説明

植物ライチ・チネンシス・ソンの抽出物の使用

【課題】化粧品調製物および医薬調製物において使用することができ、ケア特性に加えて、特にヒト皮膚および/または毛髪に対して、例えばUV放射および他の環境的影響に対して、改善された保護特性を有し、それと同時に皮膚老化の徴候に対して予防および治癒効果を有し、さらに抗炎症剤として使用することができる、化粧適用および/または皮膚適用のための再生可能な原料からの抽出物を提供する。
【解決手段】植物ライチ・チネンシス・ソン(Litchi chinensis Sonn.)の果皮からの抽出物により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはケア調製物、より具体的には植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物ならびにそれから単離したプロシアニジン[プロシアニドールオリゴマー(procyanidolic oligomer)]およびプロシアニジン誘導体を含有する調製物、ならびに、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物ならびにそれから単離したプロシアニドールオリゴマー(OPC)およびその誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品調製物は、消費者にとって種々の組合せで利用可能である。これらの化粧品は、ある種のケア効果を有することまたはある種の欠陥を排除することが期待されるだけでなく、いくつかの特性を1つで同時に保持し、従って改善された性能スペクトルを示す製品に対する要求が増大している。また、使用者は、この製品の組成が最適な皮膚適合性を有し、従って敏感な皮膚を有する人であっても刺激を伴って反応しないことを期待する権利を有する。さらに、これら調製物は、皮膚および毛髪のケアおよび特に保護の分野において増大している他の機能をも発揮すべきである。
【0003】
植物の抽出物およびその成分が、化粧品学および皮膚学において使用されることが増えている。植物抽出物は、医薬目的、さらには化粧品目的のために種々の文化圏において長年にわたり使用されている。
即ち、特許文献1は、ライチ・チネンシス・ソン(Litchi chinensis Sonn.)の果実およびガノデルマ・ルシダム・カルスト(Ganoderma lucidum Karst.)の全植物部分からの2つの植物抽出物の混合物を記載している(これら抽出物は、水溶性有機溶媒を用いて抽出されている)。得られた組成物は、皮膚美白剤および保湿剤として使用される。
【特許文献1】特開平4−247009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、化粧品調製物、さらには医薬調製物において使用することができ、ケア特性に加えて、特にヒト皮膚および/または毛髪に対して、例えばUV放射および他の環境的影響に対して、改善された保護特性を有し、それと同時に皮膚老化の徴候に対して予防および治癒効果を有し、さらに抗炎症剤として使用することができる、化粧適用および/または皮膚適用のための再生可能な原料からの抽出物を提供することであった。
【0005】
本発明が解決しようとする別の課題は、再生可能な原料からの活性成分を含有し、それと同時に化粧製品ならびに皮膚ケアおよび毛髪ケア製品におけるケア成分として広く使用することができる調製物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
再生可能な原料である植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの本発明に係る調製物(以下において、ライチ抽出物と称する)の複数の用途は、市場および消費者にとってそれを非常に魅力的なものにする。従って、本発明が解決しようとする錯綜した課題は、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮の抽出物の使用によって解決される。フラボン誘導体を含有する抽出物が好ましく、OPCを含有する抽出物が特に好ましいことがわかった。その中に存在するOPCを誘導化して安定性を増大させるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における植物とは、全植物および植物の部分(葉、根、花)およびその混合物を包含すると解される。
【0008】
ライチ・チネンシス・ソン(Litchi chinesis Sonn.)
本発明に従って使用する抽出物は、Sapindaceae科、より具体的にはライチ・チネンシス・ソン種の植物から得られる。ライチは、灰色の幹を有する成長の遅い木であり、良好な条件下では10mまでの高さに達することができる。その葉は、皮革のようであり、比較的厚みがある。新しい葉は、初めは赤みがかっているが、徐々に青々とした緑色に変化する。小さな黄-緑色の花が、長い垂直であることが多い花房を形成する。その原産地は南中国であるが、現在では、この植物は世界中で栽培されている。
【0009】
その熟した果実は、暗赤色/茶色の粗い表面を有しており、大きさが2.5〜4cmである。脆弱な果皮の下に、それは、ゼリー様ではあるが締まった堅さおよび甘味を持つかすかに光る白色の果肉を有する。ライチの種子は、果実全体のかなりの割合を占め、その色が栗の実のような茶色である。
【0010】
抽出
本発明に従って使用する抽出物は、植物または植物部分を抽出するための通常の方法によって得られる。新鮮なまたは乾燥した植物または植物部分を、出発原料として使用することができるが、抽出前に機械的に小さくし、所望により脱脂した植物および/または植物部分を使用するのが普通である。抽出には、植物の果皮が特に好ましい。
【0011】
抽出のための好ましい溶媒は、有機溶媒、水、または有機溶媒と水の混合物、より具体的には、多かれ少なかれ大量の水含量(蒸留または未蒸留)を有する低分子量アルコール、エステル、エーテル、ケトンまたはハロゲン化炭化水素、好ましくは、多かれ少なかれ大量の水含量を有する水性アルコール溶液である。メタノール、水、エタノールおよびこれらの混合物による抽出が特に好ましい。抽出過程は、通常は20〜100℃で、好ましくは30〜90℃で、より具体的には40〜60℃で行う。1つの可能な態様において、抽出過程を、不活性ガス雰囲気中で行って、抽出物の活性成分の酸化を回避する。抽出時間は、出発原料、抽出方法、抽出温度および溶媒と原料の比率などに依存して、当業者により選択される。抽出過程の後、得られた粗抽出物を、所望により他の通常の工程、例えば精製、濃縮および/または脱色などにかけることができる。所望により、このように調製した抽出物を、例えば、個々の望ましくない成分の選択的除去にかけることができる。抽出過程を、任意の程度まで行うことができるが、通常は枯渇するまで続ける。乾燥植物または乾燥植物部分(所望により脱脂する)の抽出における通常の収率(=抽出乾燥分/原料使用量)は、5〜20重量%の範囲内である。本発明は、最終抽出物の収率および抽出条件を、所望の用途に応じて、当業者が選択しうるという観察を包含する。所望により、抽出物を、次いで例えば噴霧乾燥または凍結乾燥にかけることができる。
【0012】
上記の調製物における植物抽出物の使用量は、個々の成分の濃度によって、および抽出物に意図される用途の種類によって決定される。本発明の調製物中に存在する植物抽出物の合計量は、最終調製物を基準に、通常は0.001〜25重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より具体的には0.05〜1.5重量%である。ここで、上記の量は、水および所望による他の助剤および添加剤により、合計して100重量%になる。
【0013】
本発明の抽出物は、抽出物中、5〜100重量%、好ましくは10〜95重量%、より具体的には20〜80重量%の活性成分含量を有する。本発明における活性成分含量は、抽出物の乾燥重量を基準とする、抽出物中に存在する全活性成分の総量である。
【0014】
本発明における活性成分は、その中身および実体を、当業者には既知の通常の方法によって未だ決定することができないものであるとしても、抽出物中に存在する成分に関係する。さらに、本発明における活性成分は、その作用が既に既知であるか、またはその作用が当業者には既知の通常の方法によって未だ決定することができない、抽出物中に存在するあらゆる成分であると解される。
【0015】
本発明における活性物質は、追加で導入される水を除き、調製物中に存在する物質および助剤/添加剤の割合(%)に関係する。助剤/添加剤の合計含有率(%)は、最終形態の化粧品調製物および/または皮膚学的調製物を基準に、1〜50重量%であることができ、好ましくは5〜40重量%である。これら調製物は、通常の冷間または熱間法によって、好ましくは相反転温度法によって製造される。
【0016】
抽出物
本発明に係る植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮の抽出物は、通常、フラボン誘導体、より具体的にはフラバノール、アントシアニンおよびフラボノールからなる群からの成分を含有する。
【0017】
本発明におけるフラボン誘導体は、植物ライチ・チネンシス・ソンから単離することができる誘導体である。より具体的には、これらは、2-フェニル-4H-1-ベンゾピランの水素化、酸化または置換生成物である物質である(即ち、水素化が炭素鎖の2,3-位に既に存在することができ、酸化が4-位に既に存在することができ、そして、置換生成物は1またはそれ以上の水素原子がヒドロキシ基またはメトキシ基によって置換されている化合物であると解される)。従って、このフラボン誘導体の定義は、フラバン、フラバン-3-オール(カテコール、カテコールオリゴマー)、フラバン-3,4-ジオール(ロイコアントシアニジン)、フラボン、フラボノールおよびフラボノンなどの化合物およびこれらの誘導体をも包含する。
【0018】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮から単離される特に好ましいフラボン誘導体は、プロシアニドールオリゴマー(OPC)である。これらは、2〜8個のモノマー単位のカテコールおよび/またはエピカテコールのオリゴマーである。このプロアントシアニドールオリゴマー(OPC)は、そのビタミンP活性が評価されている。
【0019】
配合物中での安定性を増大させるために、抽出後にOPCを誘導化するのが好ましく、得られた誘導体を配合物において使用する。この点で、OPCとのエステルが特に好ましい。
【0020】
本発明は、皮膚ケアおよび/または毛髪ケア剤としての、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮の抽出物の使用に関する。フラボン誘導体を含有する抽出物がこの目的に好ましく、OPCを含有する抽出物が特に好ましい。OPCの安定性を誘導化によって増大させることができる。使用の種類には、化粧品および医薬品として活性な製剤が含まれる。
【0021】
ケア剤
本発明におけるケア剤とは、皮膚ケアおよび毛髪ケア剤であると解される。これらのケア剤は、特に、皮膚および毛髪に対する清浄および回復効果を含んでいる。これらは、錠剤、被覆丸剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤および顆粒剤の形態で局所および経口により適用することができる。
【0022】
さらに、本発明の調製物は、高い皮膚適合性と共に、優れた皮膚ケア効果を有する。本調製物は、多くの化粧効果および薬学的効果を有する。従って、本発明は、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物、好ましくはフラボン誘導体を含有する抽出物、より具体的にはOPCを含有する抽出物の下記のような使用にも関する:
・日光保護因子としての使用、より具体的にはUV-A放射および/またはUV-B放射に対する使用;
・遊離ラジカルに対する使用;
・酸化防止剤としての使用;
・抗炎症剤としての使用、特に、ストレスを受けた皮膚における多形核白血球の浸透によって引き起こされるレスピラトリーバーストの有害作用を抑制するための使用;
・皮膚用の老化防止調製物としての使用;
・プロテアーゼ阻害剤としての使用、より具体的には、プラスミン(セリンプロテアーゼ)阻害剤としての、および/または、MMPおよび/またはコラゲナーゼおよび/またはエラスターゼ阻害剤としての使用。
【0023】
本発明において、レスピラトリーバーストとは、白血球(より具体的には、多形核好中性顆粒球)の活性化であると解される。皮膚炎症は、表皮ケラチノサイトを刺激するUV-B放射によって引き起こされうる。次いで、急性白血球浸潤が始まる。このような白血球(より具体的には、多形核好中性顆粒球)の活性化は、レスピラトリーバーストとして知られており、放出された反応性酸素ラジカル(反応性酸素種−ROS)によって、およびリソソーム酵素によって、組織破壊に導くことができる。
【0024】
日光またはUV保護因子
本発明によれば、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、日光保護因子として作用する。フラボン誘導体を含有する抽出物が好ましく、OPCまたはその誘導体を含有する抽出物が特に好ましい。
【0025】
本発明における日光保護因子またはUV保護因子とは、直接および間接の日光放射の有害作用に対してヒト皮膚を保護するのに有用な光保護因子である。皮膚の褐変の原因となる太陽の紫外線放射は、UV-C(波長200〜280nm)、UV-B(280〜315nm)およびUV-A(315〜400nm)の部分に分けられる。
【0026】
日光放射の影響下での正常皮膚の色素沈着、即ち、メラニンの生成は、UV-BおよびUV-Aにより異なって起こる。UV-A(長波長UV)への暴露は、有害作用の徴候を伴わずに、表皮に既に存在するメラニンの暗色化を与える。これは、いわゆる短波長UV(UV-B)の場合とは異なる。これは、メラニンの新たな生成により、いわゆる遅延色素の生成を促進する。しかし、この(保護性)色素が生成する前に、皮膚は、未フィルター放射に暴露され、これが、暴露時間に依存して、皮膚の赤化(紅斑)、皮膚の炎症(日焼け)、さらには水疱を導くことができる。
【0027】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、さらに日光保護因子またはUV保護因子(これらは、UV吸収剤または光フィルターとして、UV放射を無害の熱に変換する)と組合せて存在することもできる。
【0028】
このような他のUV保護因子は、例えば、室温で液体または結晶性であり、かつ、紫外線放射を吸収することができ、吸収したエネルギーを長波長放射(例えば、熱)の形態で放出することができる有機物質(光フィルター)である。UV-Bフィルターは、油溶性または水溶性であることができる。油溶性物質の例は以下の通りである:
・3-ベンジリデンカンファーまたは3-ベンジリデンノルカンファーおよびその誘導体、例えば3-(4-メチルベンジリデン)カンファー(欧州特許EP 0693471 B1に記載);
・4-アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシルエステル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-オクチルエステルおよび4-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルエステル;
・ケイ皮酸エステル、好ましくは4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルエステル、4-メトキシケイ皮酸プロピルエステル、4-メトキシケイ皮酸イソアミルエステル、2-シアノ-3,3-フェニルケイ皮酸2-エチルヘキシルエステル(Octocrylene);
・サリチル酸エステル、好ましくはサリチル酸2-エチルヘキシルエステル、サリチル酸4-イソプロピルベンジルエステル、サリチル酸ホモメンチルエステル;
・ベンゾフェノン誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;
・ベンザルマロン酸エステル、好ましくは4-メトキシベンザルマロン酸ジ-2-エチルヘキシルエステル;
・トリアジン誘導体、例えば2,4,6-トリアニリノ-(p-カルボ-2'-エチル-1'-ヘキシルオキシ)-1,3,5-トリアジンおよびオクチルトリアゾン(Octyl Triazone)(欧州特許出願公開EP 0818450 A1に記載)またはジオクチルブタアミドトリアゾン(Dioctyl Butamido Triazone)(UvasorbR HEB);
・プロパン-1,3-ジオン、例えば1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)-プロパン-1,3-ジオン;
・ケトトリシクロ(5.2.1.0)デカン誘導体(欧州特許EP 0694521 B1に記載)。
【0029】
適当な水溶性物質は以下の通りである:
・2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、ならびに、そのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムおよびグルクアンモニウム塩;
・ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸およびその塩;
・3-ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)-ベンゼンスルホン酸および2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデン)スルホン酸およびその塩。
【0030】
通常のUV-Aフィルターは、特に、ベンゾイルメタンの誘導体、例えば1-(4'-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)、1-フェニル-3-(4'-イソプロピルフェニル)プロパン-1,3-ジオン、およびエナミン化合物(ドイツ特許出願公開DE19712033A1に記載)(BASF)などである。勿論、これらUV-AおよびUV-Bフィルターを、混合物の形態で使用することもできる。
上記した可溶性物質に加えて、不溶性の光ブロック顔料(即ち、微細に分散させた金属酸化物または塩)も、この目的に適する。適当な金属酸化物の例は、特に、酸化亜鉛および二酸化チタン、さらに、鉄、ジルコニウム、ケイ素、マンガン、アルミニウムおよびセリウムの酸化物、ならびにこれらの混合物である。ケイ酸塩(タルカム)、硫酸バリウムおよびステアリン酸亜鉛を塩として使用することができる。これらの酸化物および塩を、皮膚ケアおよび皮膚保護エマルジョンのための顔料の形態で使用する。これら粒子は、100nm未満、好ましくは5〜50nm、より好ましくは15〜30nmの平均直径を有しているべきである。これらは球の形状であってよいが、楕円形の粒子または他の非球形の粒子を使用することもできる。また、顔料を、表面処理すること、即ち親水性化または疎水性化することもできる。その代表例は、被覆した二酸化チタン、例えば、Titandioxid T 805(Degussa)およびEusolexR T2000(Merck)である。適当な疎水性被覆材料は、特にシリコーンであり、とりわけトリアルコキシオクチルシランまたはジメチコーンである。いわゆるミクロまたはナノ顔料を、日光保護製品において使用するのが好ましい。ミクロ化した酸化亜鉛を使用するのが好ましい。他の適当なUVフィルターは、P.Finkelの概説[SOEFW-Journal 122、543 (1996)]および[Parfuemerie und Kosmetik. 3、11 (1999)]中に見ることができる。
【0031】
本発明によれば、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、UV-A放射および/またはUV-B放射による線維芽細胞および/またはケラチノサイト損傷に対して活性である。
【0032】
UV-A線は真皮を貫通し、そこで酸化ストレスを導く(これは、細胞質膜のリポペルオキシド化によって示される)。リポペルオキシドは、マロナルジアルデヒド(malonaldialdehyde、MDA)に分解され、これが、多くの生物学的分子、例えばタンパク質および核塩基を架橋するであろう(酵素阻害または突然変異誘発)。本発明に係る植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、UV-A線によって誘発されるヒト線維芽細胞におけるMDAレベルを大きく減少させ、こうして、皮膚における酸化ストレスの有害作用を減少させる高い能力を示す。
【0033】
UV-B線は、酵素(即ち、ホスホリパーゼA2またはPLA2)の活性化により炎症を開始させる。この炎症(紅斑、水腫)は、ホスホリパーゼにより、形質膜のリン脂質からアラキドン酸が除去されることによって誘発される。アラキドン酸は、炎症および細胞膜損傷を引き起こすプロスタグランジンの前駆体である。プロスタグランジンE2(=PGE2)は、シクロオキシゲナーゼによって生成する。ヒトケラチノサイトにおける細胞質酵素LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の放出の程度が、細胞損傷のマーカーとして働く。
【0034】
本発明に係る植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、放出LDHの程度およびケラチノサイトの数に対するUV-B放射の作用を低下させる。従って、本抽出物は、UV-B放射によって引き起こされる細胞膜損傷を減少させる能力を有する。
【0035】
本発明によれば、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物、好ましくはフラボン誘導体を含有する抽出物、より好ましくはOPCおよび/またはOPC誘導体を含有する抽出物は、酸化防止剤またはラジカル捕捉剤として働く。
【0036】
本発明における酸化防止剤は、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮から単離しうる酸化抑制剤である。酸化防止剤は、保護すべき物質中の酸素および他の酸化性過程の作用によって引き起こされる望ましくない変化を抑制または防止することができる。酸化防止剤の作用は、主に、自己酸化中に生成する遊離ラジカルのラジカル捕捉剤として作用することにある。
【0037】
酸化防止剤として、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を使用することに加えて、他の既知の酸化防止剤を使用することもできる。例えば、化粧品および/または皮膚医薬調製物における酸化防止剤の1つの可能性ある使用は、二次的な日光保護因子としての使用である。これは、酸化防止剤が、UV線が皮膚を貫通したときに開始される光化学反応連鎖を遮断することができるためである。本発明に係る植物抽出物に加えて、代表的な例は、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド、例えばD,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシンおよびその誘導体(例えば、アンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、リコペン、ルテイン)およびその誘導体、クロロゲニン酸およびその誘導体、リポン酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポン酸)、オーロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびに、そのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、およびラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)およびその塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)、ならびに、スルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-およびヘプタ-チオニンスルホキシイミン)[これらは、極めて少ない許容用量(例えば、pモル〜μモル/kg)で用いる]、さらに、(金属)キレート化剤(例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、ボルジン、ボルド(boldo)抽出物、EDTA、EGTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、Mgアスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えば、ビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)およびベンゾイン樹脂のコニフェリルベンゾエート、ルチン酸およびその誘導体、α-グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤク樹脂酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、スーパーオキシド ジスムターゼ、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレンおよびその誘導体(例えば、セレンメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス-スチルベンオキシド)、ならびに、本発明の目的に適するこれら活性物質の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)である。
【0038】
他のUV保護因子または酸化防止剤を、調製物の合計量を基準に、0.01〜25重量%、好ましくは0.03〜10重量%、より具体的には0.1〜5重量%の量で添加することができる。
【0039】
本発明によれば、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物、好ましくはフラボン誘導体を含有する抽出物、より具体的にはOPCおよびOPC誘導体を含有する抽出物は、皮膚の炎症を治癒または予防することができる抗炎症性ケア剤として作用する。炎症は、種々の因子によって引き起こされうる。より具体的には、UV放射または皮膚汚染によって誘発される炎症あるいは細菌およびホルモンによって誘発される皮膚変化(例えばざ瘡)を治療することができる。
【0040】
本発明によれば、植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物、好ましくはフラボン誘導体を含有する抽出物、より具体的にはOPCおよびOPC誘導体を含有する抽出物は、皮膚老化に対して、より具体的には、あらゆる形態のしわ形成または線形成に対して活性である。この種のケア剤は、老化防止調製物としても知られている。その用途には、皮膚老化過程の遅延化が含まれる。皮膚老化は、種々の因子によって、より具体的にはアポプトシスによって、UV放射によって、または皮膚タンパク質の破壊(例えば、コラーゲンまたはエラスチン誘発の皮膚損傷など)によって引き起こされうる。本発明に係る植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物は、プロテアーゼ阻害剤として、より具体的には、プラスミンおよび/またはMMPおよび/またはコラゲナーゼおよび/またはエラスターゼ阻害剤として作用する。MMPは、マトリックスメタロプロテアーゼの頭文字である。
【0041】
原則的に、損傷を予防するために、または皮膚および/または毛髪が損傷したときに、従って皮膚および毛髪ケアにおいて使用されるあらゆる調製物に対して、保護および回復ケア剤として、本発明の抽出物を使用することが可能である。この分野における別の使用には、アレルギーまたは他の原因によって損傷した敏感な皮膚への適用が含まれる。この皮膚損傷は、種々の因子によって引き起こされうる。
【0042】
本発明の調製物を、化粧品および/または皮膚用調製物の製造に使用することができる。これらは、例えば、発砲浴剤、シャワー浴剤、クリーム、ゲル、ローション、アルコール溶液および水/アルコール溶液、乳液、ワックス/油脂コンパウンド、スティック調製物、粉末または軟膏などである。これらの調製物は、さらなる助剤および添加剤として、穏やかな界面活性剤、油成分、乳化剤、真珠色化ワックス、稠度因子、増粘剤、超脂肪化剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、油脂、ワックス、レシチン、リン脂質、生物起源の薬剤、UV保護因子、酸化防止剤、脱臭剤、発汗防止剤、ふけ防止剤、皮膜形成剤、膨潤剤、虫忌避剤、自己褐変剤、チロシン抑制剤(脱色素剤)、ヒドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、芳香油、染料などを、さらに含有することができる。
【0043】
界面活性剤
適当な界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性および/または両性または双性イオン性界面活性剤である。これらは、調製物中に、通常は約1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の量で存在していてよい。
陰イオン性界面活性剤の代表例は、石鹸、アルキルベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、グリセロールエーテルスルホネート、α-メチルエステルスルホネート、スルホ脂肪酸、アルキルスルフェート、脂肪アルコールエーテルスルフェート、グリセロールエーテルスルフェート、脂肪酸エーテルスルフェート、ヒドロキシ混合エーテルスルフェート、モノグリセリド(エーテル)スルフェート、脂肪酸アミド(エーテル)スルフェート、モノおよびジアルキルスルホスクシネート、モノおよびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N-アシルアミノ酸(例えば、アシルラクチレート、アシルタルトレート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテートなど)、アルキルオリゴグルコシドスルフェート、タンパク質脂肪酸縮合物(特に、コムギに基づく植物生成物)、および、アルキル(エーテル)ホスフェートである。陰イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭範囲の同族体分布を有する。
非イオン性界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテルおよび混合ホルマール、所望により部分的に酸化したアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドまたはグルクロン酸誘導体、脂肪酸-N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に、コムギに基づく植物生成物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびアミンオキシドである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭範囲の同族体分布を有する。
陽イオン性界面活性剤の代表例は、第四アンモニウム化合物、例えばジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、およびエステルクアット(ester quat)、より具体的には第四級化した脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩である。
両性または双性イオン性界面活性剤の代表例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
【0044】
これらの界面活性剤は全て既知化合物である。これら化合物の構造および製造に関する情報は、関連の概説論文、例えば、J.Falbe(編)の「Surfactants in consumer Products」(Springer Verlag、Berlin、1987、p.54-124)またはJ.Falbe(編)の「Katalysatoren、Tenside und Mineraloeladditive (触媒、界面活性剤および鉱油添加物)」(Thieme Verlag、Stuttgart、1978、p.123-217)において見ることができる。
特に適する穏やかな(即ち、特に皮膚に適合する)界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート、モノおよび/またはジアルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタメート、α-オレフィンスルホネート、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、脂肪酸グルカミド、アルキルアミドベタイン、アンホアセタールおよび/またはタンパク質脂肪酸縮合物(好ましくは、コムギタンパク質に基づく)である。
【0045】
油成分
適当な油成分は、例えば、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C6-C22脂肪酸と直鎖または分岐鎖C6-C22脂肪アルコールとのエステル、分岐鎖C6-C13カルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-C22脂肪アルコールとのエステル、例えば、ミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルエルケート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネートおよびエルシルエルケートなどである。
【0046】
また適するのは、直鎖C6-C22脂肪酸と分岐鎖アルコール(特に2-エチルヘキサノール)とのエステル、C18-C38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-C22脂肪アルコールとのエステル(ドイツ特許出願公開DE19756377A1を参照;より具体的にはジオクチルマレエート)、直鎖および/または分岐鎖脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6-C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6-C18脂肪酸に基づく液体のモノ、ジおよびトリグリセリド混合物、C6-C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸(より具体的には安息香酸)とのエステル、C2-C12ジカルボン酸と1〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコールまたは2〜10個の炭素原子および2〜6個のヒドロキシル基を含むポリオールとのエステル、植物油、分岐鎖の第一アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分岐鎖のC6-C22脂肪アルコールカーボネート[例えば、ジカプリリルカーボネート(CetiolR CC)]、C6-C18、好ましくはC8-C10脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖および/または分岐鎖C6-C22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv TN)、アルキル基あたりに6〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の対称または非対称のジアルキルエーテル[例えば、ジカプリリルエーテル(CetiolR OE)]、エポキシ化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーン油(シクロメチコーン、ケイ素メチコーン型など)および/または脂肪族またはナフテン系炭化水素(例えば、スクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサンなど)である。
【0047】
乳化剤
適当な乳化剤は、例えば、以下の群の少なくとも1つに由来する非イオン性界面活性剤である:
・直鎖C8-C22脂肪アルコールへの、C12-C22脂肪酸への、アルキル基に8〜15個の炭素原子を含むアルキルフェノールへの、および、アルキル基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルアミンへの、エチレンオキシド2〜30モルおよび/またはプロピレンオキシド0〜5モルの付加生成物;
・アルキル(アルケニル)基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、ならびに、そのエトキシル化類似体;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド1〜15モルの付加生成物;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド15〜60モルの付加生成物;
・グリセロールおよび/またはソルビタンと、12〜22個の炭素原子を含む不飽和、直鎖または飽和、分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルとのその付加生成物;
・ポリグリセロール(平均の自己縮合度2〜8)、ポリエチレングリコール(分子量400〜5000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えば、セルロース)と、12〜22個の炭素原子を含む飽和および/または不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルとのその付加生成物;
・ペンタエリトリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステル(ドイツ特許DE1165574)および/または6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール(好ましくは、グリセロールまたはポリグリセロール)の混合エステル;
・モノ、ジおよびトリアルキルホスフェートならびにモノ、ジおよび/またはトリ-PEG-アルキルホスフェートおよびその塩;
・羊毛ワックスアルコール;
・ポリシロキサン/ポリアルキル/ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体;
・ブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール-30 ジポリヒドロキシステアレート;
・ポリマー乳化剤、例えば、GoodrichのPemulenタイプ(TR-1、TR-2);
・ポリアルキレングリコール;および
・グリセロールカーボネート。
【0048】
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノールへの、またはヒマシ油への、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加生成物は、既知の市販生成物である。これらは同族体混合物であり、その平均のアルコキシル化度は、付加反応を行う基質とエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの量比に対応する。グリセロールへのエチレンオキシドの付加生成物のC12/18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、化粧品配合物のための再脂肪化剤として知られている(ドイツ特許DE2024051)。
【0049】
アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、その製造およびその使用は、従来技術から既知である。これらは、特に、グルコースまたはオリゴ糖と8〜18個の炭素原子を含む第一アルコールとを反応させることによって製造される。グリコシド単位に関する限り、モノグリコシド(環状糖単位がグリコシド結合によって脂肪アルコールに結合している)ならびにオリゴマーグリコシド(好ましくは約8までのオリゴマー化度を有する)の両方が適している。このオリゴマー化度は統計学的平均値であり、このような工業製品に一般的な同族体分布はこれに基づいている。
【0050】
適当な部分グリセリドの代表例は、ヒドロキシステアリン酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸ジグリセリド、イソステアリン酸モノグリセリド、イソステアリン酸ジグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、リシノール酸ジグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノレン酸モノグリセリド、リノレン酸ジグリセリド、エルカ酸モノグリセリド、エルカ酸ジグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酒石酸ジグリセリド、クエン酸モノグリセリド、クエン酸ジグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド、リンゴ酸ジグリセリド、ならびに、これらの工業用混合物(これらは、製造方法に由来する少量のトリグリセリドを含んでいることもある)である。また、これらの部分グリセリドへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物も適している。
【0051】
適当なソルビタンエステルは、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノエルケート、ソルビタンセスキエルケート、ソルビタンジエルケート、ソルビタントリエルケート、ソルビタンモノリシノレエート、ソルビタンセスキリシノレエート、ソルビタンジリシノレエート、ソルビタントリリシノレエート、ソルビタンモノヒドロキシステアレート、ソルビタンセスキヒドロキシステアレート、ソルビタンジヒドロキシステアレート、ソルビタントリヒドロキシステアレート、ソルビタンモノタルトレート、ソルビタンセスキタルトレート、ソルビタンジタルトレート、ソルビタントリタルトレート、ソルビタンモノシトレート、ソルビタンセスキシトレート、ソルビタンジシトレート、ソルビタントリシトレート、ソルビタンモノマレエート、ソルビタンセスキマレエート、ソルビタンジマレエート、ソルビタントリマレエートならびにこれらの工業用混合物である。また、これらのソルビタンエステルへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物も適している。
【0052】
適当なポリグリセロールエステルの代表例は、ポリグリセリル-2 ジポリヒドロキシステアレート(DehymulsR PGPH)、ポリグリセリン-3 ジイソステアレート(LameformR TGI)、ポリグリセリル-4 イソステアレート(IsolanR GI 34)、ポリグリセリル-3 オレエート、ジイソステアロイル ポリグリセリル-3 ジイソステアレート(IsolanR PDI)、ポリグリセリル-3 メチルグルコース ジステアレート(Tego CareR 450)、ポリグリセリル-3 蜜蝋(Cera BellinaR)、ポリグリセリル-4 カプレート(Polyglycerol Caprate T2010/90)、ポリグリセリル-3 セチルエーテル(ChimexaneR NL)、ポリグリセリル-3 ジステアレート(CremophorR GS 32)、ポリグリセリル ポリリシノレエート(AdmulR WOL 1403)、ポリグリセリル ジメレート イソステアレートおよびこれらの混合物である。他の適当なポリオールエステルの例は、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールと、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などとの、モノ、ジおよびトリエステルである(これらを、所望によりエチレンオキシド1〜30モルと反応させてもよい)。
【0053】
他の適当な乳化剤は、双性イオン性界面活性剤である。双性イオン性界面活性剤は、分子中に少なくとも1つの第四アンモニウム基および少なくとも1つのカルボキシレート基および1つのスルホネート基を含有する界面活性化合物である。特に適する双性イオン性界面活性剤は、いわゆるベタインであり、例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン(アルキル基またはアシル基に8〜18個の炭素原子を含む)、およびヤシ油アシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。コカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl Betaine)のCTFA名称のもとで既知である脂肪酸アミド誘導体が特に好ましい。
両性界面活性剤も適当な乳化剤である。両性界面活性剤は、分子中にC8/18アルキル基またはアシル基に加えて、少なくとも1つの遊離アミノ基および少なくとも1つの−COOH基または−SO3H基を含有し、内部塩を形成することができる界面活性化合物である。適当な両性界面活性剤の例は、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸およびアルキルアミノ酢酸(アルキル基に約8〜18個の炭素原子を含む)である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ヤシ油アルキルアミノプロピオネート、ヤシ油アシルアミノエチルアミノプロピオネートおよびC12/18アシルサルコシンである。
最後に、陽イオン性界面活性剤も適当な乳化剤であり、エステルクアット(ester quat)型の乳化剤、好ましくはメチルで第四級化したジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩が特に好ましい。
【0054】
油脂およびワックス
油脂の代表例は、グリセリド、即ち、高級脂肪酸の混合グリセロールエステルから本質的になる固体または液体の植物または動物産物である。適当なワックスは、特に天然ワックス、例えばカンデリラワックス、カルナバワックス、木蝋、アフリカハネガヤワックス、コルクワックス、グアルマ(guaruma)ワックス、コメ胚油ワックス、サトウキビワックス、オウリキュリー(ouricury)ワックス、モンタンワックス、蜜蝋、セラックワックス、鯨蝋、ラノリン(羊毛ワックス)、尾羽脂、セレシン、オゾケライト(地蝋)、ペトロラタム、パラフィンワックス、微結晶ワックス;化学修飾したワックス(硬ワックス)、例えばモンタンエステルワックス、サゾール(sasol)ワックス、水素化ジョジョバワックス、ならびに、合成ワックス、例えばポリアルキレンワックスおよびポリエチレングリコールワックスである。
油脂に加えて、他の適当な添加剤は、油脂様の物質、例えばレシチンおよびリン脂質である。レシチンは、脂肪酸、グリセロール、リン酸およびコリンからエステル化によって生成するグリセロリン脂質として当業者には知られている。従って、レシチンは、当業者によりホスファチジルコリン(PC)と称されることも多い。天然レシチンの例はケファリンである。これは、ホスファチジン酸としても知られ、1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-リン酸の誘導体である。対照的に、リン脂質は、リン酸とグリセロールとのモノエステル、好ましくはジエステル(グリセロホスフェート)であると一般に理解されており、これは、通常は油脂と分類されている。さらに、スフィンゴシンおよびスフィンゴ脂質も適している。
【0055】
真珠色化ワックス
適当な真珠色化ワックスは、例えば、アルキレングリコールエステル、特にエチレングリコールジステアレート;脂肪酸アルカノールアミド、特にヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド;部分グリセリド、特にステアリン酸モノグリセリド;多塩基性の所望によりヒドロキシ置換されたカルボン酸と、6〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールとのエステル、特に酒石酸の長鎖エステル;合計して少なくとも24個の炭素原子を含む脂肪化合物、例えば、脂肪アルコール、脂肪ケトン、脂肪アルデヒド、脂肪エーテルおよび脂肪カーボネート、特にラウロンおよびジステアリルエーテル;脂肪酸、例えばステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸またはベヘン酸;12〜22個の炭素原子を含むオレフィンエポキシドの、12〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールおよび/または2〜15個の炭素原子および2〜10個のヒドロキシル基を含むポリオールによる開環生成物;およびこれらの混合物である。
【0056】
稠度因子および増粘剤
主に使用される稠度因子は、12〜22個、好ましくは16〜18個の炭素原子を含む脂肪アルコールまたはヒドロキシ脂肪アルコール、さらに部分グリセリド、脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸である。これらの物質と、アルキルオリゴグルコシドおよび/または脂肪酸N-メチルグルカミド(同じ鎖長)および/またはポリグリセロール ポリ-12-ヒドロキシステアレートとの組合せを使用するのが好ましい。
適当な増粘剤は、例えば、AerosilRタイプ(親水性シリカ)、多糖、より具体的にはキサンタンゴム、グアール、寒天、アルギネートおよびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、さらに比較的高分子量の脂肪酸のポリエチレングリコールモノエステルおよびジエステル、ポリアクリレート[例えば、CarbopolRおよびPemulenタイプ(Goodrich);SynthalenR(Sigma);Keltrolタイプ(Kelco);Sepigelタイプ(Seppic);Salcareタイプ(Allied Colloids)]、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン、界面活性剤(例えばエトキシル化脂肪酸グリセリド)、脂肪酸とポリオール(例えば、ペンタエリトリトールまたはトリメチロールプロパン)とのエステル、狭範囲の脂肪アルコールエトキシレートまたはアルキルオリゴグルコシド、ならびに、電解質(例えば、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウム)である。
【0057】
超脂肪化剤
超脂肪化剤は、例えば、ラノリンおよびレシチン、さらにポリエトキシル化またはアシル化したラノリンおよびレシチン誘導体、ポリオール脂肪酸エステル、モノグリセリドおよび脂肪酸アルカノールアミドなどの物質から選択することができる。脂肪酸アルカノールアミドは、発泡安定剤としても働く。
【0058】
安定剤
脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸またはリシノール酸のマグネシウム、アルミニウムおよび/または亜鉛塩を、安定剤として使用することができる。
【0059】
ポリマー
適当な陽イオン性ポリマーは、例えば、陽イオン性セルロース誘導体、例えば第四級化したヒドロキシエチルセルロース(AmercholからPolymer JR 400Rの名称で入手できる)、陽イオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドのコポリマー、第四級化したビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えばLuviquatR(BASF)、ポリグリコールとアミンの縮合生成物、第四級化したコラーゲンポリペプチド、例えばラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(LamequatR L、Gruenau)、第四級化したコムギポリペプチド、ポリエチレンイミン、陽イオン性シリコーンポリマー、例えばアミドメチコーン、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンのコポリマー(CartaretineR、Sandoz)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドのコポリマー(MerquatR 550、Chemviron)、ポリアミノポリアミド(例えば、フランス特許出願公開FR2252840Aに記載)およびその架橋した水溶性ポリマー、陽イオン性キチン誘導体、例えば第四級化したキトサン(所望により、微結晶分散している)、ジハロアルキル(例えばジブロモブタン)とビス-ジアルキルアミン(例えばビス-ジメチルアミノ-1,3-プロパン)との縮合生成物、陽イオン性グアールゴム(例えば、CelaneseからのJaguarR CBS、JaguarR C-17、JaguarR C-16)、第四級化したアンモニウム塩ポリマー(例えば、MiranolからのMirapolR A-15、MirapolR AD-1、MirapolR AZ-1)である。
【0060】
適当な陰イオン性、双性イオン性、両性および非イオン性ポリマーは、例えば、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ビニルピロリドン/アクリル酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーおよびそのエステル、未架橋のポリアクリル酸およびポリオール架橋したポリアクリル酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/メタクリル酸メチル/tert-ブチルアミノエチルメタクリレート/2-ヒドロキシプロピルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート/ビニルカプロラクタムターポリマーおよび所望により誘導体化したセルロースエーテルおよびシリコーンである。他の適当なポリマーおよび増粘剤は、Cosm.Toil. 108、95 (1993)中に見ることができる。
【0061】
シリコーン化合物
適当なシリコーン化合物は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環式シリコーン、ならびに、アミノ-、脂肪酸-、アルコール-、ポリエーテル-、エポキシ-、フッ素-、グリコシド-および/またはアルキル-修飾したシリコーン化合物である(これらは、室温で液体および樹脂様の両方であることができる)。他の適当なシリコーン化合物は、水素化シリケートおよび200〜300のジメチルシロキサン単位の平均鎖長を有するジメチコーンの混合物であるシメチコーンである。適当な揮発性シリコーンの詳細な概説は、ToddらのCosm.Toil. 91、27 (1976)中に見ることができる。
【0062】
生物起源の薬剤
本発明における生物起源の薬剤には、植物カシア・アラタ(Cassia alata)に由来しない薬剤、例えば、トコフェロールアセテート、トコフェロールパルミテート、アスコルビン酸、(デオキシ)リボ核酸およびその断片化生成物、レチノール、ビサボロール、アラントイン、ピタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、セラミド、偽セラミド、精油、植物抽出物ならびに追加のビタミン複合体などが含まれる。
【0063】
脱臭剤および微生物抑制剤
化粧品用脱臭剤は、体臭を相殺するか、遮蔽するか、または除去する。体臭は、アポクリン発汗における皮膚細菌の作用により生成し、これにより不快臭を有する分解生成物が生成することになる。従って、脱臭剤は、微生物抑制剤、酵素抑制剤、臭気吸収剤または臭気遮蔽剤として作用する活性成分を含有する。基本的に、適当な微生物抑制剤は、グラム陽性細菌に対して作用する全ての物質であり、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸およびその塩およびエステル、N-(4-クロロフェニル)-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2'-メチレン-ビス-(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、クロロヘキシジン、3,4,4'-トリクロロカルバニリド(TTC)、抗細菌芳香物質、チモール、タイム油、オイゲノール、チョウジ油、メントール、ミント油、ファルネソール、フェノキシエタノール、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート(GML)、ジグリセロールモノカプレート(DMC)、サリチル酸N-アルキルアミド(例えば、サリチル酸n-オクチルアミドまたはサリチル酸n-デシルアミド)などである。
【0064】
適当な酵素抑制剤は、例えばエステラーゼ阻害剤である。エステラーゼ阻害剤は、好ましくはクエン酸トリアルキル、例えばクエン酸トリメチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリブチル、および特に、クエン酸トリエチル(HydagenR CAT)である。エステラーゼ阻害剤は、酵素活性を阻害し、こうして臭気生成を減少させる。他のエステラーゼ阻害剤は、ステロールスルフェートまたはホスフェート(例えば、ラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびシトステロールスルフェートまたはホスフェートなど)、ジカルボン酸およびそのエステル(例えば、グルタル酸、グルタル酸モノエチルエステル、グルタル酸ジエチルエステル、アジピン酸、アジピン酸モノエチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、マロン酸およびマロン酸ジエチルエステルなど)、ヒドロキシカルボン酸およびそのエステル(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸または酒石酸ジエチルエステルなど)、ならびに亜鉛グリシネートである。
【0065】
適当な臭気吸収剤は、臭気生成化合物を吸収することができ、その大部分を保持することができる物質である。これらは、個々の成分の分圧を低下させ、こうしてその拡散速度を低下させる。これに関連して重要な要件は、芳香物質が損なわれないまま保持されることである。臭気吸収剤は、細菌に対して活性ではない。これらは、例えば主成分として、ラブダナムもしくはエゴノキの抽出物またはある種のアビエチン酸誘導体などの「保留剤」として当業者に知られている特定のほぼ臭気中性の芳香物質またはリシノール酸の錯亜鉛塩を含有する。
【0066】
臭気遮蔽剤は、その臭気遮蔽機能に加えて、その特定の芳香を脱臭剤に与える芳香物質または芳香油である。適当な芳香油は、例えば、天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質には、花、茎および葉、果実、果皮、根、木、ハーブおよび草、針状葉および枝、樹脂およびバルサムの抽出物が含まれる。また、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーも適している。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物の例は、酢酸ベンジル、シクロヘキシル酢酸p-tert-ブチル、酢酸リナリル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。適当なケトンの例は、イオノンおよびメチルセドリルケトンであり、適当なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールである。炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、異なる芳香化合物の混合物(これらは一緒になって快い芳香を生じる)を使用するのが好ましい。他の適当な芳香油は、比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)である。その例は、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。以下のものを、個々にまたは混合物の形態で使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(Boisambrene Forte)、アムブロキサン(Ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、柑橘油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix Coeur)、イソ-E-スーパー(Iso-E-Super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romillat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
【0067】
発汗防止剤は、エクリン汗腺の活性に影響を及ぼすことによって発汗を減少させ、こうして腋下の湿気および体臭を中和する。通常、水性または無水の発汗防止配合物は、以下の成分を含有する:
・収斂活性の成分;
・油成分;
・非イオン性乳化剤;
・共乳化剤;
・稠度因子;
・助剤(例えば、増粘剤または錯生成剤の形態にある);および/または
・非水性溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールなど)。
【0068】
適当な収斂性の発汗防止活性成分は、特に、アルミニウム、ジルコニウムまたは亜鉛の塩である。このような適当な抗ヒドロ(antihydrotic)剤は、例えば、アルミニウムクロリド、アルミニウムクロロヒドレート、アルミニウムジクロロヒドレート、アルミニウムセスキクロロヒドレート、および、これらと例えば1,2-プロピレングリコールとの複合化合物、アルミニウムヒドロキシアラントイネート、アルミニウムクロリドタルトレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドレート、および、これらと例えばアミノ酸(例えばグリシン)との複合化合物である。さらに、発汗防止剤において一般的に使用される油溶性および水溶性の助剤が、比較的少量で存在していてもよい。
【0069】
このような油溶性の助剤には、例えば、以下のものが含まれる:
・炎症抑制性、皮膚保護性または芳香性の精油;
・合成の皮膚保護剤;および/または
・油溶性の芳香油。
【0070】
通常の水溶性の添加剤は、例えば、防腐剤、水溶性芳香物質、pH調節剤、例えば緩衝混合物、水溶性増粘剤、例えば水溶性の天然または合成ポリマー、例えばキサンタンゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたは高分子量ポリエチレンオキシドである。
【0071】
皮膜形成剤
通常の皮膜形成剤は、例えば、キトサン、微結晶キトサン、第四級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系列のポリマー、第四セルロース誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩および同様の化合物である。
【0072】
膨潤剤
水相のための適当な膨潤剤は、モンモリロナイト、粘土無機物質、ペムレン(Pemulen)およびアルキル修飾したカルボポール(Carbopol)型(Goodrich)である。他の適当なポリマーおよび膨潤剤は、R.Lochheadの概説[Cosm.Toil. 108、95 (1993)]中に見ることができる。
【0073】
虫忌避剤
適当な虫忌避剤は、N,N-ジエチル-m-トルアミド、ペンタン-1,2-ジオールまたはブチルアセチルアミノプロピオン酸エチルである。
【0074】
自己褐変剤および脱色素沈着剤
適当な自己褐変剤は、ジヒドロキシアセトンである。適当なチロシン抑制剤(メラニンの生成を妨げ、脱色素沈着剤において使用される)は、例えば、アルブチン、フェルラ酸、コウジ酸、クマル酸およびアスコルビン酸(ビタミンC)である。
【0075】
ヒドロトロープ剤
さらに、ヒドロトロープ剤、例えばエタノール、イソプロピルアルコールまたはポリオールを使用して、流れ挙動を改善することができる。適当なポリオールは、好ましくは2〜15個の炭素原子および少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する。これらポリオールは、他の官能基、より具体的にはアミノ基を含有することができ、また、窒素で修飾することもできる。その代表例は、次の通りである:
・グリセロール;
・アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、および、ポリエチレングリコール(100〜1000ダルトンの平均分子量を有する);
・1.5〜10の自己縮合度を有する工業用オリゴグリセロール混合物、例えば40〜50重量%のジグリセロール含量を有する工業用ジグリセロール混合物;
・メチロール化合物、例えば特にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトール;
・低級アルキルグルコシド、特にアルキル基に1〜8個の炭素原子を含むもの、例えばメチルおよびブチルグルコシド;
・5〜12個の炭素原子を含む糖アルコール、例えばソルビトールまたはマンニトール;
・5〜12個の炭素原子を含む糖、例えばグルコースまたはスクロース;
・アミノ糖、例えばグルカミン;
・ジアルコールアミン、例えばジエタノールアミンまたは2-アミノプロパン-1,3-ジオール。
【0076】
防腐剤
適当な防腐剤は、例えば、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド溶液、パラベン、ペンタンジオールまたはソルビン酸およびKosmetikverordnung(化粧品指針)の付属書6のパートAおよびBに挙げられている他の群の化合物である。
【0077】
芳香油
適当な芳香油は、天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質には、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ、イランイラン)、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレイン)、果実(アニス、コエンドロ、ヒメウイキョウ、ビャクシン)、果皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(ニクズク、アンゼリカ、セロリ、カルダモン、コスタス、アイリス、カルムス)、木(マツ、ビャクダン、ユソウボク、シーダー材、シタン)、ハーブおよび草(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針状葉および枝(トウヒ、モミ、マツ、低マツ)、樹脂およびバルサム(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン、ミルラ、乳香、オポパナックス)の抽出物が含まれる。また、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーを使用することもできる。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物の例は、酢酸ベンジル、イソ酪酸フェノキシエチル、シクロヘキシル酢酸p-tert-ブチル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、エチル酢酸フェニル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、エチルメチルフェニルグリシネート、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。適当なケトンの例は、イオノン、α-イソメチルイオノンおよびメチルセドリルケトンであり、適当なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールである。炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、異なる芳香化合物の混合物(これらは一緒になって快い芳香を生じる)を使用するのが好ましい。他の適当な芳香油は、比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)である。その例は、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。以下のものを、個々にまたは混合物の形態で使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(boisambrene Forte)、アムブロキサン(Ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、柑橘油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix Coeur)、イソ-E-スーパー(Iso-E-Super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romillat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
【0078】
染料
適当な染料は、例えば、Farbstoffkommission der Deutschen Forschungsgemeinschaftの出版物「Kosmetische Faerbemittel(化粧品用着色剤)」[Verlag Chemie、Weinheim、1984、p.81-106]に挙げられているような、化粧品目的に認められかつ適している物質である。通常、これらの染料は、混合物全体を基準に、0.001〜0.1重量%の濃度で使用される。
【実施例1】
【0079】
OPCおよびフラボノイドに富む抽出物の抽出
メタノール(1,000ml)を、ガラスビーカー中の粉末化ライチ外殻(100g)に加え、50℃で1時間撹拌した。残留物を濾過し、メタノール(100ml)で洗浄した後、合わせた抽出物のメタノールを留去し、乾燥残留物を蒸留水(100ml)中に取った。Cryofuge 6000(4,200rpmで15分間)中で遠心した後、水溶液を、酢酸エチル(100ml)で4回抽出した。有機相を硫酸ナトリウム(15g)で乾燥し、酢酸エチルを蒸発させた。残留物を再び蒸留水中に取り、酢酸エチル(100ml)で4回抽出した。酢酸エチルを留去した後、水溶液を凍結乾燥した。収量は6.13gであった。得られた抽出物のOPC含量は、Porterらの方法[Phytochemistry 25(1)、p.223-230、1996:The conversion of procyanidins and prodelphindins to cyanidin and delphindin]によって測定した。抽出物を100としたときのOPCの量(gに基づく)は、19.98%であった。
【実施例2】
【0080】
ルチンおよびアントシアンに富む抽出物の抽出
メタノール(1,000ml)を、ガラスビーカー中の粉末化ライチ外殻(100g)に加え、50℃で1時間撹拌した。残留物を濾過し、メタノール(100ml)で洗浄した後、合わせた抽出物のメタノールを留去し、乾燥残留物を蒸留水(100ml)中に取った。Cryofuge 6000(4,200rpmで15分間)中で遠心した後、水溶液を凍結乾燥した。
【実施例3】
【0081】
インビトロで培養したヒト線維芽細胞におけるUV-Aに対する細胞保護作用
背景
UV-A線は真皮に浸透し、そこで、酸化ストレス(これは、細胞質膜の脂質過酸化によって示される)を導く。
この脂質過酸化物は、マロナルジアルデヒド(MDA)に分解され、これが、多くの生物学的分子、例えばタンパク質および核塩基(酵素阻害または突然変異誘発)を架橋するであろう。
方法
この試験を行うために、線維芽細胞を含む規定の培養培地にウシ胎仔血清を接種し、接種の72時間後に、植物抽出物(10%ウシ胎仔血清を含む規定培地中)に加えた。
37℃/5%CO2において48時間インキュベートした後、培養培地を食塩溶液(生理学的NaCl溶液)によって置換し、線維芽細胞をUV-A用量(365nm、20J/cm2;管:MAZDA FLUOR TFWN40)に暴露した。
UV-Aに暴露した後、上清の塩化ナトリウム溶液中のMDAレベル(マロナルジアルデヒドのレベル)を、チオバルビツール酸との反応によって定量した。
【0082】
【表1】

UV-Aへの暴露は、MDAの放出の大きな増加を与え、一方、細胞内GSHレベルは約27%減少した。ライチ果皮抽出物への添加は、MDAの放出量を減少させ、GSHレベルを高く維持した。
【実施例4】
【0083】
インビトロで培養したヒトケラチノサイトにおけるUV-Bに対する細胞保護作用
背景
UV-B線は、原形質膜のリン脂質からアラキドン酸を除去する酵素(即ち、ホスホリパーゼA2またはPLA2)を活性化することによって、炎症(紅斑点、水腫)を引き起こす。アラキドン酸は、炎症および細胞膜損傷を引き起こすプロスタグランジンの前駆体である。このプロスタグランジンE2(=PGE2)は、シクロオキシゲナーゼによって形成される。
方法
UV-B放射の作用を、インビトロでケラチノサイトにおいて、細胞質酵素LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の放出を測定することによって調べた。この酵素は、細胞損傷のマーカーとして働く。
この試験を行うために、ウシ胎仔血清を含む規定培地にケラチノサイトを接種し、接種の72時間後に植物抽出物(食塩溶液で希釈)を添加した。
次に、ケラチノサイトをUV-B用量(50mJ/cm2;管:DUKE FL40E)に暴露した。
37℃/5%CO2においてさらに1日インキュベートした後、上清中のLDH含量を測定した。このLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)含量は、酵素反応(RocheからのLDHレベルの測定に使用するキット)によって測定した。付着ケラチノサイトの数を、粒子カウンターを用いて測定した(トリプシン処理後)。
【0084】
【表2】

UV-Bへの暴露は、LDHレベルの増加を誘導し、一方、生存ケラチノサイトの数は67%減少した。ライチ果皮抽出物を添加したときには、LDHの放出量が25%まで減少した。
【実施例5】
【0085】
遊離ラジカルに対する活性
酸化ストレスに対する抽出物の有効性を、第1系列の試験において調べた。実施例1および2の抽出物を使用した。
選択した第1の試験基質は、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)であった。これは、紫-赤色の安定なラジカルであり、ラジカル捕捉剤と接触させたときに、その無色白色誘導体に変化する。色の変化を光度測定によって追跡することができる。この試験の結果を表3に挙げる(DPPH試験)。別の試験において、ヒドロキシルラジカル[過酸化水素と鉄(III)イオンおよびEDTAの反応に由来する]によるサリチル酸のヒドロキシル化を、参照系として調べた。ヒドロキシル化生成物の色は赤みを帯びているので、この反応も、光度測定によって調べることができる。ヒドロキシサリチル酸の生成に及ぼす抽出物の影響を、490nmの光学密度において測定した。この結果も表3に挙げる。
第3および最後の試験において、キサンチンオキシダーゼを試験系として選択した。酸化ストレス下で、この酵素は、プリン塩基(例えば、アデニンまたはグアニン)をウロン酸に変換する。中間的に生成する酸素ラジカルを、ルミノールとの反応によって検出することができ(ルミネセンスによる)、定量することができる。このルミネセンスの発生量は、ラジカル捕捉特性を有する物質の存在下に減少する。これらの結果を表4に挙げる。この表においても、抑制を絶対%で示す(ルミノール試験)。
【0086】
【表3】

【表4】

【実施例6】
【0087】
皮膚再生および活力付与活性
この試験の目的は、インビトロにおけるヒト線維芽細胞培養物に対するライチ果皮抽出物の再生および活力付与活性を示すことである。
ヒト線維芽細胞に、規定の栄養培地(DMEM=ダルベッコ最少必須培地、Life Technologie S.a.r.l.の製品)中で10重量%ウシ胎仔血清を接種し、5%CO2雰囲気中、37℃で24時間インキュベートした。次いで、ウシ胎仔血清を含む栄養培地を、ウシ胎仔血清を含まないDMEM栄養培地によって置換した。次いで、ライチ・チネンシス・ソン果皮の2種類の抽出物の形態にある活性物質を、この栄養培地に種々の濃度で添加した。線維芽細胞を栄養培地において3日間インキュベートした後、増殖および代謝活性を、細胞内ATP含量をVasseur法[Journal Francais Hydrologie、1981、9、149-156]によって、また、タンパク質含量をBradford法[Anal. Biochem. 1976、72、248-254]によって測定することにより評価した。
【表5】

いずれのライチ果皮抽出物も細胞代謝を改善しなかった。
【実施例7】
【0088】
エラスターゼ活性の阻害
セリンプロテアーゼ(例えば、エラスターゼなど)は、エラスチン、プロテオグリカンおよびコラーゲンを分解し、こうして結合組織を弱化する。以下の試験を行って、発色性合成基質(コンゴ・レッドでマークした)に対する実施例1の抽出物の阻害特性を調べた。インキュベート時間は、室温で30分間であった。阻害を、410nmでの光度測定によって追跡した。1'α1-アンチトリプシンを、陽性標準として使用した。結果を表6に挙げる。
【表6】

本発明に係るライチ・チネンシス・ソン果皮からの3%抽出物は、天然の阻害物質であるアンチトリプシンとほぼ同程度に、エラスターゼ活性を阻害することができる。
【実施例8】
【0089】
コラゲナーゼ活性の阻害
日光に暴露した後、初老の人の皮膚線維芽細胞は、コラゲナーゼ[マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)としても知られる]を放出する。以下の試験を行って、合成基質MCA-Pro-Leu-Gly-Leu-DPA-Ala-Arg-NH2 [Knightら、1992、FEBS Letter、296、p.263-266]およびヒトMMP-1に対する実施例1の抽出物の阻害特性を調べた。インキュベート時間は、室温で60分間であった。基質の加水分解を、λem=393nm(λex=328nm)において蛍光スペクトル法により測定した。メタロプロテアーゼTIMP-1(組織における天然のMMP阻害物質)を、比較標準として使用した。結果を表7に挙げる。
【表7】

本発明のライチ・チネンシス・ソンの果皮からの0.1%抽出物は、天然の阻害物質であるTIMP-1とほぼ同程度に、コラゲナーゼ活性を阻害することができる。
【実施例9】
【0090】
コラゲナーゼ合成の阻害
インビトロ培養したヒト線維芽細胞に対するUV-A放射の毒性作用を減少させるライチ抽出物の能力を評価するために、この試験を行った。この目的のために、放出された酵素MMP-1(マトリックスメタロプロテイナーゼ)の量ならびに天然の酵素阻害物質TIMP-1の量の両方を測定した。UV-A放射をこの試験に使用した。その理由は、それが真皮に浸透し、皮膚老化を導く酸化ストレスを誘発することができるためである。
この目的のために、線維芽細胞を、ウシ胎仔血清を含む正確に規定された培地において培養した。実施例1のライチ抽出物を、接種の2〜3日後に添加した。さらに37℃/5%CO2において1日間インキュベートした後、培養培地を塩溶液によって置換し、線維芽細胞をUV-A(15J/cm2、ランプ:SOL500、Dr.Hoehnleフィルター:H1、ラジオメーター:Vibert Lourmat)に暴露した。暴露の後、線維芽細胞をさらに2日間インキュベートした。上清培地のMMO-1およびTIMP-1含量を、Amersham試験キット(キット番号 RPN2610およびRPN2611)を用いて測定した。対照には抽出物を添加しなかった。結果を表8に挙げる。
【0091】
【表8】

UV-A放射への暴露後に放出されたMMP-1の量は、明らかに減少している。
【実施例10】
【0092】
プラスミンの阻害
背景
プラスミンは、傷の治癒過程において重要な役割を有するヒトセリンプロテアーゼである。それは、特に、小さなフィブリン凝固を溶解し、治癒過程に寄与するケラチノサイトの放出を支援する。
プラスミノーゲンは、プロテアーゼであるウロキナーゼによってプラスミンに活性化されるプロ酵素である。ウロキナーゼは、皮膚刺激または皮膚炎症の際に、ならびに、傷の治癒中に活性化ケラチノサイトによって分泌される。ウロキナーゼの発現および分泌が、皮膚におけるUV-B放射の影響によって誘発されること、ならびに、プロ酵素プラスミノーゲンが細胞外マトリックスの近くに見い出されうることが示されていた。
さらに、プラスミンは、皮膚グリコプロテインおよびプロテオグリカンの減少に寄与するプロ-MMP3を活性化することができる。従って、プラスミンは、皮膚老化過程において、より具体的には、ヒト皮膚の光誘発老化過程において重要な役割を有する。
方法
ヒトプラスミンを実施例1の抽出物と混合し、20℃で5分間インキュベートした。次いで、合成基質、具体的には「Val-Leu-パラニトロアニリド」(Chromogenixの製品)または天然のプロ-MMP3(Merck-Eurolabから入手)のどちらかを混合物に加えた。合成基質の場合、405nmにおける吸収を、5分毎に30分間にわたり測定し、こうしてパラニトロアニリンの放出を測定した。第2系列の試験において、酵素活性を、37℃で6時間のインキュベート後にウエスタンブロット法によって示した。
【0093】
酵素活性の阻害を、基質を含まない対照に対して、および参照物質(より具体的にはAprotinine:Sigmaの製品)に対して試験した。
【表9】

4.5μg/ml濃度の実施例1のライチ抽出物は、50%阻害を与えた。
【表10】

【実施例11】
【0094】
抗炎症活性
背景
皮膚炎症は、UV-B放射により、表皮ケラチノサイトの刺激を介して起こりうる。これに続いて、急性白血球浸潤が始まる。
白血球(特に好中性顆粒球)のこの活性化は、レスピラトリーバーストとして知られており、放出された反応性酸素ラジカル(反応性酸素種−ROS)およびリソソーム酵素による組織破壊を導くことができる。
方法
抗炎症活性を、ヒト白血球(好中性顆粒球)セルラインにおいて調べた。この目的のために、細胞を、種々濃度の試験すべき実施例1の抽出物と共にインキュベートし、次いで、レスピラトリーバーストを酵母細胞抽出物(「ザイモサン」)によって誘発した[ザイモサン(0.1ml)で30分間、細胞を活性化することによる]。中間的に生成した酸素ラジカルの含量を、ルミノールとの反応によるルミネセンスにより60秒間にわたって測定し、定量的に評価した。ルミネセンス収率は、ラジカル捕捉特性を有する物質の存在下に低下する。結果を表4に挙げる。放出されたラジカルの割合(%)は、参照物質(ミノサイクリン−ラジカル捕捉剤)に対して測定した。結果は、対照に対する%で表す。対照のために、無傷細胞の数を粒子カウンターによって測定し、対照と比較して%で示す。
【0095】
【表11】

上記の結果から、本発明に係る実施例1の抽出物は、0.001%の濃度で強い抗炎症作用を有することがわかる。
【0096】
化粧品調製物の例示
実施例1に従って得た抽出物を、以下の本発明の配合物において使用した。このように製造した化粧品調製物は、比較配合物C1、C2およびC3と比較して、良好な皮膚適合性と共に、極めて良好な皮膚ケア特性を示した。また、本発明の調製物は、酸化分解に対しても安定である。
【0097】
【表12】

【0098】
【表13】

【0099】
【表14】

【0100】
【表15】

【0101】
【表16】

【0102】
【表17】

【0103】
【表18】

表12〜18において記載および使用した登録商標記号()を有する全ての物質は、コグニス(COGNIS)グループの商標および製品である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する化粧品および/または医薬調製物。
【請求項2】
フラバン、フラバン-3-オール、フラバン-3,4-ジオール、フラボン、フラボノール、フラボノンおよびこれらの誘導体からなる群から選択されるフラボン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮から抽出したプロシアニドールオリゴマーおよび/またはこれらプロシアニドールオリゴマーの誘導体を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の調製物。
【請求項4】
抽出物が、メタノールで抽出した後に水で後処理したメタノール性抽出物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の調製物。
【請求項5】
抽出物が、調製物を基準に乾燥重量で表して、0.01〜25重量%の量で存在し、その量が、水および他の助剤および添加剤により、合計して100重量%になることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の調製物。
【請求項6】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する皮膚ケアおよび/または毛髪ケアのための調製物。
【請求項7】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する日光放射からヒト皮膚を保護するための調製物。
【請求項8】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する遊離ラジカル捕捉剤。
【請求項9】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する酸化防止剤。
【請求項10】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する抗炎症剤。
【請求項11】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有する皮膚老化防止剤。
【請求項12】
植物ライチ・チネンシス・ソンの果皮からの抽出物を含有するプロテアーゼ阻害剤。

【公開番号】特開2007−186528(P2007−186528A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107825(P2007−107825)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【分割の表示】特願2002−578988(P2002−578988)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】