検査装置
【課題】検被検査体の立体的な情報を用いて検査する放射線検査装置を提供する。
【解決手段】輪郭抽出部42は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する。法線ベクトル取得部48は、はんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める。はんだ重心取得部44は、はんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得する。接合状態検査部50は、前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する。
【解決手段】輪郭抽出部42は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する。法線ベクトル取得部48は、はんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める。はんだ重心取得部44は、はんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得する。接合状態検査部50は、前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検査体の検査装置に関し、特に放射線を照射することにより得られる被検査体の透過画像を利用して被検査体を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された基板(以下「基板」という。)には、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land Grid Array)が実装されているものがある。これらの基板では、部品の電気接続部である端子は基板と部品との間に位置し、カメラを用いた従来の外観検査装置では部品と基板とを接合するはんだの状態を観察することが困難である。このため、基板に複数の異なる方向からX線を照射し、その透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を画像に再構成し、そこから任意断面を切り出した断面画像を用いて検査する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−226875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の技術によれば、接合部分のはんだの立体形状が複数の断層画像として得られるが、基板とはんだとの接合状態の判断には2次元の断面画像を用いて行われる。そのため、はんだの立体形状を直接用いることにより、さらなる検査精度向上の余地があると考えられる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、検被検査体の立体的な情報を用いて検査することができる放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は検査装置に関する。この装置は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得するはんだ重心取得部と、前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する接合状態検査部とを含む。
【0007】
本発明の別の態様も検査装置に関する。この装置は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部と、前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、前記ポリゴン生成部がモデル化した複数のポリゴンと前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する接合状態検査部とを含む。前記接合状態検査部は、前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルをもとにはんだ表面の表面張力の力学モデルを生成する表面張力モデル生成部と、前記表面張力モデル生成部が生成した力学モデルをもとにはんだの内圧と表面張力とが釣り合って安定するはんだの3次元形状を取得する安定形状取得部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較することで基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する比較部を含む。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検被検査体の立体的な情報を用いて検査することができる放射線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線検査装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】実施の形態1に係るPCが処理する検査に関する各機能を模式的に示した図である。
【図3】実施の形態1に係る検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図4】はんだ輪郭抽出部が抽出したはんだ領域を、基板に対して垂直な平面で切断したときの切断面を模式的に示した図である。図4(a)は、はんだの接合状態が良好な場合の切断面を模式的に示した図である。図4(b)は、はんだの接合状態が不良の場あの切断面を模式的に示した図である。
【図5】ポリゴン生成部が生成したはんだ表面のポリゴンと、そのポリゴンの法線ベクトルとを模式的に示した図である。
【図6】はんだの重心とはんだ表面の法線ベクトルとの関係を示した図である。図6(a)は、はんだの接合状態が良好の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(b)は、はんだの接合状態が不良の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。
【図7】実施の形態1に係るPCにおけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】実施の形態1に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図9】実施の形態1に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図11】実施の形態2に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図12】法線ベクトルとその差分ベクトルとの関係を模式的に示した図である。
【図13】輪郭点の更新時に輪郭点に働く力を説明するための図である。
【図14】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの前半部分である。
【図15】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの中盤部分である。
【図16】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分である。
【図17】実施の形態3に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図18】実施の形態3に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の概要を述べる。基板と基板に実装された部品とを接合するはんだは、通常熱処理によって溶融した後固まることで結合する。このため、はんだの接合状態がよい場合、すなわちはんだが十分に溶融した場合ははんだの表面張力によってはんだの形状は球形または樽型となる。このような場合、はんだ表面の法線ベクトルははんだの重心を向く。そこで、実施の形態1は、基板と基板に実装された部品とを接合するはんだの表面を3次元的な形状を抽出し、はんだ表面の法線ベクトルがはんだの重心を向く割合の高低により、はんだ接合状態の良否を判断する。
【0012】
図1は実施の形態1に係る放射線検査装置100を模式的に表した図である。放射線検査装置100は、PC(Personal Computer)10、モニタ12、および撮像部32を含む。撮像部32はさらに、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、および検出器26を含む。
【0013】
放射線発生器22はX線等の放射線を発生させる部分であり、これは例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生する。
【0014】
基板保持部24は被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」という。
【0015】
透過画像はPC10に送られ、例えばフィルタ補正逆投影法(Filtered−Backprojection法、FBP法)等の既知の技術を用いて、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。再構成された画像や透過画像は、PC10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」という。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「断面画像」という。再構成画像および断面画像はモニタ12に出力される。なお、モニタ12は再構成画像や断面画像のみならず、後述するはんだの接合状態の検査結果等も表示する。
【0016】
線質変更部14は放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」という)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」という)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する部分である。これは変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0017】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えばコンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くするとターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストは低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。
【0018】
放射線発生器駆動部16は図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸に沿って上下に移動することができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査対象との距離を変えて照射野を変更し、検出器26に撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。
【0019】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動する。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が張る平面上を、基板保持部24を平行移動させる。基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら透過画像を撮像することが可能となる。
【0020】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を変更することが可能となる。
【0021】
PC10は、上記の放射線検査装置100の全動作を制御する。なお、図示されていないが、PC10にはキーボードやマウス等の入力装置が接続されている。
【0022】
図2は、実施の形態1に係るPC10が処理する各機能ブロックを図示したものである。PC10は、記録部34、断面画像生成部36、基板表面検出部38、および検査部40を含む。なお、図示はしないが、PC10は線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、および検出器駆動部20を制御する撮像制御部も含む。
【0023】
記録部34は、基板の透過画像や再構成断面画像、および後述する検査部40の検査結果等を記憶する。
【0024】
断面画像生成部36は、記録部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。これは、例えばFBP法や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質のよさを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。生成した断面画像は記録部34に出力し、記録部34に記録される。
【0025】
基板表面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板の表面を映し出している断面画像を特定する。具体的には、基板表面検出部38は、断面画像に映し出されている基板表面に存在するスルーホールをエッジ強度の検出等の画像処理により検出し、当該スルーホールが最も鮮明に映し出されている断面画像を基板の表面とする。エッジ強度の計算には、例えばラプラシアンフィルタ等既知のエッジ抽出フィルタの出力値を利用すればよい。以後、基板の表面を映し出している断面画像を「表面画像」という。
【0026】
検査部40は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像をもとに、はんだの接合状態を検査する。ここで、「はんだの接合状態」とは、基板と部品とがはんだにより接合し、適切な導電経路が生成されているか否かのことをいう。なお、検査部40における検査結果は記録部34に記録される。
【0027】
以上の各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0028】
図3は実施の形態1に係る検査部40の内部構造を模式的に示した図である。検査部40は、輪郭抽出部42、はんだ重心取得部44、ポリゴン生成部46、法線ベクトル取得部48、および接合状態検査部50を含む。
【0029】
輪郭抽出部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像を画像解析し、はんだ表面の3次元的な輪郭形状を抽出する。具体的には、表面画像からはじめて順番に各断面画像のはんだの輪郭を追跡する。はんだは放射線の吸収率が高いため、断面画像におけるはんだ領域と他の領域とでは画素値に差がある。そこで断面画像を2値化しその境界領域を輪郭とする。この際、断面画像をサブピクセル単位で2値化すると輪郭抽出の精度が上がる点で有利である。具体的には、断面画像上に設定されたXY直交座標系における輪郭上のある輪郭点pi(i=1,・・・,PN;PNは輪郭点piの総数)において、piをX軸に並行な方向からサブピクセルで2値化した境界点をpixとし、Y軸に平行な方向からサブピクセルで2値化した境界点をpiyとしたときに、pixとpiyとの中点をp’iとする。
【0030】
図4は、はんだ輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域を、基板に対して垂直な平面で切断したときの切断面を模式的に示した図である。図4(a)は、はんだの接合状態が良好な場合の切断面を模式的に示した図である。図4(b)は、はんだの接合状態が不良の場あの切断面を模式的に示した図である。
【0031】
図4において、はんだは基板表面52上に存在するパッド56と、部品54の基板側に存在するパッド58との間を接合する。通常はんだは熱処理によって溶融した後固まることで基板と部品とを接合する。このため、図4(a)に示すように、はんだの接合状態がよい場合、すなわちはんだが十分に溶融した場合ははんだの表面張力によってはんだの形状は球形または樽型となる。一方、はんだが充分に溶融せずに固まった場合、図4(b)に示すように、その3次元的な形状は凹凸のある形状となる。
【0032】
はんだ重心取得部44は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得する。具体的には、はんだの輪郭点piの座標の平均値を求めることにより重心の位置ベクトルwを取得する。あるいは、輪郭点piの座標について、その点における輝度値の重み付き平均を求めてもよい。
【0033】
ポリゴン生成部46は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状を、複数の3角形のポリゴンでモデル化する。法線ベクトル取得部48は、ポリゴン生成部46がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める。
【0034】
図5は、ポリゴン生成部46が生成したはんだ表面のポリゴンと、そのポリゴンの法線ベクトルとを模式的に示した図である。はんだ表面には輪郭点60と総称される輪郭点piが配置されている。ポリゴン生成部46は、ある断面画像上に存在する輪郭点60aを選択し、その断面画像よりもひとつ表面画像側に位置する断面画像上に存在する輪郭点のうち輪郭点60aに最も距離の近い輪郭点60bおよび輪郭点60eを選択する。ポリゴン生成部46は、輪郭点60a、輪郭点60b、および輪郭点60eを頂点とする3角形を特定し、これをポリゴンとする。すべての輪郭点60について同様に3頂点を特定することにより、ポリゴン生成部46ははんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化する。
【0035】
法線ベクトル取得部48は、3角形のポリゴンの任意の2辺と平行なベクトルからその法線ベクトルni(i=1、・・・、M;Mはポリゴンの総数)を求める。例えば、輪郭点60aを始点とし、輪郭点60bを終点とするベクトルをベクトルx、輪郭点60aを始点とし、輪郭点60bを終点とするベクトルをベクトルy、輪郭点60a、輪郭点60b、および輪郭点60eを頂点とする3角形の法線ベクトル(符号62と総称される)をベクトルnとすると、ベクトルnはベクトルaおよびベクトルbを用いて以下の式で表される。
【数1】
ただし、はんだの中心に向かう方向を正の向きとする。また、「×」はベクトルの外積を表す。このように、はんだ表面をポリゴンでモデル化することにより、簡便な計算式で法線ベクトルを求めることが可能となる点で有利である。
【0036】
図6は、はんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(a)は、はんだの接合状態が良好の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(b)は、はんだの接合状態が不良の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。
【0037】
図4にて説明したように、はんだの接合状態が良好の場合、はんだの形状は球形または樽型となる。一方、はんだの接合状態が不良の場合、その3次元的な形状は凹凸のある形状となる。そのため、はんだの接合状態が良好の場合はんだの接合状態が不良の場合と比較して、はんだ表面の法線ベクトル62が重心64を向く割合が大きい。はんだの接合状態が良好の場合、図6(a)に示すようにはんだの法線ベクトル62eははんだの重心64を向く。一方、はんだの接合状態が不良の場合、図6(b)に示すように一部の法線ベクトル62eははんだの重心64を向いているが、法線ベクトル62fははんだの重心64を向かない。
【0038】
そこで、接合状態検査部50は、法線ベクトル取得部48が取得した法線ベクトル62のうち、はんだ重心取得部44が取得した重心の位置ベクトルwを向く法線ベクトル62の割合を取得し、その割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する。
【0039】
図7は、実施の形態1に係るPC10におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、PC10が撮像部32内の検出器26から透過画像を取得したときに開始する。
【0040】
断面画像生成部36は、記録部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。(S10)。基板表面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板の表面を映し出している断面画像を特定する(S12)。輪郭抽出部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像を画像解析し、はんだ表面の3次元的な輪郭形状を抽出する(S14)。ポリゴン生成部46は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状をモデル化する複数の3角形のポリゴンを生成する(S16)。接合状態検査部50は、法線ベクトル取得部48が取得した法線ベクトル62のうち、はんだ重心取得部44が取得した重心の位置ベクトルwを向く法線ベクトル62の割合をもとにはんだの接合状態を検査する(S18)。
【0041】
接合状態検査部50がはんだの接合状態の検査を終了すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0042】
図8は、実施の形態1に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、計数部66、比較部68、および閾値記録部70を含む。
【0043】
計数部66は、法線ベクトル取得部48からM個の法線ベクトルni(i=1、・・・、M)を取得し、はんだ重心取得部44からはんだの重心の位置ベクトルwを取得する。計数部66は、取得したM個の法線ベクトルniのうち、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントする。
【0044】
比較部68は、計数部66がカウントしたはんだの重心を向いている法線ベクトルの数を法線ベクトルの総数であるMで割った値rを計算する。比較部68は、閾値記録部70に記録されている定数Rとrとを比較し、r>Rの場合はんだの接合状態は良好であると判断し、r≦Rの場合はんだの接合状態は不良であると判断する。ここで定数Rは、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた割合であり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。定数Rは部品やはんだの種類によって異なる場合もあるが、たとえば0.9である。
【0045】
図9は、実施の形態1に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートであり、図7におけるステップS18を詳細に説明するものである。
【0046】
計数部66は、法線ベクトル取得部48からM個の法線ベクトルni(i=1、・・・、M)を取得する(S20)。計数部66はまた、はんだ重心取得部44からはんだの重心の位置ベクトルwを取得する(S22)。計数部66は、図示しないワークメモリ内にループ変数i、カウンタとして用いる変数count、およびポリゴンの総数Mを格納する変数を確保し、それぞれ1、0、Mで初期化する(S24)。
【0047】
計数部66は、i番目のベクトルniがはんだの重心を向いているかどうかを調べ、はんだの重心を向いている場合(S26Y)、変数countの値をcount+1とする(S28)。その後ループ変数iをi+1で更新する(S30)。i番目のベクトルniがはんだの重心を向いている場合(S26N)、計数部66は変数countの値を更新せずにループ変数iを更新する(S30)。ループ変数iが法線ベクトルの総数M以下の間(S32Y)、計数部66は、上述のはんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントするステップ(ステップS26からステップS30)を繰り返す。ループ変数iが法線ベクトルの総数Mより大きくなった場合(S32N)、計数部66はんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントするステップを終了する。
【0048】
比較部68は、計数部66がカウントした変数countを法線ベクトルの総数Mで除算し、その値rと閾値記録部70から取得した定数Rとの大小関係を調べる。r>Rの場合(S34Y)、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数が所定の数を超えているためはんだの接合状態は良好と判断する(S36)。r≦Rの場合(S34N)、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数が所定の数以下のためはんだの接合状態は不良と判断する(S38)。比較部68がはんだの接合状態を判断すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0049】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザは基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40がはんだの重心を向くはんだ表面の法線ベクトルの割合を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0050】
以上のように、実施の形態1によれば、はんだの重心とはんだ表面の法線ベクトルとの関係をもとに、はんだの3次元的な形状を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態2の概要を述べる。実施の形態2は、はんだが十分に溶融している状態を仮定してはんだ表面に働く表面張力の力学モデルを生成し、はんだ表面の表面張力とはんだの内圧とが釣り合うはんだの形状を安定形状として求める。この安定形状と、実際に計測されたはんだの形状との相違領域を求め、その大小によりはんだの接合状態の良否を判断する。実施の形態2においては、実施の形態1と検査部40の内部構造およびその動作が相違する。そのため、実施の形態2に係るPC10におけるはんだの接合状態を検査する処理は、図7に示した実施の形態1に係るフローチャートと同様である。以下、実施の形態1と重複する部分は適宜省略する。
【0052】
図10は、実施の形態2に係る検査部40の内部構造を模式的に示した図である。検査部40は、輪郭抽出部42、ポリゴン生成部46、法線ベクトル取得部48、および接合状態検査部50を含む。
【0053】
ここで、輪郭抽出部42、ポリゴン生成部46、および法線ベクトル取得部48は実施の形態1と同様である。接合状態検査部50は、ポリゴン生成部46がモデル化した複数のポリゴンと法線ベクトル取得部48が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する。
【0054】
図11は、実施の形態2に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74、および比較部68を含む。
【0055】
表面張力モデル生成部72は、法線ベクトル取得部48から取得した法線ベクトルの差分ベクトルをもとに表面張力Fjm(j=1,・・・,M;m=1,2,3)を取得する。図12は、法線ベクトル62とその差分ベクトル(符号76と総称される)との関係を模式的に示した図である。
【0056】
図12において、法線ベクトル62aを法線ベクトルとするポリゴンは、3つのポリゴンと隣接する。その3つのポリゴンの法線ベクトル62はそれぞれ法線ベクトル62b、法線ベクトル62c、および法線ベクトル62dである。表面張力モデル生成部72は、まず法線ベクトル62aと、3つの法線ベクトル(符号62b、62c、62d)との差分を計算する。具体的には、法線ベクトル62aと法線ベクトル62bとの差分を差分ベクトルdNj1(符号76a))とする。同様に、法線ベクトル62aと法線ベクトル62cとの差分を差分ベクトルdNj2(符号76b))とし、法線ベクトル62aと法線ベクトル62dとの差分を差分ベクトルdNj3(符号76c))とする。以後、差分ベクトルを符号76で総称する。
【0057】
表面張力モデル生成部72は、求めた差分ベクトル76をもとに、法線ベクトル62aを法線ベクトルとするポリゴンに働く表面張力Fjmを次式に基づいて求める。
Fjm=dNjm×K (m=1,2,3)
ここで、Kははんだの表面張力係数である。このように、差分ベクトル76に係数を乗じた値を表面張力とおくことにより、簡便な計算で表面張力を求められる点で有利である。
【0058】
安定形状取得部74は、表面張力モデル生成部72が求めた表面張力をもとに、表面張力によって生じる圧力Pstj(j=1,・・・,M)を次式に基づいて求める。
【数2】
ここで、rmは、差分ベクトルdNjmに対応する、ポリゴンに内接する球の半径である。
【0059】
安定形状取得部74は、圧力Pstjをもとにはんだの内圧Pinを次式に基づいて求める。
【数3】
ここで、Sjはj番目のポリゴンの面積である。
【0060】
安定形状取得部74は、はんだの内圧Pinをもとに、各ポリゴンに働くFjを次式に基づいて求める。
Fj=(Pin+Pcalib)×Sj−Pstj×Sj
Pcalibについては後述する。
【0061】
安定形状取得部74は、各ポリゴンに働く力Fjをもとに、微小時間Δt後の輪郭点60の位置を更新することにより、各ポリゴンの位置を求める。具体的には、ある輪郭点60の位置座標をPi、更新後の位置座標をP’iとするとP’iを次式に基づいて定める。なお、パッド56等に隣接している輪郭点60は更新されないものとする。
【数4】
ここで、KΔtは輪郭点60の移動量係数であり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。また、Aiについては図を用いて説明する。
【0062】
図13は、輪郭点60の更新時に輪郭点に働く力を説明するための図である。はんだの表面はポリゴン生成部46によって3角形のポリゴンでモデル化されている。いま、ある輪郭点60gに注目したとき、輪郭点60gの周囲には6つのポリゴンが存在する。輪郭点60gの位置座標をPiとしたとき、Aiは輪郭点60gの周囲に存在する6つのポリゴンの集合を表す。すなわち、上式は、集合Aiに属する6つのポリゴンに働く力の合力に、輪郭点60の移動量係数KΔtを乗じた値が、微小時間Δtにおける位置座標をPiの更新量となることを表している。
【0063】
さて、各輪郭点60の位置座標を更新することにより、各ポリゴンの位置が変動する。このとき、j番目のポリゴンの移動量をrjとすると、そのポリゴンが移動した部分の体積Δvjは、Δvj=rj×sjとなる。ポリゴン全体で移動した部分の体積ΔVは次式で求められる。
【数5】
【0064】
前述のPcalibは、体積ΔVを用いて次式で定義される。
Pcalib=−ΔV×Kv
ここで、Kvは体積制御パラメータであり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。Pcalibは、体積の変動量ΔVを打ち消すように働く体積の制御項である。
【0065】
なお、各ポリゴンに働く力Fjを求める際には、ひとつ前の更新の計算時に求めた体積ΔVを用いればよい。
【0066】
安定形状取得部74は、微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを次式に基づいて求める。
【数6】
【0067】
安定形状取得部74は、ΔJが予め定められた閾値である微少量Jth以上の場合、表面張力モデル生成部72に制御を戻し、表面張力モデル生成部72は法線ベクトル62の取得からはじめで再度上述の演算を実行する。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jthより小さい場合、ポリゴンの移動更新を終了し、最終的なはんだ表面の形状を安定形状として比較部68に出力する。
【0068】
比較部68は、安定形状取得部74から取得した安定形状と、実際に計測されたはんだ表面とを比較しその相違領域を求め、相違領域の全体に対する割合を計算する。具体的には、相違領域は安定形状と実際に計測されたはんだ表面との相違部分の体積として求め、はんだの全体積に対する相違領域の体積の割合を求める。あるいは、相違領域を安定形状と実際に計測されたはんだ表面との相違部分の表面積として求め、実際に計測されたはんだ表面の全表面積に対する相違領域の表面積の割合を求めてもよい。その後比較部68は、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合Rを閾値記録部70から取得し、相違領域が所定の割合Rを超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定する。
【0069】
なお、実際に計測されたはんだ表面としては、輪郭抽出部42の抽出結果をもとにポリゴン生成部46が最初に生成したポリゴンを用いればよい。
【0070】
図14は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの前半部分であり、図7におけるステップS18の前半部分を詳細に説明するものである。
【0071】
表面張力モデル生成部72は、図示しないワークメモリ内にループ変数jを確保して1に初期化する(S40)。表面張力モデル生成部72はj番目のポリゴンの法線ベクトルnjを取得する(S42)。表面張力モデル生成部72は図示しないワークメモリ内にループ変数mを確保して1に初期化する(S44)。表面張力モデル生成部72はj番目のポリゴンの法線ベクトルnjに関するm個目の差分ベクトルdNjmを取得し(S46)、それをもとに表面張力Fjmを求める(S48)。表面張力モデル生成部72は、ループ変数mをm+1に更新し(S50)、mが3以下の場合(S52Y)、差分ベクトルdNjmを取得および表面張力Fjmの取得ステップを繰り返す。mが3より大きくなると(S52N)、表面張力モデル生成部72は、求めた3つの表面張力Fjmを安定形状取得部74に出力する。
【0072】
安定形状取得部74は、表面張力モデル生成部72が求めた表面張力Fjmをもとに、表面張力によって生じる圧力Pstjを求める(S54)。安定形状取得部74は、るーぷ変数jをj+1で更新し(S56)、jがポリゴンの総数M以下の場合(S58Y)、表面張力モデル生成部72の制御であるステップS42に戻る。jがポリゴンの総数Mより大きくなった場合(S58N)、安定形状取得部74は、表面張力によって生じる圧力Pinを取得する(S60)。
【0073】
図15は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの中盤部分であり、図7におけるステップS18の中盤部分を詳細に説明するものである。
【0074】
安定形状取得部74は、ループ変数jを1に初期化し(S62)、はんだの内圧Pinをもとに、ポリゴンに働くFjを求める(S64)。安定形状取得部74はループ変数jをj+1に更新し(S66)、jがポリゴンの総数M以下の間(S68Y)、ポリゴンに働くFjを求める処理を継続する。jがポリゴンの総数Mよりも大きくなった場合(S68N)、ループ変数iを確保して1に初期化する(S70)。
【0075】
安定形状取得部74は、i番目のポリゴンに働く力Fiをもとに、微小時間Δt後の輪郭点60の位置を更新する(S72)。安定形状取得部74はループ変数iをi+1に更新し(S74)、iが輪郭点60の総数PN以下の間(S76Y)、輪郭点60の位置を更新する処理を継続する。iが輪郭点60の総数PNよりも大きくなった場合(S76N)、安定形状取得部74は微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを求める(S78)。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jthより小さい場合(S80Y)、最終的なはんだ表面の形状を安定形状として比較部68に出力する。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jth以上の場合(S80N)、ステップS40に戻る。
【0076】
図16は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分であり、図7におけるステップS18の後半部分を詳細に説明するものである。
【0077】
比較部68は、安定形状取得部74から取得した安定形状と、実際に計測されたはんだ表面との相違領域の全体に対する割合を計算するため、両者の比較を行う(S82)。比較部68は、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合Rを閾値記録部70から取得し、相違領域が所定の割合Rを超える場合(S84N)、はんだの接合状態が不良と判定し(S88)、そうでない場合(S84Y)、良好と判定する(S86)。
【0078】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザは基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40が、はんだの安定形状と実際に計測されたはんだの形状との相違を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0079】
以上のように、実施の形態2によれば、はんだの安定形状と実際に計測されたはんだの形状との相違をもとに、はんだの3次元的な形状を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0080】
(実施の形態3)
実施の形態3の概要を述べる。実施の形態3は、はんだが十分に溶融している状態を仮定してはんだ表面に働く表面張力の力学モデルを生成し、はんだ表面の表面張力とはんだの内圧とが釣り合うはんだの形状を安定形状として求める。この安定形状に至るまでの間に、はんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量を表面張力の力学モデルをもとに取得し、その大小によりはんだの接合状態の良否を判断する。実施の形態3においては、実施の形態2と接合状態検査部50の内部構造およびその後半部分の動作が相違する。以下、実施の形態1または実施の形態2と重複する部分は適宜省略する。
【0081】
図17は、実施の形態3に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74、仕事量取得部78、比較部68、および閾値記録部70を含む。このうち、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74は実施の形態2に係る表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74と同様である。
【0082】
仕事量取得部78は、安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量Jを次式に基づいて求める。
【数7】
【0083】
比較部68は、仕事量取得部78から仕事の総量Jを取得し、Jと基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量JTとの大小関係を比較する。Jが所定の仕事量JTを超える場合、はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定する。
【0084】
図18は、実施の形態3に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分であり、図7におけるステップS18の後半部分を詳細に説明するものである。本フローチャートにおける前半部分と中盤部分とは、実施の形態2と同様である。
【0085】
仕事量取得部78は、安定形状取得部74が安定形状を取得するまでに求めた、微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを蓄積して、安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量Jを取得する(S90)。比較部68は、仕事量取得部78から仕事の総量Jを取得し、Jと基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量JTとの大小関係を比較する。Jが所定の仕事量JTを超える場合(S92N)、はんだの接合状態が不良と判定し(S96)、そうでない場合(S92Y)、良好と判定する(S94)。
【0086】
以上の構成による動作は以下のとおりである。基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40が、はんだが安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量の大小を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0087】
以上のように、実施の形態3によれば、はんだが安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量をもとに、はんだの3次元的な形状の変化を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0088】
以上、本発明を実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3をもとに説明した。これらの実地の形態の任意の組み合わせもまた、本発明の実施の形態として有用である。これらの実施の形態の組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果を合わせ持つ。
【0089】
以上、本発明を実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0090】
10 PC、 12 モニタ、 14 線質変更部、 16 放射線発生器駆動部、 18 基板保持部駆動部、 20 検出器駆動部、 22 放射線発生器、 24 基板保持部、 26 検出器、 28 基板回転軌道、 30 検出器回転軌道、 32 撮像部、 34 記録部、 36 断面画像生成部、 38 基板表面検出部、 40 検査部、 42 輪郭抽出部、 44 重心取得部、 46 ポリゴン生成部、 48 法線ベクトル取得部、 50 接合状態検査部、 52 基板表面、 54 部品、 64 重心、 66 計数部、 68 比較部、 70 閾値記録部、 72 表面張力モデル生成部、 74 安定形状取得部、 76 差分ベクトル、 78 仕事量取得部、 100 放射線検査装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は被検査体の検査装置に関し、特に放射線を照射することにより得られる被検査体の透過画像を利用して被検査体を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された基板(以下「基板」という。)には、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land Grid Array)が実装されているものがある。これらの基板では、部品の電気接続部である端子は基板と部品との間に位置し、カメラを用いた従来の外観検査装置では部品と基板とを接合するはんだの状態を観察することが困難である。このため、基板に複数の異なる方向からX線を照射し、その透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を画像に再構成し、そこから任意断面を切り出した断面画像を用いて検査する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−226875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の技術によれば、接合部分のはんだの立体形状が複数の断層画像として得られるが、基板とはんだとの接合状態の判断には2次元の断面画像を用いて行われる。そのため、はんだの立体形状を直接用いることにより、さらなる検査精度向上の余地があると考えられる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、検被検査体の立体的な情報を用いて検査することができる放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は検査装置に関する。この装置は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得するはんだ重心取得部と、前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する接合状態検査部とを含む。
【0007】
本発明の別の態様も検査装置に関する。この装置は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部と、前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、前記ポリゴン生成部がモデル化した複数のポリゴンと前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する接合状態検査部とを含む。前記接合状態検査部は、前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルをもとにはんだ表面の表面張力の力学モデルを生成する表面張力モデル生成部と、前記表面張力モデル生成部が生成した力学モデルをもとにはんだの内圧と表面張力とが釣り合って安定するはんだの3次元形状を取得する安定形状取得部と、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較することで基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する比較部を含む。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検被検査体の立体的な情報を用いて検査することができる放射線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線検査装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】実施の形態1に係るPCが処理する検査に関する各機能を模式的に示した図である。
【図3】実施の形態1に係る検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図4】はんだ輪郭抽出部が抽出したはんだ領域を、基板に対して垂直な平面で切断したときの切断面を模式的に示した図である。図4(a)は、はんだの接合状態が良好な場合の切断面を模式的に示した図である。図4(b)は、はんだの接合状態が不良の場あの切断面を模式的に示した図である。
【図5】ポリゴン生成部が生成したはんだ表面のポリゴンと、そのポリゴンの法線ベクトルとを模式的に示した図である。
【図6】はんだの重心とはんだ表面の法線ベクトルとの関係を示した図である。図6(a)は、はんだの接合状態が良好の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(b)は、はんだの接合状態が不良の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。
【図7】実施の形態1に係るPCにおけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】実施の形態1に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図9】実施の形態1に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図11】実施の形態2に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図12】法線ベクトルとその差分ベクトルとの関係を模式的に示した図である。
【図13】輪郭点の更新時に輪郭点に働く力を説明するための図である。
【図14】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの前半部分である。
【図15】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの中盤部分である。
【図16】実施の形態2に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分である。
【図17】実施の形態3に係る接合状態検査部の内部構造を模式的に示した図である。
【図18】実施の形態3に係る接合状態検査部におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の概要を述べる。基板と基板に実装された部品とを接合するはんだは、通常熱処理によって溶融した後固まることで結合する。このため、はんだの接合状態がよい場合、すなわちはんだが十分に溶融した場合ははんだの表面張力によってはんだの形状は球形または樽型となる。このような場合、はんだ表面の法線ベクトルははんだの重心を向く。そこで、実施の形態1は、基板と基板に実装された部品とを接合するはんだの表面を3次元的な形状を抽出し、はんだ表面の法線ベクトルがはんだの重心を向く割合の高低により、はんだ接合状態の良否を判断する。
【0012】
図1は実施の形態1に係る放射線検査装置100を模式的に表した図である。放射線検査装置100は、PC(Personal Computer)10、モニタ12、および撮像部32を含む。撮像部32はさらに、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、および検出器26を含む。
【0013】
放射線発生器22はX線等の放射線を発生させる部分であり、これは例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生する。
【0014】
基板保持部24は被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」という。
【0015】
透過画像はPC10に送られ、例えばフィルタ補正逆投影法(Filtered−Backprojection法、FBP法)等の既知の技術を用いて、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。再構成された画像や透過画像は、PC10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」という。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「断面画像」という。再構成画像および断面画像はモニタ12に出力される。なお、モニタ12は再構成画像や断面画像のみならず、後述するはんだの接合状態の検査結果等も表示する。
【0016】
線質変更部14は放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」という)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」という)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する部分である。これは変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0017】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えばコンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くするとターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストは低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。
【0018】
放射線発生器駆動部16は図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸に沿って上下に移動することができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査対象との距離を変えて照射野を変更し、検出器26に撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。
【0019】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動する。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が張る平面上を、基板保持部24を平行移動させる。基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら透過画像を撮像することが可能となる。
【0020】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を変更することが可能となる。
【0021】
PC10は、上記の放射線検査装置100の全動作を制御する。なお、図示されていないが、PC10にはキーボードやマウス等の入力装置が接続されている。
【0022】
図2は、実施の形態1に係るPC10が処理する各機能ブロックを図示したものである。PC10は、記録部34、断面画像生成部36、基板表面検出部38、および検査部40を含む。なお、図示はしないが、PC10は線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、および検出器駆動部20を制御する撮像制御部も含む。
【0023】
記録部34は、基板の透過画像や再構成断面画像、および後述する検査部40の検査結果等を記憶する。
【0024】
断面画像生成部36は、記録部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。これは、例えばFBP法や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質のよさを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。生成した断面画像は記録部34に出力し、記録部34に記録される。
【0025】
基板表面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板の表面を映し出している断面画像を特定する。具体的には、基板表面検出部38は、断面画像に映し出されている基板表面に存在するスルーホールをエッジ強度の検出等の画像処理により検出し、当該スルーホールが最も鮮明に映し出されている断面画像を基板の表面とする。エッジ強度の計算には、例えばラプラシアンフィルタ等既知のエッジ抽出フィルタの出力値を利用すればよい。以後、基板の表面を映し出している断面画像を「表面画像」という。
【0026】
検査部40は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像をもとに、はんだの接合状態を検査する。ここで、「はんだの接合状態」とは、基板と部品とがはんだにより接合し、適切な導電経路が生成されているか否かのことをいう。なお、検査部40における検査結果は記録部34に記録される。
【0027】
以上の各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0028】
図3は実施の形態1に係る検査部40の内部構造を模式的に示した図である。検査部40は、輪郭抽出部42、はんだ重心取得部44、ポリゴン生成部46、法線ベクトル取得部48、および接合状態検査部50を含む。
【0029】
輪郭抽出部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像を画像解析し、はんだ表面の3次元的な輪郭形状を抽出する。具体的には、表面画像からはじめて順番に各断面画像のはんだの輪郭を追跡する。はんだは放射線の吸収率が高いため、断面画像におけるはんだ領域と他の領域とでは画素値に差がある。そこで断面画像を2値化しその境界領域を輪郭とする。この際、断面画像をサブピクセル単位で2値化すると輪郭抽出の精度が上がる点で有利である。具体的には、断面画像上に設定されたXY直交座標系における輪郭上のある輪郭点pi(i=1,・・・,PN;PNは輪郭点piの総数)において、piをX軸に並行な方向からサブピクセルで2値化した境界点をpixとし、Y軸に平行な方向からサブピクセルで2値化した境界点をpiyとしたときに、pixとpiyとの中点をp’iとする。
【0030】
図4は、はんだ輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域を、基板に対して垂直な平面で切断したときの切断面を模式的に示した図である。図4(a)は、はんだの接合状態が良好な場合の切断面を模式的に示した図である。図4(b)は、はんだの接合状態が不良の場あの切断面を模式的に示した図である。
【0031】
図4において、はんだは基板表面52上に存在するパッド56と、部品54の基板側に存在するパッド58との間を接合する。通常はんだは熱処理によって溶融した後固まることで基板と部品とを接合する。このため、図4(a)に示すように、はんだの接合状態がよい場合、すなわちはんだが十分に溶融した場合ははんだの表面張力によってはんだの形状は球形または樽型となる。一方、はんだが充分に溶融せずに固まった場合、図4(b)に示すように、その3次元的な形状は凹凸のある形状となる。
【0032】
はんだ重心取得部44は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得する。具体的には、はんだの輪郭点piの座標の平均値を求めることにより重心の位置ベクトルwを取得する。あるいは、輪郭点piの座標について、その点における輝度値の重み付き平均を求めてもよい。
【0033】
ポリゴン生成部46は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状を、複数の3角形のポリゴンでモデル化する。法線ベクトル取得部48は、ポリゴン生成部46がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める。
【0034】
図5は、ポリゴン生成部46が生成したはんだ表面のポリゴンと、そのポリゴンの法線ベクトルとを模式的に示した図である。はんだ表面には輪郭点60と総称される輪郭点piが配置されている。ポリゴン生成部46は、ある断面画像上に存在する輪郭点60aを選択し、その断面画像よりもひとつ表面画像側に位置する断面画像上に存在する輪郭点のうち輪郭点60aに最も距離の近い輪郭点60bおよび輪郭点60eを選択する。ポリゴン生成部46は、輪郭点60a、輪郭点60b、および輪郭点60eを頂点とする3角形を特定し、これをポリゴンとする。すべての輪郭点60について同様に3頂点を特定することにより、ポリゴン生成部46ははんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化する。
【0035】
法線ベクトル取得部48は、3角形のポリゴンの任意の2辺と平行なベクトルからその法線ベクトルni(i=1、・・・、M;Mはポリゴンの総数)を求める。例えば、輪郭点60aを始点とし、輪郭点60bを終点とするベクトルをベクトルx、輪郭点60aを始点とし、輪郭点60bを終点とするベクトルをベクトルy、輪郭点60a、輪郭点60b、および輪郭点60eを頂点とする3角形の法線ベクトル(符号62と総称される)をベクトルnとすると、ベクトルnはベクトルaおよびベクトルbを用いて以下の式で表される。
【数1】
ただし、はんだの中心に向かう方向を正の向きとする。また、「×」はベクトルの外積を表す。このように、はんだ表面をポリゴンでモデル化することにより、簡便な計算式で法線ベクトルを求めることが可能となる点で有利である。
【0036】
図6は、はんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(a)は、はんだの接合状態が良好の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。図6(b)は、はんだの接合状態が不良の場合のはんだの重心64とはんだ表面の法線ベクトル62との関係を示した図である。
【0037】
図4にて説明したように、はんだの接合状態が良好の場合、はんだの形状は球形または樽型となる。一方、はんだの接合状態が不良の場合、その3次元的な形状は凹凸のある形状となる。そのため、はんだの接合状態が良好の場合はんだの接合状態が不良の場合と比較して、はんだ表面の法線ベクトル62が重心64を向く割合が大きい。はんだの接合状態が良好の場合、図6(a)に示すようにはんだの法線ベクトル62eははんだの重心64を向く。一方、はんだの接合状態が不良の場合、図6(b)に示すように一部の法線ベクトル62eははんだの重心64を向いているが、法線ベクトル62fははんだの重心64を向かない。
【0038】
そこで、接合状態検査部50は、法線ベクトル取得部48が取得した法線ベクトル62のうち、はんだ重心取得部44が取得した重心の位置ベクトルwを向く法線ベクトル62の割合を取得し、その割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する。
【0039】
図7は、実施の形態1に係るPC10におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、PC10が撮像部32内の検出器26から透過画像を取得したときに開始する。
【0040】
断面画像生成部36は、記録部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。(S10)。基板表面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板の表面を映し出している断面画像を特定する(S12)。輪郭抽出部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、および基板表面検出部38が特定した表面画像を画像解析し、はんだ表面の3次元的な輪郭形状を抽出する(S14)。ポリゴン生成部46は、輪郭抽出部42が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状をモデル化する複数の3角形のポリゴンを生成する(S16)。接合状態検査部50は、法線ベクトル取得部48が取得した法線ベクトル62のうち、はんだ重心取得部44が取得した重心の位置ベクトルwを向く法線ベクトル62の割合をもとにはんだの接合状態を検査する(S18)。
【0041】
接合状態検査部50がはんだの接合状態の検査を終了すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0042】
図8は、実施の形態1に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、計数部66、比較部68、および閾値記録部70を含む。
【0043】
計数部66は、法線ベクトル取得部48からM個の法線ベクトルni(i=1、・・・、M)を取得し、はんだ重心取得部44からはんだの重心の位置ベクトルwを取得する。計数部66は、取得したM個の法線ベクトルniのうち、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントする。
【0044】
比較部68は、計数部66がカウントしたはんだの重心を向いている法線ベクトルの数を法線ベクトルの総数であるMで割った値rを計算する。比較部68は、閾値記録部70に記録されている定数Rとrとを比較し、r>Rの場合はんだの接合状態は良好であると判断し、r≦Rの場合はんだの接合状態は不良であると判断する。ここで定数Rは、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた割合であり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。定数Rは部品やはんだの種類によって異なる場合もあるが、たとえば0.9である。
【0045】
図9は、実施の形態1に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートであり、図7におけるステップS18を詳細に説明するものである。
【0046】
計数部66は、法線ベクトル取得部48からM個の法線ベクトルni(i=1、・・・、M)を取得する(S20)。計数部66はまた、はんだ重心取得部44からはんだの重心の位置ベクトルwを取得する(S22)。計数部66は、図示しないワークメモリ内にループ変数i、カウンタとして用いる変数count、およびポリゴンの総数Mを格納する変数を確保し、それぞれ1、0、Mで初期化する(S24)。
【0047】
計数部66は、i番目のベクトルniがはんだの重心を向いているかどうかを調べ、はんだの重心を向いている場合(S26Y)、変数countの値をcount+1とする(S28)。その後ループ変数iをi+1で更新する(S30)。i番目のベクトルniがはんだの重心を向いている場合(S26N)、計数部66は変数countの値を更新せずにループ変数iを更新する(S30)。ループ変数iが法線ベクトルの総数M以下の間(S32Y)、計数部66は、上述のはんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントするステップ(ステップS26からステップS30)を繰り返す。ループ変数iが法線ベクトルの総数Mより大きくなった場合(S32N)、計数部66はんだの重心を向いている法線ベクトルの数をカウントするステップを終了する。
【0048】
比較部68は、計数部66がカウントした変数countを法線ベクトルの総数Mで除算し、その値rと閾値記録部70から取得した定数Rとの大小関係を調べる。r>Rの場合(S34Y)、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数が所定の数を超えているためはんだの接合状態は良好と判断する(S36)。r≦Rの場合(S34N)、はんだの重心を向いている法線ベクトルの数が所定の数以下のためはんだの接合状態は不良と判断する(S38)。比較部68がはんだの接合状態を判断すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0049】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザは基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40がはんだの重心を向くはんだ表面の法線ベクトルの割合を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0050】
以上のように、実施の形態1によれば、はんだの重心とはんだ表面の法線ベクトルとの関係をもとに、はんだの3次元的な形状を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態2の概要を述べる。実施の形態2は、はんだが十分に溶融している状態を仮定してはんだ表面に働く表面張力の力学モデルを生成し、はんだ表面の表面張力とはんだの内圧とが釣り合うはんだの形状を安定形状として求める。この安定形状と、実際に計測されたはんだの形状との相違領域を求め、その大小によりはんだの接合状態の良否を判断する。実施の形態2においては、実施の形態1と検査部40の内部構造およびその動作が相違する。そのため、実施の形態2に係るPC10におけるはんだの接合状態を検査する処理は、図7に示した実施の形態1に係るフローチャートと同様である。以下、実施の形態1と重複する部分は適宜省略する。
【0052】
図10は、実施の形態2に係る検査部40の内部構造を模式的に示した図である。検査部40は、輪郭抽出部42、ポリゴン生成部46、法線ベクトル取得部48、および接合状態検査部50を含む。
【0053】
ここで、輪郭抽出部42、ポリゴン生成部46、および法線ベクトル取得部48は実施の形態1と同様である。接合状態検査部50は、ポリゴン生成部46がモデル化した複数のポリゴンと法線ベクトル取得部48が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する。
【0054】
図11は、実施の形態2に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74、および比較部68を含む。
【0055】
表面張力モデル生成部72は、法線ベクトル取得部48から取得した法線ベクトルの差分ベクトルをもとに表面張力Fjm(j=1,・・・,M;m=1,2,3)を取得する。図12は、法線ベクトル62とその差分ベクトル(符号76と総称される)との関係を模式的に示した図である。
【0056】
図12において、法線ベクトル62aを法線ベクトルとするポリゴンは、3つのポリゴンと隣接する。その3つのポリゴンの法線ベクトル62はそれぞれ法線ベクトル62b、法線ベクトル62c、および法線ベクトル62dである。表面張力モデル生成部72は、まず法線ベクトル62aと、3つの法線ベクトル(符号62b、62c、62d)との差分を計算する。具体的には、法線ベクトル62aと法線ベクトル62bとの差分を差分ベクトルdNj1(符号76a))とする。同様に、法線ベクトル62aと法線ベクトル62cとの差分を差分ベクトルdNj2(符号76b))とし、法線ベクトル62aと法線ベクトル62dとの差分を差分ベクトルdNj3(符号76c))とする。以後、差分ベクトルを符号76で総称する。
【0057】
表面張力モデル生成部72は、求めた差分ベクトル76をもとに、法線ベクトル62aを法線ベクトルとするポリゴンに働く表面張力Fjmを次式に基づいて求める。
Fjm=dNjm×K (m=1,2,3)
ここで、Kははんだの表面張力係数である。このように、差分ベクトル76に係数を乗じた値を表面張力とおくことにより、簡便な計算で表面張力を求められる点で有利である。
【0058】
安定形状取得部74は、表面張力モデル生成部72が求めた表面張力をもとに、表面張力によって生じる圧力Pstj(j=1,・・・,M)を次式に基づいて求める。
【数2】
ここで、rmは、差分ベクトルdNjmに対応する、ポリゴンに内接する球の半径である。
【0059】
安定形状取得部74は、圧力Pstjをもとにはんだの内圧Pinを次式に基づいて求める。
【数3】
ここで、Sjはj番目のポリゴンの面積である。
【0060】
安定形状取得部74は、はんだの内圧Pinをもとに、各ポリゴンに働くFjを次式に基づいて求める。
Fj=(Pin+Pcalib)×Sj−Pstj×Sj
Pcalibについては後述する。
【0061】
安定形状取得部74は、各ポリゴンに働く力Fjをもとに、微小時間Δt後の輪郭点60の位置を更新することにより、各ポリゴンの位置を求める。具体的には、ある輪郭点60の位置座標をPi、更新後の位置座標をP’iとするとP’iを次式に基づいて定める。なお、パッド56等に隣接している輪郭点60は更新されないものとする。
【数4】
ここで、KΔtは輪郭点60の移動量係数であり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。また、Aiについては図を用いて説明する。
【0062】
図13は、輪郭点60の更新時に輪郭点に働く力を説明するための図である。はんだの表面はポリゴン生成部46によって3角形のポリゴンでモデル化されている。いま、ある輪郭点60gに注目したとき、輪郭点60gの周囲には6つのポリゴンが存在する。輪郭点60gの位置座標をPiとしたとき、Aiは輪郭点60gの周囲に存在する6つのポリゴンの集合を表す。すなわち、上式は、集合Aiに属する6つのポリゴンに働く力の合力に、輪郭点60の移動量係数KΔtを乗じた値が、微小時間Δtにおける位置座標をPiの更新量となることを表している。
【0063】
さて、各輪郭点60の位置座標を更新することにより、各ポリゴンの位置が変動する。このとき、j番目のポリゴンの移動量をrjとすると、そのポリゴンが移動した部分の体積Δvjは、Δvj=rj×sjとなる。ポリゴン全体で移動した部分の体積ΔVは次式で求められる。
【数5】
【0064】
前述のPcalibは、体積ΔVを用いて次式で定義される。
Pcalib=−ΔV×Kv
ここで、Kvは体積制御パラメータであり、装置の設計者や製造者によってあらかじめ実験によって定められている。Pcalibは、体積の変動量ΔVを打ち消すように働く体積の制御項である。
【0065】
なお、各ポリゴンに働く力Fjを求める際には、ひとつ前の更新の計算時に求めた体積ΔVを用いればよい。
【0066】
安定形状取得部74は、微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを次式に基づいて求める。
【数6】
【0067】
安定形状取得部74は、ΔJが予め定められた閾値である微少量Jth以上の場合、表面張力モデル生成部72に制御を戻し、表面張力モデル生成部72は法線ベクトル62の取得からはじめで再度上述の演算を実行する。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jthより小さい場合、ポリゴンの移動更新を終了し、最終的なはんだ表面の形状を安定形状として比較部68に出力する。
【0068】
比較部68は、安定形状取得部74から取得した安定形状と、実際に計測されたはんだ表面とを比較しその相違領域を求め、相違領域の全体に対する割合を計算する。具体的には、相違領域は安定形状と実際に計測されたはんだ表面との相違部分の体積として求め、はんだの全体積に対する相違領域の体積の割合を求める。あるいは、相違領域を安定形状と実際に計測されたはんだ表面との相違部分の表面積として求め、実際に計測されたはんだ表面の全表面積に対する相違領域の表面積の割合を求めてもよい。その後比較部68は、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合Rを閾値記録部70から取得し、相違領域が所定の割合Rを超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定する。
【0069】
なお、実際に計測されたはんだ表面としては、輪郭抽出部42の抽出結果をもとにポリゴン生成部46が最初に生成したポリゴンを用いればよい。
【0070】
図14は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの前半部分であり、図7におけるステップS18の前半部分を詳細に説明するものである。
【0071】
表面張力モデル生成部72は、図示しないワークメモリ内にループ変数jを確保して1に初期化する(S40)。表面張力モデル生成部72はj番目のポリゴンの法線ベクトルnjを取得する(S42)。表面張力モデル生成部72は図示しないワークメモリ内にループ変数mを確保して1に初期化する(S44)。表面張力モデル生成部72はj番目のポリゴンの法線ベクトルnjに関するm個目の差分ベクトルdNjmを取得し(S46)、それをもとに表面張力Fjmを求める(S48)。表面張力モデル生成部72は、ループ変数mをm+1に更新し(S50)、mが3以下の場合(S52Y)、差分ベクトルdNjmを取得および表面張力Fjmの取得ステップを繰り返す。mが3より大きくなると(S52N)、表面張力モデル生成部72は、求めた3つの表面張力Fjmを安定形状取得部74に出力する。
【0072】
安定形状取得部74は、表面張力モデル生成部72が求めた表面張力Fjmをもとに、表面張力によって生じる圧力Pstjを求める(S54)。安定形状取得部74は、るーぷ変数jをj+1で更新し(S56)、jがポリゴンの総数M以下の場合(S58Y)、表面張力モデル生成部72の制御であるステップS42に戻る。jがポリゴンの総数Mより大きくなった場合(S58N)、安定形状取得部74は、表面張力によって生じる圧力Pinを取得する(S60)。
【0073】
図15は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの中盤部分であり、図7におけるステップS18の中盤部分を詳細に説明するものである。
【0074】
安定形状取得部74は、ループ変数jを1に初期化し(S62)、はんだの内圧Pinをもとに、ポリゴンに働くFjを求める(S64)。安定形状取得部74はループ変数jをj+1に更新し(S66)、jがポリゴンの総数M以下の間(S68Y)、ポリゴンに働くFjを求める処理を継続する。jがポリゴンの総数Mよりも大きくなった場合(S68N)、ループ変数iを確保して1に初期化する(S70)。
【0075】
安定形状取得部74は、i番目のポリゴンに働く力Fiをもとに、微小時間Δt後の輪郭点60の位置を更新する(S72)。安定形状取得部74はループ変数iをi+1に更新し(S74)、iが輪郭点60の総数PN以下の間(S76Y)、輪郭点60の位置を更新する処理を継続する。iが輪郭点60の総数PNよりも大きくなった場合(S76N)、安定形状取得部74は微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを求める(S78)。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jthより小さい場合(S80Y)、最終的なはんだ表面の形状を安定形状として比較部68に出力する。ΔJが予め定められた閾値である微少量Jth以上の場合(S80N)、ステップS40に戻る。
【0076】
図16は、実施の形態2に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分であり、図7におけるステップS18の後半部分を詳細に説明するものである。
【0077】
比較部68は、安定形状取得部74から取得した安定形状と、実際に計測されたはんだ表面との相違領域の全体に対する割合を計算するため、両者の比較を行う(S82)。比較部68は、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合Rを閾値記録部70から取得し、相違領域が所定の割合Rを超える場合(S84N)、はんだの接合状態が不良と判定し(S88)、そうでない場合(S84Y)、良好と判定する(S86)。
【0078】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザは基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40が、はんだの安定形状と実際に計測されたはんだの形状との相違を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0079】
以上のように、実施の形態2によれば、はんだの安定形状と実際に計測されたはんだの形状との相違をもとに、はんだの3次元的な形状を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0080】
(実施の形態3)
実施の形態3の概要を述べる。実施の形態3は、はんだが十分に溶融している状態を仮定してはんだ表面に働く表面張力の力学モデルを生成し、はんだ表面の表面張力とはんだの内圧とが釣り合うはんだの形状を安定形状として求める。この安定形状に至るまでの間に、はんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量を表面張力の力学モデルをもとに取得し、その大小によりはんだの接合状態の良否を判断する。実施の形態3においては、実施の形態2と接合状態検査部50の内部構造およびその後半部分の動作が相違する。以下、実施の形態1または実施の形態2と重複する部分は適宜省略する。
【0081】
図17は、実施の形態3に係る接合状態検査部50の内部構造を模式的に示した図である。接合状態検査部50は、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74、仕事量取得部78、比較部68、および閾値記録部70を含む。このうち、表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74は実施の形態2に係る表面張力モデル生成部72、安定形状取得部74と同様である。
【0082】
仕事量取得部78は、安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量Jを次式に基づいて求める。
【数7】
【0083】
比較部68は、仕事量取得部78から仕事の総量Jを取得し、Jと基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量JTとの大小関係を比較する。Jが所定の仕事量JTを超える場合、はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定する。
【0084】
図18は、実施の形態3に係る接合状態検査部50におけるはんだの接合状態を検査する処理の流れを示したフローチャートの後半部分であり、図7におけるステップS18の後半部分を詳細に説明するものである。本フローチャートにおける前半部分と中盤部分とは、実施の形態2と同様である。
【0085】
仕事量取得部78は、安定形状取得部74が安定形状を取得するまでに求めた、微小時間Δtの間に各ポリゴンがした仕事量の総和ΔJを蓄積して、安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量Jを取得する(S90)。比較部68は、仕事量取得部78から仕事の総量Jを取得し、Jと基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量JTとの大小関係を比較する。Jが所定の仕事量JTを超える場合(S92N)、はんだの接合状態が不良と判定し(S96)、そうでない場合(S92Y)、良好と判定する(S94)。
【0086】
以上の構成による動作は以下のとおりである。基板の製造ラインに放射線検査装置100を設置し、部品の実装された基板の透過画像を取得する。断面画像生成部36は透過画像から断面画像を生成し、検査部40が、はんだが安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量の大小を調べることにより、基板と部品とを接合するはんだの接合状態の良否を自動的に判断する。
【0087】
以上のように、実施の形態3によれば、はんだが安定形状に至るまでの間にはんだ表面のモデルであるポリゴンがする仕事の総量をもとに、はんだの3次元的な形状の変化を用いて検査することができる。断面画像のように2次元的な情報を用いて検査をする場合と比較して検査に利用する情報が増すため、検査の精度を向上させうる点で有利である。
【0088】
以上、本発明を実施の形態1、実施の形態2、および実施の形態3をもとに説明した。これらの実地の形態の任意の組み合わせもまた、本発明の実施の形態として有用である。これらの実施の形態の組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果を合わせ持つ。
【0089】
以上、本発明を実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0090】
10 PC、 12 モニタ、 14 線質変更部、 16 放射線発生器駆動部、 18 基板保持部駆動部、 20 検出器駆動部、 22 放射線発生器、 24 基板保持部、 26 検出器、 28 基板回転軌道、 30 検出器回転軌道、 32 撮像部、 34 記録部、 36 断面画像生成部、 38 基板表面検出部、 40 検査部、 42 輪郭抽出部、 44 重心取得部、 46 ポリゴン生成部、 48 法線ベクトル取得部、 50 接合状態検査部、 52 基板表面、 54 部品、 64 重心、 66 計数部、 68 比較部、 70 閾値記録部、 72 表面張力モデル生成部、 74 安定形状取得部、 76 差分ベクトル、 78 仕事量取得部、 100 放射線検査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得するはんだ重心取得部と、
前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する接合状態検査部とを含むことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部をさらに含み、
前記法線ベクトル取得部は、前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求めることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部と、
前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、
前記ポリゴン生成部がモデル化した複数のポリゴンと前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する接合状態検査部とを含み、
前記接合状態検査部は、
前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルをもとにはんだ表面の表面張力の力学モデルを生成する表面張力モデル生成部と、
前記表面張力モデル生成部が生成した力学モデルをもとにはんだの内圧と表面張力とが釣り合って安定するはんだの3次元形状を取得する安定形状取得部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較することで基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する比較部を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項4】
前記表面張力モデル生成部は、ひとつのポリゴンの法線ベクトルを基準法線ベクトルとして、そのポリゴンと隣接するポリゴンの法線ベクトルと基準法線ベクトルとの差分ベクトルに、基板と電子部品とを接合するはんだの種類によって定まる表面張力係数を乗じることにより、基準法線ベクトルを法線ベクトルとするポリゴンに働く表面張力を取得することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較して実際の3次元形状と安定形状とが相違する相違領域を検出し、当該相違領域が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記接合状態検査部は、前記安定形状取得部が取得した安定形状に至るまでに前記表面張力モデル生成部が生成した表面張力の力学モデルが行う仕事量を計算する仕事量取得部をさらに含み、
前記比較部は、前記仕事量取得部が取得した仕事量が、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量を超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の検査装置。
【請求項1】
基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状における法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元領域における重心の位置を取得するはんだ重心取得部と、
前記法線ベクトル取得部が取得した法線ベクトルのうち、前記はんだ重心取得部が取得した重心位置を向く法線ベクトルの割合を取得し、当該割合が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が良好と判定し、そうでない場合は不良と判定する接合状態検査部とを含むことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることにより取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部をさらに含み、
前記法線ベクトル取得部は、前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求めることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、当該断面画像の中から基板と電子部品とを接合するはんだ領域の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の3次元形状を複数の3角形のポリゴンでモデル化するポリゴン生成部と、
前記ポリゴン生成部がモデル化したそれぞれの3角形のポリゴンに対して垂直なベクトルである法線ベクトルを求める法線ベクトル取得部と、
前記ポリゴン生成部がモデル化した複数のポリゴンと前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルとをもとに、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する接合状態検査部とを含み、
前記接合状態検査部は、
前記法線ベクトル取得部が取得した複数のポリゴンの法線ベクトルをもとにはんだ表面の表面張力の力学モデルを生成する表面張力モデル生成部と、
前記表面張力モデル生成部が生成した力学モデルをもとにはんだの内圧と表面張力とが釣り合って安定するはんだの3次元形状を取得する安定形状取得部と、
前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較することで基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態が良好か不良かを判定する比較部を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項4】
前記表面張力モデル生成部は、ひとつのポリゴンの法線ベクトルを基準法線ベクトルとして、そのポリゴンと隣接するポリゴンの法線ベクトルと基準法線ベクトルとの差分ベクトルに、基板と電子部品とを接合するはんだの種類によって定まる表面張力係数を乗じることにより、基準法線ベクトルを法線ベクトルとするポリゴンに働く表面張力を取得することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記輪郭抽出部が抽出したはんだ領域の輪郭を積み上げることで取得したはんだ表面の実際の3次元形状と前記安定形状取得部が取得したはんだの安定形状とを比較して実際の3次元形状と安定形状とが相違する相違領域を検出し、当該相違領域が基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の割合を超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記接合状態検査部は、前記安定形状取得部が取得した安定形状に至るまでに前記表面張力モデル生成部が生成した表面張力の力学モデルが行う仕事量を計算する仕事量取得部をさらに含み、
前記比較部は、前記仕事量取得部が取得した仕事量が、基板と電子部品とを接合するはんだの接合状態を判定するために定められた所定の仕事量を超える場合はんだの接合状態が不良と判定し、そうでない場合は良好と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−209055(P2011−209055A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76038(P2010−76038)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]