説明

木材搬送装置

【課題】構造の簡素化を図り、製造コスト及びメンテナンスコストの軽減を実現し得る木材搬送装置を提供する。
【解決手段】木材2の長手方向に離間した少なくとも2つの部位を個別に保持する保持手段8を備え、当該保持手段8は、前記木材2をその長手方向と直角な方向から挿入可能な間隔で配設されると共に互いに平行を成す一対の棒状の保持部材13,13を有し、当該一対の保持部材13,13を、各保持部材13,13に平行な軸線Yを中心に一体的に回動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材、特に長尺の木材を保持して搬送する木材搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、木材を製材して得た板材1を効率よく乾燥させるために、板材1を桟木2を介して積み上げ、板材1,1相互間に隙間を形成して通風を良くすることが、一般に行われている。この桟積み作業には大変手間がかかるため、近年では、自動で桟積みを行う桟積み装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す桟積み装置は、桟木を保持して板材の上に載置する搬送装置を備えている。この搬送装置の桟木保持手段として、図8に示すようなチャック装置を採用している(特許文献1の図10参照)。このチャック装置は、桟木を保持するための一対の保持部材100,100を備え、これら保持部材100,100は、装置本体に設けたシリンダ200と連動して揺動開閉可能に構成されている。また、図9に示すように、木材を保持するためのチャック装置として、一対の保持部材300,300が、シリンダ400と連動して互いに平行に接近・離間するように構成された平行開閉式のものがある。
【特許文献1】特開平9−255140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記揺動開閉式のチャック装置や平行開閉式のチャック装置は、一対の保持部材を互いに接近・離間するように構成しているため、保持部材の装置本体への取付構造は複雑なものとなっている。そのため、保持部材は装置本体に対して容易に取り外せる構造とはなっていない。従って、保持部材が破損した場合は、保持部材をチャック装置ごと交換しなければならず、高コストとなる欠点がある。
【0005】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、構造の簡素化を図り、製造コスト及びメンテナンスコストの軽減を実現し得る木材搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、木材の長手方向に離間した少なくとも2つの部位を個別に保持する保持手段を備え、当該保持手段は、前記木材をその長手方向と直角な方向から挿入可能な間隔で配設されると共に互いに平行を成す一対の棒状の保持部材を有し、当該一対の保持部材を、各保持部材に平行な軸線を中心に一体的に回動可能に構成したものである。
【0007】
木材を保持する場合は、一対の保持部材を木材の長手方向と直角な方向(幅方向)に跨ぐように配置する。そして、一対の保持部材を前記軸線を中心に一体的に回動させて、木材の側面に圧接させる。この保持部材の挟圧力によって、木材を保持する。また、保持部材を前記回動方向と反対回りに回動させて初期位置に戻すと、木材の保持が解除される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の木材搬送装置において、前記保持手段を、木材を保持する保持位置と当該木材を載置する載置位置との間を往復移動する移動支持体に設けたものである。
【0009】
前記保持手段を、木材を搬送して積載する装置に適用可能である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の木材搬送装置において、前記移動支持体に回動部材を回動可能に付設すると共に、当該回動部材に前記一対の保持部材を着脱可能に付設したものである。
【0011】
木材を保持する場合は、移動支持体を移動させて一対の保持部材を木材の長手方向と直角な方向(幅方向)に跨ぐように配置する。そして、回動部材を回動させて一対の保持部材を木材の側面に圧接させ保持する。また、回動部材を前記回動方向と反対回りに回動させて保持部材を初期位置に戻すと、木材の保持が解除される。
【0012】
また、保持部材は回動部材に着脱可能に付設されているので、万が一保持部材が破損しても、破損した保持部材を簡単に回動部材から取り外して、新しい保持部材を取り付けることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の木材搬送装置において、前記保持部材の表面を粗く形成したものである。
【0014】
保持部材の表面を粗く形成したことによって、保持する木材との間の摩擦を増加させることができ、木材を確実に保持することが可能となる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の木材搬送装置において、前記保持部材を、外周面に螺子部を形成したボルトにて構成すると共に、前記回動部材に前記ボルトを装着可能な孔部を形成したものである。
【0016】
これにより、ボルトを回動部材に簡単に装着することができる。また、保持部材として汎用品のボルトを適用したことで、製造コスト、メンテナンスコストの軽減を図ることができる。また、木材を保持する際に、ボルトの外周面に形成された螺子部を、木材に食い込ませることで、確実に木材を保持することができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項2に記載の木材搬送装置において、互いに平行に配設した木材のそれぞれの長手方向に離間した少なくとも2つの部位を個別に保持するように、前記保持手段を前記移動支持体に複数設けたものである。
【0018】
これにより、複数本の木材を一度に搬送することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の木材搬送装置によれば、一対の保持部材が互いに接近・離間するように構成されていないので、保持部材の装置本体への取付構造を簡素化することができる。これにより、木材搬送装置の製造コスト及びメンテナンスコスト等の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の木材搬送装置を備えた桟積み装置の全体構成図である。以下、図1を参照して、この桟積み装置の主要部を説明する。桟積み装置は、昇降機構を具備した載置台3と、図示しない桟木ストック部から桟木2を供給する供給コンベア4と、供給コンベア4上の桟木2を保持して載置台3へ搬送する木材搬送装置5とを備えている。
【0021】
木材搬送装置5は、建物の天井などに水平に付設されたガイドレール6と、このガイドレール6に沿って走行する移動支持体7と、移動支持体7に設けた複数の保持手段8とを備える。移動支持体7は、ガイドレール6に走行可能に付設された上支持体9と、上支持体9に昇降可能に垂設された下支持体10とを有している。この下支持体10に、上記保持手段8が付設されている。
【0022】
図2は、図1の木材搬送装置5を矢印X方向から見た矢視図である。図2に示すように、この実施形態では、下支持体10の側面に9つの保持手段8(81〜89)が等間隔に付設されている。また、この下支持体10の側面と反対側の側面にも同様に9つの保持手段8が付設されている。つまり、桟木2の長手方向に対応して一対の保持手段8,8が配置され、この対を成す保持手段8,8が全部で9対設けられている。
【0023】
供給コンベア4は、例えば、チェーンコンベアから成る。2台の供給コンベア4が、互いに平行にかつ所定間隔をあけて配設されており、この一対の供給コンベア4にて、桟木2の両端付近を支持しつつ搬送するように構成されている(図1参照)。
【0024】
図2において、符号11の部材は、供給コンベア4で搬送される桟木2を所定の位置で停止状態にするストッパーである。このストッパー11は、9対ある保持手段8に対応して全部で9対(111〜119)配設されている。
【0025】
図3に示すように、ストッパー11は、水平に付設された(9本の)回動軸12に2つずつ付設されている。この回動軸12の回動に伴って、ストッパー11の先端が供給コンベア4の搬送面(上面)4aから出没するように構成されている。
【0026】
各保持手段8は、互いに平行に、かつ、桟木2の長手方向と直角な方向から挿入可能な間隔で配設した一対の棒状の保持部材13,13を有する。すなわち、図3に示すように、互いに平行を成す一対の保持部材13,13の間隔Dは、桟木2の幅Wより大きく設定されている。また、この一対の保持部材13,13は、回動可能に設けた回動部材14に着脱可能に付設されている。
【0027】
この実施形態では、棒状の保持部材13として、ボルトを適用している。詳しくは、回動部材14の両端に形成した孔部15,15に、保持部材13としてのボルトを挿通する。この孔部15には、ボルトの落下を防止するために、ボルトのヘッド部が係合する段差部が形成されている。そして、孔部15に挿通したボルトにナット16を締結することにより、ボルトを回動部材14に固定している。
【0028】
回動部材14は、支軸17の下端に固定されており、その支軸17は下支持体10に設けた取付板21に回転可能に垂設されている。これにより、回動部材14は、支軸17の軸線Yを中心に回動するように構成されている。また、一対の保持部材13,13は、支軸17の軸線Y(の延長線)を挟んで対称に配設されている。上記回動部材14の回動に伴って、各保持部材13,13も、軸線Yを中心に一体的に回動するようになっている。
【0029】
また、支軸17を回転させる駆動手段18が、下支持体10に配設されている。以下、この駆動手段18について、図4を参照して説明する。なお、図4は、図3を上方から見た平面図である。
【0030】
図4に示すように、駆動手段18はエアシリンダ19を有している。ただし、エアシリンダに限定されることなく、油圧シリンダや、その他の伸縮可能なアクチュエータも適用可能である。そして、このエアシリンダ19と、回動部材14を付設した支軸17が、L字型の連結部材20を介して連結されている。連結部材20の一端は、支軸17に固定され、連結部材20の他端は、エアシリンダ19と枢着されている。また、エアシリンダ19の連結部材20と枢着した端部と反対側の端部は、下支持体10に設けた取付片22に枢着されている。そして、図5に示すように、エアシリンダ19の伸縮に伴って、回動部材14は支軸17の軸線Yを中心に回動するように構成されている。
【0031】
以下、上記桟積み装置の動作について説明する。
図2に示すように、下支持体10を降下させて、各保持手段8(81〜89)を供給コンベア4の上方の所定位置に待機させる。供給コンベア4を駆動させ、桟木2を図2の右から左へ搬送する。最初に搬送される桟木2が、搬送方向下流側から1番目の保持手段8(81)の付近へ近づくと、その保持手段8(81)の下方にあるストッパー11(111)が、供給コンベア4の搬送面から上方に突出して桟木2を停止状態にする。次に、2番目に搬送される桟木2が、搬送方向下流側から2番目の保持手段8(82)へ近づくと、その搬送手段8(82)の下方にあるストッパー11(112)が、供給コンベア4の搬送面から上方に突出して桟木2を停止状態にする。同様に、下流側から上流側へストッパー11が順次突出して、それぞれ桟木2を対応する保持手段8の下方で停止状態にする。
【0032】
全てのストッパー11(111〜119)によって桟木2が停止された状態で、下支持体10をさらに降下させて、各保持手段8の一対の保持部材13,13が、桟木2を跨ぐように配置する。
【0033】
図6(a)は、1本の桟木2に対応して配設された一対の保持手段8,8を、上方から見た平面図である。図6(a)において、各保持手段8の回動部材14は、桟木2に対して直交方向に配置されており、一対の保持部材13,13が桟木2の幅方向に跨ぐように配置されている。この状態では、一対の保持部材13,13にて桟木2をまだ保持していない。以下、図6(a)に示す保持手段8の状態を、保持解除状態という。
【0034】
そして、図6(b)に示すように、回動部材14を回転軸(支軸17の軸線Y)を中心に回動させて、保持状態とする。詳しくは、図6(b)において、上側の回動部材14を時計回りに、下側の回動部材14を反時計回りに、それぞれ回動させて、各回動部材14に設けた一対の保持部材13,13を桟木2の側面に圧接させる。この保持部材13,13の挟圧力によって、桟木2を保持する。
【0035】
上述したように、この実施形態では、保持部材13としてボルトを使用しているので、桟木2を保持したときに、そのボルトの螺子部が桟木2の表面に食い込む。これにより、桟木2を確実に保持することができ、搬送中の落下を防止することが可能である。
【0036】
上記回動部材14の保持解除状態と保持状態との間の回動角度θは、例えば、最大で60°に設定されている。ただし、回動角度θは、60°に限定されることはなく、保持する桟木の幅等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
また、回動部材14,14の回動方向は、上述の時計回りと反時計回りの互いに逆方向でなく、図6(c)に示すように、互いに同方向に回動させてもよい。さらに、図6(d)に示すように、回動部材14の回転軸(Y)を、片方の保持部材13の軸線と同軸上に配設してもよい。
【0038】
なお、少なくとも2つの保持手段8によって、1本の桟木2の長手方向に離間した部位を保持できればよい。つまり、3つ以上の保持手段8によって、1本の桟木2を保持してもよい。
【0039】
各保持手段8によって9本の桟木2を保持した状態で、下支持体10を上昇させると共に、上支持体9をガイドレール6に沿って走行させて、桟木2を載置台3の上方へ搬送する(図1参照)。載置台3には、図示しない搬送装置によって、複数の板材1(製材)が互いに隣接して配設されている。
【0040】
下支持体10を降下させて、保持する9本の桟木2を、板材1の上面に接近乃至接触させる。そして、回動部材14を保持状態から保持解除状態へ回動させて保持部材13,13による桟木2の挟圧状態を解除し、桟木2を板材1の上に載置する。
【0041】
以後同様に、載置台3上に、板材1と桟木2を交互に載置して所定の高さまで積載する。このように桟木2を介在させて積載した板材1を、フォークリフト等によって乾燥場又は乾燥炉等へ運んで乾燥させる。
【0042】
上述のように、保持部材13は、回動部材14に対して着脱自在に構成されているので、万が一、保持部材13が破損した場合であっても、破損した保持部材13を回動部材14から簡単に取り外して、新しい保持部材13を取り付けることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、本発明の木材搬送装置を、桟積み装置に適用した実施形態を例に挙げて説明したが、桟木2以外の木材を搬送する装置やその他の木材加工装置等にも適用可能である。また、保持部材13としてボルト以外の棒状部材を採用してもよい。その場合、保持部材13の表面を粗く成形するなどして摩擦抵抗を増加し、木材の保持力を向上させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の木材搬送装置を適用した桟積み装置の実施の一形態を示す全体構成図である。
【図2】前記木材搬送装置の要部を示す側面図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】前記木材搬送装置の回動部材が回動する様子を示す平面図である。
【図6】前記回動部材の動作を示す図であって、(a)は保持解除状態を示す平面図、(b)は保持状態を示す平面図、(c)は他の保持状態を示す平面図、(d)はさらに別の保持状態を示す平面図である。
【図7】板材と桟木を交互に積載した状態を示す斜視図である。
【図8】従来の木材保持手段の一例を示す簡略図である。
【図9】従来の木材保持手段の他の例を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 板材
2 桟木(木材)
5 木材搬送装置
7 移動支持体
8 保持手段
13 保持部材
14 回動部材
15 孔部
Y 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の長手方向に離間した少なくとも2つの部位を個別に保持する保持手段を備え、当該保持手段は、前記木材をその長手方向と直角な方向から挿入可能な間隔で配設されると共に互いに平行を成す一対の棒状の保持部材を有し、当該一対の保持部材を、各保持部材に平行な軸線を中心に一体的に回動可能に構成したことを特徴とする木材搬送装置。
【請求項2】
前記保持手段を、木材を保持する保持位置と当該木材を載置する載置位置との間を往復移動する移動支持体に設けた請求項1に記載の木材搬送装置。
【請求項3】
前記移動支持体に回動部材を回動可能に付設すると共に、当該回動部材に前記一対の保持部材を着脱可能に付設した請求項2に記載の木材搬送装置。
【請求項4】
前記保持部材の表面を粗く形成した請求項1から3のいずれか1項に記載の木材搬送装置。
【請求項5】
前記保持部材を、外周面に螺子部を形成したボルトにて構成すると共に、前記回動部材に前記ボルトを装着可能な孔部を形成した請求項1から3のいずれか1項に記載の木材搬送装置。
【請求項6】
互いに平行に配設した木材のそれぞれの長手方向に離間した少なくとも2つの部位を個別に保持するように、前記保持手段を前記移動支持体に複数設けた請求項2に記載の木材搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−102103(P2009−102103A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274089(P2007−274089)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(396026400)株式会社鈴工 (9)
【Fターム(参考)】