説明

板状構造物

【課題】 作業性に優れた板状構造物を提供することにある。
【解決手段】 長板状部材が、基体上に間隙を設けつつ幅方向に複数枚配列され、前記間隙に配された固定具により、前記基体に固定されてなる板状構造物であって、前記長板状部材は、両側面に係止用凹部を有し、前記固定具は、前記間隙に挿通し得るように短手方向が前記間隙よりも幅狭とされ且つ前記係止用凹部に係入し得るように長手方向が前記間隙よりも幅広とされた係止部材と、該係止部材を前記基体に取付ける前記係止部材の短手方向よりも径小なねじ部材とを備え、前記係止部材は、前記ねじ部材の回転と共に回転可能で、且つ長手方向先端部が前記係止用凹部に係入された状態で、前記長板状部材と当接し締結方向への回転を停止させる当接部を備えており、前記長板状部材は、前記係止部材が前記ねじ部材を軸として回転されて該係止部材の長手方向先端部が前記係止用凹部に係入されることにより前記基体に固定されていることを特徴とする板状構造物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状構造物に関し、より詳しくは、長板状部材が幅方向に複数枚基体上に配列されてなる板状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長板状部材を間隙を設けて幅方向に複数並べた板状構造物が、床、壁などとして広く用いられている。
このような板状構造物は、個々の長板状部材がねじ部材などで基体に固定されて形成されているが、日常生活において人が触れる場所に配され前記ねじ部材で体や衣服を傷つけることを防ぐ必要がある場合や、美観上ねじ部材が外部に露出することが問題となる場合などにおいては、前記長板状部材として側面にスリット溝などの係止用凹部が形成されたものが用いられる。即ち、長板状部材を目地を設けるなどして配列し、このスリット溝とねじ部材との係合を外部から行うことで板状構造物の表面にねじ部材が現れないようされている。
ところで、板状構造物の目地は、長板状部材を基体に固定する際に、一定の間隙を設けて幅方向に配列されることで形成される。このような間隙を設ける手段として、従来は、固定した長板状部材と次に固定する長板状部材との間に目地間隔に応じたスペーサーを挟み、一枚づつ長板状部材を固定する方法が行われており、特許文献1には、側面に溝の形成された長板状部材と、上下に平板構造を有し且つ上下の平板を連結する板構造を備えた正面横H字状の金物をスペーサーとして用いて、所定の間隙を保持しつつ床構造を形成する方法が開示されている。
しかし、このような板状構造物は、一部の長板状部材を微調整したり取り替える必要が生じたときに、板状構造物の端から、取り替える必要のある部分までの全ての長板状部材を取り外さなければならず作業性が悪いという問題を有している。
また、特許文献2には鋼板と該鋼板と直交方向に配され該鋼板を回動自在に保持するボルトと該ボルトの周りに取付けられたバネ材とを備えたねじ部材により、前記鋼板を外壁パネルの側面に供えられた凹部に係入させて外壁パネルの固定を行うことが記載され、前記鋼板を回転させて鋼板の方向を変えることにより外壁パネルを係合状態と開放状態とに変更し、外壁パネルの位置を微調節可能に固定することが開示されている。
しかし、このような板状構造物においては、ねじ部材にて外壁パネルを固定する際に、前記鋼板がねじの回転にともなって回転することを鋼板とバネ材との摩擦力により抑制しているため、前記ねじ部材の締結時に加える力の大きさにより鋼板とねじ部材との摩擦力がバネ材との摩擦力を上回り、鋼板が回転して外壁パネルから外れる怖れがある。このことを防止するためには、ねじ部材の締結時に鋼板が回転しないよう作業を慎重に行うか、あるいは、鋼板が外れた場合にねじ部材を緩めて改めて固定作業をやり直すかしなければならず作業性が悪いという問題を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−47782号公報
【特許文献2】特開平5−230901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、作業性に優れた板状構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決すべく、長板状部材が、基体上に間隙を設けつつ幅方向に複数枚配列され、前記間隙に配された固定具により、前記基体に固定されてなる板状構造物であって、前記長板状部材は、両側面に係止用凹部を有し、前記固定具は、前記間隙に挿通し得るように短手方向が前記間隙よりも幅狭とされ且つ前記係止用凹部に係入し得るように長手方向が前記間隙よりも幅広とされた係止部材と、該係止部材を前記基体に取付ける前記係止部材の短手方向よりも径小なねじ部材とを備え、前記係止部材は、前記ねじ部材の回転と共に回転可能で、且つ長手方向先端部が前記係止用凹部に係入された状態で、前記長板状部材と当接し締結方向への回転を停止させる当接部を備えており、前記長板状部材は、前記係止部材が前記ねじ部材を軸として回転されて該係止部材の長手方向先端部が前記係止用凹部に係入されることにより前記基体に固定されていることを特徴とする板状構造物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の板状構造物は、長板状部材が、基体上に間隙を設けつつ幅方向に複数枚配列され、前記間隙に配された固定具により、前記基体に固定されてなる板状構造物であって、前記長板状部材は、両側面に係止用凹部を有し、前記固定具は、前記間隙に挿通し得るように短手方向が前記間隙よりも幅狭とされ且つ前記係止用凹部に係入し得るように長手方向が前記間隙よりも幅広とされた係止部材と、該係止部材を前記基体に取付ける前記係止部材の短手方向よりも径小なねじ部材とを備え、前記係止部材が前記ねじ部材の回転と共に回転可能であるため、前記係止部材をねじ部材とともに回転させることで任意の長板状部材のみを取り外すことができ、長板状部材の位置調整作業あるいは交換作業の作業性を良好なものとし得る。
また、本発明の板状構造物は、前記係止部材が、長手方向先端部が前記係止用凹部に係入された状態で、前記長板状部材と当接し締結方向への回転を停止させる当接部を備えているため摩擦力により前記回転を停止させる場合に比べ、ねじ部材の締結時に係止部材が回転して、長板状部材から外れてしまうことを抑制することができ、長板状部材の固定作業を良好なものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の好ましい実施の形態についてベランダデッキ用板状構造物を例に挙げて図を参照して説明する。
【0008】
ベランダデッキは、図1に示すように両側面に係止用凹部となるスリット溝11を備えた長板状のデッキプレート1を基体となる根太2の上に所定の間隙を設けて幅方向に複数枚配列されて形成されている。
前記根太2は、通常、ベランダの長手方向に配され、前記デッキプレート1は、通常、前記根太2に対して直行する方向、即ち、ベランダの短手方向に配されている。
また、前記根太2には、配置された前記デッキプレートの間隙に該デッキプレートを前記根太2に固定するための固定具3が配される。
【0009】
前記根太2は、通常、アルミニウム材からなり一辺30mm程度の正方形の断面を有する角パイプ形状に形成されており、長さがベランダデッキの長手方向と同じ長さとされ、ベランダデッキの幅方向に等間隔に複数本配されている。
【0010】
前記デッキプレート1は、通常、人工木材からなり幅が50〜150mm、厚さが20〜100mm、長さがベランダの幅方向長さと同じ長さとされ、前記根太2に直交する方向に、隣接するデッキプレート1との間に3〜7mm程度の目地を設けてベランダデッキ全面に配される。
【0011】
また、前記デッキプレート1は、図2に示すように長さ方向の側面が、該側面の厚み方向上部と下部とを幅方向に突出させそれぞれ上羽根12、下羽根13を形成し、中央部において係止用凹部となるスリット溝11を形成している。前記上羽根12は、通常、前記下羽根13よりもさらに幅方向に2〜5mm突出している。また、これら上羽根12、下羽根13、スリット溝11の厚さはデッキプレート1の素材や厚さにもよるが、通常、各々デッキプレート1の厚さの三分の一とされる。
また、前記スリット溝11の前記下羽根13からの奥行きは、5〜20mmに形成されている。
【0012】
前記固定具3は、間隙に挿通し得るように短手方向が前記間隙よりも幅狭とされ且つ前記スリット溝に係入し得るように長手方向が前記間隙よりも幅広とされた係止部材32と、該係止部材32を前記根太に取付ける前記係止部材32の短手方向よりも径小なねじ部材31とを備えている。
前記固定具3は、通常、ステンレス製でねじ部材31の軸部312の径が3〜5mmとされ、該軸部312よりも1〜2mm径大な頭部311を備えたボルトが用いられる。また、前記頭部311には、六角レンチやドライバーなどの締め付け手段に応じた溝が形成され、前記軸部312には前記締め付け手段により時計方向に回転させられた場合に締結する方向となるようねじが形成されている。
【0013】
前記係止部材32は、前記ねじ部材31に回動自在に保持され得るように中央部に前記軸部312よりも径大で、前記頭部311よりも径小なる貫通孔320を有する底板321を備え、該底板321から上方に立設した側壁322と、該側壁322から側方に突出した係合壁323を備えている。
また、前記底板321の下部には、前記ねじ部材31周りにバネ材4が備えられている。
【0014】
前記底板321は、ねじ部材31の締結力により変形することのない強度とされ、通常、1〜2mmの壁厚さを有する。
また、前記底板321は、外縁に沿って側壁322が立設され、前記正方形の一辺の長さが前記隣接するデッキプレート1の下羽根13の間隙より僅かに幅狭な大きさとされる。
前記底板321と側壁322とは、前記係止部材32をねじ部材31の締結方向へ約90度回転させた後、前記側壁322をデッキプレート1の下羽根13と当接させて停止し、且つ、該停止した状態から前記締結方向と逆方向に約90度回転さてた場合に再び前記側壁322をデッキプレート1の下羽根13と当接させて停止し得るように、図3、4に示す通り、正方形と該正方形に内接する円を描いた時に得られる前記正方形と前記円との4つの接点間を円上と正方形上を交互に移動して形成される紡錘形の上面視形状を備え、該底板321の中央部に前記貫通孔320を備えている。
【0015】
前記側壁322は、厚さ1〜2mm、前記下羽根13厚さより1〜5mm短い高さに形成され、一部に切り欠き部を有し、前記側壁322内部に水や埃が蓄積することを防止し得る構造となっている。
【0016】
前記係合壁323は、通常、厚さ1〜2mmとされ、前記係止部材32を前記ねじ部材31の締結方向に回転させて、前記側壁322と前記下羽根13とを当接させて停止した場合に、前記スリット溝11に係入した状態となり、前記締結方向と逆方向に回転させての前記側壁322と前記下羽根13とを当接させて停止した場合に、前記スリット溝11に係入していない状態となり得るように、前記底板321の前記正方形と同じ幅を有し、前記側壁322上縁部から側方に前記スリット溝11の奥行きよりも僅かに短い長さに突出している。
また、前記側壁322に対し180度対称な方向に2つの係合壁323を突出させている。
【0017】
前記バネ材4は、通常、内径を前記ねじ部材31の軸部312よりわずかに大きい径とされ、外径を前記貫通孔320よりも大きい径とされる。また、長さは通常時10mm程度、収縮時1mm以下となるようなものが好適である。
【0018】
上記のごとく、固定具3は、上面ほぼ長方形の形状を有し、前記貫通孔320の中心周りに180度回転させても同一の形状となる軸対称の形状を備えていることになる。
また、前記貫通孔320の中心から前記長方形の長手方向に引いた直線を前記中心周りに時計方向に90度の回転させた間の区間において前記底板321の円区間が形成され、さらに時計方向に90度回転させた場合に、正方形区間を備えている。
【0019】
次いで、このような構成部材を用いてベランダデッキを製造する方法について説明する。
【0020】
前記根太2を所定の間隔で配置し、前記デッキプレート1を固定する位置に全ての固定具3を前記ねじ部材31の先端の一部を根太2に螺合させて配置する。即ち、デッキプレート1の幅と必要な目地間隔とを加えた長さごとに固定具3を配置する。
【0021】
このように、配置された固定具3は、前記係合壁323を一方に揃え、配された固定具3の間にデッキプレート1を配する妨げにならないようにし、デッキプレート1を上方から根太2に配置する。
【0022】
全てのデッキプレート1を配置し終えた後、デッキプレート1をその両側に配された固定具3の内、いずれか一方側に押し付け、係止部材32の側壁322と、デッキプレート1の下羽根13とを接触させつつ前記目地の間から締め付け手段を挿入しねじ部材31を締め付けデッキプレート1の固定を行う。
このとき、係止部材32は、デッキプレート1を配置したときの状態から、ねじ部材31の締結方向に90度回転するまでの区間に前述の上面円弧状の側壁322が形成されているため、前記ねじ部材31の頭部311と底板321との摩擦により係止部材32を回転させることができる。また、係止部材32は、この90度回転した位置からさらに90度の区間に、前記側壁322が上面正方形の区間である当接部を備えているため、前記側壁322とデッキプレート1の下羽根13とを当接させて回転を停止させる。
このとき係止部材32は、前記係合壁323が前記スリット溝11に係入して停止し、ねじ部材31が前記係止部材32に対し相対回転して締結するを行うため、前記下羽根13と前記係合壁323とが係合された状態でデッキプレート1が根太2に固定されることとなる。
また、固定具3は、前記バネ材4を備えているために係合壁323をより高い位置で保持することができ、前記下羽根13と係合壁323が互いの側方を当接させて係合状態の妨げとなることを有効に回避し得る。
【0023】
また、このとき、全てのデッキプレート1を前記側壁323に対し接触させ、且つ接触させる下羽根13を左右のどちらか一方に定めて根太2への固定を行うことで、所定の目地間隔で整然とデッキプレート1を固定することができ目地間隔の微調整を行う手間を削減し得る。
たとえ、途中で当接させる方向を間違えたり、デッキプレート1を誤って破損してしまった場合でも、必要なデッキプレート1のみをやり直すことが可能である。
【0024】
また、このようにして目地間隔を3〜7mmに整えられた板状構造物は、目地に躓くこともなく、良好なる水捌けを有し、水溜りに足を滑らせる怖れも低下させることができベランダデッキとして好適なものとなる。
【0025】
なお、本実施形態においては、ベランダデッキ用の板状構造物を例示したが、本発明においては、板状構造物をベランダデッキに限定するものではなく、壁材、天井材など種々の板状構造物とすることができる。
【0026】
また、本実施形態においては、ねじ部材の締結方向に係止部材を回転させて係合壁を係止用凹部に係入している状態で停止させ、且つ、前記締結方向とは逆方向に回転させて係合壁が係止用凹部に係入していない状態で停止させ得ることから上記のように構造の係止部材を使用したが、本発明においては、上記の係止部材に限定するものではなく、例えば、固定具の停止手段として、前記係合壁の外端に当接部を設けてもよい。即ち、前記係合壁の外縁中央部を境にして、時計方向の部分を係止用凹部の奥行き以下の長さに形成し、反時計方向を前記奥行き以上の長さに形成して係合壁の外縁中央部を係止用凹部と当接させて固定具を長板状部材に係入させた状態で停止させることも可能である。さらに別の個所を長板状部材に当接させる手段を採用することもできる。
【0027】
また、上記実施形態において、ねじ部材は、軽量で強度が高く、しかも、耐腐食性が高い点においてステンレスを用いて形成されているが、本発明においては、材質をステンレスに限定する物ではなく、ステンレス以外の鉄系金属やアルミニウム系の材料などを使用することができ、各部の板厚や大きさを長板状部材や板状構造物の用途に応じて種々変化させることが可能である。
【0028】
また、上記実施形態において、ねじ部材は、係合壁をより高い位置に保持でき、ねじ部材の締め付け時に係合壁と下羽根とが当接して係合状態とならない怖れを防止し得る点からバネ材を備えているが、本発明においては、前記バネ材以外の種々の弾性体を使用することができ、また、備えないことも可能である。例えば、係合壁が重力により低下する方向以外にねじ部材の締め付けを行う壁、天井などの板状構造物においては前記弾性体を備える必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ベランダデッキに用いた一実施形態を示す斜視図。
【図2】A−A’断面図。
【図3】デッキプレート固定前の固定具の状態を示すB部上面図。
【図4】デッキプレート固定時の固定具の状態を示すB部上面図。
【符号の説明】
【0030】
1 デッキプレート(長板状部材)
2 根太(基体)
3 固定具
11 スリット溝(係止用凹部)
31 ねじ部材
32 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長板状部材が、基体上に間隙を設けつつ幅方向に複数枚配列され、前記間隙に配された固定具により、前記基体に固定されてなる板状構造物であって、
前記長板状部材は、両側面に係止用凹部を有し、
前記固定具は、前記間隙に挿通し得るように短手方向が前記間隙よりも幅狭とされ且つ前記係止用凹部に係入し得るように長手方向が前記間隙よりも幅広とされた係止部材と、該係止部材を前記基体に取付ける前記係止部材の短手方向よりも径小なねじ部材とを備え、
前記係止部材は、前記ねじ部材の回転と共に回転可能で、且つ長手方向先端部が前記係止用凹部に係入された状態で、前記長板状部材と当接し締結方向への回転を停止させる当接部を備えており、
前記長板状部材は、前記係止部材が前記ねじ部材を軸として回転されて該係止部材の長手方向先端部が前記係止用凹部に係入されることにより前記基体に固定されていることを特徴とする板状構造物。
【請求項2】
表面に3〜7mmの目地が形成されるように、前記長板状部材が配列されている請求項1記載の板状構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45926(P2006−45926A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228959(P2004−228959)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000205498)オー・ジー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】