説明

有機EL表示装置

【課題】有機EL表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を適切に実現する。
【解決手段】可視光を遮光する金属よりなる背面電極23と光取り出し側に位置する透明電極21との間に有機EL材料よりなる有機層22を挟んでなる有機EL発光部20を有する文字盤10を備え、有機EL発光部20の光取り出し側に、背面電極23による光反射を防止する反射防止膜12を備えてなる有機EL表示装置において、背面電極23は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体にまで、透明電極21とは絶縁膜25を介して設けられており、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体にて、背面電極23よりも光取り出し側には、透明電極21と同一材料よりなる透明ダミー膜26が背面電極23と重なるように設けられており、透明ダミー膜26と透明電極21とは絶縁膜25を介して電気的に分断されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料よりなる有機層を含む有機EL発光部を有する文字盤と、有機EL発光部の光取り出し側に設けられた反射防止膜とを備える有機EL表示装置に関し、たとえば、自動車などのコンビネーションメータなどに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえば自動車のコンビネーションメータとしては、LEDを光源として用いたものが一般的である。このものは、文字盤+拡散板+光源(LED)という積層構成を採用したものである。ここで、拡散板は、点光源である光源の光を均一な面照明とするためのもので、一般に白色樹脂からなる。
【0003】
また、文字盤は、拡散板の光取り出し側(視認者側)に設けられるもので、数字や文字や目盛などの表示意匠を印刷形成したものである。そして、この文字盤は、一般に白色樹脂を意匠部として、発光部(透光部)以外を黒色印刷により遮光することで意匠を表現するものである。
【0004】
この場合、単純には、非発光時のブラックフェース化は別体のスモーク板が無いと実現することができなかった。これは、スモーク板が無いと、非発光時には文字盤における意匠や他の表示デバイスとの境界が目視されてしまうためである。また、逆にスモーク板があると、文字盤上の指針などが見えなくなってしまう。
【0005】
一方で、このLEDを用いた従来のメータに対して、文字盤の照明をLEDに代えて有機ELとしたもの(特許文献1参照)や、文字盤を複数個の無機分散型のELプレートで形成するもの(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4414706号公報
【特許文献2】実開昭55−134335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記特許文献1、2のようにELを用いたメータでは、以下のような問題がある。まず、上記特許文献1の場合、文字盤の照明として有機ELを使用するが、文字盤については従来のものと推定されるため、上述したように、非発光時には文字盤における意匠や他の表示デバイスとの境界が目視されてしまう。
【0008】
また、上記特許文献2の場合、複数個の分割されたEL表示部を組み合わせたものであるが、非発光時には、これら各EL表示部間のつなぎ目が目視されてしまう。
【0009】
本発明者は、有機ELを発光部に用いた表示装置の開発を進めており、その場合にも、非発光時における文字などの意匠や各部のつなぎ目を見えないようにすること、いわゆる表示のシームレス化が求められる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、有機EL表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を適切に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者は、有機EL表示装置について検討した、有機EL表示装置は、透明基板(11)に、可視光を遮光する金属よりなる背面電極(23)と光取り出し側に位置する透明な透明電極(21)との間に有機EL材料よりなる有機層(22)を挟んでなる有機EL発光部(20)を設けてなる文字盤(10)を備え、有機EL発光部(20)の光取り出し側に、背面電極(23)による光反射を防止する反射防止膜(12)を備えてなるものとした。以下、この構成を前提構成という。
【0012】
そして、このような前提構成を有する有機EL表示装置において、請求項1に記載の発明では、背面電極(23)は、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体にまで、透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して設けられていることを第1の特徴としている。
【0013】
それによれば、透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して、背面電極(23)を文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体にまで広げて設けているから、意匠部となる有機EL発光部(20)とその外側の部位とで、同程度の反射特性を有するものとなり、非発光時において、有機EL発光部(20)とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本発明によれば、有機ELを用いた表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を実現することができる。
【0014】
さらに、請求項1に記載の発明では、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体において、背面電極(23)よりも光取り出し側には、透明電極(21)と同一材料よりなる透明な透明ダミー膜(26)が、背面電極(23)と重なるように設けられており、この透明ダミー膜(26)と透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して電気的に分断されていることを第2の特徴としている。
【0015】
それによれば、有機EL発光部(20)の外側の部位は、金属の背面電極(23)と透明ダミー膜(26)との積層構成を有するものとなるから、金属の背面電極(23)と透明電極(21)との積層構成を有する有機EL発光部(20)に対して、より類似した構成となり、当該両部位の反射特性が同等に近くなるため、好ましい。
【0016】
具体的には、透明基板(11)と透明電極(21)とは、屈折率が0.2〜0.3程度異なる。たとえば透明基板(11)は屈折率が1.5程度のガラスよりなり、透明電極(21)は屈折率が1.8程度のITOよりなる。そのため、透明基板(11)と透明電極(21)との界面での反射および屈折により見栄えが変わる。
【0017】
そこで、有機EL発光部(20)の外側においても、透明基板(11)に直接、絶縁膜(25)や背面電極(23)が配置される場合に比べて、有機EL発光部(20)の透明電極(21)と同様の透明ダミー膜(26)が配置された方が、見栄えが有機EL発光部(20)と同程度になる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の有機EL表示装置において、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側には、透明電極(21)を引き出すための金属よりなる引き出し電極(24)が、背面電極(23)とは電気的に絶縁されつつ透明電極(21)と電気的に接続されて設けられており、背面電極(23)のうち引き出し電極(24)と対向する部位と、背面電極(23)のうち引き出し電極(24)とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることを特徴とする。
【0019】
それによれば、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側にまで広げられた背面電極(23)が、不良等によって仮に引き出し電極(24)と導通してしまったとしても、有機EL発光部(20)における背面電極(23)への影響は無くなる。
【0020】
請求項3に記載の発明においては、上記前提構成を有する有機EL表示装置において、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体に、背面電極(23)および透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して、金属よりなる金属ダミー膜(28)が設けられていることを第1の特徴としている。
【0021】
それによれば、透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して、金属ダミー膜(27)を、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体に広げて設けているから、意匠部となる有機EL発光部(20)とその外側の部位とで、同程度の反射特性を有するものとなり、非発光時において、有機EL発光部(20)とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本発明によれば、有機ELを用いた表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を実現することができる。
【0022】
さらに、請求項3に記載の発明では、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側の全体において、金属ダミー膜(28)よりも光取り出し側には、透明電極(21)と同一材料よりなる透明な透明ダミー膜(26)が、金属ダミー膜(28)と重なるように設けられており、透明ダミー膜(26)と透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して電気的に分断されていることを第2の特徴としている。
【0023】
それによれば、有機EL発光部(20)の外側の部位は、金属ダミー膜(28)と透明ダミー膜(26)との積層構成を有するものとなるから、金属の背面電極(23)と透明電極(21)との積層構成を有する有機EL発光部(20)に対して、より類似した構成となり、当該両部位の反射特性が同等に近くなるため、好ましい。
【0024】
この場合も、具体的には、透明基板(11)と透明電極(21)とは、屈折率が0.2〜0.3程度異なる。たとえば透明基板(11)は屈折率が1.5程度のガラスよりなり、透明電極(21)は屈折率が1.8程度のITOよりなる。そのため、透明基板(11)と透明電極(21)との界面での反射および屈折により見栄えが変わる。そこで、有機EL発光部(20)の外側においても、透明基板(11)に直接、絶縁膜(25)や背面電極(23)が配置される場合に比べて、有機EL発光部(20)の透明電極(21)と同様の透明ダミー膜(26)が配置された方が、見栄えが有機EL発光部(20)と同程度になる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の有機EL表示装置において、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側には、透明電極(21)を引き出すための金属よりなる引き出し電極(24)が、背面電極(23)とは電気的に絶縁されつつ透明電極(21)と電気的に接続されて設けられており、背面電極(23)のうち引き出し電極(24)と対向する部位と、背面電極(23)のうち引き出し電極(24)とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることを特徴とする。
【0026】
それによれば、文字盤(10)のうち有機EL発光部(20)の外側にまで広げられた背面電極(23)が、不良等によって仮に引き出し電極(24)と導通してしまったとしても、有機EL発光部(20)における背面電極(23)への影響は無くなる。
【0027】
また、この場合も、引き出し電極(24)上の背面電極(23)と有機EL発光部(20)の背面電極(23)とが電気的に独立することで、絶縁膜(25)を介した容量成分を引き出し電極(24)が持たなくなるため、たとえばパルス駆動する場合の波形の立ち上がりのなまりが防止可能となる。
【0028】
さらに、検討を進め、請求項5に記載の発明を創出した。請求項5に記載の発明では、可視光を遮光する金属よりなる背面電極(23)と光取り出し側に位置する透明な透明電極(21)との間に有機EL材料よりなる有機層(22)を挟んでなる有機EL発光部(20)を有する文字盤(10)を備え、文字盤(10)の光取り出し側に、文字盤(10)よりも平面サイズが大きく、有機EL発光部(20)からの光を減衰して透過する減衰透過板(30)が設けられており、減衰透過板(30)には、有機EL発光部(20)からの光を照明として表示される意匠部(33)が設けられており、減衰透過板(30)のうち文字盤(10)の外郭からその外側に位置する部位には、可視光を遮光する遮光膜(32)が設けられており、さらに、遮光膜(32)は、減衰透過板(30)のうち有機EL発光部(20)から意匠部(33)を表示するための光が当てられる部位にも、設けられており、意匠部(33)は、遮光膜(32)を当該意匠部(33)の形状にくりぬいた部分として構成されていることを特徴としている。
【0029】
それによれば、有機EL発光部(20)の非発光時には、遮光膜(32)の存在により、文字盤(10a、10b)と当該文字盤の外側の部位とで同程度の黒表示を実現できるから、文字盤(10a、10b)とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。
【0030】
また、当該非発光時には、遮光膜(32)の存在により、意匠部(33)と意匠部(33)周りの部位とで同程度の黒表示を実現できるから、意匠部(33)とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本発明によれば、有機ELを用いた表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を実現することができる。
【0031】
ここで、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の有機EL表示装置においては、文字盤(10)として、第1の文字盤(10a)と第2の文字盤(10b)とを備えており、これら第1の文字盤(10a)および第2の文字盤(10b)は、共通の減衰透過板(30)に対して平面的に隙間を有して配置されて取り付けられており、減衰透過板(30)のうち文字盤(10)の外郭からその外側に設けられた遮光膜(32)として、遮光膜(32)は、減衰透過板(30)のうち第1の文字盤(10a)と第2の文字盤(10b)との隙間に位置しているものとしてもよい。
【0032】
それによれば、隣り合う2個の文字盤(10a、10b)の隙間に遮光膜(33)を設けることで、2個の文字盤(10a、10b)のつなぎ目が見えにくくなる。
【0033】
また、請求項7に記載の発明では、請求項5または6に記載の有機EL表示装置において、減衰透過板(30)には、光取り出し側に意匠部(33)が位置するとともに光取り出し側とは反対側の背面には有機EL発光部(20)が存在しない部位があり、当該部位における減衰透過板(30)の背面には、有機EL発光部(20)からの光を拡散して当該部位に位置する意匠部(33)に導光する光拡散部(35)が設けられていることを特徴としている。
【0034】
それによれば、減衰透過板(30)の背面からの光の反射が、有機EL発光部(20)が存在する部分の背面電極(23)などの反射に近くなり、見栄えが統一される。
【0035】
また、請求項8に記載の発明では、請求項5ないし7のいずれか1つに記載の有機EL表示装置において、有機EL発光部(20)として、意匠部(33)の照明用とされる照明用発光部(20c)と、直接表示を行う直接表示用発光部(20a、20b)とが設けられており、減衰透過板(30)のうち照明用発光部(20c)と正対する面には、当該照明用発光部(20c)からの光を意匠部(33)に向けて拡散する光拡散用の凹部(34)が設けられていることを特徴としている。
【0036】
それによれば、減衰透過板(30)と照明用発光部(20c)との間に、別体の拡散板を介在させることなく、減衰透過板(30)と照明用発光部(20c)とを接触させて配置できるので、減衰透過板(30)と直接表示用発光部(20a、20b)とについても直接接触させて配置することができ、減衰透過板(30)と直接表示用発光部(20a、20b)との間に、隙間を生じることが無い。これによって、表面反射による2重映りが防止可能となる。また、凹部(34)の形状を任意に選ぶことによって、照明用発光部(20c)の大きさや照度分布を調整可能である。
【0037】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略構成を示す分解図である。
【図2】文字盤の正面構成を示す概略平面図である。
【図3】文字盤における有機EL発光部の詳細構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)中のA−A概略断面図である。
【図4】図3(a)中のB−B概略断面図である。
【図5】第1実施形態の他の例としての文字盤における有機EL発光部の詳細構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの文字盤における有機EL発光部の詳細構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)中のC−C概略断面図である。
【図7】図6(a)中のC’−C’概略断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略平面図である。
【図9】(a)は図8中のD−D概略断面図、(b)は図8中のE−E概略断面図である。
【図10】第3実施形態において減衰透過板の拡散領域に設けられる拡散用の凹部の詳細構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略平面図である。
【図12】(a)は図11中のF−F概略断面図、(b)は図11中のG−G概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略構成を示す分解図である。この表示メータは、大きくは、車両のダッシュボード側から運転手側に向かって、ロアケース1、回路基板2、モータ3、モータ補強板3a、文字盤10、指針4、カバー5、ガラス6が順次配置され、これらが一体に組み付けられてなるものである。
【0041】
ここで、ロアケース1、モータ3、モータ補強板3a、指針4、カバー5、ガラス6は、従来のLED光源のメータなどと同様のものである。また、文字盤10は、後述するように、反射防止膜12が取り付けられた状態のものであるが、図1では反射防止膜12は省略してある。
【0042】
ロアケース1は、樹脂などよりなり、車両に取り付けられるものである。指針4は、速度などを示すためにもので、文字盤10に対して回動可能に取り付けられ、モータ3により駆動されるものである。モータ3は、モータ補強板3aにより文字盤10に取り付けられるようになっている。
【0043】
そして、このロアケース1とカバー5との間に、図1に示されるように、回路基板2や文字盤10などが収納され、板状のガラス6で蓋をされたものとして、表示メータは構成される。ここで、カバー5は、樹脂などよりなり、ロアケース1にネジや嵌合などにより固定される。そして、文字盤10は、透明なガラス6を介して運転手などの視認者に目視されるようになっている。
【0044】
図2は、文字盤10の正面構成を示す概略平面図であり、運転手側の面構成を示している。また、図3は、この文字盤10における有機EL発光部20の詳細構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)中のA−A概略断面図である。
【0045】
文字盤10は、ガラスや樹脂などよりなる透明な透明基板11(図3(b)参照)をベースとしている。そして、透明基板11の視認者側の面、つまり上記ガラス6側に位置する光取り出し側の面には、反射防止膜12が貼り付けられている。この反射防止膜12は、一般的なスモーク板や円偏光板よりなるもので、透明基板11の視認者側の全域に配置されている。
【0046】
そして、図3に示されるように、透明基板11の光取り出し面とは反対側の面、つまり上記ロアケース1側に位置する面には、有機EL発光部20が設けられている。有機EL発光部20は、透明基板11側から透明電極21、有機層22、背面電極23が順次積層されたものである。
【0047】
なお、図3(a)では、意匠形状(ここでは数字の「1」)に区画された透明電極21およびその外周の同一平面に位置する各部24〜26と、透明電極21に重なる背面電極23、いわゆる電極部分が分解状態で示されており、当該両電極21、23間の有機層22は透明電極21と一致して重なるため、省略されている。
【0048】
ここで、背面電極23は、可視光を遮光するAlなどの金属よりなる。また、光取り出し側に位置する透明電極21は、ITO(インジウム・チン・オキサイド)などの透明電極材料よりなる。また、有機層22は、一般的な有機EL材料よりなるもので、両電極21、23に挟まれて、これら両電極21、23間に電圧印加することで発光する発光層である。
【0049】
そして、有機層22からの光は、透明電極21、透明基板11、反射防止膜12を通して視認者側に取りだされ、上記カバー6を通して視認者に目視される。ここで、反射防止膜12は、背面電極23による光反射を防止するものであり、一般的な有機EL素子にも設けられるものである。なお、反射防止膜12は、透明基板11とは別体のものでなくてもよく、透明基板11として、たとえば光減衰効果を持つスモーク板を用い、透明基板11自体を反射防止膜として構成してもよい。
【0050】
ここで、図2に示されるように、文字盤10には、この有機EL発光部20は複数個平面的に設けられている。具体的には、車両の警報表示マークや方向指示矢印、あるいは速度や回転数などを示す数字および目盛等といった意匠を示すセグメント表示型の有機EL発光部20aと、燃費などの数値を示すためのマルチ表示を行うドットマトリクス表示型の有機EL発光部20bとが設けられている。
【0051】
なお、図3は、上記セグメント表示型の有機EL発光部20aのうち図2中の数字「1」を示すものについて示したものである。このように、セグメントタイプにおいては、透明電極21および有機層22の平面形状が表示すべき意匠の平面形状にパターニングされている。また、ドットマトリクス型の有機EL発光部20bでは、透明電極21、有機層22、背面電極23が積層された画素が格子状のドットとされたものである。
【0052】
ここで、上記指針4およびモータ3は、図2に示されるように、文字盤10に設けられた穴13つまり透明基板11および反射防止膜12を貫通する穴13を介して、文字盤10に取り付けられている。また、文字盤10には、モータ3と導通するモータ端子14が設けられている。
【0053】
また、図2に示されるように、文字盤10には、フレキシブル配線基板などの接続部材15を介して回路基板2が電気的に接続されている。回路基板2は、各有機EL発光部20やモータ3を駆動するためのものである。
【0054】
そして、文字盤10には、各有機EL発光部20およびモータ端子14と接続部材15とをつなぐ配線状の引き出し電極24が設けられている。この引き出し電極24は、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面にて、当該各部14、20と導通した状態で設けられたAlなどの金属膜よりなる。
【0055】
引き出し電極24は、上記各部14、20から文字盤10における接続部材15との接続部近傍まで引き回されている。また、文字盤10には、セグメント表示型の有機EL発光部20aを駆動するセグメント用IC16、ドットマトリクス表示型の有機EL発光部20bを駆動するマルチ用IC17が設けられている。
【0056】
そして、これら各部14、16,17、20は、引き出し電極24により接続部材15まで引き回され、接続されている。これにより、各有機EL発光部20やモータ3、各IC16、17は、引き出し電極24から接続部材15を介して回路基板2と電気的に接続されている。
【0057】
ここで、有機EL発光部20と接続された引き出し電極24については、図3に示されるように、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側にて、透明電極21に接続されている。この場合、引き出し電極24は、透明電極21の引き出しとともに透明電極21の補助電極として低抵抗化を図る役割も担っている。
【0058】
このような文字盤10において、本実施形態では、さらに、図3に示されるように、各有機EL発光部20について、背面電極23は、文字盤10を構成する透明基板11のうち有機EL発光部20の外側の全体にまで広がって設けられている。つまり、背面電極23は、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面の全体に、設けられている。
【0059】
なお、図3(b)に示される例では、有機層22は、透明電極21と同様の平面形状にパターニング成膜されたものとなっているが、この有機層22も背面電極23と同様に、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面の全体に、設けられていてもよい。その場合も、電圧印加されるのは、透明電極21と背面電極23との重なり合う部位に位置する有機層22であるから、発光表示に問題はない。
【0060】
ここで、背面電極23のうち有機EL発光部20の外側の部位、すなわち、有機層22を挟んで透明電極21と対向している部位以外の部位では、背面電極23と透明電極21との間にはポリイミド膜などよりなる電気絶縁性の絶縁膜25が介在している。この絶縁膜25により、透明電極21と背面電極23とは電気的に分断されている。
【0061】
また、図3に示される例では、背面電極23よりも光取り出し側には、透明電極21と同一材料(たとえばITOなど)よりなる透明な透明ダミー膜26が、背面電極23と重なるように設けられている。そして、この透明ダミー膜26と透明電極21とは絶縁膜25を介して電気的に分断されている。
【0062】
この透明ダミー膜26は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体、すなわち、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面において、有機EL発光部20およびその周囲の絶縁膜25を除く部位の全域に設けられている。
【0063】
そして、このような図3の背面電極23および透明ダミー膜26の構成は、ドットマトリクス型の有機EL発光部20bにおいても、上記画素ごとに同様に採用されている。なお、このような文字盤10は、一般的な有機ELの成膜技術等を用いて容易に形成されるものである。
【0064】
このように、本実施形態の有機EL表示装置としての表示メータは、背面電極23と光取り出し側に位置する透明電極21との間に有機層22を挟んでなる有機EL発光部20を有する文字盤10と、文字盤10にて有機EL発光部20の光取り出し側に設けられた反射防止膜12とを備えてなる。さらに、本実施形態では、指針4、およびそれを駆動するためのモータ3、これらを車両に取り付けるためのケース1、カバー5、ガラス6等を備えている。
【0065】
ところで、本実施形態によれば、透明電極21とは絶縁膜25を介して、背面電極23を文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体にまで広げて設けているから、有機EL発光部20とその外側の部位とで、同程度の反射特性を有するものとなり、非発光時において、有機EL発光部20とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本実施形態の表示メータによれば、非発光時における表示のシームレス化を実現することができる。
【0066】
また、図3の例によれば、有機EL発光部20の外側の部位は、金属の背面電極23と透明ダミー膜26との積層構成を有するものとなるから、金属の背面電極23と透明電極21との積層構成を有する有機EL発光部20に対して、類似した構成となるため、当該両部位の反射特性が同等に近くなるという利点がある。
【0067】
具体的には、透明基板11が屈折率が1.5程度のガラスよりなり、透明電極21が屈折率が1.8程度のITOよりなる場合、これら両者11、21は屈折率が0.2〜0.3程度異なるものとなるため、当該両者11、21の界面での反射および屈折により見栄えが変わる。そこで、有機EL発光部20の外側においても、透明基板11に直接、絶縁膜25や背面電極23を配置する場合に比べて、有機EL発光部20同様に透明電極21を配置した方が、見栄えが有機EL発光部(20)と同程度になり、好ましい。
【0068】
また、図4は、本実施形態の好ましい例として、図3(a)中のB−B概略断面構成を示す図である。上述したように、引き出し電極24は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側にて、透明電極21に積層されて接続されている。このような引き出し電極24の引き出し構成は一般的なものである。
【0069】
また、引き出し電極24は、通常陽極となる透明電極21と導通しているので、当然ながら有機EL発光部20の外側では、図4に示されるように、その上の背面電極23とは絶縁膜25を介して電気的に絶縁されている。しかし、もし、絶縁膜25のピンホール等によって、これら対向する引き出し電極24と背面電極23とが短絡してしまうと、背面電極23が引き出し電極24と同電位となってしまう。
【0070】
そこで、本実施形態では、図4に示されるように、背面電極23のうち引き出し電極24と対向する部位と、背面電極23のうち引き出し電極24とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることが望ましい。背面電極23のうち引き出し電極24とは対向せずに外れた部位は、当然、有機EL発光部20の背面電極23も含むものである。
【0071】
図4の例では、フォトリソグラフ技術などにより、ネガレジストなどの絶縁性樹脂よりなる隔壁27を形成し、この隔壁27が存在した状態で、背面電極23を成膜する。そうすることにより、背面電極23を、引き出し電極24と対向する部位と引き出し電極24とは対向せずに外れた部位とに分断している。
【0072】
このように、引き出し電極24上の背面電極23を、その周囲の背面電極23の部分と電気的に分断すれば、上記短絡による不具合を防止できる。また、引き出し電極24上の背面電極23と有機EL発光部20の背面電極23とが電気的に独立すれば、引き出し電極24とその上の背面電極23との間の絶縁膜25を省略した構成としてもよい。その場合には、絶縁膜25を介した容量成分を引き出し電極24が持たなくなるため、たとえばパルス駆動する場合の波形の立ち上がりのなまりが防止可能となる。
【0073】
なお、これら背面電極23の当該両部位の分離は、上記隔壁27以外にも、背面電極23の成膜後にエッチングなどによって行ってもよい。さらには、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側において、引き出し電極24と対向する部位には、背面電極23が存在しないようにパターニング成膜してもよい。
【0074】
また、図5は、本実施形態の他の例としての文字盤10における有機EL発光部20の詳細構成を示す概略断面図である。
【0075】
上記図4の例では、背面電極23のうち引き出し電極24と対向する部位と、有機EL発光部20およびその外側の部位にて背面電極23のうち引き出し電極24とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていたが、さらに、図5に示されるように、背面電極23のうち、有機EL発光部20にある部位と有機EL発光部20の外側にある部位とを、電気的に分断してもよい。この場合、有機EL発光部20の外側に発生する短絡が、有機EL発光部20に影響しなくなる。
【0076】
また、本実施形態においては、上記図3(b)や図5に示されるように、絶縁膜25は、文字盤10において有機EL発光部20と有機EL発光部20の外側に位置する背面電極23との隙間を埋めるように設けられていた。ここで、透明電極21の外郭からその外側に拡がる絶縁膜25の幅は200μm以下程度であることが、自動車用表示メータの場合には望ましい。
【0077】
本発明者の実験検討によれば、当該幅を200μm以下とすれば、絶縁膜25が目視されない程度に細いレベルとなるためである。ここで、絶縁膜25は、透明電極21および透明電極21を引き出すための金属よりなる引き出し電極24と金属の背面電極23とを絶縁する機能を有するとともに、透明電極21および引き出し電極24の端部の段差を平坦化する機能や、透明電極21の端部が露出して当該露出部分と背面電極23とが近接したり短絡したりするのを防止する機能を有する。
【0078】
そのため、透明基板11のうち透明電極21の無い部分に、絶縁膜25が直接形成される部位が存在するが、この部位にて絶縁膜25の見栄えが視認されると、屈折率差や分光特性の違いなどにより、意匠性の低下が引き起こされる。しかし、本発明者の実験検討によれば、当該絶縁膜25の幅を200μm以下とすれば、絶縁膜25が目視されないレベルとなり、見栄えが均一になる。
【0079】
(第2実施形態)
図6(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの文字盤10における有機EL発光部20の詳細構成を示す図であり、(a)は電極部分の概略平面図、(b)は(a)中のC−C概略断面図である。ここでは、上記第1実施形態との相違点を中心に述べる。
【0080】
本実施形態では、上記図2に示される第1実施形態の文字盤10において、図6に示されるように、各有機EL発光部20について、背面電極23ではなく金属ダミー膜28を、文字盤10を構成する透明基板11のうち有機EL発光部20の外側の全体にまで広げて設けている。
【0081】
ここで、有機EL発光部20の外側の部位では、金属ダミー膜28と透明電極21との間、および、金属ダミー膜28と背面電極23との間には、上記絶縁膜25が介在している。そして、この絶縁膜25により、透明電極21および背面電極23と金属ダミー膜28とは電気的に分断されている。
【0082】
つまり、金属ダミー膜28は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体、すなわち、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面において、有機EL発光部20およびその周囲の絶縁膜25を除く部位の全域に設けられている。なお、このような金属ダミー膜28は、AlやAl合金などの金属を用いてスパッタ、蒸着などにより形成されるものである。
【0083】
また、図6に示される例においても、金属ダミー膜28よりも光取り出し側には、上記透明ダミー膜26が、金属ダミー膜28と重なるように設けられ、透明ダミー膜26と透明電極21とは絶縁膜25を介して電気的に分断されている。
【0084】
この透明ダミー膜26は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体、すなわち、透明基板11の光取り出し側とは反対側の面において、有機EL発光部20およびその周囲の絶縁膜25を除く部位の全域に設けられている。
【0085】
ところで、本実施形態によれば、透明電極21とは絶縁膜25を介して、金属ダミー膜28を文字盤10のうち有機EL発光部20の外側の全体にまで広げて設けているから、有機EL発光部20とその外側の部位とで、同程度の反射特性を有するものとなり、非発光時において、有機EL発光部20とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本実施形態の有機EL表示装置によれば、非発光時における表示のシームレス化を実現することができる。
【0086】
また、図6の例によれば、有機EL発光部20の外側の部位は、金属ダミー膜28と透明ダミー膜26との積層構成を有するものとなるから、金属の背面電極23と透明電極21との積層構成を有する有機EL発光部20に対して、類似した構成となるため、当該両部位の反射特性が同等に近くなるという利点がある。
【0087】
また、図7は、本第2実施形態の好ましい形態として、図6(a)中のC’−C’概略断面構成を示す図である。ここでは、背面電極23は、引き出し電極24上まで形成されているが、背面電極23と引き出し電極24との間には絶縁膜25が介在されることで、当該両電極23、24は電気的に絶縁されている。
【0088】
ここで、本実施形態においても、図7に示されるように、引き出し電極24は、文字盤10のうち有機EL発光部20の外側にて、透明電極21に積層されて接続されているが、背面電極23のうち引き出し電極24と対向する部位と、背面電極23のうち引き出し電極24とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることが望ましい。
【0089】
これにより、本実施形態においても、絶縁膜25のピンホール等によって対向する引き出し電極24と背面電極23とが短絡したときに、背面電極23と引き出し電極24とが同電位となってしまうのを防止できる。
【0090】
また、本実施形態においては、上記図6(b)や図7に示されるように、絶縁膜25は、文字盤10において有機EL発光部20と有機EL発光部20の外側に位置する金属ダミー膜28との隙間を埋めるように設けられていたが、ここにおいても、自動車用表示メータとして、絶縁膜25を目視されない程度に細いレベルとするためには、透明電極21の外郭からその外側に拡がる絶縁膜25の幅を200μm以下程度にすることが望ましい。
【0091】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略構成を示す平面図であり、各部を分解して示している。また、図9(a)は図8中のD−D断面に対応する概略断面図、図9(b)は図8中のE−E断面に対応する概略断面図である。
【0092】
本実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータは、上記図1における文字盤10の構成が相違するものであり、その他の部分1、2、3、3a、4、5、6については同様である。
【0093】
本実施形態では、文字盤10は、分割された複数個のもの、ここでは分割された2個よりなるものであり、図8における大きい方を第1の文字盤10a、小さい方を第2の文字盤10bとする。つまり、本実施形態の文字盤10は、これら第1の文字盤10aと第2の文字盤10bとにより構成されている。このように分割した文字盤とすることにより、1個の大きな文字盤を形成する場合に比べてコスト安となる。
【0094】
図8、図9に示されるように、各文字盤10a、10bは、共に、可視光を遮光する金属よりなる背面電極23と光取り出し側に位置する透明な透明電極21との間に有機EL材料よりなる有機層22を挟んでなる有機EL発光部20を有する。
【0095】
ここで、各文字盤10a、10bにおける有機EL発光部20には、上記同様に、意匠を示すセグメント表示型の有機EL発光部20aと、マルチ表示を行うドットマトリクス表示型の有機EL発光部20bとが設けられている。また、ここでは、セグメント表示型の有機EL発光部ではあるが、後述する減衰透過板30の意匠部33(図9(b)参照)の照明用として用いられる照明用発光部20cが、各文字盤10a、10bに設けられている。
【0096】
つまり、意匠を示すセグメント表示型の有機EL発光部20a、および、マルチ表示を行うドットマトリクス表示型の有機EL発光部20bは、その発光部分の平面形状がそのまま意匠や情報として視認される直接表示用発光部20a、20bであり、選択的に点灯されるものであるのに対し、照明用発光部20cはメータ使用時には意匠部16の照明として点灯されるものである。
【0097】
ここで、図8、図9に示されるように、各文字盤10a、10bは平面的に配置されており、光取り出し側とは反対側の面にて回路基板2に一体に取り付けられている。そして、各文字盤10a、10bは、フレキシブルプリント基板などの接続部材15を介して回路基板2に電気的に接続されている。
【0098】
また、文字盤10a、10bの光取り出し側には、各文字盤10a、10bよりも平面サイズが大きく、有機EL発光部20からの光を減衰して透過する減衰透過板30が設けられている。この減衰透過板30は、たとえば一般的なスモーク板や円偏光板などよりなるものであり、さらには、ガラスなどの透明基板にスモーク板や円偏光板を貼り付けたものであってもよい。
【0099】
そして、平面的に配置された各文字盤10a、10bは、共通の減衰透過板30に対して平面的に隙間を有して配置されて取り付けられている。この減衰透過板30の文字盤10a、10bへの取り付けは、一般的な貼り付けや締結などによる。
【0100】
ここで、図9(a)に示されるように、減衰透過板30においては、減衰透過板30のうち文字盤10の外郭からその外側に位置する部位に、可視光を遮光する遮光膜32が設けられている。
【0101】
具体的には、遮光膜32は、減衰透過板30のうち第1の文字盤10aと第2の文字盤10bとの隙間に位置し、減衰透過板30のうちこれら両文字盤10a、10bの外郭から当該隙間全体に亘る部位に設けられている。この遮光膜32は、一般的な黒色印刷などにより形成された黒い膜であり、可視光を遮断するものである。
【0102】
また、図9(b)に示されるように、減衰透過板30には、有機EL発光部20、ここでは照明用発光部20cからの光を照明として表示される意匠部33が設けられている。このような意匠部33は、たとえば指針4によって指示される目盛や数字あるいは文字などである。
【0103】
ここで、意匠部33は、減衰透過板30のうち図8にて破線で囲まれた領域で示される拡散領域31に設けられている。この拡散領域31は、上記照明用発光部20cからの光が拡散して透過する領域であり、この拡散領域31には、後述するように、上記照明用発光部20cからの光を光取り出し側に拡散させる拡散用の凹部34(図10参照)が設けられている。
【0104】
そして、意匠部33は、上記遮光膜32により区画形成されている。すなわち、上記遮光膜32は、減衰透過板30のうち有機EL発光部20としての照明用発光部20cから意匠部33を表示するための光が当てられる部位、すなわち上記拡散領域31にも設けられており、遮光膜32を当該意匠部33の形状にくりぬいた部分として、意匠部33は構成されている。
【0105】
つまり、意匠部33は、減衰透過板30の拡散領域31において、当該減衰透過板30の面が露出するとともに、その周囲を遮光膜32で区画された領域とされている。そのため、照明用発光部20cからの光が減衰透過板30を透過し、この透過光により意匠部33の形状が視認されるようになっている。
【0106】
このように、本実施形態の表示メータによれば、有機EL発光部20の非発光時には、遮光膜32の存在により、文字盤10a、10bと当該文字盤の外側の部位とで同程度の黒表示を実現できるから、文字盤10a、10bとその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。特に、ここでは、隣り合う2個の文字盤10a、10bの隙間に遮光膜33を設けることで、2個の文字盤10a、10bのつなぎ目が見えにくくなる
また、当該非発光時には、遮光膜32の存在により、意匠部33と意匠部33周りの部位とで同程度の黒表示を実現できるから、意匠部33とその外側の部位とのつなぎ目が見えにくくなる。よって、本実施形態によれば、有機ELを用いた表示装置において、非発光時における表示のシームレス化を実現することができ、適切なブラックフェース化がなされる。
【0107】
また、図9(b)に示されるように、減衰透過板30には、その光取り出し側に意匠部33が位置するとともに光取り出し側とは反対側の背面には有機EL発光部20が存在しない部位がある。以下、この部位を減衰透過板30の発光部非形成部という。そして、当該減衰透過板30の発光部非形成部における減衰透過板30の背面には、光拡散部35が設けられている。
【0108】
この光拡散部35は、たとえば当該背面を凹凸面としたり荒らしたりすることで光を散乱するように構成されたものであり、有機EL発光部20からの光を拡散して発光部非形成部に位置する意匠部33するものである。
【0109】
それによれば、減衰透過板30の背面からの光の反射が、有機EL発光部20が存在する部分の背面電極23などの反射に近くなり、見栄えが統一される。また、この光拡散部35によれば、光取り出し側から減衰透過板30に入る光が散乱されるから、減衰透過板30を通して内部が見えにくくなるという効果もある。
【0110】
光拡散部35は、凹凸形状による光散乱構造のみならず、さらに減衰透過板30の背面に金属層を有した反射層を形成してあってもよい。当該背面の金属層により光取り出し効率がアップするだけでなく、外光による反射も背面電極23などと略同じになり、見栄えが統一される。また、光拡散部35は、減衰透過板30とは別体の光拡散機能を有する部材を配置しても良い。
【0111】
ここで、図10は、減衰透過板30の拡散領域31に設けられる上記拡散用の凹部34の詳細構成を示す概略断面図である。上述したように、拡散領域31は、上記照明用発光部20cからの光が拡散して透過する領域であり、この拡散領域31には、上記照明用発光部20cからの光を光取り出し側に拡散させる拡散用の凹部34が設けられている。
【0112】
具体的には、拡散用の凹部34は、減衰透過板30のうち照明用発光部20cと正対する面に設けられており、当該面より凹むとともに底面が凹凸形状とされた凹部として構成されている。このような凹部34は、たとえばエッチングや切削、成型などにより形成される。
【0113】
この拡散用の凹部34により、照明用発光部20cからの光は意匠部33に向かって拡がる、つまり拡散する。そして、拡散した光は拡散領域31の全域に拡がり、意匠部33の照明として機能するのである。
【0114】
また、この図10の構成によれば、減衰透過板30と照明用発光部20cとの間に、別体の拡散板を介在させることなく、減衰透過板30と照明用発光部20cとを接触させて配置できる。そのため、減衰透過板30と直接表示用発光部20a、20bとについても直接接触させて配置することができ、減衰透過板30と直接表示用発光部20a、20bとの間に、隙間を生じることが無い。
【0115】
仮に、減衰透過板30と照明用発光部20cとの間に上記別体の拡散板を介在させると、減衰透過板30と直接表示用発光部20a、20bとの間には、当該拡散板の分、隙間が生じてしまい、直接表示用発光部20a、20bからの表示は、2重映りの状態となってしまう可能性があるが、図10の構成によれば、そのような問題を回避できる。
【0116】
なお、本実施形態において、文字盤10は3個以上のものよりなるものであってもよい。さらには、文字盤10は減衰透過板30よりも平面サイズが小さいものならば1個でもよい。この場合も、減衰透過板30のうち文字盤10の外郭からその外側に位置する部位には、可視光を遮光する遮光膜32を設ければ、非発光時に文字盤10の外郭が見えにくくなる。
【0117】
また、遮光膜32は、減衰透過板30における光取り出し側の面に黒色印刷されたものでなくてもよく、減衰透過板30における光取り出し側の面とは反対側の面、すなわち有機EL発光部20が設けられている面に、たとえば背面電極23と同様の金属よりなる金属膜として設けられたものであってもよい。
【0118】
また、上記直接表示用発光部20a、20bからの表示が2重映りの状態となってしまうという可能性はあるが、照明用発光部20cと正対する減衰透過板30の部位に上記拡散用の凹部34を設ける代わりに、別体の拡散板を介在させるようにしてもよい。
【0119】
また、意匠部33は、照明用発光部20cからの光を照明とするが、このとき照明用発光部20cの光を拡散させることが不要ならば、拡散用の凹部34を省略した構成としてもよい。
【0120】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータの概略構成を示す平面図であり、各部を分解して示している。また、図12(a)は図11中のF−F断面に対応する概略断面図、図12(b)は図11中のG−G断面に対応する概略断面図である。
【0121】
本実施形態に係る有機EL表示装置としての自動車用表示メータは、上記図1における文字盤10の構成が相違するものであり、その他の部分1、2、3、3a、4、5、6については同様である。
【0122】
本実施形態は、上記第3実施形態の構成において減衰透過板30の代わりに、可視光を遮光する黒色シート40を用い、この黒色シート40のうち表示領域に開口部41を設け、この開口部41に部分的に減衰遮光板30を配置したものである。それによれば、上記第3実施形態に比べて減衰透過板30のサイズが小型化でき、コスト安となる。
【0123】
また、図12に示されるように、本実施形態では、光の拡散が不要な直接表示用発光部20a、20bに対しては、開口部41には減衰透過板30のみが配置されているが、光拡散を要する照明用発光部20cに対しては、光を拡散する拡散板50を介して減衰透過板30を配置している。
【0124】
本実施形態においても、非発光時には、表示が必要な開口部41は減衰透過板30により黒表示となり、開口部41以外の部位はそもそも黒色シート40によって黒色とされているので、非発光時における表示のシームレス化を実現することができ、メータ全面のブラックフェース化が適切になされる。
【0125】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は可能な範囲で適宜組み合わせてもよいことはもちろんである。たとえば、上記第3実施形態の構成において、上記第1実施形態のように、背面電極23を文字盤10における各有機EL発光部20の外側の全体に広げたり、あるいは、上記第2実施形態のように、金属ダミー膜28を文字盤10における各有機EL発光部20の外側の全体に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0126】
10 文字盤
10a 第1の文字盤
10b 第2の文字盤
11 透明基板
12 反射防止板
20 有機EL発光部
20a 直接表示用発光部としてのセグメント表示型の有機EL発光部
20b 直接表示用発光部としてのドットマトリクス表示型の有機EL発光部
20c 照明用発光部としてのセグメント表示型の有機EL発光部
21 透明電極
22 有機層
23 背面電極
24 引き出し電極
25 絶縁膜
26 透明ダミー膜
28 金属ダミー膜
30 減衰透過板
32 遮光膜
33 意匠部
34 光拡散用の凹部
35 光拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板(11)に、可視光を遮光する金属よりなる背面電極(23)と光取り出し側に位置する透明な透明電極(21)との間に有機EL材料よりなる有機層(22)を挟んでなる有機EL発光部(20)を設けてなる文字盤(10)を備え、
前記有機EL発光部(20)の光取り出し側に、前記背面電極(23)による光反射を防止する反射防止膜(12)を備えてなる有機EL表示装置において、
前記背面電極(23)は、前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側の全体にまで、前記透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して設けられており、
前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側の全体において、前記背面電極(23)よりも光取り出し側には、前記透明電極(21)と同一材料よりなる透明な透明ダミー膜(26)が、前記背面電極(23)と重なるように設けられており、
この透明ダミー膜(26)と前記透明電極(21)とは前記絶縁膜(25)を介して電気的に分断されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側には、前記透明電極(21)を引き出すための金属よりなる引き出し電極(24)が、前記背面電極(23)とは電気的に絶縁されつつ前記透明電極(21)と電気的に接続されて設けられており、
前記背面電極(23)のうち前記引き出し電極(24)と対向する部位と、前記背面電極(23)のうち前記引き出し電極(24)とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
透明基板(11)に、可視光を遮光する金属よりなる背面電極(23)と光取り出し側に位置する透明な透明電極(21)との間に有機EL材料よりなる有機層(22)を挟んでなる有機EL発光部(20)を設けてなる文字盤(10)を備え、
前記有機EL発光部(20)の光取り出し側に、前記背面電極(23)による光反射を防止する反射防止膜(12)を備えてなる有機EL表示装置において、
前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側の全体に、前記背面電極(23)および前記透明電極(21)とは絶縁膜(25)を介して、金属よりなる金属ダミー膜(28)が設けられており、
前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側の全体において、前記金属ダミー膜(28)よりも光取り出し側には、前記透明電極(21)と同一材料よりなる透明な透明ダミー膜(26)が、前記金属ダミー膜(28)と重なるように設けられており、
前記透明ダミー膜(26)と前記透明電極(21)とは前記絶縁膜(25)を介して電気的に分断されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
前記文字盤(10)のうち前記有機EL発光部(20)の外側には、前記透明電極(21)を引き出すための金属よりなる引き出し電極(24)が、前記背面電極(23)とは電気的に絶縁されつつ前記透明電極(21)と電気的に接続されて設けられており、
前記背面電極(23)のうち前記引き出し電極(24)と対向する部位と、前記背面電極(23)のうち前記引き出し電極(24)とは対向せずに外れた部位とは、電気的に分断されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
可視光を遮光する金属よりなる背面電極(23)と光取り出し側に位置する透明な透明電極(21)との間に有機EL材料よりなる有機層(22)を挟んでなる有機EL発光部(20)を有する文字盤(10)を備え、
前記文字盤(10)の光取り出し側に、前記文字盤(10)よりも平面サイズが大きく、前記有機EL発光部(20)からの光を減衰して透過する減衰透過板(30)が設けられており、
前記減衰透過板(30)には、前記有機EL発光部(20)からの光を照明として表示される意匠部(33)が設けられており、
前記減衰透過板(30)のうち前記文字盤(10)の外郭からその外側に位置する部位には、可視光を遮光する遮光膜(32)が設けられており、
さらに、前記遮光膜(32)は、前記減衰透過板(30)のうち前記有機EL発光部(20)から前記意匠部(33)を表示するための光が当てられる部位にも、設けられており、
前記意匠部(33)は、前記遮光膜(32)を当該意匠部(33)の形状にくりぬいた部分として構成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
前記文字盤(10)として、第1の文字盤(10a)と第2の文字盤(10b)とを備えており、
これら第1の文字盤(10a)および第2の文字盤(10b)は、共通の前記減衰透過板(30)に対して平面的に隙間を有して配置されて取り付けられており、
前記減衰透過板(30)のうち前記文字盤(10)の外郭からその外側に設けられた前記遮光膜(32)として、前記遮光膜(32)は、前記減衰透過板(30)のうち前記第1の文字盤(10a)と前記第2の文字盤(10b)との隙間に位置していることを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記減衰透過板(30)には、光取り出し側に前記意匠部(33)が位置するとともに光取り出し側とは反対側の背面には前記有機EL発光部(20)が存在しない部位があり、
当該部位における前記減衰透過板(30)の前記背面には、前記有機EL発光部(20)からの光を拡散して当該部位に位置する前記意匠部(33)に導光する光拡散部(35)が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記有機EL発光部(20)として、前記意匠部(33)の照明用とされる照明用発光部(20c)と、直接表示を行う直接表示用発光部(20a、20b)とが設けられており、
前記減衰透過板(30)のうち前記照明用発光部(20c)と正対する面には、当該照明用発光部(20c)からの光を前記意匠部(33)に向けて拡散する光拡散用の凹部(34)が設けられていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−134312(P2012−134312A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284829(P2010−284829)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】