説明

架橋した非天然ポリマーを用いる肺容量減少療法

本発明の1つの態様は、複数のペンダント求核基を含む非天然ポリマーと、少なくとも2つのペンダント求電子基を含む架橋剤とを含む、ハイドロゲルに関する。 本発明の別の態様は、複数のペンダント求電子基を含む非天然ポリマーと、少なくとも2つのペンダント求核基を含む架橋剤とを含む、ハイドロゲルに関する。本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載されるハイドロゲル組成物を投与するステップを有してなる、患者における肺容量を低減する方法に関する。さらには、本発明のハイドロゲルは、胸膜癒着術を実現し、気管支胸腔瘻をシーリングし、肺の空気の漏出をシーリングし、止血を実現し、組織(例えば血管、内臓)を接着すること、またはそれらの任意の組合せに用いて差し支えない。特定の実施の形態では、本明細書に記載する組成物および方法は、気腫を有する患者の治療に使用することが意図されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2007年5月11日に出願された米国仮特許出願第60/917,419号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、胸膜癒着術の実現、気管支胸腔瘻のシーリング、肺の空気漏れのシーリング、止血の実現、組織の接着、またはそれらの任意の組合せに使用する、ハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
気腫は、150〜200万人の米国人に影響を与える慢性閉塞性肺疾患(COPD)における最も多い病型であり、世界中の患者数の3〜4倍に上る[非特許文献1および2]。気腫は、吸入毒素に反応して炎症細胞から酵素が放出されることに起因する、末梢気道および肺実質の破壊によって特徴付けられる[非特許文献3]。この炎症過程は、通常、喫煙することから始まるが、一旦、気腫が進行した段階に達すると、喫煙を継続していなくても、容赦のない方法で進行する傾向にある[非特許文献4]。
【0004】
気腫における組織損傷の生成に関与する酵素の種類は、プロテアーゼとして知られている。これらの酵素は、体内の炎症細胞によって合成され、放出されると機械的完全性および弾力性を肺に与えるコラーゲン繊維およびエラスチン繊維を分解する働きをする[非特許文献5]。これらの酵素の作用の結果もたらされる構造的変化は、不可逆的、累積的であり、最終的には患者を、呼吸予備力が限られ、機能的能力が低下した状態にする、肺の機能の損失に関係する[非特許文献6および7]。
【0005】
有効な治療法が存在する喘息および慢性気管支炎などの他の一般的な種類のCOPDとは対照的に、気腫を有する患者にとって、従来の治療法には限られた価値しかない。
【0006】
気腫、喘息、および慢性気管支炎のそれぞれは、慢性的な気道閉塞を生じ、運動能力を制限し、息切れを生じさせるが、喘息および慢性気管支炎における異常性の部位および性質は、気腫のものとは根本的に異なっている。喘息および慢性気管支炎では、平滑筋の収縮および粘液の過分泌に起因する気道狭窄によって気流制限が生じる。気道平滑筋を緩め、蓄積された分泌物を軟らかくする薬物は、呼吸機能を改善し、症状を緩和するのに有効である。このように作用する薬剤としては、β−作動薬および吸入抗コリン薬、経口用テオフィリン製剤、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド、および粘液溶解薬が挙げられる。
【0007】
それに対し、気腫における気流制限は、気道狭窄または閉塞が主な原因ではなく、組織の破壊の結果としての弾性収縮圧の損失に起因する。収縮圧の損失は、完全に息を吐き出す能力を鈍らせ、過膨脹および気体の捕捉(gas trapping)を引き起こす。
【0008】
気管支拡張、抗炎症薬、および粘液溶解薬が、気腫を有する患者に頻繁に処方されているが、それらは主に、気道疾患によって生じる閉塞を意図するものであり、また、この種の化合物は、主として気腫における気流制限に関与する弾性収縮力の損失には何の対処もしないことから、一般に有用性が限られている[非特許文献8]。
【0009】
進行した気腫の薬物治療が失望されている一方、最近では気腫の非薬物療法が出現してきており、臨床効果が実証されている。この療法は、肺容量減少手術(LVRS)である[非特許文献9]。
【0010】
LVRSは、初めは1950年代の終わりごろに、気腫の手術療法としてOtto Brantigan博士によって提案された。その概念は、気腫では、肺が柔軟性のない胸腔にとって「大きすぎる」こと、また、肺組織の切除が肺の大きさを低減し、胸により良好に適合させ、機能させることから、肺組織の切除が最良の治療方法を示すことが示唆される臨床的観察から生じた。LVRSを用いた初期の実験は、多くの患者が、この方法から症状的および機能的利益を得たことを立証した。残念なことに、改善の客観的な転帰尺度が提供されなかったことにより、16%の手術死亡率と相まって、結果的にLVRSの最初の中止に至った。
【0011】
LVRSは、気腫の患者に対するさらに厳しい術前評価基準および最新の術後管理計画を適用したJoel Cooper博士の尽力により、1994年に一般的な臨床応用に受け入れられた[非特許文献10]。Cooper氏は、LVRSを受けた進行した気腫を有する20人の患者の集団において、肺の機能および運動能力における飛躍的な改善を報告した。90日間の追跡調査では死亡者はなく、生理的および機能的改善は、薬物療法単独で達成されるよりも著しく良好であった。
【0012】
飛躍的な利益がもっと少ないことが、他のセンターの大多数によって報告されたが、それにもかかわらずLVRSは、進行した気腫を有する患者における呼吸機能および運動能力の改善、日常生活に支障を来すような呼吸困難の症状の軽減、および生活の質の改善に有効であることが証明されている[非特許文献11〜15]。容量減少の利益は、数々のコホート研究、幾つかの最近完成した小規模の無作為臨床試験、および全米肺気腫治療試験(National Emphysema Treatment Trial(NETT))において立証されている[非特許文献16〜19]。平均して75〜80%の患者が、LVRSに対する有益な臨床反応を経験している(一般に、3ヶ月間の追跡調査で、FEVの12%以上の改善として定義される)。ピーク応答は、一般に術後3〜6ヶ月で生じ、改善は数年間持続する[非特許文献20および21]。NETTの結果はさらに、気腫、特に上葉に疾患を有し、運動能力が低下した患者の一部において、29ヶ月間での死亡率が低減することを示している。
【0013】
まとめると、これらのデータは、LVRSが、進行した気腫を有する、多くの患者において、生活の質および運動能力を改善し、それよりは少ない患者においては死亡率を低下させることを示唆している。残念なことにNETTは、生活の質で調整した生存年数(Quality Adjusted Life Year)の転帰の点から考察した場合に、この方法が、非常に費用がかかることも実証しており、また、LVRSが90日における5〜6%の死亡率に関係していることを立証した[非特許文献22〜26]。加えて、LVRS後に病的状態になることがよくあり(40〜50%)、これには、長期にわたる術後の空気の漏出、呼吸不全、肺炎、心不整脈、および消化管の合併症が、高い発生率で含まれる。同一の生理的影響を生じさせることができる、侵襲性がより少なく、より安価な代案が望まれている。
【0014】
肺容量の低減を実現するためのハイドロゲル系のシステムが開発され、試験されており、その効果が、健康なヒツジおよび実験的気腫を有するヒツジの両方において立証されている[非特許文献27]。このシステムは、気管支鏡を使用し、デュアルルーメンカテーテルを通じて肺内に送達することができる、迅速に重合するフィブリン系のハイドロゲルを使用する。フィブリン系のシステムは、側副換気を有効に遮断し、虚脱を促進するサーファクタント機能を阻害し、4〜6週間にわたって継続される再形成過程を開始する。治療の結果、一貫した、有効な肺容量の低減がもたらされる。これらの研究は、容量減少術を実現する肺におけるフィブリン系ハイドロゲルの使用の安全性および有効性を立証している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】American Thoracic Society Consensus Committee “Standards for the diagnosis and care of patients with chronic obstructive lung disease,” Am. J. Resp. Crit. Care Med. 1995, 152, 78-83
【非特許文献2】Pauwels, R., et al. “Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive lung disease,” Am. J. Resp. Crit. Care Med. 2001, 163, 1256-1271
【非特許文献3】Stockley, R. “Neutrophils and protease/antiprotease imbalance,” Am. J. Resp. Crit. Care Med. 1999, 160, S49-S52
【非特許文献4】Rutgers, S.R., et al. “Ongoing airway inflammation inpatients with COPD who do not currently smoke,” Thorax 2000, 55, 12-18
【非特許文献5】Jeffery, P. “Structural and inflammatory changes in COPD: a comparison with asthma,” Thorax 1998, 53, 129-136
【非特許文献6】Spencer, S. et al. “Health status deterioration inpatients with chronic obstructive lung disease,” Am. J. Resp. Crit. Care Med. 2001, 163, 122-128
【非特許文献7】Moy, M.L., et al. “Health-related quality of life improves following pulmonary rehabilitation and lung volume reduction surgery,” Chest 1999, 115, 383-389
【非特許文献8】Barnes, P. “Chronic Obstructive Pulmonary Disease,” N. Engl. J. Med. 2000, 343(4), 269-280
【非特許文献9】Flaherty, K.R. and F J. Martinez “Lung volume reduction surgery for emphysema,” Clin. Chest Med. 2000, 21(4), 819-48
【非特許文献10】Cooper, J.D., et al. "Bilateral pneumonectomy for chornic obstructive pulmonary disease,” J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 1995, 109, 106-119
【非特許文献11】Gelb, A.F., et al. “Mechanism of short-term improvement in lung function after emphysema resection,” Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1996, 154, 945-51
【非特許文献12】Gelb, A.F., et al. “Serial lung function and elastic recoil 2 years after lung volume reduction surgery for emphysema,” Chest 1998, 113(6), 1497-506
【非特許文献13】Criner, G. and G.E. D'Alonzo, Jr., “lung volume reduction surgery: finding its role in the treatment of patients with severe COPD,” J. Am. Osteopath. Assoc. 1998, 98(7), 371
【非特許文献14】Brenner, M., et al. “Lung volume reduction surgery for emphysema,” Chest 1996, 110(1), 205-18
【非特許文献15】Ingenito, E.P., et al. “Relationship between preoperative inspiratory lung resistance and the outcome of lung volume-reduction surgery for emphysema,” N. Engl. J. Med. 1998, 338, 1181-1185
【非特許文献16】Goodnight-White, S., et al. “Prospective randomized controlled trial comparing bilateral volume reduction surgery to medical therapy alone inpatients with severe emphysema,” Chest 2000, 118(Suppl 4), 1028
【非特許文献17】Geddes, D., et al. “L-effects of lung volume reduction surgery inpatients with emphysema,” N. Eng. J. Med. 2000, 343, 239-245
【非特許文献18】Pompeo, E., et al. “Reduction pneumoplasty versus respiratory rehabilitation in severe emphysema: a randomized study,” Ann. Thorac. Surg. 2000, 2000(70), 948-954
【非特許文献19】Fishman, A., et al. “A randomized trial comparing lung-volume -reduction surgery with medical therapy for severe emphysema,” N. Eng. J. Med. 2003, 348(21): 2059-73
【非特許文献20】Cooper, J.D. and S.S. Lefrak “Lung-reduction surgery: 5 years on,” Lancet 1999, 353(Suppl 1), 26-27
【非特許文献21】Gelb, A.F., et al. “Lung function 4 years after lung volume reduction surgery for emphysema,” Chest 1999, 116(6), 1608-15
【非特許文献22】Chatila, W., S. Furukawa, and G.J. Criner, “Acute respiratory failure after lung volume reduction surgery,” Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2000, 162, 1292-6
【非特許文献23】Cordova, F.C. and G.J. Criner, “Surgery for chronic obstructive pulmonary disease: the place for lung volume reduction and transplantation,” Curr. Opin. Pulm. Med. 2001, 7(2), 93-104
【非特許文献24】Swanson, S.J., et al. “No-cut thoracoscopic lung placation: a new technique for lung volume reduction surgery,” J. Am. Coll. Surg. 1997, 185(1), 25-32;
【非特許文献25】Sema, D.L., et al. “Survival after unilateral versus bilateral lung volume reduction surgery for emphysema,” J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 1999, 118(6), 1101-9
【非特許文献26】Fishman, A., et al. “A randomized trial comparing lung-volume -reduction surgery with medical therapy for severe emphysema,” N. Engl. J. Med. 2003, 348(21), 2059-73
【非特許文献27】Ingenito, E.P., et al. “Bronchoscopic Lung Volume Reduction Using Tissue Engineering Principles,” Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2003, 167, 771-778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記研究は、肺容量の低減についてのフィブリン系システムの有効性を立証したが、そのシステムは複雑で、5種類を超える異なる成分を含み、線維素原およびトロンビンは血液由来である。さらには、潜在的患者の母集団が非常に大きいことから、世界中で生産される線維素原のすべてを消費してしまう可能性がある。さらには、生成物が血液に由来することから、血液に運ばれる病原菌の混入が常に懸念される。最後に、線維素原系のシステムは費用がかかる。したがって、合成ポリマーに基づいた肺容量の低減のための、あまり費用が嵩まないシステムの開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの態様は、複数のペンダント求核基を含む非天然ポリマーと、少なくとも2つのペンダント求電子基を含む架橋剤とを含む、ハイドロゲルに関する。本発明の別の態様は、複数のペンダント求電子基を含む非天然ポリマーと、少なくとも2つのペンダント求核基を含む架橋剤とを含む、ハイドロゲルに関する。
【0018】
本発明の1つの態様は、複数のペンダント第1級アミン基を含む非天然ポリマーと、架橋剤とを含むハイドロゲルに関する。特定の実施の形態では、本発明は、ポリアルデヒドを使用し、非天然ポリマー鎖がペンダント第1級アミンと化学的に結合することによって形成される、ハイドロゲルの三次元マトリクスに関する。特定の実施の形態では、ハイドロゲル組成物は気体と混合して発泡体を形成する。
【0019】
本発明の1つの態様は、複数のペンダント第1級アミン基を含む非天然ポリマー(アミン含有化合物と反応することによってペンダント・ヒドロキシル基から形成される)と、架橋剤とを含むハイドロゲルに関する。特定の実施の形態では、本発明は、ポリアルデヒドを使用し、非天然ポリマー鎖がペンダント第1級アミンと化学的に結合することによって形成される、ハイドロゲルの三次元マトリクスに関する。特定の実施の形態では、ハイドロゲル組成物は気体と混合して発泡体を形成する。
【0020】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるハイドロゲル組成物を投与するステップを有してなる、患者における肺容量の低減方法に関する。特定の実施の形態では、ハイドロゲル組成物は、複数のペンダント第1級アミンを含む、第1の量の非天然ポリマーと、第2の量の架橋剤とを含み、それによってその領域にハイドロゲルを形成する。特定の実施の形態では、架橋剤はジアルデヒドである。特定の実施の形態では、架橋剤はグルタルアルデヒドである。特定の実施の形態では、前記ハイドロゲル組成物は、さらに気体を含む。特定の実施の形態では、前記気体は空気または酸素である。
【0021】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるハイドロゲル組成物を投与するステップを有してなる、患者における肺容量を低減させる方法に関する。特定の実施の形態では、ハイドロゲル組成物は、複数のペンダント第1級アミンを含む、第1の量の非天然ポリマーと、第2の量の架橋剤とを含み、それによって前記領域にハイドロゲルを形成し、ここで複数のペンダント第1級アミンを含む前記非天然ポリマーは、複数のペンダント・ヒドロキシル基を含む非天然ポリマーに由来する。特定の実施の形態では、複数のペンダント・ヒドロキシル基を含むポリマーは、ポリビニルアルコールである。特定の実施の形態では、架橋剤はジアルデヒドである。特定の実施の形態では、架橋剤はグルタルアルデヒドである。特定の実施の形態では、前記ハイドロゲル組成物は、さらに気体を含む。特定の実施の形態では、前記気体は空気または酸素である。
【0022】
本発明の組成物は、1つ以上の追加の化合物(例えば、治療化合物、安定化化合物、抗生物質、増殖因子など)、緩衝液、塩、界面活性剤、抗界面活性剤、脂質、賦形剤、および/または他の適切な化合物を含みうるものと認識されるべきである。特定の実施の形態では、本発明の組成物は殺菌されていて差し支えない。
【0023】
特定の実施の形態では、本発明の組成物は、胸膜癒着術の実現、気管支胸腔瘻のシーリング、肺の空気漏れのシーリング、止血の実現、組織(例えば血管、内臓)の接着、またはそれらの任意の組合せに使用して差し支えない。特定の実施の形態では、本明細書に記載する組成物および方法は、気腫を有する患者の治療に使用することが意図されている。
【0024】
特定の実施の形態では、本組成物および方法は、最小限の毒性しか生じさせず、カテーテルを通じて注入可能であり、溶液が、注入後に気道内へ逆流(spilling back)するのを防ぐのに十分な速さで重合する。本発明のさらなる利点および新規の特性は、以下の本発明のさまざまな限定されない実施の形態についての詳細な説明から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ポリビニルアルコール(PVA)とアミノ化剤(例えば第1級アミンに結合する求電子剤)との反応によるアミノ化PVA(aPVA)の形成;アミノ化PVAと架橋剤(例えばジアルデヒド)との反応;および結果的に得られる生成物とaPVAとの架橋を示すスキーム。
【図2】被験物質(表1);治療群(表2);CTスキャン結果(表3)を示す表。
【図3】本発明のさまざまなABA修飾PVAの窒素含有量を示すグラフ。実施例3を参照。
【図4】ABAPVAのアミノ化%およびGAの濃度に応じた、分子量150,000のABAPVAおよびGAの混合物が固化するまでの時間を表すグラフ。実施例4を参照のこと。
【図5】ABAPVAのアミノ化%およびGAの濃度に応じた、分子量100,000のABAPVAおよびGAの混合物が固化するまでの時間を表すグラフ。実施例4を参照のこと。
【図6】pHおよびGAの濃度に応じた、分子量150,000のABAPVAおよびGAの混合物が固化するまでの時間を表すグラフ。実施例4を参照のこと。
【図7】CTの積分から得られた、治療部位あたりの平均正規化容量減少を表すグラフ。エラーバーは、標準偏差を表す。実施例5を参照のこと。
【図8】aPVA/グルタルアルデヒドの重合時間を表す表(表5)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の1つの態様は、組成物、および進行した気腫を有する患者の治療方法に関する。特定の実施の形態では、本発明は、肺容量の低減術を達成するためのシステムに関し、ここで本発明の組成物は肺に注入される。
【0027】
本組成物は、肺容量の低減を促進するのに有益な幾つかの重要な機能を果たす。すなわち、肺表面の裂け目をコーティングすることにより側副換気を遮断し、治療領域の急速な再膨張を妨げる;重合の際に、組成物が肺の末梢気道および肺胞に捕捉され、意図する治療部位を越えて流れることを妨げることにより、薬剤が治療領域に限局されることを確実にする;治療領域を満たし、空気を排出させて、肺組織の隣接領域間に橋を形成する。
【0028】
特定の実施の形態では、本組成物は生体分解性または吸収性であり、したがって、周囲組織は組成物を分解することによって応答し、細胞は組成物内への増殖を開始しうる。これらの細胞が堆積した生体マトリクスが組織の隣接部位に連結し、持続的な容量減少反応を確実にする恒久的な組織橋(tissue bridge)を提供しうる。
【0029】
特定の実施の形態では、肺容量の低減剤として有効であるためには、組成物の前駆体は、内視鏡での送達を可能にするのに十分な速さの重合反応速度と物理的性質を有していなければならない。組成物は迅速な重合を示さなければならず、重合後に組成物の堅さが隣接する柔らかい肺組織を機械的に傷つけないような機械的特性を有していなければならない。さらには、組成物は小口径のカテーテルを通じて注入できるような初期粘度を有していなければならない。さらには、組成物はインビボにおいて許容される薬物動態学的分解プロファイルを有していなければならない。これらの特性の一部またはすべてを有する本明細書に記載される本発明に係る組成物は、気管支鏡による肺容量の低減術を成し遂げるのに申し分のないものであるべきである。
【0030】
本明細書には、これらの特性の一部またはすべてを有する組成物が記載されている。さらには、特定の実施の形態では、本発明の架橋したポリマー組成物は組織の接着性に起因して、いくつかの知られているLVRT組成物よりも優れた特性を示しうる;本発明の組成物は最小限の浸潤を有し、自己回復しうる(すなわち、固化体(solidified mass)に、実質的に、より少ない亀裂または裂け目が形成されうる)。
【0031】
本明細書に記載する組成物および方法には多くの利点がある。いくつかの点では、本明細書に記載される組成物は、さまざまな現行のLVRT組成物よりも化学的に単純である。特定の実施の形態では、本化学物質は、より安価である。特定の実施の形態では、本発明の組成物はフィブリン系ハイドロゲルシステムよりも優れた空間充填特性を有し、所定の肺容量を虚脱するのに、より少量の材料しか使用せずに済むであろうことを意味している。加えて、特定の実施の形態では、一部の他のLVRTの方法よりも全身毒性の可能性が低減されるように思われる。
【0032】
一般には、架橋ポリマーシステムをLVRTに有用にするためには、ポリマーシステムは下記を含む多くの性質を有していなければならない:
1.気管支鏡下(bronchoscopically)に置いたカテーテルを介して肺に送達可能にするのに十分な重合時間(約1分未満);
2.気管支鏡下で誘導された小口径のカテーテルを介して注入することができる流体機械的性質;
3.治療部位から漏出することのない、実際的な処置範囲を可能にするのに十分に短い重合時間(およそ10分未満)。
【0033】
定義
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられているいくつかの語句をここにまとめる。これらの定義は、当業者によって、開示される全体を考慮に入れて読まれ、理解されるべきである。
【0034】
本願の明細書および特許請求の範囲では、不定冠詞「a」および「an」は、その反対であることが明らかに示唆されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと解されるべきである。
【0035】
「および/または」という語句は、本願の明細書および特許請求の範囲では、そのように結合された要素、すなわち、一部の事例では接続して存在し、他の事例では離接して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味するものと解されるべきである。「および/または」を用いて記載された複数の要素もまた同様に、すなわち、そのように結合された「1つまたは複数」の要素と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素は、明確に特定されたそれらの要素に関係しているか否かに関わらず、随意的に存在して差し支えない。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」についての言及は「含む」などの制約のない言葉と合わせて使用される場合には、例えば、1つの実施の形態ではAのみについて言及し(随意的にB以外の要素を含む)、別の実施の形態ではBのみについて言及し(随意的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施の形態ではAおよびBの両方について言及している(随意的に他の要素を含む)。
【0036】
本願の明細書および特許請求の範囲では、1つ以上の要素に関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストにおける1つ以上の要素から選択される1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に挙げられた、あらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリストにおける要素の任意の組合せを除外しないことを意味するものと解されるべきである。この定義は、具体的に特定されたそれらの要素に関係しているか否かに関わらず、「少なくとも1つ」という語句が言及する要素のリスト内に具体的に挙げられた要素以外にも要素が随意的に存在しうることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ」(または、等価的に「AまたはBのうち少なくとも1つ」、または等価的に「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ」)についての言及は、1つの実施の形態では、少なくとも1つの、随意的に1つより多く含む、Aのことをいい、Bは存在せず(随意的にB以外の要素を含む);別の実施の形態では、少なくとも1つの、随意的に1つより多く含む、Bのことをいい、Aは存在せず(随意的にA以外の要素を含む);さらに別の実施の形態では、少なくとも1つの、随意的に1つより多く含む、A、および、少なくとも1つの、随意的に1つより多く含む、Bのことを称しうる(随意的に他の要素を含む)。
【0037】
その反対であることが明らかに示唆されない限り、1つ以上のステップまたは作用を有してなる本願の特許請求の範囲では、その方法のステップまたは作用の順番は、必ずしもその方法のステップまたは作用が記載されている順番に限られないものと解されるべきである。
【0038】
特許請求の範囲では、上記明細書と同様に、「含む(comprising, including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「〜で構成される(composed of)」など、すべての移行句は、制約されない、すなわち、含むが限定はされないものと解されるべきである。米国特許庁の特許審査便覧のセクション2111.03に記載されるように、移行句「〜から成る(consisting of)」および「実質的に〜から成る(consisting essentially of)」だけが、それぞれ制限的または半制限的な移行句であるべきである。
【0039】
「生体分解性」という用語は、進行性の分解(代謝)によって消失する能力のある任意の成分を意味することが意図されている。
【0040】
「造影」という用語は、例えば、X線写真術または蛍光透視法によって、材料をモニターおよび検出する方法により、哺乳動物の被験体に注入する間にモニターされる能力のある材料のことをいう。造影剤の例としては、放射線不透過物質が挙げられる。放射線不透過物質を含む造影剤は、水溶性または不水溶性のいずれかでありうる。水溶性の放射線不透過物質の例としては、メトリザミド、イオパミドール、ヨータラム酸ナトリウム、ヨードミドナトリウム(iodomide sodium)、およびメグルミンが挙げられる。水溶性の放射線不透過物質の例としては、金、チタニウム、銀、ステンレス鋼、それらの酸化物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属および金属酸化物が挙げられる。
【0041】
「アルキル」という用語は、当技術分野において認識されており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキルで置換されたシクロアルキル基、およびシクロアルキルで置換されたアルキル基を含む飽和脂肪族基が挙げられる。特定の実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に、約30個以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC1〜C30、分岐鎖ではC3〜C30)、あるいは、約20個以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造中に約3〜約10個の炭素原子を有するか、あるいは、環構造中に約5、6または7個の炭素を有する。
【0042】
炭素数が別記されない限り、「低級アルキル」は、先に定義されたアルキル基であって、その骨格構造に1〜約10個の炭素原子、あるいは、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基のことをいう。同じように、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の鎖長を有する。
【0043】
「アラルキル」という用語は当技術分野において認識されており、アリール基(例えば芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基のことをいう。
【0044】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、非置換アミンおよび置換アミンの両方を称する。
【0045】
「アミド」という用語は、アミノ基で置換されたカルボニルとして当技術分野で認識されている。
【0046】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は当技術分野で認識されており、先に定義されたアルキル基であって、酸素ラジカルが付加されたもののことをいう。代表的なアルコキシル基として、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0047】
「エーテル」は、1つの酸素によって共有結合された2つの炭化水素である。
【0048】
アルケニルおよびアルキニルにも同様の置換を行って差し支えなく、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニルで置換されたアルケニルまたはアルキニルなどを生じうる。
【0049】
例えば、アルキル、m、nなどの各表現の定義は、それが任意の構造において1つより多く生じる場合には、同一の構造におけるほかの場所におけるその定義から独立していることが意図されている。
【0050】
脂肪族は、C1〜C12の鎖であり、ここで1つ以上の炭素原子は、酸素、窒素、または硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子で随意的に置換されている。各炭素は、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アリールオキシ、チオアリール、アリールアミノ、ヘテロアリール、およびシクロアルキルからなる群より選択される官能基で随意的に置換されている。脂肪族はまた、随意的に置換されたC1〜C12のアルケニルおよびアルキニル基も含む。直鎖または分岐鎖のC1〜C12−アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル,2−ヘキシル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル-2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニルおよびデシルからなる群より選択される。
【0051】
脂環式は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルからなる群より選択されるC3〜C7シクロアルキルである。C3〜C7シクロアルキルは、随意的に、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アリールオキシ、チオアリール、アリールアミノ、ヘテロアリール、およびシクロアルキルからなる群より選択される、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの置換基で置換される。
【0052】
芳香族は、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ピリジル、およびナフタセニルからなる群より選択されるアリール基であって、ここでアリール基は、随意的に、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アリール、ハロおよびシアノからなる群より選択される、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの置換基で置換される。芳香族ジアルデヒドとしては、イソフタルアルデヒド、フタルアルデヒドおよびテレフタルアルデヒドが挙げられる。
【0053】
複素脂環式基は、随意的に、酸素、窒素、および硫黄からなる群より選択される、1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で置換された、C4〜C7環である。各炭素は、随意的に、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アリールオキシ、チオアリール、アリールアミノ、ヘテロアリール、およびシクロアルキルからなる群より選択される官能基で置換される。複素脂環式基としては、ピロリジニル、ピペリジニル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルおよびジオキサニルが挙げられる。
【0054】
複素環は、ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、およびピラジニルからなる群より選択される複素芳香族化合物であって、ここで複素芳香族化合物は、随意的に、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アリール、ハロおよびシアノからなる群より選択される1つ、2つ、または3つの津換気で置換される。
【0055】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。当技術分野における通常の技術を有する有機化学者に用いられる略語のさらなる総合的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の創刊号に掲載されており、このリストは、通常、Standard List of Abbreviationsという表題で示されている。
【0056】
「置換」および「〜で置換された」には、これらの置換が、置換された原子および置換基に許容される価数に従うこと、および、その置換によって、例えば、転位、環化、脱離または他の反応などによって自発的に転換しない安定な化合物が生じる、という暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0057】
「置換された」という用語もまた、有機化合物の許容されるすべての置換基を含むことが意図されている。広範な態様では、許容される置換基として、有機化合物の、非環式および環式、分枝鎖および非分枝鎖、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。実例となる置換基としては、例えば、前述のものが挙げられる。許容される置換基は、1つまたはそれ以上の、適切な有機化合物と同一または異なる基であって差し支えない。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される有機化合物の許容される任意の置換基を有していて差し支えない。本発明は、有機化合物の許容される置換基によるいかなる方法によっても限定されることを意図しない。
【0058】
「求核剤」という用語は当技術分野において認識されており、本明細書中では、反応性の電子対を有する化学的部分を意味する。求核剤の例として、水、アミン、メルカプタンおよびアルコールなどの非荷電性化合物、アルコキシド、チオラート、カルバニオンなどの荷電性部分、ならびに様々な有機および無機の陰イオンが挙げられる。本明細書で特に対象とする求核剤は、ポリ(ビニール・アルコール)上の遊離のヒドロキシル基である。
【0059】
「求電子剤」という用語は当技術分野で認識されており、先に定義された求核剤から電子対を受容可能な化学的部分のことをいう。本発明の方法に有用な求電子剤としては、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、ラクトン、ラクタム、マレイミドなどの環状化合物が挙げられる。非環状求電子剤としては、アルデヒド、イミン、ケトン、ホスフェート、ヨードアセトアミド、硫酸、スルホン酸(例えば、トシル酸(tosylates))、塩化物、臭化物、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物などが挙げられる。
【0060】
本明細書では、「ポリマー」という用語は、2つ以上のモノマーまたはオリゴマー単位の化学結合によって形成される分子を意味する。化学結合は通常、共有結合によって互いに結合される。ポリマーにおける2つ以上の組合せ単位は、すべて同一であって差し支えなく、この場合、ポリマーはホモポリマーと称される。ポリマーの単位は異なっていてもよく、従って、ポリマーは異なる単位の組合せとなる。これらのポリマーは、コポリマーと称される。ポリマーのサブユニット間の関係は、各サブユニットについて、頭部同士が向かい合って結合する形態(head-to-head)、または頭部と尾部が結合する形態(head-to -tail)であって差し支えない。
【0061】
本発明で用いる非天然ポリマーは、複数のペンダント求電子基または求核基のいずれかを含む。本発明で用いる非天然ポリマーの例としては、限定はしないが、エチレンビニルアルコール(EVAL)、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニール・アルコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル・メタクリルアミド)、ポリ(プロピレングリコール)などのポリアルコール;ポリアミン(ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、テトラメチレンアミン、ペンタメチレンアミン、ヘキサメチレンアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、分岐または直線状のポリエチレンイミン(例えば、Lubrasols(商標))およびそれらの塩、アシル化ポリエチレンイミンなどのポリエチレンイミンの誘導体など);デンドリマー(PAMAM Starburstデンドリマーなど);ポリアルキレングリコール誘導体(アミン置換されたポリエチレンおよびポリプロピレングリコールなど);ポリアクリレート(アミン置換およびアルコール置換されたポリアクリレートなど);マルチ−アミノPEG;骨格ポリマー構造が次のペンダント求核基または求電子基で置換されたポリマー、すなわち、アミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、チオール、キサンテート、アミド、ヒドラジド、スルホンアミド、オキシム、マロネート、イミド、アルデヒド、スクシンイミジル、イソシアネート、ビニルスルホン、オキシラン、アリールハロゲン化物、アリルハロゲン化物、アルキルハロゲン化物、エステル、エーテルまたは無水物で置換されたPEGなどが挙げられる。
【0062】
したがって、本明細書では、「複数のペンダント・ヒドロキシル基を有するポリマー」とは、上述のポリマーであって、ヒドロキシル基が直接、ポリマー骨格に結合しているもの、または、繋ぎ(tether)を介してポリマー骨格に接続しているもの、またはその両方である。複数のペンダント・ヒドロキシル基を有するポリマーの例としては、ポリ(ビニール・アルコール)が挙げられる。
【0063】
「多分散度指数」という用語は、具体的なポリマーについての「重量平均分子量」の「数平均分子量」に対する比のことをいい、ポリマー試料における個々の分子量の分布を示す。
【0064】
「重量平均分子量」という用語は、ポリマーの分子量の具体的な大きさのことをいう。重量平均分子量は、次のように計算する:多数のポリマー分子の分子量を決定し、これら重量の2乗を加算し、次いで分子量の総重量で割る。
【0065】
「数平均分子量」という用語は、ポリマー分子の具体的な大きさのことをいう。数平均分子量は、個々のポリマー分子の分子量の平均である。それは、n個のポリマー分子の分子量を測定し、その重量を合計し、nで割ることによって決定される。
【0066】
ポリビニルアルコール
ポリビニルアルコール(PVA)は、アセテートなど、ポリビニル・エステルの加水分解によって合成されうる水溶性のポリマーである。PVAは、完全な、またはある程度の加水分解によって、ある程度またはすべての酢酸基がヒドロキシル基で置換された、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニル・エステルのことをいう。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)は、酢酸ビニルの重合の後、ポリ酢酸ビニル・ポリマーが加水分解されることによって生じる。重合度は、溶液における分子量および粘度を決定する。加水分解度(鹸化)は、ポリ酢酸ビニルの酢酸部分のヒドロキシル部分に対する転換の程度を示す。例えば、加水分解度は、約60モル%〜約99.9モル%の範囲、MW(重量平均分子量)は、約10,000〜約250,000の範囲でありうる。
【0067】
非天然ポリマーのサブユニット
先に述べてきたように、本発明の1つの態様は、複数のペンダント求核基(PVAなど)または複数の求電子基を含む非天然ポリマーの形成および架橋結合に関する。複数のペンダント・ヒドロキシル基を含むポリマーを複数のペンダント第1級アミンを含むポリマーに転換する方法の1つは、複数のペンダント・ヒドロキシル基を含むポリマーを、第1級アミン含有化合物と反応させることである。特定の実施の形態では、前記第1級アミン含有化合物は1つ以上の求電子物質に繋がれた1つ以上のアミンで構成され、ここで前記求電子物質はヒドロキシル基と反応することができる。特定の実施の形態では、前記第1級アミン含有化合物はアミノ−アルデヒドまたはアミノ−アセタールである。例えば、参照することにより本明細書に援用される、米国特許第2,960,384号明細書(Osugiら)を参照のこと。複数のペンダント・ヒドロキシル基を有するポリマーのアミン官能性誘導体を形成する別の手法では、参照することにより本明細書に援用される、第1級アミン含有化合物の代わりに環状アミンが用いられた米国特許第6,107,401号明細書(Dadoら)を参照のこと。
【0068】
本発明の1つの態様は、非天然ポリマーまたはそれらの薬学的に許容される塩に関し、ここで、非天然ポリマーは、下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に構成され:
【化1】

【0069】
ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Yは−NHR'、−OH、または−SHであり、
R'はH、NH2、脂肪族、芳香族、複素環式、脂環式、または飽和複素環部分であり、
nは1〜20であり、サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化2】

【0070】
特定の実施の形態では、本発明は前述のポリマーに関し、ここでXは−(C(R)2n−であり、RはHである。
【0071】
特定の実施の形態では、本発明は前述のポリマーに関し、ここでYはNHR'であり、R'はHである。
【0072】
特定の実施の形態では、本発明は前述のポリマーに関し、ここでXは−(C(R)2n−であり、RはHであり、YはNHR'であり、R'はHである。
【0073】
本発明の別の態様は、非天然ポリマーまたはそれらの薬学的に許容される塩に関し、ここで非天然ポリマーは、独立して下記からなる群より選択される、複数のサブユニットから実質的に構成され:
【化3】

【0074】
ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Zは−C(O)R"、−C(S)R"、ハロゲン化物、−C(NR")R"、−OP(O)(OR")2、−OP(O)(OR")(R")、−OS(O)2(OR")、または−OS(O)2R"であり、
R"は、水素、脂肪族、芳香族、または複素環であり、
nは1〜20であり、サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化4】

【0075】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでXは−(C(R)2n−であり、RはHである。
【0076】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでZはアルデヒドである。
【0077】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでサブユニットの約75モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化5】

【0078】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでサブユニットの約80モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化6】

【0079】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでサブユニットの約85モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化7】

【0080】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでサブユニットの約90モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化8】

【0081】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでサブユニットの約95モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化9】

【0082】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでnは1〜10である。
【0083】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでnは2〜8である。
【0084】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでnは3〜7である。
【0085】
特定の実施の形態では、本発明は前述の非天然ポリマーに関し、ここでnは4〜6である。
【0086】
架橋剤
本発明の1つの実施の形態は、非天然ポリマーの架橋結合に関する。二官能性の「架橋」試薬が2つの反応基を含み、従って2つの標的基に共有結合する手段を提供することは、当業者によく知られている。「架橋」試薬の反応基は、求電子基または求核基のいずれかであって差し支えない。架橋すべき非天然ポリマーが求核部分を含む場合、化学的架橋試薬における反応基は、典型的には、求電子官能基の種類に属し、例えば、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、ケトンおよびアルデヒドが挙げられる。しかしながら、架橋すべき非天然ポリマーが求電子部分を含む場合には、化学的架橋剤における反応基は、例えば、アルコール、チオールおよびアミンなどの求核官能基でありうる。
【0087】
架橋剤はまた、二官能性であって差し支えない。二官能性の架橋試薬は、ホモ二官能性、ヘテロ二官能性およびゼロ長(zero-length)二官能性の架橋試薬に分けることができる。ホモ二官能性の架橋試薬では、反応基は同一である。ヘテロ二官能性の架橋試薬では、反応基は同一ではない。「ゼロ長」の架橋試薬は、単一の官能基(例えば、カルボニル・ジイミダゾールから生じるカルボニル部分)を使用して、またはそれ自体が生成物に取り込まれずに、2つの基の間に化学結合を形成する。例えば、水溶性のカルボジイミド(EDAC)は、カルボン酸をアミンと結合させるのに使用することができる。伝統的な二官能性の架橋試薬に加えて、非常に遅い解離反応速度を有する2分子間の非共有相互作用もまた、架橋として機能しうる。例えばリン脂質の反応性誘導体を使用して、リポソームまたは細胞膜を抗体または酵素に結合させることができる。ビオチン化およびハプテン化試薬もまた、それらが化学反応基の他に、それぞれアビジンまたは抗ハプテン抗体と高い親和性で結合するビオチンまたはハプテン部分を含むことから、ヘテロ二官能性の架橋試薬として考えることができる。
【0088】
特定の実施の形態では、本発明の架橋剤はホモ二官能性の架橋剤である。他の実施の形態では、本発明の架橋剤はホモポリ官能性の架橋試薬である。
【0089】
特定の実施の形態では、本発明の架橋剤はポリアルデヒドである。ポリアルデヒドは、本明細書では、2つ以上のアルデヒド部分を含む化合物を含む。特定の実施の形態では、本発明の架橋剤はジアルデヒドである。当業者に認識されるように、本明細書に記載されるアルデヒドは、例えば、水溶液中にヘミアセタールとして存在するなど、水溶液中で水和物として存在しうる。特定の実施の形態では、このような水和物は、架橋するための対応するアルデヒドに戻ることができる。一部の実施の形態では、アルデヒドの水和物および/または他の架橋活性化部分の水和物は、それ自体が架橋をもたらすことができる。
【0090】
特定の実施の形態では、架橋剤はグルタルアルデヒドである。グルタルアルデヒドの絶対局所濃度は、望ましくない過剰の局所毒性を生じないレベル以下に維持されなければならないことが分かっている。0.75%以上の最終濃度では、グルタルアルデヒドは肺に顕著な組織の壊死を生じる。このレベル未満の濃度は、臨床的に許容される副作用に関連した、限られた局所毒性を生じる。他の実施の形態では、グリオキサールなどの他のポリアルデヒドを使用してもよい。
【0091】
特定の実施の形態では、本発明の架橋剤は下記構造式によって表され:
【化10】

【0092】
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
Yは、脂肪族、芳香族、複素環脂肪族、または複素環部分のジラジカルである。
【0093】
特定の実施の形態では、本発明の架橋剤は下記構造式によって表され:
【化11】

【0094】
ここで、各存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
4およびR5は、それぞれ独立して、水素、脂肪族、脂環式、芳香族、複素脂環式または複素環式の部分である。
【0095】
特定の実施の形態では、架橋剤は、約0.1mg/ml〜約5mg/mlの濃度で水溶性である。特定の実施の形態では、架橋剤は生物由来である。特定の実施の形態では、前記アルデヒドは酸化された多糖である。特定の実施の形態では、アルデヒドは酸化された多糖であり、前記多糖は、デキストラン、キチン、デンプン、寒天、セルロース、アルギン酸、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸およびそれらの誘導体からなる群に由来する少なくとも1つである。特定の実施の形態では、アルデヒドはデキストランアルデヒドである。アルデヒド、特にデキストランアルデヒドは、約60,000〜600,000の分子量を有することが好ましく、特には約200,000である。より大きい分子量、特に少なくとも200,000の分子量は、結果として高度の架橋をもたらしうる。
【0096】
ハイドロゲル
「ハイドロゲル」という用語は、本明細書では、時には水を分散媒とするコロイド状ゲルとして認められる、水溶性の、ポリマー鎖の網状組織のことをいう。すなわち、ハイドロゲルは、ポリマー鎖の三次元ネットワークと、巨大分子の間の空間を満たす水とからなる、2つまたは複数の成分系である。本明細書では、ハイドロゲルは、架橋の際に相当量の水を捕捉し、それらハイドロゲルの質量の大部分(典型的には約80%を超える)が捕捉された水に起因する、架橋した化学物質のサブユニットによって形成された三次元網目構造である。
【0097】
本発明の用途に好適なハイドロゲルは、架橋剤の添加の際に、すなわち、別個のエネルギー源を必要とせずに架橋することが好ましい。これらの系は、2つの溶液の混合が行われないかぎりゲル化が生じないことから、架橋の過程の良好な調節を可能にする。必要に応じて、ポリマー溶液に、ハイドロゲルを可視化するための染料または他の手段を含めてもよい。ハイドロゲルが薬物送達媒体となるように、架橋可能な溶液に、得られるハイドロゲル中に捕捉される生物活性薬物または治療化合物を含めてもよい。
【0098】
本発明の1つの態様は、非天然ポリマーおよび架橋剤から調製されるハイドロゲルに関し、ここで前記非天然ポリマーは複数のペンダント求核基を含み、前記架橋剤は少なくとも2つのペンダント求電子基を含む。
【0099】
特定の実施の形態では、求核基は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求核基は、アルコール、チオールおよびアミンからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求核基は、アミンである。特定の実施の形態では、求電子基は、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、イミン、エステル、ラクトン、ハロゲン化物、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、ホスフェート、サルフェート、スルホネート、ケトンおよびアルデヒドからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求電子基は、アジリジン、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、ハロゲン化物、スルホネート、またはアルデヒドである。特定の実施の形態では、求電子基はアルデヒドである。
【0100】
本発明の別の態様は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーは下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に構成され:
【化12】

【0101】
ここで、各存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Yは-NHR'、−OHまたは−SHであり、
R'は水素、NH2、脂肪族、芳香族、複素環、脂環式または飽和複素環部分であり、
nは1〜20であり、
サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化13】

【0102】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでXは−(C(R)2n−であり、RはHである。
【0103】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでYはNHR'であり、R'はHである。
【0104】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでXは−(C(R)2n−であり、RはHであり、YはNHR'であり、R'はHである。
【0105】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでサブユニットの約75モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化14】

【0106】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでサブユニットの約80モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化15】

【0107】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでサブユニットの約85モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化16】

【0108】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでサブユニットの約90モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化17】

【0109】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでサブユニットの約95モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化18】

【0110】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは1〜10である。
【0111】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは2〜8である。
【0112】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは3〜7である。
【0113】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは4〜6である。
【0114】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは2である。
【0115】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは3である。
【0116】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは4である。
【0117】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは5である。
【0118】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでnは6である。
【0119】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの重量平均分子量は、約10,000〜約500,000である。
【0120】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの重量平均分子量は、約50,000〜約250,000である。
【0121】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤はポリアルデヒドである。
【0122】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤はジアルデヒドである。
【0123】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤はグルタルアルデヒドである。
【0124】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤は下記構造式によって表され:
【化19】

【0125】
ここで、各存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
Yは、脂肪族、芳香族、複素環脂肪族、または複素環部分のジラジカルである。
【0126】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、前記架橋剤は下記構造式によって表され:
【化20】

【0127】
ここで、各存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
4およびR5は、それぞれ独立して、水素、脂肪族、脂環式、芳香族、複素脂環式または複素環式の部分である。
【0128】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤は約0.1mg/ml〜約5mg/mlの濃度で水溶性である。
【0129】
特定の実施の形態では、本発明は、抗感染薬をさらに含む、前述のハイドロゲルに関する。
【0130】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで前記抗感染薬はテトラサイクリンである。
【0131】
特定の実施の形態では、本発明は、さらに造影剤を含む、前述のハイドロゲルに関する。
【0132】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで前記造影剤は、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有材料からなる群より選択される。
【0133】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約10分以内に生じる。
【0134】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約8分以内に生じる。
【0135】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約2分〜約8分以内に生じる。
【0136】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約3分〜約8分以内に生じる。
【0137】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約4分〜約8分以内に生じる。
【0138】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約10.0%である。
【0139】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約6.0%である。
【0140】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約4.0%である。
【0141】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.5%〜約3.0%である。
【0142】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求核剤含量は約0.1%〜約5.0%である。
【0143】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求核剤含量は約0.25%〜約4.0%である。
【0144】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求核剤含量は約1.0%〜約2.0%である。
【0145】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでpHは約4.5〜約9である。
【0146】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでpHは約5〜約7である。
【0147】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の組織と接触する。
【0148】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺組織と接触する。
【0149】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺組織の内表面と接触する。
【0150】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺胞の内表面と接触する。
【0151】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺胞の内表面と接触し、ある程度または完全に、哺乳動物の肺胞を満たす。
【0152】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは約90%を超える水(w/w)をさらに含む。
【0153】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは約95%を超える水(w/w)をさらに含む。
【0154】
本発明の別の態様は、非天然ポリマーおよび架橋剤から調製されるハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーは複数のペンダント求電子基を含み、架橋剤は少なくとも2つのペンダント求核基を含む。
【0155】
特定の実施の形態では、求電子基は、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、イミン、エステル、ラクトン、ハロゲン化物、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、ホスフェート、サルフェート、スルホネート、ケトンおよびアルデヒドからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求電子基は、アジリジン、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、ハロゲン化物、スルホネート、またはアルデヒドである。特定の実施の形態では、求電子基はアルデヒドである。
【0156】
特定の実施の形態では、求核基は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、またはチオールからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求核基は、アルコール、チオールおよびアミンからなる群より選択される。特定の実施の形態では、求核基はアミンである。
【0157】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関しここで非天然ポリマーは、下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットで実質的に構成され:
【化21】

【0158】
ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Zは、−C(O)R"、−C(S)R"、ハロゲン化物、−C(NR")R"、−OP(O)(OR")2、−OP(O)(OR")(R")、−OS(O)2(OR")、または−OS(O)2R"であり、
R"は、水素、脂肪族、芳香族、または複素環であり、
nは、各存在ごとに独立して1〜20であり、
サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化22】

【0159】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、Xは−(C(R)2n−であり、RはHである。
【0160】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでZはアルデヒドである。
【0161】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤はポリアミン、ポリアルコールまたはポリチオールである。
【0162】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、架橋剤はジアミン、ジアルコールまたはジチオールである。
【0163】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、前記架橋剤は下記構造式によって表され:
【化23】

【0164】
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
6は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択され、
Yは、脂肪族、芳香族、複素環脂肪族、または複素環部分のジラジカルである。
【0165】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、前記架橋剤は下記構造式によって表され:
【化24】

【0166】
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
4およびR5は、それぞれ独立して、水素、脂肪族、脂環式、芳香族、複素脂環式または複素環式の部分であり、
6は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択される。
【0167】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで架橋剤は約0.1mg/ml〜約5mg/mlの濃度で水溶性である。
【0168】
特定の実施の形態では、本発明は、抗感染薬をさらに含む、前述のハイドロゲルに関する。
【0169】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで抗感染薬はテトラサイクリンである。
【0170】
特定の実施の形態では、本発明は、さらに造影剤を含む、前述のハイドロゲルに関する。
【0171】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで造影剤は、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有材料からなる群より選択される。
【0172】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約10分以内に生じる。
【0173】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約8分以内に生じる。
【0174】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約2分〜約8分以内に生じる。
【0175】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約3分〜約8分以内に生じる。
【0176】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、非天然ポリマーおよび架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約4分〜約8分以内に生じる。
【0177】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約10.0%である。
【0178】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約6.0%である。
【0179】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.0%〜約4.0%である。
【0180】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの濃度は約1.5%〜約3.0%である。
【0181】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求電子剤含量は約0.1%〜約5.0%である。
【0182】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求電子剤含量は約0.25%〜約4.0%である。
【0183】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの求電子剤含量は約1.0%〜約2.0%である。
【0184】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでpHは約4.5〜約9である。
【0185】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでpHは約5〜約7である.
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の組織と接触する。
【0186】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺組織と接触する。
【0187】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺組織の内表面と接触する。
【0188】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺胞の内表面と接触する。
【0189】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここで、ハイドロゲルは哺乳動物の肺胞の内表面と接触し、ある程度または完全に、哺乳動物の肺胞を満たす。
【0190】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでハイドロゲルは約90%を超える水(w/w)をさらに含む。
【0191】
特定の実施の形態では、本発明は前述のハイドロゲルに関し、ここでハイドロゲルは約95%を超える水(w/w)をさらに含む。
【0192】
非天然ポリマーの架橋剤に対する割合
本発明の1つの態様は、前述の成分から調製されるハイドロゲルに関し、ここで非天然ポリマーの架橋剤に対する比率は5:1(w/w)よりも大きい。特定の実施の形態では、前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率は約10:1、約20:1、または約50:1(w/w)よりも大きい。すべての比率は重量比である。すなわち、10:1の比は、非天然ポリマーの重量が、架橋剤の重量の10倍であることを意味する。
【0193】
発泡体
特定の実施の形態では、本発明のハイドロゲルは、発泡体として患者に投与される。他の実施の形態では、本発明のハイドロゲルの発泡体は、患者の肺内で形成される。
【0194】
特定の実施の形態では、本発明のハイドロゲルの発泡体の形成に、気体を使用する。特定の実施の形態では、ハイドロゲルの気体に対する体積比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、または1:5である。
【0195】
特定の実施の形態では、気体は非毒性である。特定の実施の形態では、気体は、空気、ヘロックス(helox)(すなわち、79%のヘリウムと21%の酸素)、または酸素である。特定の実施の形態では、気体は酸素である。
【0196】
特定の実施の形態では、前記発泡体は、複数のシリンジを通じ、気体を用いて、本発明の液体組成物またはその成分をせん断することにより、組織(body)の外側に形成される。特定の実施の形態では、前記発泡体は2つのシリンジを通じ、気体を用いて、本発明の液体組成物またはその成分をせん断することにより、組織の外側に形成される。特定の実施の形態では、前記発泡体は、本発明の液体組成物における起泡剤(例えば、カーボネート)から生じる気体の作用によって肺の内側に形成される。
【0197】
発泡改質剤
前述の組成物を形成する成分に気体を加える特定の実施の形態では、発泡改質剤も加えて差し支えない。発泡改質剤は、安定な発泡体の生成を促進するものである。すなわち、特定の実施の形態では、発泡した組成物の形成を促進するため、組成物を形成する混合物に発泡改質剤を取り込んでもよい。このような発泡改質剤の例としては、組織適合性のサーファクタント、チロキサポール、ポロキサマー、ポロキサミン、リン脂質、およびグリセロールが挙げられる。これらの発泡改質剤の例証として、限定はしないが、可食性の発泡体における脂肪またはタンパク質を含む、非毒性のサーファクタントがある。しかしながら、サーファクタントは、対象とする用途に応じてイオン性または非イオン性のサーファクタントであって差し支えない。
【0198】
本発明の選択的方法
本発明の態様は、非外科的な肺容量の低減に有用なハイドロゲル組成物に関する。本発明にしたがって、肺容量の低減、すなわち、肺の損傷した(例えば過膨張など)領域を除去することによる肺の大きさを縮小する方法は、胸壁の完全性を崩壊させる方法ではなく、患者の気管を通じて行なわれる方法によって(例えば、気管支鏡を通じて装置および物質を挿入することにより)、非外科的に達成することができる[Ingenito et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 2001, 164, 295-301; Ingenito et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 2000, 161, A750; and Ingenito et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 2001, 163, A957]。本発明の1つの態様は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1種類を、治療に有効な量で、それを必要とする患者に投与するステップを有してなる、患者における肺容量の低減方法に関する。
【0199】
前述の方法の特定の実施の形態では、ハイドロゲルは気管支鏡を用いて投与される。他の実施の形態では、ハイドロゲルはカテーテルを用いて投与される。
【0200】
本発明の別の態様では、非外科的な肺容量の低減は、材料(例えば、ハイドロゲル)を肺の標的部位に導入し、標的部位の虚脱を促進することによって達成される。1つの実施の形態では、材料が虚脱された組織に付着すること、および/または虚脱された組織の瘢痕化を促進することによって、安定な虚脱を促進する。
【0201】
適切な気管支鏡としては、ペンタックス(Pentax)、オリンパス(Olympus)、およびフジノン(Fujinon)製のものが挙げられ、これらは照らされた領域の可視化を可能にする。内科医は、気管支鏡の開口先端が標的部位の入り口(すなわち、容量を低減させる肺の領域)に配置されるように、気管支鏡を気管内に誘導し、気管支樹に通す。気管支鏡は、次第に細くなる気管支樹の枝を通じて誘導され、肺の多様な亜区域に到達する。例えば、患者の左肺の上葉内の亜区域に気管支鏡を誘導することができる。
【0202】
特定の実施の形態では、気管支鏡を通じて、バルーンカテーテルを肺の標的部位に誘導して差し支えない。カテーテルが気管支鏡の内部に配置されると、カテーテルを通過した材料がバルーンより遠位の肺の領域に含まれるように、バルーンが膨張する。
【0203】
特定の実施の形態では、本発明の方法は、約0.5%〜約40%の全体的な肺容量の低減をもたらす。特定の実施の形態では、本発明の方法は、約0.5%〜約30%の全体的な肺容量の低減をもたらす。特定の実施の形態では、本発明の方法は、約0.5%〜約20%の全体的な肺容量の低減をもたらす。特定の実施の形態では、本発明の方法は、約0.5%〜約10%の全体的な肺容量の低減をもたらす。このような低減は、本発明の組成物の単回投与または複数回投与において、達成されて構わない。
【0204】
本発明のさらに別の態様は、肺における空気の漏出をシーリングする方法に関し、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1つを、それを必要とする患者の肺に治療に有効な量で投与し、それによって肺における空気の漏出をシーリングするステップを有してなる。
【0205】
本発明の選択的キット
本発明は、本発明の方法を簡便かつ有効に行うためのキットも提供する。前述の項における定義と一致して、このようなキットは、複数のペンダント・アミンおよび複数のペンダント・ヒドロキシル基を有するポリマー、架橋剤、およびそれらの使用説明書を含み、随意的に、本発明の方法と一致するそれらの使用を容易にするための手段も含む。これらのキットは、本方法が効果的な方法で実施されることを確保するための簡便かつ有効な手段を提供する。これらのキットのコンプライアンス手段には、本発明の方法の実施を促進する任意の手段が含まれる。これらのコンプライアンス手段としては、使用説明書、包装容器、および分注手段、ならびにそれらの組合せが挙げられる。キットの構成要素は、前述の方法を、手動で、あるいは、ある程度または完全に自動での実践用に包装されて差し支えない。他の実施の形態では、本発明は、本発明のポリマーおよび/または架橋剤、ならびに随意的にそれらの使用説明書を含むキットを意図している。
【0206】
任意のこれらのキットには、非外科的な肺容量の低減に使用する装置が含まれうる。例えば、それらには、カテーテル(例えば、随意的に気道内の気流を抑制するのに好適なバルーンまたは他の装置を含めた、シングルまたはマルチ・ルーメン(例えばデュアル・ルーメン)カテーテル)、肺から材料(例えば、切除した上皮細胞を運ぶためのものを含めた、溶液)を除去するための管組織または他の導管、気道に配置して肺または肺領域内または外への気流を遮断または低減させうるステント、バルブ、または他の装置、および/または気管支鏡)も含めることができる。
【0207】
本発明の1つの態様は、非天然ポリマーを含む第1の混合物を第1の量で含む第1の容器と、架橋剤を含む第2の混合物を第2の量で含む第2の容器と、肺容量の低減術に使用するための使用説明書とを含む、キットに関する。
【0208】
特定の実施の形態では、本発明は、抗感染薬を第3の量でさらに含むキットに関する。
【0209】
特定の実施の形態では、本発明は前述のキットに関し、ここで前記抗感染薬はテトラサイクリンである。
【0210】
特定の実施の形態では、本発明は、造影剤を第4の量でさらに含む前述のキットに関する。
【0211】
治療指標
気腫の治療に有用であることに加えて(例えば上記および以下の実施例に記載されるように)、本発明のハイドロゲル組成物を他の治療用途に使用してもよい。
【0212】
本発明の別の態様は、気管支胸腔瘻をシーリングするためのハイドロゲル組成物の使用を含みうる。気管支胸腔瘻は、例えば、外科手術の後の気道の漏れ、肺の外傷、または侵襲性の感染症から生じうる。ハイドロゲル組成物の医療用途としては、患者の肺に施用して、気道および肺胞を満たすことにより気道の漏れをシーリングすることができる。
【0213】
特定の実施の形態では、本発明は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1種類を、治療に有効な量でそれを必要とする患者に投与し、それによって瘻孔をシーリングするステップを有してなる、患者における気管支胸腔瘻をシーリングする方法に関する。
【0214】
特定の実施の形態では、ハイドロゲルは、気管支鏡を使用して投与される。他の実施の形態では、ハイドロゲルはカテーテルを使用して投与される。
【0215】
本発明の別の態様は、本発明の組成物を使用して胸膜癒着術を達成することに関する。胸膜癒着術の必要性は、悪性の滲出および胸膜腔疾患など、薬物療法に対し難治性であるから生じうる。本発明の組成物を使用して胸膜腔を満たし、それによって胸膜腔への再発性の滲出を免れることができる。特定の実施の形態では、本発明は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1種類を、治療に有効な量でそれを必要とする患者に投与するステップを有してなる、患者における胸膜癒着術を達成する方法に関する。特定の実施の形態では、ハイドロゲルはシリンジを用いて投与される。特定の実施の形態では、ハイドロゲルはカテーテルを使用して投与される。
【0216】
本発明の別の態様は、例えば、外科手術後の肺における空気の漏出をシーリングするための封止剤としての本発明の組成物の使用を含む。本発明の1つの実施の形態は、前述のハイドロゲル組成物のいずれかを、治療に有効な量でそれを必要とする患者の肺に投与し、それによって肺における空気の漏出をシーリングするステップを有してなる、肺における空気の漏出をシーリングする方法に関する。
【0217】
本発明の別の態様は、それを必要とする患者の第1の組織を第2の組織に付着させる方法を含み、ここで前記第1の組織または前記第2の組織またはその両方に、本発明の組成物を有効量で施用し、それによって前記第1の組織を前記第2の組織に付着させるステップを有してなる。
【0218】
本発明の別の態様は、一般的な局所止血剤としての本発明の組成物の用途を含む。本発明の組成物は、例えば破れた血管の出血を抑制するのに使用することができる。本発明の1つの実施の形態は、止血を達成する方法に関し、前述のハイドロゲル組成物のいずれかを、治療に有効な量でそれを必要とする患者の血管に施用し、それによって止血を達成するステップを有してなる。
【0219】
本発明の別の態様は、出血している血管の緊急タンポナーデを行うためのハイドロゲル組成物の使用を含みうる。出血している血管の例としては、限定はしないが、四肢の主要な内部の血管、消化管出血または内臓出血が挙げられる。本発明の組成物は、外傷、外科手術、または消化管出血後の出血している血管の治療に使用して差し支えない。ハイドロゲルを施用して、出血している血管を恒久的にシーリングすることができる。ハイドロゲルを術後の消化管出血に施用し、それによって、血管をシーリングし、進行する失血を防ぐことができる。
【0220】
特定の実施の形態では、本発明は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1つを、治療に有効な量で患者の出血している血管に投与し、それによって血管をシーリングするステップを有してなる、患者の出血している血管の緊急タンポナーデを行う方法に関する。
【0221】
特定の実施の形態では、本発明は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1つを、治療に有効な量で患者の胃腸管に投与し、それによって血管をシーリングするステップを有してなる、患者の胃腸管に緊急タンポナーデを行う方法に関する。
【0222】
他の実施の形態では、本発明は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1つを、治療に有効な量でそれを必要とする患者の内蔵に投与し、それによって臓器の出血を妨げるステップを有してなる、患者の内臓に緊急タンポナーデを行う方法に関する。
【0223】
本発明の別の態様は、瘻孔をシーリングするためのハイドロゲル組成物の使用を含む。瘻孔の例としては、限定はしないが、消化管腫瘍から生じる瘻孔および術後の胃腸の瘻孔が挙げられる。ハイドロゲル組成物は、腫瘍または手術によって生じる胃腸管の瘻孔をシーリングするのに使用して差し支えなく、それによって周囲部位への流体の漏出を妨げうる。本発明の組成物は、恒久的に胃腸の瘻孔をシーリングするために施用して差し支えない。本発明の1つの実施の形態は、前述のハイドロゲル組成物のいずれか1つを、治療量でそれを必要とする患者の胃腸管に投与し、それによって瘻孔をシーリングするステップを有してなる、患者の瘻孔をシーリングする方法に関する。
【実施例】
【0224】
本発明について一般的に述べてきたが、本発明は、単に本発明の特定の態様および実施の形態を例証する目的であって、本発明を制限することは意図していない、以下の実施例を参照することにより、さらに容易に理解されるであろう。
【0225】
実施例1
2%の4−アミノブチルアルデヒド官能化ポリビニルアルコール(2% ABAPVA)の合成
462.50gの脱イオン水に37.5gのPVAを90℃で溶解させることによって、7.5%のポリビニルアルコール(PVA; 分子量約100,000)の水溶液を調製した。PVAが完全に溶解した後、溶液を室温まで冷却した。PVA溶液に、0.91ml(4.66mmol)の4−アミノブチルアルデヒド・ジメチルアセタール(ABAアセタール)、続いて4.46g(45.2mmol)の37%塩酸水溶液を加えた。溶液を一晩攪拌し、10Mの水酸化ナトリウムを用いてpHを約7に合わせた。中和には、およそ6.10g(45.8mmol)の水酸化ナトリウム溶液を必要とした。強攪拌下で、溶液に2Lの99%イソプロパノールをゆっくりと加えた。固体沈殿物を回収し、450mlの脱イオン水に溶解させた。イソプロパノールからの沈殿をさらに2回繰り返し、固体生成物を回収し、凍結乾燥した。
【0226】
4%の4−アミノブチルアルデヒド官能化ポリビニルアルコール(4% ABAPVA)の合成
1.83ml(9.32mmol)のABAアセタールおよび4.92g(49.9mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0227】
6%の4−アミノブチルアルデヒド官能化ポリビニルアルコール(6% ABAPVA)の合成
2.73ml(13.98mmol)のABAアセタールおよび5.84g(59.2mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0228】
実施例2
ヒツジにおけるアミノ化PVA/GAのインビボでの実験
次の手順を使用して、気管支鏡による肺容量の低減(BLVR)のためのアミノ化ポリビニルアルコール(aPVA)およびグルタルアルデヒド(GA)系の組織接着剤の有効性および安全性を判断した。BLVRにとって望ましい特性を有するaPVA/GA混合物を、一連のインビトロでの実験を通じて特定した(下記参照)。これらの配合物を、次にヒツジにおけるBLVRの実施に使用した。
【0229】
一般的な手順
2mg/kgのケタミン、0.3mg/kgのミダゾラム、および70mgのIVプロポフォールを用いて、麻酔状態を誘導し、プロポフォールの持続注入を用いて維持した。動物に、光ファイバーの10mmの経口用の気管内チューブを挿管し、RR12、TV500を用いて機械的に換気した。CTスキャンのベースラインは、食道バルーンで測定される、25cmのH2O肺圧差によって得た。
【0230】
気管支鏡を、気道の標的とする部分に押し込んだ。送達用カテーテルを、気管支鏡の末端から先端が1〜2cm見えるまで、気管支鏡の作業チャンネルに通した。GA溶液をaPVA溶液に加えた。発泡体の処置として、三方コックによって接続された2つのシリンジを通じて、繰り返しウォールソース(wall source)から液体および酸素を押し出すことにより、発泡体を生成した。ゲルの処置として、三方コックによって接続された2つのシリンジを使用して、aPVAおよびGAを混合したが、気体は加えなかった。発泡体またはゲルを、カテーテルの近位端に付属したシリンジの1つに吸い込み、手動で注入した。次に、カテーテルを抜去し、作業チャンネルを通じて気体を注入し、発泡体/ゲルを遠位の方へ押した。2〜3分後、気管支鏡をウェッジ位置から抜去し、その部位を、発泡体/ゲルの好ましい重合の形跡について検査した。次いで、気管支鏡を、その手法が繰り返された部位の次の目的部位でウェッジした。最後の処置の完了後、25cmH2Oの肺圧差で反復CTスキャンを得た。麻酔状態を中断し、動物から抜管し、回復させた。
【0231】
すべてのヒツジは、LVRの直前に開始する、広域抗生物質(Baytril)で4日間処置された。CTスキャンによる追跡調査、すなわちCTスキャンの反復を、安楽死/剖検前の選択時点において行った。LVR後6〜85日間、25cmH2Oの肺圧差で反復CTスキャンを行った。その後、動物を安楽死させ、剖検した。腹部および胸郭器官を検査した。肺を一括して摘出し、膨張させ、治療部位を半定量的に評価した。次に、部位を切開し、出血、壊死、または毒性の他の全体的痕跡について評価した。組織サンプルを、各肺の治療部位、ならびに対照部位から採取し、その後の組織学的処理用に、10%の緩衝ホルマリン中に保存した。心臓、肝臓、腎臓、および脾臓のサンプルも回収し、同様の方法で処理した。
【0232】
3頭のヒツジを、一連の、2.025〜2.5%のaPVA濃度および0.20〜0.25%のGA濃度を含む3種類の配合を用いて処置した。ヒツジ343および385は、右肺に発泡体の処置を受け、左肺にゲルの処置を受けた(図2、表1および表2を参照)。
【0233】
結果
すべての動物は、計画された安楽死/剖検まで生存していた。LVR直後のCTスキャンは、すべての動物における治療部位でぼんやりとした浸潤を示した(図2、表3参照)。発泡体で処置した部位の多くは、密度がより高い直線状の領域も有していた。発泡体で処置した部位は一般に、より広く、末梢に分散していた。1週間後のCTスキャンは、より密度の高い、さらに直線状の浸潤物への進行を示した。処置後のCTの積分により、処置された部位あたり8〜44.7mlの容量減少、1週間で32.9〜63.4mlの容量減少が検出され、これは5.3〜12.7%の容量減少を表している。
【0234】
いずれの動物においても、胸膜癒着は見られなかった。治療部位は容易に特定され、良好に局在化されていた。発泡体で処置した部位は、一般に、ゲルで処置した部位よりも大きかった。出血/壊死を有していた部位の割合は25〜100%であった。動物343および385では、比較的大きい割合の発泡体部位が出血/壊死の痕跡を有していたが、これらの部位の実際の出血/壊死の量は少なく、臨床的有意性があるとは思えない。
【0235】
試験した、発泡体およびゲル状のaPVA/GA混合物の両方が、気管支鏡による肺容量の低減を生じさせるのに有効であった。
【0236】
実施例3
アミノ化PVAの合成
下記の実施例のそれぞれは、独立して、分子量150,000、100,000、および50,000のポリビニルアルコールを用いて行なわれた。
【0237】
2%の4−アミノブチルアルデヒド官能化PVA(2%ABAPVA)
462.50gの脱イオン水に37.5gのPVAを90℃で溶解させることにより、7.5%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を調製した。PVAを完全に溶解させた後、溶液を室温まで冷却した。PVA溶液に、0.91ml(4.66mmol)の4−アミノブチルアルデヒド・ジメチルアセタール(ABAアセタール)を加え、次いで4.46g(45.2mmol)の37%塩酸水溶液を加えた。溶液を一晩攪拌した。次に、10Mの水酸化ナトリウムを使用して、pHを約7に合わせた。中和に、約6.10g(45.8mmol)の水酸化ナトリウム溶液を必要とした。強攪拌下、溶液を2Lの99%イソプロパノールにゆっくりと加えた。固体沈殿物を回収し、90℃まで加熱することにより、800mlの脱イオン水に溶解させた。すべてのPVAが溶液に溶けたら、サンプルを室温まで冷却し、3Lのカーボイに移した。サンプルの体積を、追加の脱イオン水を用いて、約2Lに増やした。5体積分の交換からなる、10kの分子量の中空糸カラムを通じたダイアフィルトレーションにより、サンプルを精製した。
【0238】
4%ABAPVA
1.83ml(9.32mmol)のABAアセタールおよび4.92g(49.9mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0239】
6%ABAPVA
2.73ml(13.9mmol)のABAアセタールおよび5.37g(54.5mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0240】
8%ABAPVA
3.66ml(18.6mmol)のABAアセタールおよび5.84g(59.2mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0241】
10%ABAPVA
4.57ml(23.3mmol)のABAアセタールおよび6.29g(63.8mmol)の37%HCl水溶液を使用した以外は、2%のABAPVAと同一の手順に従った。
【0242】
さまざまな合成によって生じる生成物の窒素含有量を、元素分析によって決定した。図3参照のこと。
【0243】
実施例4
グルタル酸ジアルデヒドを使用したアミノ化PVAの架橋
この実施例では、「緩衝液」という用語は、1Nの塩酸水溶液を用いて9.2〜8.0にpH調整された、40mmolのリン酸水素二ナトリウム溶液のことをいう。
【0244】
グルタル酸ジアルデヒド(GDA)、50%水溶液を使用して、次の3種類の原液を調製した:1%のGA=0.2mlのGA+9.8mlの緩衝液;2%のGA=0.4mlのGA+9.6mlの緩衝液;3%のGA=0.6mlのGA+9.4mlの緩衝液。
【0245】
ABAPVAポリマーを5%の水溶液として溶解し、次いで緩衝液でさらに2%溶液になるまで希釈した。
【0246】
GAおよびABAPVA溶液を次のように混合した:900μlのポリマー溶液+100μlのGA溶液。この混合により、下記表に示す濃度を有する溶液を生成した。
【表1】

【0247】
次の手順に従って実験を行った:900μlのポリマー溶液および100μlのGA溶液を2mlのエッペンドルフチューブに加え、5秒間、ボルテックスをかけた。チューブを、溶液が波打たなくなり、固体化するまで転回させた。固化するまでの時間を計測した。溶液の濃度は、図4に示す結果を生じた。分子量150,000のABAPVAサンプルのデータは、非常に異なった傾向を示している。
【0248】
この系では、アミノ化の量およびGAの濃度の両方が、架橋に要する時間に影響を与えている。このセットのすべてのサンプルは、同一程度のアミノ化における、0.1%のGAサンプルと2種類の関連するサンプルの架橋に要する時間における顕著な差異を示した。2%のABAPVAの架橋時間と、4%および6%のABAPVAサンプルが必要とする時間にも大きな差異があり、架橋に要する時間がアミノ化の関数であることを示している。
【0249】
分子量100,000のABAPVAサンプルのデータは、ポリマーの架橋に要する時間が減少するという、同一の傾向を示している。図5参照のこと。このセットの実験では、アミノ化の量は、架橋に要する時間における主要な要因であると考えられる。最も低い割合のアミン基を有するサンプルは、10分以内に架橋しなかった。4%および6%のABAPVA群では、0.1%のGAサンプルはそれぞれ、固化するのに5.5分および3.75分かかった。0.2%および0.3%のGAサンプルは、架橋に約1分しかかからなかった。
【0250】
架橋時間におけるpHの影響
リン酸水素二ナトリウム(SPD)を用いて40mmolのリン酸緩衝を調製し、pH値を6〜9に調整した。試験したサンプルは、原料に4%のABAを用い、0.24%の窒素含有量を有する、分子量150,000のPVAであった。4%のABAPVAポリマーを5%の水溶液になるように溶解し、次にさまざまな緩衝液を用いて、2.5%の溶液になるまで、さらに希釈した。900μlのポリマー溶液および100μlのGA溶液を2mlのエッペンドルフチューブに加え、5秒間、ボルテックスをかけた。チューブを、溶液が波打たなくなり、固体化するまで転回させた。固化するまでの時間を計測した。pHは、サンプルが架橋するのにかかる時間に重大な影響を有していた。データは、pHの低下にしたがって、架橋に要する時間が増大することを示唆している。図6参照のこと。
【0251】
4%の分子量150,000のABAPVAサンプルは、7〜9の高いpH範囲では迅速に架橋した。0.2%のGA濃度では、pH7でも37秒で架橋が生じた。しかしながらpHが6.5に調整されると、架橋が完成するまでに、ほぼ4倍の時間の2分31秒かかった。pH6では、サンプルは架橋するのに8分以上かかった。0.1%のGAに相当するサンプルは、pH7に至るまでさらに緩やかな速度ではあったが、さらに同一の傾向を示した。pH7未満では、サンプルは10分以内に固化しなかった。
【0252】
実施例5
インビボ実験−第1部
4頭の動物を、1つの肺に5〜6部位、ポリマーの肺容量の低減(PLVR)システムを用いて処置した。臨床的観察、臨床病理学、胸部CTスキャン、および生理機能について、処置直後および1、4、8、および12週間の時点において評価した。有効性を評価するため、胸部CTスキャンおよび生理機能を定量的に分析した。臨床的観察、臨床病理学、および定量的CTスキャンの結果を安全性の評価に使用した。12週間の時点で動物を安楽死させ、剖検した。組織学的評価のため、組織サンプルを調製した。
【0253】
試験材料は2種類の成分として配合された:
aPVA:リン酸緩衝液中、5%のaPVA溶液(1.25%のアミン置換)、pH〜6.5を滅菌水で2.2%の濃度に希釈した。各治療部位用に、20mlのシリンジに4.5mlを吸い込ませた。
【0254】
グルタルアルデヒド(GA):グルタルアルデヒドの25%溶液を滅菌水で2.5%の濃度に希釈した。各治療部位用に、3mlのシリンジに0.5mlを吸い込ませた。
【0255】
投与時に最終的に再構成した後、最終的な濃度は、aPVAが2%、GAが0.25%であった。この溶液5mlを15mlの酸素と合わせ、各治療部位用に20mlの発泡体を生じさせた。発泡体はベンチ・テストにおいて、2〜4分以内に架橋した。
【0256】
気管支鏡を、所定の肺区域または亜区域におけるウェッジ位置内に誘導した。気管支鏡が適切なウェッジ位置にあることを立証するため、吸引を行ない、気管支鏡の先端の遠位の気道の虚脱を視覚的に確認した。
【0257】
カテーテルの先端が気管支鏡の先端の向こう側に見えるまで、シングルルーメン・カテーテル(5.5フレンチ)を気管支鏡の器具のチャンネルを通じて挿入した。カテーテルは気管支鏡の末端から2cm以内で進行させた。抵抗に遭遇した場合は、カテーテルを0.5〜1cm後退させ、カテーテルの先端が気管支鏡の先端を越えて見える状態を確保した。
【0258】
注入用の発泡体を次のように調製した:
20mlのシリンジに三方活栓を通じて注入することにより、2.5%のグルタルアルデヒド溶液(体積0.5ml)をaPVA溶液(体積4.5ml)に加えた。
ウォールソースから15mlの100%酸素を20mlのシリンジに加えた。
三方コックによって接続された2つのシリンジを通じて、液体(開始体積5ml)および気体(開始体積15ml)を繰り返し押し出すことによって、発泡体を生成した(およそ20回の往復)。
【0259】
PLVR試薬の注入および安定な発泡体のその場(in situ)形成は次のように行った:
発泡体(aPVA、GAおよび酸素を含む)をシリンジの1つに吸い込み、次いでカテーテルの近位端に取り付け、約30〜40秒かけて手動で注入した。次にカテーテルを抜去し、気管支鏡の作業チャンネルを通じて空気を注入し、発泡体を遠位へと押した。
2〜3分後、気管支鏡をウェッジ位置から抜去し、発泡体の適切な重合の痕跡について部位を検査した。適切な重合は、投与した部位から遊離した液体または発泡体が逆流していないことを観察することによって確認した。
【0260】
処置直後のCTスキャンは、一部の部位における容量減少の証拠と共に、治療部位における病巣の浸潤を示した。1週間の時点でのCTスキャンでは、治療部位における明らかな容量減少を伴う高密度で直線状の浸潤が明らかになり、治療した側への縦隔移動を伴っていた。8および12週間の時点のCTスキャンは、縦隔移動におけるいくらかの減少を伴う、治療部位における浸潤の持続性を示した。
【0261】
CT体積積分は、1週間の時点での154.6mlの処置での部位あたりのピーク平均容量減少を示した。12週までは、部位あたりの容量減少は、部位あたり75.0mlでプラトーに達したように見えた。右肺の絶対容量、および左肺容量に対して正規化された右肺の絶対容量におけるベースラインからの12週間の変化は、統計的に有意であった(それぞれ、p<0.008および0.007)。
【0262】
PLVRは、CTの体積積分および生理機能による評価では、有効な肺容量の低減を生じた(図7を参照)。臨床的観察、臨床病理学、CTスキャン、および総計、ならびに顕微鏡的病理学では、肺、腎臓、心臓、肝臓、または血液の毒性の徴候は示されなかった。
【0263】
インビボ実験−第2部
pH5.0のクエン酸緩衝液で緩衝化した被験物質を用いて、同一のインビボ実験を行った。発泡体の重合時間は、ベンチ・テストにおいて、およそ9分であった。このPLVR配合は、CT体積積分および生理機能による評価では、有効な肺容量の低減を生じた。CT体積積分によって示された平均容量減少は、1週間の時点で158.7ml/部位であり、4週間の時点で65.8ml/部位であった。臨床的観察、臨床病理学、CTスキャン、および総計、ならびに顕微鏡的病理学では、肺、腎臓、心臓、肝臓、または血液の毒性の徴候は示されなかった。この系を用いてインビボで達成された肺容量の低減は、第1部におけるものに匹敵した。
【0264】
インビボ実験−第3部
pH6.0のリン酸緩衝液で緩衝化した被験物質を用いて、同一のインビボ実験を行った。発泡体の重合時間は、ベンチ・テストにおいて、およそ2分であった。このPLVR配合は、CT体積積分および生理機能による評価では、有効な肺容量の低減を生じた。CT体積積分によって示された平均容量減少は、1週間の時点で125.6ml/部位、4週間の時点で98ml/部位であった。臨床的観察、臨床病理学、CTスキャン、および総計、ならびに顕微鏡的病理学では、肺、腎臓、心臓、肝臓、または血液の毒性の徴候は示されなかった。この系を用いてインビボで達成された肺容量の低減は、第1部におけるものに匹敵した。
【0265】
インビボ実験−第4部
pH6.0のリン酸緩衝液で緩衝化した被験物質を用い、液体の発泡に酸素の代わりに空気を使用して、同一のインビボ実験を行った。発泡体の重合時間は、ベンチ・テストにおいて、およそ2分であった。このPLVR配合は、CT体積積分および生理機能による評価では、有効な肺容量の低減を生じた。CT体積積分によって示された平均容量減少は、1週間の時点で182.3ml/部位、4週間の時点で103.6ml/部位であった。臨床的観察、臨床病理学、CTスキャン、および総計、ならびに顕微鏡的病理学では、肺、腎臓、心臓、肝臓、または血液の毒性の徴候は示されなかった。この系を用いてインビボで達成された肺容量の低減は、第1部におけるものに匹敵した。
【0266】
インビトロでの実験
aPVAの合成および精製
1Lのビーカーおよび攪拌棒をWFIですすぎ、ビーカーに497.27gの7.5%PVA溶液(分子量85,000〜124,000、87〜89%加水分解)および7.43gの4−アミノブチルアルデヒド・ジエチルアセタール(工業用、最低90%)を加えた。ビーカーをアルミホイルで覆い、溶液を室温で攪拌した。1時間後、36.98gの10%塩酸をビーカーに加え、溶液を再びホイルで覆い、室温で攪拌した。
【0267】
24時間後、pH試験紙でpHが中性に達するまで、溶液に1Nの水酸化ナトリウムを加え、均質になるまで溶液を室温で攪拌した。1Lのアミノ化PVA(「aPVA」)溶液を、WFIを用いた9.5体積の交換により、分子量10,000のカットオフ膜を用いたダイアフィルトレーションを行った。最終的なaPVA溶液を、pH6.0のリン酸緩衝液で2.1%まで希釈した。aPVAのアミン含量を、元素分析によって1.43%であると決定した。
【0268】
4−アミノブチルアルデヒド・ジエチルアセタールの量の増減により、aPVAポリマーのアミン含量は、約0.75%〜3%に調整することができた。より大きい分子量(146,000〜186,000、平均分子量170,000、87〜89%加水分解)および、より小さい分子量(31,000〜50,000、平均分子量40,000、87〜89%加水分解)のPVA出発原料を使用して、同一の反応条件に使用するaPVAを得た。
【0269】
参照による取り込み
本明細書で引用されるすべての米国特許および米国特許出願は、参照することにより本明細書に援用される。
【0270】
等価物
本明細書において、本発明のいくつかの実施の形態について説明し、例証しているが、当業者は、その機能を実行し、および/または、本明細書に記載される結果および/または1つ以上の利点を得るために、さまざまな他の手段および/または構造を容易に思いつくであろう。これらの変化および/または変更のそれぞれは、本発明の範囲内にあるものと見なされる。さらに一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および配置が典型例であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または配置が、本明細書の教示が用いられる特定の用途に応じて決まることを容易に認識するであろう。当業者は、本明細書に記載される発明の特定の実施の形態に対する多くの等価物について、日常的な実験以上のものを必要とせずに、認識し、あるいは確定することができるであろう。したがって、前述の実施の形態は、単なる実例として存在するのであって、具体的に記載され、請求されるもの以外にも、添付の特許請求の範囲、またはその等価物の範囲内で、本発明が実施されうるものと解されるべきである。本発明は、本明細書に記載されるそれぞれ個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対照としている。さらには、特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法などの2つ以上の組合せは、これらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合には、本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に成る、非天然ポリマー、またはそれらの薬学的に許容される塩であって、
【化1】

ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Yは−NHR'、−OH、または−SHであり、
R'はH、NH2、脂肪族、芳香族、複素環式、脂環式、または飽和複素環部分であり、
nは1〜20であり、
前記サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化2】

非天然ポリマー。
【請求項2】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであることを特徴とする請求項1記載の非天然ポリマー。
【請求項3】
YがNHR'であり、R'がHであることを特徴とする請求項1記載の非天然ポリマー。
【請求項4】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであり、YがNHR'であり、R'がHであることを特徴とする請求項1記載の非天然ポリマー。
【請求項5】
下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に成る、非天然ポリマー、またはそれらの薬学的に許容される塩であって、
【化3】

ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Zは−C(O)R"、−C(S)R"、ハロゲン化物、−C(NR")R"、−OP(O)(OR")2、−OP(O)(OR")(R")、−OS(O)2(OR")、または−OS(O)2R"であり、
R"は、水素、脂肪族、芳香族、または複素環であり、
nは1〜20であり、
サブユニットの約60モル%〜約99モル%は下記構造である:
【化4】

非天然ポリマー。
【請求項6】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであることを特徴とする、請求項5記載の非天然ポリマー。
【請求項7】
Zがアルデヒドであることを特徴とする請求項5記載の非天然ポリマー。
【請求項8】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであり、Zがアルデヒドであることを特徴とする請求項5記載の非天然ポリマー。
【請求項9】
サブユニットの約75モル%〜約99モル%が下記構造:
【化5】

であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項10】
サブユニットの約80モル%〜約99モル%が下記構造:
【化6】

であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項11】
サブユニットの約85モル%〜約99モル%が下記構造:
【化7】

であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項12】
サブユニットの約90モル%〜約99モル%が下記構造:
【化8】

であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項13】
サブユニットの約95モル%〜約99モル%が下記構造:
【化9】

であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項14】
nが1〜10であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項15】
nが2〜8であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項16】
nが3〜7であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項17】
nが4〜6であることを特徴とする請求項1または5記載の非天然ポリマー。
【請求項18】
非天然ポリマーと架橋剤から調製されるハイドロゲルであって、
前記非天然ポリマーが複数のペンダント求核基を含み、前記架橋剤が少なくとも2つのペンダント求電子基を含むことを特徴とする、ハイドロゲル。
【請求項19】
前記求核基が、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項20】
前記求核基が、アルコール、チオール、およびアミンからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項21】
前記求核基がアミンであることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項22】
前記求電子基が、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、イミン、エステル、ラクトン、ハロゲン化物、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、ホスフェート、サルフェート、スルホネート、ケトンおよびアルデヒドからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項23】
前記求電子基が、アジリジン、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、ハロゲン化物、スルホネート、またはアルデヒドからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項24】
前記求電子基がアルデヒドであることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項25】
前記非天然ポリマーが、下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に成る、請求項18記載のハイドロゲルであって、
【化10】

ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Yは-NHR'、−OHまたは−SHであり、
R'は水素、NH2、脂肪族、芳香族、複素環、脂環、または飽和複素環部分であり、
nは1〜20であり、
サブユニットの約60モル%〜約99モル%下記構造:
【化11】

である、ハイドロゲル。
【請求項26】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであることを特徴とする、請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項27】
YがNHR'であり、R'がHであることを特徴とする、請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項28】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであり、YがNHR'であり、R'がHであることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項29】
サブユニットの約75モル%〜約99モル%が下記構造:
【化12】

であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項30】
サブユニットの約80モル%〜約99モル%が下記構造:
【化13】

であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項31】
サブユニットの約85モル%〜約99モル%が下記構造:
【化14】

であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項32】
サブユニットの約90モル%〜約99モル%が下記構造:
【化15】

であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項33】
サブユニットの約95モル%〜約99モル%が下記構造:
【化16】

であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項34】
nが1〜10であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項35】
nが2〜8であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項36】
nが3〜7であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項37】
nが4〜6であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項38】
nが2であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項39】
nが3であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項40】
nが4であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項41】
nが5であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項42】
nが6であることを特徴とする請求項25記載のハイドロゲル。
【請求項43】
前記非天然ポリマーの前記重量平均分子量が、約10,000〜約500,000であることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項44】
前記非天然ポリマーの前記重量平均分子量が、約50,000〜約250,000であることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項45】
前記架橋剤がポリアルデヒドであることを特徴とする請求項18〜44いずれか1項記載のハイドロゲル。
【請求項46】
前記架橋剤がジアルデヒドであることを特徴とする請求項18〜44いずれか1項記載のハイドロゲル。
【請求項47】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドであることを特徴とする請求項18〜44いずれか1項記載のハイドロゲル。
【請求項48】
前記架橋剤が、下記構造式:
【化17】

によって表されることを特徴とする請求項18〜44いずれか1項記載のハイドロゲルであって、
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
Yは、脂肪族、芳香族、複素環脂肪族、または複素環部分のジラジカルである、
ハイドロゲル。
【請求項49】
前記架橋剤が、下記構造式:
【化18】

によって表されることを特徴とする請求項18〜44いずれか1項記載のハイドロゲルであって、
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
4およびR5は、それぞれ独立して、水素、脂肪族、脂環、芳香族、複素脂環または複素環部分である、
ハイドロゲル。
【請求項50】
前記架橋剤が、約0.1mg/ml〜約5mg/mlの濃度で水溶性であることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項51】
抗感染薬をさらに含むことを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項52】
前記抗感染薬がテトラサイクリンであることを特徴とする請求項51記載のハイドロゲル。
【請求項53】
造影剤をさらに含むことを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項54】
前記造影剤が、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有材料からなる群より選択されることを特徴とする請求項53記載のハイドロゲル。
【請求項55】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約10分以内に生じることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項56】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項57】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約2分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項58】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約3分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項59】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約4分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項60】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の組織と接触することを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項61】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の肺組織と接触することを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項62】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の肺組織の内表面と接触することを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項63】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の肺胞の内表面と接触することを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項64】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の肺胞の内表面と接触し、ある程度または完全に哺乳動物の肺胞を満たすことを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項65】
前記ハイドロゲルがさらに、約90%を超える水(w/w)を含むことを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項66】
前記ハイドロゲルがさらに、約95%を超える水(w/w)を含むことを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項67】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が、約5:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項68】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が、約10:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項69】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が、約20:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項70】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が、約50:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項18記載のハイドロゲル。
【請求項71】
非天然ポリマーおよび架橋剤から調製されるハイドロゲルであって、
前記非天然ポリマーが複数のペンダント求電子基を含み、前記架橋剤が少なくとも2つのペンダント求核基を含むことを特徴とする、
ハイドロゲル。
【請求項72】
前記求電子基が、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、イミン、エステル、ラクトン、ハロゲン化物、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、ホスフェート、サルフェート、スルホネート、ケトンおよびアルデヒドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項73】
前記求電子基が、アジリジン、エポキシド、ヒドロキシスクシンイミジル・エステル、ハロゲン化物、スルホネート、またはアルデヒドであることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項74】
前記求電子基がアルデヒドであることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項75】
前記求核基は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、またはチオールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項76】
前記求核基が、アルコール、チオールおよびアミンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項77】
前記求核基がアミンであることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項78】
前記非天然ポリマーが、下記からなる群より独立して選択される複数のサブユニットから実質的に成ることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲルであって、
【化19】

ここで、存在ごとに独立して、
Xは、−(C(R)2n−、−(CH2OCH2nCH2-、−(CH2n−(シクロアルキル)−(CH2n−、または−(CH2n−(アリール)−(CH2n−であり、
RはHまたは低級アルキルであり、
Zは−C(O)R"、−C(S)R"、ハロゲン化物、−C(NR")R"、−OP(O)(OR")2、−OP(O)(OR")(R")、−OS(O)2(OR")、または−OS(O)2R"であり、
R"は、水素、脂肪族、芳香族、または複素環であり、
nは、各存在ごとに独立して1〜20であり、
サブユニットの約60モル%〜約99モル%が下記構造である:
【化20】

ハイドロゲル。
【請求項79】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項80】
Zがアルデヒドであることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項81】
Xが−(C(R)2n−であり、RがHであり、Zがアルデヒドであることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項82】
サブユニットの約75モル%〜約99モル%が下記構造:
【化21】

であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項83】
サブユニットの約80モル%〜約99モル%が下記構造:
【化22】

であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項84】
サブユニットの約85モル%〜約99モル%が下記構造:
【化23】

であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項85】
サブユニットの約90モル%〜約99モル%が下記構造:
【化24】

であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項86】
サブユニットの約95モル%〜約99モル%が下記構造:
【化25】

であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項87】
nが1〜10であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項88】
nが2〜8であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項89】
nが3〜7であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項90】
nが4〜6であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項91】
前記非天然ポリマーの重量平均分子量が約10,000〜約500,000であることを特徴とする、請求項78記載のハイドロゲル。
【請求項92】
前記非天然ポリマーであるポリビニルアルコールの重量平均分子量が約50,000〜約250,000であることを特徴とする、請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項93】
前記架橋剤がポリアミン、ポリアルコールまたはポリチオールであることを特徴とする、請求項71〜92いずれか1項記載のハイドロゲル。
【請求項94】
前記架橋剤がジアミン、ジアルコールまたはジチオールであることを特徴とする、請求項71〜92いずれか1項記載のハイドロゲル。
【請求項95】
前記架橋剤が下記構造式:
【化26】

によって表されることを特徴とする、請求項71〜92いずれか1項記載のハイドロゲルであって、
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
6は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択され、
Yは、脂肪族、芳香族、複素環脂肪族、または複素環部分のジラジカルである、
ハイドロゲル。
【請求項96】
前記架橋剤が下記構造式:
【化27】

によって表されることを特徴とする請求項71〜92いずれか1項記載のハイドロゲルであって、
ここで、存在ごとに独立して、
nは0〜12であり、
mは0〜12であり、
4およびR5は、それぞれ独立して、水素、脂肪族、脂環式、芳香族、複素脂環式または複素環式の部分であり、
6は、アルコール、アミン、ヒドラジン、シアン化物、およびチオールからなる群より選択される、
ハイドロゲル。
【請求項97】
前記架橋剤が約0.1mg/ml〜約5mg/mlの濃度で水溶性であることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項98】
抗感染薬をさらに含むことを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項99】
前記抗感染薬がテトラサイクリンであることを特徴とする請求項98記載のハイドロゲル。
【請求項100】
造影剤をさらに含むことを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項101】
前記造影剤が、放射線不透過物質、常磁性体、重原子、遷移金属、ランタニド、アクチニド、染料、および放射性核種含有材料からなる群より選択されることを特徴とする請求項100記載のハイドロゲル。
【請求項102】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約10分以内に生じることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項103】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約1分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項104】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約2分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項105】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約3分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項106】
前記非天然ポリマーおよび前記架橋剤の組合せにおける実質的な架橋が約4分〜約8分以内に生じることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項107】
前記ハイドロゲルが哺乳動物の組織と接触することを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項108】
前記ハイドロゲルが哺乳動物の肺組織と接触することを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項109】
前記ハイドロゲルが、哺乳動物の肺組織の内表面と接触することを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項110】
前記ハイドロゲルが哺乳動物の肺胞の内表面と接触することを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項111】
前記ハイドロゲルが哺乳動物の肺胞の内表面と接触し、ある程度または完全に前記哺乳動物の肺胞を満たすことを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項112】
前記ハイドロゲルがさらに、約90%を超える水(w/w)を含むことを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項113】
前記ハイドロゲルがさらに、約95%を超える水(w/w)を含むことを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項114】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が約5:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項115】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が約10:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項116】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が約20:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項117】
前記非天然ポリマーの前記架橋剤に対する比率が約50:1(w/w)を超えることを特徴とする請求項71記載のハイドロゲル。
【請求項118】
患者の肺容量を低減する方法であって、請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、それを必要とする患者に投与する工程を有してなる、方法。
【請求項119】
前記ハイドロゲルが、気管支鏡を用いて投与されることを特徴とする請求項118記載の方法。
【請求項120】
前記ハイドロゲルが、カテーテルを用いて投与されることを特徴とする請求項118記載の方法。
【請求項121】
患者の気管支胸腔瘻をシーリングする方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、それを必要とする患者に投与し、それによって前記気管支胸腔瘻をシーリングする工程を有してなる方法。
【請求項122】
前記ハイドロゲルが、気管支鏡を用いて投与されることを特徴とする請求項121記載の方法。
【請求項123】
前記ハイドロゲルが、カテーテルを用いて投与されることを特徴とする請求項121記載の方法。
【請求項124】
患者の胸膜癒着術を達成する方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、それを必要とする患者に投与する工程を有してなる方法。
【請求項125】
前記ハイドロゲルが、シリンジを使用して投与されることを特徴とする請求項124記載の方法。
【請求項126】
前記ハイドロゲルが、カテーテルを使用して投与されることを特徴とする請求項124記載の方法。
【請求項127】
肺における空気の漏出をシーリングする方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、それを必要とする患者の肺に投与し、それによって肺における空気の漏出をシーリングする工程を有してなる方法。
【請求項128】
第1の組織を、それを必要とする患者の第2の組織に付着させる方法であって、
前記第1の組織または前記第2の組織、またはその両方に、請求項18または71記載のハイドロゲルを有効量で施用し、それによって前記第1の組織を前記第2の組織に付着する工程を有してなる、方法。
【請求項129】
止血を達成する方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、それを必要とする患者の血管に施用し、それによって止血を達成する工程を有してなる、方法。
【請求項130】
患者の出血している血管の緊急タンポナーデを投与する方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効な量で、患者の出血している血管に投与し、それによって前記血管をシーリングする工程を有してなる方法。
【請求項131】
患者の胃腸管に緊急タンポナーデを投与する方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効量で、患者の胃腸管に投与し、それによって前記血管をシーリングする工程を有してなる、方法。
【請求項132】
患者の内臓に緊急タンポナーデを投与する方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療に有効量で、それを必要とする患者の内臓に投与し、それによって前記内臓の出血を妨げる工程を有してなる、方法。
【請求項133】
患者の瘻孔をシーリングする方法であって、
請求項18または71記載のハイドロゲルを治療量で、それを必要とする患者の胃腸管に投与し、それによって前記瘻孔をシーリングする工程を有してなる、方法。
【請求項134】
非天然ポリマーまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む第1の混合物を第1の量で含む、第1の容器と、
架橋剤またはその薬学的に許容される塩を含む第2の混合物を第2の量で含む、第2の容器と、
肺容量の低減術に使用する使用説明書と、
を含む、キット。
【請求項135】
抗感染薬を第3の量で、さらに含むことを特徴とする請求項134記載のキット。
【請求項136】
造影剤を第4の量で、さらに含むことを特徴とする請求項134または135記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−526914(P2010−526914A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507639(P2010−507639)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/062993
【国際公開番号】WO2008/141059
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(308031625)エアリス セラピューティクス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】