説明

有機半導体材料

【課題】有機半導体材料となりうる化合物を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表わし、
m及びnは、同一又は相異なり、1〜4の整数である。)
で表されるインデノフルオレン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インデノフルオレン化合物および、該化合物を用いた薄膜並びに有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルなどの有機分子ならではの特徴を生かして、電子ペーパーや大画面フラットパネルディスプレイなどの次世代の技術への応用可能な素子として期待されている。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性層、基板、絶縁層、電極等数種類の部材から構成されるが、特にキャリア輸送を担う有機半導体活性層はデバイスの中で重要な役割を有している。トランジスタの特性は、この有機半導体活性層を構成する有機材料のキャリア輸送能に大きく依存する。
【0003】
有機トランジスタに用いられる有機半導体材料としては、種々の有機化合物が提案されている。例えば、銅フタロシアニン及びペンタセンなどの低分子系材料、チオフェン6量体などの芳香族5員環や6員環を連結したオリゴマー材料、及びポリアルキルチオフェンなどのようなポリマー材料が報告されている。
【0004】
有機薄膜のトランジスタ特性はアモルファスシリコン程度の特性を目指して研究が行われており、その他の要求特性としては、安定駆動性、高寿命、熱安定性などが挙げられる。さらにアモルファスシリコンに対する最も大きな利点として、有機半導体材料には塗布によるデバイス作成を可能とすることで大幅な製造コスト削減が期待されている。しかし、これまでのところ、全ての条件を満たす有機半導体材料の開発には至ってはおらず、新規有機半導体材料の開発が望まれている。
【0005】
例えば、ペンタセンはアモルファスシリコン並みの高いキャリア移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンは凝集性が強く、難溶解性であり、加工性に問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Appl.Phys.2002,92,5259−5263.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、加工性に優れた有機半導体材料および有機半導体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、インデノフルオレン化合物、インデノフルオレン化合物を用いた薄膜並びに有機半導体デバイスを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明のうち第一の発明は
式(1)

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表わし、
m及びnは、同一又は相異なり、1〜4の整数である。)
で表されるインデノフルオレン化合物に係わるものであり、
第二の発明は、
上記インデノフルオレン化合物を含有する薄膜に係わるものであり、
第三の発明は、
上記薄膜を構成成分にもつ有機半導体デバイスに係わるものである。
【発明の効果】
【0009】
新規なインデノフルオレン化合物および、該化合物を用いた薄膜並びに有機半導体デバイスを提供する。本発明によれば、有機溶媒への溶解性を有する有機半導体材料および有機半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における有機薄膜トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【図2】本発明における有機薄膜トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0011】
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 有機半導体層
21 基板
22 ゲート電極
23 ゲート絶縁膜
24 ソース電極
25 ドレイン電極
26 有機半導体層
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の下記式(1)で表されるインデノフルオレン化合物について詳細に説明する。
式(1)

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表わし、
m及びnは、同一又は相異なり、1〜4の整数である。)
で表されるインデノフルオレン化合物。
【0013】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」の「炭素数2〜30のアルキル」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよい。炭素原子数2〜30のアルキル基の具体例としては、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、及びn−トリアコンチル基が例示され、好ましくはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられ、より好ましくはエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基が挙げられる。
【0014】
及びRにおいて、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル基の具体例としては、これらのアルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示され、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0015】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」の「炭素数2〜30のアルキニル」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよい。炭素原子数2〜30のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基、1−ヘンイコシニル基、1−ドコシニル基、1−トリコシニル基、1−テトラコシニル基、1−ペンタコシニル基、1−ヘキサコシニル基、1−ヘプタコシニル基、1−オクタコシニル基、1−ノナコシニル基、及び1−トリアコンチニル基が例示され、好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基が挙げられ、より好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基が挙げられる。
【0016】
及びRにおいて、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニルの具体例としては、これらのアルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子およびトリアルキルシリル基で置換されたものが例示され、好ましくはフッ素原子、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(i−プロピル)シリル基が挙げられる。
【0017】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基」の具体例としては、「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」、「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」、「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルコキシ」が挙げられる。
【0018】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」および「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」については、上記の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」および「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0019】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルコキシ」の「炭素数2〜30のアルコキシ」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよい。炭素数2〜30のアルコキシの具体例としては、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、2−n−ヘキシル−n−オクチルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−ヘンイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−ヘキサコシルオキシ基、n−ヘプタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−ノナコシルオキシ基、n−トリアコンチルオキシ基などが例示され、好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基が挙げられ、より好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基が挙げられる。
【0020】
及びRにおいて、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルコキシ基の具体例としては、これらのアルコキシ基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示され、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0021】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール」の「アリール」の具体例としては、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントリル、フルオレニルなどが例示され、好ましくはフェニル、ナフタレニルが挙げられる。さらに好ましくはフェニルが挙げられる。
【0022】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリール」の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基」の具体例としては、上記の「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」、「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」、「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルコキシ」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0023】
及びRにおける「置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリール」の「ヘテロアリール」の具体例としては、チエニル、チエノ[3,2−b]チオフェニル、ベンゾ[b]チエニル、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン、ジベンゾチオフェニル、フリル、セレニルなどが例示され、好ましくはチエニル、チエノ[3,2−b]チオフェニルが挙げられる。さらに好ましくはチエニルが挙げられる。
【0024】
m及びnは、同一又は相異なる1〜4の整数で表され、好ましくはm及びnが1であることが挙げられる。
【0025】
式(1)で表されるインデノフルオレン化合物の好ましい態様として、下記式(2)が挙げられる。以下、詳細に説明する。
式(2)

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、フッ素原子又はトリアルキルシリル基で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表す。)
で表されるインデノフルオレン化合物。
【0026】
及びRにおける、「フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル」の「炭素数2〜30のアルキル」、「フッ素原子又はトリアルキルシリル基で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル」の「トリアルキルシリル」及び「炭素数2〜30のアルキニル」、「フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール」の「炭素数2〜30のアルキルを有する基」及び「アリール」、「フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリール」の「炭素数2〜30のアルキルを有する基」及び「ヘテロアリール」は、上記と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0027】
本発明の式(1)で表されるインデノフルオレン化合物の具体例としては、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】









【0029】
インデノフルオレン化合物としては、好ましくは、1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、28、29、30、31、32、34、35、36、38、39が挙げられ、さらに好ましくは、1、2、3、5、8、9、10、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、25、29、30、31、32、34、35、36が挙げられる。
【0030】
式(1)で表されるインデノフルオレン化合物において、置換基R及びRの代わりにに臭素又はヨウ素が置換した化合物を、R1-L(式中、R1は、前記のとおりの意味を表し、Lは脱離基を表す。)またはR2-L(式中、R2は、前記のとおりの意味を表し、Lは脱離基を表す。)または両者の混合物とカップリング反応させ、式(1)のインデノフルオレン化合物を製造することができる。該カップリング反応は、ホウ素化合物、マグネシウム化合物、スズ化合物、亜鉛化合物、ケイ素化合物、又はアセチレン化合物などと触媒の存在下で通常行われる。該反応では、必要に応じて塩基性試薬を添加してもよい。
【0031】
式(1)で表されるインデノフルオレン化合物の製造する反応は、通常、溶媒中で行う。有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶媒であればよく、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ジメトキシエタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、例えばメタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等の含窒素系溶媒、水等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、含窒素系溶媒、又は水が挙げられる。
【0032】
反応に用いられる触媒としては、例えば酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジブロモビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(π−アリル)ジパラジウム、ジクロロビス(ピリジン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ−[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン錯体等の2価のパラジウム化合物、例えばトリス( ジベンジリデンアセトン) ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン) ジパラジウム・クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン) パラジウム等の0価のパラジウム化合物、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ジクロロ−[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル、ジクロロ−[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル、塩化ニッケル等のニッケル化合物、例えば、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅、シアン化銅等の銅化合物等が挙げられ、中でもジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ−[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン錯体、トリス(ジベンジリデンアセトン) ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン) ジパラジウム・クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン) パラジウム、塩化銅、ジクロロ−[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル、ジクロロ−[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル、塩化ニッケルが好ましい。触媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。触媒は、通常、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0033】
かかる触媒の使用量は、金属原子換算で、「ジハロゲン化インデノフルオレン化合物」に対して、通常0.01〜20モル%である。
【0034】
該反応においては、上記触媒に配位子を添加して実施してもよい。配位子としては、パラジウム又はニッケルに配位可能なものであればよく、例えば単座ホスフィン系配位子、単座アルシン系配位子、分子内にパラジウム又はニッケルに配位可能な窒素原子、リン原子等の原子を少なくとも二つ有する多座配位子、カルベン系配位子等が挙げられる。
【0035】
単座ホスフィン系配位子としては、例えばトリ(n−ブチル) ホスフィン、トリ(t− ブチル) ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル) ホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジシクロヘキシルナフチルホスフィン等が挙げられる。二座配位子としては、例えば2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’− ビナフチル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−(ジフェニルホスフィノ) フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、5,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビ(1,3−ベンゾジオキソール)等のパラジウムに配位可能なリン原子を2つ有する二座ホスフィン系配位子、例えば、トリフェニルアルシン等の単座アルシン系配位子、例えば2−(N,N− ジメチルアミノ)−2’−(ジシクロヘキシルアミノ)ビフェニル等のパラジウム又はニッケルに配位可能な窒素原子及びリン原子をそれぞれ一つずつ有する二座アミノホスフィン系配位子等が挙げられ、単座ホスフィン系配位子が好ましく、中でもトリ(t− ブチル) ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリフェニルアルシンが好ましい。配位子は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0036】
かかる配位子の使用量は、パラジウム又はニッケル化合物のパラジウム又はニッケルに対して、通常0.5〜20モル倍である。
【0037】
有機溶媒に可溶な配位子とパラジウム又はニッケル化合物とからなるパラジウム又はニッケル触媒は、前記有機溶媒に可溶な配位子と前記パラジウム又はニッケル化合物とを、予め有機溶媒中で接触させることにより調製したものを用いてもよいし、反応系内でその両者を接触させ、調製してもよい。
【0038】
反応に用いてもよい塩基性試薬としては、例えば水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えばリン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、例えばイソプロピルアミン、トリエチルアミン等のアミン等が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アミンが挙げられる。塩基性試薬は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。
【0039】
塩基性試薬の使用量は、「ジハロゲン化インデノフルオレン化合物」に対して、通常、0.1モル倍から25モル倍、好ましくは1モル倍から20モル倍、更に好ましくは3モル倍から10モル倍である。
【0040】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度の範囲、好ましくは40℃〜反応液の還流温度の範囲である。反応時間は特に制限されないが、通常、1分から120時間である。
【0041】
本反応を停止させる場合は、反応液に例えば、水、希塩酸などを添加する。反応停止後、通常の後処理、例えば抽出、洗浄等の操作を行うことで、インデノフルオレン化合物の粗生成物を得ることができる。インデノフルオレン化合物の粗生成物は、晶析、昇華、各種クロマトグラフィーなどの操作をすることにより精製を行ってもよい。
【0042】
次に、有機半導体デバイスについて説明する。本発明による有機半導体デバイスは、有機薄膜トランジスタ、すなわち、インダセンジオン化合物を含有する薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタを含む有機半導体デバイスを提供することができる。
【0043】
本発明の有機トランジスタとしては、有機電界効果トランジスタが挙げられる。該有機電界効果トランジスタの構造としては、通常は、ソース電極及びドレイン電極が高分子からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば、
(1)基板/ゲート電極/ 絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/半導体層 という構造、
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/半導体層/ソース電極・ドレイン電極 という構造
(3)基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極 という構造
(4)基板/ ソース電極( 又はドレイン電極)/半導体層+絶縁体層+ゲート電極/ドレイン電極( 又はソース電極) という構造などがあげられる。このとき、ソース電極, ドレイン電極, ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
【0044】
本発明のインダセンジオン化合物を含有する薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシャル成長法などの真空プロセスでの形成法が挙げられる。
【0045】
真空蒸着法による薄膜の形成方法は、インダセンジオン化合物をルツボや金属ボート中で真空下、加熱し、蒸発した有機半導体材料を基板もしくは絶縁体材料に蒸着させる方法である。蒸着時の真空度は、通常1×10−1Pa以下、好ましくは1×10−3Pa以下である。蒸着時の基板温度は通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃である。蒸着速度は、通常0.001nm/sec〜10nm/secであり、好ましくは0.01nm/sec〜1nm/secである。インダセンジオン化合物から形成される薄膜の膜厚は、通常1nm〜10μmであり、好ましくは5nm〜1μmである。
【0046】
また薄膜の形成方法として、溶液プロセスを用いてもよい。溶液プロセスは、インダセンジオン化合物を溶媒に溶解又は分散し、基板もしくは絶縁体層に塗布する方法である。塗布の方法としては、キャスティング法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などが挙げられる。これらの手法は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0047】
本発明における、有機半導体デバイスの作製において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO) 、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム− カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/ 銅混合物、マグネシウム/ 銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/ インジウム混合物、アルミニウム/ 酸化アルミニウム混合物、リチウム/ アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO、炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。これらの電極材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。電極の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。また、ゲート電極と基板を兼ねる場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
【0048】
電極膜の形成方法としては、上記を原料として種々の方法を用いることができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。成膜時又は成膜後に、パターニングを必要に応じて行うことが好ましい。パターニングの方法としても、種々の方法を用いることができる。具体的には、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法なども挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してパターニングを行うことも可能である。
【0049】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられ、好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物が挙げられる。有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルランなどが挙げられ、好ましいのは、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの絶縁層材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。絶縁層の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
【0050】
絶縁層の形成方法としては、上記を原料として種々の方法を用いることができる。具体的には、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットなどの印刷法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコンの熱酸化膜のように金属上に酸化物膜を形成する方法などが挙げられる。
【0051】
基板材料としては、ガラス、紙、石英、セラミック、フレキシブルな樹脂製シートなどが挙げられる。樹脂フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート( P E T ) 、ポリエチレンナフタレート( P E N ) 、ポリエーテルスルホン( P E S ) 、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート( P C ) 、セルローストリアセテート( T A C ) 、セルロースアセテートプロピオネート( C A P )などが挙げられる。基板の厚さとしては、通常1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。
【0052】
有機半導体層と接触する絶縁体層や基板の部分において、絶縁体層や基板上に表面処理を行ってもよい。有機半導体層が積層される絶縁体層上に表面処理を行うことにより、素子のトランジスタ特性を向上させることができる。表面処理としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシランなどによる疎水化処理、塩酸、硫酸、過酸化水素水などによる酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどによるアンモニア処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどのプラズマ処理、ラングミュラー・ブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、繊維などを利用したラビング処理などが挙げられる。
【0053】
表面処理を行う方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。
【0054】
また、有機半導体層上に樹脂もしくは無機化合物からなる保護膜を設けてもよい。保護膜の形成により、外気の影響を抑制してトランジスタの駆動を安定化することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]<化合物Bの合成>

文献(Organic Letters,2002,4,2157.Organic Letters,2005,7,795.)の方法により得た化合物A(4.88 g、11.8 mmol)、ヘキシルボロン酸(3.38 g、26.0 mmol)、PdCl(dppf)(1.91 g、2.34 mmol)、炭酸カリウム(9.81 g、71.0 mol)、水(101 mL)、トルエン(507 mL)を窒素雰囲気下で混合し、8時間還流攪拌した。室温まで放冷後、クロロホルムを加え、有機層を抽出、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過後、溶媒を減圧下留去した。得られた混合物をリサイクル分取GPCで分離精製することにより、化合物B(3.53 g、8.35 mmol)を収率71%で得た。
H−NMR(CDCl、δppm):7.87(s,2H)、7.69(d,2H)、7.37(s,2H)、7.19(d,2H)、3.93(s,4H)、2.68(t,4H)、1.66(m,4H)、1.33(m,12H)、0.89(t,6H)
elemental anal:calcd for C32H38:C90.94、H9.06;found C91.13、H8.74
【0057】
[実施例2]<化合物Bの溶解度>
化合物Bとペンタセンのクロロホルムに対する溶解度を比較した(下表)。その結果、化合物Bはペンタセンに比べて、200倍以上の溶解度有することがわかった。


【0058】
[実施例3]<化合物Bからなる薄膜および該薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタの作製>
チャネル幅2mm及びチャネル長20μmの金電極を有するSiO熱酸化膜付きnドープシリコンウエハー上に、オクタデシルトリクロロシランを成膜した基板を作成した。次に実施例1で合成した化合物Bを昇華により精製した試料を石英製のるつぼに入れ、るつぼを加熱し、真空蒸着法により、化合物Bからなる薄膜を形成した。
真空蒸着法に用いた装置チェンバ内の真空度は、1×10−4 パスカル以下であり、基板の温度は、室温(24℃ )以上80℃以下の範囲であった。薄膜の膜厚は、約200nm であった。
このようにして、図1に示すように化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタを製造することができた。
【0059】
[実施例4]<化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつトランジスタ特性に関する測定>
製造した化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタの電気特性を測定した。その結果、製造した化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタは、p 型の有機トランジスタであることを確認することができた。さらに、有機トランジスタのキャリアの電界効果移動度μ は、有機トランジスタの電気的特性の飽和領域におけるドレイン電流I d を表す式
I d = ( W / 2 L ) μ C i ( V g − V t ) 2 ・・・( a )
を用いて算出することができる。ここで、L 及びW は、それぞれ、有機トランジスタのゲート長及びゲート幅であり、C i は、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量であり、V g は、ゲート電圧であり、V t は、ゲート電圧のしきい値電圧である。式(a)を用いて、製造した化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタのキャリアの電界効果移動度μ を計算した結果、基板温度60℃で製造した化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタにおけるキャリアの電界効果移動度及びオン/オフ比は、3.2x10−5cm/Vs及び10であった。
【0060】
[実施例5]<化合物Bからなる薄膜および該薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタの作製>
ヘキサメチルジシラザン処理を行ったSiO熱酸化膜付きnドープシリコンウエハー上に、昇華により精製した化合物Bのテトラヒドロフラン溶液をスピンコート法により、化合物Bからなる薄膜を形成した。さらに形成した薄膜を120℃にて30分保温した。得られた薄膜に金属マスクを用いて、金の層を真空蒸着法で上記薄膜上に成膜して、ソース電極及びドレイン電極を形成した。ここで、ソース電極及びドレイン電極を形成することによって得られた有機トランジスタデバイスのチャネル幅及びチャネル長は、それぞれ、2mm及び20μmであった。このようにして、図2に示すように化合物Bを含有する薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタを作製することができた。
【0061】
[実施例6]<化合物Bからなる薄膜を構成成分にもつトランジスタ特性に関する測定>
【0062】
実施例5で製造した有機トランジスタの電気特性を実施例4と同様に測定した結果、キャリアの電界効果移動度及びオン/オフ比は、2.3x10−4cm/Vs及び10であった。
【0063】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、有機薄膜トランジスタ及び該有機薄膜トランジスタを含む有機薄膜デバイスに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表わし、
m及びnは、同一又は相異なり、1〜4の整数である。)
で表されるインデノフルオレン化合物。
【請求項2】
式(2)

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキル、フッ素原子又はトリアルキルシリル基で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するアリール、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜30のアルキルを有する基を有するヘテロアリールを表す。)
で表される請求項1に記載のインデノフルオレン化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)で表されるインデノフルオレン化合物において、R及びRは、同一であり、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキル、フッ素原子又はトリアルキルシリル基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキル基を有するフェニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基を有するフェニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキル基を有するナフタレニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基を有するナフタレニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキル基を有するチエニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基を有するチエニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキル基を有するチエノ[3,2−b]チオフェニル、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基を有するチエノ[3,2−b]チオフェニルである請求項1または2に記載のインデノフルオレン化合物。
【請求項4】
及びRが、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のインデノフルオレン化合物。
【請求項5】
及びRが、ヘキシル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインデノフルオレン化合物。
【請求項6】
式(1)で表されるインデノフルオレン化合物において、置換基R及びRの代わりにに臭素又はヨウ素が置換した化合物を、R1-L(式中、R1は、前記のとおりの意味を表し、Lは脱離基を表す。)またはR2-L(式中、R2は、前記のとおりの意味を表し、Lは脱離基を表す。)または両者の混合物とカップリング反応させ、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインデノフルオレン化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインデノフルオレン化合物を含有する薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載の薄膜を構成成分にもつ有機半導体デバイス。
【請求項9】
請求項7に記載の薄膜を構成成分にもつ有機トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−229048(P2010−229048A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75995(P2009−75995)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】