説明

栓体およびこれを備えた密閉容器

【課題】 容器本体の密閉を容易且つ確実に行うことができる栓体を提供する。
【解決手段】 容器本体10に形成された開口部10aを開閉する栓体20であって、容器本体10の外面側に装着され開口部10aと連通する外連通孔21aを有する外ベース部材21と、外ベース部材21の外面側に回動軸23を介して回動自在に取り付けられた外カバー部材22とを備え、外ベース部材21および外カバー部材22の各対向面には、N極およびS極が交互に並ぶ縞状の多極着磁パターンが形成されており、外カバー部材22の回動により多極着磁パターン同士が平面視で平行になった状態で、外カバー部材22が外ベース部材21に吸着されて外連通孔21aを覆うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の内部に気体や液体等の流体を注入または吸引して密閉状態を維持することができる栓体、およびこれを備えた密閉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体内の空気を吸引し、或いは容器本体に空気を導入した後、容器本体の密閉状態を維持することができる栓体が従来から知られており、例えば防水ケースやエアギブス等に用いられている。
【0003】
この種の栓体として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。図4に示すように、栓体50は、容器本体51の内面に固着された第1板部材52と、第1板部材52の容器固着面の反対側に設けられた第2板部材53と、容器本体51の外面に固着された第3板部材54とを備えており、第1板部材52および第3板部材54には、容器本体51の貫通孔51aに合致するように貫通孔がそれぞれ形成されている。第1板部材52および第2板部材53はゴム磁石により形成されており、縁部において連結部材55により連結されている。
【0004】
この栓体50は、第2板部材53が貫通孔51aを閉じた状態(一点鎖線で示す状態)から、筒状の注入器具60を貫通孔51aに挿入することにより、注入器具60の先端が第2板部材53を押圧して、図示のように第2板部材53を第1板部材52から離隔させて貫通孔51aを開放する。こうして、注入器具60により容器本体51に対する流体の注入や吸引を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の栓体50は、流体の注入や吸引の完了後に注入器具60を引き抜くと、第2板部材53が第1板部材52に磁力によって吸引されるように構成されているため、第2板部材53の変形や離隔の程度によってはすぐに密閉しないおそれもあることから、密閉性を高める点において更に改良の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、容器本体の密閉を容易且つ確実に行うことができる栓体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、容器本体に形成された開口部を開閉する栓体であって、前記容器本体の外面側に装着され前記開口部と連通する外連通孔を有する外ベース部材と、前記外ベース部材の外面側に回動軸を介して回動自在に取り付けられた外カバー部材とを備え、前記外ベース部材および外カバー部材の各対向面には、N極およびS極が交互に並ぶ縞状の多極着磁パターンが形成されており、前記外カバー部材の回動により前記多極着磁パターン同士が平面視で平行になった状態で、前記外カバー部材が前記外ベース部材に吸着されて前記外連通孔を覆うように構成されている栓体により達成される。
【0009】
この栓体において、前記外ベース部材および外カバー部材は、略同じ大きさを有する平面視長方形状の平板状部材からなることが好ましく、前記回動軸と前記連通孔とが、前記外ベース部材の長手方向に隣接して配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記容器本体の内面側に装着され前記開口部と連通する内連通孔を有する内ベース部材と、前記内ベース部材の内面側に磁力により吸着されて前記内連通孔を覆う内カバー部材とを更に備え、前記内カバー部材は、前記内連通孔を介して外部から押圧されることにより、前記内ベース部材の内面から離隔して前記内連通孔を開放するように支持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器本体の密閉を容易且つ確実に行うことができる栓体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る栓体を備える密閉容器の平面図である。
【図2】図1に示す栓体の断面図である。
【図3】図1に示す栓体の拡大平面図である。
【図4】従来の栓体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る栓体を備える密閉容器の平面図である。図1に示す密閉容器1は、容器本体10に栓体20が装着されて構成されている。
【0014】
容器本体10は、袋状に形成された合成樹脂製の防水ケースであり、物品を収納する下部収納口を嵌合チャック(図示せず)により閉じた後、この部分を1,2度折り返してクリップ12により挟持することで、下部収納口を密閉することができる。また、容器本体10には、内部の空気を吸引するための開口部が形成されており、この開口部に栓体20が装着されている。容器本体10は、必ずしも本実施形態のものに限定されず、目的に応じて適宜の構成とすることが可能であり、気体や液体等の流体を吸引または注入するための開口部を有するものであれば、この開口部に本発明の栓体を適用することができる。
【0015】
栓体20は、図2に断面図で示すように、開口部10aを有する容器本体10の外面10bに全面接着等により固定された外ベース部材21と、外ベース部材21の外面側に設けられた外カバー部材22とを備えている。外ベース部材21および外カバー部材22は、略同じ大きさを有する平面視長方形状の平板状部材であり、外ベース部材21の外面に沿って(図2の紙面を貫通する方向に)外カバー部材22が回動自在となるように、リベットやピン等の回動軸23により回動自在に結合されている。外ベース部材21には、容器本体10の開口部10aと連通する外連通孔21aが形成されている。外連通孔21aは、外カバー部材22により覆われており、外カバー部材22の回動により露出させることができる。外連通孔21aと回動軸23とは、外ベース部材21の長手方向に沿って隣接して配置されている(図3(a)参照)。
【0016】
外ベース部材21および外カバー部材22は、例えばゴム磁石などからなり、高い気密性が得られるように異方性磁石であることが好ましい。外ベース部材21および外カバー部材22の各対向面には、図3に示すように多極着磁パターンが形成されている。外ベース部材21の着磁パターンは、外ベース部材21の長手方向に延びる帯状のN極領域21nおよびS極領域21sが、外ベース部材21の短手方向に沿って交互に並ぶように平行縞状に配置されて形成されている。N極領域21nおよびS極領域21sの幅は特に限定されないが、例えば数mm程度である。
【0017】
外カバー部材22の多極着磁パターンも、外ベース部材21の多極着磁パターンと同様であり、外カバー部材22の長手方向に延びる帯状のN極領域22nおよびS極領域22sが、外カバー部材22の短手方向に沿って交互に並ぶように平行縞状に配置されて形成されている。外カバー部材22の多極着磁パターンは、外カバー部材22が回動して外ベース部材21と平面視で重なり合ったときに、N極領域22nが外ベース部材21のS極領域21sと合致し、S極領域22sが外ベース部材21のN極領域21nと合致するように形成されている。
【0018】
図3(a)に示すように、外カバー部材22が回動して外ベース部材21の外連通孔21aが露出した状態では、外ベース部材21および外カバー部材22の各多極着磁パターンは平面視で平行でなく互いに交差(図3(a)では、多極着磁パターン同士が垂直に交差)するため、外ベース部材21と外カバー部材22との間には、同極領域間(N極領域21n,22n間またはS極領域21s,22s間)の反発力と、異極領域間(N極領域21nとS極領域22s間またはS極領域21sとN極領域22n間)の吸引力とが、略等しい大きさで作用する。したがって、この状態では外カバー部材22に外ベース部材21からの吸着力は作用しないので、外カバー部材22が外ベース部材21を不意に閉じるおそれがない。
【0019】
そして、注入器具を引き抜いた後、外カバー部材22を矢示方向に回動させると、外ベース部材21および外カバー部材22の多極着磁パターン同士が平面視で平行に近づく。そして、図3(b)に示すように、異極領域間の重なりが同極領域間の重なりよりも十分大きくなると、外カバー部材22には、外ベース部材21からの磁力によって多極着磁パターン同士が平行になるような回動力が作用し、外カバー部材22が外ベース部材21に全面吸着される。
【0020】
このように、本実施形態の栓体20は、外連通孔21aを開放した状態では、外ベース部材21と外カバー部材22との間に吸着力が作用せず、外カバー部材22が吸引作業や注入作業を妨げるおそれがない。そして、外カバー部材22を連通孔21aの閉鎖位置近傍まで回動させることにより、外ベース部材21から外カバー部材22に作用する吸着力が急激に高まるので、連通孔21aを容易且つ確実に閉鎖することができる。
【0021】
また、本実施形態においては、外ベース部材21および外カバー部材22が、略同じ大きさを有する平面視長方形状の平板状部材からなり、外連通孔21aが、回動軸23と外ベース部材21の長手方向に沿って隣接して配置されているので、外連通孔21aの開放時における外ベース部材21の非吸着状態と、外連通孔21aの閉鎖時における外ベース部材21の吸着状態を容易に得ることができる。但し、外ベース部材21および外カバー部材22の形状や大きさは本実施形態のものに限定されず、装着される容器本体10の形状や大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0022】
また、本実施形態の栓体20は、図2に示すように、容器本体10の内面側に、内ベース部材24及び内カバー部材25が設けられている。内ベース部材24及び内カバー部材25は、外ベース部材21および外カバー部材22と同様の形状及び大きさを有する平板状部材であり、内ベース部材24には、容器本体10の開口部10aと連通する内連通孔24aが形成されている。
【0023】
内ベース部材24及び内カバー部材25は、例えばゴム磁石等から形成可能であるが、必ずしも多極着磁でなくてもよく、内ベース部材24と内カバー部材25とを吸着できる程度の磁力を有するものであればよい。内ベース部材24と内カバー部材25とは、縁部において結合部材26により結合されている。内カバー部材25は、従来の栓体と同様に、内連通孔24aを介して注入器具の先端で押圧することにより、内カバー部材25または結合部材26に可撓変形が生じ、二点鎖線で示すように内ベース部材24の内面から離隔させることができる。
【0024】
上記の構成を有する本実施形態の栓体20によれば、注入器具を引き抜いた後に、内ベース部材24と内カバー部材25との間でも密閉することができるため、容器本体10の密閉性をより高めることができる。但し、本実施形態の栓体20は、外ベース部材21および外カバー部材22によって高い密閉性が得られるため、内ベース部材24と内カバー部材25との間に作用する磁力は、内カバー部材25が流体の注入圧力程度で開くような弱いものであってもよく、更には、内ベース部材24及び内カバー部材25を設けずに外ベース部材21および外カバー部材22のみで栓体を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 密閉容器
10 容器本体
10a 開口部
20 栓体
21 外ベース部材
21a 外連通孔
22 外カバー部材
23 回動軸
24 内ベース部材
24a 内連通孔
25 内カバー部材
26 結合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に形成された開口部を開閉する栓体であって、
前記容器本体の外面側に装着され、前記開口部と連通する外連通孔を有する外ベース部材と、
前記外ベース部材の外面側に回動軸を介して回動自在に取り付けられた外カバー部材とを備え、
前記外ベース部材および外カバー部材の各対向面には、N極およびS極が交互に並ぶ縞状の多極着磁パターンが形成されており、
前記外カバー部材の回動により前記多極着磁パターン同士が平面視で平行になった状態で、前記外カバー部材が前記外ベース部材に吸着されて前記外連通孔を覆うように構成されている栓体。
【請求項2】
前記外ベース部材および外カバー部材は、略同じ大きさを有する平面視長方形状の平板状部材からなり、
前記回動軸と前記連通孔とが、前記外ベース部材の長手方向に隣接して配置されている請求項1に記載の栓体。
【請求項3】
前記容器本体の内面側に装着され、前記開口部と連通する内連通孔を有する内ベース部材と、
前記内ベース部材の内面側に磁力により吸着されて前記内連通孔を覆う内カバー部材とを更に備え、
前記内カバー部材は、前記内連通孔を介して外部から押圧されることにより、前記内ベース部材の内面から離隔して前記内連通孔を開放するように支持されている請求項1または2に記載の栓体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の栓体を容器本体に装着してなる密閉容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−213395(P2011−213395A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84069(P2010−84069)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(506034178)木下工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】