説明

案内装置

【課題】ガイドレールに対してスライダを着座させる際の姿勢制御を有効に行える案内装置を提供する。
【解決手段】第1の支持面13aの凹部13dと第2の支持面13bの凹部13fとが、独立して流体の供給を中止可能な配管系即ち第1通路13h、第2通路13iを介して、圧縮空気源A,Bに接続されているので、例えばバルブV2を閉鎖して空気の供給を中断した場合、第2の支持面13bと第2の案内面12bとの隙間を維持しつつ、第1の支持面13aが第1の案内面12aに着座することができ、或いはバルブV3を閉鎖して空気の供給を中断した場合、第1の支持面13aと第1の案内面12aとの隙間を維持しつつ、第2の支持面13bが第2の案内面12bに着座することができ、これによりスライダ13を静止した際に、これに連結されたテーブル等に載置されたワークを精度良く位置決めすることができ、加工精度や検査精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、精密直線案内に使用される静圧空気軸受等の案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置用の露光装置、ボンダ等の精密加工装置、或いは精密な組立、検査等を行う装置においては、ワークを支持するテーブルを精密且つ高速で位置決めする機能が要求される。この種のテーブルを支持するために、ガイドレールの案内面に外部の空気供給源より加圧した空気等の流体を吐出させ、非接触でテーブルを案内する静圧軸受等の案内装置が多く用いられる。静圧軸受は、空気等の流体の膜により数μmのギャップ間を浮上しているので、摺動抵抗が少なく、案内面や静圧軸受の表面の微小なうねり、表面粗さに影響されることなく、テーブル面内で平均化された浮上量を保つ平均化効果が得られるので、非常に精度の高い位置決めが可能である。このような案内装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1によれば、固定体の2つの案内面にそれぞれ対向する軸受ケースを備えたテーブルを設けており、同一の圧縮空気源から圧縮気体噴出部を介して吹き出された空気により、軸受ケースと案内面との間に静圧を形成し、同時に真空吸着部を介して吹き出された空気を回収することで、固定体に対して移動体を相対移動方向に直交する2方向において、所定の隙間を空けて浮上した状態で剛性高く支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−222124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来技術において、圧縮空気源から圧縮気体噴出部へ供給される空気を中断すると、真空吸着部の機能により固定体に対して移動体が吸着され着座することとなる。ところが、例えばテーブルにワークを載置した場合、ワークの質量、形状、載置位置などを要因として不均一なモーメントがテーブルに作用し、案内面に対して移動体の姿勢が変化した状態で着座することがあり、かかる状態でワークの加工や検査を行うと、加工誤差や検査誤差を招く恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、ガイドレールに対してスライダを着座させる際の姿勢制御を有効に行える案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記のように構成される。
(1)第1の案内面と、前記第1の案内面に交差する方向に延在する第2の案内面とを備えたガイドレールと、
前記第1の案内面に対向する第1の支持面と、前記第2の案内面に対向する第2の支持面とを備えたスライダとを有する案内装置において、
前記第1の支持面には、前記第1の案内面に対向した第1の流体供給部及び第1の流体回収部を設け、
前記第2の支持面には、前記第2の案内面に対向した第2の流体供給部及び第2の流体回収部を設け、
前記第1の流体供給部と前記第2の流体供給部に対して、独立して、流量計と、流量調整機構を設け、流体の供給を中止可能な配管系を介して加圧流体源に接続されていることを特徴とする案内装置。
(2)前記ガイドレールに対して前記スライダを相対移動させるアクチュエータを有していることを特徴とする(1)に記載の案内装置。
(3)前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定されたモータと、前記モータから回転力を伝達されるねじ軸と、前記ねじ軸の回転力を軸線方向力に変換するナットとを有し、前記ナットと前記スライダとは、前記ねじ軸の軸線方向には剛的に且つ軸線直交方向にはフレキシブルに連結する連結手段を介して連結されていることを特徴とする(2)に記載の案内装置。
(4)前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定された固定子と、前記スライダに連結された可動子とからなるリニアモータであることを特徴とする(2)に記載の案内装置。
(5)前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定されたモータと、前記モータの回転軸に取り付けられたプーリと、前記スライダに連結され前記プーリに係合して駆動力を受けるワイヤ部材とからなることを特徴とする(2)に記載の案内装置。
(6)前記ガイドレールと前記スライダとの相対運動を制動する制動装置を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の案内装置。
(7)異常時には、前記制動装置を制動させた後、前記加圧流体源と、前記第1の流体供給部及び前記第2の流体供給部とを連結する配管系を同時に閉鎖することを特徴とする(6)に記載の案内装置。
(8)前記第1の支持面において、前記第1の流体回収部は、一対の前記第1の流体供給部の間に形成されており、
前記第2の支持面において、前記第2の流体回収部は、一対の前記第2の流体供給部の間に形成されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の案内装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記第1の流体供給部と前記第2の流体供給部とが、独立して、流量計と、流量調整機構を設け、流体の供給を中止可能な配管系を介して加圧流体源に接続されているので、例えば前記第1の流体供給部からの流体の供給を中断した場合、前記第2の支持面と前記第2の案内面との隙間を維持しつつ、即ち平行度を保ったまま前記第1の支持面が前記第1の案内面に着座することができ、或いは前記第2の流体供給部からの流体の供給を中断した場合、前記第1の支持面と前記第1の案内面との隙間を維持しつつ、即ち平行度を保ったまま前記第2の支持面が前記第2の案内面に着座することができ、これにより前記スライダを静止した際に、前記スライダに連結されたテーブルやワークの重量やアンバランスに基づくモーメントに抗して姿勢を維持しつつ、ワークを精度良く位置決めすることができ、加工精度や検査精度を向上させることができる。又、前記第1の流体供給部からの流体の圧力と流量と、前記第2の流体供給部からの流体の圧力と流量とを微調整すれば、前記第1の支持面と前記第1の案内面との隙間と、前記第2の支持面と前記第2の案内面との隙間とを精度良く設定できるため、前記スライダを移動方向に直交する方向において精度良く位置決めできる。尚、流体としては、空気を好適に用いることができるが、それに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態にかかる案内装置の斜視図である。
【図2】図1の構成をII-II線を含む面で切断し矢印方向に見た図である。
【図3】図1の構成をIII-III線を含む面で切断し矢印方向に見た図である。
【図4】図1の構成をIV-IV線で切断し矢印方向に見た図である。
【図5】図1の構成を矢印V方向に見た図である。
【図6】図1の構成の一部を矢印IV方向に見た図である。
【図7】連結装置の変形例を示す図6と同様な方向から見た図である。
【図8】別な実施の形態にかかる案内装置の図2と同様な断面図である。
【図9】図9(a)は別な実施の形態にかかる案内装置の上面図であり、図9(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる案内装置の斜視図である。図1において、定盤G上には、矩形板状のスペーサ11を介して、正角筒状のガイドレール12が軸線を定盤Gと平行にして配置されている。ガイドレール12の上面は、第1の案内面12aであり、それに直交する側面は第2の案内面12bとなっている。
【0011】
ガイドレール12に沿って移動可能となるように、スライダ13が設けられている。スライダ13は、2つの矩形板を直交させて一体的に連結した形状を有し、第1の案内面12aに対向して第1の支持面13aを有し、また第2の案内面12bに対向して第2の支持面13bを有している。尚、スライダ13の上面には、ワークを載置したテーブル(不図示)が取り付けられている。
【0012】
スライダ13の側面は、後述する連結装置を介してナット14に連結されている。ナット14は良く知られているように雌螺旋溝(不図示)を有し、これに雄螺旋溝を螺合させるようにしてねじ軸15が配置されている。ねじ軸15は、ガイドレール12の軸線に平行に延在し、定盤Gに固定された支柱16に取り付けられたサーボモータ17の回転軸に連結されている。サーボモータ17,ねじ軸15,ナット14により、サーボモータ17から伝達された回転運動をナット14の軸線方向運動に変換するアクチュエータを構成する。尚、ねじ軸15の回転数は、サーボモータ17の端部に装着されたセンサ18により検出できる。スライダ13の下端には、後述するように制動装置BRが設けられている。
【0013】
図4を参照して、スライダ13の第1の支持面13aの中央には、第1の流体回収部として矩形浅皿状の凹部13cが形成され、その周囲に、凹部13cを挟むようにして対称的に、第1の流体供給部としての円形浅皿状の凹部13dが4つ形成されている。同様に、スライダ13の第2の支持面13bの中央には、第2の流体回収部として矩形浅皿状の凹部13eが形成され、その周囲に、凹部13eを挟むようにして対称的に、第2の流体供給部としての円形浅皿状の凹部13fが4つ形成されている。
【0014】
図3に示すように、凹部13c及び凹部13eの中央は、スライダ13内に形成された共通の通路13gを介して、外部のコネクタCN1に接続されている。コネクタCN1は、簡略化して示す配管H1を介して、負圧ポンプP−に接続されている。
【0015】
また図2に示すように、第1の支持面13aにおける各凹部13d内には、カーボンやグラファイトなどからなる円盤状の多孔質パッドPDが密着配置されている。多孔質パッドPDの表面と、その周囲の第1の支持面13aの表面(ランド部という)は面一となっており、スライダ13が軽量且つ安価なアルミ製である場合、第1の支持面13aの表面はアルマイト処理がなされていると好ましい。また各凹部13dの中央は、スライダ13内に形成された第1通路13hを介して、外部のコネクタCN2に接続されている。コネクタCN2は、簡略化して示す、流量計70a、流力調整機構71a、配管H2及び開閉自在なバルブV2を介して、加圧流体源である圧縮空気源Aに接続されている。
【0016】
一方、第2の支持面13bにおける各凹部13f内にも、カーボンやグラファイトなどからなる円盤状の多孔質パッドPDが密着配置されている。多孔質パッドPDの表面と、その周囲の第2の支持面13bの表面(ランド部という)は面一となっており、スライダ13が軽量且つ安価なアルミ製である場合、第2の支持面13bの表面もアルマイト処理がなされていると好ましい。また各凹部13fの中央は、スライダ13内に形成された第2通路13iを介して、外部のコネクタCN3に接続されている。コネクタCN3は、簡略化して示す、流量計70b、流力調整機構71b、配管H3及び開閉自在なバルブV3を介して、加圧流体源である圧縮空気源Bに接続されている。尚、ここでは、第1通路13hと第2通路13iとが完全に独立しているが、単一の圧縮空気源から分岐した後に、バルブ2,V3を介して凹部13d、13fにそれ加圧空気を振り分けるようにした一部共通の配管系とすることも可能である。
【0017】
制御装置について説明する。図5は、図1の構成を矢印V方向に見た図である。図1,5において、スライダ13の下端面に取り付けられた一対の支持部21が下方に延在しており、支持部21間において、鋼板製の弾性板23が水平に延在するように取り付けられている。弾性板23の下面には、定盤Gの表面に対向するようにしてブレーキ部材24が取り付けられている。ブレーキ部材24の定盤Gに対する対向面には、カーボンやグラファイトなどからなる多孔質パッドPDを内部に密着配置した凹部24aが形成されており、凹部24aは、配管H4及びバルブV4を介して圧縮空気源Cに接続されている。
【0018】
連結装置について説明する。図6は、図1の構成の一部を矢印IV方向に見た図である。図6において、スライダ13は、ねじ軸15(図1)の軸線方向には剛的に且つ軸線直交方向にはフレキシブルに連結する連結手段である連結装置CPを介して、ナット14に連結されている。連結装置CPは、スライダ13の側面に直角に固定される板状の連結部材31と、連結部材31を軸線方向に挟持するボール32,33を有している。ボール32は、ナット14の凹部14aにおける軸線方向に平行に隔置した当接面のうち一方の面14bに当接し、ボール33は、円筒ころ34を介在させつつ、他方の面14cに螺合されたねじ部材35の端部に当接している。尚、円筒ころ34は、ねじ軸15(図1)との平行度を維持しつつ、他方の面14cに形成された案内孔36に嵌合している。
【0019】
ねじ部材35を回転させると、その端部が他方の面14cから突出するようになるが、これにより円筒コロ34を介して、ボール33がねじ軸15と平行に押圧され、更に連結部材31を介してボール32を凹部14aの一方の面14bに対して押しつけるようにしており、これにより部材間のガタを排除するようになっている。
【0020】
円筒ころ34を介在させる理由は、ねじ部材35の端面を直接にボール33に当てると、一般にねじ端面は平坦ではないから均一に押圧することが困難であり、且つねじ端面に突起があればボール33を傷つけるおそれがあるためである。したがって、円筒ころ34の両端面は、ねじ軸15と直角で且つ十分平滑な面であることが望ましい。
【0021】
次に、本実施の形態の動作について説明する。まず、図5(a)に示すように、圧縮空気源Cから供給された加圧空気は、連通状態のバルブV4を通過し配管H4を介して、ブレーキ部材24の凹部24aの多孔質パッドPDより定盤Gに向かって吹き出されるため、ブレーキ部材24は、弾性板23の弾性力に抗して定盤Gから離れるように移動する。よって、ブレーキ部材24と定盤Gとの間の摩擦力が消失する。
【0022】
次いで、図2において、圧縮空気源Aから供給された加圧空気は、開放状態のバルブV2と、流量調整機構71aを通過し、配管H2からコネクタCN2を介して、流量計70aより空気の流量が測定され、スライダ13の第1通路13hに進入し、第1の支持面13aにおける各凹部13dの多孔質パッドPDを介して、ガイドレール12の第1の案内面12aに向かって吐出し、スライダ13をガイドレール12に対して上昇させる。吐出された加圧空気は、第1の支持面13aの凹部13cに捕捉され、通路13gを介してスライダ13の外部へと抜け、コネクタCN1を介して負圧ポンプP−に吸引されるようになっている。即ち、圧縮空気源Aから供給され、流量計70aで測定された加圧空気の流量と、凹部13cから負圧ポンプP−に吸引された空気の流量とを調整することで、第1の案内面12aと第1の支持面13aとの間に微小な隙間(例えば5μm)を形成することが出来る。具体的には、流量計70aで測定した空気の流量を、流量調整機構71aにフィードバックして、空気の流量を調整する。
【0023】
一方、図2において、圧縮空気源Bから供給された加圧空気は、開放状態のバルブV3、流量調整機構71bを通過し、配管H3からコネクタCN3を介して、流量計70bより空気の流量が測定され、スライダ13の第2通路13iに進入し、第2の支持面13bにおける各凹部13fの多孔質パッドPDを介して、ガイドレール12の第2の案内面12bに向かって吐出し、スライダ13をガイドレール12に対して左方に移動させる。吐出された加圧空気は、第2の支持面13bの凹部13eに捕捉され、通路13gを介してスライダ13の外部へと抜け、コネクタCN1を介して負圧ポンプP−に吸引されるようになっている。即ち、圧縮空気源Bから供給され、流量計70bで測定された加圧空気の流量と、凹部13eから負圧ポンプP−に吸引された空気の流量とを調整することで、第2の案内面12aと第2の支持面13bとの間に微小な隙間(例えば5μm)を形成することが出来る。具体的には、流量計70bで測定した空気の流量を、流量調整機構71bにフィードバックして、空気の流量を調整する。
【0024】
以上により、スライダ13はガイドレール12に対して非接触状態でありながら高剛性で支持されることとなる。かかる状態で、不図示の駆動回路よりサーボモータ17に電力を供給すると、ねじ軸15が回転し、それに応じてナット14がガイドレール12に沿って移動するので、連結装置CPを介してスライダ13を同方向に移動させることができ、不図示のテーブル上に載置されたワークを所望の位置に移動させることができる。
【0025】
所望の位置にきたワークに対して加工や検査を行おうとする場合、スライダ13を静止させる必要がある。ここでは、制動装置BRを用いてスライダ13を静止させる。より具体的には、図5(b)に示すようにバルブV4を大気開放状態にすると、配管H4の気圧は大気圧と等しくなり、ブレーキ部材24の凹部24aの多孔質パッドPDより空気が吐出されず、ブレーキ部材24は、弾性板23の付勢力で定盤Gに向かって押圧され、定盤Gとブレーキ部材24との間に働く摩擦力でスライダ13は迅速に停止する。
【0026】
スライダ13が停止した後、図2において、バルブV2を閉止すると、第1の支持面13aにおける各凹部13dの多孔質パッドPDから加圧空気が吐出されなくなる。かかる場合、第1の支持面13aと第1の案内面12aとの間の空気は、凹部13cから外部に吸引にされるので、急速に面間圧力(静圧)が低下して負圧になり、第1の支持面13aは第1の案内面12aに着座することとなる。このとき、スライダ13とガイドレール12との間に相対移動がないので、第1の支持面13aと第1の案内面12aとが傷付くことはない。又、第2の支持面13bと第2の案内面12bとの間は、相変わらず一定の静圧状態で高剛性で維持されているので、水平方向の位置決め精度を維持しつつ、スライダ13の変位を垂直方向のみに抑えることができる。
【0027】
ここで、ナット14はねじ軸15により定盤Gに対して剛的に支持されているので、スライダ13が変位すると、ねじ軸15に無理な応力を与える恐れがある。これに対し本実施の形態においては、連結装置CPにより、かかる問題を解消している。より具体的には図6において、スライダ13がガイドレール12に着座する方向(図6で紙面垂直方向)に相対変位した場合でも、ボール32,33が連結部材31に沿って転動することで、かかる相対変位を許容するようになっている。
【0028】
尚、バルブV2の代わりにバルブV3を閉止すれば、第2の支持面13bが第2の案内面12bに着座することとなる。このとき、第1の支持面13aと第1の案内面12aとの間は、相変わらず一定の静圧状態で高剛性に維持されているので、垂直方向の位置決め精度を維持しつつ、スライダ13の変位を水平方向のみに抑えることができる。かかる場合、図6の連結装置CPにおいて、連結部材31がナット14に近接するように移動すると、ボール32,33が連結部材31上を転動し、スライダ13とナット14との相対変位を許容するようになっている。
【0029】
異常時には、制動装置BRを用いてスライダ13を静止させるか静止直前の状態とし、更にバルブV2及びバルブV3を同時に閉止すれば、第1の支持面13aが第1の案内面12aに着座し、同時に第2の支持面13bが第2の案内面12bに着座するので、スライダ13を直ちに静止できる。
【0030】
本実施の形態によれば、第1の支持面13aの凹部13dと第2の支持面13bの凹部13fとが、独立して流体の供給を中止可能な配管系即ち第1通路13h、第2通路13iを介して、圧縮空気源A,Bに接続されているので、例えばバルブV2を閉鎖して空気の供給を中断した場合、第2の支持面13bと第2の案内面12bとの隙間を維持しつつ、第1の支持面13aが第1の案内面12aに着座することができ、或いはバルブV3を閉鎖して空気の供給を中断した場合、第1の支持面13aと第1の案内面12aとの隙間を維持しつつ、第2の支持面13bが第2の案内面12bに着座することができ、これによりスライダ13を静止した際に、スライダ13に連結されたテーブルやワークの重量やアンバランスに基づくモーメントに抗して姿勢を維持しつつ、ワークを精度良く位置決めすることができ、加工精度や検査精度を向上させることができる。
【0031】
図7は、連結装置の変形例を示す図6と同様な方向から見た図である。連結装置CPは、スライダ13に固定されナット14に向かって延在する第1連結部37と、スライダ13に向かって延在するナット14の一部である第2連結部14e及び第3連結部14dを備える。第2連結部14e及び第3連結部14dは、第1連結部37を間に挟むようにして、ガイドレール12(図1)の軸線方向に互いに離間して配置されている。また、第1連結部37と第2連結部14e及び第1連結部37と第3連結部14dは、それぞれ金属製のワイヤ(線条体)38a,38bによって連結されている。ワイヤ38a,38bは共にガイドレール12の軸線に対して平行に配置されている。ワイヤ38aの両端部はそれぞれ第1連結部37と第2連結部14eとにねじ39で固定されており、一方、ワイヤ38bの両端部はそれぞれ第1連結部37と第3連結部14dとにねじ39で固定されている。尚、本変形例では、線条体として金属製のワイヤを採用しているが、必ずしもこれに限定する必要はなく、合成樹脂その他の素材の線条体を用いてもよい。また、ワイヤ38a,38bの固定は、ねじ39以外の慣用の固定手段を用いてもよい。
【0032】
ここで、ねじ止めされた各ワイヤ38a,38bには、サーボモータ17の駆動によってナット14をねじ軸15に沿って往復移動させた時に、第1連結部37と第2連結部14eとの間隔L1 及び第1連結部37と第3連結部14dとの間隔L2 の保持が可能な張力が付与されている。これにより、ナット14とスライダ3とのガイドレール12の軸線方向の連結剛性を確保して、ナット14に連動したスライダ13の円滑な直動を可能にすることができる。一方、スライダ13がガイドレール12に着座する方向(図7で紙面垂直方向又は上下方向)に相対変位した場合、ワイヤ38a,38bが伸びる又は捻れることで、かかる相対変位を許容するようになっている。更に、本変形例の連結装置CPは、スライダ13とナット14とのピッチング及びヨーイング方向の連結剛性を弱くしてねじ軸15の回転によって生じるナット14の振動を各ワイヤ38a,38bの変形により吸収し、これにより該振動がスライダ13に伝達されることも抑制できる。
【0033】
図8は別な実施の形態にかかる案内装置の図2と同様な断面図であるが、配管等は省略している。図8において、上述した実施の形態に対し異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、アクチュエータとして、固定子52と可動子53とからなるリニアモータLMを用いている。
【0034】
より具体的には、定盤G上に、ガイドレール12に沿って一対の側壁51,51が平行に隔置して形成されており、側壁51,51の内側面には、互いに対向するようにして一対の固定子52、52が取り付けられている。固定子52、52は、それぞれガイドレール12に沿った方向に交互に極性を変えて並べられた複数の磁石からなる。一対の固定子52、52間には、板状の可動子53が非接触で配置されている。可動子53は、支持板54を介してスライダ13に連結されている。それ以外の構成については上述した実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
本実施の形態のリニアモータLMによれば、不図示の電源より可動子53に電力を供給することにより、固定子52、52との間に磁力が発生し、かかる磁力を用いてスライダ13をガイドレール12に対して移動させることができる。
【0036】
図9(a)は別な実施の形態にかかる案内装置の上面図であり、図9(b)は側面図であるが、配管等は省略している。図9において、上述した実施の形態に対し異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、アクチュエータとして、モータ61とワイヤ部材Wとを用いている。
【0037】
より具体的には、定盤G上におけるガイドレール12の一端(図9で右端)側に、回転軸61aを鉛直方向上方に突き出すようにしてサーボモータ61が配置されている。回転軸61aには駆動プーリ62が固定され一体的に回転するようになっている。一方、定盤G上におけるガイドレール12の他端(図9で左端)側に形成されたボス63上には、不図示の軸に支持された従動プーリ64が回転自在に設けられてる。駆動プーリ62と従動プーリ64の双方に係合し、且つ両端をスライダ13に連結するようにして、ワイヤ部材Wが張設されている。
【0038】
本実施の形態のリニアモータLMによれば、不図示の電源よりサーボモータ61に電力を供給することにより、回転軸61aと共に駆動プーリ62が回転し、それに係合したワイヤ部材Wが駆動力を受けて移動し、スライダ13を引っ張ってガイドレール12に対して移動させることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0040】
11 スペーサ
12 ガイドレール
12a 第1の案内面
12b 第2の案内面
13 スライダ
13a 第1の支持面
13b 第2の支持面
13c 凹部
13d 凹部
13e 凹部
13f 凹部
13g 通路
13h 通路
13i 通路
14 ナット
14a 凹部
14b 面
14c 面
14d 第3連結部
14e 第2連結部
15 ねじ軸
16 支柱
17 サーボモータ
18 センサ
21 支持部
23 弾性板
24 ブレーキ部材
24a 凹部
31 連結部材
32 ボール
33 ボール
34 円筒コロ
35 連結部
35 部材
36 案内孔
37 第1連結部
38a ワイヤ
38b ワイヤ
51 側壁
52 固定子
53 可動子
54 支持板
61 サーボモータ
61a 回転軸
62 駆動プーリ
63 ボス
63 従動プーリ
64 従動プーリ
70a 第1の流量計
70b 第2の流量計
71a 第1の流量調整機構
71b 第2の流量調整機構
LM リニアモータ
W ワイヤ部材
A 圧縮空気源
B 圧縮空気源
BR 制動装置
C 圧縮空気源
CN1 コネクタ
CN2 コネクタ
CN3 コネクタ
CP 連結装置
G 定盤
H1 配管
H2 配管
H3 配管
H4 配管
L1 間隔
L2 間隔
P− 負圧ポンプ
PD 多孔質パッド
V2 バルブ
V3 バルブ
V4 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の案内面と、前記第1の案内面に交差する方向に延在する第2の案内面とを備えたガイドレールと、
前記第1の案内面に対向する第1の支持面と、前記第2の案内面に対向する第2の支持面とを備えたスライダとを有する案内装置において、
前記第1の支持面には、前記第1の案内面に対向した第1の流体供給部及び第1の流体回収部を設け、
前記第2の支持面には、前記第2の案内面に対向した第2の流体供給部及び第2の流体回収部を設け、
前記第1の流体供給部と前記第2の流体供給部に対して、独立して、流量計と、流量調整機構を設け、流体の供給を中止可能な配管系を介して加圧流体源に接続されていることを特徴とする案内装置。
【請求項2】
前記ガイドレールに対して前記スライダを相対移動させるアクチュエータを有していることを特徴とする請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定されたモータと、前記モータから回転力を伝達されるねじ軸と、前記ねじ軸の回転力を軸線方向力に変換するナットとを有し、前記ナットと前記スライダとは、前記ねじ軸の軸線方向には剛的に且つ軸線直交方向にはフレキシブルに連結する連結手段を介して連結されていることを特徴とする請求項2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定された固定子と、前記スライダに連結された可動子とからなるリニアモータであることを特徴とする請求項2に記載の案内装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記ガイドレールに対して固定されたモータと、前記モータの回転軸に取り付けられたプーリと、前記スライダに連結され前記プーリに係合して駆動力を受けるワイヤ部材とからなることを特徴とする請求項2に記載の案内装置。
【請求項6】
前記ガイドレールと前記スライダとの相対運動を制動する制動装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の案内装置。
【請求項7】
異常時には、前記制動装置を制動させた後、前記加圧流体源と、前記第1の流体供給部及び前記第2の流体供給部とを連結する配管系を同時に閉鎖することを特徴とする請求項6に記載の案内装置。
【請求項8】
前記第1の支持面において、前記第1の流体回収部は、一対の前記第1の流体供給部の間に形成されており、
前記第2の支持面において、前記第2の流体回収部は、一対の前記第2の流体供給部の間に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−246996(P2012−246996A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118835(P2011−118835)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(311011449)NSKテクノロジー株式会社 (51)
【Fターム(参考)】