説明

有関節座標計測機再配置方法

【課題】隠れ点を計測できるという有関節CMMの便利さと、より広い空間を計測できるというレーザトラッカの利点とを併せ実現する有関節座標計測機再配置方法を提供する。
【解決手段】本システム100では有関節座標計測機(CMM)200及びレーザトラッカ400を使用し、そのCMM200上にはレーザトラッカ400と対をなすレトロリフレクタを配置する。共通の基準座標系による座標値にCMM200による計測値及びレーザトラッカ400による計測値を変換できるためCMM200を移動させることができる。更に、レーザトラッカ400では計測できない隠れ点を有関節CMM200等で計測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年6月23日付米国暫定特許出願第60/693295号に基づく利益を享受する出願である。なお、この参照を以てその内容を本願に繰り入れることとする。
【0002】
本発明は、複数の座標系を併用する座標計測装置に関する。
【背景技術】
【0003】
座標計測装置としては、例えば関節付きの機構を利用して計測対象点の座標値を計測する装置がある。この種の装置には、更に、計測対象点の座標値を機構端部のプローブを接触させて計測するものと非接触スキャナにより計測するものとがある。先端プローブの位置はその機構を構成するセグメント(アーム)同士の連結部(関節)に設けた角度エンコーダによって知ることができる。この種の装置は、プローブ接触式のものもスキャナ式のものも含め、有関節CMMと呼ばれており(CMM:座標計測機)、そのシステム構成としては例えば特許文献1(発明者:Raab)に記載のものがある。
【0004】
座標計測装置には更にレーザトラッカと呼ばれる装置がある。レーザトラッカは、計測対象点に接している反射体(レトロリフレクタ)に向けレーザビームを出射してレトロリフレクタまでの距離を調べる一方、レトロリフレクタの所在方向を表す二種類の角度を調べ、それらに基づきその計測対象点の座標値を計測する装置である。距離を調べる手段としては距離計測装置例えば干渉計等の絶対距離メータを用い、角度を調べる手段としては角度エンコーダ等の角度計測装置を用いる。レーザビームを所望方向に向ける手段としては例えばジンバル式ビーム駆動機構を使用する。特許文献2(発明者:Brown et al.)及び特許文献3(発明者:Lau et al.)には、この種のシステムの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5402582号明細書
【特許文献2】米国特許第4790651号明細書
【特許文献3】米国特許第4714339号明細書
【非特許文献1】"Robot Modeling and Kinematics" by Rachid Manseur, chapters 3 and 4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有関節CMMは関節を操作して様々な方向に向けることができるので、レーザトラッカのような計測装置では視線外になり計測できない点即ち隠れ点についても、計測を行うことができる。他方、計測できる空間の広さはレーザトラッカの方が有関節CMMよりかなり広い。そのため、隠れ点を計測できるという有関節CMMの便利さと、より広い空間を計測できるというレーザトラッカの利点とを併せ実現することが、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに、本発明の一実施形態に係る座標計測システムは、レーザトラッカと、レトロリフレクタと、再配置時に移動される有関節CMMと、レトロリフレクタを有関節CMMに取り付けるためのアセンブリと、レーザトラッカ座標系による座標値、CMM座標系による座標値又はその双方を共通の基準座標系による座標値に変換する手段と、を備える。本システムに拠れば、レーザトラッカに対するレトロリフレクタの位置をレーザトラッカからのレーザビーム出射によりレーザトラッカ座標系に従い計測する一方有関節CMMに対するレトロリフレクタの位置を有関節CMMによりCMM座標系に従い計測する、という動作を、複数回に亘る有関節CMMの再配置の前後で実行できる。
【0008】
本発明の一実施形態に係る座標計測方法は、レーザトラッカを固定配置するステップと、レーザトラッカの位置を固定したままレトロリフレクタを移動させることができるようレトロリフレクタが取り付けられた移動可能な有関節CMMを、レーザトラッカとは別の場所に配置するステップと、レーザトラッカからのレーザビームの出射及びその反射によりレトロリフレクタの位置をレーザトラッカ座標系に従い計測する一方、レトロリフレクタの位置はそのままで有関節CMMによりレトロリフレクタの位置を計測することにより、有関節CMMに対するレトロリフレクタの位置をCMM座標系に従い計測するステップと、レーザトラッカ座標系による座標値、CMM座標系による座標値又はその双方を共通の基準座標系による座標値に変換する座標変換ステップと、を有する。
【0009】
本発明の一実施形態に係る有関節CMM用レトロリフレクタアセンブリは、レトロリフレクタと、そのレトロリフレクタを有関節CMM上に取り付けるためのマウントと、を備える。
【0010】
本発明の一実施形態に係る方法は、有関節CMMを対象物周囲の複数の場所に再配置してその対象物を計測する方法であって、有関節CMMのアーム上に位置するレトロリフレクタの位置を、その有関節CMMの角度センサを用いCMM座標系に従い計測するステップと、レトロリフレクタの位置はそのままで、レーザビームを出射しレトロリフクレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカによりレーザトラッカ座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、有関節CMMのアームを動かしレトロリフレクタの位置を第1の位置から第2の位置に変化させた上で、有関節CMMの角度センサを用いCMM座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、レトロリフレクタの位置はそのままで、レーザトラッカによりレーザトラッカ座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、有関節CMMのアームを動かしレトロリフレクタの位置を第2の位置から第3の位置に変化させた上で、有関節CMMの角度センサを用いCMM座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、レトロリフレクタの位置はそのままで、レーザトラッカによりレーザトラッカ座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、CMM座標系及びレーザトラッカ座標系を共通の基準座標系に関連づける変換行列を、第1、第2及び第3の各位置にて有関節CMMが計測した位置及びレーザトラッカが計測した位置に基づき生成するステップと、を有する。
【0011】
そして、本発明の一実施形態に係るレーザ式対物計測機は、角度エンコーダを有する有関節CMMと、距離メータ及び角度エンコーダを有するレーザトラッカと、有関節CMMのアーム上に配置されレーザトラッカと連携するレトロリフレクタと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、隠れ点を計測できるという有関節CMMの便利さと、より広い空間を計測できるというレーザトラッカの利点とを併せ実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有関節CMMとレーザトラッカの関係を示す斜視図である。
【図2】レトロリフレクタクランプアセンブリを示す分解斜視図である。
【図3】レーザトラッカを使用して再配置される有関節CMMを示す斜視図である。
【図4】固定球アセンブリを示す斜視図である。
【図5A】固定球アセンブリに着座接触させたレトロリフレクタを示す斜視図である。
【図5B】固定球アセンブリに着座接触させたレトロリフレクタを示す斜視図である。
【図6A】有関節CMMの数学的諸元を示す斜視図である。
【図6B】有関節CMMの数学的諸元を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に関し図面を参照して説明する。以下の説明は本発明の技術的範囲を限定する趣旨のものではない。また、図中、同様の符号には同一の符号を付してある。
【0015】
別紙図面に、本発明の一実施形態を詳細に示す。
【0016】
まず、図1に例示した大規模座標計測システム100は、有関節CMM200、レトロリフレクタクランプアセンブリ300及びレーザトラッカ400を備えている。図示した例はあくまで一例であり、図示したものとは異なる向き、位置、構成、設定等にすることも可能である。それらはその用途の仔細に応じて決めればよいのであって、本発明を限定解釈する要素にはなりえない。
【0017】
図2に分解して示した通り、レトロリフレクタクランプアセンブリ300は、球殻装着型レトロリフレクタ(SMR)310、キネマティックネスト320及びクランプ330を備えている。SMR310は反射性キューブコーナ(cube-corner retroreflector)312を部分球殻314に埋め込んだ構成であり、そのキューブコーナ312はガラス等からなる3個の平面鏡セグメントM1、M2及びM3を有している。それらのセグメントはそれぞれ各セグメントが他の2セグメントに対し90°で交差するよう組み合わされており、3個のセグメントM1、M2及びM3全てが交わる頂点Aは、部分球殻314の中心に位置している。
【0018】
キネマティックネスト320はクランプ330の頂部に取り付けられるよう、またクランプ330は有関節CMM200の先端アーム(final link)210に固定できるよう、構成されている。即ち、クランプ330を用いレトロリフレクタクランプアセンブリ300をCMM200上に配置することができる。
【0019】
キネマティックネスト320にはSMR310が着座する3個の点状接触部(図示せず)が設けられている。即ち、SMR310がその上で転がってもSMR310の中心位置が動かないよう、ネスト320はそれら点状接触部によってSMR310の球殻を三点接触支持している。また、ネスト320の下部に磁石を組み込むとなおよい。それにより、3個の点状接触部に対しSMR310が安定に接触している状態を維持することができる。
【0020】
図1に示した通り、レーザトラッカ400はSMR310に向けてレーザビーム410を出射する。このビーム410は反射性キューブコーナ312によって反射される。反射されたビームは入射ビーム410が辿った光路を逆に辿ってレーザトラッカ400に入射する。レーザトラッカ400は、反射ビーム入射位置を監視してトラッカヘッド402の姿勢を調整することによって、SMR310に位置変化があってもビーム410を引き続きSMR310上に正確に入射させる。また、本実施形態では、オペレータが有関節CMM200の先端位置を変化させ、各位置でCMM200及びレーザトラッカ400それぞれによりSMR310の座標値を計測する。そのうちCMM200によるレトロリフレクタ位置計測は、図示しないがそのCMM200に組み込まれている何個かの角度エンコーダ、例えばそのCMM200の関節に配置されている角度エンコーダによって行う。レーザトラッカ400によるレトロリフレクタ位置計測は、図示しないがそのレーザトラッカ400の距離メータ及び角度エンコーダにより行う。なお、エンコーダやメータとしては上記以外のものを含め様々な種類のものを使用できる。また、本実施形態ではCMM200の先端を3個所に亘り動かして計測を行うが、計測個所は例えば12個所以上にも或いはただの1個所にもすることができる。
【0021】
こうして有関節CMM200により収集されたデータ及びレーザトラッカ400により収集されたデータは互いに比較され、その結果に基づき変換行列が決定される。変換行列とは、CMM200の座標系からレーザトラッカ400の座標系への座標変換、その逆方向の座標変換、或いはそれらの座標系から何らかの好ましいXYZ座標系への座標変換のための行列である。
【0022】
ここに、有関節CMM200を使用して大きな物体を計測する場合、その物体のうち最初のCMM位置からではアクセス及び計測できない部位を計測するには、CMM200を別の場所に動かさねばならないことが多い。別の部位を計測するためCMM200を別の場所に動かす措置のことは、CMM200の「再配置」と呼ばれている。先に述べた同時計測動作、即ちCMM200及びレーザトラッカ400双方でSMR310の位置を同時に又は相前後して計測する手順は、例えば図3に示すようにCMM200を位置Aから位置Bに動かしたとき等、CMM200を再配置するたびに実行する。従って、CMM200が複数の場所で収集したデータを共通の基準座標系上で結びつけ、とぎれない一連のデータにすることができる。更に、この手順に拠れば、レーザトラッカ400による計測が可能な空間内であれば、どの場所へもCMM200を素早く且つ正確に再配置することができる。
【0023】
これは従来技術に比して多大なる進歩である。従来は、何個かのネスト例えば4個のネストをCMM用座標基準点として床に配置し、CMMを移動させるときにはそれらのネストも移動させて各基準点の面倒な再校正等を逐一行わねばならなかったため、このように気軽には再配置を行えなかった。
【0024】
これに対し、本実施形態では、図3に示すようにある位置Aから別の位置Bへと有関節CMM200を動かすことで、大きな対象物600を計測することができる。即ち、図示の通りレーザトラッカ400を用いているため、CMM200を迅速且つ正確に再配置することができる。
【0025】
有関節CMMの再配置精度を高めるには例えば次の手法を併用するとよい。(1)まず、有関節CMM及びレーザトラッカ双方による計測を多数の位置、例えば4個所以上の位置について行うとよい。(2)また、計測する位置同士を三次元空間内でできるだけ引き離すこと、即ち有関節CMMによる計測が可能な範囲を隅から隅まで利用することが望ましい。(3)そして、計測する位置を三次元的に引き離すこと、即ち(ほぼ)同一の平面上にある複数の位置を計測対象にすることを避けることが望ましい。
【0026】
SMR位置導出時補償
レトロリフレクタクランプアセンブリ300を有関節CMM200に取り付けたら、最初に先端アーム210の準拠座標系(図6B参照)におけるSMR310の座標値を調べねばならない。その際には、図4に示す固定球アセンブリ500を用いた補償手順即ち初期補償手順を実行する。初期補償手順と呼ぶのは、アセンブリ300をCMM200に初めて取り付けたとき以外は行う必要がないからである。
【0027】
固定球アセンブリ500は金属球510、磁気ネスト520及びベース530から構成されている。金属球510としては例えばSMR310と同じ直径の球を使用する。磁気ネスト520に設けられた図示しない3個の点状接触部の上に着座させると、金属球510は磁石(図示せず)によって引きつけられ、当該3個の点状接触部によりしっかりと接触保持される。また、磁気ネスト520はベース530に固定されており、そのベース530は更に床その他の安定な面上に固定されている。
【0028】
この初期補償手順を実行してSMR位置を導出する際には、まずSMR310をキネマティックネスト320から取り外し、磁気ネスト520上に着座している金属球510にそのネスト320を接触させる。この状態を図5Aに示す。その次は、有関節CMM200のリンク即ちアームを動かし、図5Bに示すように別の姿勢・状態にする。ネスト320が厳密にはどのような位置にあるは肝要なことではなく、重要なことはアームの姿勢・状態を更に少なくとももう1回、好ましくはできるだけ多様に変化させることである。こうすることによって、CMM200の角度エンコーダによる角度計測値を複数通り得ることができ、それらに基づきSMR310の中心位置を割り出すことができる。
【0029】
アーム及び関節からなる機構、例えば有関節CMMやロボットにて得られる情報から座標値を導出する数式は周知の通りであるが、中でも非特許文献1に記載されている数式に注目すべきであろう。この文献に記載されている数式に拠れば、金属球510の中心位置について、先端アーム210の基準座標系による座標値を表すベクトル
【数4】

と有関節CMM200のベース220の基準座標系による座標値を表すベクトル
【数5】

との関係を特定することができる。CMM200におけるこれらのベクトル
【数6】

及び
【数7】

の例を図6A及び図6Bに示す。これらベクトルの意味を明瞭に示すため、これらの図にはCMM200のローカル座標系(xA,yA,zA)及びその先端アーム210のローカル座標系(xF,yF,zF)を示してある。上述のSMR位置導出時初期補償手順では金属球510の表面を“倣い計測”するので、CMM200のアームをいくら動かしてもベクトル
【数8】

及び
【数9】

の大きさは一定に保たれる。従って、これらのベクトルから、次の式
【数10】

に示す関係を決定することができる。
【0030】
この式中、
【数11】

は4×4サイズの変換行列である。前掲の非特許文献1の記載に拠れば、この行列は各アームのDenavit−Hartenberg(DH)パラメタによって変化する。DHパラメタは一種類を除きその有関節CMMの特性を表すパラメタであり、CMM製造工場で実行される製造段階補償手順で既に決定づけられている。即ち、SMR位置導出時初期補償手順実行時に変化しうるのは各アームのDHパラメタのうちそのアームの角度θだけであり、この一種類を除く他のパラメタは当該初期補償手順とは別の製造段階補償手順で決まる固定的なパラメタである。また、この変換行列Tはその有関節CMMの各関節に設けられている一群の角度エンコーダの出力を表すベクトル
【数12】

の関数になっている。式中のiはその出力が得られた計測位置を示す番号である。即ち、図5A及び図5Bに二例示したように、CMM200による位置計測はCMM200の位置を変えて複数回行われる。CMM200を動かし多くの位置で計測を行った場合は、式(1)の解がユニークにならないので、式(1)を解く代わりにベクトル
【数13】

及び
【数14】

の最良推定を行い、残留誤差総和が最小になるベクトルを求める。第i計測位置についての残留誤差は次の式
【数15】

で表されるので、残留誤差総和を最小にするにはresi値の自乗和が最小になるように
【数16】

及び
【数17】

を選択すればよい。ここでは
【数18】

及び
【数19】

は何れも三次元座標値(例えばx,y,zにより表される座標値)を表すベクトルであるので、特定すべきパラメタ値は6種類ある。なお、自乗和を最小にするパラメタを求める手順は本件技術分野において周知であり、広汎に流通しているソフトウェアを使用して容易に実行することができるので、ここではその詳細について説明しないこととする。
【0031】
再配置計算
先に言及した通り、SMR310を数個所に動かし有関節CMM200及びレーザトラッカ400によってその位置を同時計測することにより、CMM200の再配置を至便に行うことができる。更に、CMM200を用いて収集した計測結果及びレーザトラッカ400による計測結果との関係を、次の式
【数20】

に従い特定することができる。
【0032】
この式中、
【数21】

はレーザトラッカ400の準拠座標系によるSMR310の座標値、
【数22】

は有関節CMM200の準拠座標系によるSMR310の座標値、量rx,ry,rzはX,Y,Z各軸周りでの回転角を表すオイラー角(同順)、tx,ty,tzはX,Y,Z各軸沿いの変位量(同順)である。行列M(rx,ry,rz,tx,ty,tz)は、再配置したCMM200により計測したSMR310の座標値を、共通の基準座標系による座標値へと変換するための行列である。なお、上の式ではレーザトラッカ400の準拠座標系を以て共通の基準座標系としているが、適当なものである限りこれ以外のどのような座標系でも共通の基準座標系として使用し又は割り当てることができる。この行列M(rx,ry,rz,tx,ty,tz)は再配置手順で決定される行列であり、そのための計算は適宜プロセッサやソフトウェア(図示せず)等の手段で行うことができる。一旦行列M(rx,ry,rz,tx,ty,tz)が判明すれば、先端アーム210に取り付けられた先端プローブ205による計測値にそれを直ちに適用することができる。即ち、CMM200によって計測された先端プローブ205の座標値を行列M(rx,ry,rz,tx,ty,tz)を用いて座標変換し、レーザトラッカ400の準拠座標系による先端プローブ205の座標値を得ることができる。
【0033】
行列M(rx,ry,rz,tx,ty,tz)を導出する際には、第i計測位置についての残留誤差
【数23】

を求める。
【0034】
この式には6種類のパラメタrx,ry,rz,yx,ty,tzが含まれているので、一般的な最小自乗当てはめ計算を行い、残留誤差の自乗和が最小になるようそれらを決定すればよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図示説明したが、本件技術分野において相当程度の熟練を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば理解できるように、本願に記載の装置及び方法、即ちCMM上に実装されているレトロリフレクタをそのCMMとレーザトラッカとにより計測する有関節CMM再配置装置及び方法については、本発明の技術的範囲内で様々な変形や改良を施すことができる。言い換えれば、本願記載の実施形態は本発明の内容を説明するための例であり本発明の要旨を限定するものではないので、その点を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有関節座標計測機を対象物周囲の複数の場所に再配置してその対象物を計測する方法であって、
有関節座標計測機のアーム上に位置するレトロリフレクタの第1の位置を、その有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
有関節座標計測機のアームを動かしレトロリフレクタの位置を第2の位置に変化させた上で、有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
有関節座標計測機のアームを動かしレトロリフレクタの位置を第3の位置に変化させた上で、有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
第1及び第2の座標系を共通の基準座標系に関連づける変換行列を、第1、第2及び第3の各位置にて有関節座標計測機が計測した位置及びレーザトラッカが計測した位置に基づき生成するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、更に、レーザトラッカでは捕らえられない隠れ位置を有関節座標計測機で計測しその結果を上記変換行列を用い上記基準座標系に関連づける方法。
【請求項3】
有関節座標計測機を対象物周囲の複数の場所に再配置してその対象物を計測する方法であって、
有関節座標計測機のアーム上に位置するレトロリフレクタの第1の位置を、その有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
有関節座標計測機のアームを動かしレトロリフレクタの位置を第2の位置に変化させた上で、有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
有関節座標計測機のアームを動かしレトロリフレクタの位置を第3の位置に変化させた上で、有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
有関節座標計測機のアームを動かしレトロリフレクタの位置を第4の位置に変化させた上で、有関節座標計測機の角度センサを用い第1の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
レーザビームを出射しレトロリフレクタによる反射光を捕らえるレーザトラッカにより第2の座標系に従い、レトロリフレクタの位置を計測するステップと、
第1及び第2の座標系を共通の基準座標系に関連づける変換行列を、第1、第2、第3及び第4の各位置にて、或いは更に第5、第6、第7等々の各位置にて有関節座標計測機が計測した位置及びレーザトラッカが計測した位置に基づき生成するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2013−68625(P2013−68625A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262715(P2012−262715)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−518398(P2008−518398)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(598064510)ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド (60)
【Fターム(参考)】