説明

棒状部材のチャック装置

【課題】チャック収容室内に、チャック部材を摺動自在に収容し、チャック部材に直接ばね力を作用させることにより、ワークに対し、中心ずれのない確実な保持を行う。
【解決手段】ロッド部材16の上下方向の動きに追従してチャック部材5a、5bが開閉することにより、V溝6a、6bの間隔が変化しワークWに対するチャック作用をする。
ワークWの着脱動作に当っては、駆動手段によりロッド部材16が下降すると、先端の操作片19による楔作用によりチャック部材5a、5bが外側に移動しV溝6a、6b間が拡開する。そして、下方から挿入されたワークWがV溝6a、6b間に配置される。
ロッド部材16を下方に押している駆動手段を解除すると、ロッド部材16は圧縮ばね20の作用により上昇して元に戻り、チャック部材5a、5bはばね9a、9bの押圧力により間隔が狭まり、V溝6a、6bを介してワークWを把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺の蛍光灯のような棒状部材の外周を着脱自在に保持するための棒状部材のチャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、バックライト用蛍光管の焼成装置における保持装置が開示されている。このような構造においては、構造が複雑化、大型化する問題点があり、またチャック部材の保持力に対して落下方向にワーク重量が加わり、ワークが外れてしまう危険性が高い。
【0003】
また、円筒形状のワークを保持するチャックとして、特許文献2に示すような構造が開示されている。この構造においては、V字状溝を有する複数個のチャック部材を所定間隔で左右にずらして保持するものであるが、同様に構造が複雑化し、大型化が避けられない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−55164号公報
【特許文献2】実開平7−7828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1、2は共にV溝を有するチャック部材をワークの長手方向に複数個配置するため、特にワークを垂直に保持しようという場合には、チャック部材のV溝面が垂直方向に高い精度で位置合わせがなされていないと、実際のチャッキング動作において、ワークの確実な保持ができず、かえって保持力が低下する。
【0006】
また、左右のチャック部材が同期して移動し、常時保持するワークの中心が一定でなければならないが、前者の公知例においてはリンクとレバー機構によっており、構造が複雑化する。特許文献2では、左右のチャック部材の同期手段については記載されておらず、V溝部分が精度良く形成されていても、左右のチャック部材の加工精度によって中心位置のずれが発生する虞れがある。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、チャッキングの際に中心ずれのない確実な保持が可能となるので、脆弱な棒状部材であるワークに対しても、安全な把持ができる棒状部材のチャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る棒状部材のチャック装置の技術的特徴は、対向する端面の長手方向にそれぞれV溝を形成し、これらのV溝の近傍に対向する傾斜案内部を形成し、前記V溝と反対側のそれぞれの端面にばね収容穴を設け、摺動により相互間の距離を可変とする一対のチャック部材と、該一対のチャック部材を収容するチャック収容室を有し、該チャック収容室の中心部に貫通しワークを前記チャック部材のV溝間に位置させるワーク挿通孔を設け、外周面の対向位置から前記チャック収容室内の前記チャック部材のばね収容穴と連通するねじ孔を有する固定のカバー部材と、該カバー部材のねじ孔を経て前記チャック部材のばね収容穴内にそれぞれ挿入し、前記チャック部材同士の間隔を狭める方向に押圧する圧縮ばねと、一端に前記一対のチャック部材の対向する前記傾斜案内部間に嵌合し、楔作用により前記チャック部材を開閉する楔状の操作片を有し、他端に軸部を備えたロッド部材と、該ロッド部材を前記軸部の長手方向に駆動する駆動手段とから成ることにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る棒状部材のチャック装置によれば、チャック収容室内に、チャック部材を摺動自在に収容し、このチャック部材に直接ばね力を作用させることにより、壊れ易い蛍光管のようなワークに対して、中心ずれのない確実な保持が達成できる。
【0010】
更に、チャック部材を開閉させる機構として楔作用を利用しているので、確実に開閉動作を行う作用力を付与できると共に、ワークに対する中心位置のずれが発生し難い構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は実施例1の縦断面図、図2は図1のA−A断面図、図3はB−B断面図である。固定のカバー部材1には、上方に開口するチャック収容室2と、下方からチャック収容室2の中心部に向けて貫通するワーク挿通孔3と、外周面の対向位置からチャック収容室2内に向けて水平方向に貫通するねじ孔4a、4bとが設けられている。
【0013】
カバー部材1のチャック収容室2内には、略直方体から成る一対のチャック部材5a、5bが、相互間の距離を可変として水平方向に摺動自在に収容されている。チャック部材5a、5bの対向する平行な内側面には、それぞれ上下方向にV溝6a、6bが形成され、V溝6a、6bの合わせ目はワーク挿通孔3の中心軸と一致するようにされている。
【0014】
V溝6a、6bのそれぞれの両側に傾斜案内部7a、7bが形成され、傾斜案内部7a、7bはチャック部材5a、5b間で上方に向うにつれ、間隔が拡がるように傾斜している。また、チャック部材5a、5bの外側面には行き止りのばね収容穴8a、8bが設けられ、これらのばね収容穴8a、8bはカバー部材1に設けられたねじ孔4a、4bと連通されている。ばね収容穴8a、8bには、ねじ孔4a、4bを介して圧縮ばね9a、9bが挿入され、止めねじ10a、10bにより封止されている。なお、この止めねじ10a、10bは、その螺合位置によって圧縮ばね9a、9bの押圧力を調整することができる。
【0015】
カバー部材1のチャック収容室2の開口端上には、肉厚円筒状のガイドボディ11が装着され、このガイドボディ11にはチャック部材5a、5bの水平移動のためのガイド溝12a、12bが形成されている。更に、ガイドボディ11の上部には円筒形のロッド保持部13が設けられ、このロッド保持部13の貫通孔14に軸受15を介してロッド部材16が上下動自在に嵌合されている。
【0016】
ロッド部材16の上部は、ロッド保持部13から上方に突出する中空軸部17とされ、その上部にはストッパ18が固定されている。中空軸部17の下端には2個の操作片19が設けられ、これらの操作片19はチャック部材5a、5bの傾斜案内部7a、7bにそれぞれ嵌合するようにされている。つまり、操作片19は先端を先細とする楔状の略三角形とされ、その上下動による楔作用により、常時閉方向に圧縮ばね9a、9bにより押されているチャック部材5a、5bを左右に開閉するようにされている。
【0017】
ロッド保持部13の上端とロッド部材16のストッパ18の間の中空軸部17には、圧縮ばね20が巻回され、圧縮ばね20の付勢力によりロッド部材16は常時上方に押し上げられている。
【0018】
図4はチャック部材5a、5bとロッド部材16の操作片19との係合状態の斜視図を示し、ロッド部材16の上下方向の動きに追従してチャック部材5a、5bが水平方向に開閉することにより、中心部のV溝6a、6bがワークWに対するチャック作用をする。
【0019】
このように構成した棒状部材のチャック装置において、実際の使用に際しては、例えば各種製造装置の搬送機構のハンド部等に組み込まれて用いられる。例えば、ワークWを蛍光灯とした場合の着脱動作に当っては、先ず装置側の駆動信号に基づいて図示しない駆動手段によりロッド部材16が下降すると、先端の操作片19による傾斜案内部7a、7bに対する楔作用により、チャック部材5a、5bが外側に移動し、V溝6a、6b間が拡開する。そして、ワーク挿通孔3を通って下方から挿入されたワークWの上端部又は中間部がV溝6a、6b間に配置される。
【0020】
ロッド部材16を下方に押している駆動手段を解除すると、ロッド部材16、操作片19は圧縮ばね20の作用により上昇し、チャック部材5a、5bは圧縮ばね9a、9bの押圧力により間隔が狭まり、V溝6a、6bを介してワークWを把持する。この際に、圧縮ばね9a、9bの押圧力は、止めねじ10a、10bの位置によって適宜の大きさ調整されている。
【0021】
そして、所定の作業が終了すると、装置側の信号に基づいて、ロッド部材16を下方に駆動して、チャック部材5a、5b同士を拡開してワークWの把持を開放する。
【実施例2】
【0022】
図5は実施例2の構成図を示し、ロッド部材16を駆動する圧縮ばね20の作用が実施例1とは反対とされている。即ち、実施例1の構造は常時チャック閉方式であり、実施例2の構造は常時チャック開方式である。
【0023】
ロッド部材16とロッド保持部13以外の構成は図1の実施例とほぼ同様であり、ロッド部材16の中空軸部17の間にばね収容室22が設けられ、圧縮ばね23が中空軸部17を巻回するように収容されている。圧縮ばね23はロッド保持部13内においてロッド部材16をストッパ21を介して常時下方に押圧しており、チャック部材5a、5bは圧縮ばね9a、9bの押圧力に抗して拡開状態となっている。
【0024】
このような構成により、駆動手段によりロッド部材16を上方に引き上げると、チャック部材5a、5bの間隔が狭まり、V溝6a、6bによりワークWを把持するので、動作的には実施例1と同等となる。
【0025】
なお説明の都合上、実施例においてはロッド部材16は上下に作動するようにしたが、上下とは限らず水平方向に作動するようにして、ワークWを水平方向に挿入するようにしてもよい。
【実施例3】
【0026】
図6は実施例3の要部縦断面図である。実施例1、2における圧縮ばね9a、9bの押圧力の調整は、止めねじ10a、10bにより行っている。本実施例3では、止めねじ10a、10bに代えて、チャック収容室2内に向けて水平方向に貫通する孔部4’内に所定の板厚のスペーサ31、32が止め輪33により固定され、ばねストッパ34を介してばね9bの押圧力が調整されている。なお、圧縮ばね9aについても同様な機構が設けられている。
【0027】
そして、所定の厚みのスペーサ31、32を用意し、必要に応じて交換することで、圧縮ばね9a、9bの押圧力を調整することができる。また、スペーサ31、32は2枚でなくても1枚でもよい。このように、チャック部材5a、5bを押圧する圧縮ばね9a、9bの押圧力を調整して固定する手段が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】要部斜視図である。
【図5】実施例2の縦断面図である。
【図6】実施例3の要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カバー部材
2 チャック収容室
3 ワーク挿通孔
4a、4b ねじ孔
5a、5b チャック部材
6a、6b V溝
7a、7b 傾斜案内部
8a、8b ばね収容穴
9a、9b、20、23 圧縮ばね
10a、10b 止めねじ
11 ガイドボディ
12a、12b ガイド溝
13 ロッド保持部
14 貫通孔
16 ロッド部材
19 操作片
22 ばね収容室
31、32 スペーサ
33 止め輪
34 ばねストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する端面の長手方向にそれぞれV溝を形成し、これらのV溝の近傍に対向する傾斜案内部を形成し、前記V溝と反対側のそれぞれの端面にばね収容穴を設け、摺動により相互間の距離を可変とする一対のチャック部材と、該一対のチャック部材を収容するチャック収容室を有し、該チャック収容室の中心部に貫通しワークを前記チャック部材のV溝間に位置させるワーク挿通孔を設け、外周面の対向位置から前記チャック収容室内の前記チャック部材のばね収容穴と連通するねじ孔を有する固定のカバー部材と、該カバー部材のねじ孔を経て前記チャック部材のばね収容穴内にそれぞれ挿入し、前記チャック部材同士の間隔を狭める方向に押圧する圧縮ばねと、一端に前記一対のチャック部材の対向する前記傾斜案内部間に嵌合し、楔作用により前記チャック部材を開閉する楔状の操作片を有し、他端に軸部を備えたロッド部材と、該ロッド部材を前記軸部の長手方向に駆動する駆動手段とから成ることを特徴とする棒状部材のチャック装置。
【請求項2】
前記カバー部材の前記チャック収容室の開口端に、貫通孔を有するガイドボディを装着し、前記貫通孔に前記ロッド部材の軸部を上下動自在に挿着したことを特徴とする請求項1に記載の棒状部材のチャック装置。
【請求項3】
前記収容室内に収容されたチャック部材が、前記ガイドボディのガイド部により案内され、前記収容室内で摺動することを特徴とする請求項2に記載の棒状部材のチャック装置。
【請求項4】
前記ロッド部材を常時一方向に付勢する付勢手段を有する請求項1に記載の棒状部材のチャック装置。
【請求項5】
前記圧縮ばねに所定の押圧力を付与して着脱可能に固定する手段を前記カバー部材に設けたことを特徴とする請求項1に記載の棒状部材のチャック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−18379(P2009−18379A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182792(P2007−182792)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(303061454)クロダニューマティクス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】