植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法
【課題】 植物性の食品加工廃棄物の画期的な有効利用法となるとともに、食用可能であり、かつ広い範囲で応用可能な植物体廃棄物製シート状体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物すなわち搾汁残渣等1と、搾汁残渣等1中の繊維同士を結着させる結着剤2とを混合する混合過程P1と、混合過程P1により得られる混合物3がシート状に形成されるように圧する加圧過程P2とを経て植物体廃棄物製シート状体4を得る。混合過程P1と並行して、あるいはその前において、搾汁残渣等1を均質化処理するための均質化過程PHを設ける。
【解決手段】 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物すなわち搾汁残渣等1と、搾汁残渣等1中の繊維同士を結着させる結着剤2とを混合する混合過程P1と、混合過程P1により得られる混合物3がシート状に形成されるように圧する加圧過程P2とを経て植物体廃棄物製シート状体4を得る。混合過程P1と並行して、あるいはその前において、搾汁残渣等1を均質化処理するための均質化過程PHを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法に係り、特に、リンゴ搾汁残渣等の食品加工廃棄物の画期的な有効利用法となるとともに、食用可能かつ応用範囲の広い、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴジュース製造過程において大量に排出されるリンゴ搾汁残渣の有効利用については、従来多くの取り組みがなされている。たとえば後掲特許文献1、2に開示された技術はいずれも、飼料として利用しようというものである。このうち特許文献1開示技術は、リンゴ搾汁残渣を動物の糞尿に対し消臭効果のある飼料としての利用に係るものである。また、特許文献2開示の技術は、糖分・りんご酸・ビタミンCなど、家畜には不要もしくは有害な養分を搾り捨てて乾燥させた、搾り粕再生飼料を提案するものである。
【0003】
また、特許文献3開示の技術は、リンゴ搾汁残渣に、長さ1mm〜15mm程度、径1mm以下程度の寸法の植物長繊維屑からなる補助材を混合し、その混合物に高圧を付加することでさらにリンゴ果汁を抽出するというものであるが、結局はやはり、二次圧搾後の混合物を乾燥、発酵処理して家畜飼料にするというものである。
【0004】
このように、リンゴ搾汁残渣の利用または利用に関する技術的提案は、主として付加価値の低い飼料用途に留まる。また、有効利用されずに、結局は産業廃棄物として有償で処理されている量も相当多いのが実態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199509「動物糞尿臭消臭用飼料」
【特許文献2】登録実用新案第3032813号「りんご搾り粕再生飼料」
【特許文献3】特開2006−280332「一次圧搾後のリンゴ滓の再利用法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしリンゴ搾汁残渣には、まだ栄養価値が豊富に残存している。したがってこれを、飼料用途等の付加価値の低い利用に留めること、あるいは全く利用せずにコストをかけて処分することは、資源の有効利用の観点から好ましくない。できる限り、1個のリンゴを利用し尽くす、しかも食用として余すことなく全て利用し尽くすことができれば、資源有効利用の観点はいうまでもなく、それを超えた効果も大いに期待できる。
【0007】
つまり、「食」に対する意識の向上、ひいては社会全体に対する教育効果も期待でき、産業が社会の健全な発展に貢献できることにもなる。かかる問題はリンゴジュース製造業のみならず、ミカン、ニンジン、トマト等、他の搾汁工業においても共通するものである。
【0008】
一方、従来、リンゴ搾汁残渣の多くが未利用のまま最終処分されていることは、もちろん、環境負荷の低減の観点からも好ましいことではない。かかる問題はやはりリンゴジュース製造業のみならず、ミカン、ニンジン、トマト等、他の搾汁工業においても共通するものである。
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の画期的な有効利用法となるとともに、食用可能であり、かつ広い範囲で応用可能な、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、搾汁残渣等を均質化処理するとともに、これに食用可能(可食性)な結着剤を用いることによって全体を食用可能なシート状の素材として形成できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本願において特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
(1) 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んでなる植物体廃棄物製シート状体であって、 該搾汁残渣等は均質化処理されたものであることを特徴とする、植物体廃棄物製シート状体。
(2) 前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、(1)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(3) 添加物として、でき上がりの色調を淡色にする色調調節物質、またはでき上がりの食感をサクサクとした食感にする物性調節物質を含むことを特徴とする、(1)または(2)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(4) 前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、(3)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(5) 前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
(6) 前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は、5重量%以上含まれていることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(7) 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着させる結着剤とを混合する混合過程と、該混合過程により得られる混合物がシート状に形成されるように圧する加圧過程とを経てシート状体を得る植物体廃棄物製シート状体の製造方法であって、
該混合過程中にまたはその前に該搾汁残渣等が均質化処理される均質化過程が設けられている、植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【0012】
(8) 前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、(7)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
(9) 前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、(7)または(8)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(10) 前記混合過程において、前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は5重量%以上混合されることを特徴とする、(7)ないし(9)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(11) 前記加圧過程と並行して、または前記加圧過程の後に、前記混合物を加熱する加熱過程が設けられることを特徴とする、(7)ないし(10)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(12) 前記混合過程によって該搾汁残渣等と該結着剤によるペーストが得られ、前記加圧工程は該ペーストを原シート状体に形成する過程(以下、「成形過程」という。)であり、該成形過程の後に、該原シート状体を乾燥処理する乾燥過程を経てシート状体が得られることを特徴とする、(7)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(13) 前記成形過程は、同種または異種の2枚の成形用シートの間に前記ペーストを保持し、成形用シートの上から加圧手段によって加圧して前記原シート状体とする過程であることを特徴とする、(12)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(14) 前記成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙であることを特徴とする、(13)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【0013】
(15) 前記成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、前記ペーストを直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることを特徴とする、(13)または(14)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(16) 前記乾燥過程は、熱風乾燥処理を行う過程であることを特徴とする、(12)ないし(15)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(17) 前記成形過程の前に、前記ペーストを予備加熱処理する予備加熱過程を設けることを特徴とする、(12)ないし(16)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(18) 添加物として、前記色調を淡色に変化させる色調調節物質、または食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加する添加過程を含むことを特徴とする、(7)ないし(17)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(19) 前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、(18)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(20) 前記添加過程は前記混合過程の前に設けられ、搾汁残渣等に添加物を添加する過程であることを特徴とする、(18)または(19)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(21) 前記添加過程は、前記添加物の溶液(以下、「添加物溶液」という。)中に搾汁残渣等を浸漬する過程であることを特徴とする、(18)または(19)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物を用いて食用可能かつ広い範囲で応用可能な、付加価値の高い素材を提供することができる。したがって、従来はコストをかけて処理されることの多かったリンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の、画期的な有効利用法を提供することになる。
【0015】
本発明によれば、たとえばリンゴであれば、その1個のリンゴを余すことなく食べ尽くすというように、リンゴその他食用可能な植物性資源を、食用として、あるいは可食性を備えた形で全て利用し尽くすことができるため、極めて高度な資源有効利用を実現することができる。
【0016】
さらに本発明の、可食性の植物性資源を余すことなく利用するという思想は、「食」に対する意識の向上、ひいては社会全体に対する教育効果も期待できる。したがって、本発明を利用して今後創出される事業・産業は、単に産業の発達に資するのみならず、社会のより健全な発展にも貢献できるものである。
【0017】
また本発明によれば、リンゴ搾汁残渣を始め多くが未利用のまま最終処分されている可食性の植物資源を、焼却等によって最終処分する必要性を大いに軽減もしくは解消することができるため、環境負荷の低減にも寄与できるものである。
【0018】
また均質化処理を用いる本発明によれば、植物性の食品加工廃棄物を用いた食用可能な食材すなわち植物体廃棄物製シート状体をより薄い構造に、より均一性の高い構造に、あるいはまた、より強度の高い構造にすることができ、シート状体の品質をより高めることができる。それにより、シート状体の応用範囲をさらに拡大することができ、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の産出低減および高付加価値化有効利用に一層寄与することができる。
【0019】
また特定範囲の本発明によれば、結着剤として種々の材料を用いることができるため、植物体廃棄物製シート状体の製造方法の幅を広げ、利用性を高めることができる。さらにまた特定範囲の本発明によれば、添加する材料によって色調を改良したり、物性を改良することができ、可食性の素材としての価値を一層拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2】加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2−2】加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の別の構成を示すフロー図である。
【図3】乾燥過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図4】予備加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図5】添加過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【0021】
【図6】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(3.−2)。
【図7】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−1)。
【図8】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−2)。
【図9】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−3)。
【図10】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−4)。
【図11】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−5)。
【図12】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−6)。
【図13】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−1)。
【図14】実施例にて添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である。
【図15】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明の植物体廃棄物製シート状体は、植物体からの搾汁残渣その他の廃棄物と、廃棄物中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んで構成されるものであるが、ここで植物体とは、リンゴ・ミカン等の果実、ニンジン・トマト等の野菜を始め、その他広く可食性の植物体をいう。
【0023】
本発明の植物体とは、さらにいえば、果実・野菜・穀類・豆類・山菜類その他食用になる植物体をいう。特に果実では、リンゴ・ナシ・モモ・ブドウ・ミカン・ナツミカン・その他柑橘類・セイヨウナシ・カキ・クリ・オウトウ・ウメ・バナナ・パインアップル・ブルーベリー・カシス・キウイフルーツその他果実全般が、また野菜では、イチゴ・スイカ・メロン等の果実的野菜、トマト・カボチャ・エダマメ・スイートコーン等の果菜類、ホウレンソウ・ニンニク・タマネギ等の葉茎菜類、ニンジン・ビート・ゴボウ・ナガイモ・ナガイモ以外のヤマノイモ属・ヤーコン等の根菜類、ショウガ等の香辛野菜、その他野菜全般が含まれる。
【0024】
また、搾汁残渣とは、いわゆる果実ジュースや野菜ジュースの搾汁過程で産出されるものに限定せず、たとえばイモ搾汁残渣なども広く含む。
【0025】
さらにまた、植物体の搾汁残渣以外の廃棄物も、これに繊維質が含まれるものである限り、本発明では搾汁残渣に替えて用いることも可能である。たとえば可食部から搾汁以外の方法で分離されたリンゴ・パインナップルの芯・皮、クリ・ミカン・バナナ・メロン・スイカ・カボチャ・ナガイモの皮、ニンジン・ゴボウ・ダイコンの葉・皮、スイートコーンの皮・芯等、それが可食性を有する限りは広く該当する。
【0026】
さらにまた、蒸煮処理、蒸煮以外の加温処理・加熱処理、凍結処理、乾燥処理等、植物体に対する食品加工処理その他の加工処理の過程において産出する廃棄物も、それが可食性のものである限り、本発明では搾汁残渣に替えて用いることも可能である。たとえば豆類を蒸煮処理した後の搾汁残渣も、本発明の植物体に該当する。したがって、ダイズ蒸煮処理後の残渣であるオカラを用いてもよい。なお、本発明の植物体からの廃棄物には、農林業の生産現場において発生する廃棄物も該当する。
【0027】
植物体からの廃棄物として、たとえばリンゴ搾汁残渣を用いる場合、リンゴジュース製造過程で発生する搾汁残渣には、果肉部(花托)残渣のみならずリンゴの皮・種子・果梗も含まれるのが通常である。これらも全て可食性を有するものであり、本発明ではこれらを全て用いることができ、結着剤とのペースト状の混合物とし、最終的にシート状体を得ることができるものである。つまり、食用可能な部分は全て利用し尽くすことができる。
【0028】
本発明で植物体廃棄物製シート状体とは、植物体搾汁残渣等の廃棄物を原料としてシート状に形成されたものを広くいう。つまり、その厚さ、組織構造、表面の平滑度、強度その他の物性に特に限定されず、紙状、膜状、布状、平板状等のように、側面部に比して上面・底面各部の方が大面積を有し、「表裏」という認識により、側面部よりも上面・底面部の方がより強く認識される形態のものをいう。後述する実施例等においては、本発明のシート状体は「ペーパー(紙)」とも表現され得るものであるが、その場合も、厳密に「紙」を指すものではなく、ここに述べた「シート状体」を指すものである。また本発明にいう「シート状」には、厳密に平面状、平板状のものだけではなく、形成された当初から曲面状のものも含まれる。要するに、平面状か曲面状かに関わらず、薄く面状に展開された状態をいうものである。
【0029】
また、可食性の結着剤とは、搾汁残渣等の廃棄物中の繊維同士を結着する作用を有するものであるが、要するに可食性で、かつ上記植物体の搾汁残渣等廃棄物中の繊維同士を相互につなぎ合わせられる作用を有するものは、広く該当する。特に結着剤としては、増粘多糖類、ゲル化しやすい多糖類、その他特定のものを好適に用いることができる。
【0030】
ここで増粘多糖類としてはたとえば、ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)等を用いることができる。
【0031】
またゲル化しやすい多糖類としてはたとえば、コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチン等を用いることができる。その他、ムチンまたはその他の糖たんぱく質や、ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)も結着剤として用いることができる。
【0032】
こんにゃくは96〜97%が水分からなり、水分を除くと主成分は、複合多糖類のコンニャクマンナンである。これは、ヒトの消化管ではほとんど消化されないため、カロリーが極めて低い食品、つまり、100gあたり5〜7kcal程度のカロリーしかない食品であり、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として、従来から多用されている。代表的な食物繊維であり、血糖値や血中コレステロールを下げる効果、便秘解消作用、ダイエット効果、さらに免疫増強活性もあるとされているものである。
【0033】
また寒天は、コンニャク同様ほとんどがアガロースやアガロペクチンといった複合多糖類である。これも、ヒトの消化酵素のみではほとんど分解されない。したがってコンニャクマンナン同様、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として多用されているとともに、代表的な食物繊維でもある。
【0034】
またローカストビーンズやグァー等は主成分がガラクトマンナンであり、これらの所定成分を精製して製造されるローカストビーンズガムやグァーガムも、ヒトの消化酵素によっては分解されない。したがって、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として用いることができる食物繊維である。その他本発明の可食性結着剤として用いることのできる例として上述した各物質には、それぞれ特有の食材としての利点を有するものが多い。
【0035】
したがって、本発明の可食性結着剤として、こんにゃく、寒天、あるいはこれらの成分物質であるコンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチン、ローカストビーンズやグァー等を用いることによって、最終的に製造される植物体廃棄物製シート状体がこれらの成分を豊富に含むものになるため、摂取カロリー低減効果、血糖値や血中コレステロールを下げる効果、さらに免疫増強活性効果等、各結着剤特有の各種効果を得ることも期待できる。
【0036】
なお本発明に係る結着剤としてこんにゃくを用いる場合、あらゆる種類、形態のこんにゃくを用いることができる。また、粉末こんにゃくを用いてもよい。
【0037】
また、本発明に係る結着剤として寒天を用いる場合も、あらゆる種類、形態の寒天を用いることができる。たとえば製品形態としては、粉末状(粉末寒天)、棒状(棒寒天)、糸状(糸寒天)等あらゆるものが該当する。原料となる海藻種(天草、オゴ草等)とその組成も限定されない。
【0038】
本発明では、上述したように植物体として広範な種類が該当する。後述する実施例では、このうち特にリンゴ果汁搾汁残渣を取り上げる。しかし、リンゴ以外でも、果汁が搾汁される果実、あるいはニンジンやその他の野菜汁が搾汁される野菜を原料植物体として、その搾汁残渣を用いて本発明シート状体を得ることもまた、リンゴ果汁搾汁残渣利用と同様に産業上の利用性が高い。ジュース製造産業は、全国各地はいうに及ばず、世界各地に広く存在するからである。
【0039】
本発明の植物体廃棄物製シート状体を構成する主成分は、植物体からの搾汁残渣等の廃棄物と結着剤であるが、結着剤は搾汁残渣等に対して5重量%以上含まれているようにすることが望ましい。5重量%以上用いることによって、シート状体を形成することがとても容易となる。
【0040】
図1は、本発明の植物体廃棄物製シート状体の製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製造方法は、植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物すなわち搾汁残渣等1と、搾汁残渣等1中の繊維同士を結着させる結着剤2とを混合する混合過程P1と、混合過程P1により得られる混合物3がシート状に形成されるように圧する加圧過程P2とを経て植物体廃棄物製シート状体(単に「シート状体」ともいう。)4を得るための製造方法であるが、特に混合過程P1中に並行して、あるいは混合過程P1の前において、搾汁残渣等1を均質化処理するための均質化過程PHが設けられていることを、主たる構成とする。
【0041】
かかる構成により、混合過程P1において、植物体からの搾汁残渣等廃棄物1と結着剤2とが混合されて混合物3が得られ、ついで加圧過程P2において、混合物3は加圧処理されて、搾汁残渣等廃棄物1中の繊維同士が結着剤2の作用によって結着せしめられシート状に形成されて、シート状体4が得られる。ここで、混合過程P1中に並行して、あるいは混合過程P1の前に設けられている均質化過程PHによって、搾汁残渣等1は均質化処理がなされ、混合物3は均質化された搾汁残渣等によって構成されることとなる。
【0042】
結着剤2としては、ローカストビーンズガム・グァーガムその他の増粘多糖類、コンニャクマンナン・アガロース・アガロペクチンその他のゲル化しやすい多糖類、ムチンまたはその他の糖たんぱく質や、ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)等を好適に使用できることは、上述の通りである。また植物体からの搾汁残渣等廃棄物1として、リンゴその他の果汁が搾汁される果実およびニンジンその他の野菜汁が搾汁される野菜に由来する植物体搾汁残渣の他、種々のものを適用できることも、上述の通りである。
【0043】
また均質化過程PHにおける均質化処理としては、たとえばマスコロイダー等の器具・装置を用いて、適宜条件にて所望の均質化を得ることができる。搾汁残渣等をより細かく粒状化、あるいはペースト状化することによって、本発明のシート状体をより薄い構造に、より均一性の高い構造に、あるいはまた、より強度の高い構造にすることができ、シート状体の品質をより高めることができる。
【0044】
植物体からの搾汁残渣等の廃棄物1が乾燥状態である場合は、これに水または水溶液を加えて適度に水分を含んだ状態として、結着剤2と混合することによって、両者の混合処理が良好になされ、最終的に、廃棄物1中の繊維同士が良好に結着できる混合物3とすることができる。水分を含ませる方法としては、水または水溶液への浸漬、噴霧、蒸煮等、適宜の方法を用いることができる。
【0045】
図2は、加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。また、
図2−2は、加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の別の構成を示すフロー図である。これらに図示するように本植物体廃棄物製シート状体製造方法では、加圧過程P2の後に、混合物3を加熱する加熱過程P3が設けられるものとすることができる(図2)。あるいはまた、加圧過程と並行して加熱処理もなされる同時加圧・加熱過程P23を設けることとしてもよい(図2−2)。
【0046】
このように、加圧過程と並行して、またはその後に、加熱処理の過程を設けることによって、混合物3から形成されるシート状体24、24Bを、構造的により強く、安定したものとすることができる。なお加熱過程を設ける場合、あるいは加圧過程を同時加圧・加熱過程とする場合、加熱温度は40℃以上とすることによって、より良好な結果を得ることができる。
【0047】
加圧過程P2、あるいは同時加圧・加熱過程P23における加圧手段としては、適宜の方法を用いることができる。要するに加圧過程は、混合物3を平たく伸ばして成形するための過程であるから、かかる処理が可能である限り、プレス装置、熱プレス装置など適宜の装置あるいは方法を使用することができる。
【0048】
一方、特段の装置を用いずに行う方法、たとえば、混合物3を硬い物体に対して手で押し付ける処理も、あるいは簡単な押圧用の器具を用いて押圧する処理等も、本発明の加圧過程に該当する。なお、ラミネータを用いる場合は加熱処理も可能であるため、同時加圧・加熱過程P23とすることができる。
【0049】
また、加熱過程P3等における加熱手段としても、適宜の方法を用いることができる。電子レンジ等による電磁波加熱、温風、熱風、焙焼、ジュール加熱等、具体的手段は特に限定されない。
【0050】
加圧過程においては、混合物に含まれる水分を適宜除去しつつ、あるいは水分が適当に除去された状態、つまり適度に脱水された状態で行うことが、より望ましい。また、加圧過程P2等に供される混合物3の状態としては、ペースト状であることが望ましい。
【0051】
なお、図2−2に示した同時加圧・加熱過程P23を設ける製造フローでは、ラミネータや熱プレス装置を用い、これらの装置において可能な加圧・加熱条件を適宜設定して用いることによって、本発明の植物体廃棄物製シート状体24Bを容易に得ることができる。つまり製造条件としては、さほど特別な条件を必要とするものではないため、小規模な事業体においても充分に導入可能である。
【0052】
図3は、乾燥過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、ペースト33を得るための混合過程P31と、ペースト33を加圧処理により原シート状体34に形成する加圧過程すなわち成形過程P32と、得られた原シート状体34を乾燥処理する乾燥過程P35とを備えてなる構成である。
【0053】
かかる構成であるため、本製法によれば、混合過程P31において搾汁残渣等31と結着剤32によるペースト33が得られ、ついで成形過程P32においてペースト33が加圧処理されて原シート状体34に形成され、乾燥過程P35において原シート状体34がを乾燥処理されて、最終的に植物体廃棄物製シート状体36が得られる。
【0054】
ここで、成形過程P32においては、同種または異種の2枚の成形用シートの間にペースト33を挟み込み保持して、成形用シートの上から加圧手段によって加圧してペースト33を延ばすことによって、容易に原シート状体34を形成することができる。
【0055】
なお、この2枚の成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙とすることができる。また、成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、ペースト33を直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることによって、原シート状体34形成時において、ペースト33が成形用シートに付着してしまうことなく、きれいに剥がすことができ、仕上がりの形態を良好なものとすることができる。また、ペースト付着防止性シートが同時に吸水性にも優れている場合は、ペースト33から余分な水分が吸水除去され、乾燥過程P35を経た後に最終的に得られるシート状体36の仕上がりを、しわのない、剥離性のよいものとすることができる。かかる仕上がりの点では、シリコン紙よりもプラスチックフィルムの利用がより望ましい。
【0056】
なお乾燥過程P35の容易かつ効果的実施には、適宜条件による熱風乾燥処理を好適に用いることができる。
【0057】
図4は、予備加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、図3で示した成形過程P42の前に、ペースト43を予備加熱処理する予備加熱過程P4Yが設けられた構成である。予備加熱過程P4Yにより、ペースト43の水分をある程度蒸発除去し、その後の成形過程P42における原シート状体44の形成状態をより良いものとすることができる。
【0058】
図5は、添加過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、混合過程P51の前に添加過程P5Tを設けたことを特徴とする。この添加過程P5Tは、搾汁残渣等51に特定の添加物50を添加する過程である。
【0059】
添加過程P5Tにおいて添加する添加物50としては特に、最終的に製造されるシート状体56の色調を淡色に変化させるための色調調節物質、または、食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加するものとすることができる。
【0060】
たとえばトレハロース、またはビタミンCを添加物50として用いることにより、最終的に製造されるシート状体56の色調を淡色に変化させるとともに、食感もサクサクとしたものに変化させることができる。これらの添加物はいずれも酸化防止剤であり、したがって他の酸化防止剤を用いても同様の効果を得ることができるものと考えられる。
【0061】
なお添加過程P5Tは、添加物50を搾汁残渣等51に添加する方法であればどのような方法によっても可能であるが、たとえば、添加物50の溶液すなわち添加物溶液中に、搾汁残渣等51を浸漬することによっても、容易に実施することができる。
【実施例】
【0062】
以下、リンゴ搾汁残渣を用いた実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、リンゴ搾汁残渣に係るリンゴの品種は限定されず、サン陸奥、陸奥、サンふじ、ふじ、王林、サンジョナゴールド、ジョナゴールド、サン金星、金星、サンつがる、つがる、茜、サン茜、千秋、スターキング、大紅栄、レッドゴールド、未希ライフ、紅玉、 北斗、栄黄雅、安祈世、その他あらゆる品種のものを用いることができる。
【0063】
<1.搾汁残渣の均質化処理>
マスコロイダー(湿式の粉砕機)を用いた均質化処理によって、リンゴ搾汁残渣をどの程度ペースト化できるか、試験した。
リンゴ搾汁残渣15kgを、マスコロイダー(メーカー:増幸産業株式会社 型名:スーパーMKZA15−40)を用い、粉砕サイズ条件(機械調整)を0.5mmにて粉砕した。ついで、これにより得られた被粉砕物に対し、再度0.1mmの機械調整にて粉砕した。
【0064】
その結果、0.5mmの調整で相当程度均質化、ペースト化可能であり、さらに0.1mmにて処理することによって、一層きれいなペースト状態にできることが確認できた。したがって均質化処理にマスコロイダーを用いた場合、概ねこの程度の条件で充分な均質性を得られると判断された。
【0065】
<2.搾汁残渣と結着剤の混合物に対する均質化処理>
マスコロイダーを用いた均質化処理によって、リンゴ搾汁残渣および結着剤の混合物をどの程度ペースト化できるか、試験した。
リンゴ搾汁残渣15kgを、マスコロイダーを用い、粉砕サイズ条件(機械調整)を0.3mmにて粉砕した。一方、結着剤としてこんにゃく(角こんにゃくを使用、メーカー:太子食品工業株式会社)500gをミキサーにかけて粗粉砕した。搾汁残渣の被粉砕物とこんにゃくの被粉砕物を合わせて混合物とし、これをマスコロイダーによって微粉砕した。条件は0.1mmの機械調整とした。
【0066】
その結果、搾汁残渣および結着剤の混合物も、きれいなペースト状態にできることが確認できた。結着剤こんにゃくの形跡は、視認できなかった。また均質化によって香りがよく立つ状態となった。したがって均質化処理にマスコロイダーを用いた場合、概ねこの程度の条件で充分な均質性を得られると判断された。
【0067】
<3.均質化処理した搾汁残渣からのシート状体形成>
上記2.により調製した搾汁残渣と結着剤によるペーストから、シート状体を形成する方法を試験した。
<3.−1 ラミネーターの使用>
ペーストをラミネーター(メーカー:フジプラ株式会社 型名:フジラミパッカーキュービック A3LPD3217)にかけてみて、シート状体の形成を試みた。ペースト量が少量の場合には、板のり状にまで薄いシート状体を形成することができたが、量が多くなると含有水分の影響で良好な結着が得られなかった。
搾汁残渣がある程度の粗さを備えた状態であれば、これに結着剤を加えてラミネーターを用いて加圧加熱処理することによってシート状体を形成することができるが、本発明のように均質化処理してより粒度の細かいペースト状とした場合は、ラミネーター以外の方法が望ましいと判断された。
【0068】
<3.−2 加圧過程および乾燥過程によるシート状体形成>
ペーストの予備加熱処理として、ペースト200gを電子レンジ(600W)にて40秒間処理した。その後放冷し、冷めた後に一定量を取ってプラスチックフィルム(メーカー:渡辺工業株式会社〈石川県白山市〉 商品名:押し餅製造用プラスチックフィルム)上に置き、その上にペースト付着防止性の布、さらにその上にプラスチックフィルムを置き、上部のプラスチックフィルムの上から加圧処理してペーストをシート状に形成した。ここでの加圧処理は簡単に、麺棒を用いて上から押すことによって行った。このようにして原シート状体を得た。
【0069】
なおペースト付着防止性の布としては、川野織布株式会社製の東レ(登録商標)テトロン(登録商標)使用の豆腐用ろ過布を1枚に開いて使用した。以下においても同様である。ペースト付着防止性の布を用いることにより、ペーストがプラスチックスフィルムに付着することによる作業効率低下を防止することができる。なお、かかる作用が得られるものである限り、どのような素材・形態のものであっても、本発明に係るペースト付着防止性の布として使用可能である。
【0070】
加圧処理終了後、布だけを取り外し、つまり2枚のプラスチックフィルムに原シート状体が挟まれた状態で、最終的なシート状体を得るべく温風乾燥機(メーカー:太昭農耕機株式会社)にて乾燥処理した。乾燥条件は、60℃で10〜20分間とした。
【0071】
その結果、良好な状態のシート状体が得られることを確認できた。なおまた、乾燥過程における乾燥温度および乾燥時間を調節することによって、シート状体の厚さ(薄さ)を制御することができた。かかる調節によって、相当程度薄い紙状にまで形成できることを確認した。
図6は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(3.−2)。
【0072】
<3.−3 成形用シートの検討>
ペーストから原シート状体を得るための成形用シートの種類を検討した。
A.プラスチックフィルム(メーカー:渡辺工業株式会社〈石川県白山市〉 商品名:押し餅製造用プラスチックフィルム)の上にペースト100gを置き、その上にペースト付着防止性の布を被せ、さらにプラスチックフィルムを載せた状態で加圧処理して、原シート状体を得た。これを温風乾燥機を用いて、60℃ 30〜40分間 の乾燥条件にて乾燥処理した。
【0073】
B.シリコン紙(メーカー:株式会社シジシージャパン 商品名:クッキングシート)の上にペースト100gを置き、その上にペースト付着防止性の布を被せ、さらにプラスチックフィルムを載せた状態で加圧処理して、原シート状体を得た。これを温風乾燥機を用いて、60℃ 30〜40分間 の乾燥条件にて乾燥処理した。
【0074】
その結果B.の方法では、水分が余分に残るためか、最終的なシート状体の仕上がりはしわができる状況だった。一方A.の方法では、最終的なシート状体の仕上がりはしわもなく、かつ成形用シートからシート状体の剥離性もよく、より良好な結果が得られた。
【0075】
<4.結着剤の検討>
こんにゃく(角こんにゃく、生芋角こんにゃく、糸こんにゃく、刺身こんにゃくなどあらゆる種類を含む。)をミキサー等によって適宜に粉砕処理したものを、植物体からの廃棄物重量に対して3重量%を超える量、望ましくは5重量%以上を用いることにより、本発明の結着剤として充分に作用させることができる。この他数種類の材料について、結着剤としての効果の有無を試験した。
【0076】
<4.−1 ローカストビーンズ>
85℃以上の熱湯50ccに、3gのローカストビーンズ(メーカー:三昌株式会社)を溶解して結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図7は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−1)。
【0077】
<4.−2 グァーガム>
水50ccに、3gのグァーガム(メーカー:三昌株式会社)を溶解して結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図8は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−2)。
【0078】
<4.−3 ナガイモ>
ゲル形成能のあるムチンを多く含むナガイモを試験した。摺り下ろしたナガイモ正味60gを結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図9は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−3)。
【0079】
<4.−4 粉末こんにゃく>
粉末こんにゃく(メーカー:清水化学株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図10は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−4)。
【0080】
<4.−5 キサンタンガム>
キサンタンガム(メーカー:大日本住友製薬株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図11は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−5)。
【0081】
<4.−6 ペクチン>
ペクチン(メーカー:ユニテックフード株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、シート状体を形成できることが確認できたが、少々べたつきのある状態だった。
図12は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−6)。
【0082】
<5.色調調節の検討>
リンゴ搾汁残渣を主原料とする本実施例の植物体廃棄物製シート状体の場合、その色調は大体、濃いめの暖色系の色調となる。シート状体の利用範囲・応用対象をより拡大するためには、色調改善が有意義である。そこで、若干の添加物を用いて色調調節効果を試験した。
【0083】
<5.−1 ビタミンC>
リンゴ搾汁直後に、リンゴ搾汁残渣を5%のビタミンC(メーカー名:BASFジャパン株式会社)溶液に30分間浸漬した。その後、搾汁残渣の水気を切って、上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。結着剤には、グルコマンナン(メーカー:清水化学株式会社)を用いた。その結果、シート状体の色調を薄くすることができた。
【0084】
図13は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−1)。一方、
図14は、添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である。図13においては図14よりも色調が薄くなっていることが明らかである。
【0085】
<5.−2 トレハロース>
リンゴ搾汁直後に、リンゴ搾汁残渣を15%のトレハロース(販売元:株式会社林原商事)溶液に30分間浸漬した。その後、搾汁残渣の水気を切って、上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。結着剤には、グルコマンナン(メーカー:清水化学株式会社)を用いた。その結果、シート状体の色調を薄くすることができた。
【0086】
図15は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−2)。図15においては、前掲添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体に係る図14よりも色調が薄くなっていることが明らかである。
【0087】
なお、ビタミンC溶液、トレハロース溶液いずれを添加したものでも、作製された植物体廃棄物製シート状体は、アイスクリーム用のコーンのようなサクサクとした食感を呈した。したがってこれらの添加物は、色調調節の他に食感(テクスチャー)調節にも使用可能であると判断された。これらの添加物はいずれも酸化防止剤であり、色調調節・テクスチャー調節に他の食品添加用酸化防止剤の使用の可能性が示唆された。
【0088】
<6.シート状体の耐水性>
以上述べた通り、本発明は、植物体廃棄物の均質化処理と、結着剤を用いることによって構成する植物体廃棄物製シート状体に係るものである。しかしながら本願発明者は、均質化処理を行った場合には、結着剤を用いなくても一定のシート状体を得られることもまた確認済みである。そこで、結着剤の有無によるシート状体の性状の違いの如何について、検討した。
【0089】
上述の実施例に説明した各種結着剤使用による各シート状体(いずれも、搾汁残渣に対し0.3重量%を使用)と、結着剤不使用により作製したシート状体の耐水性を調べた。実験は、各シート状体を水中に、シート状体の表裏をひっくり返しつつ15分間浸漬した。浸漬中、時々竹串を用いてシート状体に軽く衝撃を与えた。その結果、結着剤不使用のシート状体は形が崩れてしまったが、いずれかの結着剤を使用して作製したシート状体はいずれも、その形が崩れることなく、元の形態を維持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法によれば、廃棄物を用いて食用可能かつ広い範囲で応用可能な、付加価値の高い素材を提供できる。廃棄物の有効利用として画期的であり、新規事業・産業の創出とその拡大が大いに期待できる。
【0091】
また均質化処理を用いる本発明植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法によれば、シート状体をより薄く、より均一性高く、より強度の高い構造にすることができる。それによってシート状体の品質をより高めることができ、シート状体の応用範囲を一層拡大することができるなど、本発明は関連する種々の産業分野において利用性が極めて高い発明である。
【符号の説明】
【0092】
1、31、41、51…搾汁残渣等廃棄物
2、32、42、52…結着剤
3、53…混合物
4、24、24B、36、46、54…植物体廃棄物製シート状体(シート状体)
33、43…ペースト
34、44…原シート状体
50…添加物
P1、P31、P41、P51…混合過程
P2、P52…加圧過程
P3…加熱過程
P23…同時加圧・加熱過程
P32、P42…成形過程(加圧過程)
P35、P45…乾燥過程
P4Y…予備加熱過程
P5T…添加過程
PH、P3H、P4H、P5H…均質化過程
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法に係り、特に、リンゴ搾汁残渣等の食品加工廃棄物の画期的な有効利用法となるとともに、食用可能かつ応用範囲の広い、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴジュース製造過程において大量に排出されるリンゴ搾汁残渣の有効利用については、従来多くの取り組みがなされている。たとえば後掲特許文献1、2に開示された技術はいずれも、飼料として利用しようというものである。このうち特許文献1開示技術は、リンゴ搾汁残渣を動物の糞尿に対し消臭効果のある飼料としての利用に係るものである。また、特許文献2開示の技術は、糖分・りんご酸・ビタミンCなど、家畜には不要もしくは有害な養分を搾り捨てて乾燥させた、搾り粕再生飼料を提案するものである。
【0003】
また、特許文献3開示の技術は、リンゴ搾汁残渣に、長さ1mm〜15mm程度、径1mm以下程度の寸法の植物長繊維屑からなる補助材を混合し、その混合物に高圧を付加することでさらにリンゴ果汁を抽出するというものであるが、結局はやはり、二次圧搾後の混合物を乾燥、発酵処理して家畜飼料にするというものである。
【0004】
このように、リンゴ搾汁残渣の利用または利用に関する技術的提案は、主として付加価値の低い飼料用途に留まる。また、有効利用されずに、結局は産業廃棄物として有償で処理されている量も相当多いのが実態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199509「動物糞尿臭消臭用飼料」
【特許文献2】登録実用新案第3032813号「りんご搾り粕再生飼料」
【特許文献3】特開2006−280332「一次圧搾後のリンゴ滓の再利用法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしリンゴ搾汁残渣には、まだ栄養価値が豊富に残存している。したがってこれを、飼料用途等の付加価値の低い利用に留めること、あるいは全く利用せずにコストをかけて処分することは、資源の有効利用の観点から好ましくない。できる限り、1個のリンゴを利用し尽くす、しかも食用として余すことなく全て利用し尽くすことができれば、資源有効利用の観点はいうまでもなく、それを超えた効果も大いに期待できる。
【0007】
つまり、「食」に対する意識の向上、ひいては社会全体に対する教育効果も期待でき、産業が社会の健全な発展に貢献できることにもなる。かかる問題はリンゴジュース製造業のみならず、ミカン、ニンジン、トマト等、他の搾汁工業においても共通するものである。
【0008】
一方、従来、リンゴ搾汁残渣の多くが未利用のまま最終処分されていることは、もちろん、環境負荷の低減の観点からも好ましいことではない。かかる問題はやはりリンゴジュース製造業のみならず、ミカン、ニンジン、トマト等、他の搾汁工業においても共通するものである。
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の画期的な有効利用法となるとともに、食用可能であり、かつ広い範囲で応用可能な、植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、搾汁残渣等を均質化処理するとともに、これに食用可能(可食性)な結着剤を用いることによって全体を食用可能なシート状の素材として形成できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本願において特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
(1) 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んでなる植物体廃棄物製シート状体であって、 該搾汁残渣等は均質化処理されたものであることを特徴とする、植物体廃棄物製シート状体。
(2) 前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、(1)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(3) 添加物として、でき上がりの色調を淡色にする色調調節物質、またはでき上がりの食感をサクサクとした食感にする物性調節物質を含むことを特徴とする、(1)または(2)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(4) 前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、(3)に記載の植物体廃棄物製シート状体。
(5) 前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
(6) 前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は、5重量%以上含まれていることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(7) 植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着させる結着剤とを混合する混合過程と、該混合過程により得られる混合物がシート状に形成されるように圧する加圧過程とを経てシート状体を得る植物体廃棄物製シート状体の製造方法であって、
該混合過程中にまたはその前に該搾汁残渣等が均質化処理される均質化過程が設けられている、植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【0012】
(8) 前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、(7)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
(9) 前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、(7)または(8)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(10) 前記混合過程において、前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は5重量%以上混合されることを特徴とする、(7)ないし(9)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(11) 前記加圧過程と並行して、または前記加圧過程の後に、前記混合物を加熱する加熱過程が設けられることを特徴とする、(7)ないし(10)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(12) 前記混合過程によって該搾汁残渣等と該結着剤によるペーストが得られ、前記加圧工程は該ペーストを原シート状体に形成する過程(以下、「成形過程」という。)であり、該成形過程の後に、該原シート状体を乾燥処理する乾燥過程を経てシート状体が得られることを特徴とする、(7)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(13) 前記成形過程は、同種または異種の2枚の成形用シートの間に前記ペーストを保持し、成形用シートの上から加圧手段によって加圧して前記原シート状体とする過程であることを特徴とする、(12)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(14) 前記成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙であることを特徴とする、(13)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【0013】
(15) 前記成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、前記ペーストを直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることを特徴とする、(13)または(14)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(16) 前記乾燥過程は、熱風乾燥処理を行う過程であることを特徴とする、(12)ないし(15)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(17) 前記成形過程の前に、前記ペーストを予備加熱処理する予備加熱過程を設けることを特徴とする、(12)ないし(16)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(18) 添加物として、前記色調を淡色に変化させる色調調節物質、または食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加する添加過程を含むことを特徴とする、(7)ないし(17)のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(19) 前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、(18)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(20) 前記添加過程は前記混合過程の前に設けられ、搾汁残渣等に添加物を添加する過程であることを特徴とする、(18)または(19)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(21) 前記添加過程は、前記添加物の溶液(以下、「添加物溶液」という。)中に搾汁残渣等を浸漬する過程であることを特徴とする、(18)または(19)に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物を用いて食用可能かつ広い範囲で応用可能な、付加価値の高い素材を提供することができる。したがって、従来はコストをかけて処理されることの多かったリンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の、画期的な有効利用法を提供することになる。
【0015】
本発明によれば、たとえばリンゴであれば、その1個のリンゴを余すことなく食べ尽くすというように、リンゴその他食用可能な植物性資源を、食用として、あるいは可食性を備えた形で全て利用し尽くすことができるため、極めて高度な資源有効利用を実現することができる。
【0016】
さらに本発明の、可食性の植物性資源を余すことなく利用するという思想は、「食」に対する意識の向上、ひいては社会全体に対する教育効果も期待できる。したがって、本発明を利用して今後創出される事業・産業は、単に産業の発達に資するのみならず、社会のより健全な発展にも貢献できるものである。
【0017】
また本発明によれば、リンゴ搾汁残渣を始め多くが未利用のまま最終処分されている可食性の植物資源を、焼却等によって最終処分する必要性を大いに軽減もしくは解消することができるため、環境負荷の低減にも寄与できるものである。
【0018】
また均質化処理を用いる本発明によれば、植物性の食品加工廃棄物を用いた食用可能な食材すなわち植物体廃棄物製シート状体をより薄い構造に、より均一性の高い構造に、あるいはまた、より強度の高い構造にすることができ、シート状体の品質をより高めることができる。それにより、シート状体の応用範囲をさらに拡大することができ、リンゴ搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物の産出低減および高付加価値化有効利用に一層寄与することができる。
【0019】
また特定範囲の本発明によれば、結着剤として種々の材料を用いることができるため、植物体廃棄物製シート状体の製造方法の幅を広げ、利用性を高めることができる。さらにまた特定範囲の本発明によれば、添加する材料によって色調を改良したり、物性を改良することができ、可食性の素材としての価値を一層拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2】加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2−2】加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の別の構成を示すフロー図である。
【図3】乾燥過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図4】予備加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【図5】添加過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。
【0021】
【図6】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(3.−2)。
【図7】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−1)。
【図8】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−2)。
【図9】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−3)。
【図10】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−4)。
【図11】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−5)。
【図12】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−6)。
【図13】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−1)。
【図14】実施例にて添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である。
【図15】実施例にて形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明の植物体廃棄物製シート状体は、植物体からの搾汁残渣その他の廃棄物と、廃棄物中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んで構成されるものであるが、ここで植物体とは、リンゴ・ミカン等の果実、ニンジン・トマト等の野菜を始め、その他広く可食性の植物体をいう。
【0023】
本発明の植物体とは、さらにいえば、果実・野菜・穀類・豆類・山菜類その他食用になる植物体をいう。特に果実では、リンゴ・ナシ・モモ・ブドウ・ミカン・ナツミカン・その他柑橘類・セイヨウナシ・カキ・クリ・オウトウ・ウメ・バナナ・パインアップル・ブルーベリー・カシス・キウイフルーツその他果実全般が、また野菜では、イチゴ・スイカ・メロン等の果実的野菜、トマト・カボチャ・エダマメ・スイートコーン等の果菜類、ホウレンソウ・ニンニク・タマネギ等の葉茎菜類、ニンジン・ビート・ゴボウ・ナガイモ・ナガイモ以外のヤマノイモ属・ヤーコン等の根菜類、ショウガ等の香辛野菜、その他野菜全般が含まれる。
【0024】
また、搾汁残渣とは、いわゆる果実ジュースや野菜ジュースの搾汁過程で産出されるものに限定せず、たとえばイモ搾汁残渣なども広く含む。
【0025】
さらにまた、植物体の搾汁残渣以外の廃棄物も、これに繊維質が含まれるものである限り、本発明では搾汁残渣に替えて用いることも可能である。たとえば可食部から搾汁以外の方法で分離されたリンゴ・パインナップルの芯・皮、クリ・ミカン・バナナ・メロン・スイカ・カボチャ・ナガイモの皮、ニンジン・ゴボウ・ダイコンの葉・皮、スイートコーンの皮・芯等、それが可食性を有する限りは広く該当する。
【0026】
さらにまた、蒸煮処理、蒸煮以外の加温処理・加熱処理、凍結処理、乾燥処理等、植物体に対する食品加工処理その他の加工処理の過程において産出する廃棄物も、それが可食性のものである限り、本発明では搾汁残渣に替えて用いることも可能である。たとえば豆類を蒸煮処理した後の搾汁残渣も、本発明の植物体に該当する。したがって、ダイズ蒸煮処理後の残渣であるオカラを用いてもよい。なお、本発明の植物体からの廃棄物には、農林業の生産現場において発生する廃棄物も該当する。
【0027】
植物体からの廃棄物として、たとえばリンゴ搾汁残渣を用いる場合、リンゴジュース製造過程で発生する搾汁残渣には、果肉部(花托)残渣のみならずリンゴの皮・種子・果梗も含まれるのが通常である。これらも全て可食性を有するものであり、本発明ではこれらを全て用いることができ、結着剤とのペースト状の混合物とし、最終的にシート状体を得ることができるものである。つまり、食用可能な部分は全て利用し尽くすことができる。
【0028】
本発明で植物体廃棄物製シート状体とは、植物体搾汁残渣等の廃棄物を原料としてシート状に形成されたものを広くいう。つまり、その厚さ、組織構造、表面の平滑度、強度その他の物性に特に限定されず、紙状、膜状、布状、平板状等のように、側面部に比して上面・底面各部の方が大面積を有し、「表裏」という認識により、側面部よりも上面・底面部の方がより強く認識される形態のものをいう。後述する実施例等においては、本発明のシート状体は「ペーパー(紙)」とも表現され得るものであるが、その場合も、厳密に「紙」を指すものではなく、ここに述べた「シート状体」を指すものである。また本発明にいう「シート状」には、厳密に平面状、平板状のものだけではなく、形成された当初から曲面状のものも含まれる。要するに、平面状か曲面状かに関わらず、薄く面状に展開された状態をいうものである。
【0029】
また、可食性の結着剤とは、搾汁残渣等の廃棄物中の繊維同士を結着する作用を有するものであるが、要するに可食性で、かつ上記植物体の搾汁残渣等廃棄物中の繊維同士を相互につなぎ合わせられる作用を有するものは、広く該当する。特に結着剤としては、増粘多糖類、ゲル化しやすい多糖類、その他特定のものを好適に用いることができる。
【0030】
ここで増粘多糖類としてはたとえば、ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)等を用いることができる。
【0031】
またゲル化しやすい多糖類としてはたとえば、コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチン等を用いることができる。その他、ムチンまたはその他の糖たんぱく質や、ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)も結着剤として用いることができる。
【0032】
こんにゃくは96〜97%が水分からなり、水分を除くと主成分は、複合多糖類のコンニャクマンナンである。これは、ヒトの消化管ではほとんど消化されないため、カロリーが極めて低い食品、つまり、100gあたり5〜7kcal程度のカロリーしかない食品であり、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として、従来から多用されている。代表的な食物繊維であり、血糖値や血中コレステロールを下げる効果、便秘解消作用、ダイエット効果、さらに免疫増強活性もあるとされているものである。
【0033】
また寒天は、コンニャク同様ほとんどがアガロースやアガロペクチンといった複合多糖類である。これも、ヒトの消化酵素のみではほとんど分解されない。したがってコンニャクマンナン同様、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として多用されているとともに、代表的な食物繊維でもある。
【0034】
またローカストビーンズやグァー等は主成分がガラクトマンナンであり、これらの所定成分を精製して製造されるローカストビーンズガムやグァーガムも、ヒトの消化酵素によっては分解されない。したがって、摂取カロリー制限が必要な場合の食品素材として用いることができる食物繊維である。その他本発明の可食性結着剤として用いることのできる例として上述した各物質には、それぞれ特有の食材としての利点を有するものが多い。
【0035】
したがって、本発明の可食性結着剤として、こんにゃく、寒天、あるいはこれらの成分物質であるコンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチン、ローカストビーンズやグァー等を用いることによって、最終的に製造される植物体廃棄物製シート状体がこれらの成分を豊富に含むものになるため、摂取カロリー低減効果、血糖値や血中コレステロールを下げる効果、さらに免疫増強活性効果等、各結着剤特有の各種効果を得ることも期待できる。
【0036】
なお本発明に係る結着剤としてこんにゃくを用いる場合、あらゆる種類、形態のこんにゃくを用いることができる。また、粉末こんにゃくを用いてもよい。
【0037】
また、本発明に係る結着剤として寒天を用いる場合も、あらゆる種類、形態の寒天を用いることができる。たとえば製品形態としては、粉末状(粉末寒天)、棒状(棒寒天)、糸状(糸寒天)等あらゆるものが該当する。原料となる海藻種(天草、オゴ草等)とその組成も限定されない。
【0038】
本発明では、上述したように植物体として広範な種類が該当する。後述する実施例では、このうち特にリンゴ果汁搾汁残渣を取り上げる。しかし、リンゴ以外でも、果汁が搾汁される果実、あるいはニンジンやその他の野菜汁が搾汁される野菜を原料植物体として、その搾汁残渣を用いて本発明シート状体を得ることもまた、リンゴ果汁搾汁残渣利用と同様に産業上の利用性が高い。ジュース製造産業は、全国各地はいうに及ばず、世界各地に広く存在するからである。
【0039】
本発明の植物体廃棄物製シート状体を構成する主成分は、植物体からの搾汁残渣等の廃棄物と結着剤であるが、結着剤は搾汁残渣等に対して5重量%以上含まれているようにすることが望ましい。5重量%以上用いることによって、シート状体を形成することがとても容易となる。
【0040】
図1は、本発明の植物体廃棄物製シート状体の製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製造方法は、植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物すなわち搾汁残渣等1と、搾汁残渣等1中の繊維同士を結着させる結着剤2とを混合する混合過程P1と、混合過程P1により得られる混合物3がシート状に形成されるように圧する加圧過程P2とを経て植物体廃棄物製シート状体(単に「シート状体」ともいう。)4を得るための製造方法であるが、特に混合過程P1中に並行して、あるいは混合過程P1の前において、搾汁残渣等1を均質化処理するための均質化過程PHが設けられていることを、主たる構成とする。
【0041】
かかる構成により、混合過程P1において、植物体からの搾汁残渣等廃棄物1と結着剤2とが混合されて混合物3が得られ、ついで加圧過程P2において、混合物3は加圧処理されて、搾汁残渣等廃棄物1中の繊維同士が結着剤2の作用によって結着せしめられシート状に形成されて、シート状体4が得られる。ここで、混合過程P1中に並行して、あるいは混合過程P1の前に設けられている均質化過程PHによって、搾汁残渣等1は均質化処理がなされ、混合物3は均質化された搾汁残渣等によって構成されることとなる。
【0042】
結着剤2としては、ローカストビーンズガム・グァーガムその他の増粘多糖類、コンニャクマンナン・アガロース・アガロペクチンその他のゲル化しやすい多糖類、ムチンまたはその他の糖たんぱく質や、ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)等を好適に使用できることは、上述の通りである。また植物体からの搾汁残渣等廃棄物1として、リンゴその他の果汁が搾汁される果実およびニンジンその他の野菜汁が搾汁される野菜に由来する植物体搾汁残渣の他、種々のものを適用できることも、上述の通りである。
【0043】
また均質化過程PHにおける均質化処理としては、たとえばマスコロイダー等の器具・装置を用いて、適宜条件にて所望の均質化を得ることができる。搾汁残渣等をより細かく粒状化、あるいはペースト状化することによって、本発明のシート状体をより薄い構造に、より均一性の高い構造に、あるいはまた、より強度の高い構造にすることができ、シート状体の品質をより高めることができる。
【0044】
植物体からの搾汁残渣等の廃棄物1が乾燥状態である場合は、これに水または水溶液を加えて適度に水分を含んだ状態として、結着剤2と混合することによって、両者の混合処理が良好になされ、最終的に、廃棄物1中の繊維同士が良好に結着できる混合物3とすることができる。水分を含ませる方法としては、水または水溶液への浸漬、噴霧、蒸煮等、適宜の方法を用いることができる。
【0045】
図2は、加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。また、
図2−2は、加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の別の構成を示すフロー図である。これらに図示するように本植物体廃棄物製シート状体製造方法では、加圧過程P2の後に、混合物3を加熱する加熱過程P3が設けられるものとすることができる(図2)。あるいはまた、加圧過程と並行して加熱処理もなされる同時加圧・加熱過程P23を設けることとしてもよい(図2−2)。
【0046】
このように、加圧過程と並行して、またはその後に、加熱処理の過程を設けることによって、混合物3から形成されるシート状体24、24Bを、構造的により強く、安定したものとすることができる。なお加熱過程を設ける場合、あるいは加圧過程を同時加圧・加熱過程とする場合、加熱温度は40℃以上とすることによって、より良好な結果を得ることができる。
【0047】
加圧過程P2、あるいは同時加圧・加熱過程P23における加圧手段としては、適宜の方法を用いることができる。要するに加圧過程は、混合物3を平たく伸ばして成形するための過程であるから、かかる処理が可能である限り、プレス装置、熱プレス装置など適宜の装置あるいは方法を使用することができる。
【0048】
一方、特段の装置を用いずに行う方法、たとえば、混合物3を硬い物体に対して手で押し付ける処理も、あるいは簡単な押圧用の器具を用いて押圧する処理等も、本発明の加圧過程に該当する。なお、ラミネータを用いる場合は加熱処理も可能であるため、同時加圧・加熱過程P23とすることができる。
【0049】
また、加熱過程P3等における加熱手段としても、適宜の方法を用いることができる。電子レンジ等による電磁波加熱、温風、熱風、焙焼、ジュール加熱等、具体的手段は特に限定されない。
【0050】
加圧過程においては、混合物に含まれる水分を適宜除去しつつ、あるいは水分が適当に除去された状態、つまり適度に脱水された状態で行うことが、より望ましい。また、加圧過程P2等に供される混合物3の状態としては、ペースト状であることが望ましい。
【0051】
なお、図2−2に示した同時加圧・加熱過程P23を設ける製造フローでは、ラミネータや熱プレス装置を用い、これらの装置において可能な加圧・加熱条件を適宜設定して用いることによって、本発明の植物体廃棄物製シート状体24Bを容易に得ることができる。つまり製造条件としては、さほど特別な条件を必要とするものではないため、小規模な事業体においても充分に導入可能である。
【0052】
図3は、乾燥過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、ペースト33を得るための混合過程P31と、ペースト33を加圧処理により原シート状体34に形成する加圧過程すなわち成形過程P32と、得られた原シート状体34を乾燥処理する乾燥過程P35とを備えてなる構成である。
【0053】
かかる構成であるため、本製法によれば、混合過程P31において搾汁残渣等31と結着剤32によるペースト33が得られ、ついで成形過程P32においてペースト33が加圧処理されて原シート状体34に形成され、乾燥過程P35において原シート状体34がを乾燥処理されて、最終的に植物体廃棄物製シート状体36が得られる。
【0054】
ここで、成形過程P32においては、同種または異種の2枚の成形用シートの間にペースト33を挟み込み保持して、成形用シートの上から加圧手段によって加圧してペースト33を延ばすことによって、容易に原シート状体34を形成することができる。
【0055】
なお、この2枚の成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙とすることができる。また、成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、ペースト33を直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることによって、原シート状体34形成時において、ペースト33が成形用シートに付着してしまうことなく、きれいに剥がすことができ、仕上がりの形態を良好なものとすることができる。また、ペースト付着防止性シートが同時に吸水性にも優れている場合は、ペースト33から余分な水分が吸水除去され、乾燥過程P35を経た後に最終的に得られるシート状体36の仕上がりを、しわのない、剥離性のよいものとすることができる。かかる仕上がりの点では、シリコン紙よりもプラスチックフィルムの利用がより望ましい。
【0056】
なお乾燥過程P35の容易かつ効果的実施には、適宜条件による熱風乾燥処理を好適に用いることができる。
【0057】
図4は、予備加熱過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、図3で示した成形過程P42の前に、ペースト43を予備加熱処理する予備加熱過程P4Yが設けられた構成である。予備加熱過程P4Yにより、ペースト43の水分をある程度蒸発除去し、その後の成形過程P42における原シート状体44の形成状態をより良いものとすることができる。
【0058】
図5は、添加過程を含む本発明の植物体廃棄物製シート状体製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、混合過程P51の前に添加過程P5Tを設けたことを特徴とする。この添加過程P5Tは、搾汁残渣等51に特定の添加物50を添加する過程である。
【0059】
添加過程P5Tにおいて添加する添加物50としては特に、最終的に製造されるシート状体56の色調を淡色に変化させるための色調調節物質、または、食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加するものとすることができる。
【0060】
たとえばトレハロース、またはビタミンCを添加物50として用いることにより、最終的に製造されるシート状体56の色調を淡色に変化させるとともに、食感もサクサクとしたものに変化させることができる。これらの添加物はいずれも酸化防止剤であり、したがって他の酸化防止剤を用いても同様の効果を得ることができるものと考えられる。
【0061】
なお添加過程P5Tは、添加物50を搾汁残渣等51に添加する方法であればどのような方法によっても可能であるが、たとえば、添加物50の溶液すなわち添加物溶液中に、搾汁残渣等51を浸漬することによっても、容易に実施することができる。
【実施例】
【0062】
以下、リンゴ搾汁残渣を用いた実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、リンゴ搾汁残渣に係るリンゴの品種は限定されず、サン陸奥、陸奥、サンふじ、ふじ、王林、サンジョナゴールド、ジョナゴールド、サン金星、金星、サンつがる、つがる、茜、サン茜、千秋、スターキング、大紅栄、レッドゴールド、未希ライフ、紅玉、 北斗、栄黄雅、安祈世、その他あらゆる品種のものを用いることができる。
【0063】
<1.搾汁残渣の均質化処理>
マスコロイダー(湿式の粉砕機)を用いた均質化処理によって、リンゴ搾汁残渣をどの程度ペースト化できるか、試験した。
リンゴ搾汁残渣15kgを、マスコロイダー(メーカー:増幸産業株式会社 型名:スーパーMKZA15−40)を用い、粉砕サイズ条件(機械調整)を0.5mmにて粉砕した。ついで、これにより得られた被粉砕物に対し、再度0.1mmの機械調整にて粉砕した。
【0064】
その結果、0.5mmの調整で相当程度均質化、ペースト化可能であり、さらに0.1mmにて処理することによって、一層きれいなペースト状態にできることが確認できた。したがって均質化処理にマスコロイダーを用いた場合、概ねこの程度の条件で充分な均質性を得られると判断された。
【0065】
<2.搾汁残渣と結着剤の混合物に対する均質化処理>
マスコロイダーを用いた均質化処理によって、リンゴ搾汁残渣および結着剤の混合物をどの程度ペースト化できるか、試験した。
リンゴ搾汁残渣15kgを、マスコロイダーを用い、粉砕サイズ条件(機械調整)を0.3mmにて粉砕した。一方、結着剤としてこんにゃく(角こんにゃくを使用、メーカー:太子食品工業株式会社)500gをミキサーにかけて粗粉砕した。搾汁残渣の被粉砕物とこんにゃくの被粉砕物を合わせて混合物とし、これをマスコロイダーによって微粉砕した。条件は0.1mmの機械調整とした。
【0066】
その結果、搾汁残渣および結着剤の混合物も、きれいなペースト状態にできることが確認できた。結着剤こんにゃくの形跡は、視認できなかった。また均質化によって香りがよく立つ状態となった。したがって均質化処理にマスコロイダーを用いた場合、概ねこの程度の条件で充分な均質性を得られると判断された。
【0067】
<3.均質化処理した搾汁残渣からのシート状体形成>
上記2.により調製した搾汁残渣と結着剤によるペーストから、シート状体を形成する方法を試験した。
<3.−1 ラミネーターの使用>
ペーストをラミネーター(メーカー:フジプラ株式会社 型名:フジラミパッカーキュービック A3LPD3217)にかけてみて、シート状体の形成を試みた。ペースト量が少量の場合には、板のり状にまで薄いシート状体を形成することができたが、量が多くなると含有水分の影響で良好な結着が得られなかった。
搾汁残渣がある程度の粗さを備えた状態であれば、これに結着剤を加えてラミネーターを用いて加圧加熱処理することによってシート状体を形成することができるが、本発明のように均質化処理してより粒度の細かいペースト状とした場合は、ラミネーター以外の方法が望ましいと判断された。
【0068】
<3.−2 加圧過程および乾燥過程によるシート状体形成>
ペーストの予備加熱処理として、ペースト200gを電子レンジ(600W)にて40秒間処理した。その後放冷し、冷めた後に一定量を取ってプラスチックフィルム(メーカー:渡辺工業株式会社〈石川県白山市〉 商品名:押し餅製造用プラスチックフィルム)上に置き、その上にペースト付着防止性の布、さらにその上にプラスチックフィルムを置き、上部のプラスチックフィルムの上から加圧処理してペーストをシート状に形成した。ここでの加圧処理は簡単に、麺棒を用いて上から押すことによって行った。このようにして原シート状体を得た。
【0069】
なおペースト付着防止性の布としては、川野織布株式会社製の東レ(登録商標)テトロン(登録商標)使用の豆腐用ろ過布を1枚に開いて使用した。以下においても同様である。ペースト付着防止性の布を用いることにより、ペーストがプラスチックスフィルムに付着することによる作業効率低下を防止することができる。なお、かかる作用が得られるものである限り、どのような素材・形態のものであっても、本発明に係るペースト付着防止性の布として使用可能である。
【0070】
加圧処理終了後、布だけを取り外し、つまり2枚のプラスチックフィルムに原シート状体が挟まれた状態で、最終的なシート状体を得るべく温風乾燥機(メーカー:太昭農耕機株式会社)にて乾燥処理した。乾燥条件は、60℃で10〜20分間とした。
【0071】
その結果、良好な状態のシート状体が得られることを確認できた。なおまた、乾燥過程における乾燥温度および乾燥時間を調節することによって、シート状体の厚さ(薄さ)を制御することができた。かかる調節によって、相当程度薄い紙状にまで形成できることを確認した。
図6は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(3.−2)。
【0072】
<3.−3 成形用シートの検討>
ペーストから原シート状体を得るための成形用シートの種類を検討した。
A.プラスチックフィルム(メーカー:渡辺工業株式会社〈石川県白山市〉 商品名:押し餅製造用プラスチックフィルム)の上にペースト100gを置き、その上にペースト付着防止性の布を被せ、さらにプラスチックフィルムを載せた状態で加圧処理して、原シート状体を得た。これを温風乾燥機を用いて、60℃ 30〜40分間 の乾燥条件にて乾燥処理した。
【0073】
B.シリコン紙(メーカー:株式会社シジシージャパン 商品名:クッキングシート)の上にペースト100gを置き、その上にペースト付着防止性の布を被せ、さらにプラスチックフィルムを載せた状態で加圧処理して、原シート状体を得た。これを温風乾燥機を用いて、60℃ 30〜40分間 の乾燥条件にて乾燥処理した。
【0074】
その結果B.の方法では、水分が余分に残るためか、最終的なシート状体の仕上がりはしわができる状況だった。一方A.の方法では、最終的なシート状体の仕上がりはしわもなく、かつ成形用シートからシート状体の剥離性もよく、より良好な結果が得られた。
【0075】
<4.結着剤の検討>
こんにゃく(角こんにゃく、生芋角こんにゃく、糸こんにゃく、刺身こんにゃくなどあらゆる種類を含む。)をミキサー等によって適宜に粉砕処理したものを、植物体からの廃棄物重量に対して3重量%を超える量、望ましくは5重量%以上を用いることにより、本発明の結着剤として充分に作用させることができる。この他数種類の材料について、結着剤としての効果の有無を試験した。
【0076】
<4.−1 ローカストビーンズ>
85℃以上の熱湯50ccに、3gのローカストビーンズ(メーカー:三昌株式会社)を溶解して結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図7は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−1)。
【0077】
<4.−2 グァーガム>
水50ccに、3gのグァーガム(メーカー:三昌株式会社)を溶解して結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図8は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−2)。
【0078】
<4.−3 ナガイモ>
ゲル形成能のあるムチンを多く含むナガイモを試験した。摺り下ろしたナガイモ正味60gを結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図9は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−3)。
【0079】
<4.−4 粉末こんにゃく>
粉末こんにゃく(メーカー:清水化学株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図10は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−4)。
【0080】
<4.−5 キサンタンガム>
キサンタンガム(メーカー:大日本住友製薬株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、確実に良好なシート状体を形成できることが確認できた。
図11は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−5)。
【0081】
<4.−6 ペクチン>
ペクチン(メーカー:ユニテックフード株式会社)を結着剤試料とした。上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。その結果、シート状体を形成できることが確認できたが、少々べたつきのある状態だった。
図12は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(4.−6)。
【0082】
<5.色調調節の検討>
リンゴ搾汁残渣を主原料とする本実施例の植物体廃棄物製シート状体の場合、その色調は大体、濃いめの暖色系の色調となる。シート状体の利用範囲・応用対象をより拡大するためには、色調改善が有意義である。そこで、若干の添加物を用いて色調調節効果を試験した。
【0083】
<5.−1 ビタミンC>
リンゴ搾汁直後に、リンゴ搾汁残渣を5%のビタミンC(メーカー名:BASFジャパン株式会社)溶液に30分間浸漬した。その後、搾汁残渣の水気を切って、上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。結着剤には、グルコマンナン(メーカー:清水化学株式会社)を用いた。その結果、シート状体の色調を薄くすることができた。
【0084】
図13は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−1)。一方、
図14は、添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である。図13においては図14よりも色調が薄くなっていることが明らかである。
【0085】
<5.−2 トレハロース>
リンゴ搾汁直後に、リンゴ搾汁残渣を15%のトレハロース(販売元:株式会社林原商事)溶液に30分間浸漬した。その後、搾汁残渣の水気を切って、上述のマスコロイダーを用いた均質化処理によりペーストとした1kgのリンゴ搾汁残渣に、結着剤試料3gを混合し、3.−2および3.−3A.に述べた方法にしたがってシート状体の形成を試みた。結着剤には、グルコマンナン(メーカー:清水化学株式会社)を用いた。その結果、シート状体の色調を薄くすることができた。
【0086】
図15は、形成された植物体廃棄物製シート状体の状態を示す写真図である(5.−2)。図15においては、前掲添加物を加えずに作製した植物体廃棄物製シート状体に係る図14よりも色調が薄くなっていることが明らかである。
【0087】
なお、ビタミンC溶液、トレハロース溶液いずれを添加したものでも、作製された植物体廃棄物製シート状体は、アイスクリーム用のコーンのようなサクサクとした食感を呈した。したがってこれらの添加物は、色調調節の他に食感(テクスチャー)調節にも使用可能であると判断された。これらの添加物はいずれも酸化防止剤であり、色調調節・テクスチャー調節に他の食品添加用酸化防止剤の使用の可能性が示唆された。
【0088】
<6.シート状体の耐水性>
以上述べた通り、本発明は、植物体廃棄物の均質化処理と、結着剤を用いることによって構成する植物体廃棄物製シート状体に係るものである。しかしながら本願発明者は、均質化処理を行った場合には、結着剤を用いなくても一定のシート状体を得られることもまた確認済みである。そこで、結着剤の有無によるシート状体の性状の違いの如何について、検討した。
【0089】
上述の実施例に説明した各種結着剤使用による各シート状体(いずれも、搾汁残渣に対し0.3重量%を使用)と、結着剤不使用により作製したシート状体の耐水性を調べた。実験は、各シート状体を水中に、シート状体の表裏をひっくり返しつつ15分間浸漬した。浸漬中、時々竹串を用いてシート状体に軽く衝撃を与えた。その結果、結着剤不使用のシート状体は形が崩れてしまったが、いずれかの結着剤を使用して作製したシート状体はいずれも、その形が崩れることなく、元の形態を維持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法によれば、廃棄物を用いて食用可能かつ広い範囲で応用可能な、付加価値の高い素材を提供できる。廃棄物の有効利用として画期的であり、新規事業・産業の創出とその拡大が大いに期待できる。
【0091】
また均質化処理を用いる本発明植物体廃棄物製シート状体およびその製造方法によれば、シート状体をより薄く、より均一性高く、より強度の高い構造にすることができる。それによってシート状体の品質をより高めることができ、シート状体の応用範囲を一層拡大することができるなど、本発明は関連する種々の産業分野において利用性が極めて高い発明である。
【符号の説明】
【0092】
1、31、41、51…搾汁残渣等廃棄物
2、32、42、52…結着剤
3、53…混合物
4、24、24B、36、46、54…植物体廃棄物製シート状体(シート状体)
33、43…ペースト
34、44…原シート状体
50…添加物
P1、P31、P41、P51…混合過程
P2、P52…加圧過程
P3…加熱過程
P23…同時加圧・加熱過程
P32、P42…成形過程(加圧過程)
P35、P45…乾燥過程
P4Y…予備加熱過程
P5T…添加過程
PH、P3H、P4H、P5H…均質化過程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んでなる植物体廃棄物製シート状体であって、 該搾汁残渣等は均質化処理されたものであることを特徴とする、植物体廃棄物製シート状体。
【請求項2】
前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、請求項1に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項3】
添加物として、でき上がりの色調を淡色にする色調調節物質、またはでき上がりの食感をサクサクとした食感にする物性調節物質を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項4】
前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、請求項3に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項5】
前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
【請求項6】
前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は、5重量%以上含まれていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項7】
植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着させる結着剤とを混合する混合過程と、該混合過程により得られる混合物がシート状に形成されるように圧する加圧過程とを経てシート状体を得る植物体廃棄物製シート状体の製造方法であって、
該混合過程中にまたはその前に該搾汁残渣等が均質化処理される均質化過程が設けられている、植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項8】
前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、請求項7に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
【請求項9】
前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、請求項7または8に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項10】
前記混合過程において、前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は5重量%以上混合されることを特徴とする、請求項7ないし9のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項11】
前記加圧過程と並行して、または前記加圧過程の後に、前記混合物を加熱する加熱過程が設けられることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項12】
前記混合過程によって該搾汁残渣等と該結着剤によるペーストが得られ、前記加圧工程は該ペーストを原シート状体に形成する過程(以下、「成形過程」という。)であり、該成形過程の後に、該原シート状体を乾燥処理する乾燥過程を経てシート状体が得られることを特徴とする、請求項7に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項13】
前記成形過程は、同種または異種の2枚の成形用シートの間に前記ペーストを保持し、成形用シートの上から加圧手段によって加圧して前記原シート状体とする過程であることを特徴とする、請求項12に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項14】
前記成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙であることを特徴とする、請求項13に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項15】
前記成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、前記ペーストを直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることを特徴とする、請求項13または14に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥過程は、熱風乾燥処理を行う過程であることを特徴とする、請求項12ないし15のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項17】
前記成形過程の前に、前記ペーストを予備加熱処理する予備加熱過程を設けることを特徴とする、請求項12ないし16のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項18】
添加物として、前記色調を淡色に変化させる色調調節物質、または食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加する添加過程を含むことを特徴とする、請求項7ないし17のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項19】
前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、請求項18に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項20】
前記添加過程は前記混合過程の前に設けられ、搾汁残渣等に添加物を添加する過程であることを特徴とする、請求項18または19に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項21】
前記添加過程は、前記添加物の溶液(以下、「添加物溶液」という。)中に搾汁残渣等を浸漬する過程であることを特徴とする、請求項18または19に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項1】
植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んでなる植物体廃棄物製シート状体であって、 該搾汁残渣等は均質化処理されたものであることを特徴とする、植物体廃棄物製シート状体。
【請求項2】
前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、請求項1に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項3】
添加物として、でき上がりの色調を淡色にする色調調節物質、またはでき上がりの食感をサクサクとした食感にする物性調節物質を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項4】
前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、請求項3に記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項5】
前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
【請求項6】
前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は、5重量%以上含まれていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体。
【請求項7】
植物体からの搾汁残渣またはその他の廃棄物(以下、「搾汁残渣等」という。)と、該搾汁残渣等中の繊維同士を結着させる結着剤とを混合する混合過程と、該混合過程により得られる混合物がシート状に形成されるように圧する加圧過程とを経てシート状体を得る植物体廃棄物製シート状体の製造方法であって、
該混合過程中にまたはその前に該搾汁残渣等が均質化処理される均質化過程が設けられている、植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項8】
前記結着剤として、下記(A)〜(D)中に示すもののうち少なくともいずれか一つ用いることを特徴とする、請求項7に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
(A)ローカストビーンズガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、プロピレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)またはその他の増粘多糖類、
(B)コンニャクマンナン、アガロース、アガロペクチンまたはその他の上記(A)以外のゲル化しやすい多糖類、
(C)ムチンまたはその他の糖たんぱく質、
(D)ナガイモ、寒天またはこんにゃく(粉末状のものを含む。)
【請求項9】
前記植物体はリンゴその他の果汁を搾汁可能な果実、またはニンジンその他の野菜汁を搾汁可能な野菜であることを特徴とする、請求項7または8に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項10】
前記混合過程において、前記搾汁残渣等に対して前記結着剤は5重量%以上混合されることを特徴とする、請求項7ないし9のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項11】
前記加圧過程と並行して、または前記加圧過程の後に、前記混合物を加熱する加熱過程が設けられることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項12】
前記混合過程によって該搾汁残渣等と該結着剤によるペーストが得られ、前記加圧工程は該ペーストを原シート状体に形成する過程(以下、「成形過程」という。)であり、該成形過程の後に、該原シート状体を乾燥処理する乾燥過程を経てシート状体が得られることを特徴とする、請求項7に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項13】
前記成形過程は、同種または異種の2枚の成形用シートの間に前記ペーストを保持し、成形用シートの上から加圧手段によって加圧して前記原シート状体とする過程であることを特徴とする、請求項12に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項14】
前記成形用シートのうち少なくとも1枚は、プラスチックフィルムまたはシリコン紙であることを特徴とする、請求項13に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項15】
前記成形用シートのうちの1枚として、あるいはそれとは別に、前記ペーストを直接被覆するペースト付着防止性シートを用いることを特徴とする、請求項13または14に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥過程は、熱風乾燥処理を行う過程であることを特徴とする、請求項12ないし15のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項17】
前記成形過程の前に、前記ペーストを予備加熱処理する予備加熱過程を設けることを特徴とする、請求項12ないし16のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項18】
添加物として、前記色調を淡色に変化させる色調調節物質、または食感をサクサクとした食感に変化させる物性調節物質を添加する添加過程を含むことを特徴とする、請求項7ないし17のいずれかに記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項19】
前記添加物は、トレハロース、ビタミンCまたはその他の酸化防止剤であることを特徴とする、請求項18に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項20】
前記添加過程は前記混合過程の前に設けられ、搾汁残渣等に添加物を添加する過程であることを特徴とする、請求項18または19に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【請求項21】
前記添加過程は、前記添加物の溶液(以下、「添加物溶液」という。)中に搾汁残渣等を浸漬する過程であることを特徴とする、請求項18または19に記載の植物体廃棄物製シート状体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−30446(P2011−30446A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177130(P2009−177130)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(508098648)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(508098648)
【Fターム(参考)】
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