説明

有機層パターン形成方法、これにより形成された有機層、およびこれを含む有機メモリ素子

【課題】フォトレジストなどの高価の工程を経なくても高解像度の微細パターン形成が可能なので、製造工程を単純化し且つ製造コストを節減することが可能な有機層パターン形成方法の提供。
【解決手段】ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を塗布および乾燥して薄膜を形成する段階と、得られた薄膜を、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光させた後、露光した薄膜を現像して前記薄膜の非露光部を除去することにより、ネガティブパターンを得る段階とを含む、有機層パターン形成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層パターン形成方法、これにより形成された有機層、およびこれを含む有機メモリ素子に係り、さらに詳しくは、ヘテロ原子(heteroatom)を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を塗布および乾燥して薄膜を形成した後、露光および現像する有機層パターン形成方法、これにより形成された有機層、およびこれを含む有機メモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信産業の目覚しい発展に伴い、各種メモリ素子の需要が急増しつつある。特に携帯用端末機、各種スマートカード、電子マネー、デジタルカメラ、ゲーム用メモリ、MP3プレーヤーなどに必要なメモリ素子は、電源を切っても、記録された情報が消えない不揮発性を要求している。現在、この種の不揮発性メモリは、シリコン材料を基礎とするフラッシュメモリが主流を成している。
【0003】
既存のフラッシュメモリは、記録/消去回数が制限され、記録速度が遅く、高集積のメモリ容量を得るための微細化工程によってメモリチップの製造コストが上昇し、技術的限界によりそれ以上チップが小型化できない限界に直面している。
【0004】
このように既存のフラッシュメモリの技術的限界が現れるにつれて、既存のシリコンメモリ素子の物理的な限界を克服する超高速、高容量、低消費電力、低価格特性の次世代不揮発性メモリ素子の開発が盛んに行われている。
【0005】
次世代メモリには、半導体内部の基本単位であるセルを構成する物質によって、強誘電体メモリ(Ferroelectric RAM)、強磁性メモリ(Magnetic RAM)、相変化メモリ(Phase Change RAM)、ナノチューブメモリ、ホログラフィックメモリ、有機メモリなどがある。
【0006】
これらの中で、有機メモリは、第1電極と第2電極との間に有機物質を導入し、ここに電圧を加えて抵抗値の双安定性(bistability)を用いてメモリ特性を実現するものである。すなわち、有機メモリは、第1電極と第2電極との間に存在する有機物質の抵抗が電気的信号によって可逆的に変わってデータ「0」と「1」の書き込み/読み取りを行うことが可能なメモリである。このような有機メモリは、既存のフラッシュメモリの利点である不揮発性を実現し、これと同時に欠点である工程性、製造コストおよび集積度の問題を克服することができるため、次世代メモリとして大きく期待されている。
【0007】
図1は有機メモリ素子を用いたメモリマトリックスの一例を示す概略斜視図である。図1に示すように、メモリマトリックスは、ガラスまたはシリコンなどの適切な基板上に形成される。このようなメモリマトリックスは、第1電極10および第2電極30を含み、それらの間に有機活性層20を挟んでいる。このような構成では、第1電極10と第2電極30との交差部分に形成されるセルが双安定性特性を提供する。このようなメモリセルアレイを形成するためには、電極だけでなく有機活性層もパターン化する必要がある。有機メモリ素子の小型化・高集積化に伴い、有機活性層を所望の模様と大きさにパターン化することが重要な課題となっている。
【0008】
一般な有機メモリ素子の有機活性層パターン形成方法では、活性層が単分子の場合にはシャドーマスクを熱蒸着または電子ビーム蒸着で実現し、高分子の場合には別途のフォトレジストを用いて露光/エッチング段階を経てパターンを形成する。一例として、ガラス基板の全体表面上に伝導性物質をコートして下部電極を形成した後、この下部電極の上に、有機活性層材料を含むフォトレジスト組成物を塗布し、フォトレジストマスクを用いて有機活性層を選択的にエッチングしてパターニングする。ところが、このようなフォトレジスト方法は、工程が複雑で高価の装備が使用されるので、コストを上昇させるという問題点を持つ。
【0009】
他の有機層パターン形成方法としては、ソフトリソグラフィー(soft lithography)方法とインクジェット(ink jet)方法がある。ソフトリソグラフィー方法では、水溶性感光性樹脂組成物を水に溶解させてガラス基板上に塗布および乾燥した後、得られたフォトレジスト層にシャドーマスクを介して露光を施してから現像し、未露光部分を除去してガラス基板上に光硬化パターンを形成させた後、光吸収性物質を全面に塗布、乾燥し、前記光硬化パターンとその上の光吸収性物質を剥離除去することにより、パターンを形成する。ところが、このようなソフトリソグラフィー方法は、活性層が熱または光によって硬化するメカニズムであって、材料の選択が制限的であるという限界がある。
【0010】
一方、インクジェット方法は、ノズル閉塞などの問題のため、サブミクロン未満のパターン形成の際には技術的には適用し難く、溶媒選択および濃度維持制御が難しいという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を克服するためのもので、その目的とするところは、フォトレジストなどの工程を経ることなく微細な有機活性層パターンを形成することを可能にする有機層パターン形成方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、本発明の方法によってパターン化された有機活性層、およびこれを含む有機メモリ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一様相は、(a)ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を塗布および乾燥して薄膜を形成する段階と、(b)得られた薄膜を、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光させた後、露光した薄膜を現像して前記薄膜の非露光部を除去することにより、ネガティブパターンを得る段階とを含む、有機層パターン形成方法を提供する。
【0014】
前記ポリイミド系高分子の一例は下記化学式1の高分子であってもよい。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、YおよびYはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基またはCXであり、ここで、XはF、Cl、Br、Iであり、
ZはN、OまたはSであり、
mは10〜100であり、
nは1〜12である。
【0017】
前記化学式1の高分子の好適な例は、下記化学式2の高分子である。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、mは10〜100である。
【0020】
本発明の他の様相は、本発明の方法によって製造された有機層パターンを提供する。
【0021】
本発明の別の様相は、第1電極と第2電極との間に、本発明の方法によってパターン化された有機層を含む、有機メモリ素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、高価な装備および材料を必要とし且つ複雑な工程を経なければならないフォトレジストなしで微細な有機層パターンを形成することができるため、工程を単純化し且つコストを節減することができる。また、本発明の方法によって製造される有機メモリ素子は、製造工程性が向上し、製造コストが低いという利点を持つ。本発明の有機層パターン形成方法は、有機メモリ素子の他にも有機EL素子や太陽電池など、有機層パターンを含む大部分の種類の電子素子に応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明の一様相は、有機層パターン形成方法に関するものである。本発明の方法によって有機層パターンを形成する場合には、まず、ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を基材に塗布および乾燥して薄膜を形成する。その後、得られた薄膜を、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光させた後、露光した薄膜を現像して前記薄膜の非露光部を除去することにより、ネガティブパターンを得る。
【0025】
本発明の方法によれば、微細な有機層パターンを、フォトレジストなどの工程を経ることなく、容易に得ることができる。
【0026】
本発明において、有機層の材料は、ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子を含む。図2は本発明においてポリイミド系高分子(化学式2のポリイミドピリジンプロパノール、PPP)が鎖状架橋構造を形成した状態の模式図である。ポリイミド系高分子は、非常に優れた耐熱性を有し、光開始剤および架橋剤と混合された状態で受光するときにマレイン酸無水物の二重結合(ビニル基)と架橋剤のビニル基が光開始剤によってラジカル重合され、図2に示すような鎖状架橋構造を形成する。
【0027】
本発明において、ポリイミド系高分子の一例は、下記化学式1の高分子であってもよい。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、YおよびYはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基またはCXであり、ここで、XはF、Cl、Br、Iであり、
ZはN、OまたはSであり、
mは10〜100であり、
nは1〜12である。
【0030】
前記化学式1の高分子の好適な例は、下記化学式2の高分子である。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、mは10〜100である。
【0033】
本発明において、前記ポリイミド系高分子の電気伝導度は10−12S/cm以下であることが好ましい。
【0034】
一方、本発明において、光開始剤は、紫外線などを吸収してラジカルを発生させて架橋を誘導するものでる。使用可能な光開始剤の例は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、およびチオキサントン系などを含むが、これらに制限されない。
【0035】
アセトフェノン系開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン(4−Phenoxy dichloroacetophenone)、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン(4−t−Butyl dichloroacetophenone)、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン(4−t−Butyl trichloroacetophenone)、ジエトキシアセトフェノン(Diethoxyacetophenone)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(2−Hydroxy−2−methyl−1−phenyl−propnane−1−one)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン[1−(4−Isopropylphenyl)−2−hydroxy−2−methyl−propane−1−one]、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン[1−(4−Dodecylphenyl)−2−hydroxy−2−methylpropane−1−one]、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン[4−(2−Hydroxyethoxy)−phenyl−(2−hydroxy−2−propyl)ketone]、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1−Hydroxy cyclohexyl phenyl ketone)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1[2−Methyl−1−[4−(methylthio)phenyl]−2−morpholino−propane−1]が挙げられるが、これに制限されない。
【0036】
ベンゾイン系光開始剤としては、ベンゾイン(Benzoin)、ベンゾインメチルエーテル(Benzoinmethyl ether)、ベンゾインエチルエーテル(Benzoin ethyl ether)、ベンゾインイソプロピルエーテル(Benzoin isopropyl ether)、ベンゾインイソブチルエーテル(Benzoin isobutyl ether)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl dimethyl ketal)などを使用することができる。ベンゾフェノン系光開始剤としては、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンゾイル安息香酸(Benzoyl benzoic acid)、ベンゾイル安息香酸メチルエステル(Benzoyl benzoic acid methyl ester)、4−フェニルベンゾフェノン(4−Phenyl benzophenone)、ヒドロキシベンゾフェノン(Hydroxy benzophenone)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(4−Benzoyl−4’−methyl diphenyl sulphide)、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(3,3’−Dimethyl−4−methoxy benzophenone)などを使用することができる。チオキサントン系光開始剤としては、チオキサントン(Thioxanthone)、2−クロロジオキサントン(2−Chlorothioxanthone)、2−メチルチオキサントン(2−Methylthioxanthone)、2,4−ジメチルチオキサントン(2,4−Dimethylthioxanthone)、2−イソプロピルチオキサントン(2−Isopropylthioxanthone)、2,4−ジクロロチオキサントン(2,4−Dichlorothioxanthone)、2,4−ジエチルチオキサントン(2,4−Diethylthioxanthone)、2,4−ジイソプロピルチオキサントン(2,4−Diisopropylthioxanthone)などを使用することができる。一例として、シバガイギ社のIrgacure 184などを使用することができる。
【0037】
上述した光開始剤の他にも、本発明では、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム[1−Phenyl−1,2−propanedione−2−(O−ethoxycarbonyl)oxime]、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6−Trimethyl benzoyl diphenyl phosphine oxide)、メチルフェニルグリオキシレート(Methyl phenylglyoxylate)、ベンジル(benzil)、9,10−フェナントレンキノン(9,10−Phenanthrenequinone)、カンファーキノン(Camphorquinone)、ジベンゾスベロン(Dibenzosuberone)、2−エチルアントラキノン(2−Ethylanthraquinone)、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン(4,4’−Diethylisophthalophenone)、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン[3,3’,4,4’−Tetra(t−butylperoxycarbonyl)benzophenone]などを使用することができる。
【0038】
前記架橋剤としては、ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルオキシブタン、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテートなどのアリル化合物、ヘキサンジオールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物よりなる群から選択されるものを使用することができるが、これらに制限されない。
【0039】
本発明によれば、ポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を塗布した後、露光および現像することにより、有機層パターンを形成することができる。まず、上述したように、ポリイミド系高分子、1種以上の光開始剤、および架橋剤を有機溶媒に分散させてコーティング液を製造した後、これを基材上に均一に塗布する。コーティング液の製造に用いられる有機溶媒は、特に制限されるものではない。混和性および皮膜の形成を考慮するとき、好ましくはN−メチルピロリドン(NMP)、DMF、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(4−Hydroxy−4−methyl−2−pentanone)、エチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene glycol monoethyl ether)、および2−メトキシエタノール(2−Methoxyethanol)よりなる群から選択される溶媒を単独でまたは1種以上混合して使用することができる。
【0040】
本発明において、前記コーティング液は、その組成が特に制限されないが、例えば、高分子分子0.5g、光開始剤0.0025g、架橋剤0.05gおよびNMP溶媒4gを含むコーティング液を使用することができる。
【0041】
前記コーティング液を基材上に塗布する方法には、当業界に知られているスピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、噴霧コーティング(spray coating)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)、静電気コーティング(electrostatic coating)、ブレードコーティング、ロールコーティング、およびインクジェットプリントなどが含まれるが、これに制限されない。この中でも、便宜性および均一性の面で最も好ましい塗布方法はスピンコーティングである。スピンコーティングを行う場合、スピン速度は500〜2500rpmの範囲内で調節されることが好ましく、正確な速度はコーティング液の粘度と所望のコーティング厚さによって決定される。
【0042】
また、フィルムなどの支持体上に塗布した後、その他の支持体上に転写することも可能であり、その適用方法は特に限定されない。この際、塗布された薄膜の厚さは特別な制限がなく、有機層の用途に応じて一般な範囲に調整することができる。コーティング液の塗布が完了した後には、8〜120℃、好ましくは100℃で1〜2分間予備乾燥(プリベーク)して溶媒を揮発させ、基材上にフィルムを形成させる。
【0043】
薄膜の形成後には、所望のパターンを持つフォトマスクを介して紫外線などを照射して露光を行った後、露光した薄膜を適切な現像液で現像することにより、パターン化された有機層を得る。このような露光段階は、波長150nm〜400nmの光の照射によって行うことができ、照射時の露光量は100〜800mJ/cm程度であることが好ましい。
【0044】
露光過程において、露光部では、上述したように光開始剤によって生成されたラジカルが光重合反応を促進することにより、ポリイミド系高分子の末端部がマレイン酸無水物でエンドキャッピングされているとき、マレイン酸無水物の二重結合(ビニル基)と架橋剤のビニル基とが、光開始剤により生成されたラジカルによって重合架橋される。このような重合架橋反応によって露光部の化学的構造が変化し、その結果露光部の薄膜は不溶化される。よって、露光部の薄膜は、後続の現像段階で現像液を用いて現像するとき、非露光部に比べて著しく減少した溶解速度を示す。このような溶解速度の差異に起因して露光部のみが基材上に残るから、所望のネガティブパターンを形成することができる。
【0045】
本発明の現像液としては、本発明の目的を阻害しない限りは特に制限されず、フォトリソグラフィー分野で通常用いられる任意の有機溶媒を使用することができるが、DMF、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(4−Hydroxy−4−methyl−2−pentanone)、エチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene glycol monoethyl ether)または2−メトキシエタノール(2−Methoxyethanol)を使用した方が分散安定性とコーティング均一性の面で好ましい。
【0046】
本発明の他の様相は、前記方法によって形成された、パターン化された有機層に関するものである。本発明の方法によって得られるパターン化有機層は、有機メモリ素子の有機活性層として用いられる他に、有機EL素子や光電変換素子などにも適用できる。
【0047】
また、本発明の別の様相は、前記方法によって形成されたパターン化有機層を活性層として含む有機メモリ素子に関するものである。このような有機メモリ素子は、第1電極と第2電極との間に有機活性層を含むもので、当業界における公知の常法によって製作できる。
【0048】
図3は本発明の一実施例に係る有機メモリ素子の概略断面図である。図3を参照すると、本発明に係る有機メモリ素子100は、第1電極10と第2電極30との間に有機活性層20を挟んでいる。このようなメモリ素子100に電圧を印加すると、有機活性層200の抵抗値が双安定性を示してメモリ特性を実現する。また、このようなメモリ特性は、有機材料の特性により現われるもので、電源を切ってもその性質をそのまま維持する。よって、本発明の有機メモリ素子は不揮発性特性を持つ。
【0049】
第1電極10および第2電極30は、金属、金属合金、金属窒化物(metal nitrides)、酸化物、硫化物、炭素および伝導性ポリマー、有機導電体(organic conductor)よりなる群から選択される1つ以上の電気伝導性材料で形成できる。具体的な電極材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、インジウム錫酸化物(ITO)を含むが、これらに制限されない。
【0050】
電極材料として使用可能な前記伝導性ポリマーの例としては、フェニルポリアセチレンポリマーおよびポリチオフェン、具体的には、ポリジフェニルアセチレン、ポリ(t−ブチル)ジフェニルアセチレン、ポリ(トリフルオロメチル)ジフェニルアセチレン、ポリ(ビストリフルオロメチル)アセチレン、ポリビス(T−ブチルジフェニル)アセチレン、ポリ(トリメチルシリル)ジフェニルアセチレン、ポリ(カルバゾール)ジフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリピリジンアセチレン、ポリメトキシフェニルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレン、ポリ(t−ブチル)フェニルアセチレン、ポリニトロフェニルアセチレン、ポリ(トリフルオロメチル)フェニルアセチレン、ポリ(トリメチルシリル)フェニルアセチレン、およびこれらの誘導体などを含む。
【0051】
本発明の有機メモリ素子では、有機物が第1電極または第2電極を損傷させることを防止するために、第1電極の上にまたは第2電極の下にバリア層をさらに形成することができる。このようなバリア層は、SiO、AlO、NbO、TiO、CrO、VO、TaO、CuO、MgO、WO、およびAlNOよりなる群から選択される物質を含み、好ましくはSiO、Al、CuO、TiO、およびVよりなる群から選択される物質を含む。本発明において、バリア層はAlq3、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、PETなどの有機材料でも形成できる。バリア層の厚さは20〜300Åの範囲内であることが好ましい。
【0052】
本発明の有機メモリ素子は、有機活性層の製造過程以外は一般な方法によって製造できる。例えば、図4は本発明の有機メモリ素子の製造方法の一例を説明するための工程流れ図である。図4を参照すると、具体的に、有機活性層形成の際にはシリコンウェハー上に第1電極(下部電極)およびバッファ層を順次形成する。
【0053】
その後、ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液をバッファ層に塗布および乾燥して有機活性層薄膜を形成する。
【0054】
有機活性層のコーティング方法は特に制限されないが、例えば、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、噴霧コーティング(spray coating)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)、静電気コーティング(electrostatic coating)、ブレードコーティング、ロールコーティング、インクジェットプリントなどのコーティング方法を使用することができる。有機活性層の厚さは、好ましくは約50〜3000Åである。
【0055】
上部有機活性層のスピンコーティングの際に使用可能な溶媒としては、クロロホルム、N−メチルピロリドン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチルセロソルブアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、およびアセトニトリルよりなる群から選択される溶媒を単独で使用し或いは2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
【0056】
次に、得られた薄膜を、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して紫外線などの光を照射して露光させた後、露光した薄膜を現像して前記薄膜の非露光部を除去することにより、ネガティブパターンを得ることができる。
【0057】
こうして有機活性層が形成されると、その上に第2電極(上部電極)を形成する。前記第1電極および第2電極は、熱蒸着などの蒸着法、スパッタリング法、e−ビーム蒸発(e−beam evaporation)、スピンコーティングなどの従来の方法によって形成できる。
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明する。ところが、これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎないので、本発明の保護範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【0059】
実施例
実施例1:有機層パターンの形成
化学式2のポリイミド系高分子を用いて次の組成でコーティング液を製造した:
化学式2のポリマー 5g
光開始剤(シバガイギ社製、Irgacure 184) 0.05g
架橋剤(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 0.5g
NMP 1g
【0060】
前記コーティング液を1時間攪拌して各成分を十分に混合し、0.45マイクロシリンジでフィルタリングした後、シリコンウェハー上に500rpmでスピンコートした。その後、90℃で1分間乾燥させ、コートされた表面に残っている溶媒を除去した。このように形成されたコーティングフィルムを100μmのシャドーマスクを用いて水銀アークランプ(Hg Arc Lamp)によって500mJ/cmの露光量で10秒間露光させた。現像液としてのNMPに20秒間浸漬して現像し、有機層のネガティブパターンを得た。こうして得られた有機層パターンの写真を図5に示す。
【0061】
実施例2:有機メモリ素子の製造
ガラス基板上にパターニングされた第2電極を蒸着するが、第2電極としてアルミニウムを熱蒸発法(thermal evaporation)によって80nm程度蒸着させた。第2電極が形成された基板上に前記実施例1と同様にして有機層のネガティブパターンを形成した。最後に、第1電極としてCuを熱蒸発法によって80nm程度の厚さに蒸着し、本発明に係る有機メモリ素子を製造した。この際、有機活性層の厚さは40nmとするが、アルファ−ステッププロフィロメーター(Alpha−Step profilometer)によって測定した。蒸着される電極の厚さは石英モニター(quartz crystal monitor)で調節した。
【0062】
実験例:有機メモリ素子のスイッチング特性試験
実施例1で得られた有機メモリ素子に電圧を印加し、電流の変化からスイッチング特性を評価した。その評価結果を図6に示す。図6から確認されるように、本発明でのようにポリイミド系高分子よりなる有機層を含む有機メモリ素子は、電圧に応じて高抵抗状態と低抵抗状態がスイッチングされた。また、2つの抵抗が異なる状態は電圧または電流を印加しなくてもそれぞれの状態を長時間維持することができ、非常に低い電圧を印加して流れる電流を検出すると、このような抵抗状態を判読することができるので、本発明の素子はメモリ素子として使用することができることを確認することができる。
【0063】
したがって、本発明の有機メモリ素子は、スピンキャスティングなどの低価の単純工程によって製造可能であり、優れたスイッチング特性も持つことを確認した。
【0064】
以上、好適な具現例を挙げて説明したが、本発明は本発明の保護範囲から逸脱しない範囲内において様々に変形実施できるので、このような様々な変形例も本発明の保護範囲に含まれるものと解釈されるべきである。例えば、本発明のパターン形成方法は、有機メモリ素子の有機活性層のパターン形成だけでなく、有機発光素子、光電変換素子などの有機層のパターン形成にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】一般なメモリセルアレイ(memory cell array)の概略斜視図である。
【図2】本発明でポリイミド系高分子が鎖状架橋構造を形成した状態の模式図である。
【図3】本発明の一実施例に係る有機メモリ素子の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る有機メモリ素子の製造方法を説明するための工程流れ図である。
【図5】実施例によって製造された本発明の有機活性層パターンの写真である。
【図6】実施例で得られた本発明の有機メモリ素子の直流−電圧(IV)特性グラフである。
【符号の説明】
【0066】
10 第1電極
20 有機活性層
30 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族ペンダント基をポリイミド主鎖に持つポリイミド系高分子、光開始剤および架橋剤を含むコーティング液を塗布および乾燥して薄膜を形成する段階と、
(b)得られた薄膜を、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光させた後、露光した薄膜を現像して前記薄膜の非露光部を除去することにより、ネガティブパターンを得る段階とを含む、有機層パターン形成方法。
【請求項2】
前記ポリイミド系高分子は下記化学式1の高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【化1】

(式中、YおよびYはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基またはCXであり、ここで、XはF、Cl、Br、Iであり、
ZはN、OまたはSであり、
mは10〜100であり、
nは1〜12である。)
【請求項3】
前記化学式1の高分子は下記化学式2の高分子であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【化2】

(式中、mは10〜100である。)
【請求項4】
前記高分子の電気伝導度は10−12S/cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系または共重合性光開始剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光開始剤は、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、および3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンよりなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋剤は、ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルオキシブタン、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテートなどのアリル化合物、ヘキサンジオールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記塗布段階は、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、噴霧コーティング(spray coating)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)、静電気コーティング(electrostatic coating)、ブレードコーティング、ロールコーティング、またはインクジェットプリントによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記露光段階が波長150nm〜400nmの光の照射によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって製造された、パターン化された有機層パターン。
【請求項11】
第1電極と第2電極との間に請求項10に記載の有機層パターンを含む、有機メモリ素子。
【請求項12】
前記有機メモリ素子は、第1電極の上にまたは第2電極の下にバリア層をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の有機メモリ素子。
【請求項13】
前記バリア層は、SiO、AlO、NbO、TiO、CrO、VO、TaO、CuO、MgO、WO、およびAlNOよりなる群から選択される無機材料、またはAlq3、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、およびPETよりなる群から選択される有機材料を含むことを特徴とする、請求項12に記載の有機メモリ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−107795(P2008−107795A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217376(P2007−217376)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】