説明

有機電子装置用の溶液加工性パッシベーション層

【課題】有機電子装置用の溶液加工性パッシベーション層を提供する。
【解決手段】本発明は、有機電子(OE:organic electronic)装置用の溶液加工性パッシベーション層と、その様なパッシベーション層を含むOE装置、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子(OE:organic electronic)装置用の溶液加工性パッシベーション層と、その様なパッシベーション層を含むOE装置、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)および薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機トランジスタ、有機ソーラーセルまたは個々のピクセルのために電子回路を駆動することを特徴とするディスプレイ装置のバックプレーンなどの有機電子装置または構成部品の製造の重要な態様は、装置の個々の機能層を提供する際の生産技術である。従来の製造技術は、化学蒸着およびフォトリソグラフィを基礎としている。
【0003】
今日、電子工業における開発は、高額な真空技術を基礎とするプロセスを、溶液加工可能で印刷可能な技術に置き換える方向に進んでいる。この新しい技術により高真空装置の使用を避けると言う利点が与えられ、このため、プロセスのコストが削減され、プロセスを更に容易に拡張可能でき、ディスプレイ装置の入手可能な寸法範囲が広がる。
【0004】
図1に、溶液加工性の技術を使用して構築されたボトムゲート配置構成におけるディスプレイ装置のバックプレーンの単一のトランジスタの主要な構成要素を概略的に示す。典型的には、ガラス、金属またはポリマーから成り得る基板(110)より製造を開始する。基板(110)上に、蒸着によって金属ゲート電極(120)を堆積する。引き続いて、スピンコーティングまたは印刷などの技術によって、誘電体材料(130)の層を堆積する。この層(130)は、誘電体層または有機ゲート絶縁性(OGI:organic gate insulating)層と呼ばれる。次いで、一組のソースおよびドレイン電極(150)(これらも金属から成る。)を堆積する。最後に、ソースドレイン電極(150)および誘電体(130)の表面を覆って、有機半導体(OSC:organic semiconductor)(140)の層を形成する。両矢印で示され「チャネル領域」としても既知のソースおよびドレイン電極の間の領域における、有機半導体層(140)と誘電体層(130)との間の無傷な界面が、装置の機能にとって重要である。ここで、接着性および輪郭が明瞭な界面を維持することが重要な態様である。
【0005】
このバックプレーンの中心部の形成に続いて、通常、バックプレーンおよび他の装置の最上部に追加の機能層を加えて、装置を製造する。このことは、反応性化学物質および溶媒の使用に関与する更なるプロセス工程を必要とし、それは、殆ど場合、OSCまたはOSCおよび誘電体の間の界面を溶解または損傷する。OSCの損傷を避けるための通常のプロセス方略は、OSC層(140)上に保護層(160)(「パッシベーション層」としても既知である。)を堆積することである。現在のところ、OSCをパッシベートするために、SiOまたは金などの化学的耐性を有する金属を化学蒸着によって堆積し、装置を製造している。
【0006】
この手法の不都合は、再び、真空装置が要求され、それに関する制限である。従って、溶液加工性のパッシベーション材料(SPPM:solution processable passivation material)が入手可能であることが望ましい。
【0007】
SPPMは、先行技術において記載されてきた。例えば、米国特許出願公開第2005/0227407号公報(特許文献1)には、2つまたは3つの引き続いて堆積された有機材料の層を含むパッシベーション多層が開示されている。それらの材料の組み合わせは、(a)ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)続いてポリビニルフェノール(PVP:polyvinyl phenol)、または、(b)PVA続いてPVP続いてポリイミド(PI:polyimide)のいずれかである。スピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷およびミクロ接触などの異なる方法によって堆積することが更に開示されている。また、パッシベーション材料のための配合物として、有機オイル系溶液、無機水系溶液または両者の組み合わせでよいことも開示されている。
【0008】
しかしながら、極性および水系溶媒系を使用すると電子装置中のイオン性の不純物に至ることがあり、それによって、装置性能が著しく低下することとなる。
【0009】
国際特許出願公開第2001/008241号パンフレット(特許文献2)には、装置の内部における脆弱な界面、例えば、基板およびゲート電極の間、OSCおよび誘電体の間、OSCおよびソースまたはドレイン電極の間の界面において機能層の間にバリア層を有するOSC装置が記載されている。バリア層は、導電体、絶縁体または半導体でよい。示唆されているバリア層の材料としては、例えば、水溶性PVA、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ペリレン、シリコーンまたはフッ素化された種類などの無機または有機材料が挙げられる。しかしながら、装置の最上部にパッシベーション層を如何にして提供するか、または、その様なパッシベーション層に適切な材料および方法を如何にして選択するかを可能とする開示はない。
【0010】
米国特許出願公開第2007/00776781号公報(特許文献3)には、OSC層およびOGI層が溶液プロセス技術で形成されており、また、OGI層はPVAの水溶液より形成されていてもよいOSCを含むアクティブ装置を生産する方法が開示されている。しかしながら、パッシベーション層は開示されていない。
【0011】
加えて、上で引用した文献において、溶液プロセスによって生じる水溶液からのイオン性の不純物の問題および装置性能に与える不純物の負の影響については議論されておらず、文献には、この問題を解決できる可能性のある方法も示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0227407号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第2001/008241号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/00776781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
溶液加工性パッシベーション材料(SPPM:solution processable passivation material)を使用して、OE装置、特に、ボトムゲート(BG:bottom gate)OFETおよびTFT上にパッシベーション層を調製するのに適する方法および材料を提供することが本発明の目的である。パッシベーション層は容易に加工できるものでなければならず、オン/オフ比および電荷キャリア移動度などの装置性能に影響を与えないか著しくは影響しないものでなければならない。後に使用する際または引き続く装置製造プロセス工程の際に生じる可能のある損傷に対して、特に、無機酸、ヨウ素およびヨウ化物、エッチング液、剥離剤、溶媒、反応性添加剤、熱、湿度、酸素、UV放射などの放射、および、機械的ストレスに対して、パッシベーション層はOE装置を保護しなければならない。調製方法は先行技術の方法の欠点を有していてはならず、時間、コストおよび材料効率の良いOE装置の大規模な生産を行えなければならない。本発明の他の目的は、以下の詳細な記載より、専門家には直ちに明らかである。
【0014】
本発明において特許請求される通りの方法および材料を提供することにより、これらの目的を達成できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、有機電子装置を調製する方法であって、
a)有機半導体層を提供する工程と、
b)パッシベーション材料および1種類以上の溶媒を含む第1の配合物より第1のパッシベーション層を有機半導体層上に堆積し、存在しているのであれば溶媒を除去する工程と、
c)任意工程として、パッシベーション材料および任意成分として1種類以上の溶媒を含む第2の配合物より第2のパッシベーション層を第1のパッシベーション層上に堆積し、存在しているのであれば溶媒を除去する工程とを含み、
ただし、第1の配合物に含有される溶媒は、水またはフッ素化有機溶媒より選択され、および
ただし、第1の配合物が溶媒として水を含む場合、有機半導体上に堆積する前にイオン性の不純物を除去するために第1の配合物を処理する方法に関する。
【0016】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの方法によって得ることができるか得られる有機電子(OE:organic electronic)装置、特に、トップゲートまたはボトムゲート有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)に関する。
【0017】
好ましくは、OE装置は、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)の構成部品、無線識別(RFID:radio frequency identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、電子発光ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板またはパターン、光導電体、光受容体、電子写真装置および乾式電子写真装置から成る群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術による典型的なボトムゲート・ボトムコンタクトOFETを概略的に図示する。
【図2】本発明によるボトムゲート・ボトムコンタクトOFETを例示的および概略的に図示する。
【図3】本発明によるボトムゲート・トップコンタクトOFETを例示的および概略的に図示する。
【図4】例2によって調製されたOFETの変換特性を示す。
【図5】例3によって調製されたOFETの変換特性を示す。
【図6】例4によって調製されたOFETの変換特性を示す。
【図7】例5によって調製されたOFETのトランジスタ移動度を示す。
【図8】例5によって調製されたOFETの変換電流を示す。
【図9】例6によって調製されたOFETのトランジスタ移動度を示す。
【図10】例6によって調製されたOFETの変換電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上および下において、用語「誘電体」および「絶縁性」または「絶縁体」は、上および下において相互交換可能に用いられる。よって、絶縁体層について言う場合は誘電体層も含み、逆もまた同様である。
【0020】
また、トランジスタ装置におけるソース電極およびドレイン電極の間の領域を、「チャネル領域」とも呼ぶ。
【0021】
SPPMの開発は、種々の理由のために容易ではない。一つには、SPPMまたはその配合物を、下層のOSCおよび装置の基本構造(直交)と適合性があるように設計する必要がある。溶液加工性のOSCは、多くの場合、種々の有機溶媒に可溶である。従って、それらの溶媒にOSCを直接曝露することは、避けなければならない。更に、誘電体に対するOSCの接着性は、装置の機能にとって重要な性質である。OSCおよび誘電体は、必然的に異なる表面エネルギーを有する。このことは、OSCを溶解できない溶媒であっても、依然として、OSC/誘電体界面に浸透することがあり、装置の機能を破壊することがあることを意味する。
【0022】
他には、例えば、フォトリソグラフィープロセスによって更に機能層を加工する場合、特に、装置を製造する際の引き続くプロセス工程で適用される材料および条件に対して、化学的耐性に関する種々の機能をSPPMは満たす必要がある。典型的なフォトリソグラフィープロセスとしては、1つ以上の以下のプロセス工程(それらは、下層の化学的および/または物理的な曝露を伴うこともある。)が挙げられる:
−典型的には有機溶媒中における、フォトレジスト樹脂の堆積、
−UV曝露、
−典型的には塩基を使用する、フォトレジストの現像、
−典型的には侵攻性の酸および酸化還元反応を使用する、金属のエッチング、
−典型的には侵攻性の有機溶媒を使用する、フォトレジストの除去。
【0023】
また、パッシベーション材料も、有機溶媒および水溶液の両者に耐えなければならない。この要件に対する矛盾は、典型的には、水系または溶媒系の何れかである溶液よるのと同時に、パッシベーション材料を堆積しなければならないということである。両者の要件を満たすために、パッシベーション材料は、例えば、堆積後に架橋されることもある。
【0024】
もう一つの問題は、引き続いて、パッシベーション材料が広範囲の非常に異なる条件に耐えなければならないということであり、そのために、潜在的に適切な材料の選択が著しく減少する。例えば、塩基および酸に曝露することによって、架橋の逆反応が起きたり、ポリマーの骨格自体における弱い化学結合が攻撃されることがある。結果として、引き続き、ポリマーフィルムが水溶性となったり、有機溶媒に可溶となることがあり、例えば、フォトレジスト剥離剤に対する曝露に耐えられないことがある。
【0025】
パッシベーション材料に対する幾つかの要件、および、パッシベーション層を調製するための材料および方法を提供する場合に解決しなければならない典型的な問題として、以下のリストが挙げられる。
【0026】
−化学的耐性:引き続くプロセス工程の際に適用される任意の化学物質に対して、パッシベーション材料は化学的に耐性でなければならない。これらの化学物質は、水、極性/非極性/プロトン性/非プロトン性溶媒、酸、塩基、イオンおよび他の反応性化学物質を含み得る。
【0027】
−放射、スパッタリング、化学的蒸着、真空、機械的手段による乾燥、ブロー乾燥、温度変化、器具、例えば、インプリンティング機器を持ち上げることによって生じる機械的ストレスに対する物理的耐性。
【0028】
−直交性I:パッシベーション材料は、トランジスタの機能を損なうことなく、OSC上に堆積されなければならない。このことは、SPPMまたはSPPMを担持する配合物がOSCを溶解しないことを必要とする。
【0029】
−直交性II:OSCと誘電体との間の界面は、装置の機能にとって重要である。OSCを溶解しない溶媒であっても、依然として、この界面中に徐々に浸入し、接着性を低下させ、最終的に誘電体よりOSCが持ち上がり、それにより、装置が破壊され得ることが見出された。
【0030】
本発明の発明者らは特定のパッシベーション材料を見出し、これらのパッシベーション材料を塗工する新規で改良された方法を開発した(なお、これらの材料および方法は上述の要件を満たしている)。本発明において記載される通りの特定のプロセスおよびSPPMを使用することによって、上述の問題を解決できることが見出された。
【0031】
パッシベーション層は、好ましくは、SPPM材料を含有し、任意成分として、1種類以上の溶媒、共溶媒および/または界面活性剤を含有する配合物より堆積する。SPPM自体は、好ましくは、材料自体がOSCに対して溶媒として働くことを防ぐために、ポリマーまたはオリゴマーなどの高分子量材料を含む。SPPMは、好ましくは、有機化合物または有機化合物の混合物などの有機材料である。
【0032】
幾つかの溶媒の影響の検討によって、水およびフッ素化有機溶媒は装置の機能を劣化せず、従って、特に、第1のパッシベーション層の堆積のために使用される配合物において好ましいことが示された。
【0033】
よって、本発明によるパッシベーションプロセスにおいて使用される直交配合物は、好ましくは、水系またはフッ素化溶媒系のいずれかである。特に、第2のパッシベーション層を堆積するためにパッシベーションプロセスにおいて使用されるもう一つの好ましい配合物は、任意の溶媒を有さない活性材料から本質的に成り、好ましくは100%であり、ただし、「活性材料」は、堆積および溶媒の除去後にパッシベーション層を形成するパッシベーション材料を意味する。
【0034】
また、最も適合性のある配合物を使用する場合においても、パッシベーション材料の堆積によって装置性能が影響を受けることも見出された。例えば、パッシベーション層を塗工すると、しばしば、トランジスタの移動度の低下が観察されることがある。OSCに対するSPPM配合物の曝露または接触時間を短縮することによって、パッシベートされた装置の性能を向上でき、および/または、パッシベーションによって生じる性能の最終的な損失を低減できる。本発明の一つの好ましい実施形態においては、例えば、高速および高加速度を使用することによって、スピンコーティングの際の接触時間の短縮を達成できる。もう一つの好ましい実施形態においては、溶媒(1種類または多種類)を短時間で取り除くために、堆積後にパッシベーション層に対して追加の熱処理を適用して、OSCに対する接触時間を更に短縮する。
【0035】
幾つかの好ましい実施形態においては、パッシベーション材料の堆積の際に、温度を上昇させるか、または低下させるかのいずれかとする。これにより、パッシベートされた装置の性能を向上でき、および/または、パッシベーションによって生じる性能の最終的な損失を低減できる。
【0036】
更なる研究によれば、特に、水系配合物を使用する場合、たとえ低濃度であってもイオンを排除することが装置の機能を維持するうえで重要であり、従って、それが好ましいことが示された。よって、本発明による好ましいプロセスにおいては、水性配合物であるSPPMを使用する場合、OSC上に堆積する前にイオンを除去するために、例えば、透析によって、SPPMを処理する。これにより、パッシベートされた装置の装置性能が向上し、および/または、パッシベーションによって生じる性能の最終的な損失が低減する。イオン性の不純物を除去するこの処理は、ポリビニルアルコールまたはその誘導体から成るか含むパッシベーション材料を使用する場合、特に好ましいが、また、水溶性の他のパッシベーション材料を使用する場合も適用できる。
【0037】
また、配合物、特に、第1のパッシベーション層を調製するために使用される配合物中におけるポリマーの濃度を下げることによって、SPPM堆積後の装置性能を更に改良できることも見出された。このことは、SPPM層厚の低下につながる。従って、もう一つの好ましい堆積プロセスは以下の工程を含む:低濃度、例えば1〜5%、好ましくは2%のSPPMを有する配合物、好ましくは、水性配合物を、例えば、スピンコーティングによって堆積する。より高濃度、例えば5〜15%、好ましくは10%の同じSPPM材料と、好ましくは、同じ溶媒(1種類または多種類)とを有する配合物、好ましくは、水性配合物の第2の層を直後に堆積する。次いで、基板を加熱することにより、両方の堆積層を硬化する。それにより達成される装置性能は、より高濃度の配合物を直接堆積するよりも優れている。同時に、所望のパッシベーション層の厚みが維持される。
【0038】
本発明によるパッシベーション層は、好ましくは、連続するフィルムである。第1のパッシベーション層の厚みは、好ましくは、20nm〜5μm、非常に好ましくは、20nm〜2μm、最も好ましくは、500nm〜1.5μmである。第2のパッシベーション層の厚みは、好ましくは、1μm〜25μm、非常に好ましくは、5〜2μm、最も好ましくは、10μm〜14μmである。およそ12μmの厚みが、特に適切で好ましいことが見出された。他に明言しない限り、上および下で与えられるフィルム厚の値は、溶媒除去およびアニールまたは硬化工程後の乾燥したフィルムについて表す。好ましくは、パッシベーション層は、OE装置の曝露表面を覆う。
【0039】
本発明によるパッシベーション層は、好ましくは、2つ以上、好ましくは、2つの単層から成る多層である。
【0040】
第1の層(「直交層」)は、好ましくは、装置、特に、OSCの曝露された部分に化学的に直交するパッシベーション材料を含む。また、パッシベーション材料を堆積するために使用される配合物(全ての溶媒を含む。)も、好ましくは、装置の曝露された部分に化学的に直交する。
【0041】
「化学的に直交」とは、パッシベーション材料またはその配合物と接触しても、装置の暴露された部分が化学的および物理的に不変のままであることを意味する。
【0042】
「化学的に不変」とは、装置、例えば、OSCの材料または成分がパッシベーション材料中に拡散(そのため、装置の溶解に至ることもある。)しないこと、および、パッシベーション材料またはSPPM配合物の成分(例えば、OSCに配位することもある、Li、Na、K、Caなどの金属イオン、小型分子、遷移金属、特に、貴金属)が、装置中、特に、OSC層中に拡散しないことを意味する。「物理的に不変」とは、装置が物理的に無傷のままであること、および、誘電体とOSCとの間の界面の変形または貫通がないことを意味する。
【0043】
直交層は、好ましくは、装置、特にOSC層に化学的に直交するポリマー、オリゴマーまたは重合性材料を含む。直交層は、好ましくは、化学的に直交する配合物より堆積される。これらとしては、水性配合物、フッ素化溶媒を含む配合物、および、100%の活性材料より本質的に成る配合物が挙げられる。
【0044】
好ましい実施形態において、直交層は、装置、特にOSC材料に化学的に直交する水溶性のポリマー、オリゴマーまたは重合性材料を含み、上および下に記載される通りの水性配合物より堆積される。
【0045】
もう一つの好ましい実施形態において、直交層は、装置、特にOSC材料に化学的に直交するフッ素化されたポリマー、オリゴマーまたは重合性材料を含み、上および下に記載される通りのフッ素化配合物より堆積される。
【0046】
また、直交層は、上および下に記載される通りの配合物より堆積される活性成分から本質的に100%で成ってもよい。
【0047】
第2の層(「保護層」)は、任意の引き続くプロセス工程または条件よって生じる可能性のある損傷に対して、改良された化学的および物理的耐性および保護を提供する。
【0048】
直交層が提供できるよりも高い化学的耐性が要求される場合に、好ましくは、保護層を塗工する。
【0049】
保護層は、例えば、硬化時に上および下に記載される通りのプロセス化学物質に耐性のポリマー、オリゴマーまたは重合性材料を含む。保護層は、好ましくは、上および下に記載される通りの配合物より堆積される。これらとしては、水性配合物、フッ素化溶媒を含む配合物、100%の活性材料より本質的に成る配合物および極性有機溶媒を含む配合物が挙げられる。
【0050】
パッシベーション後の装置の電荷キャリア移動度は、好ましくは、パッシベーション前の初期値の50%以上、非常に好ましくは、70%以上である。パッシベーション後の装置のオン/オフ比は、好ましくは、パッシベーション前の初期値の50%以上、好ましくは、90%以上である。
【0051】
好ましくは、パッシベーション層は、非常に好ましくは、少なくとも第1のパッシベーション層は、1014Ωcmより大きい抵抗を有する絶縁材料を含み、非常に好ましくは、それより成る。
【0052】
本発明のもう一つの好ましい実施形態において、これらの化学物質または条件に直交パッシベーション層が耐えるために、引き続くプロセスまたは装置製造工程において利用されるプロセス化学物質または条件が充分に適度な場合、第2の保護パッシベーション層は必要ない。この実施形態において、パッシベーション層が直交および保護機能の両者を提供する単層であるように、直交層は同時に保護層として働く。
【0053】
本発明によるパッシベーションプロセスは、任意の引き続くプロセス工程または条件、例えば、製造の際の真空または溶液プロセス工程によって、および、装置の意図された使用の際の任意の潜在的な曝露より生じる可能性のある損傷に対して、半導体装置、特に、OSCを保護するために設計されている。これらのプロセス工程および条件としては、限定することなく、以下が挙げられる:
−真空プロセス工程としては、限定することなく、
−真空、放射および物質の堆積への曝露、
−真空の結果として、装置上、特に表面上のストレス、
−装置上で起こる蒸発、凝縮、昇華または再昇華
−スパッタコーティングまたは化学蒸着、
−例えば、電子ビームまたはUV光による照射、
−例えば、ITOまたは銅、銀、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム、クロム、チタニア、ニッケルなどの金属などの材料の真空蒸着が挙げられる。
【0054】
−器具、例えば、インプリンティング機器を持ち上げることによって生じる機械的ストレス。
【0055】
−温度変化、
−例えば、気流または機械的接触手段による乾燥工程、
−溶液プロセス工程としては、限定することなく、
−フォトレジストの堆積、
−溶媒、例えば、アルコール、脂肪族および芳香族炭化水素、グリコール、ケテン、オレフィン、アルケン、ハロアルケン、ハロ芳香族への曝露、
−塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、アルキル化アンモニウム水酸化物、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ホスファゼンが挙げられる。)によるフォトレジスト層の現像、
−酸および酸化還元試薬(制限することなく、リン酸、硝酸、硝酸第二鉄、塩酸、酢酸、硫酸、ヨウ化物/ヨウ素、臭化水素酸、過塩素酸、クロム酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クエン酸またはギ酸が挙げられる。)などの化学エッチング液、
−例えば、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよび前述の混合物などの化学物質によるフォトレジスト層の剥離、
−水分または腐食などの環境的影響に対する耐性が挙げられる。
【0056】
本発明による具体的な材料およびプロセスに関する幾つかの好ましい実施形態を以下に記載する。
【0057】
好ましくは、SPPM層を配合物より堆積する。配合物は、水系、溶媒系、フッ素化溶媒系でもよく、または、好ましくは、本質的に100%の活性化合物から成ってもよい。SPPMに加えて、配合物は、例えば、樹脂、ポリマー、オリゴマー、モノマー、溶媒、架橋剤、光開始剤、触媒、バイオサイド、球状粒子または板状粒子、例えば、国際特許出願公開第2005/035672号パンフレットに記載される通りの無機フレークより選択される1種類または多種類の追加の成分を含んでよい。
【0058】
最終配合物中のイオン含有量は可能な限り低くなければならない。配合物の導電率は、好ましくは、500μScm−1以下、非常に好ましくは、50μScm−1以下である。
【0059】
配合物中におけるイオン含有量を低減するために、好ましくは、以下の精製方法の1つを使用する:透析、逆浸透、限外濾過、精密濾過、ナノ濾過、または、溶液より小型分子およびイオンを除去する他の既知の方法。
【0060】
水性配合物の場合、これらは、実在溶液(1相)、分散、懸濁、または、任意の他の2相系でもよい。用語「水性」としては、限定することなく、100%水、好ましくは、d.i.(de−ionized:脱イオン)水、アルコールとの水の混合物、ケトンとの水の混合物、グリコールとの水の混合物、エーテルとの水の混合物、が挙げられる。好ましくは、溶媒は80%より多い水から成り、共溶媒は水より揮発性が高い。
【0061】
水性配合物は、好ましくは、パッシベーション材料として、1種類以上の以下の化合物を含む:水溶性樹脂、ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体または重合性材料(任意の前述のものの混合物を含む)。
【0062】
水溶性パッシベーション材料の適切で好ましい例としては、限定することなく、下に列記する材料が挙げられる:
−例えば、クラレ Exceval AQ−4104、クラレ Exceval HR−3010、クラレ Exceval RS−1113、クラレ Exceval RS−1117、クラレ Exceval RS−1713、クラレ Exceval RS−1717、クラレ Exceval RS−2117、クラレ Exceval RS−2817 SBなどの変性ポリ(ビニルアルコール)。
【0063】
−例えば、ISP K−12、ISP K−15、ISP K−30、ISP K−60、ISP K−85、ISP K−90、ISP K−120、ISP ViviPrint 540などのポリビニルピロリドン。
【0064】
−尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ベンゾグアナミンホルムアルデヒドまたはカルバメートなどのアミノ樹脂。例としては、限定することなく、BASF Luwipal 063、BASF Luwipal 066、BASF Luwipal 066、BASF Luwipal 068、BASF Luwipal 069、BASF Luwipal 072、BASF Luwipal 073、BASF Luwipal LR 8955、BASF Luwipal 052、BASF Plastopal BTM、BASF Plastopal BTM、Cytec CYMEL(登録商標)301、Cytec CYMEL 303 LF、Cytec CYMEL 350、Cytec CYMEL 3745、Cytec CYMEL MM−100、Cytec Cymel UM−15、Cytec CYMEL(登録商標)370、Cytec CYMEL 373、Cytec CYMEL 3749、Cytec CYMEL(登録商標)323、Cytec CYMEL 325、Cytec CYMEL 327、Cytec CYMEL 328、Cytec CYMEL 385が挙げられる。
【0065】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoCryl A081W、DSM NeoResins+ NeoCryl A1127、DSM NeoResins+ NeoCryl BT20、DSM NeoResins+ NeoCryl FL711、DSM NeoResins+ NeoCryl BT26、DSM NeoResins+ NeoCryl BT36、DSM NeoResins+ NeoCryl BT24、DSM NeoResins+ NeoCryl BT27などのアクリルコポリマー。
【0066】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoCryl XK62、DSM NeoResins+ NeoCryl XK63、DSM NeoResins+ NeoCryl XK64、DSM NeoResins+ NeoCryl XK85、DSM NeoResins+ NeoCryl XK101、DSM NeoResins+ NeoCryl XK166、DSM NeoResins+ NeoCryl XK176、DSM NeoResins+ NeoCryl A633、DSM NeoResins+ NeoCryl A639、DSM NeoResins+ NeoCryl A662、DSM NeoResins+ NeoCryl A667、DSM NeoResins+ NeoCryl XK12、DSM NeoResins+ NeoCryl XK16、DSM NeoResins+ NeoCryl AF10、DSM NeoResins+ NeoCryl FL375などのアクリル/スチレンコポリマー。
【0067】
−例えば、旭硝子FE 4300、旭硝子FE 4400などの水溶性フルオロポリマー。
【0068】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoRez R2005などのアニオン性ポリエステル。
【0069】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoRad R440、DSM NeoResins+ NeoRad R 441、DSM NeoResins+ NeoRad R447、DSM NeoResins+ NeoRad R448、DSM NeoResins+ NeoRad R450、DSM NeoResins+ Neo Pac E 180、DSM NeoResins+ Neo PacE 106、DSM NeoResins+ Neo Pac E 129、Air Products HB 870、Air Products HB 878などのアクリル/ウレタンコポリマー。
【0070】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoRez R986などのポリカーボネート/ウレタンコポリマー。
【0071】
−例えば、DSM NeoResins+ NeoRez R 1010などのポリウレタン。
【0072】
−ノルボルネンポリマーまたはノルボルネンより誘導されるポリマー。
【0073】
適切で好ましい架橋剤としては、限定することなく、40%グリオキサル水溶液、Bayer Byhydur BH305、BH3100などのポリイソシアネート、CX100 DSM NeoResins+などのアジリジン、Zoldine XL29SE(Dow Chemicals)またはCX300 DSM NeoResins+などのカルボジイミドが挙げられる。
【0074】
適切で好ましい触媒としては、限定することなく、p−トルエンスルホン酸、その異性体およびその誘導体が挙げられる。例としては、Cytec CYCAT 500、Cytec CYCAT 600、Cytec CYCAT 4040、Cytec CYCAT 296−9、Cytec CYCAT XK 350、Cytec CYCAT VXK 6378Nが挙げられる。
【0075】
適切で好ましい光開始剤としては、限定することなく、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノンが挙げられる。
【0076】
適切で好ましいバイオサイドとしては、限定することなく、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン(Aldrich)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(Aldrich)が挙げられる。
【0077】
適切で好ましい球状粒子としては、限定することなく、シリカ粒子および変成シリカ粒子、例えば、Grace Ludox AS−30、Grace Ludox AS−40、Grace Ludox SM−AS、Grace Ludox AM、Grace Ludox HAS、Grace Ludox TMA、Grace Ludox CL、Grace Ludox CL−P、Grace Ludox FM、Grace Ludox SM、Grace Ludox HS−30、Grace Ludox HS−40、Grace Ludox LS、Grace Ludox TM−40、Grace Ludox TM−50、Grace Ludox P X−30、Grace Ludox P T−40、Grace Ludox P W−50)、フッ素化粒子が挙げられる。
【0078】
適切で好ましい板状粒子としては、限定することなく、合成クレイ(Rockwood Laponite)、ベントナイトクレイ(Rockwood Bentolite、Rockwood Claytone)、ケイ酸アルミニウムマグネシウムプレートレット(Rockwood CloisiteおよびNanofil)、スメクタイトクレイ(Rockwood Fulacolor、Rockwood Permont、Fulcat)、マイカおよび変性マイカ(Merck Iriodine)、シリカプレートレット(Merck Colorstream)、酸化アルミニウム/酸化チタン(Merck Xirallic)、合成ホウケイ酸塩フレーク(Merck Miraval)、オキシ塩化ビスマス結晶プレートレット(Merck Biflair)、ガラスフレーク(窓ガラス、Aガラス、Cガラス、Eガラス、ECRガラス、デュランガラス、実験器具ガラス、光学ガラス、石英ガラス)が挙げられる。
【0079】
特に第1のパッシベーション層のためのフッ素化溶媒系配合物は、好ましくは、パッシベーション材料として、1種類以上の以下の化合物を含む:フッ素化炭化水素ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体または重合性材料(任意の前述のものの混合物を含む)。
【0080】
フッ素化炭化水素パッシベーション材料の適切で好ましい例としては、限定することなく、デュポン Teflon AF、旭硝子 Cytop、例えば、Cytop 809(登録商標)、PTFE、FEP、PFA、PCTFE、ETFE、ECTFE、PVDF、ソルベイ Hyflon AD60、ソルベイ Hyflon AD 80、デュポン Teflon AF 1600、デュポン Teflon AF 2400、デュポン Nafionが挙げられる。
【0081】
フッ素化溶媒の適切で好ましい例としては、限定することなく、3M FC40、3M FC43、3M FC70、3M FC72、3M FC77、3M FC84、3M FC87、3M FC3283、3M Novec 7000、3M Novec 7100、3M Novec 7200、3M Novec 7500、Fluorochem ペルフルオロペルヒドロフルオレン、Fluorochem ペルフルオロ(メチルデカリン)、Fluorochem ペルフルオロペルヒドロフェナントレン、Solvay Solvay Galden HT−200、Solvay Solvay Galden HT−230、Solvay Solvay Galden HT−250が挙げられる。
【0082】
第2のパッシベーション層のための配合物は、好ましくは、活性材料から成り、非常に好ましくは、本質的に100%である。その様な配合物は、好ましくは、ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体または重合性材料(任意の前述のものの混合物を含む。)より選択される1種類以上の化合物から成る。加えて、配合物は、架橋剤および触媒より選択される1種類以上の添加剤を含有してもよい。
【0083】
第2のパッシベーション層のための適切で好ましいポリマー、オリゴマーおよび重合性材料としては、以下が挙げられる:
−例えば、1個以上のビニル官能基を有する官能性シリコーンポリマーまたは樹脂。適切で好ましい例としては、限定することなく、DOW CORNING SYL−OFF 7681−030、DOW CORNING SYL−OFF 7010、DOW CORNING SYL−OFF 7040、DOW CORNING SYL−OFF 7044、DOW CORNING SYL−OFF 7395、DOW CORNING SYL−OFF 7600、DOW CORNING SYL−OFF 7610、DOW CORNING SYL−OFF 7671、DOW CORNING SYL−OFF 7673、DOW CORNING SL 400、Wacker CRA 17、Wacker Dehesive 920、Wacker Dehesive 991、Fluoro Chem PDV 0525、Fluoro Chem PDV 1625、Gelest Gel D200、Gelest D300、Gelest P065、Gelest F065、Gelest OE41、Gelest OE42、Gelest OE43、Gelest RG01、Gelest RG02が挙げられる。
【0084】
−例えば、Evonik Silikopon EFなどの、アルコキシシリコーンおよび脂肪族エポキシ官能基の両者を有するポリマー、オリゴマーまたは重合性材料。
【0085】
−例えば、Gelest Zipcone CGなどの、湿気活性化され、低粘度で、溶媒を含まないポリジメチルシロキサン。
【0086】
−例えば、International Speciality Products Gafgardなどのビニルラクタム−ポリアクリレートコポリマーを基礎とするポリマー、オリゴマーまたは重合性材料。
【0087】
適切で好ましい架橋性化合物は、例えば、高いパーセンテージの反応性Si−Hを含有するハイドロジェンポリシロキサン、例えば、DOW SYL−OFF 7682、Wacker V24、または、例えば、Evonik Dynasylan AMEO、Evonik Dynasylan AMMOなどのアミノアルコキシシラン架橋性化合物などの有機反応性シラン架橋剤である。
【0088】
適切で好ましい触媒としては、追加の架橋の熱硬化を助ける高活性白金錯体、例えば、Dow Corning Syl−Off 4000、Wacker OLが挙げられ、これらにおける白金の重量%は、例えば、およそ0.115%である。
【0089】
また、例えば、先の製造およびプロセス工程の結果として、または、配合物またはそれの成分の化学的生産からの残留として(限定することなく、出発材料、合成または精製のために使用された溶媒などが挙げられる。)、意図的には添加されていないが、配合物中に存在することもある揮発性成分または希釈剤を、配合物は含有してもよい。その様な希釈剤または揮発性成分が存在する場合、それらの配合物中における最大濃度は、好ましくは5%以下、非常に好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。
【0090】
本発明のもう一つの好ましい実施形態は、特に、第2のパッシベーション層のためで、アルコール、ケトン、ケトン、エステル、アミド、ラクトン、ラクタム、グリコール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物より選択される1種類以上の極性溶媒を含む有機溶媒系配合物に関する。
【0091】
極性溶媒の適切で好ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソ−プロパノール、イソブタノール、2−ブトキシエタノール、アセトン、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0092】
この実施形態の溶媒系配合物は、好ましくは、極性溶媒に可溶性の樹脂、ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体または重合性材料、または、上記の任意の混合物より選択される1種類以上の化合物から成る。
【0093】
適切で好ましい化合物の例として、以下が挙げられる:
−ノルボルネンポリマーまたはノルボルネンより誘導されるポリマー。
【0094】
−例えば、尿素ホルムアルデヒド、メラミン、ホルムアルデヒドまたはエンゾグアナミンホルムアルデヒドなどのアミノ樹脂。例としては、限定することなく、CYTEC CYMEL 202、CYTEC CYMEL 203、CYTEC CYMEL 254、CYTEC CYMEL 1125、CYTEC CYMEL 1141、CYTEC CYMEL MB−11−B、CYTEC CYMEL MB−14−B、CYTEC CYMEL 683、CYTEC CYMEL 688、CYTEC CYMEL 1158、CYTEC CYMEL MI−12−I、CYTEC CYMEL MI−97−IX、CYTEC CYMEL U−80、CYTEC CYMEL UB−25−BE、CYTEC CYMEL UB−30−B、CYTEC CYMEL U−646、CYTEC CYMEL U−663、CYTEC CYMEL U−665、CYTEC UI−19−I、CYTEC CYMEL UI−19−IE、CYTEC CYMEL UI−20−E、CYTEC CYMEL UI−38−I、CYTEC CYMEL 1170が挙げられる。
【0095】
第1のパッシベーション層のためで、OSC層に非常に良好な直交性を提供する特に好ましいSPPM配合物は、フッ素化ポリマー、例えば、Teflon AF 1600またはTeflon AF 2400(デュポン社製)、または、Cytop−809M(旭硝子社製)と、フッ素化溶媒、例えば、FC43またはFC70(3M社製)などとを含む。第1のパッシベーション層を調製するために、その様な配合物を使用する場合、理想的な条件下において、SPPMの堆積の際に性能の損害がないことが見出された。
【0096】
第1のパッシベーション層のためで、OSC層に非常に良好な直交性を提供する、もう一つの特に好ましいSPPM配合物は、疎水性が変性されたポリビニルアルコールの水溶液、例えば、クラレ社製Exceval HR3010などのエチレン変性ポリ(ビニルアルコール)を含み、ポリビニルアルコールは、好ましくは、イオンを除去するために、堆積前に透析される。堆積後、好ましくは、材料を架橋剤で架橋する。この目的のために、架橋剤、例えば、水性グリオキサルを、例えば、40%の水溶液として、好ましくは、堆積前に配合物に加える。この好ましい配合物はOSCに直交するだけではなく、また、有機溶媒に対して良好な化学的耐性および水に対して適度な化学的耐性を示す。従って、また、この好ましい配合物を、上記の通りの単層の実施形態(直交および保護層の両者として機能する単一のパッシベーション層のみを含有する。)のためにも使用できる。
【0097】
第2のパッシベーション層のためで、非常に良好な化学的耐性を提供する特に好ましいSPPM配合物は、本質的に、シリコン材料を基礎とする100%活性成分、例えば、架橋剤7682および触媒4000と共にDOW SYLOFF 7681−030である。
【0098】
第2のパッシベーション層のためで、良好な化学的耐性を提供する、もう一つの特に好ましいSPPM配合物は、尿素ホルムアルデヒドアミノ樹脂、例えば、Cytec Cymel UI20Eを、適切な溶媒、例えば、アルコール、または、ブタノンおよびブタノールの混合物などのアルコールおよびケトンの混合物中において、または、Cytec Cymel UM−15を水中において含み、および、好ましくは、更に、レオロジー改質剤および湿潤剤より選択される1種類以上の添加物を含む。
【0099】
本発明によるプロセスにおいては、パッシベーション材料を基板に対して配合物として、既知の方法(限定することなく、インクジェット印刷、浸漬コーティング、スピンコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、カーテンコーティング、または、他の従来の印刷、または、印刷およびコーティング、技術が挙げられる。)により塗工できる。
【0100】
第1のパッシベーション層のためのSPPMを堆積後に装置性能を維持するために、OSCとSPPM配合物との間の接触時間および相互作用のレベルを、好ましくは、最小限にしなければならない。接触時間および相互作用レベルを最小限にするための適切で好ましい方法としては、以下が挙げられる。
【0101】
−高い速度において高い加速で高速コーティングすることによって、接触時間を短縮する。直交層のスピンコーティングに適切で好ましい速度は、例えば、1000および6000rpm/sの間の加速度において、500および5000rpmの間である。
【0102】
−配合物の温度を上昇または低下させることによって、相互作用を低減する。フッ素化直交層配合物の堆積には、例えば、およそ5℃の温度、水性配合物のためには、およそ20℃の温度が適切である。
【0103】
−配合物の粘度または濃度を変化させることによって、相互作用を低減する。例えば、水性PVA配合物の場合、5%未満、特には、およそ2%のPVA濃度が好ましい。
【0104】
−低濃度の配合物、続いて、より高い濃度の配合物で、上記の通りコーティングする。
【0105】
堆積後、配合物中に存在する任意の溶媒を、好ましくは、例えば、蒸発によって除去し、例えば、100℃の温度以上まで昇温する、および/または、減圧することによって蒸発を加速できる。
【0106】
本発明のもう一つ好ましい実施形態において、堆積後に、第1および/または第2のパッシベーション層のパッシベーション層材料を、例えば、乾燥、熱硬化または放射線硬化によって架橋する。
【0107】
電子装置が意図されている用途または更なる液体プロセス段階、特に、溶媒曝露、エッチング段階、スピンコーティング、印刷、現像または硬化段階などのフォトリソグラフィープロセスの際に、任意の溶液加工性電子装置の完全性および機能を維持するために、本発明によるパッシベーション層を使用できる。
【0108】
溶液加工性半導体装置またはダイオード、特に、溶液加工性有機半導体装置または有機ダイオードが特に好ましい。特に、トップまたはボトムコンタクトを有するn型またはp型ボトムゲートトランジスタ装置(ただし、特に、半導体が有機材料を含む。)を溶液プロセスによって装置製造するために、パッシベーション層を使用できる。特に好ましい装置は、OFETおよび有機TFTである。
【0109】
図2は、基板(210)上に提供されたゲート電極(220)と、誘電体材料の層(230)(ゲート絶縁体層)と、ソース(S)およびドレイン(D)電極(250)と、OSC材料の層(240)と、OSC層に対して直交する機能を有する第1のパッシベーション層(261)と、OSC層および他の装置層に対して、例えば、更なるプロセス工程または環境の影響によって生じる損傷に対して保護機能を有する第2のパッシベーション層(262)層とを含む本発明によるBGボトムコンタクトOFETの模式図である。
【0110】
図3は、基板(310)上に提供されたゲート電極(320)と、誘電体材料の層(330)(ゲート絶縁体層)と、ソース(S)およびドレイン(D)電極(350)と、OSC材料の層(340)と、OSC層に対して直交する機能を有する第1のパッシベーション層(361)と、OSC層および他の装置層に対して保護機能を有する第2のパッシベーション層(362)層とを含む先行技術による典型的なBGトップコンタクトOFETの模式図である。
【0111】
好ましくは、OSC層およびゲート絶縁体層などのOE装置の他の機能層の堆積は、溶液プロセス技術を使用して行われる。これは、例えば、それぞれ、OSCまたは誘電体材料を含み、および、更に、1種類以上の有機溶媒を含む配合物、好ましくは、溶液を、予め堆積された層の上に塗工し、次いで、溶媒(1種類または多種類)を蒸発させることで行うことができる。好ましい堆積技術としては、限定することなく、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ロール印刷、逆ロール印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧コーティング、ブラシコーティングまたはパッド印刷が挙げられる。非常に好ましい溶液堆積技術は、スピンコーティング、フレキソ印刷およびインクジェット印刷である。
【0112】
非常に好ましくは、1種類以上の有機溶媒中における誘電体材料の溶液を使用して、好ましくは、溶液プロセスによって絶縁体層を堆積する。好ましくは、誘電体材料およびOSC材料、および、それらを堆積するために使用されるそれぞれの溶媒は、互いに化学的に直交している。また、誘電体材料は架橋性であっても、および/または、架橋性成分または添加剤を含有してもよい。
【0113】
適切な溶媒は、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、脂環式環状エーテル、環状エーテル、酢酸処理済み、エステル、ラクトン、ケトン、アミド、環状カーボネートまたは上のものの多成分混合物より選択される。好ましい溶媒の例としては、シクロヘキサノン、メシチレン、キシレン、2−ヘプタノン、トルエン、テトラヒドロフラン、MEK、MAK(2−ヘプタノン)、シクロヘキサノン、4−メチルアニソール、ブチルフェニルエーテルおよびシクロヘキシルベンゼン、非常に好ましくは、MAK、ブチルフェニルエーテルまたはシクロヘキシルベンゼンが挙げられる。
【0114】
それぞれの機能性材料の配合物における総濃度は、好ましくは、0.1〜30重量%、好ましくは、0.1〜5重量%である。特に、高い沸点を有する有機ケトン溶媒が、インクジェットおよびフレキソ印刷用の溶液における使用にとって好都合である。
【0115】
堆積方法としてスピンコーティングを使用する場合、例えば、1000〜2000rpmの間において、例えば、30秒の時間でOSCまたは誘電体材料をスピンし、典型的には、0.5〜1.5μmの間の層厚を有する層を与える。スピンコーティング後、全ての残留する揮発性の溶媒を除去するために、フィルムを高温で加熱してもよい。
【0116】
架橋性誘電体材料を使用する場合、架橋性誘電体材料を、好ましくは、堆積後に、例えば、X線、UVまたは可視光放射などの電子ビームまたは電磁(化学線)放射に曝露する。例えば、50nm〜700nm、好ましくは、200〜450nm、最も好ましくは、300〜400nmの波長を有する化学線放射を使用できる。適切な放射線量は、典型的には、25〜3,000mJ/cmの範囲内である。適切な放射線源としては、水銀、水銀/キセノン、水銀/ハロゲンおよびキセノンランプ、アルゴンまたはキセノンレーザー源、X線、または、電子ビームが挙げられる。化学線放射への曝露によって、曝露された領域において、誘電体材料の架橋性基における架橋反応が誘発される。また、架橋性基の吸収帯の外側の波長を有する光源を使用すること、および、架橋性材料に放射線感受性の光増感剤を加えることも可能である。
【0117】
放射への曝露後、任意工程として、例えば、70℃〜130℃の温度において、例えば、1〜30分、好ましくは、1〜10分の時間で、誘電体材料層をアニールする。誘電体材料の架橋性基を光放射に曝露することで誘発された架橋反応を完結するために、高温におけるアニール工程を使用できる。
【0118】
上および下で記載される全てのプロセス工程は、先行技術に記載されており当業者によく知られている既知の技術および標準的な設備を使用して行うことができる。例えば、光照射工程において、商業的に入手可能なUVランプおよび光マスクを使用でき、アニール工程は、オーブン内またはホットプレート上において行うことができる。
【0119】
本発明によるOE装置において、パッシベーション層以外の機能層の厚みは、好ましくは、1nm(単層の場合)〜10μm、非常に好ましくは、1nm〜1μm、最も好ましくは、5nm〜500nmである。
【0120】
種々の基板、例えば、ガラスまたはプラスチックをOE装置の製造のために使用でき、プラスチック材料が好ましく、例として、アルキド樹脂、アリルエステル類、ベンゾシクロブテン、ブタジエン−スチレン、セルロース、セルロースアセテート、エポキシド、エポキシポリマー類、エチレン−クロロトリフルオロエチレン、エチレン−テトラ−フルオロエチレン、ガラス繊維強化プラスチック、フルオロカーボンポリマー、ヘキサフルオロプロピレンビニリデン−フルオリドコポリマー、高密度ポリエチレン、パリレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムおよびシリコーン類が挙げられる。
【0121】
好ましい基板材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドおよびポリエチレンナフタレートである。基板は、上の材料でコーティングされた任意のプラスチック材料、金属またはガラスでもよい。基板は、好ましくは、良好なパターン鮮明度を保証するために均質でなければならない。また、キャリアの移動度を高めるために、有機半導体の配向を誘発するための押出、延伸、ラビングまたは光化学的技術によって、基板を均一に事前に配向してもよい。
【0122】
電極は、噴霧、浸漬、ウェブまたはスピンコーティングなどの液体コーティング、または、真空堆積または蒸着法で堆積できる。適切な電極材料および堆積方法は、当業者に既知である。適切な電極材料としては、限定することなく、無機または有機材料、または、その2種類の複合体が挙げられる。
【0123】
適切な導電体または電極材料の例としては、ポリアニリン、ポリピロール、PEDOTまたはドープされた共役ポリマー、更に、グラファイトまたはAu、Ag、Cu、Al、Niまたはそれらの混合物などの金属の粒子の分散物またはペースト、ならびに、Cu、Cr、Pt/Pdなどのスパッタコーティングまたは蒸着金属、または、インジウムスズ酸化物(ITO:indium tin oxide)などの金属酸化物が挙げられる。また、有機金属前駆体も液相より堆積して使用できる。
【0124】
OSC材料およびOSC層を塗工する方法は、当業者に既知で文献に記載されている標準的な材料および方法より選択できる。
【0125】
OFET層がOSCであるOFET装置の場合、OSCはn型またはp型OSCのいずれでもよく、それは真空堆積または蒸着によって堆積でき、または、好ましくは、溶液より堆積できる。好ましいOSCは、1×10−5cm−1−1より大きいFET移動度を有する。
【0126】
OSCは、例えば、OFETにおけるアクティブチャネル材料または有機整流ダイオードの層要素として使用される。周囲環境で加工できる液体コーティングによって堆積されるOSCが好ましい。OSCは、好ましくは、任意の液体コーティング技術により、噴霧、浸漬、ウェブ、スピンでコーティングまたは堆積される。また、インクジェット堆積も適切である。OSCを、真空堆積または蒸着することもできる。
【0127】
また、半導体チャネルは、同一のタイプの半導体の2種類以上の複合体でもよい。更に、層をドーピングする効果のために、例えば、p型チャネル材料をn型材料と混合してもよい。また、多層の半導体層も使用できる。例えば、絶縁体との接合部分の近傍において半導体は真性でよく、真性層に隣接して高度にドープされた領域を追加的にコーティングすることもできる。
【0128】
OSCは、モノマー化合物(または、ポリマーまたは巨大分子とは対照的に、「小型分子」)、オリゴマーまたはポリマー、または、小型分子およびポリマーの一方または両方より選択される1種類以上の化合物を含有する混合物、分散物またはブレンドのいずれでもよい。
【0129】
モノマー化合物の場合、OSCは、好ましくは、共役芳香族分子であり、好ましくは、少なくとも3個の芳香族環を含有する。好ましいモノマーOSCは、5員、6員または7員の芳香族環を含有し、より好ましくは、5員または6員の芳香族環を含有する。
【0130】
それぞれの芳香族環は、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSより、好ましくは、N、OまたはSより選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。
【0131】
芳香族環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールまたは置換アリール基、ハロゲン、特にフッ素、シアノ、ニトロ、または、−N(R)(R)で表される置換されていてもよい2級または3級アルキルアミンまたはアリールアミンで置換されていてもよく、ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、アルコキシまたはポリアルコキシ基である。RおよびRがアルキルまたはアリールの場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0132】
環は縮合されていてもよく、または、−C(T)=C(T)−、−C≡C−、−N(R’)−、−N=N−、(R’)=N−、−N=C(R’)−などの共役連結基で連結されていてもよい。TおよびTは、それぞれ独立に、H、Cl、F、−C≡Nまたは低級アルキル基、特に、C1〜4アルキル基を表し;R’は、H、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいアリールを表す。R’がアルキルまたはアリールの場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0133】
更に好ましいOSC化合物としては、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの共役炭化水素ポリマー(これらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む);テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの可溶性置換誘導体などの縮合芳香族炭化水素;p−クオターフェニル(p−4P)、p−クインクエフェニル(p−5P)、p−セクシフェニル(p−6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体などのオリゴ・パラ置換フェニレン;ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、置換されていてもよいポリチエノ[2,3−b]チオフェン、置換されていてもよいポリチエノ[3,2−b]チオフェン、ポリ(3−置換セレノフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンなどの共役へテロ環式ポリマー;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換されたメタロポルフィンまたは金属を含まないポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニンまたはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフッ素化誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4−オキサジアゾール;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b−2’,3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2’,2’−ビベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを含む群より選択される化合物、オリゴマーおよび化合物の誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、上のリストからのもの、および、有機溶媒に可溶性のそれらの誘導体である。
【0134】
特に好ましいOSC化合物は、チオフェン−2,5−ジイル、3−置換チオフェン−2,5−ジイル、置換されていてもよいチエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、置換されていてもよいチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェン−2,5−ジイルまたは3−置換セレノフェン−2,5−ジイルより選択される1種類以上の繰り返し単位を含むポリマーおよびコポリマーである。
【0135】
更に好ましいOSC化合物は、例えば、米国特許第6,690,029号明細書、国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットまたは米国特許第7,385,221号明細書に開示される通りの6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセンまたは5,11−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラジチオフェン(それらは更に置換されていてもよい。)などの、ペンタセン、テトラセンまたはアントラセンなどの置換オリゴアセン、または、それのヘテロ環式誘導体である。
【0136】
本発明のもう一つの好ましい実施形態において、レオロジー特性を調整するために、OSC層は1種類以上の有機バインダー、例えば、国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットに記載される通りで、特に、1,000Hzにおいて3.3以下の低い誘電率εを有する有機バインダーを含む。
【0137】
バインダーは、例えば、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルケイ皮酸、ポリ(4−ビニルビフェニル)またはポリ(4−メチルスチレン)、または、それらのブレンドより選択される。また、バインダーは、例えば、ポリアリールアミン、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリスピロビフルオレン、置換ポリビニレンフェニレン、ポリカルバゾールまたはポリスチルベン、または、それらのコポリマーより選択される半導体バインダーでもよい。本発明において使用するための好ましい誘電体材料(3)は、好ましくは、例えば、旭硝子社より入手可能なCytop(商標)809mなどの、1000Hzにおいて1.5〜3.3の間の低い誘電率を有する材料を含む。
【0138】
文意が他に明瞭に示さない限り、本明細書において使用される場合、本明細書における用語の複数形は単数形を含むものとして解釈されるべきであり、逆もそうである。
【0139】
本発明の先述の実施形態の変形も、本発明の範囲内に収まるままで行うことができることが分かるであろう。本明細書で開示されるそれぞれの態様は、他に明言しない限り、同一、均等または同様な目的として働く代わりの態様によって置き換えてもよい。よって、他に明言しない限り、開示されるそれぞれの態様は、包括的な一連の均等または同様な態様の単なる1つの例である。
【0140】
本明細書で開示される全ての態様は、そのような態様および/または工程の少なくとも幾つかが互いに排他的な組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい態様は、本発明の全ての態様に適用でき、任意の組み合わせで使用してよい。同様に、必須ではない組み合わせにおいて記載される態様を、別々に(組み合わせることなく)使用してもよい。
【0141】
上に記載される態様、特に好ましい実施形態の多くは、それら自体で発明性があり、本発明の実施形態の単なる一部分ではないことが分かるであろう。本願で特許請求される任意の発明に追加するか代わりに、これらの態様に対して、独立した特許保護を求めることがある。
【実施例】
【0142】
ここで、以下の例によって、本発明を更に詳細に記載するが、それは単なる例示であって、本発明の範囲を限定しない。
【0143】
以下のパラメータを使用する:
μは、電荷キャリア移動度であり、
Wは、ドレインおよびソース電極の長さ(また、「チャネル幅」としても既知)であり、
Lは、ドレインおよびソース電極間の距離(また、「チャネル長」としても既知)であり、
は、ソース−ドレイン電流であり、
は、静電容量であり、
は、ゲート電圧(V)であり、
は、ソース−ドレイン電圧であり、
は、閾電圧である。
【0144】
他に明言しない限り、誘電率(ε)または電荷キャリア移動度(μ)などの、上および下で与えられる通りの物理的パラメータの全ての値は、20℃(+/−1℃)の温度について言う。オリゴマーおよびポリマーの分子量は重量平均分子量Mを意味し、ポリスチレン標準に対して適切な溶媒中でGPCによって決定できる。
【0145】
<例1:BG OFET装置における溶媒の影響の検討>
以下の構成要素を含むBG OFET装置を調製した:
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAlのゲート電極、
−スピンコーティング、次いで、254nmのUV照射によって硬化することにより調製されたメルクLisicon(商標)D181(メルク社製)のゲート誘電体層、
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAgのソースおよびドレイン電極、
−スピンコーティングによって電極に塗工されたメルクLisicon(商標)M001(メルク社製)の自己集合単分子層、および
−メシチレン中のOSC化合物2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン(両方の異性体の50/50混合物として)の溶液のインクジェットによって調製されたOSC層。
【0146】
装置を異なる溶媒に3分間曝露した。溶媒への曝露の前後における装置の線形移動度を比較した。
【0147】
ゲート電圧の関数としてソース−ドレイン電流およびトランジスタ移動度を測定することにより、溶媒への曝露の前後における50μmチャネル装置の装置性能を定量化した。Agilent 4155半導体パラメータ解析装置を使用して、20〜−60Vの間でゲート電圧を測定した。
【0148】
オフおよびオン電流の間の比を使用して、装置性能を定量化した。加えて、線形装置移動度μFEを、標準的な薄膜トランジスタの式(1)を使用して導出した。
【0149】
【数1】

式中、Iはドレイン電流であり、Cは静電容量であり、W/Lは装置のアスペクト比であり、Vはソースドレイン電圧であり、Vは閾電圧であり、Vはドレイン−ソース電圧である。結果を下の表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
結果は、水およびフッ素化溶媒のみがOSCに直交しており、OSCの起こりうる溶解による性能の損失を一切起こさない一方で、その他の溶媒はOSCの溶解によって起こる装置の性能の著しい損失に至ることを示している。
【0152】
<例2:最適な化学的耐性のための二重パッシベーション層>
以下の構成要素を含むBG OFET装置を調製した:
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAlのゲート電極、
−スピンコーティング、および、300nmを超えるUV放射によって硬化することにより調製されたメルクLisicon(商標)D206(メルク社製)のゲート誘電体層、
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAgのソースおよびドレイン電極、
−スピンコーティングによって電極に塗工されたメルクLisicon M001(メルク社製)の自己集合単分子層、および
−溶媒としてエトキシベンゼンおよびシクロペンタノール(総配合物重量の5%)中のOSC化合物2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン(両方の異性体の50/50混合物として)の溶液のスピンコーティングによって調製されたOSC層。
【0153】
二重層の手法によって装置をパッシベートした。
【0154】
第1に、スピンコーティング(速度5000rpm、加速度6000rpm/秒、継続時間8秒)によって、フッ素化直交パッシベーション材料(3M FC43 T=278K中の9%旭硝子Cytop−809M)を堆積した。パッシベーション層を100℃において2分間硬化した。
【0155】
引き続き、スピンコーティング(速度1500rpm、加速度1000rpm/秒、継続時間30秒)によって、シリコーン保護パッシベーション(ダウコーニングSyl−Off 7681−030、ダウコーニングSyl−Off 7682、ダウコーニングSyl−Off 4000 比12.5:1.5:0.25)を堆積し、100℃において15分間硬化した。
【0156】
次いで、フォトリソグラフィープロセスの段階をシミュレートするために、装置を以下の条件に曝露した。パッシベートされた装置を、10%HPO4(40℃)、10%HNO(40℃)または55%FN(20℃)のいずれかに3分間曝露した。脱イオン水で洗浄後、N−メチルピロリドン/ジエチレングリコールモノエチルエーテル混合物50:50の50:50混合物(60℃)に装置を3分間曝露した。最後に、装置を洗浄した。
【0157】
実施例1において概説した通り、装置の性能を測定した。表2に、装置に関する線形装置移動度を示す。
【0158】
【表2】

【0159】
任意のエッチング液の選択について、パッシベーション堆積および化学的曝露の前後における移動度の値は著しい相違を一切示していないことが見て取れる。このことは、パッシベーション層が曝露に対して充分な保護を提供していることを示す。
【0160】
図4に、10%硝酸(40℃)に曝露された装置について、トランジスタ移動度をゲート電圧の関数として示す。実線はパッシベーション前の移動度を表し、点線はパッシベーションおよび酸曝露後の移動度を表す。パッシベーションおよび曝露前後の移動度の値は著しい相違を一切示していないことが見て取れる。
【0161】
<例3:水系パッシベーション配合物におけるイオン濃度の影響>
以下の例では、水系パッシベーション材料からイオンを除去することにより、パッシベーション層の堆積後に保持される性能を如何に改良できるか(即ち、パッシベーションプロセスにより生じる性能の損失の低減)を示す。
【0162】
例1において記載した通りに、BG OFET装置を調製した。次いで、透析済みまたは未透析のいずれかの水系直交パッシベーション材料をOSC層上に堆積して、装置をパッシベートした。
【0163】
ポリマー/水の混合物を攪拌しながら水を沸騰させて、100gの水中に10gのポリマーを溶解することにより、エチレン変性ポリ(ビニルアルコール)パッシベーション材料(クラレ Exceval HR3010)の未透析バッチを調製した。
【0164】
上の溶液を透析(セルロースチューブ、Mおよそ14,000)して、同パッシベーション材料の透析済みバッチを調製した。チューブ中の100mlのポリマー溶液を、10mS・cm−1未満の導電率を有する5Lの脱イオン水中に沈水した。2週間の間、毎日、透析水を交換した。
【0165】
スピンコーティング(速度5000rpm、加速度6000rpm/秒、継続時間15秒)によって、未透析または透析済みのパッシベーション材料を、それぞれ、OSC層上に堆積した。パッシベーション層を100℃において15分間硬化した。
【0166】
実施例1において概説した通り、両方の装置の装置性能を測定した。図5に、以下を使用するパッシベーション層を有する装置に関する線形移動度をゲート電圧の関数として示す:
a)透析された材料、パッシベーション前、
b)透析された材料、パッシベーション後、
c)透析されていない材料、パッシベーション前、
d)透析されていない材料、パッシベーション後。
【0167】
パッシベートされていない装置a)およびc)は殆ど同じ値を示し、差異は装置の調製において許容できる偏差に起因する。パッシベートされた装置b)およびd)を比較すると、透析された材料でパッシベートされた装置b)の移動度は対応するパッシベートされていない装置a)の70%に低下しており、一方、透析されていない材料でパッシベートされた装置d)の移動度は対応するパッシベートされていない装置c)の55%に低下していることが見て取れる。
【0168】
このことは、OSC層上に水系パッシベーション材料を直接塗工することにより装置移動度の低下に至ること、および、OSC層上に堆積する前に水性パッシベーション材料を透析してイオン性の不純物を除去する場合、移動度の低下を低減できることを示している。
【0169】
透析の前後において配合物の導電率を測定することにより、変性ポリビニルアルコールExceval HR3010(クラレ社製)の水性配合物におけるイオン濃度を定量化した。導電率は、脱イオン水および塩化カリウム標準溶液と比較した。結果を下の表3に示す。
【0170】
【表3】

【0171】
導電率の測定により、透析された材料は、はるかに低い導電率およびイオン含有量を有することが確認される。ポリマーより不純物が除去された。
【0172】
<例4:架橋パッシベーション層>
例1において記載した通りに、BG OFET装置を調製した。以下の通り、水系直交パッシベーション層で装置をパッシベートした。
【0173】
ポリマー/水の混合物を攪拌しながら水を沸騰させて、100gの水中に10gのポリマーを溶解することにより、エチレン変性ポリ(ビニルアルコール)パッシベーション材料(クラレ Exceval HR3010)の溶液を調製した。
【0174】
攪拌しながら、1mlのグリオキサル(メルク)40%水溶液を10gのポリマー溶液に、ゆっくりと加えた。グリオキサルを添加後、溶液を更に15分攪拌した。泡がなくなるまで溶液を静置し、直ちに使用した。
【0175】
スピンコーティング(速度500rpmにおいて15秒、続いて1500rpmにおいて30秒、加速度1000rpm/秒)によって、材料に堆積した。パッシベーション層を100℃において15分間硬化した。
【0176】
実施例1において概説した通り、装置性能を測定した。図6に、パッシベーション前(実線)およびパッシベーション後(点線)における線形移動度をゲート電圧の関数として示す。装置移動度は、典型的には、グリオキサルを加えないものと同じ性能低下を示している。
【0177】
結果は、この架橋剤は低分子量を有しているにも関わらず、性能を低下させることなく材料を架橋するために使用できることを示している。
【0178】
<例5:低いスピン速度(増加された堆積時間)における直交層の堆積>
以下の構成要素を含むBG OFET装置を調製した:
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAlのゲート電極、
−スピンコーティング、および、300nmを超えるUV放射によって硬化することにより調製されたメルクLisicon(登録商標)D206(メルク社製)のゲート誘電体層、
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAgのソースおよびドレイン電極、
−スピンコーティングによって電極に塗工されたメルクLisicon(登録商標)M001(メルク社製)の自己集合単分子層、および
−溶媒としてエトキシベンゼンおよびシクロペンタノール(総配合物重量の5%)中の半導体化合物2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン(両方の異性体の50/50混合物として)の溶液のスピンコーティングによって調製されたOSC層。
【0179】
二重層の手法によって装置をパッシベートした。
【0180】
第1に、スピンコーティング(速度1500rpm、加速度1000rpm/秒、継続時間8秒)によって、フッ素化直交パッシベーション材料(3M FC43 T=278K中の9%旭硝子Cytop(登録商標)809M)を堆積した。パッシベーション層を100℃において2分間硬化した。
【0181】
実施例1において概説した通り、装置性能を測定した。図7にトランジスタ移動度をゲート電圧の関数として示し、図8に変換電流をゲート電圧の関数として示した。実線はパッシベーション前のデータを表し、点線はパッシベーション後のデータを表す。パッシベーションの前後において、性能の値は著しい差異を一切示さないことが見て取れる。
【0182】
12.5gのダウコーニングSyl−Off 7681−030および1.5gのダウコーニングSyl−Off 7682を混合した。粘度の明らかな増加が一切なかったことより示される通り、室温において30日または80℃において24時間の期間にわたり配合物は硬化しなかった。
【0183】
<例6:保護層におけるx−リンカー濃度の増加による二重層パッシベーション>
この系により、直交層より保護層が層間剥離することを低減することが可能となる。
【0184】
以下の構成要素を含むBG OFET装置を調製した:
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAlのゲート電極、
−スピンコーティング、および、300nmを超えるUV放射によって硬化することにより調製されたメルクLisicon(登録商標)D206(メルク社製)のゲート誘電体層、
−シャドーマスクを介するエバポレーションによって調製されたAgのソースおよびドレイン電極、
−スピンコーティングによって電極に塗工されたメルクLisicon(登録商標)M001(メルク社製)の自己集合単分子層、および
−溶媒としてエトキシベンゼンおよびシクロペンタノール(総配合物重量の5%)中の半導体化合物2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン(両方の異性体の50/50混合物として)の溶液のスピンコーティングによって調製されたOSC層。
【0185】
二重層の手法によって装置をパッシベートした。
【0186】
第1に、スピンコーティング(速度5000rpm、加速度6000rpm/秒、継続時間8秒)によって、フッ素化直交パッシベーション材料(3M FC43 T=278K中の9%旭硝子Cytop(登録商標)809M)を堆積した。パッシベーション層を100℃において2分間硬化した。
【0187】
引き続き、スピンコーティング(速度1500rpm、加速度1000rpm/秒、継続時間30秒)によって、シリコーン保護パッシベーション(ダウコーニングSyl−Off 7681−030、ダウコーニングSyl−Off 7682、ダウコーニングSyl−Off 4000 比12.5:3.0:0.25)を堆積し、100℃において15分間硬化した。
【0188】
実施例1において概説した通り、装置性能を測定した。図9にトランジスタ移動度をゲート電圧の関数として示し、図10に変換電流をゲート電圧の関数として示した。実線はパッシベーション前のデータを表し、点線はパッシベーション後2ヶ月で収集したデータを表す。パッシベーション後および経時により、性能は著しい低下を一切示さないことが見て取れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子装置用のパッシベーション層を調製する方法であって、
a)有機半導体層を提供する工程と、
b)パッシベーション材料および1種類以上の溶媒を含む第1の配合物より第1のパッシベーション層を有機半導体層上に堆積し、溶媒を除去する工程と、
c)任意工程として、パッシベーション材料および任意成分として1種類以上の溶媒を含む第2の配合物より第2のパッシベーション層を第1のパッシベーション層上に堆積し、存在しているのであれば溶媒を除去する工程とを含み、
ただし、第1の配合物に含有される溶媒は、水またはフッ素化有機溶媒より選択され、および
ただし、第1の配合物が溶媒として水を含む場合、有機半導体上に堆積する前にイオン性の不純物を除去するために第1の配合物を処理する方法。
【請求項2】
第1の配合物が溶媒として水を含有し、有機半導体上に堆積する前にイオン性の不純物を除去するために処理することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン性の不純物を除去する処理は、透析、逆浸透、限外濾過、精密濾過またはナノ濾過を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の配合物が、溶媒として水と、水溶性炭化水素ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、重合性化合物または前記の任意の混合物より選択されるパッシベーション材料とを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の配合物が、フッ素化有機溶媒と、フッ素化炭化水素ポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、重合性化合物または前記の任意の混合物より選択されるパッシベーション材料とを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の配合物は溶媒を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の配合物は、シリコーンポリマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、重合性化合物または前記の任意の混合物より選択されるパッシベーション材料を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1および/または第2の配合物のパッシベーション材料が堆積後に架橋されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機半導体層は、置換ペンタセン、置換テトラセン、置換アントラセンまたはそれらのヘテロ環状誘導体より選択される化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる有機電子装置。
【請求項11】
有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)の構成部品、無線識別(RFID:radio frequency identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、電子発光ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板またはパターン、光導電体、光受容体、電子写真装置および乾式電子写真装置から成る群より選択されることを特徴とする請求項10に記載の有機電子装置。
【請求項12】
ボトムゲートOFETであることを特徴とする請求項10または11に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−504186(P2013−504186A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527209(P2012−527209)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004835
【国際公開番号】WO2011/026550
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】