有機蒸発材料印刷の方法および装置
1つの実施の形態における本発明は、蒸発材料を含んだ複数の気体流を基材に送り出すという形で、蒸発材料を運ぶ第1の気体流を基材に提供して基材上で積層させること、気体流を囲む気体カーテンを形成することにより、目標印刷範囲を越えて気体流が拡散するのを防ぐこと、蒸発材料を目標印刷範囲で凝縮させること、に関する。また、別の実施の形態では、熱を利用して蒸発材料の流れと積層の厚みとを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月1日になされた米国仮特許出願第61/174,943号(ここでの参照により全体が本明細書に援用される)に基づく優先権を主張する。
本発明は、目標とする印刷領域に厚みが実質的に均一な有機薄膜を印刷し、当該薄膜に形状加工したエッジを持たせるための方法および装置に関する。より厳密に言えば、本明細書の発明は、有機薄膜(または有機層)を印刷するための新規な方法および装置に関し、当該方法および装置は、具体的には、蒸発材料(vaporized material)を生成して目標範囲上に散布し、散布した蒸発材料を凝縮させることで、実質的に均一な薄膜を目標範囲に形成する、というものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光装置(OLED)の製造においては、基材に1以上の有機薄膜を積層し、薄膜積層の一番上の層と一番下の層とを電極に接続する必要がある。薄膜の厚みは考慮すべき主要問題である。積層全体の厚みは約100nmであり、個々の層については、±2%よりも優れた精度で均一に積層できれば最適である。また、薄膜純度も重要である。従来の装置では、以下の2つの方法のうち1つを用いて薄膜積層を形成している:(1)相対的真空環境で有機材料を熱気化させた後、有機材料の蒸気を基材上で凝縮させる方法;(2)有機材料を溶媒に溶かして得られる溶液で基材を被覆した後、溶媒を除去する方法。
【0003】
OLEDの有機薄膜の積層において考慮すべきもう1つの問題は、所望の位置に正確に薄膜を配置することである。これを実現する従来方法は2つあり、薄膜積層方法に応じて使い分けられる。熱気化させる方法の場合、シャドーマスク技法を用いて、所望の形状のOLED薄膜を形成する。シャドーマスク技法では、先ず、形状を加工した物理的マスクを基材上のある領域に配置し、その後、基材全面に薄膜を積層する、という作業が必要となる。そして、積層が完了した時点でシャドーマスクは取り外される。マスクから露出していた領域には、基材上に積層された材料のパターンが形成される。しかし、この方法は効率が悪い。薄膜が必要なのはシャドーマスクから露出した領域だけであるにも関わらず、基材全体を被覆しなければならないからである。さらに、シャドーマスクは、使用のたびに被覆が厚くなっていくので、最終的には廃棄するか、清掃作業が必要になる。そして最後に、広い面積を覆う場合、シャドーマスクは使用が難しい。マスクは、加工寸法(feature size)を小さくする目的で非常に薄く作られており、そのため構造的に不安定だからである。しかし、蒸着技術を用いれば、高い均一性および純度、そして優れた厚み制御でOLED薄膜を作ることができる。
【0004】
溶媒積層の場合は、インクジェット印刷を用いて、OLED薄膜のパターンを積層することができる。インクジェット印刷では、有機材料を溶媒に溶かして印刷可能なインクを生成する必要がある。さらに、インクジェット印刷は、従来、単一層のOLED薄膜積層に使用が限られており、これは通常、蒸着装置で用いられる4、5層の多層積層と比較して性能が劣る。積層に限度があるのは、通常、重ねて印刷すると、下にある有機層に破壊的な溶解が生じるからである。そのため、先に形成した層が、後続の層を液状で積層する際に損傷を受けないよう、1層ごとに管理する必要があり、これによって材料や積層状態に関する選択の余地は厳しく制限される。そして更に、インクジェット印刷の場合、基材に対する最初の準備作業において、薄膜を積層しようとする範囲のうちインクを含ませる領域を規制しておく作業をしないと、厚みの均一性は蒸着で積層された薄膜に比べて貧しいものとなる。しかし、こうした領域を規制しておく作業を行うと、プロセスはコスト高かつ複雑になってしまう。また、材料品質はインクジェット印刷の方が一般的に低い。これは、乾燥プロセスの間に生じる材料の構造上の変化と、インク中に存在する材料不純物とが理由である。しかしながら、インクジェット印刷の技術を用いれば、非常に広い面積にOLED薄膜パターンを設けることができ、材料効率も良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−069650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のなかに、インクジェット印刷が有する広面積パターン形成能力と有機薄膜の蒸着で達成される高い均一性、純度、厚み制御とを兼ね備えるものは存在しない。インクジェットで処理された単一層OLED装置の品質は、広く市販するには適さないレベルに留まっており、また、熱気化による方法も、広い範囲を対象に実施しようとするとやはり非実用的である。よって、OLED業界にとっては、高い薄膜品質と広い面積に使えて費用効果のよい大規模性とを共に実現できる技術の開発が、大きな技術目標となっている。
【0007】
最後に、OLED表示装置の製造においても、金属、無機半導体および/または無機絶縁体の薄膜をパターン化して積層する必要がある。従来、こうしたものの積層には、蒸着および/またはスパッタリングが用いられている。パターン形成は、事前に基材に準備(例:絶縁体を用いたパターン化被覆)を施しておいたり、上述したシャドーマスクを用いたりして実現し、さらに、未加工の基材または保護層を用いる場合には、従来技術のフォトリソグラフィを用いて実現する。これらの手法はいずれも、材料を浪費したり、追加処理の作業が必要となったりする点で、所望のパターンを直接積層する場合に比べて効率が悪い。従って、高品質で、費用効率のよい、大面積の薄膜積層を行える方法および装置、並びに材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態による、均一の厚みの薄膜を基材に印刷する装置は、以下を有する。すなわち、蒸発有機材料とキャリアガス流との混合物を送るためのノズル、複数の重複する補助流を提供するように配置され、ノズルから来た混合物を送出する複数の微小孔、そして、複数の重複する補助流を受け取り、凝縮させて薄膜とする基材、である。複数の微小孔は、互いに独立したものとすることもできる。また、複数の微小孔のうち少なくとも2つは、空洞(cavity)によって他の微小孔に連通することもできる。
【発明の効果】
【0009】
また、別の実施の形態において、本発明は、実質的に均一な厚みを有する薄膜の印刷方法を提供する。当該方法は、蒸発材料を運ぶ第1の気体流を提供する処理を含む。蒸発材料は有機インク組成物から成るものとすればよい。「インク」の定義は、一般に、所定量の流体成分(液相または気相)を含んだ混合物であり、こうした一般的な「インク」の例としては、気相材料の混合物、キャリアガスに液体粒子を含ませた混合物、キャリアガスに固体粒子を含ませた混合物が挙げられる。第1の気体流は第1の温度とする。第1の気体流は、各々が蒸発材料を搬送する複数の部分流に分けられる。部分流のサイズは、微小孔の断面寸法の短い方とすることができる(すなわち、通常は1μmから200μm)。部分流の断面積は通常、平均流れベクトルに直行する面における流れの面積と定義される。例えば、短辺が3μm、長辺が15μmの矩形の断面を有する長い管を部分流が流れる場合、当該部分流の断面は管の矩形の断面と一致し、その断面の短い方の寸法は約3μmである。そうして、部分流は基材に送出される。この時、あわせて第2の気体流を基材に送出することにしてもよい。第2の気体流は、目標領域において、蒸発材料を含む複数の部分流を囲む位置に流体カーテンを形成する。蒸発材料は、基材上の目標領域内で凝縮して、実質的に固体の薄膜または層を形成する。好適な実施の形態においては、基材の温度は蒸発材料の温度よりも低く、それによって凝縮が促進される。基材および部分流に対する流体カーテンの相対位置を調整することで、実質的に厚みが均一な薄膜から成る印刷層の形成が可能になる。また、流体カーテンの基材に対する相対位置を調整することで、実質的に形状加工されたエッジを薄膜に持たせることができる。
【0010】
また、別の実施の形態における本発明は、蒸発材料を運ぶ第1の気体流を送る導管を有した薄膜積層装置に関する。第1の気体流はインク組成物の蒸発材料を含む。複数孔ノズルを導管と流体連通させることができる。複数孔ノズルは、第1の気体流を、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小部分流に分ける。また、補助ノズルが、複数の部分流を囲む位置に気体カーテンを設ける。多孔ノズルおよび補助ノズルに対する基材の相対位置を調整することで、インク組成物の蒸発材料を凝縮させ、それによって実質的に固体の薄膜を目標印刷範囲に形成することができる。また、複数の部分流同士の相対的な位置関係、および、複数の部分流の流体カーテンに対する相対的な位置を調整することで、形状加工した側面エッジを備え、実質的に均一な厚みを有する薄膜を積層することができる。
【0011】
また、さらに別の実施の形態における本発明は、厚みが均一な形状を有する薄膜の印刷方法に関する。当該方法は、基材上の印刷範囲を定める処理と、キャリアガスと所定量の有機材料とを有する第1の流れを印刷範囲に送り出し、基材上に有機材料の層を積層する処理と、プリント層のエッジを目標とする第2の流れを印刷範囲に向けて発する処理と、を含み、第1の流れの温度を基材の温度よりも高くすることにより、有機材料を印刷範囲で凝縮させる。実行例では、部分流を互いに一部が重なる状態とする。
【0012】
更に別の実施の形態における本発明は、印刷層に側面エッジを形成する装置に関する。当該装置は、所定量の有機材料を含んでいるキャリアガスを複数の部分流として放出する第1の放出ノズルと、目標印刷領域を有し、所定量の有機材料を受け取って凝縮させることにより縁を有する印刷層が形成される基材と、目標印刷範囲の少なくとも一部にわたり、印刷層の縁に接して実質的に形状加工された側面エッジを形成する流体カーテンを形成する第2の(補助的な)放出ノズルと、を有する。複数の部分流の位置決めによって、実質的に膜厚が均一な形状の薄膜を積層することができる。
【0013】
本発明の別の実施の形態は、ノズルからの有機材料の放出を制御する方法に関し、当該方法は以下の処理から成る。(a)有機材料を含むキャリアガスを、複数の孔を有する放出ノズルに供給する処理、(b)放出ノズルにおいて、各々が所定量の有機材料を含む複数の放出流を形成する処理、(c)放出ノズルを加熱することで、所定量の有機材料を放出ノズルから放出させる処理、(d)放出ノズルから熱を除去することで、放出ノズルの複数の孔の中で有機材料を凝縮させる処理、(e)処理(a)から処理(d)を繰り返して、印刷ノズルからの積層の速度を制御する処理。
【0014】
本発明の更に別の実施の形態による装置は、複数の微小孔を有する放出ノズルと、当該放出ノズルに所定量の有機材料を有するキャリアガスを送る導管と、微小孔の少なくとも1つを加熱する加熱部と、加熱部を調整することで、所定量の有機材料を微小孔から送り出すまたは微小孔内で凝縮させるコントローラと、を有する。
また、別の実施の形態における本発明は、蒸発有機材料を含むキャリアガス流を送出することによって側面エッジを有する薄膜を印刷する方法に関し、当該方法は、キャリアガス流および蒸発有機材料を、各々が所定量の蒸発有機材料を有する複数の部分流に分ける処理と、複数の部分流を基材表面に送出する処理とを含む。所定量の蒸発有機材料は基材表面で凝縮し、有機材料の印刷層となる。側面エッジとは、積層の実質的に直交する2つのエッジをつなぐエッジと定義することができる。
【0015】
さらに別の実施の形態では、複数のノズルから成る配列を形成して薄膜を積層する。複数ノズルの配列に含まれるノズルの数はいかなるものでもよい。ノズルの数は、目標印刷範囲のサイズなどを考慮して決定すればよい。各々のノズルが多孔放出を行い、一部が重なる状態または重ならない状態で部分流を生成する。
本明細書に開示する上記及び他の実施の形態について、以下、例示的かつ非限定的な図面を参照しながら説明する。これら図面において、類似の要素には類似の参照番号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の薄膜積層用のノズルを示す概略図である。
【図2】(A)は図1のノズルによる印刷の形状を示す図であり、(B)は望ましい印刷の形状を示す図である。
【図3】従来の技術で生じる汚染を側面方向から示す図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態による多孔ノズルを示す図である。
【図5】(A)、(B)、(C)とも細孔パターンの例を示す図である。
【図6】(A)、(B)、(C)とも本発明の別の実施の形態による複雑な細孔パターンを示す図である。
【図7】多孔ノズルの配列の例を示す図である。
【図8】流体カーテン用に補助気体流を伴う本発明の実施の形態を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態による多孔組立部品を気体カーテンと共に示す図である。
【図10】図9の中間プレートを示す断面図である。
【図11】本発明の別の実施の形態による多孔ノズルを熱遮断部と共に示す図である。
【図12】図11の多孔ノズルを、加熱部の電源を切った状態で示す図である。
【図13】流体カーテン用の複数の開口部(または孔)を備えたノズルの1例を示す図である。
【図14】流体カーテンを形成するためのアパーチャを備えたノズルの1例を示す図である。
【図15】2つの流体導管を備えた多孔ノズルを有する放出構造の1例を示す図である。
【図16】微小孔によって積層を重複させる実施の形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
有機薄膜のパターン形成技術は、発光表示装置の製造を含む様々な用途において有用である。特にOLED表示装置の場合、基材上に多くのパターン層を作る必要があるため、本技術は重要である。各々の層は、各フルカラーピクセルにおける赤、緑、青のうち1色を成す。パターン形成はシャドーマスク蒸着法を用いて実施される。このようなシャドーマスク処理はコストが高く、必要な作業量も大きい。更に、誤差が生じやすく、適用可能な面積も比較的小さいと考えられている。
【0018】
本発明の実施の形態は、低コストで広範囲にわたってパターン形成有機薄膜を積層する装置および方法を提供することで、従来技術のこれら問題点を克服するだけでなく、目標の印刷範囲において高い均一性を実現し、必要であれば鋭いエッジ形状を持たせる。留意すべき点として、ここに開示する本発明については、キャリアガスを用いて有機蒸発材料料を移動させる技術に関連付けて記述しているが、本発明の原理は有機蒸発材料に限定されることはなく、キャリア媒体を用いて積層材料を目的地の基材まで運ぶ種類の印刷方法全てに適用することができる。
【0019】
本発明の1つの実施の形態による構成は、有機蒸発材料を含むキャリアガス流をノズルで受け入れ、当該キャリアガス流を微小分配部(微小シャワーヘッド(showerhead)と置き換え可能)において複数の部分流に分けた上で、当該部分流を複数の微小孔から基材上に向けて放出することで、実質的に均一な厚みの薄膜を積層する、というものである。キャリアガス流の温度よりも基材の温度が低いため、蒸発有機材料は凝縮する。上記微小孔を組織化することで、その各々から同時に送出される蒸発材料流により、基材上に重複した形で有機材料を積層することができる。1つの微小分配部を用いて形成した積層の断面は、連続的な、厚みがゼロではない断面とすることができ、その形状は、微小孔のサイズ、形状、パターンを適当に加工することによって制御できる。つまり、本発明の実施の形態では、複数の蒸発材料流(または部分流)を少なくとも部分的に合流させることで、均一に積層された薄膜を形成する。
【0020】
図1は、薄膜の積層に用いられる従来型のノズルを概略的に示す図である。従来の積層技術では、蒸発有機材料を運ぶのに加熱したキャリアガス流を用いている。図1における流れ110は、蒸発有機材料を含むキャリアガスを表している。流れ110に含まれて運ばれた蒸発有機材料は、基材130の上面に積層されて薄膜層115を形成する。流れ110を基材130まで送る導管は、壁120によって概略的に示してある。このように、加熱したキャリアガス流を用いることで、蒸発有機材料を管によって搬送し、ノズル125から吐出することができる。従来の用法では、基材130をノズル125に対して移動させることで所望のパターンを積層する。OLEDに用いる場合、積層薄膜の厚みは、通常10nmから200nmの範囲である。ただし、上記技術を利用する場合、積層薄膜の厚みの範囲には基本的に限界がない。
【0021】
単一の開口ノズル125によって作られる薄膜の形状は、図2(A)で示すように、ガウス形状に近いものとなっている。薄膜の形状がガウス形状となった場合、通常、目標印刷領域における厚みは均一にはならない(目標印刷領域を積層範囲の中央の非常に狭い部分に限定すれば別であるが、そうした限定は普通に考えれば非現実的である)。図2(B)に示すような、鋭い側壁(側面エッジ)を備えた平らな領域に近い形とするためには、非常に細い印刷流を複数の重複する経路で送出する必要がある。しかしながら、機械配置が窮屈で許容誤差にも条件があるため、このように重複させる技術は低速かつコスト高となり、エラーも起こりやすい。また、印刷領域のエッジに鋭いエッジ形状を持たせるのに充分な細さの印刷流を生成することも困難である。
【0022】
加えて、キャリアガスの温度が高く流速も速いために、材料の全てがそのまま基材上に積層されるわけではない。それどころか、基材に当たって跳ねた材料は、側面方向に流れてしまい、その結果、図3に示すように、基材上の所望の領域から遠く離れた位置に積層してしまう。このように基材が汚染されるため、当該従来技術は、大規模な製造現場はもとより、いかなる製造現場でも不人気である。
【0023】
図4が示すのは、本発明の実施の形態による多孔ノズルである。図4における気体流410は、基材430上に積層される有機蒸発材料を運ぶ高温の気体である。気体流410は、導管420を通って多孔ノズル425に送られる。多孔ノズル425は、気体流410を複数の部分流412に分ける。各部分流412にはキャリアガスと蒸発有機材料とが含まれている。部分流412は基材430上に薄膜層415を積層する。薄膜層415は所望の形に形状加工された側面エッジを有する。また、薄膜415の厚みは実質的に均一である。最後に、多孔ノズル425は、有機蒸発材料が横方向にそれて基材を汚染するのを防ぐ。
【0024】
この多孔ノズルは、従来の技術を用いて製造することができる。本発明の実施の形態における多孔ノズルには、非常に小さい孔(開口部)の配列が形成されており、非常に小さな点(features)で積層するというMEMS加工技術を用いて製造した。孔および点の直径は、通常、1〜10μmであるが、孔のサイズについては最大で100μmまで可能である。孔が小さく、微小サイズであることから、薄膜の積層の均一性、そして側面エッジ(鋭い側壁)は優れたものとなる。
【0025】
図5(A)〜5(C)は、くつかの孔パターンの例を示す。図5(A)では、複数の円形の孔が列を成して配置されている。図5(A)の多孔ノズルは、表面510に孔512が設けられている。孔512は円形の形状を有し、ノズルに対称的に配置されている。図5(B)における孔514の形状は矩形であり、図5(C)では、矩形の孔516の両側に三日月形の孔518が付属している。図5(A)〜5(C)が示しているのは、孔の形状を設計して多様な形状および向きに対応することで、積層パターンやその薄膜断面の形状を様々に処理できるということである。図5(A)〜5(C)のノズルは、MEMSなどの従来の加工技術を用いて製造することができる。
【0026】
用途によっては、微小孔パターンを単一の切れ目のない開口部(または複数の開口部)に変更する方が効果的であり、そうした変更は、計画的に2以上の微小孔を狭い通路(thin opening)でつなぐことで実現する。変更した場合の構造を図6(A)〜6(C)に示す。具体的には、図6(A)〜6(C)は、多孔ノズルのより複雑な孔パターンを示している。すなわち、図6が示すのは、複数の孔が連結されたパターンであり、それぞれ、円形の孔(図6(A))、矩形の孔(図6(B))、複雑な形状の孔(図6(C))の場合について示している。このように形状を設計することで、異なるパターンおよび所望の薄膜断面が実現できる。
【0027】
図7は多孔ノズルの配列の一例を示す図である。図7における基材730は多孔ノズル725の配列にまたがる形で配置されており、当該多孔ノズル725の配列は流れ710から不連続な薄膜715を積層する。流れ710は、蒸発有機材料を含んだ高温キャリアガスを含むものとする。各々の積層薄膜部分は、形状加工された側面エッジを有し、厚みは実質的に均一である。導管720は、多孔配列と一体化してもよいし、別個の構成としてもよい。本発明の別の実装の形では、導管720を完全に排除することもできる。更に別の実施の形態では、多孔ノズルを連結プレートの形に設計して、取り外し可能な状態で放出導管に連結する。複数の多孔ノズルを並べて、ノズルの配列を形成することもできる。ノズル内の配列において隣接する複数の孔の形状については、同一とする必要はない。
【0028】
図8は、補助気体流を用いる本発明の実施の形態を示す。本実施の形態において、気体流の位置は多孔ノズルの近くとなっており、それによって、蒸発材料積層の形状を更に調整することができる。補助気体流は、高温の気体流を中心に空気のカーテンを形成し、さらに有機蒸発材料の横方向の拡散を防ぐ。補助気体流はまた、側面エッジおよび積層材料の厚みの精度を高めるのに役立つ。ここで図8を参照する。第1の気体流810は、蒸発有機材料を運ぶ高温の気体流となっている。蒸発有機材料については、OLED用に構成されたインクとすることができる。気体流810の温度は約150℃〜450℃の範囲とすることができ、通常は300℃である。
【0029】
気体流810はノズル825に送られる。ノズル825は複数の微小孔を有し、これら微小孔が気体流810を同数の部分流に分ける。各部分流は所定量の蒸発有機材料を運ぶ。その後、部分流は基材830に送られる。基材830の温度は第1の気体流の温度よりも低く、そのため、蒸発有機材料を基材の表面で凝縮させることができる。
積層処理と同時に、補助気体流850が、ノズル825の補助気体流用微小孔から送り出され、補助部分流855を形成する。補助部分流の温度は気体流810の温度よりも低くすることができる。また、補助部分流に蒸発有機材料を含ませる必要はない。補助気体流は、例えば、貴ガスとすることができる。微小孔のこうした配置により、補助気体流855は、目標積層範囲を中心に流体(または気体)のカーテンを形成することになる。流体のカーテンによって、凝縮後の有機蒸発材料815は、側面エッジを備えるものとなり、厚みも実質的に均一とすることができる。また、低温の気体カーテンでも、有機蒸発材料の横方向の拡散は防止される。
【0030】
図9は、本発明の実施の形態による多孔ノズルを気体カーテンと共に示す図である。図9の実施の形態は、導管920の上に中間プレート970が追加された点を除けば、実質的に図8の実施の形態と同じである。
図10は、図9に示す中間プレートの断面図である。図10に示すように、流体カーテンを形成する補助気体の入口1072は、高温キャリアガス入口1074から隔てられている。高温キャリアガスは、有機蒸発材料を含み、補助気体よりも実質的に高温とすることができる。これら入口1072、1074は、機械的ミリングや化学エッチングなどの技術を用いることで、面1070に容易に形成することができる。中間プレート1070上の入口1072、1074を重複して設けたり再配置したりすることで、多孔放出ノズルやその配列を作り出すことができる。中間プレート1070の使用により、気体送出システムは、2つの入口を有する単純な供給ライン(または供給導管)とすることができる。第1の入口は流体カーテン用の低温の補助気体を送り、第2の入口は有機蒸発材料を含んだ高温のキャリアガスを送る。中間プレートは、第1および第2の入口からの気流を多孔放出装置に取り込むための、コスト効率化を実現している。
【0031】
図11は、本発明の別の実施の形態による熱による遮断部を備えた多孔ノズルを示す。ここでは、多孔ノズル1125に要素加熱部1160が加えられている。加熱部がオン状態になると孔は加熱され、高温の気体1110が、矢印1155で示すように、ノズルから送り出される。一方、加熱部がオフ状態にある時、有機蒸発材料は孔の内表面で凝縮し、流れは妨げられる。図12はこうした状態を示しており、高温の有機蒸発材料が低温の孔の内部で凝縮して、ノズル1225の孔はふさがれている。ノズル1225のサイズが小さいため、要素加熱部はシステムを高速で加熱および冷却できるのが効果的である。ヒートシンク(図示せず)などの追加の手段を加えれば、より速やかな冷却を実現することができる。加熱手段は、対流加熱、伝導加熱、放射加熱のうち1以上を実現するものであればよい。
【0032】
コントローラを用いることで、急速に変化する孔の温度を制御することができる。コントローラは、1以上のメモリ回路に接続された1以上のマイクロプロセッサ回路を有するもの、とすればよい。加えて、流量調節器をシステムに組み入れて、コントローラと組み合わせることもできる。流量調節器を用いれば、加熱部1160のオン/オフに応じ、高温気体(図11における1110)の流量を任意に増減させることができる。メモリ回路には、プロセッサ回路を動作させるための命令や、加熱部および/または流量調節器の起動および停止のための命令を格納することができる。
【0033】
加熱要素を組み入れ、さらに多孔ノズルに(または直接孔に)加える熱を調整することによって、ノズルを通る有機蒸気材料の流れを調整することができる。加熱部がオンであれば、材料は微小孔の中を流れ、微小孔壁で凝縮することはない。加熱部がオフであれば(ヒートシンクからの追加の効果もあって)、微小孔は充分に冷却され、材料は通過することなく壁で凝縮する。
【0034】
また、ここに開示する実施の形態の構成の組み合わせによって、更に、薄膜の厚みおよび均一性、そして側面エッジを制御することができる。例えば、ノズル加熱部と流体カーテンとを組み合わせて用いることで、積層の厚みおよび形状を更に制御することができる。あるいは、加熱部が動作している時にだけ流体カーテンを起動することで、積層の形状加工を更に強化することができる。ノズル加熱部および流体カーテンの両方を多孔ノズルと組み合わせることで、より高い精度を実現でき、薄膜積層の形状も制御できる。
【0035】
図13は、流体カーテン用の複数の開口部を備えたノズルの例を示す。具体的には、図13は、中央に円形ノズル1320を有し、当該円形ノズルの周囲に複数の孔1330が分散配置されている、という構造体1310を示している。ここで、円形ノズル1320は1つの出口を有し、孔1330は、構造体1310によって積層される有機蒸発薄膜のために流体カーテンを提供する。構造体1310には加熱部を加えてもよいが、必須ではない。留意すべき点として、ノズル1320は、本明細書で上述した多孔ノズルと置き換えることができる。図6を参照して示したように、空洞(cavity)によって2以上の微小孔1330を連結すれば、異なる形状の流体カーテンを実現することができる。
【0036】
図14は、流体カーテンを形成するためのアパーチャを備えた、別の例のノズル1410を示す。図14において、円形ノズル1420が2つの流体ダクト1430の間に位置している。ノズル1420を通して運ばれる有機蒸発材料は、流体ダクト1430によって提供される流体カーテンで囲まれる。図14に示す構造例を反復配置すれば、複数のノズル1420を含む大型配列をダクト1430が囲む構成とすることができる。
【0037】
図15は、多孔ノズル1520とダクト1530とを有する放出構造体1510の例を示す。ダクト1530は流体カーテンを形成し、当該流体カーテンは、目標印刷領域を越えて蒸発有機材料が分散しないように境界を作る。前述の実施の形態と同様に、放出構造体1510を配列すれば、広い面積での積層を実現できる。図15の実施の形態には、更に加熱装置を追加してもよい。最後に、留意すべき点として、孔1520は円形とする必要はなく、印刷条件を満たすものであれば、どんな形状や形式としてもよい。
【0038】
図16は実施の形態の一例を示し、当該実施の形態における微小孔は、一部が重なる状態で積層を行う。図16において、高温のキャリアガス流1605が、ノズル1610から微小分配部1620に送られる。ノズル1610と微小分配部1620とは一体化してもよい。あるいは、別個に構築して、個々の分配部を別々のノズルと組み合わせることもできる。微小分配部1620は、複数の微小孔1630によって、キャリアガス流1605を複数の部分流に分ける。微小孔1630は、各微小孔1630からの蒸気流が同時に、基材1650に一部が重なる状態で達して積層1640を成すように構成される。本実施の形態においては、1つの微小分配部から得られる積層の断面は、連続した、厚みもゼロではない断面1635となり、当該断面は、微小孔1630のサイズ、形状、パターンによって制御することができる。有機蒸発材料流は、厚みが実質的に均一な薄膜1640を形成する。図16の実施の形態は、単一の切れ目のない開口部ノズルを複数の微小開口部(必ずしも円形である必要はない)と置き換えることによって、従来の方法の問題点の多くを克服する。ノズルの位置に流体カーテンを設ければ、更に、上述の実施の形態による積層1640のエッジの完成度を上げることもできる。
【0039】
ここまで、本発明の原理を例示的な実施の形態と関連付けて説明したが、本発明の原理はこれらには限定されず、これら実施の形態の修正例、変形例または転置例も含まれる。
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月1日になされた米国仮特許出願第61/174,943号(ここでの参照により全体が本明細書に援用される)に基づく優先権を主張する。
本発明は、目標とする印刷領域に厚みが実質的に均一な有機薄膜を印刷し、当該薄膜に形状加工したエッジを持たせるための方法および装置に関する。より厳密に言えば、本明細書の発明は、有機薄膜(または有機層)を印刷するための新規な方法および装置に関し、当該方法および装置は、具体的には、蒸発材料(vaporized material)を生成して目標範囲上に散布し、散布した蒸発材料を凝縮させることで、実質的に均一な薄膜を目標範囲に形成する、というものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光装置(OLED)の製造においては、基材に1以上の有機薄膜を積層し、薄膜積層の一番上の層と一番下の層とを電極に接続する必要がある。薄膜の厚みは考慮すべき主要問題である。積層全体の厚みは約100nmであり、個々の層については、±2%よりも優れた精度で均一に積層できれば最適である。また、薄膜純度も重要である。従来の装置では、以下の2つの方法のうち1つを用いて薄膜積層を形成している:(1)相対的真空環境で有機材料を熱気化させた後、有機材料の蒸気を基材上で凝縮させる方法;(2)有機材料を溶媒に溶かして得られる溶液で基材を被覆した後、溶媒を除去する方法。
【0003】
OLEDの有機薄膜の積層において考慮すべきもう1つの問題は、所望の位置に正確に薄膜を配置することである。これを実現する従来方法は2つあり、薄膜積層方法に応じて使い分けられる。熱気化させる方法の場合、シャドーマスク技法を用いて、所望の形状のOLED薄膜を形成する。シャドーマスク技法では、先ず、形状を加工した物理的マスクを基材上のある領域に配置し、その後、基材全面に薄膜を積層する、という作業が必要となる。そして、積層が完了した時点でシャドーマスクは取り外される。マスクから露出していた領域には、基材上に積層された材料のパターンが形成される。しかし、この方法は効率が悪い。薄膜が必要なのはシャドーマスクから露出した領域だけであるにも関わらず、基材全体を被覆しなければならないからである。さらに、シャドーマスクは、使用のたびに被覆が厚くなっていくので、最終的には廃棄するか、清掃作業が必要になる。そして最後に、広い面積を覆う場合、シャドーマスクは使用が難しい。マスクは、加工寸法(feature size)を小さくする目的で非常に薄く作られており、そのため構造的に不安定だからである。しかし、蒸着技術を用いれば、高い均一性および純度、そして優れた厚み制御でOLED薄膜を作ることができる。
【0004】
溶媒積層の場合は、インクジェット印刷を用いて、OLED薄膜のパターンを積層することができる。インクジェット印刷では、有機材料を溶媒に溶かして印刷可能なインクを生成する必要がある。さらに、インクジェット印刷は、従来、単一層のOLED薄膜積層に使用が限られており、これは通常、蒸着装置で用いられる4、5層の多層積層と比較して性能が劣る。積層に限度があるのは、通常、重ねて印刷すると、下にある有機層に破壊的な溶解が生じるからである。そのため、先に形成した層が、後続の層を液状で積層する際に損傷を受けないよう、1層ごとに管理する必要があり、これによって材料や積層状態に関する選択の余地は厳しく制限される。そして更に、インクジェット印刷の場合、基材に対する最初の準備作業において、薄膜を積層しようとする範囲のうちインクを含ませる領域を規制しておく作業をしないと、厚みの均一性は蒸着で積層された薄膜に比べて貧しいものとなる。しかし、こうした領域を規制しておく作業を行うと、プロセスはコスト高かつ複雑になってしまう。また、材料品質はインクジェット印刷の方が一般的に低い。これは、乾燥プロセスの間に生じる材料の構造上の変化と、インク中に存在する材料不純物とが理由である。しかしながら、インクジェット印刷の技術を用いれば、非常に広い面積にOLED薄膜パターンを設けることができ、材料効率も良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−069650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のなかに、インクジェット印刷が有する広面積パターン形成能力と有機薄膜の蒸着で達成される高い均一性、純度、厚み制御とを兼ね備えるものは存在しない。インクジェットで処理された単一層OLED装置の品質は、広く市販するには適さないレベルに留まっており、また、熱気化による方法も、広い範囲を対象に実施しようとするとやはり非実用的である。よって、OLED業界にとっては、高い薄膜品質と広い面積に使えて費用効果のよい大規模性とを共に実現できる技術の開発が、大きな技術目標となっている。
【0007】
最後に、OLED表示装置の製造においても、金属、無機半導体および/または無機絶縁体の薄膜をパターン化して積層する必要がある。従来、こうしたものの積層には、蒸着および/またはスパッタリングが用いられている。パターン形成は、事前に基材に準備(例:絶縁体を用いたパターン化被覆)を施しておいたり、上述したシャドーマスクを用いたりして実現し、さらに、未加工の基材または保護層を用いる場合には、従来技術のフォトリソグラフィを用いて実現する。これらの手法はいずれも、材料を浪費したり、追加処理の作業が必要となったりする点で、所望のパターンを直接積層する場合に比べて効率が悪い。従って、高品質で、費用効率のよい、大面積の薄膜積層を行える方法および装置、並びに材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態による、均一の厚みの薄膜を基材に印刷する装置は、以下を有する。すなわち、蒸発有機材料とキャリアガス流との混合物を送るためのノズル、複数の重複する補助流を提供するように配置され、ノズルから来た混合物を送出する複数の微小孔、そして、複数の重複する補助流を受け取り、凝縮させて薄膜とする基材、である。複数の微小孔は、互いに独立したものとすることもできる。また、複数の微小孔のうち少なくとも2つは、空洞(cavity)によって他の微小孔に連通することもできる。
【発明の効果】
【0009】
また、別の実施の形態において、本発明は、実質的に均一な厚みを有する薄膜の印刷方法を提供する。当該方法は、蒸発材料を運ぶ第1の気体流を提供する処理を含む。蒸発材料は有機インク組成物から成るものとすればよい。「インク」の定義は、一般に、所定量の流体成分(液相または気相)を含んだ混合物であり、こうした一般的な「インク」の例としては、気相材料の混合物、キャリアガスに液体粒子を含ませた混合物、キャリアガスに固体粒子を含ませた混合物が挙げられる。第1の気体流は第1の温度とする。第1の気体流は、各々が蒸発材料を搬送する複数の部分流に分けられる。部分流のサイズは、微小孔の断面寸法の短い方とすることができる(すなわち、通常は1μmから200μm)。部分流の断面積は通常、平均流れベクトルに直行する面における流れの面積と定義される。例えば、短辺が3μm、長辺が15μmの矩形の断面を有する長い管を部分流が流れる場合、当該部分流の断面は管の矩形の断面と一致し、その断面の短い方の寸法は約3μmである。そうして、部分流は基材に送出される。この時、あわせて第2の気体流を基材に送出することにしてもよい。第2の気体流は、目標領域において、蒸発材料を含む複数の部分流を囲む位置に流体カーテンを形成する。蒸発材料は、基材上の目標領域内で凝縮して、実質的に固体の薄膜または層を形成する。好適な実施の形態においては、基材の温度は蒸発材料の温度よりも低く、それによって凝縮が促進される。基材および部分流に対する流体カーテンの相対位置を調整することで、実質的に厚みが均一な薄膜から成る印刷層の形成が可能になる。また、流体カーテンの基材に対する相対位置を調整することで、実質的に形状加工されたエッジを薄膜に持たせることができる。
【0010】
また、別の実施の形態における本発明は、蒸発材料を運ぶ第1の気体流を送る導管を有した薄膜積層装置に関する。第1の気体流はインク組成物の蒸発材料を含む。複数孔ノズルを導管と流体連通させることができる。複数孔ノズルは、第1の気体流を、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小部分流に分ける。また、補助ノズルが、複数の部分流を囲む位置に気体カーテンを設ける。多孔ノズルおよび補助ノズルに対する基材の相対位置を調整することで、インク組成物の蒸発材料を凝縮させ、それによって実質的に固体の薄膜を目標印刷範囲に形成することができる。また、複数の部分流同士の相対的な位置関係、および、複数の部分流の流体カーテンに対する相対的な位置を調整することで、形状加工した側面エッジを備え、実質的に均一な厚みを有する薄膜を積層することができる。
【0011】
また、さらに別の実施の形態における本発明は、厚みが均一な形状を有する薄膜の印刷方法に関する。当該方法は、基材上の印刷範囲を定める処理と、キャリアガスと所定量の有機材料とを有する第1の流れを印刷範囲に送り出し、基材上に有機材料の層を積層する処理と、プリント層のエッジを目標とする第2の流れを印刷範囲に向けて発する処理と、を含み、第1の流れの温度を基材の温度よりも高くすることにより、有機材料を印刷範囲で凝縮させる。実行例では、部分流を互いに一部が重なる状態とする。
【0012】
更に別の実施の形態における本発明は、印刷層に側面エッジを形成する装置に関する。当該装置は、所定量の有機材料を含んでいるキャリアガスを複数の部分流として放出する第1の放出ノズルと、目標印刷領域を有し、所定量の有機材料を受け取って凝縮させることにより縁を有する印刷層が形成される基材と、目標印刷範囲の少なくとも一部にわたり、印刷層の縁に接して実質的に形状加工された側面エッジを形成する流体カーテンを形成する第2の(補助的な)放出ノズルと、を有する。複数の部分流の位置決めによって、実質的に膜厚が均一な形状の薄膜を積層することができる。
【0013】
本発明の別の実施の形態は、ノズルからの有機材料の放出を制御する方法に関し、当該方法は以下の処理から成る。(a)有機材料を含むキャリアガスを、複数の孔を有する放出ノズルに供給する処理、(b)放出ノズルにおいて、各々が所定量の有機材料を含む複数の放出流を形成する処理、(c)放出ノズルを加熱することで、所定量の有機材料を放出ノズルから放出させる処理、(d)放出ノズルから熱を除去することで、放出ノズルの複数の孔の中で有機材料を凝縮させる処理、(e)処理(a)から処理(d)を繰り返して、印刷ノズルからの積層の速度を制御する処理。
【0014】
本発明の更に別の実施の形態による装置は、複数の微小孔を有する放出ノズルと、当該放出ノズルに所定量の有機材料を有するキャリアガスを送る導管と、微小孔の少なくとも1つを加熱する加熱部と、加熱部を調整することで、所定量の有機材料を微小孔から送り出すまたは微小孔内で凝縮させるコントローラと、を有する。
また、別の実施の形態における本発明は、蒸発有機材料を含むキャリアガス流を送出することによって側面エッジを有する薄膜を印刷する方法に関し、当該方法は、キャリアガス流および蒸発有機材料を、各々が所定量の蒸発有機材料を有する複数の部分流に分ける処理と、複数の部分流を基材表面に送出する処理とを含む。所定量の蒸発有機材料は基材表面で凝縮し、有機材料の印刷層となる。側面エッジとは、積層の実質的に直交する2つのエッジをつなぐエッジと定義することができる。
【0015】
さらに別の実施の形態では、複数のノズルから成る配列を形成して薄膜を積層する。複数ノズルの配列に含まれるノズルの数はいかなるものでもよい。ノズルの数は、目標印刷範囲のサイズなどを考慮して決定すればよい。各々のノズルが多孔放出を行い、一部が重なる状態または重ならない状態で部分流を生成する。
本明細書に開示する上記及び他の実施の形態について、以下、例示的かつ非限定的な図面を参照しながら説明する。これら図面において、類似の要素には類似の参照番号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の薄膜積層用のノズルを示す概略図である。
【図2】(A)は図1のノズルによる印刷の形状を示す図であり、(B)は望ましい印刷の形状を示す図である。
【図3】従来の技術で生じる汚染を側面方向から示す図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態による多孔ノズルを示す図である。
【図5】(A)、(B)、(C)とも細孔パターンの例を示す図である。
【図6】(A)、(B)、(C)とも本発明の別の実施の形態による複雑な細孔パターンを示す図である。
【図7】多孔ノズルの配列の例を示す図である。
【図8】流体カーテン用に補助気体流を伴う本発明の実施の形態を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態による多孔組立部品を気体カーテンと共に示す図である。
【図10】図9の中間プレートを示す断面図である。
【図11】本発明の別の実施の形態による多孔ノズルを熱遮断部と共に示す図である。
【図12】図11の多孔ノズルを、加熱部の電源を切った状態で示す図である。
【図13】流体カーテン用の複数の開口部(または孔)を備えたノズルの1例を示す図である。
【図14】流体カーテンを形成するためのアパーチャを備えたノズルの1例を示す図である。
【図15】2つの流体導管を備えた多孔ノズルを有する放出構造の1例を示す図である。
【図16】微小孔によって積層を重複させる実施の形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
有機薄膜のパターン形成技術は、発光表示装置の製造を含む様々な用途において有用である。特にOLED表示装置の場合、基材上に多くのパターン層を作る必要があるため、本技術は重要である。各々の層は、各フルカラーピクセルにおける赤、緑、青のうち1色を成す。パターン形成はシャドーマスク蒸着法を用いて実施される。このようなシャドーマスク処理はコストが高く、必要な作業量も大きい。更に、誤差が生じやすく、適用可能な面積も比較的小さいと考えられている。
【0018】
本発明の実施の形態は、低コストで広範囲にわたってパターン形成有機薄膜を積層する装置および方法を提供することで、従来技術のこれら問題点を克服するだけでなく、目標の印刷範囲において高い均一性を実現し、必要であれば鋭いエッジ形状を持たせる。留意すべき点として、ここに開示する本発明については、キャリアガスを用いて有機蒸発材料料を移動させる技術に関連付けて記述しているが、本発明の原理は有機蒸発材料に限定されることはなく、キャリア媒体を用いて積層材料を目的地の基材まで運ぶ種類の印刷方法全てに適用することができる。
【0019】
本発明の1つの実施の形態による構成は、有機蒸発材料を含むキャリアガス流をノズルで受け入れ、当該キャリアガス流を微小分配部(微小シャワーヘッド(showerhead)と置き換え可能)において複数の部分流に分けた上で、当該部分流を複数の微小孔から基材上に向けて放出することで、実質的に均一な厚みの薄膜を積層する、というものである。キャリアガス流の温度よりも基材の温度が低いため、蒸発有機材料は凝縮する。上記微小孔を組織化することで、その各々から同時に送出される蒸発材料流により、基材上に重複した形で有機材料を積層することができる。1つの微小分配部を用いて形成した積層の断面は、連続的な、厚みがゼロではない断面とすることができ、その形状は、微小孔のサイズ、形状、パターンを適当に加工することによって制御できる。つまり、本発明の実施の形態では、複数の蒸発材料流(または部分流)を少なくとも部分的に合流させることで、均一に積層された薄膜を形成する。
【0020】
図1は、薄膜の積層に用いられる従来型のノズルを概略的に示す図である。従来の積層技術では、蒸発有機材料を運ぶのに加熱したキャリアガス流を用いている。図1における流れ110は、蒸発有機材料を含むキャリアガスを表している。流れ110に含まれて運ばれた蒸発有機材料は、基材130の上面に積層されて薄膜層115を形成する。流れ110を基材130まで送る導管は、壁120によって概略的に示してある。このように、加熱したキャリアガス流を用いることで、蒸発有機材料を管によって搬送し、ノズル125から吐出することができる。従来の用法では、基材130をノズル125に対して移動させることで所望のパターンを積層する。OLEDに用いる場合、積層薄膜の厚みは、通常10nmから200nmの範囲である。ただし、上記技術を利用する場合、積層薄膜の厚みの範囲には基本的に限界がない。
【0021】
単一の開口ノズル125によって作られる薄膜の形状は、図2(A)で示すように、ガウス形状に近いものとなっている。薄膜の形状がガウス形状となった場合、通常、目標印刷領域における厚みは均一にはならない(目標印刷領域を積層範囲の中央の非常に狭い部分に限定すれば別であるが、そうした限定は普通に考えれば非現実的である)。図2(B)に示すような、鋭い側壁(側面エッジ)を備えた平らな領域に近い形とするためには、非常に細い印刷流を複数の重複する経路で送出する必要がある。しかしながら、機械配置が窮屈で許容誤差にも条件があるため、このように重複させる技術は低速かつコスト高となり、エラーも起こりやすい。また、印刷領域のエッジに鋭いエッジ形状を持たせるのに充分な細さの印刷流を生成することも困難である。
【0022】
加えて、キャリアガスの温度が高く流速も速いために、材料の全てがそのまま基材上に積層されるわけではない。それどころか、基材に当たって跳ねた材料は、側面方向に流れてしまい、その結果、図3に示すように、基材上の所望の領域から遠く離れた位置に積層してしまう。このように基材が汚染されるため、当該従来技術は、大規模な製造現場はもとより、いかなる製造現場でも不人気である。
【0023】
図4が示すのは、本発明の実施の形態による多孔ノズルである。図4における気体流410は、基材430上に積層される有機蒸発材料を運ぶ高温の気体である。気体流410は、導管420を通って多孔ノズル425に送られる。多孔ノズル425は、気体流410を複数の部分流412に分ける。各部分流412にはキャリアガスと蒸発有機材料とが含まれている。部分流412は基材430上に薄膜層415を積層する。薄膜層415は所望の形に形状加工された側面エッジを有する。また、薄膜415の厚みは実質的に均一である。最後に、多孔ノズル425は、有機蒸発材料が横方向にそれて基材を汚染するのを防ぐ。
【0024】
この多孔ノズルは、従来の技術を用いて製造することができる。本発明の実施の形態における多孔ノズルには、非常に小さい孔(開口部)の配列が形成されており、非常に小さな点(features)で積層するというMEMS加工技術を用いて製造した。孔および点の直径は、通常、1〜10μmであるが、孔のサイズについては最大で100μmまで可能である。孔が小さく、微小サイズであることから、薄膜の積層の均一性、そして側面エッジ(鋭い側壁)は優れたものとなる。
【0025】
図5(A)〜5(C)は、くつかの孔パターンの例を示す。図5(A)では、複数の円形の孔が列を成して配置されている。図5(A)の多孔ノズルは、表面510に孔512が設けられている。孔512は円形の形状を有し、ノズルに対称的に配置されている。図5(B)における孔514の形状は矩形であり、図5(C)では、矩形の孔516の両側に三日月形の孔518が付属している。図5(A)〜5(C)が示しているのは、孔の形状を設計して多様な形状および向きに対応することで、積層パターンやその薄膜断面の形状を様々に処理できるということである。図5(A)〜5(C)のノズルは、MEMSなどの従来の加工技術を用いて製造することができる。
【0026】
用途によっては、微小孔パターンを単一の切れ目のない開口部(または複数の開口部)に変更する方が効果的であり、そうした変更は、計画的に2以上の微小孔を狭い通路(thin opening)でつなぐことで実現する。変更した場合の構造を図6(A)〜6(C)に示す。具体的には、図6(A)〜6(C)は、多孔ノズルのより複雑な孔パターンを示している。すなわち、図6が示すのは、複数の孔が連結されたパターンであり、それぞれ、円形の孔(図6(A))、矩形の孔(図6(B))、複雑な形状の孔(図6(C))の場合について示している。このように形状を設計することで、異なるパターンおよび所望の薄膜断面が実現できる。
【0027】
図7は多孔ノズルの配列の一例を示す図である。図7における基材730は多孔ノズル725の配列にまたがる形で配置されており、当該多孔ノズル725の配列は流れ710から不連続な薄膜715を積層する。流れ710は、蒸発有機材料を含んだ高温キャリアガスを含むものとする。各々の積層薄膜部分は、形状加工された側面エッジを有し、厚みは実質的に均一である。導管720は、多孔配列と一体化してもよいし、別個の構成としてもよい。本発明の別の実装の形では、導管720を完全に排除することもできる。更に別の実施の形態では、多孔ノズルを連結プレートの形に設計して、取り外し可能な状態で放出導管に連結する。複数の多孔ノズルを並べて、ノズルの配列を形成することもできる。ノズル内の配列において隣接する複数の孔の形状については、同一とする必要はない。
【0028】
図8は、補助気体流を用いる本発明の実施の形態を示す。本実施の形態において、気体流の位置は多孔ノズルの近くとなっており、それによって、蒸発材料積層の形状を更に調整することができる。補助気体流は、高温の気体流を中心に空気のカーテンを形成し、さらに有機蒸発材料の横方向の拡散を防ぐ。補助気体流はまた、側面エッジおよび積層材料の厚みの精度を高めるのに役立つ。ここで図8を参照する。第1の気体流810は、蒸発有機材料を運ぶ高温の気体流となっている。蒸発有機材料については、OLED用に構成されたインクとすることができる。気体流810の温度は約150℃〜450℃の範囲とすることができ、通常は300℃である。
【0029】
気体流810はノズル825に送られる。ノズル825は複数の微小孔を有し、これら微小孔が気体流810を同数の部分流に分ける。各部分流は所定量の蒸発有機材料を運ぶ。その後、部分流は基材830に送られる。基材830の温度は第1の気体流の温度よりも低く、そのため、蒸発有機材料を基材の表面で凝縮させることができる。
積層処理と同時に、補助気体流850が、ノズル825の補助気体流用微小孔から送り出され、補助部分流855を形成する。補助部分流の温度は気体流810の温度よりも低くすることができる。また、補助部分流に蒸発有機材料を含ませる必要はない。補助気体流は、例えば、貴ガスとすることができる。微小孔のこうした配置により、補助気体流855は、目標積層範囲を中心に流体(または気体)のカーテンを形成することになる。流体のカーテンによって、凝縮後の有機蒸発材料815は、側面エッジを備えるものとなり、厚みも実質的に均一とすることができる。また、低温の気体カーテンでも、有機蒸発材料の横方向の拡散は防止される。
【0030】
図9は、本発明の実施の形態による多孔ノズルを気体カーテンと共に示す図である。図9の実施の形態は、導管920の上に中間プレート970が追加された点を除けば、実質的に図8の実施の形態と同じである。
図10は、図9に示す中間プレートの断面図である。図10に示すように、流体カーテンを形成する補助気体の入口1072は、高温キャリアガス入口1074から隔てられている。高温キャリアガスは、有機蒸発材料を含み、補助気体よりも実質的に高温とすることができる。これら入口1072、1074は、機械的ミリングや化学エッチングなどの技術を用いることで、面1070に容易に形成することができる。中間プレート1070上の入口1072、1074を重複して設けたり再配置したりすることで、多孔放出ノズルやその配列を作り出すことができる。中間プレート1070の使用により、気体送出システムは、2つの入口を有する単純な供給ライン(または供給導管)とすることができる。第1の入口は流体カーテン用の低温の補助気体を送り、第2の入口は有機蒸発材料を含んだ高温のキャリアガスを送る。中間プレートは、第1および第2の入口からの気流を多孔放出装置に取り込むための、コスト効率化を実現している。
【0031】
図11は、本発明の別の実施の形態による熱による遮断部を備えた多孔ノズルを示す。ここでは、多孔ノズル1125に要素加熱部1160が加えられている。加熱部がオン状態になると孔は加熱され、高温の気体1110が、矢印1155で示すように、ノズルから送り出される。一方、加熱部がオフ状態にある時、有機蒸発材料は孔の内表面で凝縮し、流れは妨げられる。図12はこうした状態を示しており、高温の有機蒸発材料が低温の孔の内部で凝縮して、ノズル1225の孔はふさがれている。ノズル1225のサイズが小さいため、要素加熱部はシステムを高速で加熱および冷却できるのが効果的である。ヒートシンク(図示せず)などの追加の手段を加えれば、より速やかな冷却を実現することができる。加熱手段は、対流加熱、伝導加熱、放射加熱のうち1以上を実現するものであればよい。
【0032】
コントローラを用いることで、急速に変化する孔の温度を制御することができる。コントローラは、1以上のメモリ回路に接続された1以上のマイクロプロセッサ回路を有するもの、とすればよい。加えて、流量調節器をシステムに組み入れて、コントローラと組み合わせることもできる。流量調節器を用いれば、加熱部1160のオン/オフに応じ、高温気体(図11における1110)の流量を任意に増減させることができる。メモリ回路には、プロセッサ回路を動作させるための命令や、加熱部および/または流量調節器の起動および停止のための命令を格納することができる。
【0033】
加熱要素を組み入れ、さらに多孔ノズルに(または直接孔に)加える熱を調整することによって、ノズルを通る有機蒸気材料の流れを調整することができる。加熱部がオンであれば、材料は微小孔の中を流れ、微小孔壁で凝縮することはない。加熱部がオフであれば(ヒートシンクからの追加の効果もあって)、微小孔は充分に冷却され、材料は通過することなく壁で凝縮する。
【0034】
また、ここに開示する実施の形態の構成の組み合わせによって、更に、薄膜の厚みおよび均一性、そして側面エッジを制御することができる。例えば、ノズル加熱部と流体カーテンとを組み合わせて用いることで、積層の厚みおよび形状を更に制御することができる。あるいは、加熱部が動作している時にだけ流体カーテンを起動することで、積層の形状加工を更に強化することができる。ノズル加熱部および流体カーテンの両方を多孔ノズルと組み合わせることで、より高い精度を実現でき、薄膜積層の形状も制御できる。
【0035】
図13は、流体カーテン用の複数の開口部を備えたノズルの例を示す。具体的には、図13は、中央に円形ノズル1320を有し、当該円形ノズルの周囲に複数の孔1330が分散配置されている、という構造体1310を示している。ここで、円形ノズル1320は1つの出口を有し、孔1330は、構造体1310によって積層される有機蒸発薄膜のために流体カーテンを提供する。構造体1310には加熱部を加えてもよいが、必須ではない。留意すべき点として、ノズル1320は、本明細書で上述した多孔ノズルと置き換えることができる。図6を参照して示したように、空洞(cavity)によって2以上の微小孔1330を連結すれば、異なる形状の流体カーテンを実現することができる。
【0036】
図14は、流体カーテンを形成するためのアパーチャを備えた、別の例のノズル1410を示す。図14において、円形ノズル1420が2つの流体ダクト1430の間に位置している。ノズル1420を通して運ばれる有機蒸発材料は、流体ダクト1430によって提供される流体カーテンで囲まれる。図14に示す構造例を反復配置すれば、複数のノズル1420を含む大型配列をダクト1430が囲む構成とすることができる。
【0037】
図15は、多孔ノズル1520とダクト1530とを有する放出構造体1510の例を示す。ダクト1530は流体カーテンを形成し、当該流体カーテンは、目標印刷領域を越えて蒸発有機材料が分散しないように境界を作る。前述の実施の形態と同様に、放出構造体1510を配列すれば、広い面積での積層を実現できる。図15の実施の形態には、更に加熱装置を追加してもよい。最後に、留意すべき点として、孔1520は円形とする必要はなく、印刷条件を満たすものであれば、どんな形状や形式としてもよい。
【0038】
図16は実施の形態の一例を示し、当該実施の形態における微小孔は、一部が重なる状態で積層を行う。図16において、高温のキャリアガス流1605が、ノズル1610から微小分配部1620に送られる。ノズル1610と微小分配部1620とは一体化してもよい。あるいは、別個に構築して、個々の分配部を別々のノズルと組み合わせることもできる。微小分配部1620は、複数の微小孔1630によって、キャリアガス流1605を複数の部分流に分ける。微小孔1630は、各微小孔1630からの蒸気流が同時に、基材1650に一部が重なる状態で達して積層1640を成すように構成される。本実施の形態においては、1つの微小分配部から得られる積層の断面は、連続した、厚みもゼロではない断面1635となり、当該断面は、微小孔1630のサイズ、形状、パターンによって制御することができる。有機蒸発材料流は、厚みが実質的に均一な薄膜1640を形成する。図16の実施の形態は、単一の切れ目のない開口部ノズルを複数の微小開口部(必ずしも円形である必要はない)と置き換えることによって、従来の方法の問題点の多くを克服する。ノズルの位置に流体カーテンを設ければ、更に、上述の実施の形態による積層1640のエッジの完成度を上げることもできる。
【0039】
ここまで、本発明の原理を例示的な実施の形態と関連付けて説明したが、本発明の原理はこれらには限定されず、これら実施の形態の修正例、変形例または転置例も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標印刷範囲に均一な厚みの薄膜を印刷する印刷方法であって、
第1の温度を有し、インク組成物である蒸発材料を搬送する第1の気体流を供給する処理と、
複数の微小孔を有するノズルに第1の気体流を通過させて、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小な部分流を形成する処理と、
基材に部分流を送出する処理と、
基材上で蒸発材料を凝縮させて固体の薄膜を形成する処理と、を含み、
前記複数の微小な部分流は、目標印刷範囲にわたって膜厚が均一な形状を有する薄膜が積層されるように相互の相対位置が決定されていること、
を特徴とする薄膜印刷方法。
【請求項2】
蒸発材料は更に有機インクを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項3】
第2の気体流を基材に向けて送出する処理を更に有し、当該第2の気体流は、前記複数の部分流を囲むようにして、当該微小な部分流に対して位置決めされた流体カーテンを形成すること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項4】
前記流体カーテンの温度は第1の温度よりも低いこと、
を特徴とする請求項3に記載の薄膜印刷方法。
【請求項5】
複数の微小孔ノズルを通して第1の気体流を送り出す処理を更に有し、当該複数の微小孔ノズルの各々が、複数の微小な部分流を組み合わせて形成する働きをすること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項6】
複数の部分流のうち少なくとも2つは重なっていること、
を特徴とする請求項3に記載の薄膜印刷方法。
【請求項7】
基材の温度は第1の温度よりも低いこと、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項8】
複数の部分流は互いに独立していること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項9】
複数の部分流は連続的に基材に送出されること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項10】
複数の分割流はパルス状に基材に送出されること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項11】
蒸発材料は、第1の気体流または第2の気体流に対して不溶性であること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項12】
薄膜積層装置であって、
インク組成物の蒸発材料を搬送する第1の気体流を送る導管と、
導管と流体連通した複数の微小孔を有し、第1の気体流を、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小な部分流に分ける多孔ノズルと、
インク組成物の蒸発材料を凝縮させて目標印刷範囲に固体の薄膜を形成するように多孔ノズルに対する相対位置が定められた基材と、を有し、
複数の部分流同士の相対位置は、膜厚が均一な形状を有した薄膜が積層されるように定められていること、
を特徴とする薄膜積層装置。
【請求項13】
導管は多孔ノズルと一体化されていること、
を特徴とする請求項12に記載の薄膜形成装置。
【請求項14】
複数の分割流を囲む形で気体カーテンを生成する補助ノズルを更に有すること、
を特徴とする請求項12に記載の薄膜形成装置。
【請求項15】
気体カーテンは、第1の気体流が目標印刷範囲を越えて広がるのを防止すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項16】
補助ノズルは更に、目標印刷範囲のエッジの形成に作用する単一孔ノズルを有すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項17】
多孔ノズルは、複数の部分流を目標印刷範囲に送ることで、厚みの均一な印刷層を形成すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項18】
多孔ノズルは更に、独立した複数の孔(orifice)を有し、当該複数の孔のうち少なくとも2つは通路(opening)によって連結されていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項19】
導管と複数のノズル孔とは1つの構造体に組み込まれていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項20】
ノズル配列を形成するように配置された複数のノズルを更に有し、当該ノズル配列は、目標印刷範囲の境界に流体カーテンを提供する1以上の補助ノズルで囲まれていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項21】
部分流は互いに独立していること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項22】
複数のノズルの互いに対する位置関係は、複数の部分流の少なくとも2つが重複するように決められていること、
を特徴とする請求項21に記載の薄膜形成装置。
【請求項23】
厚みが均一な形状を有する薄膜を印刷する印刷方法であって、
基材上の目標となる印刷範囲を定める処理と、
キャリアガスを含む第1の流れと有機蒸発材料とを印刷範囲に送って基材上に有機材料の層を積層する処理と、
第1の流れを、各々が有機蒸発材料とキャリアガスとを含む複数の微小な部分流に分ける処置と、
印刷層のエッジを目標として、第2の流れを印刷範囲に送出する処理と、を含み、
第1の流れの温度が基材の温度よりも高く、それによって有機蒸発材料を印刷範囲で凝縮させること、
を特徴とする印刷方法。
【請求項24】
第2の流れは第1の流れに対して平行であること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項25】
第2の流れは第1の流れに対して角度を成すこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項26】
第2の流れは第1の流れよりも温度が低いこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項27】
第2の流れは不活性組成物を含むこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項28】
目標となる印刷範囲が第1の流れに対して移動すること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項29】
有機蒸発材料は第1の流れまたは第2の流れに対して不溶性であること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項30】
第2の流れと第1の流れとを同時に目標となる印刷領域に送出することで、目標となる印刷領域へ有機蒸発材料の積層を第2の流れによって制限する処理を更に有すること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項31】
有機蒸発材料の均一な層が積層されるように、第2の流れを目標となる印刷領域に対して角度を付けて送出する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項32】
印刷層に側面エッジを形成する形成装置であって、
所定量の有機材料を含むキャリアガスを複数の微小な部分流の形で放出する第1の放出ノズルと、
目標印刷範囲を有し、所定量の有機材料を受け取って凝縮させることにより縁を有する印刷層が形成される基材と、
目標印刷範囲の少なくとも一部にわたり、印刷層の縁に接して側面エッジを形成する、という状態で流体カーテンを形成する第2の放出ノズルと、を有し、
複数の部分流同士の位置関係と、複数の部分流の流体カーテンに対する相対位置とが、膜厚の均一な形状を有した薄膜が積層されるように定められていること、
を特徴とする形成装置。
【請求項33】
放出ノズルは、気体流を複数の平行な気体流に分割する多孔ノズルであること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項34】
放出ノズルは複数の部分ノズルから成り、各々の部分ノズルは気体流を複数の平行な気体流に分割する多孔ノズルから成ること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項35】
キャリアガスを第1の放出ノズルに送るための導管を更に有すること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項36】
第1の放出ノズルは更に複数の微小孔を有し、当該微小孔の隣接するもの同士は仕切りによって隔てられていること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項37】
第1の放出ノズルが更に複数の微小孔を有すること、そして、第2の放出ノズルが目標印刷範囲を囲む流体カーテンを形成することで、目標印刷範囲に形成される印刷層の面を平らにすること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項38】
第1の放出ノズルが更に複数の微小孔を含むこと、そして、第2の放出ノズルが目標印刷範囲を囲む流体カーテンを形成することで、目標印刷範囲に形成される印刷層に側面エッジを持たせること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項39】
流体カーテンは、キャリアガスよりも流速の速い第2の気体流によって形成されること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項40】
側面エッジは更に、1μmから100μmの間の幅を有する形状を備え、当該幅は5〜30μmの範囲になることが望まれること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項41】
ノズルからの有機材料放出を制御する制御方法であって、
(a)複数の孔を有する放出ノズルに有機材料を含むキャリアガスを供給する処理と、
(b)放出ノズルにおいて、複数の放出流を、各々が所定量の有機材料を含む状態で形成する処理と、
(c)放出ノズルを加熱することで放出ノズルから所定量の有機材料を放出させる処理と、
(d)放出ノズルから熱を除去することで放出ノズルの複数の孔の中で有機材料を凝縮させる処理と、
(e)処理(a)から処理(d)を繰り返して、放出ノズルからの積層の速度を制御する処理と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項42】
処理(c)には更に、放出ノズルを間欠的に加熱する処理が含まれること、
を特徴とする請求項41に記載の制御方法。
【請求項43】
処理(c)には更に、基材上で所定量の有機材料を凝縮させて印刷有機層を形成する処理が含まれること、
を特徴とする請求項41に記載の制御方法。
【請求項44】
印刷層のエッジを囲む流体カーテンを形成することで、印刷後の有機材料の層の形状を加工する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項43に記載の制御方法。
【請求項45】
第2の気体蒸気を印刷層のエッジに向けることで側面エッジを形成する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項43に記載の制御方法。
【請求項46】
印刷層の形状を制御する制御装置であって、
複数の微小孔を有する放出ノズルと、
所定量の有機材料を含むキャリアガスを放出ノズルに送る導管と、
微小孔のうち少なくとも1つを加熱する加熱部と、
加熱部を調整することで、所定量の有機材料を微小孔から送り出すか、または、微小孔内で凝縮させるコントローラと、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項47】
放出ノズルから熱を除去するためのヒートシンクを更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項48】
放出ノズルから熱を除去するための熱除去手段を更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項49】
加熱部は、伝導ヒータ、対流ヒータまたは放射ヒータのいずれか1つであること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項50】
放出される有機材料の一部を遮断する流体流を生成する補助ノズルを更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項51】
コントローラはメモリ回路と接続されたプロセッサ回路を更に有し、メモリ回路からプロセッサ回路に対して、間欠的に放出ノズルを加熱または冷却するよう指示が送られること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項52】
コントローラはメモリ回路と接続されたプロセッサ回路を更に有し、メモリ回路からプロセッサ回路に対して、間欠的に放出ノズルを加熱させる指示、放出ノズルを冷却させる指示、そして、流体カーテンを生成することで、放出後の所定量の材料を案内させる指示のうち少なくとも1つが送られること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項53】
薄膜印刷方法であって、
蒸発有機材料を含んだキャリアガス流を送出する処理と、
キャリアガス流および蒸発有機材料を、各々が所定量の蒸発有機材料を含んだ複数の微小な分割流に分配する処理と、
基材表面に向けて複数の分割流を送出する処理と、
基材表面で所定量の蒸発有機材料を凝縮させて有機材料の印刷層とする処理と、を含み、
複数の分割流は基材上で重なり、そのため、凝縮によって切れ目のない薄膜が形成されること、
を特徴とする薄膜印刷方法。
【請求項54】
キャリアガスおよび蒸発有機材料を加熱する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項55】
蒸発有機材料が有機材料から成ること、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項56】
蒸発有機材料が有機発光ダイオードから成ること、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項57】
基材上の目標印刷範囲を定める補助気体カーテンを提供する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項58】
基材を複数の分割流に対して移動させる処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項59】
薄膜を基材に印刷する印刷装置であって、
蒸発有機材料とキャリアガス流との混合物を送るノズルと、
複数の重なる部分流を供給するように配置され、ノズルから来る混合物を更に送る複数の微小孔と、
重なる複数の部分流を受け取り、凝縮させて薄膜にする基材と、を有し、
複数の微小孔は互いに独立していること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項60】
微小孔のうち少なくとも2つが空洞によって互いに接続されていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項61】
ノズルまたは複数の微小孔のうち少なくとも1つを加熱する加熱部を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項62】
少なくとも1つの微小孔を囲む流体カーテンを形成する補助微小孔を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項63】
ノズルを囲む流体カーテンを形成する複数の補助微小孔を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項64】
蒸発有機材料によって有機インクが作られていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項65】
蒸発有機材料とキャリアガスとの混合物は、基材よりも温度が上げられていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項1】
目標印刷範囲に均一な厚みの薄膜を印刷する印刷方法であって、
第1の温度を有し、インク組成物である蒸発材料を搬送する第1の気体流を供給する処理と、
複数の微小孔を有するノズルに第1の気体流を通過させて、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小な部分流を形成する処理と、
基材に部分流を送出する処理と、
基材上で蒸発材料を凝縮させて固体の薄膜を形成する処理と、を含み、
前記複数の微小な部分流は、目標印刷範囲にわたって膜厚が均一な形状を有する薄膜が積層されるように相互の相対位置が決定されていること、
を特徴とする薄膜印刷方法。
【請求項2】
蒸発材料は更に有機インクを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項3】
第2の気体流を基材に向けて送出する処理を更に有し、当該第2の気体流は、前記複数の部分流を囲むようにして、当該微小な部分流に対して位置決めされた流体カーテンを形成すること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項4】
前記流体カーテンの温度は第1の温度よりも低いこと、
を特徴とする請求項3に記載の薄膜印刷方法。
【請求項5】
複数の微小孔ノズルを通して第1の気体流を送り出す処理を更に有し、当該複数の微小孔ノズルの各々が、複数の微小な部分流を組み合わせて形成する働きをすること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項6】
複数の部分流のうち少なくとも2つは重なっていること、
を特徴とする請求項3に記載の薄膜印刷方法。
【請求項7】
基材の温度は第1の温度よりも低いこと、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項8】
複数の部分流は互いに独立していること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項9】
複数の部分流は連続的に基材に送出されること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項10】
複数の分割流はパルス状に基材に送出されること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項11】
蒸発材料は、第1の気体流または第2の気体流に対して不溶性であること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜印刷方法。
【請求項12】
薄膜積層装置であって、
インク組成物の蒸発材料を搬送する第1の気体流を送る導管と、
導管と流体連通した複数の微小孔を有し、第1の気体流を、各々が蒸発材料を運ぶ複数の微小な部分流に分ける多孔ノズルと、
インク組成物の蒸発材料を凝縮させて目標印刷範囲に固体の薄膜を形成するように多孔ノズルに対する相対位置が定められた基材と、を有し、
複数の部分流同士の相対位置は、膜厚が均一な形状を有した薄膜が積層されるように定められていること、
を特徴とする薄膜積層装置。
【請求項13】
導管は多孔ノズルと一体化されていること、
を特徴とする請求項12に記載の薄膜形成装置。
【請求項14】
複数の分割流を囲む形で気体カーテンを生成する補助ノズルを更に有すること、
を特徴とする請求項12に記載の薄膜形成装置。
【請求項15】
気体カーテンは、第1の気体流が目標印刷範囲を越えて広がるのを防止すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項16】
補助ノズルは更に、目標印刷範囲のエッジの形成に作用する単一孔ノズルを有すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項17】
多孔ノズルは、複数の部分流を目標印刷範囲に送ることで、厚みの均一な印刷層を形成すること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項18】
多孔ノズルは更に、独立した複数の孔(orifice)を有し、当該複数の孔のうち少なくとも2つは通路(opening)によって連結されていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項19】
導管と複数のノズル孔とは1つの構造体に組み込まれていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項20】
ノズル配列を形成するように配置された複数のノズルを更に有し、当該ノズル配列は、目標印刷範囲の境界に流体カーテンを提供する1以上の補助ノズルで囲まれていること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項21】
部分流は互いに独立していること、
を特徴とする請求項14に記載の薄膜形成装置。
【請求項22】
複数のノズルの互いに対する位置関係は、複数の部分流の少なくとも2つが重複するように決められていること、
を特徴とする請求項21に記載の薄膜形成装置。
【請求項23】
厚みが均一な形状を有する薄膜を印刷する印刷方法であって、
基材上の目標となる印刷範囲を定める処理と、
キャリアガスを含む第1の流れと有機蒸発材料とを印刷範囲に送って基材上に有機材料の層を積層する処理と、
第1の流れを、各々が有機蒸発材料とキャリアガスとを含む複数の微小な部分流に分ける処置と、
印刷層のエッジを目標として、第2の流れを印刷範囲に送出する処理と、を含み、
第1の流れの温度が基材の温度よりも高く、それによって有機蒸発材料を印刷範囲で凝縮させること、
を特徴とする印刷方法。
【請求項24】
第2の流れは第1の流れに対して平行であること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項25】
第2の流れは第1の流れに対して角度を成すこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項26】
第2の流れは第1の流れよりも温度が低いこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項27】
第2の流れは不活性組成物を含むこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項28】
目標となる印刷範囲が第1の流れに対して移動すること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項29】
有機蒸発材料は第1の流れまたは第2の流れに対して不溶性であること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項30】
第2の流れと第1の流れとを同時に目標となる印刷領域に送出することで、目標となる印刷領域へ有機蒸発材料の積層を第2の流れによって制限する処理を更に有すること、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項31】
有機蒸発材料の均一な層が積層されるように、第2の流れを目標となる印刷領域に対して角度を付けて送出する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項23に記載の薄膜印刷方法。
【請求項32】
印刷層に側面エッジを形成する形成装置であって、
所定量の有機材料を含むキャリアガスを複数の微小な部分流の形で放出する第1の放出ノズルと、
目標印刷範囲を有し、所定量の有機材料を受け取って凝縮させることにより縁を有する印刷層が形成される基材と、
目標印刷範囲の少なくとも一部にわたり、印刷層の縁に接して側面エッジを形成する、という状態で流体カーテンを形成する第2の放出ノズルと、を有し、
複数の部分流同士の位置関係と、複数の部分流の流体カーテンに対する相対位置とが、膜厚の均一な形状を有した薄膜が積層されるように定められていること、
を特徴とする形成装置。
【請求項33】
放出ノズルは、気体流を複数の平行な気体流に分割する多孔ノズルであること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項34】
放出ノズルは複数の部分ノズルから成り、各々の部分ノズルは気体流を複数の平行な気体流に分割する多孔ノズルから成ること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項35】
キャリアガスを第1の放出ノズルに送るための導管を更に有すること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項36】
第1の放出ノズルは更に複数の微小孔を有し、当該微小孔の隣接するもの同士は仕切りによって隔てられていること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項37】
第1の放出ノズルが更に複数の微小孔を有すること、そして、第2の放出ノズルが目標印刷範囲を囲む流体カーテンを形成することで、目標印刷範囲に形成される印刷層の面を平らにすること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項38】
第1の放出ノズルが更に複数の微小孔を含むこと、そして、第2の放出ノズルが目標印刷範囲を囲む流体カーテンを形成することで、目標印刷範囲に形成される印刷層に側面エッジを持たせること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項39】
流体カーテンは、キャリアガスよりも流速の速い第2の気体流によって形成されること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項40】
側面エッジは更に、1μmから100μmの間の幅を有する形状を備え、当該幅は5〜30μmの範囲になることが望まれること、
を特徴とする請求項32に記載の形成装置。
【請求項41】
ノズルからの有機材料放出を制御する制御方法であって、
(a)複数の孔を有する放出ノズルに有機材料を含むキャリアガスを供給する処理と、
(b)放出ノズルにおいて、複数の放出流を、各々が所定量の有機材料を含む状態で形成する処理と、
(c)放出ノズルを加熱することで放出ノズルから所定量の有機材料を放出させる処理と、
(d)放出ノズルから熱を除去することで放出ノズルの複数の孔の中で有機材料を凝縮させる処理と、
(e)処理(a)から処理(d)を繰り返して、放出ノズルからの積層の速度を制御する処理と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項42】
処理(c)には更に、放出ノズルを間欠的に加熱する処理が含まれること、
を特徴とする請求項41に記載の制御方法。
【請求項43】
処理(c)には更に、基材上で所定量の有機材料を凝縮させて印刷有機層を形成する処理が含まれること、
を特徴とする請求項41に記載の制御方法。
【請求項44】
印刷層のエッジを囲む流体カーテンを形成することで、印刷後の有機材料の層の形状を加工する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項43に記載の制御方法。
【請求項45】
第2の気体蒸気を印刷層のエッジに向けることで側面エッジを形成する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項43に記載の制御方法。
【請求項46】
印刷層の形状を制御する制御装置であって、
複数の微小孔を有する放出ノズルと、
所定量の有機材料を含むキャリアガスを放出ノズルに送る導管と、
微小孔のうち少なくとも1つを加熱する加熱部と、
加熱部を調整することで、所定量の有機材料を微小孔から送り出すか、または、微小孔内で凝縮させるコントローラと、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項47】
放出ノズルから熱を除去するためのヒートシンクを更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項48】
放出ノズルから熱を除去するための熱除去手段を更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項49】
加熱部は、伝導ヒータ、対流ヒータまたは放射ヒータのいずれか1つであること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項50】
放出される有機材料の一部を遮断する流体流を生成する補助ノズルを更に有すること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項51】
コントローラはメモリ回路と接続されたプロセッサ回路を更に有し、メモリ回路からプロセッサ回路に対して、間欠的に放出ノズルを加熱または冷却するよう指示が送られること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項52】
コントローラはメモリ回路と接続されたプロセッサ回路を更に有し、メモリ回路からプロセッサ回路に対して、間欠的に放出ノズルを加熱させる指示、放出ノズルを冷却させる指示、そして、流体カーテンを生成することで、放出後の所定量の材料を案内させる指示のうち少なくとも1つが送られること、
を特徴とする請求項46に記載の制御装置。
【請求項53】
薄膜印刷方法であって、
蒸発有機材料を含んだキャリアガス流を送出する処理と、
キャリアガス流および蒸発有機材料を、各々が所定量の蒸発有機材料を含んだ複数の微小な分割流に分配する処理と、
基材表面に向けて複数の分割流を送出する処理と、
基材表面で所定量の蒸発有機材料を凝縮させて有機材料の印刷層とする処理と、を含み、
複数の分割流は基材上で重なり、そのため、凝縮によって切れ目のない薄膜が形成されること、
を特徴とする薄膜印刷方法。
【請求項54】
キャリアガスおよび蒸発有機材料を加熱する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項55】
蒸発有機材料が有機材料から成ること、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項56】
蒸発有機材料が有機発光ダイオードから成ること、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項57】
基材上の目標印刷範囲を定める補助気体カーテンを提供する処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項58】
基材を複数の分割流に対して移動させる処理を更に含むこと、
を特徴とする請求項53に記載の薄膜印刷方法。
【請求項59】
薄膜を基材に印刷する印刷装置であって、
蒸発有機材料とキャリアガス流との混合物を送るノズルと、
複数の重なる部分流を供給するように配置され、ノズルから来る混合物を更に送る複数の微小孔と、
重なる複数の部分流を受け取り、凝縮させて薄膜にする基材と、を有し、
複数の微小孔は互いに独立していること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項60】
微小孔のうち少なくとも2つが空洞によって互いに接続されていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項61】
ノズルまたは複数の微小孔のうち少なくとも1つを加熱する加熱部を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項62】
少なくとも1つの微小孔を囲む流体カーテンを形成する補助微小孔を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項63】
ノズルを囲む流体カーテンを形成する複数の補助微小孔を更に有すること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項64】
蒸発有機材料によって有機インクが作られていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【請求項65】
蒸発有機材料とキャリアガスとの混合物は、基材よりも温度が上げられていること、
を特徴とする請求項59に記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−525505(P2012−525505A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508807(P2012−508807)
【出願日】平成22年5月1日(2010.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/033315
【国際公開番号】WO2010/127328
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511264788)カティーヴァ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月1日(2010.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/033315
【国際公開番号】WO2010/127328
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511264788)カティーヴァ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
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