説明

検査装置及び検査方法

【課題】 高温検査時や低温検査時にプローブカードのプリヒート時間をなくして検査時間を短縮することができる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】 本発明の検査装置10は、温度調節可能な載置台11を昇降させる昇降駆動機構12と、昇降駆動機構12を制御する制御部と、複数のプローブ13Aを有するプローブカード13と、を備え、昇降駆動機構12は、載置台11に連結されたボール螺子14と、ボール螺子14を駆動させて載置台11を昇降させるサーボモータ15と、を有し、制御部は、サーボモータ15を位置制御する位置制御部161と、プローブカード13が温度変化により膨張、収縮する時にサーボモータ15をトルク制御するトルク制御部162と、位置制御部161とトルク制御部162を切り換える切換部163と、を有するサーボドライバ16として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関し、更に詳しくは、検査時間を短縮することができる検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検査装置は、例えば、被検査体(例えば、ウエハ)を載置し且つウエハの温度を調節する温度調節機構を内蔵する載置台と、載置台を上下方向に移動させる昇降駆動機構と、これら両者をX、Y方向に移動させるXYテーブルと、載置台の上方に配置されたプローブカードと、プローブカードの複数のプローブと載置台上の被検査体の複数の電極パッドを正確に位置合わせするアライメント機構とを備え、載置台上のウエハを温度調節機構によって所定の温度に調整し、アライメント機構を介してウエハに形成された所定のデバイスとプローブカードの複数のプローブとを電気的に接触させた後、所定のオーバードライブ量を掛けて所定のコンタクト荷重でデバイスの電気的特性検査を行うように構成されている。
【0003】
而して、検査装置は、ウエハを例えば100℃以上の高温に加熱して高温検査を行う場合や、被検査体を例えば−数10℃に冷却して低温検査する場合がある。高温検査や低温検査を行う場合には、載置台に内蔵された温度調節機構を用いて、被検査体を所定の検査温度まで加熱し、あるいは冷却し、昇降駆動機構によって載置台を位置制御しながらデバイスとプローブとを所定のコンタクト荷重で接触させてそれぞれの検査を行う。昇降駆動機構は、例えば載置台に連結されたボール螺子と、このボール螺子を回転駆動させるステッピングモータを有し、ステッピングモータによってボール螺子の回転量を制御し、もって載置台の昇降位置を高精度に制御している。
【0004】
例えばウエハの高温検査を行う場合には、載置台に内蔵された温度調節機構を用いて載置台上のウエハを例えば100℃以上に加熱する一方、アライメント機構を介して載置台上のウエハとプローブカードのプローブとのアライメントを行い、ウエハとプローブとを所定のコンタクト荷重で接触させてウエハの電気的特性を100℃の高温下で検査を行う。
【0005】
ところが、検査の初期段階では、ウエハは温度調節機構によって100℃以上の高温まで加熱されているが、プローブカードは加熱されていないため、ウエハとプローブカードとの間には大きな温度差がある。そのため、ウエハの最初のデバイスを検査する時にウエハに所定のオーバードライブを掛けて最初のデバイスとプローブとを接触させると、この間にプローブカードがウエハ側からの放熱により加熱されて徐々に熱膨張し、デバイスとプローブは予め設定された本来のコンタクト荷重以上のコンタクト荷重で接触して、デバイスあるいはプローブを損傷させる虞がある。
【0006】
そこで、高温検査を行う場合には、プローブカードをプリヒートしてプローブカードを完全に熱膨張させた後、高温検査を行うようにしている。ところが、プローブカードが大型化していることと相俟って、プリヒートには例えば20〜30分もの長時間が必要になってきている。例えば特許文献1の技術では、所定の温度に加熱されたウエハとプローブとを直接接触させ、プローブカードの間近からプローブカードをプリヒートしてプリヒート時間を短縮する技術が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−088203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術においても、依然として検査時間とは別にプリヒート時間は必要であり、検査時間の短縮には限界があった。また、被検査体のインデックス送りによりウエハがプローブカードから離れると、プローブが冷却され、プローブの針先高さが変化するため、インデックス送りの度にコンタクト荷重が変化するが、このような場合にはコンタクト荷重を調節することができない。また、ウエハの低温検査を行う場合には、逆にプローブカードをウエハの温度近くまで冷却する必要があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、高温検査時や低温検査時にプローブカードを事前に加熱または冷却することなく検査を行うことができると共に検査時間を短縮することができ、また、プローブカードや被検査体の損傷を確実に防止して信頼性の高い検査を行うことができる検査装置及び検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の検査装置は、温度調節機構を内蔵する移動可能な載置台と、上記載置台を昇降させる昇降駆動機構と、上記昇降駆動機構を制御する制御部と、上記載置台の上方に配置された複数のプローブを有するプローブカードと、を備え、上記載置台上に載置された被検査体を上記温度調節機構によって所定の温度まで加熱または冷却し、上記昇降駆動機構を介して上記被検査体に複数形成されたデバイスと上記プローブカードの複数のプローブとを所定のコンタクト荷重で接触させて上記デバイスの電気的特性検査を行う検査装置において、上記昇降駆動機構は、上記載置台に連結された昇降軸と、上記昇降軸を駆動させて上記載置台を昇降させるサーボモータと、を有し、上記制御部は、上記サーボモータを位置制御する位置制御部と、上記プローブカードが温度変化により膨張、収縮する時に上記サーボモータをトルク制御するトルク制御部と、上記位置制御部と上記トルク制御部を切り換える切換部と、を有するサーボドライバとして構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の検査装置は、請求項1に記載の発明において、上記サーボドライバは、上記検査装置を監視する上位コンピュータに接続されており、上記上位コンピュータは、上記位置制御部に位置指令信号を送信する位置指令部と、上記トルク制御部にトルク指令信号を送信するトルク指令部と、上記サーボモータのトルクに基づいて上記切換部に切換指令信号を送信する切換指令部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の検査装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記サーボドライバは、上記デバイスの電気的特性検査を行う度に、その時のコンタクト荷重をトルク値として記憶する記憶部を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の検査装置は、請求項3に記載の発明において、上記記憶部は、上記所定のコンタクト荷重の上限値及び下限値を記憶していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載の検査装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、上記トルク制御部は、上記加熱または冷却によって熱膨張する上記プローブカードに合わせて上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重を上記所定のコンタクト荷重になるように制御することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項6に記載の検査装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、上記トルク制御部は、上記コンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲を逸脱した時に、上記サーボモータを停止させることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項7に記載の検査方法は、温度調節機構を内蔵する移動可能な載置台と、上記載置台を昇降させる昇降駆動機構と、上記昇降駆動機構を制御する制御部と、上記載置台の上方に配置された複数のプローブを有するプローブカードと、を備え、上記昇降駆動機構は、上記載置台に連結された昇降軸と、上記昇降軸を駆動させて上記載置台を昇降させるサーボモータと、を有する検査装置を用いて上記被検査体の電気的特性検査を行う検査方法において、上記載置台に載置された上記被検査体を所定の温度まで加熱または冷却する第1の工程と、上記被検査体と上記プローブが接触するまで上記サーボモータを位置制御する第2の工程と、上記被検査体と上記プローブが接触した後には上記サーボモータをトルク制御にする第3の工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項8に記載の検査方法は、請求項7に記載の発明において、上記デバイスの電気的特性検査を行う度に、その時のコンタクト荷重を示すトルク値を記憶する工程を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項9に記載の検査方法は、請求項7または請求項8に記載の発明において、上記第3の工程では、上記加熱または冷却によって変形する上記プローブカードに合わせて上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重を上記所定のコンタクト荷重になるように制御することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項10に記載の検査方法は、請求項7または請求項8に記載の発明において、上記第3の工程では、上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲内に制御することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項11に記載の検査方法は、請求項7または請求項8に記載の発明において、上記第3の工程では、上記コンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲を逸脱した時に、上記サーボモータを停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温検査時や低温検査時にプローブカードを事前に加熱または冷却することなく検査を行うことができると共に検査時間を短縮することができ、また、プローブカードや被検査体の損傷を確実に防止して信頼性の高い検査を行うことができる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1〜図3に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。尚、各図中、図1は本発明の検査装置の一実施形態の要部を示す構成図、図2は図1に示す検査装置を用いる本発明の検査方法を示すフローチャート、図3の(a)、(b)はそれぞれ図2の示す検査方法を説明するための説明図である。
【0023】
まず、本実施形態の検査装置について図1を参照しながら説明する。
本実施形態の検査装置10は、例えば図1に示すように、温度調節機構を内蔵し且つ被検査体(例えば、ウエハ)Wを載置する載置台11と、載置台11を昇降させる昇降駆動機構12と、載置台11及び昇降駆動機構12が配置されたXYテーブル(図示せず)と、載置台11の上方に配置された複数のプローブ13Aを有するプローブカード13と、載置台11上のウエハWとプローブカード13のプローブ13Aとのアライメントを行うアライメント機構(図示せず)を備え、例えば高温検査時に昇降駆動機構12がプローブカード13の熱膨張に対応して載置台11の現在位置を変化させて常に予め設定された所定のコンタクト荷重を保持し、安定した検査を行えるように構成されている。
【0024】
ウエハWの高温検査を行う場合には、載置台11上のウエハWを温度調節機構によって例えば100℃以上の高温に加熱すると共に載置台11がXY方向へ移動する間にアライメント機構を介して載置台11上のウエハWとプローブ13Aをアライメントし、更にXYテーブルを介してウエハWをインデックス送りした後、昇降駆動機構12を介してウエハWに複数形成されたデバイスとプローブ13Aを所定のコンタクト荷重で電気的に接触させて所定の高温下で各デバイスの電気的特性検査を行う。
【0025】
而して、昇降駆動機構12は、図1に示すように、載置台11の下面中央に連結されて垂下するボール螺子14と、ボール螺子14を回転駆動させるエンコーダ15Aを有するサーボモータ15と、サーボモータ15を駆動制御するサーボドライバ16と、を備え、サーボドライバ16によってサーボモータ15を位置制御またはトルク制御するように構成されている。ボール螺子14にはナット部材14Aが螺合し、サーボモータ15にはプーリ15Bが取り付けられている。ナット部材14Aとプーリ15Aには伝動ベルト17が掛け回され、サーボモータ15のトルクをプーリ15A、伝動ベルト17及びナット部材14Aを介してボール螺子14に伝達し、載置台11を昇降させるようにしてある。
【0026】
このように昇降駆動機構12にサーボモータ15及びサーボドライバ16を用いることにより、プローブカード13が熱膨張した場合であっても、後述するようにサーボドライバ16は、ウエハWとプローブ13Aが接触するまではサーボモータ15を位置制御して載置台11上のウエハWとプローブ13Aが電気的に接触するように載置台11を高精度に制御し、載置台11がオーバードライブしてウエハWとプローブ13Aが電気的に接触した後にはサーボモータ15を位置制御からトルク制御に切り換えてサーボモータ15のトルクを高精度に制御してウエハWとプローブ13Aのコンタクト荷重を所定のコンタクト荷重になるように高精度に制御する。
【0027】
即ち、サーボドライバ16は、図1に示すように、上位コンピュータ20にネットワーク接続され、上記コンピュータ20からの各種の指令信号に基づいて作動する。このサーボドライバ16は、上位コンピュータ20からの指令信号に基づいてサーボモータ15を位置制御する位置制御部161と、上位コンピュータ20からの指令信号に基づいてサーボモータ15をトルク制御するトルク制御部162と、上位コンピュータ20からの指令信号に基づいて位置制御部161とトルク制御部162とを切り換える切換部163と、を備え、サーボモータ15を位置制御しあるいはトルク制御するように構成されている。
【0028】
上位コンピュータ20は、図1に示すように、位置制御部161へ指令信号Pを送信する位置指令部21と、トルク制御部161へ指令信号T1を送信するトルク指令部22と、切換部163へ指令信号Cを送信する切換指令部23と、サーボモータ15を介して載置台11を監視する監視部24と、を備え、高温検査時にプローブカード13が熱膨張しても監視部24がサーボモータ15からのフィードバック信号Fまたはトルク信号T2を介して載置台11を監視し、監視結果に基づいて位置指令信号P、トルク指令信号T1あるいは切換指令信号Cをサーボドライバ16へ送信して載置台11上のウエハWのデバイスとプローブ13Aとが所定のコンタクト荷重で接触して信頼性の高い高温検査を行えるように構成されている。また、監視部24は、検査装置10でのウエハWの全検査工程を監視し、ウエハWの各デバイスの検査を終える度に切換指令信号Cをサーボドライバ16へ送信する。また、上記コンピュータ20は、他の複数の検査装置のサーボドライバにも接続され、他の複数の検査装置も監視している。
【0029】
位置制御部161は、図1に示すように、上位コンピュータ20からの位置指令信号Pとエンコーダ15Aからのフィードバック信号Fを比較して偏差信号を送信する比較器161Aと、比較器161Aからの偏差信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換器161Bと、D/A変換器161Bからの電流を増幅する増幅器161Cと、を備え、増幅器161Cからの出力電流Iに基づいてサーボモータ15を回転駆動させる。
【0030】
トルク制御部162は、図1に示すように、上位コンピュータ20からのトルク指令信号T1とサーボモータ15からの電流値(トルク信号)T2を比較して偏差信号を送信する比較器162Aと、比較器162Aからの電流値の偏差信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換器162Bと、D/A変換器162Bからのアナログ信号を増幅する増幅器162Cと、を備え、増幅器162Cからトルク信号(電流)Tに基づいてサーボモータ15のトルクを制御する。また、トルク制御部162は、前回の高温検査時のコンタクト荷重及びこのコンタクタ荷重の許容値(上限値及び下限値)をそれぞれトルク値として記憶する記憶部162Dを備え、記憶部162Dで記憶したトルク値が次のデバイスの高温検査を行う時のコンタクト荷重として設定し、あるいは高温検査時のトルクの上下限値の許容範囲内で制御するように構成されている。そして、トルク制御部162は、高温検査時のトルク値が何等かの原因で許容範囲を逸脱した時には検査を中止できるように構成されている。
【0031】
切換部163は、図1に示すように、上位コンピュータ20からの切換指令信号Cに基づいて作動し、位置制御部161とトルク制御部162とを交互に切り換える。例えば、サーボモータ15が位置制御部161を介して載置台11を一定のトルクで上昇させて載置台11上のウエハWとプローブ13Aが接触し、引き続き載置台11がオーバードライブするとトルクが変動する。上位コンピュータ20の監視部24はトルク信号T2を監視しており、載置台11のオーバードライブによりトルク信号T2が変動すると、切換指令部23から切換部163へ切換指令信号を送信し、位置制御部161からトルク制御部162に切り換えてサーボモータ15をトルク制御する。従来であれば、プローブカード13が熱膨張し、プローブ13Aの針先がデバイス側に近づきコンタクト荷重が所定の値を超えるため、デバイスまたはプローブが損傷する虞がある。
【0032】
ところが、本実施形態ではサーボモータ15が位置制御からトルク制御に切り換わり、サーボモータ15を僅かに逆回転させてトルクを僅かに小さくして予め設定された所定のコンタクト荷重に即したトルク値になるようにトルクを制御する。所定のコンタクト荷重で高温検査を終えると、上位コンピュータ20は、検査装置10からの信号に基づいてウエハWのインデックス送り後に切換指令信号Cをサーボドライバ16へ送信し、トルク制御から位置制御へ切り換え、次のデバイスの高温検査を行う。
【0033】
次に、図1〜図3を参照しながら本実施形態の検査装置10を用いた検査方法について説明する。
【0034】
従来と同様に載置台11にウエハWが載置されると、載置台11上のウエハWは温度調節機構を介して100℃以上の所定の高温に加熱される。この間、載置台11がX、Y方向へ移動し、アライメント機構を介してウエハWとプローブカード13のプローブ13Aのアライメントを実行する。アライメント終了後、載置台11がX、Y方向へ移動すると、最初に検査すべきデバイスがプローブ13Aの真下に到達する。
【0035】
ウエハWの最初のデバイスがプローブ13Aの真下に到達すると、上位コンピュータ20からサーボドラバ16の位置制御部161へ指令信号Pを送信し、図2に示すようにサーボドライバ16がサーボモータ15の位置制御を開始する(ステップS1)。位置制御部161では、比較器161Aが上位コンピュータ20から位置指令信号Pを受信すると共にサーボモータ15のエンコーダ15Aからフィードバック信号Fを受信し、両信号の偏差信号をD/A変換器161Bへ送信する。D/A変換器161Bは、偏差信号をアナログ信号に変換して増幅器161Cへ送信する。増幅器161CはD/A変換器161Bから受信した電流を増幅し、増幅電流をサーボモータ15へ印加し、載置台11を上昇させる。載置台11が上昇し、ウエハWがプローブカード13に接近すると、プローブカード13は載置台11からの放射熱で徐々に昇温して熱膨張し始める。載置台11がオーバードライブしてウエハWとプローブ13Aが電気的に導通可能な状態で接触する(ステップS2)。
【0036】
プローブ13AとウエハWとの接触によりプローブ13AがウエハWによって直接加熱されると共にプローブカード13も載置台11からの放熱により徐々に加熱されてプローブカード13全体が熱膨張し、図3の(a)に一点差線で示すようにデバイスDの電極パッドDpとプローブ13Aの電気的な接触高さが本来の接触高さより低くなっているため、同図に実線で示す位置までプローブ13Aを押し上げ、所定のコンタクト荷重を超えたコンタクト荷重でデバイスDpとプローブ13A接触する。
【0037】
そこで、本実施形態では、図2に示すように上位コンピュータ20がサーボモータ15においてオーバードライブにより発生するトルクをモニタリングし(ステップS3)、図1に示すようにサーボモータ15の現在のトルク信号T2をサーボドライバ16の記憶部162Dへ設定する(ステップS4)。これと同時に、上位コンピュータ20が切換指令信号Cをサーボドライバ16の切換部163へ送信し、切換部163を介して位置制御部161からトルク制御部162に切り換えてトルク制御を行う(ステップS5)。
【0038】
サーボドライバ16では比較器162Aがモータドライブ15からの現在のトルク信号T2と記憶部162Dからのトルク信号を比較し(ステップS6)、これら両者間に差があってトルクが変動するとその偏差信号を増幅器162Cへ送信し、サーボモータ15をトルク制御し、設定された所定のトルクになるようにサーボモータ15のトルクを減少させるようにボール螺子14を逆方向に回転させ、図3の(b)に一点差線で示す位置から実線で示す位置まで下降させ(ステップS7)、所定のコンタクト荷重でデバイスDの高温検査を実行する。この時のサーボモータ15のトルク値を記憶部162Dに登録し記憶させておき、登録されたトルク値を2回目のデバイスの検査時に使用する。
【0039】
この間も上位コンピュータ20はトルク変動を監視しており、トルク変動による載置台11の位置が調整されると、サーボドライバ16へ切換指令信号Cを送信する。サーボドライバ16では図2に示すように切換部163を介して位置制御部162に切り換え(ステップS8)、サーボモータ15を位置制御して載置台11を下降端へ戻した後、ウエハWをインデックス送りして次のデバイスDをプローブ13Aの真下へ移動させる(ステップS9)。そして、この位置でサーボモータ15を位置制御しながらデバイスDとプローブ13Aを接触させるステップS1へ戻る。
【0040】
二回目のデバイスDの高温検査を行う場合にもステップ1〜ステップ5を繰り返す。そして、現在のトルク値は、比較器162Aによって前回に登録されたトルク値と比較され、前回の登録トルク値を基準にサーボモータ15をトルク制御してデバイスDの高温検査を実行する。
【0041】
検査を繰り返す間にプローブカード13の熱膨張がなくなると、サーボドライバ16がトルク制御に切り換わり、デバイスDのチップDpとプローブ13Aとが接触してもサーボモータ15のトルクが変動しなくなる。そのため、図2に示すステップS6からステップ10へ移行し、載置台11の現在位置を保持したままデバイスDの高温検査を実行する。この検査ではウエハWのインデックス送りの間、ウエハWがプローブ13Aから切り離されるため、プローブカード13が一時的に放熱し、プローブカード13が若干冷却されるが検査には殆ど影響しない。影響するとしてもサーボドライバ16のトルク制御により、常にサーボモータ15のトルクを制御し、常に所定のコンタクト荷重でウエハWの高温検査を実行することができる。
【0042】
以上説明したように本実施形態によれば、載置台11の昇降駆動機構12としてサーボモータ15を使用し、サーボドライバ16によってサーボモータ15をトルク制御するようしたため、ウエハWの高温検査を行う時にプローブカード13をプリヒートすることなく直ぐに高温検査を実行することができ、プリヒート時間(20〜30分)を削減して検査時間を格段に短縮することができ、また、プローブカード13やウエハWの損傷を確実に防止して信頼性の高い検査を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、 サーボドライバ16は検査装置10を監視する上位コンピュータ20に接続されており、上位コンピュータ20は、位置制御部161に位置指令信号Pを送信する位置指令部21と、トルク制御部162にトルク指令信号T1を送信するトルク指令部22と、サーボモータ15のトルクに基づいて切換部163に切換指令信号Cを送信する切換指令部23と、を備えているため、昇降駆動機構12の作動状態を常に監視し、載置台11上のウエハWとプローブ13Aとを常に所定のコンタクト荷重で信頼性の高い高温検査を実行することができる。
【0044】
また、サーボドライバ16は、デバイスDの高温検査を行う度に、その時のコンタクト荷重を示すトルク値として記憶する記憶部162Dを有するため、プローブカード13の膨張に即して所定のコンタクト荷重を設定することができる。更に、記憶部162Dは、所定のコンタクト荷重の上限値及び下限値を記憶しているため、所定のコンタクト荷重を超えてデバイスDとプローブ13Aが接触することがなく、デバイスD及びプローブカード13の損傷を確実に防止することができる。また、トルク制御部162は、加熱によって変化するプローブカード13に合わせてデバイスDとプローブ13Aのコンタクト荷重を所定のコンタクト荷重に制御するようにしたため、プローブカード13が熱膨張しても常に一定のコンタクト荷重で検査することができる。
【0045】
尚、本発明は上記実施形態に何等制限されるものではなく、本発明の構成要素を適宜設計変更することができる。例えば、サーボモータとボール螺子を伝動ベルトによって連結したものについて説明したが、ボール螺子にサーボモータを直に連結することもできる。また、上記実施形態ではウエハWの高温検査を例に挙げて説明したが、ウエハの低温検査においても同様に行うことができる。また、被検査体としてウエハを例に挙げて説明したが、液晶表示体用のガラス基板の検査にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、半導体ウエハ等の被検査体の電気的特性検査を行う検査装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の検査装置の一実施形態の要部を説明するための説明図である。
【図2】図1に示す検査装置を用いる本発明の検査方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ図2の示す検査方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 検査装置
11 載置台
12 昇降駆動機構
13 プローブカード
13A プローブ
14 ボール螺子(駆動軸)
15 サーボモータ
16 サーボドライバ
20 上位コンピュータ
21 位置指令部
22 トルク指令部
23 切換指令部
161 位置制御部
162 トルク制御部
163 切換部
W ウエハ(被検査体)
D デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節機構を内蔵する移動可能な載置台と、上記載置台を昇降させる昇降駆動機構と、上記昇降駆動機構を制御する制御部と、上記載置台の上方に配置された複数のプローブを有するプローブカードと、を備え、上記載置台上に載置された被検査体を上記温度調節機構によって所定の温度まで加熱または冷却し、上記昇降駆動機構を介して上記被検査体に複数形成されたデバイスと上記プローブカードの複数のプローブとを所定のコンタクト荷重で接触させて上記デバイスの電気的特性検査を行う検査装置において、
上記昇降駆動機構は、上記載置台に連結された昇降軸と、上記昇降軸を駆動させて上記載置台を昇降させるサーボモータと、を有し、
上記制御部は、上記サーボモータを位置制御する位置制御部と、上記プローブカードが温度変化により膨張、収縮する時に上記サーボモータをトルク制御するトルク制御部と、上記位置制御部と上記トルク制御部を切り換える切換部と、を有するサーボドライバとして構成されている
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
上記サーボドライバは、上記検査装置を監視する上位コンピュータに接続されており、
上記上位コンピュータは、上記位置制御部に位置指令信号を送信する位置指令部と、上記トルク制御部にトルク指令信号を送信するトルク指令部と、上記サーボモータのトルクに基づいて上記切換部に切換指令信号を送信する切換指令部と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
上記サーボドライバは、上記デバイスの電気的特性検査を行う度に、その時のコンタクト荷重をトルク値として記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
上記記憶部は、上記所定のコンタクト荷重の上限値及び下限値を記憶していることを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
上記トルク制御部は、上記加熱または冷却によって熱膨張する上記プローブカードに合わせて上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重を上記所定のコンタクト荷重になるように制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
上記トルク制御部は、上記コンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲を逸脱した時に、上記サーボモータを停止させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
温度調節機構を内蔵する移動可能な載置台と、上記載置台を昇降させる昇降駆動機構と、上記昇降駆動機構を制御する制御部と、上記載置台の上方に配置された複数のプローブを有するプローブカードと、を備え、上記昇降駆動機構は、上記載置台に連結された昇降軸と、上記昇降軸を駆動させて上記載置台を昇降させるサーボモータと、を有する検査装置を用いて上記被検査体の電気的特性検査を行う検査方法において、
上記載置台に載置された上記被検査体を所定の温度まで加熱または冷却する第1の工程と、
上記被検査体と上記プローブが接触するまで上記サーボモータを位置制御する第2の工程と、
上記被検査体と上記プローブが接触した後には上記サーボモータをトルク制御にする第3の工程と、を備えた
ことを特徴とする検査方法。
【請求項8】
上記デバイスの電気的特性検査を行う度に、その時のコンタクト荷重を示すトルク値を記憶する工程を備えたことを特徴とする請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
上記第3の工程では、上記加熱または冷却によって変形する上記プローブカードに合わせて上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重を上記所定のコンタクト荷重になるように制御することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の検査方法。
【請求項10】
上記第3の工程では、上記デバイスと上記プローブのコンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲内に制御することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の検査装置。
【請求項11】
上記第3の工程では、上記コンタクト荷重が上記上限値と上記下限値の範囲を逸脱した時に、上記サーボモータを停止させることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58448(P2009−58448A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227182(P2007−227182)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】