説明

格子構造体及びその製造方法並びにフェンス、溝蓋

【課題】コストの低廉化を図る。
【解決手段】並設される複数の棒状体11と、棒状体11の軸方向に並設されるとともに、それぞれの長手方向に前記棒状体11と同数の貫通孔13が形成され、前記軸方向に並んだ貫通孔13の組毎に各棒状体11が挿通され、これらの棒状体11と交差するように配される複数の金属板12とを具備し、各金属板12が幅方向に湾曲し、前記貫通孔13における湾曲凹部側の端の周縁が偏平となっていて前記棒状体11を挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフェンスや溝蓋に用いられる格子構造体及びその製造方法並びにフェンス、溝蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したフェンスとして、地面に立設した支柱の間に、格子状の金網からなる格子構造体が取付けられた構成のものが知られている。その格子構造体は、一般的に金属棒を交差するように配して抵抗溶接を行うことで製造される(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−246717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した格子構造体は、抵抗溶接を用いるため大電力を要し、高コストになるという難点があった。また、大きな外力を受けると溶接部が外れて強度的に弱くなる虞があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、コストの低廉化を図ることができる格子構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、耐強度性の高いフェンス及び溝蓋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る格子構造体は、並設される複数の棒状体と、前記棒状体の軸方向に並設されるとともに、それぞれの長手方向に前記棒状体と同数の貫通孔が形成され、前記軸方向に並んだ貫通孔の組毎に各棒状体が挿通され、これらの棒状体と交差するように配される複数の金属板とを具備し、各金属板が幅方向に湾曲し、前記貫通孔における湾曲凹部側の端の周縁が偏平となっていて前記棒状体を挟持することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係るフェンスは、請求項1に記載の格子構造体と、前記格子構造体の両側に立設され前記格子構造体の両端部を支持する支柱とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る溝蓋は、請求項1に記載の格子構造体と、前記格子構造体が内蔵され、溝の開口部に被せられる板材とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る格子構造体の製造方法は、貫通孔が長手方向に複数形成された複数の金属板を、間隔をあけて並設するとともに、各金属板の前記貫通孔のそれぞれに棒状体を挿通させて金属板に対して交差させる工程と、前記金属板の前記長手方向と直交する幅方向から圧力を加えて前記金属板を幅方向に湾曲させ、前記貫通孔における湾曲凹部側の端の周縁を偏平にして前記棒状体を挟持させる工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る格子構造体の製造方法は、請求項4に記載の格子構造体の製造方法において、前記金属板として予め幅方向に曲がったものを用い、その曲がった金属板を更に湾曲させて前記棒状体を挟持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る格子構造体による場合には、金属板に設けた貫通孔に棒状体が挿通され、各金属板がその幅方向に湾曲して貫通孔における湾曲凹部側の端の周縁が偏平となり、その偏平となった部分で棒状体が挟持されて格子状になった構成である。よって、金属板を幅方向に湾曲させる機械的な力を各金属板に付与すればよく、大電力の必要性がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、格子の縦横の一方に金属板を用いるので、耐強度性の高いものになる。
【0013】
本発明の請求項2に係るフェンスによる場合には、支柱間に設けられる格子構造体に、請求項1の格子構造体を用いるので、耐強度性の高いフェンスを提供することが可能になる。
【0014】
本発明の請求項3に係る溝蓋による場合には、溝の開口部に被せられる板材の内部に、請求項1の格子構造体を設けるので、耐強度性の高い溝蓋を提供することが可能になる。
【0015】
本発明の請求項4に係る格子構造体の製造方法による場合には、金属板に設けた貫通孔に棒状体を挿通させ、金属板をその幅方向に機械的な力により湾曲させると、貫通孔における湾曲凹部側の端が周縁が偏平になって棒状体を挟持する。よって、大電力の必要性がなくなり、低コスト化を図ることができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る格子構造体の製造方法による場合には、金属板に、予めその幅方向に曲がったものを使用することにより、金属板を確実に湾曲させることが可能になる。つまり、幅方向に曲がっていない真っ直ぐな金属板を使用する場合には、金属板がその幅方向に湾曲せずに金属板の全体が傾き、棒状体が折れ曲がって棒状体を挟持することが出来にくくなる虞があるが、この製造方法により金属板を確実に湾曲させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るフェンスを示す正面図である。
【図2】図1のフェンスを構成する格子構造体を示す外観斜視図である。
【図3】図1のフェンスに設けられた金属板を示す正面断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3におけるV−V線による断面図である。
【図6】湾曲凹部側の貫通孔の端における周縁を示す図である。
【図7】加圧機により金属板が加圧される前後の状態を示す面である。
【図8】加圧機により金属板が加圧される前後における貫通孔の形状変化の説明図である。
【図9】(a)は本発明の他の実施形態に係る溝蓋が用いられる溝を示す斜視図、(b)は本発明の他の実施形態に係る溝蓋を示す外観斜視図である。
【図10】(a)〜(c)は本発明の格子構造体に用いられる金属板の他の断面形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態につき説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るフェンスを示す正面図であり、図2はフェンスを構成する格子構造体を示す外観斜視図である。
【0020】
このフェンス1は、格子構造体10と、この格子構造体10の両側に立設され格子構造体10の両端部を支持する支柱2、2とを有する。
【0021】
格子構造体10は、複数の棒状体11と複数の金属板12とが縦横に交差するように設けられて格子状に配置されている。棒状体11は、例えば丸棒からなり、軸方向を上下方向にした状態で水平方向に所定間隔をあけて並設されている。棒状体11の本数は、本実施形態にあっては40本程度であるが、適宜選定することができる。
【0022】
金属板12は、格子構造体10の水平長さL1と同一の長さを有し、前記棒状体11の軸方向(上下方向)に9枚並設されている。上端側の2枚の金属板12は互いの間隔を狭く、同様に下端側の2枚の金属板12も互いの間隔を狭くして配設されている。これら4枚の金属板12を除く中間高さ位置の5枚の金属板12は、互いの間隔を長くかつほぼ一定寸法にして配設されている。
【0023】
図3は金属板を示す正面断面図、図4はその平面図、図5は図3におけるV−V線による断面図である。
【0024】
各金属板12のそれぞれは、幅方向中央部12aを幅方向両端部12bに対して上方に突出させた状態で、両端部12bの間が断面円弧形をした湾曲状に形成され、各端部12bの下側にはそれぞれ下方に垂下した垂下部12cが設けられている。上記中央部12aは断面円弧形の頂部に位置している。なお、金属板12の断面形状は、上下逆向きであってもよい。
【0025】
また、各金属板12のそれぞれは、長手方向(水平方向)に棒状体11と同数の貫通孔13が形成されている。これら貫通孔13のうち、前記棒状体11の軸方向(上下方向)に並んだ9つの貫通孔13(9枚の金属板12の1個ずつの貫通孔)を1組として、各組毎に棒状体11が一つずつ挿通されている。これら棒状体11と9つの金属板12とは交差する。
【0026】
上記貫通孔13は、概略円形であって、その中心が前記中央部12aを通るように配置されていて、金属板12の湾曲凹部側(下側)の端の周縁は、図6に示すように金属板12の幅方向Bに対向する2つの対向部分13aが幅方向Bに偏平している。つまり、2つの対向部分13aの間隔は他の箇所よりも狭くなっている。そして、その狭くなった対向部分13aが貫通孔13に挿通された棒状体11に圧接して、棒状体11を挟持している。
【0027】
このように構成された格子構造体10は、金属板12の長手方向を水平方向に一致させて支柱2、2の間に起立した状態に設けられる。なお、起立状態の格子構造体10における両端部それぞれの上端と下端とには、支柱2に支持された支持部材3が取付けられていて(図1参照)、この支持部材3を介して格子構造体10が支柱2に固定される。これにより本実施形態に係るフェンス1が組立てられる。上記支柱2と支持部材3との連結および支持部材3と格子構造体10との連結には、図示しないねじやボルト・ナット等の締結手段が用いられる。
【0028】
このように組立てられたフェンス1は、格子構造体10に金属板12を用いているので、棒状体11を格子状にしたものよりも耐強度性が高いものとなる。
【0029】
次に、格子構造体10の製造方法につき説明する。
【0030】
まず、9枚の金属板12Aと、所定本数の棒状体11とを用意する。このとき、金属板12Aは、図7に示すように、上記格子構造体10を構成する金属板12(実線にて示す)とは断面形状が少し異なり、つまり格子構造体形成後の金属板12の幅方向の湾曲状態よりも緩やかに湾曲している(一点鎖線にて示す)点のみが異なっている。より詳細には、前記中央部12aが両端部12bよりも垂下部12cとは反対側に突出しているものの、その金属板12Aの突出高さは、後述する加圧機による加圧後の格子構造体10における金属板12の突出高さよりも低い状態になっている。そのため、両端部12bの垂下部12c同士は、平行ではなく開口側が広くなっている。また、この金属板12Aの中央部12aに設けた貫通孔13Aは、中央部12aの厚み方向において内径を一定にして形成されている。この貫通孔13Aを有する金属板12は、図示しないプレス成形機により成形され、その成形時に貫通孔13Aも形成される。
【0031】
続いて、金属板12Aの貫通孔13Aに棒状体11を挿通させ、金属板12A及び棒状体11を格子状に組み合わせる。このとき、各金属板12Aに設けられた貫通孔13Aの1つずつに1本の棒状体11を挿通させると、9枚の金属板12Aが、その厚み方向に並ぶ。換言すると、9つの金属板12Aにおける前記軸方向に並ぶ9つの貫通孔13Aを1組として、1本の棒状体11が通る。そして、全ての組の貫通孔13Aのそれぞれに棒状体11を挿通させると、金属板12A及び棒状体11が格子状に組み合わされる。
【0032】
次に、この格子状の金属板12A及び棒状体11を、加圧機の加圧面に配置する。この配置のとき、各金属板12Aはその幅方向を上下方向にして水平方向に並べられ、また棒状体11は軸方向を水平方向に一致させて並べられる。金属板12Aを上述のように並べるに際し、平坦な垂下部12cが金属板12Aの幅方向両側に設けられているので、その片方の垂下部12cを加圧面に載せることで、金属板12Aを倒れ難くした状態で、その幅方向を上下方向にして並べることができる。なお、加圧機は、9枚並んだ金属板12Aの全域よりも広い加圧面を有し、本実施形態の格子構造体10を1回の加圧により作製できるものである。
【0033】
次に、加圧機により上下に位置する両端部12bを互いに接近するように圧力(機械的な力)を付与して成形する。この成形により、予め円弧形に曲げられている金属板12Aの両端部12bの間が更に湾曲し、これに伴って金属板12が形成され、それまで円形であった貫通孔13Aは図6に示したように湾曲凹部側の端の周縁が楕円形となって、幅方向Bで対向する2つの対向部分13aが幅方向Bに偏平し、つまり周縁の幅方向Bに対向する2つの対向部分13aの間隔が他の箇所よりも狭くなる。そして、図8に示すように貫通孔13の狭くなった対向部分13aが棒状体11に強く圧接した状態で棒状体11を挟持する。このとき、金属板12Aとして、予め円弧形に曲げられているものを使用しているので、棒状体11を確実に挟持できるように湾曲させることができるという利点がある。つまり、幅方向に曲がっていない真っ直ぐな金属板を使用する場合には、金属板がその幅方向に湾曲せずに金属板の全体が傾き、棒状体が折れ曲がって棒状体を挟持することが出来にくくなる虞を解消させ得る。
【0034】
このようにして作製される本実施形態に係る格子構造体10は、金属板12に設けた貫通孔13に棒状体11が挿通され、各金属板12がその幅方向に湾曲して貫通孔13における湾曲凹部側の端の周縁が偏平となり、その偏平となった部分で棒状体が挟持されて格子状になった構成である。よって、金属板12を幅方向に湾曲させる機械的な力を各金属板12に付与すればよく、大電力の必要性がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、格子の縦横の一方に金属板12を用いるので、耐強度性の高いものになる。
【0035】
なお、格子構造体10は、フェンスの上端に位置する金属板12の上側を覆う上部カバーを有する構成であってもよい。この上部カバーは金属製でも樹脂製でもよい。
【0036】
また、上述のように作製された格子構造体10は、前記フェンスに限らず、他の用途にも適用される。例えば、図9(a)に示すように溝21の開口部に被せられる溝蓋に適用される。
【0037】
上記溝蓋は、溝の開口部に入り得るように金属板12及び棒状体11の各部寸法と本数を調整した格子構造体10Aでもよく、或いは、図9(b)に示すようにその格子構造体10Aが内蔵された板材20でもよい。上記板材20としては、例えば雨水等を透過させる空隙を内部に有する透水性の板材が好適に利用される。その透水性の板材の一例としては、廃タイヤを粉砕したゴム粉と、硬質骨材と、樹脂(1例としてウレタン樹脂)とを混ぜて、内部に透水性の空隙が形成された構成であり、舗装道路の表層部とほぼ同様なものが好ましい。なお、板材20は、透水性のものに限らない。
【0038】
なお、溝蓋を車道の側溝に用いる場合には、溝に沿って金属板12を並設させる、つまり金属板12の長さ方向を溝幅方向に一致させる構成とした格子構造体10Aを用いるのが好ましい。その理由は、金属板12の長さ方向を溝幅方向に一致させる方が、棒状体11の長さ方向を溝幅方向に一致させるよりも強度を確保し得るからである。
【0039】
また、上述した実施形態では両端部12bの間が円弧形に湾曲した金属板12を用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、図10(a)に示すように両端部12bの間が山形(くの字形)に折れ曲がった金属板12Bであってもよい。或いは、図10(b)に示すように垂下部12cを省略した山形の金属板12C、或いは、図10(c)に示すように垂下部12cを省略した円弧形の金属板12Dなどであってもよい。
【0040】
更に、上述した実施形態ではフェンス1に用いる格子構造体10の製造に、1回の加圧での作製が可能な大型の加圧機を用いているが、2回以上の加圧での作製が可能な小型の加圧機を用いてもよい。例えば、各金属板12を1回ずつ加圧する場合には、非常に小型の加圧機の使用が可能になる。更には、各貫通孔13の箇所を湾曲させるように加圧する場合には、スポット的に加圧する加圧機の使用が可能になる。
【符号の説明】
【0041】
1 フェンス
2 支柱
3 支持部材
10、10A 格子構造体
11 棒状体
12、12A 金属板
12a 中央部
12b 端部
13、13A 貫通孔
20 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設される複数の棒状体と、
前記棒状体の軸方向に並設されるとともに、それぞれの長手方向に前記棒状体と同数の貫通孔が形成され、前記軸方向に並んだ貫通孔の組毎に各棒状体が挿通され、これらの棒状体と交差するように配される複数の金属板とを具備し、
各金属板が幅方向に湾曲し、前記貫通孔における湾曲凹部側の端の周縁が偏平となっていて前記棒状体を挟持することを特徴とする格子構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の格子構造体と、
前記格子構造体の両側に立設され前記格子構造体の両端部を支持する支柱とを有することを特徴とするフェンス。
【請求項3】
請求項1に記載の格子構造体と、
前記格子構造体が内蔵され、溝の開口部に被せられる板材とを有することを特徴とする溝蓋。
【請求項4】
貫通孔が長手方向に複数形成された複数の金属板を、間隔をあけて並設するとともに、各金属板の前記貫通孔のそれぞれに棒状体を挿通させて金属板に対して交差させる工程と、
前記金属板の前記長手方向と直交する幅方向から圧力を加えて前記金属板を幅方向に湾曲させ、前記貫通孔における湾曲凹部側の端の周縁を偏平にして前記棒状体を挟持させる工程とを含むことを特徴とする格子構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の格子構造体の製造方法において、
前記金属板として予め幅方向に曲がったものを用い、その曲がった金属板を更に湾曲させて前記棒状体を挟持させることを特徴とする格子構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−132708(P2011−132708A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291774(P2009−291774)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390039284)株式会社若本製作所 (6)
【Fターム(参考)】