説明

有機ELファインダーを有する撮像装置

【課題】有機EL素子を用いて発光表示する合焦マークの視認性を向上する。
【解決手段】ファインダー内に形成された発光表示部16の撮影視野領域22は、被写体からの反射光が透過され、被写体観察のために使用する。撮影視野領域22の測距点F1〜F9それぞれに対応する位置に合焦マークを発光するための発光部25を設ける。各発光部25は、それぞれ有機発光材料によって発光し、独立制御可能な第1及び第2の発光要素25A、25Bから成る。被写体輝度が閾値以上である場合、第1及び第2の発光要素25A、25Bが発光する。被写体輝度が閾値より小さい場合、第1の発光要素25Aのみ発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子が光路内に配置されたファインダー装置を有し、合焦ポイントをファインダー内に表示させることができる撮像装置、特に一眼レフカメラ等のカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフカメラにおいて、ペンタプリズムと焦点板の間または焦点板とクイックリターンミラーの間の被写体結像位置近傍に有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)が配置されることが知られている。この有機EL素子は発光させられることにより、被写体観察が可能な撮影視野領域においてフォーカスエリアの指標等の各種情報マークを発光表示することができる。また、撮影視野領域の外側に設けられた情報表示部も発光させ、その発光により各種情報を表示することができる。撮影者は、例えばフォーカスエリアの指標の発光表示により、測距エリアを把握することができるとともに、情報表示部の発光により、シャッター速度、フィルム感度、ストロボ発光の有無等の撮影条件も確認することができる(特許文献1、2等参照)。
【0003】
また、一眼レフカメラは、通常、多分割オートフォーカス(多点測距)機能を備えており、ファインダーを通して観察される被写体像に対して複数の測距点が設定され、各測距点に対して焦点調整することが可能である。オートフォーカスモードの場合、AF駆動によって1つの測距ポイントが合焦すると、その位置に合焦を示す合焦マークがスーパーインポーズ表示される。
【0004】
スーパーインポーズ表示のために、ファインダー装置内には投光装置としてLEDが設けられると共に、各合焦マークに合わせて複数のマイクロプリズムが形成されたスクリーン板が、ピント板に重なるように配置されている。合焦マークに従い、照明光がスクリーン板に投光すると、マイクロプリズムにおいて照明光が反射し、接眼レンズ方向へ導かれる。その結果、ピント板に結像された被写体像に重なるように、照明光が測距点として観察される。
【特許文献1】特開2000−221578号公報
【特許文献2】特許第3539251号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合焦マークを発光表示するLEDの発光輝度は、従来、被写体像の明るさに応じて変更させられることがある。しかし、LEDの発光輝度には限界があるため、例えば被写体像が明るい場合等、撮影状況によっては、合焦ポイントの表示が見えにくいことがある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みて成されたものであり、合焦マークの視認性が向上された撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、対物光学系を通る光から被写体像を形成するファインダー光学系と、被写体像を観察するためのファインダー窓と、光の光路を横断するように配置され、有機発光材料を含む有機EL層から構成される発光部を発光させて表示を行い、その発光表示を被写体像に重ねてファインダー窓から観察させる発光表示部と、被写体像の被写体輝度を測定する輝度測定手段と、被写体像に対して設定された複数の測距点の各測距点に対して合焦させることができる合焦手段とを備える撮像装置である。そして、発光部は、各測距点に応じた位置にそれぞれ配置され、各測距点の位置を発光表示可能であって、複数の測距点のうち、1つの測距点に対して合焦したとき、発光部がその1つの測距点を発光表示させると共に、測定された被写体輝度に応じて、発光表示される発光部の発光面積が調整されることを特徴とする。
【0008】
測定された被写体輝度が相対的に大きいとき、測距点の位置を発光表示する発光部の発光面積を相対的に大きくすることが好ましく、また測定された被写体輝度に応じて、発光表示される発光部の発光強度が調整されたほうが良い。
【0009】
各測距点の各位置に配置される発光部は、隣り合うように配置された、各々が独立に発光制御可能な複数の発光要素を含み、測定された被写体輝度が大きいほど、多くの発光要素が発光させられ、発光面積が大きくされることが好ましい。
【0010】
すなわち、各発光部は、各々が独立に発光制御可能な第1及び第2の発光要素を少なくとも含み、測定された輝度が所定の輝度以上である場合、前記合焦した測距点に対応して配置された第1及び第2の発光要素を発光させると共に、測定された輝度が所定の輝度より小さい場合、第1の発光要素を発光させる一方、第2の発光要素を発光させない。また、第2の発光要素の発光面積が、第1の発光要素の発光面積より大きいとき、測定された被写体輝度が所定の輝度以上である場合、合焦した測距点に対応して配置された第2の発光要素を発光させると共に、測定された輝度が所定の輝度より小さい場合、第1の発光要素を発光させても良い。
【0011】
なお、第2の発光要素は、例えば第1の発光要素を内部に配置するようにC字形又はコの字形に形成されても良い。
【0012】
また、各測距点に応じた各位置に配置される発光部は、2以上の色の光を発しても良い。この場合、例えば、発光部は、異なる発光色を発する第1及び第2の発光要素を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る別の撮像装置は、被写体像の色を測定する測色手段を備え、複数の測距点のうち、1つの測距点に対して合焦したとき、発光部がその1つの測距点を発光表示させると共に、測定された被写体像の色に応じて、発光表示される発光部の発光色が調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、有機EL素子によって合焦ポイントの発光表示を行うと共に、発光表示を行う発光部の発光面積を、被写体輝度に応じて変化させ、又は発光部の発光色を、被写体像の色に応じて変化させるので、合焦ポイントの視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1、2は、本実施形態が適用された一眼レフカメラのファインダー装置を示す。なお、以下の説明においては、本発明が一眼レフカメラに適用された場合を説明するが、本発明は、コンパクトカメラ等、その他の撮像装置に適用することも可能である。
【0016】
本実施形態のファインダー装置10は、ファインダー光学系と、発光表示部16と、ファインダー窓17と、測光用レンズ18と、測光用受光素子19とを備える。ファインダー光学系は、対物レンズ(対物光学系)11と、クイックリターンミラー12と、ピント板13と、ペンタプリズム14と、接眼レンズ15とを備える。
【0017】
被写体で反射された反射光は、対物レンズ11を通り、クイックリターンミラー12で反射され、ピント板13に導かれ、ピント板13で被写体像として結像される。ピント板13で結像された被写体像は、ペンタプリズム14、接眼レンズ15を介してファインダー窓17に入射され、これにより被写体像が観察される。クイックリターンミラー12はレリーズスイッチ(不図示)が押されると、光路上から退避させられ、対物レンズ11によって導かれた反射光は、CCDやフィルム等に導かれ、これらを露光する。
【0018】
本実施形態に係る一眼レフカメラは多点測距機能を備えており、ピント板13で結像された被写体像に対して9点の測距点F1〜F9(図3参照)が設定されている。対物レンズ11が焦点調整させられると、各測距点F1〜F9のうち、1つの測距点における被写体像が合焦させられる。
【0019】
測光用受光素子19は、各測光用レンズ18、ペンタプリズム14を介してピント板13で結像された光の一部を取り込み、ファインダー窓17から観察される被写体像の被写体輝度を検出する。
【0020】
発光表示部16は、有機EL素子から構成され、ピント板13と、ペンタプリズム14の間で、被写体からの光が通過する光路に交差する横断領域上に配置される。すなわち、発光表示部16は被写体結像位置近傍に配設される。発光表示部16から発せられた光も、ペンタプリズム14、接眼レンズ15を介してファインダー窓17に入射され、これにより発光表示部16の発光表示が被写体像に重ねられてファインダー窓17で観察される。なお、発光表示部16は、クイックリターンミラー12とピント板13の間に配置することも可能である。
【0021】
発光表示部16の模式的な平面図を図3に示す。発光表示部16は有機EL素子から構成され、矩形のファインダー視野領域21と、ファインダー視野領域21の上下左右の外側を囲み、枠状に形成されたファインダー視野外領域19とを備える。ファインダー視野領域21は、ファインダー窓17(図1参照)から視認可能であるが、ファインダー視野外領域19はファインダー窓17から視認することができない領域である。
【0022】
矩形のファインダー視野領域21は、被写体を観察するための矩形の撮影視野領域22と、撮影視野領域22の上下左右の外側を囲み、四角枠状に形成された情報表示領域23とを備える。撮影視野領域22は被写体からの反射光が入射・透過される領域であって、被写体観察に使用される。情報表示領域23は、後述する遮光マスク50によって被写体からファインダー窓17(図1参照)に入射される光が遮光される領域であるが、必要に応じて各種情報が発光表示されても良い。本実施形態では、発光部は撮影視野領域22にしか設けられず情報表示領域23には設けられないが、各種情報が発光表示される場合、情報表示領域23にも発光部が設けられる。なお、各種情報としては、撮影に利用される露光値、撮影モードやストロボ発光の有無を示す各種シンボルマークである。
【0023】
測距点F1〜F9は、ピント板13に結像される被写体像に対して3×3で並べられて設定され、ファインダー窓17から観察すると、図3に示すように撮影視野領域22の中央領域に並べられている。発光表示部16の撮影視野領域22において、各測距点F1〜F9に対応する位置にはそれぞれ発光部25が形成される。発光部25は、測距点を挟むように、互いに離間して隣り合う第1の発光要素25A及び第2の発光要素25Bを備える。第1及び第2の発光要素25A、25Bは例えば矩形にパターニングされて形成され、そのパターニングされた形状に応じた光を発することができる。
【0024】
各発光要素25A、25Bそれぞれには、ファインダー視野外領域19から延ばされた陽極線31、及び陰極線32が接続され、これら各発光要素には、陽極線31、及び陰極線32を介して電圧が印加される。発光要素25A、25Bには、それぞれ独立に陽極線31、及び陰極線32が接続される。なお図3においては、陽極線31、陰極線32は、左上隅の発光部25に接続されるもののみを表示したが、他の発光部25にも同様に陽極線31、陰極線32が接続される。また、図3においては、陽極線31、陰極線32は、撮影視野領域22内のみにおいて表示した。
【0025】
図4は、本実施形態に係る発光表示部16の断面図である。発光表示部16は、透明基板41と、透明基板41に対向して設けられる封止部材42とを備える。封止部材42は、透明基板41上の周辺部に積層された接着剤層37を介して互いに接着され、透明基板41及び封止部材42の間には密閉空間39が形成される。なお、発光表示部16において、透明基板41側が接眼側、封止部材42側が対物側となる。
【0026】
撮影視野領域22における透明基板41の上には、発光要素25A、25Bを形成するために、複数の陽極34が配置される。そして、各陽極34の上には、それぞれ有機EL層33が積層され、各有機EL層33上には、さらに陰極35が積層される。陽極34、陰極35は、各発光要素25A、25Bに対して設けられ、各発光要素25A,25Bは、それぞれ独立に発光制御可能である。
【0027】
陽極34、陽極線31、及び陰極線32は、透明電極であって、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ATO(antimony doped tindioxide)、ZnO(zinc oxide)等の透明導電性金属化合物から形成される。有機EL層33は、陽極側から順に例えば正孔輸送材料で構成される正孔輸送層、有機発光材料で構成される有機発光層、電子輸送材料で構成される電子輸送層等が積層されて構成され、例えば赤色の光を発するように構成される。陰極35も透過性のある透明電極であって、例えばITO、ATO、ZnO等の透明導電性金属化合物のみから形成されても良いが、好ましくは以下に示すように2層構造で形成される。
【0028】
すなわち、陰極35は、有機EL層の上に積層される第1の陰極層と、第1の陰極層の上に積層される第2の陰極層とによって構成されることが好ましい。第1の陰極層は、例えばアルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、チタニウム、イットリウム、リチウム、及びこれらの合金等の非透過性の陰極金属材料から形成されるとともに、第2の陰極層は、ITO、ATO、ZnO等の透明導電性金属化合物から形成される。第1の陰極層は非透過性物質によって構成されるが、その層厚が例えば100Å以下に設定されることにより、実質的に透過性を有し、これにより陰極35は透明電極に構成される。なお、この場合、第1の陰極層と各有機EL層の間には、電子注入層が積層されていたほうが良い。電子注入層は例えばLiFによって形成され、その厚さは例えば7Åである。なお、第2の陰極層の厚さは例えば2000Åである。
【0029】
陰極35がITO等の透明導電性金属化合物のみから形成されると仕事関数が高くなり電子の注入性が低下する。しかし、陰極35が第1及び第2の陰極層から構成され、かつ第1の陰極層に上述したような低仕事関数の陰極金属材料が用いられる場合、電子の注入性の低下を最小限に抑制することができる。
【0030】
以上のような構成により、第1及び第2の発光要素25A、25Bは透過性を有する透明部材として形成されるので、各発光要素25A、25Bは、発光したときのみ測距点F1〜F9を発光表示する合焦マークとして視認される。なお、隣り合う第1及び第2の発光要素25A、25Bの離間距離は、例えば2〜10μmと小さいので、観察者はこれら2つの発光要素25A、25Bの発光表示を1つの合焦マークとして視認することができる。
【0031】
ただし、陰極35は非透明電極で構成され、上述した非透過性の陰極金属材料から形成されても良い。この場合、各発光要素25A、25Bは、被写体からファインダー窓17に入射される光を遮光するので、非発光時でも遮光表示部として表示される。このような構成によれば、陰極35は仕事関数が低くなり電子の注入性に優れるため、発光要素25A、26Bの発光効率は、陰極35が透明電極である場合より向上させられる。
【0032】
発光表示部16の接眼側には遮光マスク50が設けられる。遮光マスク50は透明基板41側から見ると四角枠状に形成され、遮光マスク50が重ねられた領域が四角枠状の情報表示領域23として形成される。
【0033】
図5は、本実施形態に係る一眼レフカメラのブロック図である。図6は本実施形態のカメラの撮影動作を示すフローチャートである。なお、本実施形態の一眼レフカメラ全体の撮影動作はCPU52で制御される。
【0034】
図6に示すように、本ルーチンは電源スイッチ61の入力により開始される。電源スイッチ61入力後、ステップS100でCPU52等が初期設定され、次いでステップS110で電源スイッチ61の入力の有無が検知され、電源スイッチ61が再度入力されると、本ルーチンは終了する。電源スイッチ61が入力さていない場合、次いでステップS115で各種スイッチ60の入力に対するスイッチ処理が行われる。
【0035】
ステップS120では、レリーズボタン(不図示)が半押しされることにより、第1のスイッチ62が入力されたか否かが判定され、第1のスイッチ62が入力されるとステップS125に進む。一方、第1のスイッチ62が入力されない場合、ルーチンはステップS110に戻る。
【0036】
ステップS125では測光用受光素子19(図1,2参照)を含むAE回路53によって、被写体輝度が検出され、その被写体輝度のデータはCPU52に一旦格納される。また、その被写体輝度に基づき、シャッタースピード、絞り値が算出される。ステップS130では測距点が手動選択されているか否かが検出される。すなわち、測距点F1〜F9(図3参照)のうち、1つの測距点が、ステップS115において予め手動選択されているか否かが判定される。測距点が手動選択されていると判定された場合、ステップS132では、AF回路54によって、その選択されている1つの測距点が合焦ポイントとして設定され、ステップS135ではその合焦ポイントに位置する被写体像の被写体距離が測定される。そして、ステップS140ではレンズ駆動回路56によって、その被写体距離に応じた合焦位置に、対物レンズ11が移動させられ、合焦ポイントにおける被写体像が合焦させられる。
【0037】
一方、ステップS130で測距点が手動選択されていないと判定された場合、ステップS145で、AF回路54によって、各測距点F1〜F9(図2参照)における被写体の被写体距離が測定され、ステップS147では、最も被写体距離が短い測距点が合焦ポイントして設定される。そして、ステップS150では、レンズ駆動回路56によって、合焦ポイントの被写体距離に応じた合焦位置に、対物レンズ11が移動させられ、その合焦ポイントにおける被写体像が合焦させられる。
【0038】
合焦動作が終了するとステップS155において、ステップS125で測定された被写体輝度が予め設定されていた閾値以上か否かが判定される。閾値以上であれば、ステップS160では、合焦ポイントとして設定された測距点に対応する第1及び第2の発光要素25A、25Bの両方が発光表示される。一方、閾値より小さいと判定されると、ステップS165において、合焦ポイントとして設定された測距点に対応する第1の発光要素25Aのみが発光表示される。
【0039】
ステップS170では、レリーズボタンが全押しされ、第2のスイッチ63が入力されたか否かが判定され、ステップS170で第2のスイッチ63が入力されていないと判定された場合、ステップS175に進む。ステップS175では、第1のスイッチ62の入力の有無が判定される。そして、第1のスイッチ62が入力されて半押し状態が継続されていると判定された場合、ステップS170に戻る。
【0040】
一方、第1のスイッチ62の入力がなく、半押し状態が継続されていないと判定された場合、ステップS185に進み、発光させられている発光要素25A(又は25A及び25Bの両方)の発光が停止させられ、ステップS110に戻る。
【0041】
一方、ステップS170で第2のスイッチ63が入力されたと判定された場合、ステップS180において、被写体の撮影が行われる。すなわち、クイックリターンミラー12(図1参照)が光路から退避され、CCD又はフィルムの露光が行われ、静止画像が得られる。なおこのとき、シャッタースピード、絞り値はステップS125で算出されたものが使用されると共に、被写体輝度が所定値より低い場合、ストロボ回路55によってストロボが発光される。撮影動作が終了するとステップS185において、発光させられている発光要素25A(又は25A及び25Bの両方)の発光が停止させられ、ステップS110に戻る。
【0042】
以上のように本実施形態では、被写体輝度が相対的に高い場合、第1及び第2の発光要素25A、25Bの両方が発光させられ、測距点を示す発光部25の発光面積が相対的に大きくされるので、合焦マークの視認性が高められ、合焦ポイントを確認しやすくなる。一方、被写体輝度が相対的に低い場合、第1の発光要素25Aのみしか発光させられず、発光部の発光面積が相対的に小さくなるので、合焦マークの発光表示が被写体観察を妨げることもない。
【0043】
また、本実施形態においては、発光面積を相対的に大きくするためには、発光させる発光要素の数を調整させるだけで良いので、単純な制御で合焦マークの視認性を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態のルーチンでは、第1及び第2の発光要素25A,25Bに入力される電流値は一定であり、発光強度は一定であったが、発光強度も被写体輝度に応じて調整されても良い。例えば、ステップS155で被写体輝度が閾値以上であると判定されると、発光要素25A、25Bの両方が発光させられると共に、各発光要素25A、25Bに入力される電流値が相対的に高くされ、発光要素25A、25Bの発光強度も相対的に高くされる。一方、被写体輝度が閾値より小さいと判定されると、発光要素25Aのみが発光させられると共に、発光要素25Aに入力される電流値が相対的に低くされ、発光強度が相対的に低くされる。また、発光部の発光強度は、例えば被写体輝度が大きくなるのに従って、比例して大きくされても良い。
【0045】
なお、本実施形態において、各測距点F1〜F9の位置に対応して設けられる発光部25は、隣り合うように配置された第1及び第2の発光要素25A、25Bから成るが、勿論3つ以上の発光要素を備えていても良い。例えば、横方向に2つ、縦方向に2つ並べられ、4つの発光要素から形成されても良い。各発光部の発光要素の数を大きくすることにより、発光面積をより精緻に調整させることができる。
【0046】
図7は、本実施形態に係る測光方法の変形例を説明するための図であって、ピント板13に結像される被写体像を示す。なお、図7において点線は、ファインダー窓17から被写体像Mを見たときに、第1及び第2の発光要素25A、25Bの発光表示が、被写体像Mに重ねられる位置を示す。
【0047】
本変形例では、被写体輝度の測定は、被写体像Mを複数の領域に分割して行う分割測光方式で行われる。ピント板13に結像される被写体像Mには、上述したように測距点F1〜F9が設定されると共に、各測距点F1〜F9に対応して、各測距点が略中心位置に配置されるように、分割測光のための分割エリアM1〜M9が設定されている。
【0048】
前述した図6を用いて説明すると、本変形例では、ステップS125において、各分割エリアM1〜M9の被写体輝度が測定される。そして、ステップS155では、合焦ポイントに設定された測距点に対応する分割エリアの被写体輝度と、閾値とが比較され、発光要素25A、25Bが発光制御される(図6参照)。すなわち、本変形例では、合焦マークの表示場所に応じた分割エリアの被写体輝度が閾値以上であれば、第1及び第2の発光要素25A、25Bが発光され、発光部25の発光面積が相対的に大きくされる。一方、閾値より小さければ、第1の発光要素25Aのみが発光され、発光部25の発光面積が相対的に小さくされる。
【0049】
図8は本発明の第2の実施形態に係る発光部の構成を示す。なお、図8においては、測距点F1に対応する位置に設けられた発光部25を例示的に示す。第2の実施形態において、発光部25は、測距点上に重ねられて設けられ略矩形の第1の発光要素25Aと、コの字形に形成され、そのコの字内部に第1の発光要素25Aを配置させる第2の発光要素25Bとを備える。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、被写体輝度が閾値以上であれば、第1及び第2の発光要素25A、25Bが発光表示されると共に、被写体輝度が閾値より小さければ第1の発光要素25Aのみが発光表示させられるように構成される。
【0050】
本実施形態では、第1の発光要素25Aのみが発光したときも、第1及び第2の発光要素25A,25Bの両方が発光したときも、その発光領域の中心は測距点Fに略一致するので、発光部25よる発光表示が合焦マークとして違和感なく視認される。また、第2の発光要素25Bはコの字形に形成され、開口部25Uが設けられたことにより、陽極線31、及び陰極線32は開口部25Uを介して第1の発光要素25Aに接続されるので、配線構造も簡易である。なお、各発光部25は、略円形から成る第1の発光要素と、C字形に形成され、C字内部に第1の発光要素を配置させる第2の発光要素とを備えていてもよい。
【0051】
また、第2の実施形態においては、発光部25は、相対的に発光面積の大きな第1の発光要素25Aと、相対的に発光面積の小さい第2の発光要素25Bとから構成されるので、被写体輝度が閾値より低い場合、第1の発光要素25Aのみを発光させると共に、被写体輝度が閾値以上である場合、第2の発光要素25Bのみを発光させる構成にしても良い。このように制御しても、発光部25の発光面積を被写体輝度に応じて調整することができる。
【0052】
図9は本発明の第3の実施形態に係る発光部の構成を示す。図9においても、測距点F1に対応する位置に設けられた発光部25を例示的に示す。本実施形態では、発光部25は、略矩形に形成された第1の発光要素25Aと、コの字形に形成された第2及び第3の発光要素25B、25Cとを備える。そして、第2及び第3の発光要素25B、25Cは互いに開口部25Uが向き合うように離間して配置され、それら内部に矩形の領域を形成し、その内部の領域に第1の発光要素25Aが配置される。本実施形態においては、被写体輝度が閾値以上であれば、第1〜第3の発光要素25A〜25Cが発光表示されると共に、被写体輝度が閾値より小さければ第1の発光要素25Aのみが発光表示させられるように構成される。勿論、被写体輝度が閾値以上であれば、第2〜第3の発光要素25B〜25Cが発光表示されると共に、被写体輝度が閾値より小さければ第1の発光要素25Aのみが発光表示させられるように構成しても良い。
【0053】
以上の構成によれば、本実施形態においても第2の実施形態と同様に合焦マークを観察者に違和感を与えることなく表示することができる。また、第1の発光要素25Aに接続される陽極線31、及び陰極線32は、第2及び第3の発光要素25B、25Cの間に配置させることができ、配線構造も容易になる。
【0054】
次いで、本発明に係る第4の実施形態について、図10のフローチャートを用いて説明する。なお、第4の実施形態の撮影動作ルーチンにおいて、第1の実施形態のルーチンと異なる点は、ステップS125及びステップS155〜S165であるので、その点のみ説明する。
【0055】
第1の実施形態では、各発光部25を形成する第1及び第2の発光要素25A、25Bは同一色の発光色(例えば赤色)を発するが、第4の実施形態では、第1及び第2の発光要素25A、25Bは異なる色の光を発し、例えば第1の発光要素25Aが赤色、第2の発光要素25Bが青色を発する。
【0056】
第4の実施形態に係る測光受光素子19は測色機能も有しており、ステップS125において測光と共に被写体像の測色も行われ、被写体像のカラーバランスも測定される。そして、ステップS155〜S165では、被写体像のカラーバランス(色)に応じて第1及び第2の発光要素25A、25Bの発光が制御される。すなわち、ステップS155で、被写体像のカラーバランスが予め保存されていた標準カラーバランスと比較され、被写体像が青、又は緑色であると検出された場合には、ステップS160で第1の発光要素25Aが発光され、合焦マークが赤色に発光表示される。一方、被写体像が赤色であると判定された場合には、ステップS165で第2の発光要素25Aが発光され、合焦マークが青色に発光表示される。
【0057】
本実施形態では、合焦マークを、被写体像と異なる色で発光表示させることができるので、合焦マークを被写体像と差別化して表示させることができる。なお、本実施形態では、例えば被写体輝度が閾値以上である場合等には、第1及び第2の発光要素25A、25Bの両方を発光させるような構成にしても良い。
【0058】
また、発光部25は赤色、緑色、青色の光を発する第1乃至第3の発光要素を備え、各発光部25がフルカラー表示可能なようにしても良い。この場合、各発光部25は、第1〜第3の発光要素のうち、1又は2つの発光要素を発光させ、検出された被写体像の色の反対色の光を発するように構成されることが好ましい。
【0059】
さらに、本実施形態でも勿論第1の実施形態と同様に、被写体像の測色は、被写体像M(図7参照)を複数の領域に分割して行う分割測色方式で行われても良い。すなわち、合焦マークの表示場所に応じた分割エリアM1〜M9の色(カラーバランス)に応じて、合焦ポイントの発光色が変更させられても良い。例えば、分割エリアM5に配置された測距点F5が合焦ポイントとして設定された場合、分割エリアM5の色に応じて、測距点F5に対応する発光部25が所定の色で発光表示されても良い。
【0060】
なお、第4の実施形態においても、第1又は第2の発光要素25A、25Bは、被写体輝度に応じて、入力される電流値が制御され、発光強度も調整されても良い。
【0061】
また、例えば発光部25は、第1〜第4の発光要素から構成され、第1及び第2の発光要素が赤色を発し、第3及び第4の発光要素が青色を発するように構成されても良い。このような構成によれば、被写体輝度に応じて発光部の発光面積が変更できると共に、被写体像の色に応じて発光部の発光色も変更させることができる。例えば、被写体像の色が青、又は緑色で、かつ被写体輝度が閾値以上であれば、第1及び第2の発光要素の両方を発光させる一方、被写体像の色が青、又は緑色で、かつ被写体輝度が閾値より小さければ、第1の発光要素のみを発光させる。また、例えば、被写体像の色が赤色で、かつ被写体輝度が閾値以上であれば、第3及び第4の発光要素の両方を発光させる一方、被写体像の色が赤色で、かつ被写体輝度が閾値より小さければ、第3の発光要素のみを発光させる。
【0062】
なお、第1〜第3の実施形態においては、第1及び第2の発光要素25A、25Bは、単一の発光色(例えば赤色)しか発することができなかったが、発光色が変化させられるようにしても良い。例えば、有機発光層が複数の発光層が積層されて構成されると共に、各発光層が異なる材料で形成されることにより、各発光要素25A、25Bに印加される電圧が変更されると、発光要素25A、25Bの発光色が変更させられる構成にしても良い。また、例えば電界の印加する方向を変化させることによって、発光色が変化されるようにしても良い。この場合、例えば、有機EL層は陽極側から正孔輸送層、有機発光層、ホールブロッキング層、有機発光層、電子輸送層等が積層されて構成される。また、正孔輸送層、有機発光層との間にさらにホールブロッキング層を備えていても良い。さらには、正孔輸送層、ホールブロッキング層、有機発光層、電子ブロッキング層、有機発光層、電子輸送層等が積層されて構成されても良い。このような構成によれば、各発光部25は、第1及び第2の発光要素25A,25Bのみを有することにより、被写体輝度に応じて発光面積を調整できると共に、被写体像の色に応じて発光色を変化させることができる。
【0063】
なお、第1乃至第4の実施形態の発光表示部16には、撮影視野領域22略全体にマトリックス状に陽極と陰極が配置されると共に、透明陽極と透明陰極の間に有機発光層が配置され、撮影視野領域22の略全体にフルカラー画像が発光表示できる発光部が設けられ、その発光部の一部を用いて合焦マークが表示される構成にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カメラのファインダー装置の平面図である。
【図2】カメラのファインダー装置の上面図である。
【図3】第1の実施形態に係る発光表示部の平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る発光表示部の断面図である。
【図5】カメラの回路構成図を示す。
【図6】第1の実施形態係るカメラの撮影ルーチンにおけるフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の変形例を説明するための被写体像の模式的な平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る発光部の拡大平面図である。
【図9】第3の実施形態に係る発光部の拡大平面図である。
【図10】第4の実施形態係るカメラの撮影ルーチンにおけるフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10 ファインダー装置
16 発光表示部
17 ファインダー窓
18 測光用レンズ
19 測光用受光素子
21 ファインダー視野領域
22 撮影視野領域
23 情報表示領域
25 発光部
25A 第1の発光要素
25B 第2の発光要素
41 透明基板
42 封止部材
F1〜F9 測距点
M1〜M9 分割エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物光学系を通る光から被写体像を形成するファインダー光学系と、
前記被写体像を観察するためのファインダー窓と、
前記光の光路を横断するように配置され、有機発光材料を含む有機EL層から構成される発光部を発光させて表示を行い、その発光表示を前記被写体像に重ねて前記ファインダー窓から観察させる発光表示部と、
前記被写体像の被写体輝度を測定する輝度測定手段と、
前記被写体像に対して設定された複数の測距点の各測距点に対して合焦させることができる合焦手段とを備える撮像装置において、
前記発光部は、前記各測距点に応じた位置にそれぞれ配置され、各測距点の位置を発光表示可能であって、
前記複数の測距点のうち、1つの測距点に対して合焦したとき、前記発光部がその1つの測距点を発光表示させると共に、前記測定された被写体輝度に応じて、前記発光表示される発光部の発光面積が調整されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記測定された被写体輝度に応じて、前記発光部の発光強度が調整されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記被写体輝度が相対的に大きいとき、前記測距点の位置を発光表示する発光部の発光面積を相対的に大きくすることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記各測距点の各位置に配置される発光部は、隣り合うように配置された、各々独立に発光制御可能な複数の発光要素を含み、前記測定された被写体輝度が大きいほど、多くの発光要素が発光させられ、発光面積が大きくされることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記各測距点に応じた各位置に配置される発光部は、各々が独立に発光制御可能な第1及び第2の発光要素を含み、
前記第2の発光要素は、前記第1の発光要素を内部に配置するようにC字形又はコの字形に形成されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記各測距点に応じた各位置に配置される発光部は、各々が独立に発光制御可能な第1及び第2の発光要素を含み、
前記測定された輝度が所定の輝度以上である場合、前記合焦した測距点に対応して配置された前記第1及び第2の発光要素を発光させると共に、
前記測定された輝度が所定の輝度より小さい場合、前記第1の発光要素を発光させる一方、前記第2の発光要素を発光させないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記各測距点に応じた各位置に配置される発光部は、各々が独立に発光制御可能な第1及び第2の発光要素を含み、
前記第2の発光要素の発光面積が、前記第1の発光要素の発光面積より大きく、
前記測定された被写体輝度が所定の輝度以上である場合、前記合焦した測距点に対応して配置された前記第2の発光要素を発光させると共に、
前記測定された輝度が所定の輝度より小さい場合、前記第1の発光要素を発光させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記各測距点に応じた各位置に配置される発光部は、2以上の色の光を発することができることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
対物光学系を通る光から被写体像を形成するファインダー光学系と、
前記被写体像を観察するためのファインダー窓と、
前記光の光路を横断するように配置され、有機発光材料を含む有機EL層から構成される発光部を発光させて表示を行い、その発光表示を前記被写体像に重ねて前記ファインダー窓から観察させる発光表示部と、
前記被写体像の色を測定する測色手段と、
前記被写体像に対して設定された複数の測距点の各測距点に対して合焦させることができる合焦手段とを備える撮像装置において、
前記発光部は、前記各測距点に応じた位置にそれぞれ配置され、各測距点の位置を発光表示可能であって、
前記複数の測距点のうち、1つの測距点に対して合焦したとき、前記発光部がその1つの測距点を発光表示させると共に、前記測定された被写体像の色に応じて、前記発光表示される発光部の発光色が調整されることを特徴とする撮像装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−40149(P2008−40149A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214511(P2006−214511)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】