拌することで、無水マレイン酸を除去した。反応液にメタノール200mLを加え、濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた後、反応液を濾過して不溶物を取り除いた。クロロホルムを展開溶媒に用いたカラムで反応液の分離を行い、分離物をヘキサンで再沈殿を行い、無色粉末のアントラセンの架橋体(化合物(C−2))を25.17g得た。
【0189】
合成例2
(高分子化合物1の合成)
【0190】
【化44】
(C−2) (A)
【0191】
グローブボックス内の100ml反応管に、化合物(C−2)を311mg、ビチオフェンのジホウ酸エステル体(化合物(A))を292mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を秤量して加え、その後、窒素雰囲気のグローブボックス内で、脱気したトルエンを12g、脱気した炭酸カリウム水溶液を12g、及び、触媒であるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を1.5mg反応管に加えた。前記炭酸カリウム水溶液は、炭酸カリウム282mgを脱気した純水12gに溶解させて製造した。
【0192】
還流条件で17時間反応させた後、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のブロモベンゼンを加え1.5時間還流を続け、さらに、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のフェニルホウ酸を加え、1.5時間還流を続けた後、反応を停止した。
【0193】
反応液中の水層を除去後、有機層にクロロホルムを添加し、加熱溶解させた後、エバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い、粗精製物を得た。得られた粗精製物にクロロホルムを加えて加熱溶解させた後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製処理を3回行った。カラム処理後の溶液をエバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い黄色粉状の高分子化合物1を得た。高分子化合物1の得量は100mgであった。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は17,100であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は31,300であった。
【0194】
実施例1
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物1を用い、以下の方法で図9に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。
【0195】
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、フォトリソグラフィ工程によりシリコン酸化膜32上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(シリコン酸化膜側から、クロム、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、スピンコート法により基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物1をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、メンブランフィルターでろ過した。
ろ過後の溶液を、上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。
【0196】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から電界効果移動度を算出したところ、5×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0197】
合成例3
(高分子化合物2の合成)
【0198】
【化45】
高分子化合物2
【0199】
グローブボックス内、100ml反応管に、化合物(C−2)を339mg、及び、2,2’−ビピリジルを298mg秤量して入れ、脱気した脱水テトラハイドロフランを16g添加して溶解させた。その後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルを528mg添加した後、60℃で3時間反応をさせた。
【0200】
反応液を、水/メタノール/アンモニア水の混合溶液に加え、析出物を回収し乾燥した。
得られた回収物のクロロホルム溶液を、セライト(商品名)のカラムで処理し、次にアルミナとシリカとを積層したカラムで処理した。処理液を濃縮し、高分子化合物2を得た。
高分子化合物2の得量は40mgであった。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は27,700であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は274,000であった。
【0201】
実施例2
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物1にかえて高分子化合物2を用いた以外は、実施例1と同様に有機トランジスタを作製した。
【0202】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。
測定した特性から電界効果移動度を算出したところ、2×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0203】
実施例3
(有機トランジスタの作製)
以下の方法で図10に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物1をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、この溶液を上記基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、第1の有機半導体層35を形成した。次に、第2の層として高分子化合物2をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、この溶液を第1の有機半導体層の上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、第2の有機半導体層35aを形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により第2の有機半導体層35aの上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0204】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。この特性から電界効果移動度を算出したところ、2.4×10−2cm2/Vsであった。
【0205】
合成例4
(化合物(C−3)の合成)
【0206】
【化46】
【0207】
四つ口フラスコに、化合物(C−2)を4.802g、ビスピナコラートジボロンを10.16g及びジオキサンを150mL加え、室温(25℃)でアルゴンガスを用いて四つ口フラスコ中をバブリングした。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を408.3mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを277.2mg及び酢酸カリウムを3.926g加えた後、反応液を7時間加熱環流させた。反応後。液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。フィルターを用いて反応液に難溶である塩基を分離した。反応液をエバポレータで30分程乾燥させ、溶媒を取り除いた。参考例1と同様の方法で、反応液をカラムで分離した後、分離物を少量のアセトンに溶解させ、メタノールを加えて撹拌し、少量の水を加えていくことで、化合物(C−2)のビスピナコールエステル体(化合物(C−3))を3.50g得た。化合物(C−3)の収量は60.9%であり、液体クロマトグラフィーから求めたHPLC面百値による純度は、97.5%であっ
た。
【0208】
合成例5
(高分子化合物3の合成)
【0209】
【化47】
【0210】
50mlの3つ首フラスコに、化合物(C−3)を230mg、トリフェニルアミン誘導体(化合物(B))を184mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を81mg秤量して加えた後、アルゴン雰囲気下で、脱気したトルエン12mlを加えた後、90℃まで昇温した。つづいて、反応液にパラジウムジアセテート(Pd(OAc)2)を0.92mgとトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン(P(o−MeOPh))を34.95mg加え、100℃まで昇温した後、脱気した16.7%の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を2.54g滴下した。その後、100℃で5時間27分半反応を行なった後、トルエン4mlに化合物(C−3)を4.59mg、Pd(OAc)2を0.95mg、P(o−MeOPh)3を4.95mg溶解させ、得られたトルエン溶液を反応液に加えた。その後、100℃で2時間10分反応を行なった。室温まで冷却して放置した後、反応液の油層を水で2回洗浄し、3%の酢酸水溶液で1回洗浄し、水で3回洗浄した後、硫酸ナトリウム(Na2SO4)を加えて乾燥した。その後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製を行い、カラムで処理した溶液を濃縮し、濃縮液にメタノールに加えて、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物3を得た。高分子化合物3の得量は133mgであった。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は8,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は14,000であった。
【0211】
実施例4
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物3を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物3をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0212】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0213】
合成例6
(高分子化合物4の合成)
【0214】
【化48】
【0215】
200mlの四つ口フラスコに、化合物(D)を392.2mg、化合物(C−2)を480.2mg、テトラハイドロフランを20ml加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。次いで、反応液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを18.31mg、トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム テトラフルオロボレートを23.21mg加えた。反応液を室温で撹拌しながら、27.6wt%の炭酸カリウム水溶液2gを30分かけて滴下し、50℃まで昇温した。10分後、80℃まで昇温し3時間還流を行った。
【0216】
得られた反応液を、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液で洗浄を行い、高分子化合物を濾過した。得られた高分子化合物の内、加熱クロロホルムに可溶分を、アルミナとシリカを積層したカラムに通液した。カラムで処理した液をメタノールに加え、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物4を得た。高分子化合物4の得量は100mgであった。高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量は17,500であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は42,400であった。
【0217】
実施例5
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物4を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物4をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を50℃に加熱し、50℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0218】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0219】
合成例7
(高分子化合物5の合成)
【0220】
【化49】
【0221】
化合物(B)にかえて化合物(E)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物5を合成した。高分子化合物5の得量は35mgであった。
【0222】
実施例6
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物5を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、高分子化合物5をオクタジクロロベンゼンに溶解して0.2質量%の溶液を作製した。この溶液を140℃に加熱し、140℃に加熱した上記基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0223】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0224】
合成例8
(高分子化合物6の合成)
【0225】
【化50】
【0226】
化合物(B)にかえて化合物(F)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物6を合成した。高分子化合物6の得量は、190mgであった。高分子化合物6のポリスチレン換算の数平均分子量は60,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は94,000であった。
【0227】
実施例7
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物6を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物6をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0228】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0229】
合成例9
(高分子化合物7の合成)
【0230】
【化51】
【0231】
化合物(B)にかえて化合物(G)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物7を合成した。高分子化合物7の得量は100mgであった。高分子化合物7のポリスチレン換算の数平均分子量は20,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は28,000であった。
【0232】
実施例8
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物7を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物7をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を100℃に加熱し、100℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0233】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0234】
合成例10
(高分子化合物8の合成)
【0235】
【化52】
【0236】
化合物(B)にかえて化合物(H)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物8を合成した。高分子化合物8の得量は、74mgであった。高分子化合物8のポリスチレン換算の数平均分子量は59,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は89,000であった。
【0237】
実施例9
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物8を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物8をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。
その後、窒素雰囲気下で、270℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0238】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0239】
合成例11
(高分子化合物9の合成)
【0240】
【化53】
【0241】
化合物(C−2)にかえて化合物(C−4)を用いた以外は、合成例2と同様の方法で高分子化合物9を合成した。高分子化合物9の得量は100mgであった。
【0242】
実施例10
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物9を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物9をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で30分間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0243】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0244】
合成例12
(高分子化合物10の合成)
【0245】
【化54】
【0246】
化合物(B)にかえて化合物(J)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物10を合成した。高分子化合物10の得量は、142mgであった。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は52,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は82,000であった。
【0247】
実施例11
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物10を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物10をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、250℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0248】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0249】
合成例13
(高分子化合物11の合成)
【0250】
【化55】
【0251】
化合物(B)にかえて化合物(K)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物11を合成した。高分子化合物11の得量は、133mgであった。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は54,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は90,000であった。
【0252】
実施例12
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物11を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物11をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、330℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0253】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、4.8×10−3cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0254】
合成例14
(高分子化合物12の合成)
【0255】
【化56】
【0256】
化合物(B)にかえて化合物(L)を用いた以外は、合成例5と同様の方法で高分子化合物12を合成した。高分子化合物12の得量は、145mgであった。高分子化合物12のポリスチレン換算の数平均分子量は25,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は41,000であった。
【0257】
実施例13
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物12を用い、以下の方法で図11に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物12をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO3、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0258】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、2.9×10−4cm2/Vsであった。結果を表1に示す。
【0259】
[表1]
【符号の説明】
【0260】
1…基板、
2、2a…有機半導体層、
3…絶縁層、
4…ゲート電極、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
100、110、120、130、140、150、160…有機トランジスタ、
12…層間絶縁膜、
13…下部電極(陽極)、
14…発光素子、
15…上部電極(陰極)、
16…バンク部、
17…封止部材、
18…基板、
T…有機トランジスタ、
200…面状光源、
31…n−型シリコン基板、
32…シリコン酸化膜、
33…ソース電極、
34…ドレイン電極、
35、35a…有機半導体層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【化2】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【請求項2】
式(1)で表される構造単位を含む化合物にエネルギーが印加される請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記有機半導体前駆体膜が、式(1)で表される構造単位を含む化合物と溶媒とを含有する溶液を、有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布することにより形成される請求項1又は2に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項4】
式(1)
【化3】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を広げることにより、該化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【化4】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、
該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【請求項5】
Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【化5】
からなる群から選択される少なくとも一種の基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項6】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、
該有機半導体層は、式(3)
【化6】
(3)
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタ。
【請求項7】
さらにゲート絶縁層を有する請求項6に記載の有機トランジスタ。
【請求項8】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記有機半導体層を有し、前記ゲート電極と該有機半導体層との間に前記ゲート絶縁層を有する請求項7に記載の有機トランジスタ。
【請求項9】
前記ゲート電極上に前記ゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に前記有機半導体層を有し、該有機半導体層上に前記ソース電極及び前記ドレイン電極を有する請求項7に記載の有機トランジスタ。
【請求項10】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、
該第1の有機半導体層は、式(2)
【化7】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、
該第2の有機半導体層は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタ。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の有機トランジスタを含むエレクトロニクスデバイス。
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を広げることにより、該化合物を含有する有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該有機半導体前駆体膜中の式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む前記化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【化2】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する化合物を含む有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【請求項2】
式(1)で表される構造単位を含む化合物にエネルギーが印加される請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記有機半導体前駆体膜が、式(1)で表される構造単位を含む化合物と溶媒とを含有する溶液を、有機半導体層の下に位置することになる層上に塗布することにより形成される請求項1又は2に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項4】
式(1)
【化3】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第1の化合物を広げることにより、該化合物を含有する第1の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第1の有機半導体前駆体膜中の第1の化合物が有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて、式(2)
【化4】
[式中、n、m、R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を少なくとも1個有する第2の化合物を含む第1の有機半導体層を形成する工程と、
該第1の有機半導体層上に、式(1)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第1の化合物とは異なる第3の化合物と溶媒とを含有する溶液を塗布し、第3の化合物を含有する第2の有機半導体前駆体膜を形成する工程と、
該第2の有機半導体前駆体膜中の第3の化合物が含有するYで表される2価の基の少なくとも一部を脱離させて式(2)で表される構造単位を少なくとも1個有する第4の化合物を含む第2の有機半導体層を形成する工程とを、
有する、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層を有する有機トランジスタの製造方法。
【請求項5】
Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【化5】
からなる群から選択される少なくとも一種の基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項6】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を有し、
該有機半導体層は、式(3)
【化6】
(3)
で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物を含有する有機トランジスタ。
【請求項7】
さらにゲート絶縁層を有する請求項6に記載の有機トランジスタ。
【請求項8】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に前記有機半導体層を有し、前記ゲート電極と該有機半導体層との間に前記ゲート絶縁層を有する請求項7に記載の有機トランジスタ。
【請求項9】
前記ゲート電極上に前記ゲート絶縁層を有し、該ゲート絶縁層上に前記有機半導体層を有し、該有機半導体層上に前記ソース電極及び前記ドレイン電極を有する請求項7に記載の有機トランジスタ。
【請求項10】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び第1の有機半導体層を有し、第1の有機半導体層上に第2の有機半導体層を有し、
該第1の有機半導体層は、式(2)
【化7】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R2が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位を少なくとも1個含む第2の化合物を含有し、
該第2の有機半導体層は、式(2)で表される構造単位を少なくとも1個含む化合物であって第2の化合物とは異なる第4の化合物を含有する有機トランジスタ。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の有機トランジスタを含むエレクトロニクスデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−151465(P2012−151465A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283106(P2011−283106)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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