説明

樹脂シートの製造方法、及び形状ロール

【課題】転写率の向上を図ることが可能な樹脂シート製造方法を提供する。
【解決手段】連続樹脂シートを製造するシート製造工程S1と、形状ロールを用いて転写型を転写する転写工程S2と、を備えた樹脂シート製造方法とする。転写工程S2では、形状ロールの周方向に連続する凹部を形状ロールの長手方向に複数並設し、長手方向において隣り合う凹部間に、幅6μm以上15μm以下の隙間部が形成された転写型を用いて、転写工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に形状を有する樹脂シートの製造方法、及び樹脂シートの表面に形状を付与するための転写型を有する形状ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
表面に形状を有する樹脂シート(表面形状転写樹脂シート)を製造する方法として、押出機を用いて、樹脂を加熱溶融状態でダイから押し出し、連続した樹脂シート(連続樹脂シート)を製造し、転写型を用いて、連続樹脂シートの表面に転写型の形状を転写する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、シートの厚み方向に離間する第1押圧ロールと第2押圧ロールとの間に、連続樹脂シートを挟み込んで押圧し、第2押圧ロールの表面に形成された転写型の形状を、連続樹脂シートに転写している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、表面に形状が施された樹脂シートにおいて、単位形状の幅に対する高さの比率であるアスペクト比の大きい形状が要求されている。しかし、従来の樹脂シートの製造方法では、転写型の深さに対して、樹脂シートに転写された形状の高さが必ずしも十分ではなかった。そのため、転写型の最大深さDに対する、樹脂シートに転写された表面形状の最大高さHの比率である転写率(H/D)の向上が求められている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、転写率の向上を図ることが可能な樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の形状ロールは、このような課題を解決するために成されたものであり、転写率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、転写型から剥離された樹脂シートにおいて、隣り合うシート形状部分間に形成された谷部で、隣り合うシート形状部分の端部同士が接近して結合してしまうことで、形状転写率が低下するという知見を得た。そこで、転写型の凹部同士の間に幅6μm以上15μm以下の間隔を設けて転写を実行することで、転写型から剥離された樹脂シートにおいて、シート形状部分が結合することを防止し、転写率の向上を図ることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明による樹脂シートの製造方法は、加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、周面に転写型が形成された形状ロールを用いて、連続樹脂シートのシート表面に転写型を転写する転写工程と、を備えた樹脂シート製造方法において、転写型では、形状ロールの長手方向に隣り合う凹部が、6μm以上15mμ以下の間隔を空けて配置されていることを特徴としている。
【0008】
このような本発明の樹脂シートの製造方法によれば、形状ロールの長手方向の隣り合う形状同士の間に所定の間隔を有する転写型を用いた転写工程において、隣り合う形状間に、6μm以上15μm以下の間隔が形成されているため、転写型から剥離されたあとの連続樹脂シートにおいて、シート形状が膨張しても凸部の端部同士が結合することが防止される。これにより、シート形状の谷部において、隣り合う凸部形状の端部同士のくっつきが防止され、所望の凸部形状が確保され、形状転写率を向上させることができる。
【0009】
ここで、形状ロールから剥離された直後の連続樹脂シートの表面温度は、樹脂のガラス転移温度Tgに対して、(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃の範囲であることが好適である。これにより、転写率の向上を図りつつ、生産効率の向上を図ることができる。転写率の向上のみを考慮した場合には、形状ロールから剥離された直後の連続樹脂シートの表面温度は、樹脂のガラス転移温度Tgに対して、(Tg−10)℃〜(Tg+5)℃の範囲であることが好適であるが、この温度範囲では生産効率の向上を図ることは困難である。しかし、連続樹脂シートの表面温度を、(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃の範囲とすると、転写率の向上を図りつつ、生産効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明による形状ロールは加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造装置に適用され、連続樹脂シートのシート表面に転写型を転写するための形状ロールであって、形状ロールの周面には、当該形状ロールの周方向に連続する凹部が形状ロールの長手方向に複数並設され、形状ロールの長手方向に隣り合う凹部が、6μm以上15μm以下の間隔を空けて配置されていることを特徴としている。
【0011】
このような本発明の形状ロールによれば、周面に形成された転写型には、形状ロールの長手方向の隣り合う形状同士の間に、6μm以上15μm以下の間隔が空けられているため、転写型から剥離されたあとの連続シートにおいて、シート形状が膨張しても凸部形状の端部同士の結合が防止され、所望の凸部形状が確保される。その結果、形状転写率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、形状が転写された樹脂シートにおいて、隣り合う形状同士が結合することが防止されるため、形状転写率の向上を図ることが可能な樹脂シートの製造方法を提供することができる。また、本発明の形状ロールによれば、形状が転写された樹脂シートにおいて、隣り合う形状同士が結合することが防止されるため、形状転写率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る樹脂シートの構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】転写型に形成された凹部及び樹脂シートに形成された凸状部を模式的に示す断面図である。
【図6】樹脂シートの隣り合う凸状部間に形成された谷部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る樹脂シートの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一または相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
(樹脂シートの製造装置)
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。樹脂シート製造装置50は、本発明の樹脂シートの製造方法に使用可能な装置である。樹脂シート製造装置50は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シート60を得るダイ51と、ダイ51から押し出された連続樹脂シート60を厚み方向の両側から押圧する第1押圧ロール52A及び第2押圧ロール52Bと、を備えている。
【0016】
また、樹脂シート製造装置50は、原料となる樹脂を投入するための樹脂投入口57と、樹脂投入口57から投入された樹脂を押し出すための押し出し機58とを備えている。
【0017】
第1押圧ロール52A及び第2押圧ロール52Bは、互いに平行な回転軸回りに回転可能な構成とされている。第1押圧ロール52A及び第2押圧ロール52Bは、樹脂シート60の厚み方向に離間して配置され、互いの周面同士の間隔は、樹脂シート60の厚みに応じて設定されている。第2押圧ロール53の周面には、図6に示すように、樹脂シート60に転写される凹凸形状に対応する転写型53が形成されている。詳しくは、後述する。第2押圧ロール52Bは、本発明の形状ロールに相当する。
【0018】
(樹脂シートの製造装置の変形例)
図2は、本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。図2に示す樹脂シート製造装置50Bが、図1に示す樹脂シート製造装置50と異なる点は、第2押圧ロール(形状ロール)52Bの後段に、第3押圧ロール52Cを備えている点である。第3押圧ロール52Cは、第1押圧ロール52Aと同様な構成である。第3押圧ロール52Cは、第2押圧ロール52Bとの間に、連続樹脂シート60を挟み込んで押圧する。
【0019】
図3は、本発明の第3実施形態に係る樹脂シート製造装置を示す概略構成図である。図3に示す樹脂シート製造装置50Cが、図1に示す樹脂シート製造装置50と異なる点は、第1押圧ロール52Aの前段に、予圧ロール52Dを備えている点である。予圧ロール52Dは、第1押圧ロール52Aと同様な構成である。予圧ロール52Dは、第1押圧ロール52Aとの間に、連続樹脂シート60を挟み込んで押圧する。
【0020】
(連続樹脂シート)
本発明の実施形態に係る製造方法により製造される連続樹脂シートについて説明する。図4は、本発明の実施形態に係る樹脂シートの構成を模式的に示す斜視図である。図4では、連続樹脂シート60が所定のサイズに切断されて形成された樹脂シート30を示している。樹脂シート30は、透過型画像装置に搭載される面光源装置(バックライト)の導光板として使用可能なものである。バックライトとしては、導光板の側面33にLEDなどの光源を配置し、導光板の側面33から入射した光を正面側に出射するエッジライト型として、使用可能である。なお、樹脂シートの側面33に対して光源を配置して導光板として使用してもよく、樹脂シートの背面32に対して光源を配置して拡散板として使用してもよい。
【0021】
樹脂シートを導光板として使用する場合には、通常、樹脂シートの背面32には、側面から入射した光を乱反射させる反射加工が施される。反射加工として行う印刷の方法としては、シルク印刷のほかに、インクジェット印刷を行ってもよい。あるいは反射加工の方法としては、印刷ではなく、レーザ照射によりドット形状の凹凸を付与してもよい。
【0022】
樹脂シート30の表面31には、第1の方向(x軸方向)に延在すると共に、この第1の方向に直交する第2の方向(y軸方向)に並列配置された複数の凸状部35が形成されている。表面31に形成された凸状部35を有する凹凸形状は、後述する転写工程よって形成される。
【0023】
(樹脂シートの構成材料)
樹脂シートからなる導光板は、透光性樹脂から形成されている。透光性樹脂の屈折率は通常、1.49〜1.59である。導光板30に使用される透光性樹脂としては、メタクリル樹脂が主として用いられる。導光板30に使用される透光性樹脂として、その他の樹脂を用いてもよく、スチレン系の樹脂を用いても良い。透光性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、カーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、MS樹脂(アクリルとスチレンとの共重合体)などが使用可能である。
【0024】
樹脂シート30(60)構成する樹脂としては、通常は、加熱されることにより溶融状態となる熱可塑性樹脂が挙げられる。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、MS樹脂(アクリルとスチレンとの共重合体)などが挙げられる。なお、本発明の製造方法に適用できる範囲で、加熱されることにより硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。上記樹脂は、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0025】
(樹脂シートの製造方法)
本発明の実施形態に係る樹脂シートの製造方法について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る樹脂シートの製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態の樹脂シートの製造方法は、例えば、図1〜図3に示す樹脂シート製造装置50を用いて実施可能である。図7に示すように、本実施形態の樹脂シートの製造方法は、加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを成形するシート製造工程(S1)と、周面に転写型が形成された(形状ロール)を用いて、連続樹脂シートに転写型を転写する転写工程(S2)と、を備える。
【0026】
(シート製造工程)
シート製造工程では、樹脂を加熱溶融状態でダイ51から連続的に押し出して連続樹脂シート60を製造する。本発明の製造方法に用いられる樹脂としては、加熱されることにより溶融状態となる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0027】
上記樹脂を加熱溶融状態で連続的に押し出すダイ51としては、通常の押出成形法に用いられると同様の金属製のTダイなどが用いられる。ダイ51から樹脂を加熱溶融状態で押し出すには、通常の押出成形法と同様に、押出機58が用いられる。押出機58は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。樹脂は押出機58内で加熱され、溶融された状態でダイ51に送られ、押し出される。ダイ51から押し出された樹脂は、連続的にシート状となって押し出され、連続樹脂シート60となる。
【0028】
なお、連続樹脂シート60の厚みは、得られたシートの用途に応じて適宜調整すればよい。例えば、連続樹脂シート60を導光板30として用いる場合のシート厚みの好ましい範囲は、1.0mm以上4.5mm以下である。
【0029】
(転写工程)
転写工程(S2)は、シート製造工程(S1)によって製造された連続樹脂シート60を第1押圧ロール(押圧ロール)52Aと第2押圧ロール(形状ロール)52Bとで挟み込むことで押圧する押圧工程(S3)と、押圧工程(S3)で押圧された連続樹脂シート60を形状ロール52Bの周面に密着させたまま搬送する搬送工程(S4)と、搬送工程(S4)で搬送された連続樹脂シート60を形状ロール52Bの周面(転写型53)から剥離する剥離工程(S5)と、を含む。
【0030】
(押圧工程)
上記シート製造工程(S1)で得られた連続樹脂シート60は、押圧工程(S2)により、図1に示すように、第1押圧ロール52Aと第2押圧ロール52Bとで、シートの厚み方向の両側から同時に挟み込まれて、押圧される。
【0031】
このとき、第2押圧ロール52Bに接する直前の連続樹脂シート60の表面温度は、180℃〜250℃の範囲である。表面温度の調整は、押出機58の設定温度の変更、ダイ51の設定温度の変更により、調整することができる。なお、連続樹脂シート60の表面温度は、赤外線温度計を用いて計測することができる。
【0032】
この押圧工程(S3)において、連続樹脂シート60には、第2押圧ロール(形状ロール)52Bの表面に形成された転写型53による形状が転写される。なお、本発明においては、転写型を備えた第2押圧ロール52Bを転写ロールともいう。上記転写ロール表面に備えられた転写型は、連続樹脂シート60の表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として連続樹脂シート60に転写するものである。
【0033】
ここで、本実施形態の転写工程の押圧工程では、形状ロール52Bの転写型53において、隣り合う凹部形状54は、所定の間隔(S:6μm〜15μm)を空けて配置されている。形状ロール52Bの周面には転写型53が形成され、当該転写型53においては、周方向に連続する凹部形状54が、形状ロール52Bの長手方向(Y方向)に複数並設されている。転写型53では、形状ロール52Bの長手方向Yに隣り合う凹部形状54,54間に、幅Sが6μm以上15μm以下である平坦部55が形成されている。平坦部55は、形状ロール52Bの周方向において連続して形成されている。本実施形態の押圧工程では、隣り合う凹部形状54,54間に、平坦部55が形成された転写型53を用いて、連続樹脂シート60の表面に凸部形状を転写する。
【0034】
第1および第2押圧ロール52A,52Bとして通常はステンレス鋼、鉄鋼などの金属で構成された金属製ロールが用いられ、その直径は通常100mm〜500mmである。これらの第1および第2押圧ロール52A,52Bとして金属製ロールを用いる場合、その表面は、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。また、第1押圧ロール52Aの表面(周面)は、鏡面であってもよいし、エンボスなどの凹凸が施された転写面となっていてもよい。
【0035】
(搬送工程)
搬送工程(S4)は、連続樹脂シート60を第2押圧ロール52Bの周面に密着させた状態で、第2押圧ロール52Bの回転に従って搬送する工程である。
【0036】
(剥離工程)
剥離工程(S5)は、連続樹脂シート60を第2押圧ロール52Bの周面から剥離する工程である。
【0037】
このとき、第2押圧ロール52Bから剥離された直後の連続樹脂シート60の樹脂の表面温度は、樹脂のガラス転移温度Tgに対して、(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃の範囲であることが好適である。これにより、転写率の向上を図りつつ、生産効率の向上を図ることができる。上記の温度範囲よりも樹脂の表面温度が低い場合には、例えば、(Tg−10)℃〜(Tg+5)℃の温度範囲であると、転写率の向上は図ることが可能であるが、生産効率の向上を図ることが困難となる。上記の(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃の範囲よりも樹脂の表面温度が高い場合には、連続樹脂シート60に転写された形状が熱により元に戻ってしまうため、転写率が悪化することになる。
【0038】
(形状ロール、転写型)
図5は、転写型に形成された凹部及び樹脂シートに形成された凸状部を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る形状ロールは、加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造装置に適用可能とされ、連続樹脂シートのシート表面に凹凸形状を付与するためのものである。形状ロール52Bは、円柱体または円筒体から成り、その周面に転写型53が形成されている。
【0039】
本実施形態に係る転写型53では、上述したように形状ロール52Bの周方向に連続する凹部形状が、形状ロール52Bの長手方向(方向Y)に複数並設されている。また、転写型53は、長手方向Yに隣り合う凹部形状54間に、平坦部55を有する構成とされている。
【0040】
また、凹部形状54のピッチPは、通常30μm以上、好ましくは50μm以上であるが、本発明の製造方法および製造装置においては、凹部形状54のピッチ間隔Pが30μm〜800μmである場合に好適であり、凹部形状54の溝深さDが30μm〜500μmである。凹部形状54のピッチ間隔(P)とは、隣接する凹部54の溝部間(底部同士)の距離をいい、凹部形状54の溝深さ(D)とは、形状ロール52Bの表面円周上から凹部54の溝部(底部)までの距離をいう。
【0041】
また、転写型のサイズとして、例えば、ロール平坦部55の幅Sを8μm、凹部形状54の深さDを145μmとすることができる。
【0042】
また、転写型53の凹部形状54の断面形状としては、半円形状、半楕円形状などが挙げられる。また、プリズム形状に対応した鋭角部を有するV字型形状でもよい。
【0043】
上記転写型の作製方法としては、上記ステンレス鋼、鉄鋼などからなる転写ロールの表面に、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行ない、形状を加工することがあるが、これらの手法に特に限定されるものではない。
【0044】
また、転写ロールの表面は、上記転写型を形成した後に、たとえば表面形状の精度を損なわないレベルで、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
【0045】
(樹脂シートの製造方法の変形例)
製造方法の変形例として、例えば、搬送工程(S4)の後に、第2の押圧工程を実施してもよい。第2の押圧工程は、図2に示す樹脂シート製造装置50Bを用いて実施可能である。第2の押圧工程では、搬送工程(S4)によって搬送された連続樹脂シート60を第2押圧ロール(形状ロール)52Bと第3押圧ロール52Cとで挟みこむことで押圧する。第2押圧工程で押圧された連続樹脂シート60は、第2押圧ロールから剥離され(剥離工程)、第3押圧ロール52Cの周面に密着したまま搬送された後、第3押圧ロール52Cの周面から剥離される。
【0046】
また、製造方法の他の変形例として、例えば、押圧工程(S3)の前に、予め押圧する予圧工程を実施しても良い。予圧工程は、図3に示す樹脂シート製造装置50Cを用いて実施可能である。予圧工程では、シート製造工程(S1)によって製造された連続樹脂シート60を予圧ロール52Dと第1押圧ロール52Aとで挟み込むことで、予め押圧する。押圧された連続樹脂シート60は、第1押圧ロール52Aの周面に密着したまま搬送され、第1および第2押圧ロール52A,52Bによって押圧工程(S3)が実行される。
【0047】
(作用)
本発明の樹脂シートの製造方法、及び形状ロールでは、転写型53において、隣り合う凹部形状54が6μm以上15μm以下の間隔Sを空けて配置されて、転写工程が実行されるため、転写型54から剥離されたあとの連続樹脂シート60において、シート形状が膨張しても凸部形状35のY方向の端部同士が結合することが防止される。これにより、シート形状の谷部35bにおいて、隣り合う凸部形状35の端部同士のくっつくことなく、所望の凸部形状35が確保され、形状転写率が向上される。
【0048】
図6は、樹脂シートの隣り合う凸状部間に形成された谷部を拡大して示す図である。図6に示すように、樹脂シート60の隣り合う凸部形状35,35間に形成された谷部35bにおいて、凸部形状35の端部同士の結合が防止されて、形状ロールの平坦部55に対応する隙間が形成されている。
【0049】
(実施例)
以下、実施例1を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1,比較例1)
図3に示す樹脂シート製造装置50Cを用いて実施例1及び比較例1に係るシートを作成した。使用した製造装置50Cの条件を以下に示す。押出機58のスクリュー径を120mmとし、押出機58による押出量を、700kg/hrとした。実施例1では、ライン速度を2.75m/minとし、比較例1では、ライン速度を2.83m/minとした。シート幅は、実施例1、比較例1ともに135cmとした。実施例1、比較例1ともに、ロール温度(予圧ロール52D/第1押圧ロール52A/第2押圧ロール52B)を、80℃/85℃/95℃とした。
【0051】
実施例1及び比較例1では、シート厚み3mmのPMMA板を押出成形(シート製造工程)によって作成した。実施例1及び比較例1では、単層構造の樹脂シート(図4参照)を作成とした。
【0052】
実施例1及び比較例1に係る樹脂シートを構成する樹脂に、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体を用いた。樹脂の仕様を以下に示す。
重量比:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=94/6
MFR:1.5g/10min
ガラス転移温度Tg:102℃
厚み:3.0mm
【0053】
第2押圧ロール52Bの転写型の形状として、実施例1では、ピッチPを400μm、深さDを222μm、平坦部55の幅Sを8μmとし、比較例1では、ピッチPを400μm、深さDを222μm、平坦部55の幅Sを4μmとした。
【0054】
実施例1では、第2押圧ロール52Bから剥離された直後の樹脂シートの表面温度は、122℃であり、このときの形状高さHは、145μmであり、形状転写率(=H/D)は、65%であった。比較例1では、第2押圧ロール52Bから剥離された直後の樹脂シートの表面温度は、123℃であり、このときの形状高さHは、127μmであり、形状転写率(=H/D)は、57%であった。
【0055】
下記の表1に実施例1及び比較例1の試験条件及び試験結果を示している。

【表1】

【0056】
このように本発明の実施形態に係る樹脂シートの製造方法によれば、樹脂シートの形状転写率を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
また、上記実施形態では、樹脂シートとして、導光板について説明しているが、その他の樹脂シートを作成してもよい。本発明の樹脂シート製造方法は、液晶TVのバックライトに搭載される形状導光板および形状拡散板の製造に有効である。本発明は、アスペクト比の高い形状導光板および形状拡散板の製造に特に有効である。
【0059】
また、上記実施形態では、図1〜図3に示す樹脂シート製造装置50、50B、50Cを用いて、連続樹脂シートの製造を行っているが、その他の製造工程を実行可能な樹脂シート製造装置を用いてもよい。
【0060】
また、形状ロールから剥離された直後の連続樹脂シートの表面温度は、樹脂のガラス転移温度Tgに対して、(Tg+5)℃以上(Tg+50)℃以下の範囲であることが好適であるが、その他の温度範囲でもよい。
【符号の説明】
【0061】
50,50B,50C…樹脂シート製造装置、51…ダイ、52A…第1押圧ロール、52B…第2押圧ロール(形状ロール)、52C…第3押圧ロール、52D…予圧ロール、53…転写型、54…凹部形状、55…平坦部、57…樹脂投入口、58…押出機、60…連続樹脂シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、
周面に転写型が形成された形状ロールを用いて、前記連続樹脂シートのシート表面に前記転写型を転写する転写工程と、を備えた樹脂シート製造方法において、
前記転写型では、前記形状ロールの長手方向に隣り合う凹部が、6μm以上15μm以下の間隔を空けて配置されていることを特徴とする樹脂シート製造方法。
【請求項2】
前記形状ロールから剥離された直後の前記連続樹脂シートの表面温度は、前記樹脂のガラス転移温度Tgに対して、(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の樹脂シート製造方法。
【請求項3】
加熱溶融状態の樹脂をダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造装置に適用され、前記連続樹脂シートのシート表面に転写型を転写するための形状ロールであって、
前記形状ロールの周面には、当該形状ロールの周方向に連続する凹部が前記形状ロールの長手方向に複数並設され、前記形状ロールの長手方向に隣り合う凹部が、6μm以上15μm以下の間隔を空けて配置されていることを特徴とする形状ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−153125(P2012−153125A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16895(P2011−16895)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】