材料分析装置及び材料分析方法
【課題】半導体デバイス製造工程において電子顕微鏡を用いて試料の材料分析を簡便に行う。
【解決手段】材料分析装置1は、試料12に電子線EBを照射する電子銃13と、試料12の表面から飛び出す反射電子REを検出する電子検出部14と、電子検出部14による反射電子REの検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析部30を備え、材料分析部30は、原子量N1、N2が既知の材料A1、A2に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度B1、B2に基づき、ある材料に電子線EBを照射するときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部33と、決定した近似一次式に従って試料12に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度Bxから、試料12の材料の原子量Nxを決定する原子量決定部34とを備える。
【解決手段】材料分析装置1は、試料12に電子線EBを照射する電子銃13と、試料12の表面から飛び出す反射電子REを検出する電子検出部14と、電子検出部14による反射電子REの検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析部30を備え、材料分析部30は、原子量N1、N2が既知の材料A1、A2に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度B1、B2に基づき、ある材料に電子線EBを照射するときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部33と、決定した近似一次式に従って試料12に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14で検出した検出強度Bxから、試料12の材料の原子量Nxを決定する原子量決定部34とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に電子線を照射して試料から飛び出す反射電子を検出することによって試料の材料特定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程において、製造中の半導体デバイス表面に異物が検出された際には、異物を発生させた製造工程の不具合原因の特定のために、その異物がいかなる物質であるのかを判定することが重要である。
このような物質の材料分析には、特定X線分析を用いた分析方法が広く用いられている(例えば下記特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−104175号公報
【特許文献2】特開平10−318949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定X線分析のような厳密な材料分析を行うためには、専用の分析装置が必要である。このため、製造工程で厳密な分析方法を新たに実施しようとすると、まず専用の分析装置を製造工程に新たに導入し、かつ現在の製造ラインの手順を変更して専用の分析装置へ半導体デバイスをセットする作業が発生する。
一方で、半導体デバイス製造工程で使用する材料の種類は限られているため、半導体デバイス上で検出される物質の材質の種類は予め分かっている。このため半導体デバイス製造工程では、上述のような厳密な分析方法でなくても試料の材料をおおよその種類に分類できる程度の簡便な分析方法で足りる。
【0005】
また、半導体デバイス製造工程において異物の観察のために電子顕微鏡が従来から用いられている。例えば現在の半導体デバイス製造工程では、製品歩留を向上させるために半導体デバイスの表面の光学像を捉えて、半導体デバイスの外観を検査する光学式外観検査が行われている。光学式外観検査に用いる光学顕微鏡の光学条件や、得られた光学像から欠陥を検出するアルゴリズムに使用する欠陥検出条件を最適化するために、光学式外観検査で検出した異物を走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡でさらに観察して異物の態様に関する詳細な情報を取得し、取得した情報に基づいて検査条件の最適化することが行われている。
このため、半導体デバイス製造工程において異物の観察のために従来から用いられている電子顕微鏡を用いて、半導体デバイス上で検出される物質の材質の分析を簡便に行うことが望まれてきた。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明では、半導体デバイス製造工程において、電子顕微鏡を用いて試料の材料分析を簡便に行う手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電子銃などにより発生させた電子線を試料へ照射すると、試料に入射した電子線は試料を構成する原子核や電子との相互作用により進行方向を変えられ、試料から反射電子として飛び出す。このとき、反射電子の反射電子係数、すなわち入射電子数に対する発生した反射電子の割合は、電子線の入射角度と試料を構成する材料の元素の原子量に依存する。
そこで本発明では、原子量が既知の材料に電子線を照射したときの反射電子を予め検出しておき、材料の原子量とその材料から生じる反射電子の検出強度との間の関係を線形近似した近似式を定める。そして、試料に電子線を照射したときの反射電子の検出強度を求め、近似式を用いて試料の原子量を決定することにより試料の材料を分析する。
【0008】
本発明の第1形態によれば、試料に電子線を照射する電子銃と、電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を検出する電子検出部と、電子検出部による反射電子の検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析部と、を備える材料分析装置が提供される。ここで材料分析部は、原子量が既知の材料に電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出器で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部と、決定した近似一次式に従って、試料に電子線を照射したときに試料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度から、試料の材料の原子量を決定する原子量決定部と、を備える。
【0009】
本発明の第2形態によれば、試料に電子線を照射し、電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を電子検出部で検出し、電子検出部による反射電子の検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析方法が提供される。本方法では、原子量が既知の材料に電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出器で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定し、決定した近似一次式に従って、試料に電子線を照射したときに試料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度から、試料の材料の原子量を決定する。
【発明の効果】
【0010】
半導体デバイス製造工程において、電子顕微鏡を用いて試料の材料分析を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の実施例による材料分析装置のブロック図である。材料分析装置1は、試料として、半導体デバイス製造工程において、その表面に回路パターンが形成された半導体ウエハ12(以下「ウエハ」と記す)の表面に存在する物質の材料分析を行う。材料分析装置1は、電子線EBを照射する際にウエハ12を収容する真空試料室1と、ウエハ12を載置するステージ11と、電子線EBを発生させる電子銃13と、電子線EBが照射されたウエハ12の表面から飛び出す反射電子REを検出する電子検出部14と、ステージ11の上に設けられた既知の材料で作られた標準試験片S1及びS2を備える。
【0012】
さらに材料分析装置1は、電子検出部14から出力された検出信号を増幅する信号増幅部15と、信号増幅部15により増幅されたアナログ形式の検出信号をディジタル形式の検出信号に変換するアナログディジタル信号変換部(ADC)16と、ディジタル形式に変更された検出信号の信号値を、後段の画像生成部18が生成する電子線画像用の画素値に変換する信号変換部17と、信号変換部17により検出信号から変換された画素値を配列してウエハ12で反射した反射電子REの電子線画像を生成する画像生成部18と、画像生成部18が生成した電子線画像を表示する表示部19と、を備える。
【0013】
図2は、図1に示す画像生成部18により生成される電子線画像の説明図である。ウエハ12で反射する反射電子REの電子線画像50を生成する際には、電子線EBによりウエハ12上のある走査範囲R内を走査する。図2の例では、符号Pで示す走査線に沿って電子線EBの照射位置を変えながら、各照射位置で電子検出部14が検出した反射電子REの検出強度を取得する。例えば電子線EBが走査線P上の位置p1、p2及びp3を照射しているときに電子検出部14が検出した反射電子REの検出強度をSG1、SG2及びS3とする。
【0014】
画像生成部18は、走査範囲R内における各照射位置p1、p2及びp3のそれぞれに対応する、電子線画像50内の座標位置P1、P2及びP3における画素値(明度レベル)を、信号変換部17が反射電子REの検出信号値SG1、SG2及びSG3からそれぞれ変換した画素値B1、B2及びB3とすることにより、反射電子REの電子線画像50を生成する。
信号変換部17は、所定の変換式を用いて電子検出部14の検出信号値を電子線画像50に用いる画素値へと変換する。電子検出部14の検出信号値から画素値を求める変換式は、図7〜図10を参照して後述するように変換された画素値により構成される電子線画像50が適度なコントラストが得られるように定められている。
【0015】
図1に示す材料分析装置1は、作業者(ユーザ)が材料分析装置1へ対して指示や情報を入力するための入力部20を備える。入力部20は、本構成例において、材料分析装置1により材料の分析の対象となるウエハ12の基板の材料や、ウエハ12上の回路パターンの形成に用いられた材料に関する情報を入力するために使用される。
さらに材料分析装置1は、信号変換部17により電子検出部14の検出信号値から変換された画素値に基づいて、ウエハ12上の電子線EBの照射位置の材料を分析する材料分析部30と、信号変換部17によって電子検出部14の検出信号値から変換される画素値の範囲を最適化する画素値最適化部40とを備える。
【0016】
図3は、図1に示す材料分析部30の第1構成を示すブロック図である。材料分析部30は、画素値判定部31と、第1近似式決定部33と、原子量判定部34と、材料決定部35とを備える。
画素値判定部31は、原子量が予め判明している2種類以上の材料に電子線EBを照射したときに電子検出部14で反射電子REを検出された検出信号値を信号変換部17によって変換して得たそれぞれの画素値を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した画素値との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。
【0017】
第1近似式決定部33は、画素値テーブル32に保存した、各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値とを用いて、原子量と画素値との間の関係を線形近似する第1近似1次式を決定する。
原子量判定部34は、ウエハ12上の各位置を電子線EBで走査したときに各々信号変換部17から出力される画素値を、第1近似式決定部33が決定した第1近似1次式にそれぞれ代入することにより、ウエハ12上の各位置の材料の原子量を判定する。
材料決定部35は、原子量判定部34が判定した原子量に従って、ウエハ12上の各位置の材料を決定する。材料決定部35は決定した材料を示す材料指定情報を画像生成部18へ出力する。
【0018】
図1に示す材料分析装置1の動作フローチャートの第1例を図4に示す。ステップS1では、信号変換部17が電子検出部14の検出信号値から画素値へ変換する上記の所定の変換式を設定することによって、画像生成部18により生成される電子線画像の各画素が有する画素値の範囲を最適化する。ステップS1の処理内容は図7〜図10を参照して後述する。
【0019】
ステップS2では、原子量が予め判明している2種類以上の材料に電子線EBが照射され、それぞれの材料から飛び出した反射電子REが電子検出部14にて検出され、このときの電子検出部14の検出信号値が信号変換部17によって画素値に変換される。
原子量が予め判明している材料に電子線EBを照射するために、材料分析装置1に、既知の単元素で構成された材料によりなる2種類の異なる標準試験片を設け、これらの標準試験片に電子線EBを照射して、試験片から飛び出した反射電子REを検出してもよい。本実施例では炭素で作られた標準試験片S1と銅で作られた標準試験片S2を備えている。
【0020】
標準試験片を材料分析装置1に設ける代わりに、ウエハ12の設計情報を用いてウエハ12の表面上で単元素の材料でパターンが形成された箇所を特定し、この箇所に電子線EBを照射して、この部分から飛び出した反射電子REを電子検出部14で検出してもよい。既知の材料に電子線EBを照射するために使用される部分は、ウエハ12に形成される回路パターンの部分であってもよく、またウエハ12上のチップが形成されない領域に、既知の単元素の材料のパターンを形成しこの部分に電子線EBを照射して反射電子REを検出してもよい。
【0021】
ステップS3では、画素値判定部31は、既知の2種類以上の材料に電子線EBを照射したときの反射電子REの検出強度を信号変換部17が出力したそれぞれの画素値を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した画素値との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。図5は画素値テーブル32の第1例を示す図である。
【0022】
ステップS4では、第1近似式決定部33は、画素値テーブル32に保存した各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値とを用いて、原子量と画素値との間の関係を線形近似する第1近似1次式を決定する。
図6は、2種類の材料A1及びA2について、それぞれの原子量N1及びN2と、それぞれに電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値B1及びB2が分かっている場合に、原子量Nと画素値Bとの関係を線形近似する第1近似1次式を示す図である。
【0023】
第1近似1次式(1)は、
N=(N2−N1)/(B2−B1)×(B−B1)+N1 …(1)
によって決定することができる。
3種類の材料について、それぞれの原子量と画素値とが分かっている場合には、最小二乗法などの手法を用いて第1近似1次式を決定してもよい。
【0024】
ステップS5では、電子線EBでウエハ12を走査して、ウエハ12の被検査領域の各位置に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14にてそれぞれ検出し、このとき電子検出部14が出力する各検出信号値を信号変換部17によって画素値にそれぞれ変換する。
このとき信号変換部17から出力される画素値は電子銃13による電子線EBの電流値や信号増幅部15のゲインなどよって変化するので、材料分析装置1の装置状態をステップS2のときの状態から変えないでステップS5を行う。
【0025】
ステップS6では、原子量決定部34は、ウエハ12の被検査領域の各位置についてそれぞれ決定した各画素値Bxを、第1近似1次式(1)に代入することにより、ウエハ12の被検査領域の各位置の材料のそれぞれの原子量Nxを決定する。
ステップS7では、材料決定部35は、ウエハ12の被検査領域の各位置の材料のそれぞれについて決定された原子量Nxに従ってそれぞれの箇所の材料を決定する。
【0026】
様々な原子量Nxに対応する材料を決定するために、例えばウエハ12上に存在することが考えられる複数の単元素の材料の識別子と、それぞれの材料の原子量を記憶する原子量テーブルを材料決定部35に設けておいてもよい、このとき材料決定部35は、原子量テーブルから原子量決定部34が決定した各原子量Nxを有する単元素の材料の識別子を探すことによって、各原子量Nxに対応する材料を決定する。
【0027】
材料決定部35は、ステップS6及びステップS7により特定された、ウエハ12の被検査領域内の各位置に存在する材料の識別子を含む材料指定情報を画像生成部18へ出力する。画像生成部18は表示部19に表示する電子線画像を生成するとき、電子線画像の各画素が示すそれぞれの部分の材料を表す情報を電子線画像に含める。例えば材料に応じて各画素の色を変えてもよく、また電子線画像内に各領域の材料名を表示してもよい。
【0028】
図7は、図1に示す画素値最適化部40の構成例を示すブロック図である。画素値最適化部40は、画像生成部18により生成される電子線画像の各画素が有する画素値の範囲の最適化を行う図4に示すステップS1の処理を実行する。すなわち信号変換部17によって電子検出部14の検出信号値から電子線画像50に用いる画素値へと変換する際に使用する変換式を設定する。
画素値最適化部40は、信号強度判定部41と、第2近似式決定部43と、信号強度範囲決定部44と、変換パラメータ決定部45とを備える。
【0029】
信号強度判定部41は、作業者が入力部20から入力した既知の2つ以上の種類に材料に関する情報を受信する。そして、指定された材料のうち2種類以上の材料に電子線EBを照射したときに、これら材料から飛び出す反射電子REを検出した電子検出部14の出力信号を入力する。信号強度判定部41は、各材料と、それらの原子量及び出力信号の信号強度との間の対応関係を保存する信号強度テーブル42を生成する。
【0030】
第2近似式決定部43は、信号強度テーブル42に保存した、各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号強度とを用いて、原子量と信号強度との間の関係を線形近似する第2近似1次式を決定する。
信号強度範囲決定部44は、作業者から指定された材料のうち、反射電子REの検出を行わなかったものがあるときは、この材料に電子線EBを照射した場合に電子検出部14が出力しうる信号強度を、その材料の原子量から第2近似1次式を用いて決定する。信号強度範囲決定部44は、作業者から指定された各材料について反射電子REの検出を行ったときに電子検出部14が出力しうる信号強度の範囲を決定する。
変換パラメータ決定部45は、信号強度範囲決定部44により決定された信号強度の範囲内で変動しうる信号値を画素値へ変換したときに、変換後の画素値が、電子線画像50に許容されるダイナミックレンジの範囲内になるように、検出信号値から画素値への変換式の変換パラメータを決定する。
【0031】
図8は、図4に示すフローチャートにおけるステップS1で行う処理のフローチャートである。ステップS10において、少なくとも2種類以上の材料について、その材料の識別子とその材料の原子量を入力する。入力した材料の識別子と原子量に関する情報を、信号強度判定部41へ入力する。
例えばステップS10では、少なくとも2種類以上の材料の識別子とその材料の原子量とを作業者に入力部20を介して入力させてよい。また、図示しない記憶部に複数の材料の識別子と原子量とを予め記憶しておき、その中から2種類以上の材料を作業者に入力部20を介して選択させることにより、2種類以上の材料の識別子とその材料の原子量を入力させてもよい。
フローチャートの例は、材料A1、A2及びBの計3種類の識別子とそれぞれの材料の原子量N1、N2及びN3を入力する。
【0032】
ステップS11において、ステップS10にて入力した材料のうち少なくとも2種類以上の材料に電子線EBを照射して、それぞれの材料から飛び出した反射電子REを電子検出部14にて検出する。フローチャートの例では材料A1及びA2に電子線EBを照射して、それぞれの材料から飛び出した反射電子REを電子検出部14にて検出する。それぞれの反射電子REを検出した信号強度をSG1及びSG2とする。
このとき標準試験片S1及びS2の材料をA1及びA2とし、これら標準試験片S1及びS2から飛び出す反射電子REを検出してもよく、ウエハ12上の材料A1及びA2で形成されていることが予め分かっている部分から飛び出す反射電子REを検出してもよい。
【0033】
ステップS12では、信号強度判定部41は、既知の2種類以上の材料に電子線EBを照射したときの反射電子REを検出した電子検出部14の出力信号の信号強度を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した信号強度との間の対応関係を保存する信号強度テーブル42を生成する。図9は2つの材料A1及びA2について作成した信号強度テーブル42の例を示す図である。
【0034】
ステップS13では、第2近似式決定部43は、信号強度テーブル42に保存した各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度とを用いて、原子量と信号強度の間の関係を線形近似する第2近似1次式を決定する。
図10の(A)は、2種類の材料A1及びA2について、それぞれの原子量N1及びN2と、それぞれに電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度SG1及びSG2が分かっている場合に、原子量Nと信号強度SGとの関係を線形近似する第2近似1次式を示す図である。
【0035】
第2近似1次式(2)は、
SG=(SG2−SG1)/(N2−N1)×(N−N1)+SG1 …(2)
によって決定することができる。
3種類の材料について、それぞれの原子量と信号強度とが分かっている場合には、最小二乗法などの手法を用いて第2近似1次式を決定してもよい。
【0036】
ステップS14にて信号強度範囲決定部44は、ステップS10にて情報を入力した材料のうち、ステップS11において反射電子REを電子検出部14にて検出していないものがあるときには、この材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度を、第2近似1次式を用いて決定する。
本フローチャートの例ではステップS10にて情報を入力した材料のうち、材料BについてはステップS11で反射電子REを検出していない。ステップS14では、材料Bの原子量N3を第2近似1次式(2)に代入して、材料Bから飛び出す反射電子REを検出した信号強度SG3を決定する。決定したSG3の値を図10の(A)に示す。
【0037】
ステップS15にて信号強度範囲決定部44は、ステップS10にて情報を入力した各材料について反射電子REを検出したときに、電子検出部14の出力信号が取りうる信号強度範囲を決定する。図10の(A)に示す例では、材料A1、A2及びBについて反射電子REを検出すると、電子検出部14の出力信号は最小値SG1から最大値SG3の範囲を取りうる。図10の(A)を参照して分かるとおり、電子検出部14の出力信号の信号強度範囲SG1〜SG3は、ステップS10にて情報を入力した各材料の原子量の範囲N1〜N3に応じて定まる。
【0038】
ステップS16にて変換パラメータ決定部45は、ステップS15にて決定した信号強度範囲SG1〜SG3内の信号を、信号変換部17にて画素値へ変換したときに、変換後の画素値が、電子線画像50に許容されるダイナミックレンジの範囲内になるように、電子検出部14の検出信号値から画素値への変換式の変換パラメータを決定する。
例えば図10の(B)に示すように、電子線画像50の画素値のダイナミックレンジが画素値0〜Bmaxであるとし、信号変換部17は、検出信号値の下限SG1〜上限SG3までの範囲の検出信号値を、画素値の下限BL〜上限BHまでの範囲の画素値に変換すると仮定する。ここで画素値BLは電子線画像50の画素値のダイナミックレンジの最低値0よりも所定のマージンΔB2だけ大きい値であり、画素値BHはダイナミックレンジの最大値BmaxよりもマージンΔB1だけ小さい値である。
【0039】
変換パラメータ決定部45は、電子検出部14の検出信号値SGから画素値Bへの1次変換式(3)を以下のように定めてよい。
B=(BH−BL)/(SG3−SG1)×(SG−SG1)+BL …(3)
変換パラメータ決定部45は、1次変換式(3)を決定するパラメータ(すなわち傾きや切片など)を信号変換部17へ出力する。
信号変換部17は、このパラメータによって定まる1次変換式(3)を用いて、電子検出部14の検出信号値を画素値へ変換する。
【0040】
図11は、図1に示す材料分析部30の第2構成を示すブロック図である。上記の実施例では、図12の(A)に示すように、ウエハ12上に形成された材料分析の対象の物質の層にはある程度の厚みがあり、反射電子REは電子線EBを照射された対象物質A1から飛び出すことを前提としている。例えば電子線EBの電子のエネルギーが1keV以下である場合には、対象物質A1の厚さが1μm以上あれば、電子線EBは対象物質A1を貫通しないので、反射電子REは全て対象物質A1から飛び出す。
しかしながら、対象物質A1の厚さが薄いと図12の(B)に示すように電子線EBが対象物質A1を貫通して下層A2へ至るので、電子検出部14により検出される反射電子REは、対象物質A1から飛び出す成分RE1と下層A2から飛び出す成分RE2とを含む。このような場合には、反射電子REの反射電子係数が対象物質A1の層の厚さや下層A2の原子量に左右されるため、図3に示す第1構成例の材料分析部30では、対象物質A1の原子量を決定することができない。
【0041】
そこで以下に述べる実施例では、材料分析を行うウエハ12の表面の各箇所に電子線EBを照射し、それぞれの部分から飛び出した反射電子REを検出した電子検出部14の検出信号値を信号変換部17によって画素値へそれぞれ変換する。また、電子線EBが照射されるウエハ12の表面のそれぞれの箇所に存在する材料をウエハ12の設計情報を用いて特定する。図11に示す第2構成例の材料分析部30の画素値判定部31は、ウエハ12の設計情報を用いて特定されるウエハ12の表面のそれぞれの箇所の材料と、それらの材料から反射電子REを検出したときの検出信号値を変換した画素値とを、画素値テーブル32に対応付けて記憶する。
【0042】
ウエハ12の表面に存在する材料を分析する際に、ウエハ12の表面の上が電子線EBで走査され、電子検出部14がから順次出力される検出信号値が信号変換部17によってそれぞれ画素値に変換されると、材料決定部35は、変換された画素値と同じ画素値に対応付けられて画素値テーブル32に記憶した材料を探して、電子線EBの照射位置の材料を決定する。
本構成によれば、仮にウエハ12の表面に形成されたある材料Xの膜が薄く形成されている場合でも、ウエハ12上において実際に同じ材料Xで同じように形成された部分における反射電子の検出強度を予め取得し、予め取得した検出強度と、被検査対象から反射した反射電子の検出強度とが等しいか否かによって、被検査対象の材料がXであるか否かを分析することにより、材料Xの膜の下層から反射する反射電子が生じてしまう場合においても両者で同様の検出強度が検出されるので、被検査対象の成分が材料Xであることを分析することができる。
【0043】
図13に示すフローチャートを参照して、図11の例による材料分析部30を備える材料分析装置1の動作フローを示す。ステップS1では、信号変換部17による電子検出部14の検出信号値から画素値へ変換する画素値の範囲を最適化する。処理の内容は図7〜図10を参照して説明した通りである。
【0044】
ステップS2では、ウエハ12の表面の予め決めた複数の箇所に電子線EBを照射し、それぞれの部分から飛び出した反射電子REを検出した電子検出部14の検出信号値を信号変換部17によって画素値へそれぞれ変換する。画素値判定部31は、これらの画素値をそれぞれ入力する。図14は、ウエハ12上の所定範囲Rにおけるウエハ表面の材料の構成を示す図である。電子線EBを照射され反射電子REを検出した各点p1〜p4の部分は、それぞれ材料A1〜A4で構成されているものとする。
【0045】
ステップS21では、画素値判定部31は、ウエハ12の設計情報を用いて、ステップS2にて電子線EBを照射したウエハ12表面の各箇所A1〜A4の材料を特定する。そしてこれら各箇所p1〜p4の材料A1〜A4と、それぞれの箇所p1〜p4に電子線EBを照射して反射電子REを検出したときの画素値B1〜B4との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。図15は画素値テーブル32の第2例を示す図である。
【0046】
ステップS22では、電子線EBでウエハ12を走査して、ウエハ12の被検査領域の各位置に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14にてそれぞれ検出し、このとき電子検出部14が出力する各検出信号値を信号変換部17によって画素値にそれぞれ変換する。
このとき材料分析装置1の装置状態をステップS2のときの状態から変えないで電子線EBによる走査を行う。
ステップS23では、材料決定部35は、ウエハ12の被検査領域の各位置についてそれぞれ決定した各画素値と、同じ画素値に対応して記憶された材料を画素値テーブル32から探して、電子線EBの照射位置の材料を決定する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、試料に電子線を照射して試料から飛び出す反射電子を検出することにより試料の材料を分析する材料分析装置及び材料分析方法に利用可能である。好適には半導体製造工程において、半導体デバイス装置の表面で検出した異物の材料を分析する材料分析装置及び材料分析方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例による材料分析装置のブロック図である。
【図2】図1に示す画像生成部により生成される電子線画像の説明図である。
【図3】図1に示す材料分析部の第1構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す材料分析装置の動作の第1例を示すフローチャートである。
【図5】画素値テーブルの第1例を示す図である。
【図6】原子量と画素値との関係を線形近似する第1近似1次式を示す図である。
【図7】図1に示す画素値最適化部の構成例を示すブロック図である。
【図8】図4に示すフローチャートにおけるステップS1で行う処理のフローチャートである。
【図9】信号強度テーブルの例を示す図である。
【図10】(A)は原子量と電子検出部の出力信号の強度との関係を線形近似する第2近似1次式を示す図であり、(B)は電子検出部の出力信号から画素値へ変換する1次変換式を示す図である。
【図11】図1に示す材料分析部の第2構成を示すブロック図である。
【図12】(A)は分析対象となる物質A1から全ての反射電子が出る状態を示す図であり、(A)は分析対象となる物質A1及びその下層の物質A2から反射電子が出る状態を示す図である。
【図13】図1に示す材料分析装置の動作の第3例を示すフローチャートである。
【図14】ウエハ上の所定範囲Rにおけるウエハ表面の材料の構成を示す図である。
【図15】画素値テーブルの第2例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 材料分析装置1
10 真空試料室
11 ステージ
12 半導体ウエハ
13 電子銃
14 電子検出部
EB 電子線
RE 反射電子
S1、S2 標準試験片
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に電子線を照射して試料から飛び出す反射電子を検出することによって試料の材料特定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程において、製造中の半導体デバイス表面に異物が検出された際には、異物を発生させた製造工程の不具合原因の特定のために、その異物がいかなる物質であるのかを判定することが重要である。
このような物質の材料分析には、特定X線分析を用いた分析方法が広く用いられている(例えば下記特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−104175号公報
【特許文献2】特開平10−318949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定X線分析のような厳密な材料分析を行うためには、専用の分析装置が必要である。このため、製造工程で厳密な分析方法を新たに実施しようとすると、まず専用の分析装置を製造工程に新たに導入し、かつ現在の製造ラインの手順を変更して専用の分析装置へ半導体デバイスをセットする作業が発生する。
一方で、半導体デバイス製造工程で使用する材料の種類は限られているため、半導体デバイス上で検出される物質の材質の種類は予め分かっている。このため半導体デバイス製造工程では、上述のような厳密な分析方法でなくても試料の材料をおおよその種類に分類できる程度の簡便な分析方法で足りる。
【0005】
また、半導体デバイス製造工程において異物の観察のために電子顕微鏡が従来から用いられている。例えば現在の半導体デバイス製造工程では、製品歩留を向上させるために半導体デバイスの表面の光学像を捉えて、半導体デバイスの外観を検査する光学式外観検査が行われている。光学式外観検査に用いる光学顕微鏡の光学条件や、得られた光学像から欠陥を検出するアルゴリズムに使用する欠陥検出条件を最適化するために、光学式外観検査で検出した異物を走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡でさらに観察して異物の態様に関する詳細な情報を取得し、取得した情報に基づいて検査条件の最適化することが行われている。
このため、半導体デバイス製造工程において異物の観察のために従来から用いられている電子顕微鏡を用いて、半導体デバイス上で検出される物質の材質の分析を簡便に行うことが望まれてきた。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明では、半導体デバイス製造工程において、電子顕微鏡を用いて試料の材料分析を簡便に行う手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電子銃などにより発生させた電子線を試料へ照射すると、試料に入射した電子線は試料を構成する原子核や電子との相互作用により進行方向を変えられ、試料から反射電子として飛び出す。このとき、反射電子の反射電子係数、すなわち入射電子数に対する発生した反射電子の割合は、電子線の入射角度と試料を構成する材料の元素の原子量に依存する。
そこで本発明では、原子量が既知の材料に電子線を照射したときの反射電子を予め検出しておき、材料の原子量とその材料から生じる反射電子の検出強度との間の関係を線形近似した近似式を定める。そして、試料に電子線を照射したときの反射電子の検出強度を求め、近似式を用いて試料の原子量を決定することにより試料の材料を分析する。
【0008】
本発明の第1形態によれば、試料に電子線を照射する電子銃と、電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を検出する電子検出部と、電子検出部による反射電子の検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析部と、を備える材料分析装置が提供される。ここで材料分析部は、原子量が既知の材料に電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出器で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部と、決定した近似一次式に従って、試料に電子線を照射したときに試料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度から、試料の材料の原子量を決定する原子量決定部と、を備える。
【0009】
本発明の第2形態によれば、試料に電子線を照射し、電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を電子検出部で検出し、電子検出部による反射電子の検出強度に応じて試料の材料を分析する材料分析方法が提供される。本方法では、原子量が既知の材料に電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を電子検出器で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定し、決定した近似一次式に従って、試料に電子線を照射したときに試料から飛び出す反射電子を電子検出部で検出した検出強度から、試料の材料の原子量を決定する。
【発明の効果】
【0010】
半導体デバイス製造工程において、電子顕微鏡を用いて試料の材料分析を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の実施例による材料分析装置のブロック図である。材料分析装置1は、試料として、半導体デバイス製造工程において、その表面に回路パターンが形成された半導体ウエハ12(以下「ウエハ」と記す)の表面に存在する物質の材料分析を行う。材料分析装置1は、電子線EBを照射する際にウエハ12を収容する真空試料室1と、ウエハ12を載置するステージ11と、電子線EBを発生させる電子銃13と、電子線EBが照射されたウエハ12の表面から飛び出す反射電子REを検出する電子検出部14と、ステージ11の上に設けられた既知の材料で作られた標準試験片S1及びS2を備える。
【0012】
さらに材料分析装置1は、電子検出部14から出力された検出信号を増幅する信号増幅部15と、信号増幅部15により増幅されたアナログ形式の検出信号をディジタル形式の検出信号に変換するアナログディジタル信号変換部(ADC)16と、ディジタル形式に変更された検出信号の信号値を、後段の画像生成部18が生成する電子線画像用の画素値に変換する信号変換部17と、信号変換部17により検出信号から変換された画素値を配列してウエハ12で反射した反射電子REの電子線画像を生成する画像生成部18と、画像生成部18が生成した電子線画像を表示する表示部19と、を備える。
【0013】
図2は、図1に示す画像生成部18により生成される電子線画像の説明図である。ウエハ12で反射する反射電子REの電子線画像50を生成する際には、電子線EBによりウエハ12上のある走査範囲R内を走査する。図2の例では、符号Pで示す走査線に沿って電子線EBの照射位置を変えながら、各照射位置で電子検出部14が検出した反射電子REの検出強度を取得する。例えば電子線EBが走査線P上の位置p1、p2及びp3を照射しているときに電子検出部14が検出した反射電子REの検出強度をSG1、SG2及びS3とする。
【0014】
画像生成部18は、走査範囲R内における各照射位置p1、p2及びp3のそれぞれに対応する、電子線画像50内の座標位置P1、P2及びP3における画素値(明度レベル)を、信号変換部17が反射電子REの検出信号値SG1、SG2及びSG3からそれぞれ変換した画素値B1、B2及びB3とすることにより、反射電子REの電子線画像50を生成する。
信号変換部17は、所定の変換式を用いて電子検出部14の検出信号値を電子線画像50に用いる画素値へと変換する。電子検出部14の検出信号値から画素値を求める変換式は、図7〜図10を参照して後述するように変換された画素値により構成される電子線画像50が適度なコントラストが得られるように定められている。
【0015】
図1に示す材料分析装置1は、作業者(ユーザ)が材料分析装置1へ対して指示や情報を入力するための入力部20を備える。入力部20は、本構成例において、材料分析装置1により材料の分析の対象となるウエハ12の基板の材料や、ウエハ12上の回路パターンの形成に用いられた材料に関する情報を入力するために使用される。
さらに材料分析装置1は、信号変換部17により電子検出部14の検出信号値から変換された画素値に基づいて、ウエハ12上の電子線EBの照射位置の材料を分析する材料分析部30と、信号変換部17によって電子検出部14の検出信号値から変換される画素値の範囲を最適化する画素値最適化部40とを備える。
【0016】
図3は、図1に示す材料分析部30の第1構成を示すブロック図である。材料分析部30は、画素値判定部31と、第1近似式決定部33と、原子量判定部34と、材料決定部35とを備える。
画素値判定部31は、原子量が予め判明している2種類以上の材料に電子線EBを照射したときに電子検出部14で反射電子REを検出された検出信号値を信号変換部17によって変換して得たそれぞれの画素値を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した画素値との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。
【0017】
第1近似式決定部33は、画素値テーブル32に保存した、各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値とを用いて、原子量と画素値との間の関係を線形近似する第1近似1次式を決定する。
原子量判定部34は、ウエハ12上の各位置を電子線EBで走査したときに各々信号変換部17から出力される画素値を、第1近似式決定部33が決定した第1近似1次式にそれぞれ代入することにより、ウエハ12上の各位置の材料の原子量を判定する。
材料決定部35は、原子量判定部34が判定した原子量に従って、ウエハ12上の各位置の材料を決定する。材料決定部35は決定した材料を示す材料指定情報を画像生成部18へ出力する。
【0018】
図1に示す材料分析装置1の動作フローチャートの第1例を図4に示す。ステップS1では、信号変換部17が電子検出部14の検出信号値から画素値へ変換する上記の所定の変換式を設定することによって、画像生成部18により生成される電子線画像の各画素が有する画素値の範囲を最適化する。ステップS1の処理内容は図7〜図10を参照して後述する。
【0019】
ステップS2では、原子量が予め判明している2種類以上の材料に電子線EBが照射され、それぞれの材料から飛び出した反射電子REが電子検出部14にて検出され、このときの電子検出部14の検出信号値が信号変換部17によって画素値に変換される。
原子量が予め判明している材料に電子線EBを照射するために、材料分析装置1に、既知の単元素で構成された材料によりなる2種類の異なる標準試験片を設け、これらの標準試験片に電子線EBを照射して、試験片から飛び出した反射電子REを検出してもよい。本実施例では炭素で作られた標準試験片S1と銅で作られた標準試験片S2を備えている。
【0020】
標準試験片を材料分析装置1に設ける代わりに、ウエハ12の設計情報を用いてウエハ12の表面上で単元素の材料でパターンが形成された箇所を特定し、この箇所に電子線EBを照射して、この部分から飛び出した反射電子REを電子検出部14で検出してもよい。既知の材料に電子線EBを照射するために使用される部分は、ウエハ12に形成される回路パターンの部分であってもよく、またウエハ12上のチップが形成されない領域に、既知の単元素の材料のパターンを形成しこの部分に電子線EBを照射して反射電子REを検出してもよい。
【0021】
ステップS3では、画素値判定部31は、既知の2種類以上の材料に電子線EBを照射したときの反射電子REの検出強度を信号変換部17が出力したそれぞれの画素値を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した画素値との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。図5は画素値テーブル32の第1例を示す図である。
【0022】
ステップS4では、第1近似式決定部33は、画素値テーブル32に保存した各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値とを用いて、原子量と画素値との間の関係を線形近似する第1近似1次式を決定する。
図6は、2種類の材料A1及びA2について、それぞれの原子量N1及びN2と、それぞれに電子線EBを照射したときに信号変換部17からそれぞれ出力される画素値B1及びB2が分かっている場合に、原子量Nと画素値Bとの関係を線形近似する第1近似1次式を示す図である。
【0023】
第1近似1次式(1)は、
N=(N2−N1)/(B2−B1)×(B−B1)+N1 …(1)
によって決定することができる。
3種類の材料について、それぞれの原子量と画素値とが分かっている場合には、最小二乗法などの手法を用いて第1近似1次式を決定してもよい。
【0024】
ステップS5では、電子線EBでウエハ12を走査して、ウエハ12の被検査領域の各位置に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14にてそれぞれ検出し、このとき電子検出部14が出力する各検出信号値を信号変換部17によって画素値にそれぞれ変換する。
このとき信号変換部17から出力される画素値は電子銃13による電子線EBの電流値や信号増幅部15のゲインなどよって変化するので、材料分析装置1の装置状態をステップS2のときの状態から変えないでステップS5を行う。
【0025】
ステップS6では、原子量決定部34は、ウエハ12の被検査領域の各位置についてそれぞれ決定した各画素値Bxを、第1近似1次式(1)に代入することにより、ウエハ12の被検査領域の各位置の材料のそれぞれの原子量Nxを決定する。
ステップS7では、材料決定部35は、ウエハ12の被検査領域の各位置の材料のそれぞれについて決定された原子量Nxに従ってそれぞれの箇所の材料を決定する。
【0026】
様々な原子量Nxに対応する材料を決定するために、例えばウエハ12上に存在することが考えられる複数の単元素の材料の識別子と、それぞれの材料の原子量を記憶する原子量テーブルを材料決定部35に設けておいてもよい、このとき材料決定部35は、原子量テーブルから原子量決定部34が決定した各原子量Nxを有する単元素の材料の識別子を探すことによって、各原子量Nxに対応する材料を決定する。
【0027】
材料決定部35は、ステップS6及びステップS7により特定された、ウエハ12の被検査領域内の各位置に存在する材料の識別子を含む材料指定情報を画像生成部18へ出力する。画像生成部18は表示部19に表示する電子線画像を生成するとき、電子線画像の各画素が示すそれぞれの部分の材料を表す情報を電子線画像に含める。例えば材料に応じて各画素の色を変えてもよく、また電子線画像内に各領域の材料名を表示してもよい。
【0028】
図7は、図1に示す画素値最適化部40の構成例を示すブロック図である。画素値最適化部40は、画像生成部18により生成される電子線画像の各画素が有する画素値の範囲の最適化を行う図4に示すステップS1の処理を実行する。すなわち信号変換部17によって電子検出部14の検出信号値から電子線画像50に用いる画素値へと変換する際に使用する変換式を設定する。
画素値最適化部40は、信号強度判定部41と、第2近似式決定部43と、信号強度範囲決定部44と、変換パラメータ決定部45とを備える。
【0029】
信号強度判定部41は、作業者が入力部20から入力した既知の2つ以上の種類に材料に関する情報を受信する。そして、指定された材料のうち2種類以上の材料に電子線EBを照射したときに、これら材料から飛び出す反射電子REを検出した電子検出部14の出力信号を入力する。信号強度判定部41は、各材料と、それらの原子量及び出力信号の信号強度との間の対応関係を保存する信号強度テーブル42を生成する。
【0030】
第2近似式決定部43は、信号強度テーブル42に保存した、各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号強度とを用いて、原子量と信号強度との間の関係を線形近似する第2近似1次式を決定する。
信号強度範囲決定部44は、作業者から指定された材料のうち、反射電子REの検出を行わなかったものがあるときは、この材料に電子線EBを照射した場合に電子検出部14が出力しうる信号強度を、その材料の原子量から第2近似1次式を用いて決定する。信号強度範囲決定部44は、作業者から指定された各材料について反射電子REの検出を行ったときに電子検出部14が出力しうる信号強度の範囲を決定する。
変換パラメータ決定部45は、信号強度範囲決定部44により決定された信号強度の範囲内で変動しうる信号値を画素値へ変換したときに、変換後の画素値が、電子線画像50に許容されるダイナミックレンジの範囲内になるように、検出信号値から画素値への変換式の変換パラメータを決定する。
【0031】
図8は、図4に示すフローチャートにおけるステップS1で行う処理のフローチャートである。ステップS10において、少なくとも2種類以上の材料について、その材料の識別子とその材料の原子量を入力する。入力した材料の識別子と原子量に関する情報を、信号強度判定部41へ入力する。
例えばステップS10では、少なくとも2種類以上の材料の識別子とその材料の原子量とを作業者に入力部20を介して入力させてよい。また、図示しない記憶部に複数の材料の識別子と原子量とを予め記憶しておき、その中から2種類以上の材料を作業者に入力部20を介して選択させることにより、2種類以上の材料の識別子とその材料の原子量を入力させてもよい。
フローチャートの例は、材料A1、A2及びBの計3種類の識別子とそれぞれの材料の原子量N1、N2及びN3を入力する。
【0032】
ステップS11において、ステップS10にて入力した材料のうち少なくとも2種類以上の材料に電子線EBを照射して、それぞれの材料から飛び出した反射電子REを電子検出部14にて検出する。フローチャートの例では材料A1及びA2に電子線EBを照射して、それぞれの材料から飛び出した反射電子REを電子検出部14にて検出する。それぞれの反射電子REを検出した信号強度をSG1及びSG2とする。
このとき標準試験片S1及びS2の材料をA1及びA2とし、これら標準試験片S1及びS2から飛び出す反射電子REを検出してもよく、ウエハ12上の材料A1及びA2で形成されていることが予め分かっている部分から飛び出す反射電子REを検出してもよい。
【0033】
ステップS12では、信号強度判定部41は、既知の2種類以上の材料に電子線EBを照射したときの反射電子REを検出した電子検出部14の出力信号の信号強度を入力し、各材料と、それらの原子量及び入力した信号強度との間の対応関係を保存する信号強度テーブル42を生成する。図9は2つの材料A1及びA2について作成した信号強度テーブル42の例を示す図である。
【0034】
ステップS13では、第2近似式決定部43は、信号強度テーブル42に保存した各材料の原子量と、各材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度とを用いて、原子量と信号強度の間の関係を線形近似する第2近似1次式を決定する。
図10の(A)は、2種類の材料A1及びA2について、それぞれの原子量N1及びN2と、それぞれに電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度SG1及びSG2が分かっている場合に、原子量Nと信号強度SGとの関係を線形近似する第2近似1次式を示す図である。
【0035】
第2近似1次式(2)は、
SG=(SG2−SG1)/(N2−N1)×(N−N1)+SG1 …(2)
によって決定することができる。
3種類の材料について、それぞれの原子量と信号強度とが分かっている場合には、最小二乗法などの手法を用いて第2近似1次式を決定してもよい。
【0036】
ステップS14にて信号強度範囲決定部44は、ステップS10にて情報を入力した材料のうち、ステップS11において反射電子REを電子検出部14にて検出していないものがあるときには、この材料に電子線EBを照射したときの電子検出部14の出力信号の信号強度を、第2近似1次式を用いて決定する。
本フローチャートの例ではステップS10にて情報を入力した材料のうち、材料BについてはステップS11で反射電子REを検出していない。ステップS14では、材料Bの原子量N3を第2近似1次式(2)に代入して、材料Bから飛び出す反射電子REを検出した信号強度SG3を決定する。決定したSG3の値を図10の(A)に示す。
【0037】
ステップS15にて信号強度範囲決定部44は、ステップS10にて情報を入力した各材料について反射電子REを検出したときに、電子検出部14の出力信号が取りうる信号強度範囲を決定する。図10の(A)に示す例では、材料A1、A2及びBについて反射電子REを検出すると、電子検出部14の出力信号は最小値SG1から最大値SG3の範囲を取りうる。図10の(A)を参照して分かるとおり、電子検出部14の出力信号の信号強度範囲SG1〜SG3は、ステップS10にて情報を入力した各材料の原子量の範囲N1〜N3に応じて定まる。
【0038】
ステップS16にて変換パラメータ決定部45は、ステップS15にて決定した信号強度範囲SG1〜SG3内の信号を、信号変換部17にて画素値へ変換したときに、変換後の画素値が、電子線画像50に許容されるダイナミックレンジの範囲内になるように、電子検出部14の検出信号値から画素値への変換式の変換パラメータを決定する。
例えば図10の(B)に示すように、電子線画像50の画素値のダイナミックレンジが画素値0〜Bmaxであるとし、信号変換部17は、検出信号値の下限SG1〜上限SG3までの範囲の検出信号値を、画素値の下限BL〜上限BHまでの範囲の画素値に変換すると仮定する。ここで画素値BLは電子線画像50の画素値のダイナミックレンジの最低値0よりも所定のマージンΔB2だけ大きい値であり、画素値BHはダイナミックレンジの最大値BmaxよりもマージンΔB1だけ小さい値である。
【0039】
変換パラメータ決定部45は、電子検出部14の検出信号値SGから画素値Bへの1次変換式(3)を以下のように定めてよい。
B=(BH−BL)/(SG3−SG1)×(SG−SG1)+BL …(3)
変換パラメータ決定部45は、1次変換式(3)を決定するパラメータ(すなわち傾きや切片など)を信号変換部17へ出力する。
信号変換部17は、このパラメータによって定まる1次変換式(3)を用いて、電子検出部14の検出信号値を画素値へ変換する。
【0040】
図11は、図1に示す材料分析部30の第2構成を示すブロック図である。上記の実施例では、図12の(A)に示すように、ウエハ12上に形成された材料分析の対象の物質の層にはある程度の厚みがあり、反射電子REは電子線EBを照射された対象物質A1から飛び出すことを前提としている。例えば電子線EBの電子のエネルギーが1keV以下である場合には、対象物質A1の厚さが1μm以上あれば、電子線EBは対象物質A1を貫通しないので、反射電子REは全て対象物質A1から飛び出す。
しかしながら、対象物質A1の厚さが薄いと図12の(B)に示すように電子線EBが対象物質A1を貫通して下層A2へ至るので、電子検出部14により検出される反射電子REは、対象物質A1から飛び出す成分RE1と下層A2から飛び出す成分RE2とを含む。このような場合には、反射電子REの反射電子係数が対象物質A1の層の厚さや下層A2の原子量に左右されるため、図3に示す第1構成例の材料分析部30では、対象物質A1の原子量を決定することができない。
【0041】
そこで以下に述べる実施例では、材料分析を行うウエハ12の表面の各箇所に電子線EBを照射し、それぞれの部分から飛び出した反射電子REを検出した電子検出部14の検出信号値を信号変換部17によって画素値へそれぞれ変換する。また、電子線EBが照射されるウエハ12の表面のそれぞれの箇所に存在する材料をウエハ12の設計情報を用いて特定する。図11に示す第2構成例の材料分析部30の画素値判定部31は、ウエハ12の設計情報を用いて特定されるウエハ12の表面のそれぞれの箇所の材料と、それらの材料から反射電子REを検出したときの検出信号値を変換した画素値とを、画素値テーブル32に対応付けて記憶する。
【0042】
ウエハ12の表面に存在する材料を分析する際に、ウエハ12の表面の上が電子線EBで走査され、電子検出部14がから順次出力される検出信号値が信号変換部17によってそれぞれ画素値に変換されると、材料決定部35は、変換された画素値と同じ画素値に対応付けられて画素値テーブル32に記憶した材料を探して、電子線EBの照射位置の材料を決定する。
本構成によれば、仮にウエハ12の表面に形成されたある材料Xの膜が薄く形成されている場合でも、ウエハ12上において実際に同じ材料Xで同じように形成された部分における反射電子の検出強度を予め取得し、予め取得した検出強度と、被検査対象から反射した反射電子の検出強度とが等しいか否かによって、被検査対象の材料がXであるか否かを分析することにより、材料Xの膜の下層から反射する反射電子が生じてしまう場合においても両者で同様の検出強度が検出されるので、被検査対象の成分が材料Xであることを分析することができる。
【0043】
図13に示すフローチャートを参照して、図11の例による材料分析部30を備える材料分析装置1の動作フローを示す。ステップS1では、信号変換部17による電子検出部14の検出信号値から画素値へ変換する画素値の範囲を最適化する。処理の内容は図7〜図10を参照して説明した通りである。
【0044】
ステップS2では、ウエハ12の表面の予め決めた複数の箇所に電子線EBを照射し、それぞれの部分から飛び出した反射電子REを検出した電子検出部14の検出信号値を信号変換部17によって画素値へそれぞれ変換する。画素値判定部31は、これらの画素値をそれぞれ入力する。図14は、ウエハ12上の所定範囲Rにおけるウエハ表面の材料の構成を示す図である。電子線EBを照射され反射電子REを検出した各点p1〜p4の部分は、それぞれ材料A1〜A4で構成されているものとする。
【0045】
ステップS21では、画素値判定部31は、ウエハ12の設計情報を用いて、ステップS2にて電子線EBを照射したウエハ12表面の各箇所A1〜A4の材料を特定する。そしてこれら各箇所p1〜p4の材料A1〜A4と、それぞれの箇所p1〜p4に電子線EBを照射して反射電子REを検出したときの画素値B1〜B4との間の対応関係を保存する画素値テーブル32を生成する。図15は画素値テーブル32の第2例を示す図である。
【0046】
ステップS22では、電子線EBでウエハ12を走査して、ウエハ12の被検査領域の各位置に電子線EBを照射したときの反射電子REを電子検出部14にてそれぞれ検出し、このとき電子検出部14が出力する各検出信号値を信号変換部17によって画素値にそれぞれ変換する。
このとき材料分析装置1の装置状態をステップS2のときの状態から変えないで電子線EBによる走査を行う。
ステップS23では、材料決定部35は、ウエハ12の被検査領域の各位置についてそれぞれ決定した各画素値と、同じ画素値に対応して記憶された材料を画素値テーブル32から探して、電子線EBの照射位置の材料を決定する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、試料に電子線を照射して試料から飛び出す反射電子を検出することにより試料の材料を分析する材料分析装置及び材料分析方法に利用可能である。好適には半導体製造工程において、半導体デバイス装置の表面で検出した異物の材料を分析する材料分析装置及び材料分析方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例による材料分析装置のブロック図である。
【図2】図1に示す画像生成部により生成される電子線画像の説明図である。
【図3】図1に示す材料分析部の第1構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す材料分析装置の動作の第1例を示すフローチャートである。
【図5】画素値テーブルの第1例を示す図である。
【図6】原子量と画素値との関係を線形近似する第1近似1次式を示す図である。
【図7】図1に示す画素値最適化部の構成例を示すブロック図である。
【図8】図4に示すフローチャートにおけるステップS1で行う処理のフローチャートである。
【図9】信号強度テーブルの例を示す図である。
【図10】(A)は原子量と電子検出部の出力信号の強度との関係を線形近似する第2近似1次式を示す図であり、(B)は電子検出部の出力信号から画素値へ変換する1次変換式を示す図である。
【図11】図1に示す材料分析部の第2構成を示すブロック図である。
【図12】(A)は分析対象となる物質A1から全ての反射電子が出る状態を示す図であり、(A)は分析対象となる物質A1及びその下層の物質A2から反射電子が出る状態を示す図である。
【図13】図1に示す材料分析装置の動作の第3例を示すフローチャートである。
【図14】ウエハ上の所定範囲Rにおけるウエハ表面の材料の構成を示す図である。
【図15】画素値テーブルの第2例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 材料分析装置1
10 真空試料室
11 ステージ
12 半導体ウエハ
13 電子銃
14 電子検出部
EB 電子線
RE 反射電子
S1、S2 標準試験片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に電子線を照射する電子銃と、
前記電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を検出する電子検出部と、
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度に応じて前記試料の材料を分析する材料分析部と、を備える材料分析装置であって、
前記材料分析部は、
原子量が既知の材料に前記電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に前記電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部と、
前記近似一次式に従って、前記試料に前記電子線を照射したときに前記試料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度から、前記試料の材料の原子量を決定する原子量決定部と、
を備える材料分析装置。
【請求項2】
表示部と、
前記電子検出部の出力信号値を、前記表示部に表示する画像の画素値に変換する信号変換部と、
前記信号変換部により変換された画素値を配列して電子線画像を生成する画像生成部と、
原子量が既知の複数の材料を選択するユーザの選択入力を受け付ける入力部と、
選択された前記複数の材料がとる原子量の範囲に応じて、前記信号変換部により前記電子検出部の出力信号値から変換される前記画素値の範囲を最適化する画素値最適化部と、
をさらに備える請求項1に記載の材料分析装置。
【請求項3】
前記材料分析部は、前記信号変換部により前記電子検出部の出力信号値から変換した前記画素値を、前記電子検出部による前記反射電子の検出強度を示す信号として使用する、請求項2に記載の材料分析装置。
【請求項4】
前記既知の材料の試験片を備え、
前記近似式決定部は、前記試験片に前記電子線を照射したときにその試験片から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、前記近似一次式を決定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料分析装置。
【請求項5】
前記近似式決定部は、前記試料上の材料の原子量が既知の部分に前記電子線を照射したときにその部分から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、前記近似一次式を決定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料分析装置。
【請求項6】
試料に電子線を照射し、
前記電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を電子検出部で検出し、
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度に応じて前記試料の材料を分析する、
材料分析方法であって、
原子量が既知の材料に前記電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に前記電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定し、
前記近似一次式に従って、前記試料に前記電子線を照射したときに前記試料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度から、前記試料の材料の原子量を決定する材料分析方法。
【請求項7】
原子量が既知の複数の材料を選択するユーザからの選択入力を受け付け、
前記電子検出部の出力信号値を所定の表示部に表示する画像の画素値に変換し、変換された前記画素値を配列することにより電子線画像を生成するとき、選択された前記複数の材料がとる原子量の範囲に応じて、前記電子検出部の出力信号値から前記画素値へ変換する際の前記画素値の範囲を最適化する請求項6に記載の材料分析方法。
【請求項8】
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度を示す信号として、前記電子検出部の出力信号値から変換された前記画素値を使用する、請求項7に記載の材料分析方法。
【請求項9】
前記既知の材料の試験片に前記電子線を照射したときにその試験片から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づいて、前記近似一次式を決定する請求項6〜8のいずれか一項に記載の材料分析方法。
【請求項10】
前記試料上の材料の原子量が既知の部分に前記電子線を照射したときにその部分から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づいて、前記近似一次式を決定する請求項6〜8のいずれか一項に記載の材料分析方法。
【請求項1】
試料に電子線を照射する電子銃と、
前記電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を検出する電子検出部と、
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度に応じて前記試料の材料を分析する材料分析部と、を備える材料分析装置であって、
前記材料分析部は、
原子量が既知の材料に前記電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に前記電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定する近似式決定部と、
前記近似一次式に従って、前記試料に前記電子線を照射したときに前記試料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度から、前記試料の材料の原子量を決定する原子量決定部と、
を備える材料分析装置。
【請求項2】
表示部と、
前記電子検出部の出力信号値を、前記表示部に表示する画像の画素値に変換する信号変換部と、
前記信号変換部により変換された画素値を配列して電子線画像を生成する画像生成部と、
原子量が既知の複数の材料を選択するユーザの選択入力を受け付ける入力部と、
選択された前記複数の材料がとる原子量の範囲に応じて、前記信号変換部により前記電子検出部の出力信号値から変換される前記画素値の範囲を最適化する画素値最適化部と、
をさらに備える請求項1に記載の材料分析装置。
【請求項3】
前記材料分析部は、前記信号変換部により前記電子検出部の出力信号値から変換した前記画素値を、前記電子検出部による前記反射電子の検出強度を示す信号として使用する、請求項2に記載の材料分析装置。
【請求項4】
前記既知の材料の試験片を備え、
前記近似式決定部は、前記試験片に前記電子線を照射したときにその試験片から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、前記近似一次式を決定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料分析装置。
【請求項5】
前記近似式決定部は、前記試料上の材料の原子量が既知の部分に前記電子線を照射したときにその部分から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、前記近似一次式を決定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料分析装置。
【請求項6】
試料に電子線を照射し、
前記電子線を照射された試料の表面から飛び出す反射電子を電子検出部で検出し、
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度に応じて前記試料の材料を分析する、
材料分析方法であって、
原子量が既知の材料に前記電子線を照射したときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づき、ある材料に前記電子線を照射するときにその材料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度とその材料の原子量との間の近似一次式を決定し、
前記近似一次式に従って、前記試料に前記電子線を照射したときに前記試料から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度から、前記試料の材料の原子量を決定する材料分析方法。
【請求項7】
原子量が既知の複数の材料を選択するユーザからの選択入力を受け付け、
前記電子検出部の出力信号値を所定の表示部に表示する画像の画素値に変換し、変換された前記画素値を配列することにより電子線画像を生成するとき、選択された前記複数の材料がとる原子量の範囲に応じて、前記電子検出部の出力信号値から前記画素値へ変換する際の前記画素値の範囲を最適化する請求項6に記載の材料分析方法。
【請求項8】
前記電子検出部による前記反射電子の検出強度を示す信号として、前記電子検出部の出力信号値から変換された前記画素値を使用する、請求項7に記載の材料分析方法。
【請求項9】
前記既知の材料の試験片に前記電子線を照射したときにその試験片から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づいて、前記近似一次式を決定する請求項6〜8のいずれか一項に記載の材料分析方法。
【請求項10】
前記試料上の材料の原子量が既知の部分に前記電子線を照射したときにその部分から飛び出す反射電子を前記電子検出部で検出した検出強度に基づいて、前記近似一次式を決定する請求項6〜8のいずれか一項に記載の材料分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−63493(P2009−63493A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232885(P2007−232885)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
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