説明

栄養ドリンク剤

【課題】L−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応(褐変)を抑制し得、且つL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感を軽減し得る栄養ドリンク剤を提供する。
【解決手段】栄養ドリンク剤であって、該ドリンク剤の全質量に基づいて、
a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物を0.03ないし3質量%、
b)L−アルギニンを0.5ないし9質量%、
c)L−アスコルビン酸を0.1ないし10質量%、及び
d)pH調整剤を0ないし6質量%
含み、pHが3ないし4である栄養ドリンク剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応(褐変)を抑制し得、且つL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感を軽減し得る、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物、L−アルギニン、及びL−アスコルビン酸を含む栄養ドリンク剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2004−089004号公報及び特開2003−335664号公報には、RNAの粉末、L-アルギニン粉末及びL-アスコルビン酸粉末から成る栄養補助食品、脳脊髄系神経栄養剤、補完療法のための栄養補助食品が開示され、また、一定量のアスコルビン酸を添加することにより、アルギニンのえぐい味を無くし、えぐい感を軽くできることも記載されている。
また、国際公開第2005/084660号パンフレットには、RNA、L-アルギニン及びL-アスコルビン酸を含むミトコンドリア病治療剤が記載されている。
【0003】
しかし、上記栄養補助食品、脳脊髄系神経栄養剤、補完療法のための栄養補助食品及びミトコンドリア病治療剤は、L-アルギニンとL-アスコルビン酸により引き起こされるメイラード反応(褐変)のため、何れも粉末状の組成物とする必要があった。
また、メイラード反応を回避するために、L−アスコルビン酸をコーティングで被覆し、その後にL−アルギニンと混合する方法も開示されている。
【特許文献1】特開2004−089004号公報
【特許文献2】特開2003−335664号公報
【特許文献3】国際公開第2005/084660号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、L−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応(褐変)を抑制し得、且つL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感を軽減し得る、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物、L−アルギニン、及びL−アスコルビン酸を含む栄養ドリンク剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、調製される溶液のpHを3ないし4に調整すればL−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応を抑制し得ることを見出したが、一方、粉末状においてはL−アスコルビン酸により抑えられていたL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感が、溶液中では抑えられないことが判った。しかしこの溶液中におけるL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感が、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物の添加により低減し得ることを見出した。そしてこれにより、メイラード反応を抑制し得、且つL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感を軽減し得る、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物、L−アルギニン及びアスコルビン酸を含む栄養ドリンク剤が提供できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)栄養ドリンク剤であって、該ドリンク剤の全質量に基づいて、
a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物を0.03ないし3質量%、
b)L−アルギニンを0.5ないし9質量%、
c)L−アスコルビン酸を0.1ないし10質量%、及び
d)pH調整剤を0ないし6質量%
含み、pHが3ないし4である栄養ドリンク剤、
(2)前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である前記(1)記載の栄養ドリンク剤、
(3)前記質量比が1:0.2〜0.25である前記(2)記載のドリンク剤、
(4)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物が、酵母から抽出したRNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物である前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の栄養ドリンク剤、
(5)前記酵母がビール酵母である前記(4)記載の栄養ドリンク剤、
(6)更に、鮭由来の白子抽出物を含む前記(1)ないし(5)の何れか1つに記載の栄養ドリンク剤、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、L−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応を抑制し得、且つL−アルギニンのえぐい味及びえぐい感を軽減し得る、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物、L−アルギニン、及びL−アスコルビン酸を含む栄養ドリンク剤を提供することができる。
本発明の栄養ドリンク剤は、栄養補助食品、脳脊髄系神経栄養剤、補完療法のための栄養補助食品、ミトコンドリア病治療剤として使用することができる。
更に、本発明の栄養ドリンク剤は、線維筋痛症候群の治療剤、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の栄養ドリンク剤は、該ドリンク剤の全質量に基づいて、
a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物を0.03ないし3質量%、
b)L−アルギニンを0.5ないし9質量%、
c)L−アスコルビン酸を0.1ないし10質量%、及び
d)pH調整剤を0ないし6質量%
含み、pHが3ないし4である。
【0009】
上記成分a)である、RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物は、RNA、リボヌクレオチドまたはリボヌオレオシド;R
NAおよびリボヌクレオチド;RNAおよびリボヌクレオシド;リボヌクレオチドおよび
リボヌクレオシド;およびRNA、リボヌクレオチドおよびリボヌクレオシドを意味する。
【0010】
本発明で使用するRNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物(以下RNA等という。)は、天然起源のものまたは合成物のいずれでもよい。天然起源のRNA等としては、菌体からのもの、好ましくは、例えばビール酵母、パン酵母、トルラ(Torula)酵母、乳酵母等の酵母から抽出、分別されたRNA等、更に好ましくはビール酵母から抽出されたRNA等が挙げられる。
RNA等は、L−アルギニンの溶液中におけるえぐい味及びえぐい感を軽減させることができる。
【0011】
天然起源のRNA等の取得法については、例えばビール酵母からの取得法として下記の
方法がある。即ち、ビールの製造工程から回収されたスラリー状(固形分:約10%)酵母または乾燥酵母から水溶性低分子画分を除去した残査が原料として用いられる。この残査に、食塩水を添加して、RNAを加熱下抽出し、この抽出液に濃塩酸水を加えて沈澱させ、中和後水で再抽出した後、エタノールのようなRNA難溶性の有機溶媒を加えてRNAを沈澱せしめて、遠心分離法によつて上澄液を除き、RNAを主とした沈澱画分を取得する。その後、適当な常法により乾燥することにより取得する。このようにして得られた乾燥後のビール酵母RNAの概略の組成は下記の通りである。
【0012】
【表1】

また、マウスに対する経口毒性は、酵母から抽出したリボ核酸の場合、5250mg/kgでも
無作用なので毒性は非常に低い、即ち、非常に安全性が高いものといえる。
RNA等の1日当たりの摂取量は通常、0.03〜3.0g、好ましくは0.3〜3g
である。
上記摂取量は、栄養ドリンク剤に含有されるRNA等の量に基づいて、単回又は複数回で摂取するのが好ましい。
尚、栄養ドリンク剤に使用されるRNA等の総量は、栄養ドリンク剤の全質量に基づいて、通常0.03〜3質量%、好ましくは0.3〜3質量%である。
【0013】
本発明は成分b)として、L−アルギニンを使用する。
本発明に使用されるL−アルギニンとしては、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
L−アルギニンは、最も毒性の少ないアミノ酸の一つであるので、L−アルギニンの1
日当たりの摂取量は必要に応じて任意に決められる。体重70kgの成人のL−アルギニン1日当たり摂取量は、通常0.5〜9gであり、好ましくは0.5〜6gであるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
上記摂取量は、栄養ドリンク剤に含有されるL−アルギニン量に基づいて、単回又は複数回で摂取するのが好ましい。
尚、栄養ドリンク剤に使用されるL−アルギニンの総量は、栄養ドリンク剤の全質量に基づいて、通常0.5〜9質量%であり、好ましくは0.5〜6質量%であるが、これら摂取量の範囲外を用いることも可能である。
L−アルギニンの摂取量を増やすことは治療効果の点で有効ではあるものの、L−アルギニンの摂取量が多すぎると体内で有害なNOxを生じる場合がある。このようにして過
剰のNOxが生じた場合、それは尿中に排出されるので、尿中のNOx量を観察することにより、L−アルギニンの投与量が過剰となることを容易に防ぐことができる。この尿中のNOx量の観察は、NO2とNO3とを定量するか、またはテステープで簡単に行うことが
できる。即ち、L−アルギニンの投与は、最初に3g/日から開始し、所望の効果が得られない場合には、尿中のNOx量を観察しつつ投与量を増加させ、該NOx量が増大した場合には投与量を減少させることにより行うことができる。
尚、成分b):成分a)の質量比は通常、1:0.006〜6、好ましくは1:0.2〜6である。
【0014】
本発明に使用される成分c)としてのL−アスコルビン酸(以下アスコルビン酸とも記載する。)は、天然由来又は合成品の何れも使用することができるが、その純度は、好ましくは、97%以上である。
アスコルビン酸の毒性も極めて低い。
使用するアスコルビン酸の量は、成分b)との質量比(成分b):成分c))において、1:0.2〜20、特に1:0.2〜6、例えば1:0.2〜0.25、1:0.2〜1/3、1:0.2〜1/2、1:0.2〜1、1:0.2〜4または1:0.2〜6の範囲である。
大部分の人にとって、アスコルビン酸の最適摂取量は、一般に薦められている摂取上限値をはるかに上回っている。個々の摂取者は、快適な健康維持のためにアスコルビン酸の経口摂取量を任意に選択しても良い。かくして、上述の質量比(成分b):成分c))1:0.2〜0.25に加えるアスコルビン酸の質量を任意に選択して摂取できる。成分c)/成分b)の質量比の上限値は、〔(成分c)1日当たり経口摂取量の上限値)/(成分b)1日当たり摂取量の下限値)〕の比率により決めることができる。通常は、〔(成分c)1日当たり摂取量の上限値=10g(体重約70kgの成人の場合))/(成分b)の1日当たり経口摂取量の下限値=0.5g(体重約70kgの成人の場合))〕=20であり得るので、成分c)/成分b)の質量比の上限値は20であり得る。また、成分c)(アスコルビン酸)1日当たり常用量は、2〜3gと言われている(成分c)(2〜3g)/成分b)(0.5g)の質量比=4〜6に相当する。)。従って、成分b):成分c)は、1:0.2〜20、好ましくは1:0.2〜6である。
上記摂取量は、栄養ドリンク剤に含有されるアスコルビン酸量に基づいて、単回又は複数回で摂取するのが好ましい。
尚、栄養ドリンク剤に使用されるアスコルビン酸の総量は、栄養ドリンク剤の全質量に基づいて、通常0.1ないし10質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0015】
アスコルビン酸は、RNA等の大量摂取により上昇する血液中の尿酸値を低下する傾向がみとめられる。これにより、RNA等の投与によって尿酸値が上昇する傾向のある体質の患者の場合、血中尿酸値の上昇により招くであろう痛風の症状を回避することが可能である。従って、アスコルビン酸は、痛風の発症を回避させることにも効果がある。
【0016】
本発明の栄養ドリンク剤は、メイラード反応を回避するために、必要に応じて、成分d)のpH調整剤を用いて溶液のpHを3ないし4に調整される。
pH調整剤としては、有機酸類、無機酸類又はこれらの混合物などが挙げられる。
有機酸類としては、たとえばクエン酸,リンゴ酸,酒石酸,酢酸,コハク酸,乳酸,アスコルビン酸,フマル酸,アジピン酸およびこれらのナトリウム塩,カリウム塩またはカルシウム塩等が挙げられ、また、クエン酸緩衝液等の緩衝液も含まれる。
無機酸類としては、燐酸、塩酸、硫酸およびこれらのナトリウム塩,カリウム塩またはカルシウム塩等が挙げられ、また、リン酸緩衝液等の緩衝液も含まれる。
また、酸性を有するpH調整剤として、乳などを乳酸菌又は酵母で発酵させたものを使用することもできる。
pH調整のためにアスコルビン酸を用いる場合、該アスコルビン酸の使用量は成分c)の使用量に含まれるため、pH調整剤の使用量には含まれない。
従って、アスコルビン酸のみでpHを3ないし4に調整する場合、pH調整剤の使用量は0gとなる。
尚、pH調整のためにアスコルビン酸を用いる場合、本発明の栄養ドリンク剤に使用する総アスコルビン酸量は、前記した成分c)の使用量の範囲内とするのが好ましい。
尚、栄養ドリンク剤に使用されるpH調整剤の総量は、pHを3ないし4に調整するのに必要な量であって、使用する各成分の種類・量により変化するため、一概にその範囲を確定できないものの、栄養ドリンク剤の全質量に基づいて、通常0〜6質量%、好ましくは0〜3質量%の範囲である。
【0017】
本発明の栄養ドリンク剤は、成分a)ないしd)に加えて、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンを添加することができる。
L−シトルリン及びL−オルニチンは、生体内でL−アルギニンに変換される化合物である。
そのため、L−シトルリン及び/又はL−オルニチンを使用する際の量は、成分b)のL−アルギニンとL−シトルリンとL−オルニチンの総量が、栄養ドリンク剤の全質量に基づいて9質量%以下となる範囲で添加するのが好ましく、また、6質量%以下となる範囲で添加するのがより好ましい。
【0018】
本発明の栄養ドリンク剤は、医薬的に許容されるカルシウム塩およびマグネシウム塩を添加することもできる。
医薬的に許容されるカルシウム塩およびマグネシウム塩を添加するとRNA等(成分a))の薬理的活性が増強される傾向がある。これらの医薬的に許容されるカルシウム塩およびマグネシウム塩の例としては、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウムのような酸部分が薬理的に殆ど不活性であり、かつ金属イオン部分だけの活性を期待できるものである。これら塩のRNA等の総質量に対する質量比は、カルシウムおよびマグネシウム部分の質量に依存するものであり、例えば乳酸カルシウムは1〜5質量倍、硫酸マグネシウムは1〜5質量倍である。
【0019】
本発明の栄養ドリンク剤は、DNAを含有する鮭由来の白子抽出物を添加することもできる。
本発明の好ましい態様として、成分a)ないしd)に加えて、更に、鮭由来の白子抽出物を含む栄養ドリンク剤が挙げられる。
【0020】
本発明の栄養ドリンク剤には、ドリンク剤に汎用的に使用される各種添加剤、例えば、甘味料、ビタミンB類、ムコ多糖類、香料、色素等を添加することもできる。
甘味料としては、果糖、ブドウ糖、液糖、ハチミツ、エリスリトール及びキシリトール等が挙げられる。
【0021】
ビタミンB類としては、水溶性であれば、特に限定されず、例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硝酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスペンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン等のビタミンB1 類;フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン等のビタミンB2 類;塩酸ピリドキシン、リン酸ポリドキサール等のビタミンB6 類;ニコチン酸アミド等のビタミンB複合体;塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン等のビタミンB12類等が挙げられ、ビタミンB2 類、ビタミンB6 類及びビタミンB複合体が好ましく、ビタミンB2 類、ビタミンB6 類及びビタミンB複合体を併用するのがより好ましく、リン酸リボフラビンナトリウム、塩酸ピリドキシン及びニコチン酸アミド等が挙げられる。
【0022】
ムコ多糖類としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン等が挙げられる

香料としては、従来周知のいずれのものであってもよく、また色素としては、アントシアニン系色素、アザフィロン系色素、カロテノイド系色素、ベタシアニン系色素及びポリフェノール系色素等が挙げられる。
【0023】
次に本発明の栄養ドリンク剤の製造方法について説明する。
本発明の栄養ドリンク剤は、汎用のドリンク剤の製造方法を用いることができ、例えば、成分a)、b)、c)及びその他の添加剤を均一に混合、溶解させ、成分d)のpH調整剤を添加してpHを3ないし4に調整することによって製造することができる。
上記成分を溶解させる媒体は、水であり、蒸留水、脱イオン水等を用いることができる。
本発明の栄養ドリンク剤は、例えば、瓶、缶又は紙パックに充填されて最終製品とすることができ、またこの際、最終製品は、通常、常法により加熱殺菌される。
【0024】
本発明の栄養ドリンク剤は、L−アルギニンとL−アスコルビン酸によるメイラード反応を起さず、また、L−アルギニンのえぐい味を無くし、えぐい感を軽くできるため、飲みやすいものであり、従って、栄養補助食品、脳脊髄系神経栄養剤、補完療法のための栄養補助食品、ミトコンドリア病治療剤、線維筋痛症候群の治療剤、血管平滑筋攣縮による疼痛の治療剤等として使用することができる。
【実施例】
【0025】
(RNAの製造例)
製造例1.RNAの製造
(1)ビール製造工程から回収したスラリー状の酵母を80〜200メツシユのフルイを通して固形分を除去したのち、0.5〜1%の炭酸ソーダ水溶液で洗滌後、水洗して脱苦味酵母を得
た。
(2)酵母濃度10%、食塩10%となるように加塩、加水し、加熱昇温させ2〜5時間煮沸し
た。この煮沸条件はオートクレーブ1時間処理に代替することができた。
(3)煮沸下でリボ核酸を抽出したのち、冷却し、遠心分離機等で固液分離を行い抽出液を
得た。固形分に残留するRNAは、10%食塩水を加えて洗滌し、この洗滌液を回収して先の抽出液に合わせた。
(4)この抽出液に濃塩酸を加えてpH2とし酸性下で沈澱する画分を得た。これを分離、回収したのち、苛性ソーダを加えて再度沈澱を形成した。この際、沈澱は速やかに形成されるので上澄液を除き、沈澱を遠心分離機等で回収した。得られた抽出物を98%エタノールで脱水洗滌後、適当な方法で乾燥した。
【0026】
製造例2.RNAの製造
乾燥ビール酵母90kgに水450Lを加え、一定時間攪拌を行い、夾雑物を可溶化し酵母の
洗滌を行った。次いで、遠心処理して、洗滌酵母を回収し、水800L、食塩90kgを加え加
熱した。2時間煮沸後、遠心分離機で抽出液を得た。残査に残留するリボ核酸は、10%食塩水を加注し、洗滌液を回収した。この抽出液を合わせてRNAの製造例1の(4)以降と
同じ処理を行い、ビール酵母粗RNAを得た。
【0027】
製造例3.RNAの製造
スラリー状のビール酵母を常法により脱苦味洗滌し、ドラムドライヤーにて120〜140℃で乾燥した。この乾燥ビール酵母に対し、95℃以上の湯を10倍量加え、5分間保持した後固液分離し、固形物を得た。この固形物に食塩と水を加え、ビール酵母固形物濃度10%、食塩濃度10%に調整し、細胞壁を破砕するために吐出圧が600kg/cm2以上になるようにホ
モジナイザーに給した。破砕された酵母を含む処理液を加熱し、2〜5時間煮沸し、RNAの製造例1の(3)以降と同じ処理を、行いビール酵母粗RNAを得た。
【0028】
下表に、これら製造例で得られた粗RNAの組成の分析結果を示した。
【表2】

【0029】
(ビール酵母粗RNAの急性毒性試験)
RNAの製造例1の方法に準じて取得したビール酵母粗RNA(RNAの含有量70%)のマウス(ICR系、雄と雌、各40匹)に対する経口(強制的投与による。)急性毒性試験
をした。投与前18時間絶食し、〔7500mg(RNAに換算すると5250mgである。)を50mlの水の懸濁液にしたもの〕/kgの投与量で投与した後、14日間観察したがなんらの異常を認
めなかつた。
【0030】
製造例4.白子抽出物の製造
鮭由来の白子211gを粉砕し、次いでろ過し白子の皮等の固形分をろ別した。次いで、ろ液に0.14mol/l食塩水1.5lを加え、磨砕、撹拌して乳濁液とした。この乳濁液から、遠心分離により上澄液を除き、これに0.14mol/l食塩水1.5lを加え、洗浄、ろ過した。この乳濁化、遠心分離、洗浄、ろ過を2〜3回繰り返した後、さらに、エタノールで洗浄して、エタノール可溶の有機物と水分を除き、減圧下乾燥し、粉末状物として白子抽出物を得た。かくして得られた白子抽出物は淡灰白粉末であって、その化学的,物理的性質は以下のデータを示した。核酸:プロテインの比(W:W)=1.0:1.0〜
2.0:1.0、核酸含有量:25〜50%、タンパク含有量:25〜50%、灰分含有量:5〜15%、ニンヒドリン反応:陽性
【0031】
実施例1
RNAの製造例1の方法に準じて取得したビール酵母粗RNA(RNAの含有量70%)粉末1g、アルギニン粉末1gとアスコルビン酸粉末0.2gを蒸留水100mLに加えて均一に混合し、pHが3ないし4の範囲となるまでクエン酸0.5gを加えて栄養ドリンク剤を製造した。
【0032】
実施例2
製造例1の方法によって取得したビール酵母粗RNA0.5g、アルギニン0.5gとアスコルビン酸0.4gを蒸留水100mLに加えて均一に混合し、pHが3ないし4の範囲となるまでクエン酸0.5gを加えて栄養ドリンク剤を製造した。
【0033】
実施例3
製造例1の方法によって取得したビール酵母粗RNA0.5g、アルギニン0.5g、アスコルビン酸0.4g、乳酸カルシウム1.0gおよび硫酸マグネシウム1.0gを蒸留水100mLに加えて均一に混合し、pHが3ないし4の範囲となるまでクエン酸0.5gを加えて栄養ドリンク剤を製造した。
【0034】
実施例4
製造例1の方法によって得られたビール酵母粗RNA1g、アルギニン1g、サケ由来の白子抽出物(上述の白子抽出物の製造例に準じて製造した。)2g、アスコルビン酸粉末4gを蒸留水150mLに加えて均一に混合し、pHが3ないし4の範囲となる栄養ドリンク剤を製造した。
【0035】
実施例1ないし4で製造した栄養ドリンク剤は何れもメイラード反応による褐変を起さず、また、L−アルギニンのえぐい感は軽く、飲みやすいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養ドリンク剤であって、該ドリンク剤の全質量に基づいて、
a)RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物を0.03ないし3質量%、
b)L−アルギニンを0.5ないし9質量%、
c)L−アスコルビン酸を0.1ないし10質量%、及び
d)pH調整剤を0ないし6質量%
含み、pHが3ないし4である栄養ドリンク剤。
【請求項2】
前記成分b):前記成分c)の質量比が1:0.2〜6である請求項1記載の栄養ドリンク剤。
【請求項3】
前記質量比が1:0.2〜0.25である請求項2記載の栄養ドリンク剤。
【請求項4】
RNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物が、酵母から抽出したRNA、リボヌクレオチド及びリボヌクレオシドからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項1ないし3の何れか1項に記載の栄養ドリン
ク剤。
【請求項5】
前記酵母がビール酵母である請求項4記載の栄養ドリンク剤。
【請求項6】
更に、鮭由来の白子抽出物を含む請求項1ないし5の何れか1項に記載の栄養ドリンク剤。

【公開番号】特開2010−70463(P2010−70463A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236787(P2008−236787)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(500529861)
【Fターム(参考)】